⾳響情報を

ベイクする
IGDA Japan SIG-Audio#14
GDC2017 Report
⾃⼰紹介
➤ 塚越晋(つかごしすすむ)

サウンドデザイナー・コンポーザー
➤ 経歴:

1999年 株式会社セガに⼊社。主にアーケードゲームの⾳制作に携わる。

代表作:The House of the Dead3 , 4 / 三国志⼤戦シリーズ / 戦国⼤戦シリーズ /
Answer×Answer / WCCF etc…
⿃好きです
本⽇の内容
➤ セッションレポート

【“Gears of War4” Pre-computed environmental wave
acoustics】

Nikunj Raghuvanshi, John Tennant

➤ 結論を簡単に⾔うと

・Tritonとう環境⾳響ツールを作ってジオメトリを元に

 ⾳響パラメータをベイクした

・⾳響データをWwiseのパラメータに変換して

 リバーブや遮蔽を動的に制御する

・リアルすぎると「そうあって欲しい」という⾳にならないので

 デザイナーが調整する
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ 現状のゲームの⾳響と問題点

サウンドの振る舞いはより複雑になってるけど、コンピューターリソースは限られ
てる

デザイナーがクリエイティブな表現に振り分ける時間が無い

正確な⾳響シミュレーションはコスト⾼

どのようにデザインして、表現豊かに実装するか
➤ Tritonというソリューションを開発

Part1: シーンのジオメトリの正確な物理をベイク →⾳響データ

Part2: 実装とオーディオデザインの表現の実現
➤ 重要な効果
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ Obstruction :遮蔽
➤ Occlusion :閉塞
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ 重要な効果
1.obstruction(初期エネルギー)

近似⽅法は最短のルートを探ること
2.occlusion

初期エネルギー以外の⾳との合成⾳
3.Wetness ratio

初期エネルギーと反射⾳の割合
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
反射エネルギーのみ
+
Wetness ratio
初期エネルギーのみ Obstructio
n
合成エネルギー
=
Occlusion
➤ 重要な効果
1.obstruction(初期エネルギー)

近似⽅法は最短のルートを探ること
2.occlusion

初期エネルギー以外の⾳との合成⾳
3.Wetness ratio

初期エネルギーと反射⾳の割合
4.Decay rate

残響時間
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ ⾳響測定のパイプライン
材料:

3Dマップのジオメトリ

マテリアル

ナビゲーションメッシュ
・ジオメトリをヴォクセル化
・ナビゲーションメッシュを利⽤して

プレイヤープローブを⾃動配置
・それぞれのプローブに対して⾳響シミュ
レーションをしていき4つのパラメーター
を得る→知覚パラメータ
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ データをビジュアルにしてみる
⽩点から放たれた⾳を⽮印の⽅向へ

動いたら⾳の⼤きさが変化している
同じように、反射エナジー、

ディケイレートなど、

それぞれの場所でどのような

パラメータが必要なのか⾒えてくる
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ 動的な⾳源とリスナーのベイクにかかるコスト
得られたデータを知覚パラメータデータにすることで100MBに圧縮できた

100台のマシーンで約4時間

・約10-20分/プレイヤープローブ

・約1000-1500プレイヤープローブ/GEARSキャンペーンマップ

ベイクツールをXBOXとPCで⾛らせた
➤ ランタイム補完ルックアップ
それぞれのパラメータの間を補完する

平均100μ秒/クエリ

32⾳源/フレーム
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ 実装
⾳源とプレイヤーのポジションを元に
Tritonでベイクされた知覚パラメータを出
⼒

解釈を加えてWwiseのリバーブセンド、

オクルージョンのパラメーターに反映させ
る


・CPU:ルックアップに約100μs

・RAM:キャンペーンモードで約100MB

・複雑なジオメトリのレベルでも滑らかな結
果

・ジオメトリを平滑にすることもなく、

 ボリュームオートメーションも必要ない

・UEのブループリントで Tritonのデータ
を

 解釈することで表現⼒を得た
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ Part2:デザイナー側
Tritonは・・・
・リスナーと⾳源のポジションから

 知覚パラメータデータの値
・⽣データを解釈しないとだめ
・必要なRAM容量の要件は次世代
・データセットであり、

 リバーブプラグインではない
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ 実装の変移

Ver.1.0

・3種類のディケイのリバーブを⽤意、Tritonがセンドレベルを調整する

・Occlution/ObstructionはWwiseのものを利⽤する
➤ ◎Occluion /Obstructionは良かった。

◎動的な空間遷移、反応、などのコンセプトの証明には成功

×アウトドア⽤のソリューションが無い

×リバーブが重なるとうるさい

×予期せぬ動作もあった
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ Ver.2.0

12のマトリックスにして、上はインドア/アウトドアの初期反射

下はインドア/アウトドアのリバーブテイルにした。



12コンボリューションリバーブ/map

⼀つ⼀つのIRデータをキャリブレート

チューニングする必要がある

➤ ◎インドア/アウトドアの境⽬の

 ブレンドが素晴らしい

◎動的なリバーブディケイも

 反応してた

×キャリブレーションが超⾯倒

 →バグを潰すのが難しくなる
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ インドアとアウトドアの⾒分け⽅
➤ 通常ではインドア/アウトドアの2値
➤ Tritonではアウトドアネス値にした

・・・エナジーショットを⾶ばして天球に到達した⽐率
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ Ver.2.5

作戦変更
簡素化するためにver.2.5では6バスに減らした。

リバーブテイルのバスは⽌めて、初期反射+リバーブテイルバスにした
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ ゲーム⾳響の「リアル」が「あまりにリアル」なのは
どうなのだろう?・・・

という話に変わってきた。


Tritonは現実ベースの計算でデータセットができている。

だけど、全ての物理的な聴覚現象が望ましいわけではない。
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ #1.ダイナミックレンジ

Tritonのダイナミックレンジは現実世界のダイナミックレンジなので、

ゲームで使えるレンジに収めるための解釈が必要
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ #2.ドライゲイン

現実では⼩さな閉じた部屋では⾳が増幅するが、

ゲーム中でシミュレートされたものは予想外の聞こえ⽅になる・・・


 →ドライゲインのバスの上限はもともと+12dBだったが、+3dBにクランプした
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ #3.リバーブ

Tritonのシミュレーションは時に意に反する場合がある

ゲーム中では「そうあって欲しい」という要件を満たす必要がある

 →Tritonのデータを解釈するデザイナーベースのスクリプト

  (UEのブループリントノード)を製作
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ FINAL版
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ 前例のないシステムでチューニングと実験は

最⼤のリスクだった
➤ TritonがドライブするWwiseのパラメータを減らす
➤ 簡略化する
➤ 合理的なレンジに収める
➤ 現実から発想される「リアルな体験」の代わりに、

感情に動機付けされた「シネマティックな体験」にフォーカスする
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS
➤ 引⽤:スライドと講演動画
➤ GDC Vault

http://www.gdcvault.com/play/1024008/-Gears-of-War-4
➤ Nikunj Raghuvanshi⽒HP

http://www.nikunjr.com
セッションレポート:”GEARS OF WAR4”PRE-COMPUTED ENVIRONMENTAL WAVE
ACOUSTICS

SIG-Audio#14 GDC2017オーディオ報告会 「音響情報をベイクする」