1. インターネットベンチャーから見る
ベンチャー企業の社会的意義
シュンペーターの経済発展の理論から

2. 研究の背景と目的
イノベーション＝経済の活性化につながるはず...
ベンチャー企業＝イノベーションの担い手ってよく言われてる
インターネットの発明、普及＝イノベーションだよね？
インターネットベンチャーって日本にもいっぱいある
でも、日本の経済、発展してないよね？
なんで？

3. 研究の手法
研究の主なアプローチは２つ
・シュンペーターの経済発展の理論から、現在の経済の状況を考える
・現在のベンチャー企業の現状から、ベンチャー企業の社会的意義を考える
研究のゴール
イノベーションの担い手としてのベンチャー企業のあり方は？

4. ヨーゼフ・アーロイス・シュンペーター
Joseph Alois Schumpeter
オーストリア・ハンガリー帝国（後のチェコ）モラヴィア生まれ
オーストリアの経済学者
主な著作
• Wesen und Hauptinhalt der theoretischen Nationalökonomie, 1908『理論経済学の本質と主要内容』
• Theorie der wirtschaftlichen Entwicklung, 1912『経済発展の理論 : 企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究』
• Business Cycles, 1939『景気循環論 : 資本主義過程の理論的・歴史的・統計的分析』 金融経済研究所訳
• Capitalism, Socialism, and Democracy, 1942『資本主義・社会主義・民主主義』中山伊知郎・東畑精一訳
• History of Economic Analysis, 1954『経済分析の歴史』東畑精一訳
キーワード：新結合、創造的破壊、経済発展

5. シュンペーターの経済発展の理論
基本モデル
好況＞不況＞好況＞不況＞好況＞不況
好況＞安定＞不況＞新結合＞経済発展＞好況
経済発展は好況と不況を振り子のように繰り返しながら、微分的な変化の割合をもっ
て連続的に拡大するものではない
不況、好況を含むサイクルの中で、自然的に新結合による非連続的な発展のフェーズ
を含むもの

6. 新結合ってなに？
通常の経済活動
通常の経済活動は経済の均衡点に向けて経済が上下しながら近
づいていっているに過ぎない
これは本質的な経済発展を示していない
新結合
新結合は経済から自然発生的に生まれ、経済の均衡点を非連続
的に増加させる
これによって経済は本来近づくべき均衡点が上昇し、それまで
の均衡点を大きく超えて発展する

7. どうしたら新結合が起こるの？
新結合のメカニズム
・新結合は経済発展の内部から一部の才能ある企業者によって
生じる
・新結合は古いものに取って代わるのではなく、これと並んで
現れる
・新結合が起きると、模倣者が現れ経済に浸透し、経済の発展
をもたらす
新結合と銀行家
・新結合の遂行のための資金源として銀行家をあげている
・経済の内部から生じる新結合であるが、資金源として銀行家
を必要とする

8. 現在のインターネットベンチャー
日本におけるベンチャー企業の立ち位置
ビジネスリスクをとって新規事業に挑戦するベンチャー企業の創出・成長が日本
の産業構造上の閉塞感を打ち破り、イノベーションを促進し、日本経済全体の成
長と活性化を図るものと期待されている (中小企業基盤整備機構）
＝新結合の担い手としての期待
シュンペーターの経済発展の理論と照らし合わせると...
ベンチャー企業が成功することで新結合が生まれるのではなく、新結合は新興企
業としてのベンチャー企業のひとつから生まれる。
→ベンチャー企業を支援するのではなく、新結合の遂行をなし
ている企業が発展していくことのできる環境が重要

9. インターネットベンチャーの問題
企業の入り口の問題
企業者の目的 3つ → 経済上の基準や法則とは縁遠い動機
企業者の社会的地位、市民の認識
企業の成長の問題
新結合の遂行には資金源が必要
独立系VCの不在、投資残高の絶対的な不足
企業の出口の問題
バイアウトの事例の少なさ、不十分な補完的市場の整備
企業者自身の問題、新結合の遂行の後押し、模倣者の群生

10. インターネットと新結合
新結合と地域性
これまでの新結合には少なからず「地域性」が存在し、（例、蒸気機関車）
地域ごとに新結合が別のものとして遂行されていたため、
その国の中での新結合がそのまま国家経済の発展につながった
インターネットによる新結合の特徴
インターネットの新結合には「地域性」が殆ど無い
世界のある一地点で遂行された新結合は、そのまま他の国へと裾野を延ばし、
国ごとに、新結合の群生と経済発展を引き起こすことがない

11. 日本経済とインターネットベンチャー
日本における新結合
今、日本でインターネットによる新結合（＝イノベーション）とされているもの
は、ほとんど欧米で遂行された新結合の模倣である
日本のベンチャー企業の新結合がうまく成されていないのではなく、
本質的にはまだ起こっていない、と言える
仮に、日本で本質的に新結合と言えるものが遂行されようとしていてとしても、
日本ではそれを成長させる資金源も、成長を加速する市場も整備が遅れている

12. 結論
日本における新結合の可能性
日本経済発展を目指すとき、日本国内から新結合を為すことが必要である
解決策として
・代替的市場（新興市場）の整備
・資金源としての独立系VCの活性化
・高等教育機関における、経済環境に関する教育
があげられる
ベンチャー企業を含めたエコシステム
新結合のグローバル化が進み、日本が独自の新結合を切り開かなければならなく
なった今、経済において、好況、不況に対する対策や、各既存産業に対する施策
を考えるばかりではなく、「新結合の担い手」としてのベンチャー企業を中長期
的な経済発展の一部と考え、そこから新結合が生まれた時にその遂行を妨げな
い、エコシステムが必要である