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2013 前期 第7回社会システム理論の深みへ「プレゼン」
- 2. ロバート・マートンの社会シス テム ロバート・キング・マートン （Robert King Merton, 米， 1910- 2003年 ） 調査をつうじてえられた経験的事実 （経験的一般化命題）から抽象的な理論 仮説をみちびき，その理論仮説を他の調 査でえられた経験的事実をつうじて実証 しようというのがマートンのスタイルで ある。 かれはこのようにしてえられる理論を 【中範囲理論】（middle range theory) とい う。こうしたかれの方法論は，社会を社 会システムとしてとらえて一挙にその全 体を理論化しようとするパーソンズのグ ランド・セオリーと対照的である。 中範囲の理論は調査によってえられる 経験的命題とパーソンズ流のグランド・ セオリーとの橋渡しをはかる理論ともいえる だろう。 主著 ロバート・キング・マートン（著），森東 吾・森好夫・金沢実・中島竜太郎（訳） 『社会理論と社会構造』，みすず書房，
- 4. 機能分析 • 【顕在的】機能（manifest function） ある社会事象 がはたしている機能のうち，当事者が認知し，か つ，公けに認められている機能。 • 【潜在的】機能（latent function） ある社会事象が はたしている機能のうち，当事者が認知していな いか，あるいは，公けに認められていない機能。 • 【順機能】（eufunction）ある社会事象Ａが別の社 会事象Ｂにたいしてはたしている機能のうち，Ｂ にとって有利な機能。 • 【逆機能】（dysfunction） ある社会事象Ａが別の 社会事象Ｂにたいしてはたしている機能のうち， Ｂにとって不利な機能
- 6. 問1 答え • 機能的等価項目（functional equivalents） ある社会事象がはたしている機能とおな じ機 能をはたす別の社会事象。 • 機能的代替項目（functional alternatives） ともいう ⇒ ハマスを根絶しようとすれば， パレスチナ社会はボス組織に代わるどん な機能的等価項目を用意しなければなら な
- 7. 問1 答え② 機能的要件（functional requisities） ある社会事象が存続するために不可欠とさ れる機能。機能的要件に注目した社会シス テムの分析を機能的要件分析という。 ⇒ パレスチナのボス組織が容易に根絶され ない理由を機能的要件という考え方を用い て説明できないだろうか。
- 9. • たとえば，組織全体よりも自分自身の所属する利益が 優先されて全体の利益につながらないとか，組織の力 と自分の力を混同し，外部に対して威圧的な行動をと る，規則の客観的な適用が重視，人間的な配慮が足り ないなどの逆機能である。 • 規則や命令をかたくなに重視すると、それさえ守りす ればよいということで、内部では形式主義、事なかれ 主義になる。外部に対しては面倒な手続きをおしつけ る繁文縟礼（はんぶんじょくれい）となる。 • 権限の原則、専門化は、各部門の利益ばかりを考える セクショナリズムを生みやすく、責任の回避、秘密主 義、権威主義といった欠点となる。 • 上下関係の階層秩序は、下層に無関心を生みやすい。 • これらの逆機能が強まると、合理的なはずの官僚制が、 非効率的なものとなる。不評な「官僚主義」はこの側 面といえよう。
- 10. 自己準拠的社会システム理論 ニクラス・ルーマン Niklas Luhmann 独 1927年-1998年 その上でコミュニケーションの重要性を主 張しつつ、意識とコミュニケーションを結 びつける構図を描き、知識の帰属先を意識 （神経システムとして閉じた心理的なシス テム言及）からコミュニケーション（社会 的なシステム言及）へ転換すべきであると する。 また意識システムとコミュニケーションシ ステムが橋渡しできない形で分離している として、他方でそれを繋ぐものとして構造 的カップリング概念を導入する。この構造 的カップリングと、オートポイエティック なシステムの作動の間の関係を明示的な知 と暗黙知の関係に比して論じる。 ニクラス・ルーマン (著)，佐藤 勉 (訳) 『社会システム理論』恒星社厚生閣， 1993，30項。
- 12. パーソンズからルーマンへ • パーソンズはトマス・ホッブズの問「人間の共同 生活、したがってゲゼルシャフト1的な秩序はいか にして可能であるのか」から出発 • パーソンズは主意主義的解決(社会的行為を行為者 の目的から理解する)を提出 それはあるゲゼルシャフトの構成員が個人的な 利害、外的強制によって共同生活を送るだけでは なく、ある規範的な準拠枠の内部で自発的に合意 するという事態を指している ドイツの社会学者F.テンニースが唱えた社会類型の一つ。ゲゼルシャフトは人間がある目的達成のため作為的に形成した、観念 的・機械的組織体としての社会。 日本語では「利益社会」「集列態」などと訳される。それに対して、ゲマインシャフト人間に本来備わる本質意志によって結合 した、実在的・有機体的統一体としての社会。 日本語では「共同社会」「共同態」などと訳される
- 17. 社会システムによる世界の 複雑性の縮減 • 彼は、我々のおかれている場の総体を＜ 世界＞と呼び、この世界は＜可能性の過 多＞にあると指摘する。 • 彼はこの可能性の過多にある事態の総体 を【複雑性】と呼ぶ。 • この複雑性は、可能性という事態を前提 とした社会の<不確定＞な事態を表してい る。彼は、この不確定な中に社会システ ムが創り出され、秩序をもたらすものと 考える。
- 18. 社会システムによる世界の 複雑性の縮減 ② • 状態や出来事が増えればその間の連関も増大し複雑性 が増す • 社会システムは世界の夢幻的な複雑性と個々の人間の 複雑性処理能力との間を媒介する（複雑性の縮減） • 社会システムは世界でおこりうる出来事や状態の数を 縮減させる（可能性の排除）（より少ない複雑性の島 ＝社会システム） • 環境は常にシステムより複雑である（境界の内部では より高次な価値的秩序がより少ない可能性で生じる）
- 19. 三つの社会システム 相互行為、組織対、ゲゼルシャフ ト• ルーマンによると社会システムは３つに分類出来る • 相互行為システムはそこに居合わせる人たちが行為することによっ て成立する（例えばこのクラス） • 組織対システムはその構成員が一定の条件をもとに結び付けられて いる場合（富山福祉短期大学） • 高度に作為的な行動様式をかなり持続的に再生産することができ、 それを〈成員〉と〈非成員〉に予測させることができる • ゲゼルシャフトは最も包括的な社会システムである （上記の２つに含まれなものも含むためより高次の概念であると同時 に並列的に3つ目の類型とも考えられる） • すべての相互行為システムと組織体システムはゲゼルシャフトに属 する
- 21. 社会学的啓蒙プログラム • 理論は社会システムについて一定の観察を定式化するが、この観察は同 時に自分の理論にも当てはまる • 理論は対象領域について一定の認識を獲得しようと努めるが、彼の理論 はまさにその対象領域に属している • 機能―構造的理論は近代科学というシステムに属している • このような理論構想は普遍主義的な要求をもった理論に特徴的なものだ と見られるだろう。 • 対象領域いっさいを説明しようとする理論は、自分自身も説明しなけれ ばならない • 対象領域にある少なくとも一つの要素―自分自身―を説明できるか否か で普遍的理論か否かが決まる ※これらに基づいたシステム理論を『自己準拠的社会システム理論』 という。
- 23. システム理論の新たな展開 • ルーマンは1984年の著書「社会システ ム」で社会システム理論の構想の組み換 えを行ったが、その書の中で一般システ ム理論の発展における3つの段階を提示し ている
- 24. 1. 全体とその部分に特徴づけられる、多数の部 分からなる閉鎖的な全体としてのシステムで ある 2. その差異に代わり、システムと環境という区 別が登場する 3. 『オートポイエーシス』 全体は諸部分の総和以上であり、個々の部分のネット化により要素と全体の 差異が存在する システムを環境との交換過程によって維持される開放的な構造物としてと らえている
- 25. オートポイエーシス • オートポイエーシス的システムとは何か。まず， ノレーマンが依拠しているヴァレラやマトウラー ナの定義を見てみよう。 ヴァレラの定義 • オートポイエーシス的組織とは，構成要素産出 ネットワークによる統一体であり，その構成要素 は， 1. 自らを産出した同じ構成要素産出ネットワーク に回帰的に参与し， 2. 自らが存在する空間において統一体としての産 出ネットワークを実現する，と定義される ［Varela et al.,1974 "Autopoiesis：The Organization of Living Syatem,Its Characterization and a Model" Bjbsystems５ ：ｐｌ８８]
- 26. マトウラーナの定義 • オートポイエーシス的システムとは，統 一体として，つまり〈構成要素産出ネッ トワーク〉として定義されるシステムで あり，その構成要素は，自らを産出する ネットワークを自らの相互作用によって 回帰的に生成・実現し，また自らが存在 する空間において，ネットワークの実現 に参与する構成要素としてのネットワー クの境界を構成する ［Maturana,１９８１ “Autopoiesis''，in MilanZeleny（ｅｄ）Autopoiesis "A Theory of Living Organization," NorthHolland ：ｐ,２１]
- 27. コミュニケーションってなんぞ や？ • ｢コミュニケーション｣という言葉。普段僕た ちが気軽に用いている言葉のひとつだ思うん だけど。 • でもコミュニケーションっていったいなんな んだろう？ すごくわかりづらい言葉なんじゃないんだろう か。 • ちょっと考えてみて欲しい。コミュニケー ションは原義はcommunicationで、日本語に 訳されることなく、そのままカタカナで使わ れている。 • じゃあ、これに訳を当てたらどうなるか。
- 28. • Communication 【名】 1. 〔情報の〕やりとり、連絡、伝達 2. 〔伝達される〕情報、メッセージ、手紙 3. 〔お互いの〕共感、感情的つながり、ラ ポール 4. 〔病気の〕伝染 5. 言葉による効果的なコミュニケーション方法 の技術。 6. 〔手紙や電話などの〕通信［コミュニケー ション］手段 7. 《軍事》連絡網、輸送路、補給路 8. 《communications》〔学問の分野の〕通信論 ［学］
- 30. それってどういうこと？ • 実は「伝達」よりも「親密」をはかっている んじゃないだろうか？ 仮説： 伝達とは全く異なる意味を与えている可能性が ある • つまりコミュニケーションとは親密さを高め る伝達行為ではあるけれど､重点は親密さを高 めることにあって､その際の情報交換＝伝達は 親密さを高めるための『メディア＝手段・媒 体』でしかない。 • 要は｢やりとりそれ自体｣が重要視され目的に
- 31. ちょっと自分たちを振り返ってみ よう！ • 友達とどんな会話する？ • 恋人とは？ • 家族とは？ • ネットでは？ 注：「ぼっち」の人ごめんなさい。
- 32. 普段のコミュニケーションっ て！？ • 僕らが普段やっているコミュニケーショ ンは､そのほとんどが｢親密さを高める行 為｣という意味で用いている。 • これは夫婦(両親とかね)の会話を思い浮か べるとわかりやすい。毎日顔をつきあわ せているのだから、実は伝達することな んかほとんどないのではなかろうか。 • もちろん、確認・お願い等他の目的があ ると異なるが。
- 33. ではここでの「コミュニケーション」とは。 要するにここでやっているのは、すでに入手 している情報の確認であって､交換ではない。 だが、この確認行為が『○○』の親密性とか 関係性とかを保証しているのだ。
- 37. 例：音楽メディア • アナログからデジタルへ • かつてはレコードかテープレコーダーがメ ディアとして用いられていたが、これらには 全てノイズが存在する。 • ノイズとは無作為な変化または外乱であり、 原子などの粒子の無作為な熱振動などが原因 である。 • アナログ信号はその変動に意味があり、無作 為な外乱がそこに追加されると元々の変動と 区別できなくなるため、それがノイズとして 現れる(A’)
- 39. オートポイエーシス的システム 結婚して下さい(A) 「結婚して ください」 というメッ セージをだ しているこ とは理解し た（X） 『プロポーズ大作戦』 制作・著作権：株式会社フジテレビジョン、 2007 「結婚してください（A） ≠ 情 報「結婚してください」（X）
- 40. ｢人間はコミュニケートすることはできない｡コミュニケーションだけがコミュニ ケートしうる｣ • コミュニケーションとは｢互いに勘違いを 続けること。そしてその勘違いを充足さ せようとアタマをめぐらせる（＝思考） すること。 • さらに、それによって発せられた行為が 相手にとっての刺激になって、さらなる 勘違いを誘発させること｣（創発性）とい うことになる。 • しかし、それは二人のコミュニケーショ ンを観察している第三者の視点からすれ ば､あたかも情報を交換しているかのよう
- 41. まとめ • オートポイエーシス的システムとは組織的に閉じており自 律的である • これらはオートポイエーシス的システムはその構成要素に 関してはインプットもアウトプットもしないということを 意味している • オートポイエーシス的システムは環境の影響によって決定 されず、せいぜい刺激を受ける程度である • したがって具体的なシステムは環境によってではく自身に よって規定されるその限りにおいてオートポイエーシス的 システムは構造ないし状態によって決定されるような仕方 で働く