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ケアを考える最終回:“支援者”という立場
- 1. ケアを考える
最終回:“支援者”という立
場
富山福祉短期大学 社会福祉学部
介護福祉専攻
担当: 中川 翔平
社会理論と社会システム 最終回(15
2013/2/15 1
回)
- 2. 専門職化と専門性
介護分野とは?
1987 年「社会福祉士及び介護福祉士法」における定
義
★第2条2項
「この法律において「介護福祉士」とは、第 42 条第
1項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専
門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障
害があることにより日常生活を営むのに支障がある
者につき入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、
並びにその者及びその介護者に対して介護に関する
指導を行うこと(以下「介護等」という)を業とす
社会理論と社会システム 最終回(15
る者をいう。」
2013/2/15
回)
2
- 4. 『介護福祉学入門』における定
義
① 「要介護者に対し提供される、食事、排泄、清拭、衣服の着脱、
安楽な体位の確保、移動動作の介助、睡眠の世話など」
② 「床ずれの世話、事故の防止や事故の予防、心身機能低下防止の
ための運動やレクリーション」
③ 「生活機能が低下したり、不全になった時に、本人のみならず周
囲の人々がそれを支え、世話をし、介助して生活支援を行い、可
能な限り自立した生活ができるようにする」努力
④ 「介護と支援を含めた在宅・施設に関する直接あるいは間接の諸
サービス全体を包括したもの」
岡本千秋・小田兼三・大塚保信・西尾祐吾編(2000)『介護福祉学入
門』中央法規出版
社会理論と社会システム 最終回(15
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回)
- 5. 専門職化と専門性の背後にあるも
の
• 日本における家族形態の変化
• 近い将来到来する高齢化社会で発生する社会
福祉のニーズ・介護福祉サービスを“誰が”
担うのか?
• その担い手をどのように育成するか?
といった課題が80年代後半に顕在化してきた。
社会理論と社会システム 最終回(15
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回)
- 6. 戦後日本の家族変動
図1. 普通世帯の家族類型別割合:1955~90年
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回)
- 7. 「家」制度
~“今”に生きる過去の家族制度
~
伝統家族の機能
世界的視野からみると、家族には、大きくわけて五つの機能があるといわれてきた。
性的機能――結婚という制度は、その範囲内において性を許容するとともに婚外の性を禁
止する機能を果たす。これによって性的な秩序が維持されるとともに、子どもを産むこと
によって、社会の新しい成員を補充する。
社会化機能――家族は子どもを育てて、社会に適応できる人間に教育する機能をもつ。子
どもは家族のなかで人間性を形成し、文化を内面化して、社会に適応する能力を身につけ
ていく。
経済機能――共同生活の単位としての家族は生産と消費の単位として機能する。
情緒安定機能――家族がともに住む空間は、外部世界から一線をひいたプライベートな場
として定義され、安らぎの場・憩いの場として機能する。
福祉機能[保健医療機能]――家族は家族成員のうちで働くことのできない病人や老人を扶
養・援助する働きをする。
森岡清美・望月嵩(1983)『新しい家族社会学』培風館
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回)
- 8. 脇道:「男は仕事、女は家
庭」?
≪専業主婦の誕生≫
日本の場合、「男は仕事、女は家庭」式の性別役割分担
が一般化したのは、ちょうど高度経済成長が本格的には
じまった1960年あたりから。
家事労働だけに携わるいわゆる「専業主婦」が一般化し
たのも同じころと考えてよい。もちろん一部の上流・中
流の家庭ではずっと早く性別役割分担は存在していた
が、多くの一般庶民は農業を中心とする職住一体の生活
をしており、ともに家業に従事していた。広い意味での
「共働き」だったわけだ。性別役割分担はいわば近代の
産物であり、これを日本古来の伝統とみなす考え方は一
種のイデオロギーなのである。
社会理論と社会システム 最終回(15
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回)
- 9. 50-60年代のライフコース
• 60年代に〈腰かけ就職→退職・結婚→主婦として出産・
育児〉という女性の生活史のスタイルが確立する。
• しかし、同時に、育児を終えた既婚女性の職場進出がさ
かんになる。いわゆる「M字型就労」のはじまりである。
• つまり〈腰かけ就職→退職・結婚→主婦として出産・育
児→パートタイム〉というパターンである。
• そして現在、尐なく見積もっても800万組をこえる共働
き家族が存在し、これに農業や商工自営をふくめると
1,500万組以上の共働き家族が日本に存在する。
• この場合の「共働き」は、伝統的な意味での共働きでは
なく、妻の賃労働者化をともなう共働きのことである。
• これにより、家族のあり方が大きく変わりつつある。
社会理論と社会システム 最終回(15
2013/2/15 9
回)
- 10. 家族における介護担当者
図2. 65歳以上の要介護者等と同居する主たる介護者の性別 (厚生労働省
2003)
• 現在にいたるまで老人の世話をしてきたのは、ほとんどが女性であっ
た。
• 老人の介護のじつに89%が女性によってなされている。
• 要介護者に対し「粗大ゴミ」「濡れ落ち葉」という表現
• 「女は老いを三度生きる。親の老い、夫の老い、自分自身の老い」そ
れゆえ「老人問題は女性問題」なのである。
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回)
- 15. 2013/2/15
社会理論と社会システム 最終回(15 同上 41項 15
回)
- 17. 『感情労働』(emotional labour)
とは?
• 社会学者A・R・ホッシールドによる用
語
• 労働力商品として感情を表出したり制御
することが労働者に要求されていたり、
日常生活の「普通」の感情表出が阻害
(疎外でもある)されているということ
である。
• アーリー・ホックシールド 著、石川准・
室伏亜希訳(2000)『管理される心:感
情が商品になる時』世界思想社
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社会理論と社会システム 最終回(15
回)
17
- 18. 私的領域から公的領域への移行
• 感情労働は公的な賃労働の領域にあり「交換
価値」をもっている。
• そのため感情管理や感情作業は私的領域にお
いて「使用価値」があるものときちんと区分
しなければならない。
• 〈公的領域〉での活動を〈私的領域〉でのモ
ノ(アン・ペイドワーク)のように“演技”
することを求められる。
• そのため、支援者(援助者)は感情のコント
ロールを求め、バーン・アウト(燃え尽き)
や自信の喪失等のクライシスが発生するリス
クがある
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2013/2/15 18
回)
- 19. 支援者の自己規律化
• ナルシズムと利他主義の同時成立
• M. フーコーは、社会の「パノプティコン」
たる機能を見出し、近代社会における権力と
主体の誕生と成立の関係を「監視塔」とそこ
から監視される者との関係に準えて示した。
• そして、社会においては、自己を管理/規律
化できる、理性的ふるまいや労働することが
できる「統制された身体」が求められること
を示した。
社会理論と社会システム 最終回(15
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回)
- 20. 「パノプティコン」規律訓練型
権力
<一望監視装置>は見る=見ら
れるという一対の事態を切り離
す機械仕掛けであって、その円
周状の建物の内部では人は完全
に見られるが決して見るわけに
はいかず、中央部の塔の中から
は人は一切を見るが決して見ら
れはしないのである。
すなわち、一人ひとりが常に監
視されているということを自ら
に先取り的に内在化させ、その
自己監視のもとでの自己反省に
よる律していくように訓練され
ることで、社会秩序は作動する。
ミシェル・フーコー 著,田村 俶訳(1977)
『監獄の誕生―監視と処罰』新潮社
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回)
- 23. 支援者の“困難さ”・“とまど
い”
• 以上のように利用者を理解可能な存在と
すると同時に自身も“支援者”たろうと
する。
• そのため、〈一般化〉された対応(仕
事)をしようとするが、目の前に居るの
は固有名を持つ〈個別〉の利用者である。
社会理論と社会システム 最終回(15
2013/2/15 23
回)
- 24. まとめ
• I. イリイチが提唱した「専門化」から「非
専門化」への転換がアプローチの一つに
なるかもしれない。
• 「非専門化」は=「素人化」ではない。
「手段でよいものは手段でよい」(立岩
2000:309)
• 身につけた「技術」、「知識」や「自分
にできること」 がもつ暴力性を理解した
うえで実践を重ねていくことが出発点と
なるだろう。
社会理論と社会システム 最終回(15
2013/2/15 24
イヴァン・イリッチ 著,金子 回)
嗣郎 訳 (1979)『脱病院化社会─医療の限界』 晶文社