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ソフト業界生き残りの条件
                    講師:平井克秀

 ソフト業界の「生き残りの条件」は、ビジネス環境の変化をいかにキャッチするか、これしかな
いと私は思っています。変化に気づかないがために、ビジネスチャンスを逃す、あるいはお客様
のニーズに沿わない提案をしてしまうということがよく起きています。私のこれまでの経験から
も、変化に気づいてさえいれば良い仕事がとれたのにと思うことがよくあります。「生き残るの
は、最も強い種ではなく、最も知性が高い種でもない。変化に、最も迅速に対応できる種だ」。
これは進化論で有名なダーウィンの言葉ですが、変化を素早くとらえて、他社より早く行動を起
こす、この一点に尽きると思います。では、そのためにはどうすれば良いのでしょうか。


●情報を駆使して変化に気づく、考える

 1つ目は、好奇心を持つことです。営業研
修のとき、皆さんに発表して頂いて「何か質
問は?」と聞くと、10 秒間で「はい」と手が
上がることはまずありません。そこが、日本
の弱点だと思います。海外ですと、「誰か質
問」という前に「はい」「はい」と手が上が
る。質問するとまた新しい情報が得られる、
情報の宝庫ですよ。もったいないことです。
好奇心を持って、いろんな情報を得ることが
重要です。日本の場合、インターネット等で
情報は氾濫していますが、IT ツールの利活用
という点で遅れているのではないでしょう
か。


 アメリカ、EC 諸国は4、5年前から、いかにして必要な情報を手に入れビジネスに、あるいは
新たな研究開発に利用するのかというところに注目しています。Google は皆さんご存じですね。
毎日何テラバイトと増える情報の中から、必要な情報を検索するためのツールですが、アメリカ
連邦政府は、この情報の検索ツールだけでなく、情報の利活用を支援するツール開発を優先課題
と考え、90 年代半ば頃から投資しています。


 先日、富士通総研で Web2 の勉強会を行った後、28 歳の某航空会社担当の営業さんが僕のところ
へきて、約2時間話しました。皆さんが、人を雇うとしたら、大体 20 代、30 代、あるいは新卒の
人ですよね。では、その年代の人たちがどういうジョブキャリアを頭に描いて、何をやりたいと
考えているのか、経営者の皆さんは知っていますか? それを知らなくて、人材を採用し、育成で
きますか? 僕は富士通総研でもしょっちゅう言っていますが、28 歳の彼は、完璧に僕の話を理解
していました。私がなぜ彼らと話ができるかというと、世代を越えるからです。リアルな世界で
はなかなかそういうチャンスがないのですが、SNS の世界だったら私自身が 20 代の視点で、若者
と同じように話ができます。
ネットの世界には、膨大な情報が詰まっています。人とのつきあいは、現実の世界の何百倍、何
千倍になるのです。しかも、色々な人がいるから聞けばパッと答えが返ってくるのですよ。質問
されても答えが出ない、言葉さえ知らないということがありますが、そこに差が出ます。ブログ
だとか SNS は、昔で言う単なる個人のホームページです。しかし、検索すると自分で調べたいと
思うことが、たくさんあります。国が情報を流すような時代は終わっているのですね。


 どのような事業を行うべきなのか、今どのような変化が現れているのか、変化に対応してどのよ
うな人材を育てれば良いのか、どことアライアンスを組むと有利か等々を考える材料として、情
報を活用することが重要で、そのために、「目利き」が必要になってきます。アメリカのシリコ
ンバレーでは目利き能力(Serendipity)を、別の意味で使っています。ベンチャーキャピタリスト
の人たちですね。彼らは資本家でもあり、経営のプロです。彼らはできるだけ早く、多く失敗を
して学ぶ。学んだ中から本当に良い情報を掴む。その情報は技術そのものでもあります。すなわ
ち、それをテコにして新たなビジネスを作り出す。先駆者利益を得る。それが社会経済に影響を
与えて根付く頃になれば、それを売却してリターン、投資効果を得る、そういうビジネスで
す。Serendipity とは、良い技術、良いビジネスモデル、よいお客さんを見つけてそこへ的を絞ると
いうことです。基本的に「考えること」「気づくこと」が一番大事です。それが変化に対応する
基本で、案外忘れられていると思うのです。


●優先課題と目標を定める

 次に、私が色々な場でいつも言ってい
る勝つための条件をお話しします。一つ
目は、吉田松陰が言った言葉ですが「飛
耳長目(ひじちょうもく)」です。小さ
な日本の中だけでやっていたのでは、大
きな変化に気づきません。いったん外に
出なさい。外から日本という国を見なさ
い。そうすると気づきます。それに対し
て行動を起こしなさい、ということだと
私は理解しています。高杉晋作は上海に
行って、日本の将来に大きな危機感を
持ったと言います。着眼大局。しかし、
行動に移すときは、日本の強みが活かせるところに的を絞って着手する、これが基本だと思いま
す。

 二つ目は、草莽崛起(そうもうくっき)、流行の言葉で言えば World is Flat です。コンシュー
マー(消費者)自体が生産者だという、60 年代、ドラッカーが予言した言葉です。その予言
が、40 年経った今、現実のものになりました。World is Flat ということは、上下の関係がなくなる
わけです。私はベンダー、というだけではなく消費者であり、一般のユーザーとして開発もでき
るのです。それを証明するために SNS を作りました。身分とか、立場とかそういう分け隔てを超
えて、志のあるものは立ち上がらなければならない、そういう時なのだと言っています。この考
え方が今、個人や、会社、国においても非常に重要なことだと私は思っています。


 ただ、物事には順序、プロセスがあります。三つ目は「一粒百行」といって、一粒の米を作るに
も百の行いがあるということです。それだけのプロセス、段取りの積み重ねがないと物事は達成
できません。日本の場合は特に、プロセスというのが曖昧になっています。つまり、「あうんの
呼吸」「和の精神」という伝統的な考え方がありますから、みんなが一致協力して行ったわけで
す。正直言いまして、私ども団塊の世代はそんなこと一切考えてきませんでした。右肩上がりで
すから、効率、効率で行っていればよかった。しかし、これからの時代はそうではない。

 なぜかというと、日本はアメリカ的な資本主義社会にシフトしているのです。私は決して賛成
じゃないですよ。もう一度、日本人の強みが発揮できるところに集中するというやり方を見直し
てもいいと思いますね。80 年代前半から後半、当時アメリカは国際競争力を失って日本がえらく
元気だった時代、アメリカでは「チームワークが大事だ」というポスターを、至るところで見る
ようになりました。アメリカは、日本とドイツを徹底的に調べて、新たなやり方を作ったわけで
す。


 アライアンスという言葉があります。連合を組むとか、事業提携とか。色々なやり方がありま
す。M&A もアライアンスの派生形です。企業の理想図に沿って、一番効果が上がるリソースを外
から調達するのです。調達し合うということです。力のあるところと手を組む、これが頻繁に起
こってきます。私は「借勢」といっています。他者の勢いを借りて強くなることですね。そうい
う強くなるルートの中に入っていかないと駄目なのですね。それを真剣に考えていかないといけ
ません。なぜ買収したり、品揃えをしたり、経営リソースの転換をしたりするのか。それは、お
客様を満足させるためですね。お客様の要求を聞いて、将来の利用機会がこうだからここを買収
しよう、ここと手を組もうと、常に行っているわけですね。IBM の会長は、世界のお客様をまわ
り、将来におけるお客様の要求は何かを考え、すべて必要なリソースの入れ替えを行いました。
今もやっています。


 以上のまとめとして、共通的なことをお話します。まずは、優先課題、目標設定を決めることだ
と思います。何をやるか、誰がやるか、そうすればあとは自ずと見えてくるはずです。3年後に
こうするために、この半年、一年はこれをやろうということを意識して行えば、効率より効果的
な業績達成につながると思います。もちろん、お客様の立場で、お客様のお客様の視点で提案す
るということを行わないと駄目なのです。


●投資家が要求するソフトの条件

 『国家の品格』(藤原正彦著)は、昨年ベストセラーになりました。その中で作者は言っていま
す。数学というのは論理の世界で、1万ステップぐらいのプロセスを踏んで証明していくわけで
す。しかし出発点は、まずは研究テーマを見つけることですが、それを見つけ出すのは論理でも
なんでもない、情緒力なのだと。情緒力を駆り立てる一番のものは、美の心であるといいます。
日本人は、昔から持っていますね。岡潔さんは数学者ですが、フランスへ行って、映画とか音楽
とか文化を学んできました。これが数学に必要だと言いました。経営についても、同じことが言
えます。コンサルタントは、問題を発見できれば仕事の6割が終わったことになります。これか
らの人たちは、特に意識して美の心、情緒力を磨いていく必要があると思っています。
最近私が思うのは、日本は利己主義に陥っているということです。アメリカ資本主義的競争社会
を作ろうとしています。道徳、倫理、文化の違いがあるわけですから、なぜこれまでの日本のや
り方を否定するのかということです。トヨタさんは、昔ながらの日本的経営を今もなお頑なに守
り続けて、世界第二位の企業になったのです。トヨタさんは社員に、「最初の 15 年、会社はあな
たを教育します。15 年たった後は知りません」と言うのです。私は、その言葉に感銘を受けまし
た。15 年間、会社が人を育て上げ
る。それが、人を大切にするという価値観を植えつけることになります。時間はかかりますが、
そうなると組織は強いわけです。何もアメリカの経営がすごいわけではありません。自信と誇り
を取り戻してもらいたいと私は思います。


市場とビジネスモデルの変化は、現実に起きています。ドッグイヤーの7年ではなく、今や3年
のマウスイヤーでスピードが要求されます。「クライナー・パーキンス・コーフィールド・アン
ド・バイヤーズ KPCB」は、アメリカを代表するベンチャーキャピタリスト集団ですが、彼らはソ
フトウェア開発者たちに対して売れるソフト、金儲けのできるソフト作りの秘訣を次のように
言っています。さすがベンチャーキャピタリストらしい、時代の要請に応えていると思いますの
で最後にご紹介します。

★投資家が要求するソフトの条件
~IT ベンチャーが守るべき 7 ヶ条~

1.ユーザーがすぐに価値を手にできるようにせよ。
2.クチコミを利用しろ(営業部隊は必要ない)
3.追加で必要な IT 技術はできるだけ少なくせよ。
4.シンプルで直感的なユーザーインタフェースを。
5.パーソナライズされた経験ができるようにせよ。
6.コンフィグレーションが簡単に行えるようにせよ。
7.コンテクストを意識し最適なサービスを提供しろ。

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  • 1. ソフト業界生き残りの条件 講師:平井克秀 ソフト業界の「生き残りの条件」は、ビジネス環境の変化をいかにキャッチするか、これしかな いと私は思っています。変化に気づかないがために、ビジネスチャンスを逃す、あるいはお客様 のニーズに沿わない提案をしてしまうということがよく起きています。私のこれまでの経験から も、変化に気づいてさえいれば良い仕事がとれたのにと思うことがよくあります。「生き残るの は、最も強い種ではなく、最も知性が高い種でもない。変化に、最も迅速に対応できる種だ」。 これは進化論で有名なダーウィンの言葉ですが、変化を素早くとらえて、他社より早く行動を起 こす、この一点に尽きると思います。では、そのためにはどうすれば良いのでしょうか。 ●情報を駆使して変化に気づく、考える 1つ目は、好奇心を持つことです。営業研 修のとき、皆さんに発表して頂いて「何か質 問は?」と聞くと、10 秒間で「はい」と手が 上がることはまずありません。そこが、日本 の弱点だと思います。海外ですと、「誰か質 問」という前に「はい」「はい」と手が上が る。質問するとまた新しい情報が得られる、 情報の宝庫ですよ。もったいないことです。 好奇心を持って、いろんな情報を得ることが 重要です。日本の場合、インターネット等で 情報は氾濫していますが、IT ツールの利活用 という点で遅れているのではないでしょう か。 アメリカ、EC 諸国は4、5年前から、いかにして必要な情報を手に入れビジネスに、あるいは 新たな研究開発に利用するのかというところに注目しています。Google は皆さんご存じですね。 毎日何テラバイトと増える情報の中から、必要な情報を検索するためのツールですが、アメリカ 連邦政府は、この情報の検索ツールだけでなく、情報の利活用を支援するツール開発を優先課題 と考え、90 年代半ば頃から投資しています。 先日、富士通総研で Web2 の勉強会を行った後、28 歳の某航空会社担当の営業さんが僕のところ へきて、約2時間話しました。皆さんが、人を雇うとしたら、大体 20 代、30 代、あるいは新卒の 人ですよね。では、その年代の人たちがどういうジョブキャリアを頭に描いて、何をやりたいと 考えているのか、経営者の皆さんは知っていますか? それを知らなくて、人材を採用し、育成で きますか? 僕は富士通総研でもしょっちゅう言っていますが、28 歳の彼は、完璧に僕の話を理解 していました。私がなぜ彼らと話ができるかというと、世代を越えるからです。リアルな世界で はなかなかそういうチャンスがないのですが、SNS の世界だったら私自身が 20 代の視点で、若者 と同じように話ができます。
  • 2. ネットの世界には、膨大な情報が詰まっています。人とのつきあいは、現実の世界の何百倍、何 千倍になるのです。しかも、色々な人がいるから聞けばパッと答えが返ってくるのですよ。質問 されても答えが出ない、言葉さえ知らないということがありますが、そこに差が出ます。ブログ だとか SNS は、昔で言う単なる個人のホームページです。しかし、検索すると自分で調べたいと 思うことが、たくさんあります。国が情報を流すような時代は終わっているのですね。 どのような事業を行うべきなのか、今どのような変化が現れているのか、変化に対応してどのよ うな人材を育てれば良いのか、どことアライアンスを組むと有利か等々を考える材料として、情 報を活用することが重要で、そのために、「目利き」が必要になってきます。アメリカのシリコ ンバレーでは目利き能力(Serendipity)を、別の意味で使っています。ベンチャーキャピタリスト の人たちですね。彼らは資本家でもあり、経営のプロです。彼らはできるだけ早く、多く失敗を して学ぶ。学んだ中から本当に良い情報を掴む。その情報は技術そのものでもあります。すなわ ち、それをテコにして新たなビジネスを作り出す。先駆者利益を得る。それが社会経済に影響を 与えて根付く頃になれば、それを売却してリターン、投資効果を得る、そういうビジネスで す。Serendipity とは、良い技術、良いビジネスモデル、よいお客さんを見つけてそこへ的を絞ると いうことです。基本的に「考えること」「気づくこと」が一番大事です。それが変化に対応する 基本で、案外忘れられていると思うのです。 ●優先課題と目標を定める 次に、私が色々な場でいつも言ってい る勝つための条件をお話しします。一つ 目は、吉田松陰が言った言葉ですが「飛 耳長目(ひじちょうもく)」です。小さ な日本の中だけでやっていたのでは、大 きな変化に気づきません。いったん外に 出なさい。外から日本という国を見なさ い。そうすると気づきます。それに対し て行動を起こしなさい、ということだと 私は理解しています。高杉晋作は上海に 行って、日本の将来に大きな危機感を 持ったと言います。着眼大局。しかし、 行動に移すときは、日本の強みが活かせるところに的を絞って着手する、これが基本だと思いま す。 二つ目は、草莽崛起(そうもうくっき)、流行の言葉で言えば World is Flat です。コンシュー マー(消費者)自体が生産者だという、60 年代、ドラッカーが予言した言葉です。その予言 が、40 年経った今、現実のものになりました。World is Flat ということは、上下の関係がなくなる わけです。私はベンダー、というだけではなく消費者であり、一般のユーザーとして開発もでき るのです。それを証明するために SNS を作りました。身分とか、立場とかそういう分け隔てを超 えて、志のあるものは立ち上がらなければならない、そういう時なのだと言っています。この考
  • 3. え方が今、個人や、会社、国においても非常に重要なことだと私は思っています。 ただ、物事には順序、プロセスがあります。三つ目は「一粒百行」といって、一粒の米を作るに も百の行いがあるということです。それだけのプロセス、段取りの積み重ねがないと物事は達成 できません。日本の場合は特に、プロセスというのが曖昧になっています。つまり、「あうんの 呼吸」「和の精神」という伝統的な考え方がありますから、みんなが一致協力して行ったわけで す。正直言いまして、私ども団塊の世代はそんなこと一切考えてきませんでした。右肩上がりで すから、効率、効率で行っていればよかった。しかし、これからの時代はそうではない。 なぜかというと、日本はアメリカ的な資本主義社会にシフトしているのです。私は決して賛成 じゃないですよ。もう一度、日本人の強みが発揮できるところに集中するというやり方を見直し てもいいと思いますね。80 年代前半から後半、当時アメリカは国際競争力を失って日本がえらく 元気だった時代、アメリカでは「チームワークが大事だ」というポスターを、至るところで見る ようになりました。アメリカは、日本とドイツを徹底的に調べて、新たなやり方を作ったわけで す。 アライアンスという言葉があります。連合を組むとか、事業提携とか。色々なやり方がありま す。M&A もアライアンスの派生形です。企業の理想図に沿って、一番効果が上がるリソースを外 から調達するのです。調達し合うということです。力のあるところと手を組む、これが頻繁に起 こってきます。私は「借勢」といっています。他者の勢いを借りて強くなることですね。そうい う強くなるルートの中に入っていかないと駄目なのですね。それを真剣に考えていかないといけ ません。なぜ買収したり、品揃えをしたり、経営リソースの転換をしたりするのか。それは、お 客様を満足させるためですね。お客様の要求を聞いて、将来の利用機会がこうだからここを買収 しよう、ここと手を組もうと、常に行っているわけですね。IBM の会長は、世界のお客様をまわ り、将来におけるお客様の要求は何かを考え、すべて必要なリソースの入れ替えを行いました。 今もやっています。 以上のまとめとして、共通的なことをお話します。まずは、優先課題、目標設定を決めることだ と思います。何をやるか、誰がやるか、そうすればあとは自ずと見えてくるはずです。3年後に こうするために、この半年、一年はこれをやろうということを意識して行えば、効率より効果的 な業績達成につながると思います。もちろん、お客様の立場で、お客様のお客様の視点で提案す るということを行わないと駄目なのです。 ●投資家が要求するソフトの条件 『国家の品格』(藤原正彦著)は、昨年ベストセラーになりました。その中で作者は言っていま す。数学というのは論理の世界で、1万ステップぐらいのプロセスを踏んで証明していくわけで す。しかし出発点は、まずは研究テーマを見つけることですが、それを見つけ出すのは論理でも なんでもない、情緒力なのだと。情緒力を駆り立てる一番のものは、美の心であるといいます。 日本人は、昔から持っていますね。岡潔さんは数学者ですが、フランスへ行って、映画とか音楽 とか文化を学んできました。これが数学に必要だと言いました。経営についても、同じことが言 えます。コンサルタントは、問題を発見できれば仕事の6割が終わったことになります。これか らの人たちは、特に意識して美の心、情緒力を磨いていく必要があると思っています。
  • 4. 最近私が思うのは、日本は利己主義に陥っているということです。アメリカ資本主義的競争社会 を作ろうとしています。道徳、倫理、文化の違いがあるわけですから、なぜこれまでの日本のや り方を否定するのかということです。トヨタさんは、昔ながらの日本的経営を今もなお頑なに守 り続けて、世界第二位の企業になったのです。トヨタさんは社員に、「最初の 15 年、会社はあな たを教育します。15 年たった後は知りません」と言うのです。私は、その言葉に感銘を受けまし た。15 年間、会社が人を育て上げ る。それが、人を大切にするという価値観を植えつけることになります。時間はかかりますが、 そうなると組織は強いわけです。何もアメリカの経営がすごいわけではありません。自信と誇り を取り戻してもらいたいと私は思います。 市場とビジネスモデルの変化は、現実に起きています。ドッグイヤーの7年ではなく、今や3年 のマウスイヤーでスピードが要求されます。「クライナー・パーキンス・コーフィールド・アン ド・バイヤーズ KPCB」は、アメリカを代表するベンチャーキャピタリスト集団ですが、彼らはソ フトウェア開発者たちに対して売れるソフト、金儲けのできるソフト作りの秘訣を次のように 言っています。さすがベンチャーキャピタリストらしい、時代の要請に応えていると思いますの で最後にご紹介します。 ★投資家が要求するソフトの条件 ~IT ベンチャーが守るべき 7 ヶ条~ 1.ユーザーがすぐに価値を手にできるようにせよ。 2.クチコミを利用しろ(営業部隊は必要ない) 3.追加で必要な IT 技術はできるだけ少なくせよ。 4.シンプルで直感的なユーザーインタフェースを。 5.パーソナライズされた経験ができるようにせよ。 6.コンフィグレーションが簡単に行えるようにせよ。 7.コンテクストを意識し最適なサービスを提供しろ。