SlideShare a Scribd company logo
1 of 36
”意味をデザインする”を考える
~人間中心的なデザインのアプローチ~
三菱UFJニコス様 インハウスセミナー 2022. 12. 14
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
徳田 彩
UXデザイナー
HCD-Net 認定 人間中心設計スペシャリスト
Aya Tokuda
Webマーケティング会社でSEO・Webデザイナーを経験し、その後フリー
ランスで、Web領域だけでなく、フードコーディネーターとしてケータリ
ングやカフェの立ち上げを行う。現在はネットイヤーグループにて、UX
リサーチ/UXデザイン/IA/UIデザインを担当。
社内の人間中心設計の資格取得プロジェクトを発足・活動を行う。
母子家庭の相対的貧困を研究中。第69回デザイン学会にてグッドプレゼン
テーション賞を受賞。
経歴
UXデザイン・IA・UIデザイン
ワークショップ 企画・ファシリテーション
ユーザー調査・ユーザービリティテスト
プロジェクト設計・ディレクション
実績・スキル
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
誰しもが
誰かのために
よりよい答えを探求し、創造している
01
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
デザイナーだけでなく
世の中の人はみな創造をしている
デザイナーにしか出来ない技術や経験もありますが、「誰かのため
に何かをする」小さな創作は世の中すべての人は既にやっています。
世界中の生活者や顧客はニーズと問題を抱えており、その問題を
もっと上手に解決するために、みな毎日仕事をしています。誰もが、
作り手です。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
プロダクト
サービス
コミュニティ
国の施策
地球環境
対象となる規模
対象となる人々
正解は存在しないからこそ、
常によりよい答えを探し続ける
デザインの対象は、プロダクトの範囲に留まらず、コミュニ
ティや文化のあり方、国の施策や地球規模まで広がっている。
対象となる人々が増えるほど、たくさんの価値観が存在し、
定義が難しい。対象となる「誰か」に合わせて進むべき方向
性を再定義する必要があります。
未開の地であればあるほど、正解は存在せず、常によりよい
答えを探究し続けることに、デザイナーの思考力が活きてき
ます。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
人々は人生に目的を持っている。
私たちが毎朝目覚めるのは、
世界にもっと意味のあるモノゴトを作り出すためなのである。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
顧客は
歩く、解決すべき問題か?
02
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
XXの課題解決 △△のニーズ
受け取ってくれる
人々のために
意味を問い続け
ギフトを贈る
事業開発や、モノゴトを創るとき「XXの課題解決を」「◯◯のニーズが」の視点で話
していることを、よく見かけます。ユーザー中心、人間中心と言いつつ、どこか人々
を「歩く解決すべき問題」として見ていないでしょうか。私たちが作り出したものを
受け取ってくれる人々、提供する製品やサービスを大切にしてくれる人々のために、意
味を問い続け、ギフトを贈る気持ちを忘れてはいけません。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
HOW(解決手段)の前に
WHY(意味)を熟慮する
03
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
正解のコモディティ化
世の中はどんどん便利になり、手段は標準化され、正解が溢れている。
一方、取り組むべき「問い」は見つけづらくなっている。
問題を捉え直し、再定義する
それが、人々にとって価値のあるアイデアになる
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
行動文脈や深層心理から
人々の欲求の意味を探索する
• 人々の観察
• 背景・要因
• 文化や時代の流れ
明らかにしたい問いを立て
欲求の意味を考える
人々の根幹の不安は何か?
本質的には何を求めているか?
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
重要なことは、正しい答えを見つけることではない。
正しい問いを探すことである。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
どうやって
意味をデザインするのか?
04
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
頭の中の物差しを捨てる
虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う
様々な角度から仮説推論で考える
人々を観察し
その事象を色んな角度で解釈する
内在している問題
の発見
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
頭の中の物差しを捨てる
内在している問題を発見するには?
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
頭の中の物差しを捨てる
虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う
様々な角度から仮説推論で考える
人々を観察し
その事象を色んな角度で解釈する
内在している問題
の発見
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う
多角的に眺める 全体を俯瞰する 背景や文脈から考える
内在している問題を発見するには?
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
特定の枠組みの中で問題を特定する場合
新規事業を考える・未解決な領域を開拓していく場合
問題提起の仕方から視界が狭くなってしまう
ケースがある
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
ユーザーにとっての
一連の体験の中から問題を特定していく
ユーザーがサービスを認知する段階から、利用後、
また思い出すまでが一連の流れ
インタビュー、行動記録など
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
デバイスなどの領域を狭めず、
大きな抽象度で人々の課題を捉える
様々な統計データや、時事情報、社会問題などから
要因を繋いでいく
人類学で使われるエスノグラフィー調査など
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
人々を観察し
その事象を色んな角度で解釈する
内在している問題
の発見
頭の中の物差しを捨てる
虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う
様々な角度から仮説推論で考える
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
様々な角度から仮説推論から問題を捉える
Abduction
人々に起きている背景や文脈
コンテクスト メタファー
比喩的に捉える
リフレーム
別の枠組みで考え直す
「見方を創る」ことがアイデアの発散につながる
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
意味の再形成する
ReFreame → Vision
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
デザイン思考 アート思考
問題発見 何を提供すべきか
In Side – Out Side
Out Side – In Side
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
人々の価値観や生活背景などを知り、
共感し(同感ではなく共感!)
いろんな角度から解釈をし、
その本質を違う枠組みで伝える。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
iPodは
1000曲の音楽がはいったトランプセット
• 1000曲を「iPod」にではなく、「ポケット」に
• USB MP3機器よりも「4時間50分早いではなく」、
「30倍」早い。
• 10時間バッテリー しかも1時間で80%充電
• FireWireケーブル 1本ですべてが完結 「転送と電源
のどちらも対応」
• iPodはトランプ ひと組のサイズです。
• 「1000曲の音楽がはいったトランプセット」
• そして、実際に「ポケット」から登場させる
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
良いデザインは
利用者に◯◯を与えない
05
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
月末になるとお金がなく貯金もできない
という課題があったら、あなたはどう問いかけますか?
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
家計簿アプリを使って
毎月の収支を把握してみたら?
まずは、この先どのくらい貯金
すべきかライフステージから考
えてみたら?
あなたの人生で一番譲れない
ことは何?
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
家計簿アプリを使って
毎月の収支を把握してみたら?
本質の問題は解決されない
ソリューションから考えてしまう
本質の問題が、いつ・どのくらい必要か分からず、
不安な事ではないか?だった場合、本質の問題が解決さ
れていないので、価値がないものになってしまいます。
手段を提示する前に、何が根本の問題なのか深く探る必
要があります。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
まずは、この先どのくらい貯金
すべきかライフステージから考
えてみたら?
押し付けがましく感じてしまう
正解(正論)をそのまま提示する
ユーザーの事象や課題に対して、解決策をそのまま提
示しても、ユーザー自ら問題に気付くように態度変容
を促すようにしないといけません。
自ら大事さに気付いてないので、恩着せがましく感じ
てしまう。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
あなたの人生で一番譲れないこ
とは何?
自然と態度変容し
自らアクションを起こしたと感じる
疑問を誘発する
ステージ/リテラシーに合わせたコミュニケーションで
自ら疑問を抱かせるようにします。ユーザーが疑問を
抱き、自らアクションを起こしたと認識することが大
事。自然と自分が変わっていき、人生が豊かになった
と感じる。そのきっかけとなった、オーナーへの感謝
にもつながります。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
正解を与えるのではなく
疑問を誘発し、行動を促す
デザインは「正解」を導くことではなく、「疑問
を誘発する」こと。
ユーザーは正解に誘導されると恩着せがましく感
じてしまう。
重要なのは、ユーザーが「自ら疑問を抱き、自ら
アクションを起こした」と認識すること。
デザインするとは、「新しい私の発見」により、
新たな意欲と行動を生み出すことが目的。
いつの間にか自然と態度変容した時に
人は喜び、オーナーへと感謝に繋がる。
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
人間中心にデザインするには、「誰かのために」ギフトを贈るということを忘れない
創造はデザイナーだけではない、いつも自分たちは創造していると自認する
解決手段の前に、今起きていることを色んな角度から解釈し仮説を立てる
問題の本質から、既存の枠を外して求めていることを捉え直す
外で起きている事象から、自分の問題として共感し、
何を提供できれば良いかの情熱を生み出す
良いデザインとは、ユーザーに正解を与えず、
問いを考えさせる
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
皆が自分の問題として捉え向き合ったときに
そのサービスは、「誰かが作った」のではなく
「皆で共創した」という状態が生まれる
© Netyear Group Corporation. All Rights Reserved.
今日の話が、何かの行動の変化に繋がったら幸いです
THANK YOU

More Related Content

Similar to 意味をデザインするを考える

Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?
Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?
Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?Kazumi Miyamura
 
エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)
エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)
エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)Katsumi Tazuke
 
Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927
Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927
Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927英明 伊藤
 
事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナー
事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナー事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナー
事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナーMikihiro Fujii
 
UXデザインをゆるく学ぶ意味
UXデザインをゆるく学ぶ意味UXデザインをゆるく学ぶ意味
UXデザインをゆるく学ぶ意味Tatsuya_Yokoyama
 
チャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージング
チャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージングチャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージング
チャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージングAzumi Wada
 
エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-
エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-
エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-Yuichi Inobori
 
ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方
ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方
ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方Tomoko Nishina
 
ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)
ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)
ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)Kazumichi (Mario) Sakata
 
グッドパッチのデザインカルチャーの作り方
グッドパッチのデザインカルチャーの作り方グッドパッチのデザインカルチャーの作り方
グッドパッチのデザインカルチャーの作り方Satoru MURAKOSHI
 
〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜
〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜
〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜真一 藤川
 
定性調査のポイント
定性調査のポイント定性調査のポイント
定性調査のポイントFumito Sato
 
[Presentation]hc dsaloninkyoto2016
[Presentation]hc dsaloninkyoto2016[Presentation]hc dsaloninkyoto2016
[Presentation]hc dsaloninkyoto2016Yuichi Inobori
 
グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301
グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301
グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301Azumi Wada
 
PMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチ
PMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチPMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチ
PMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチJunNomura1
 
身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi Sayuda
身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi Sayuda身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi Sayuda
身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi SayudaTomomi Sayuda
 
[UX]は投げ捨てろ!
[UX]は投げ捨てろ![UX]は投げ捨てろ!
[UX]は投げ捨てろ!c-mitsuba
 
立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8
立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8
立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8Koji Aihara
 
[Uxtokyojam]2014 final public
[Uxtokyojam]2014 final public[Uxtokyojam]2014 final public
[Uxtokyojam]2014 final publicYuichi Inobori
 

Similar to 意味をデザインするを考える (20)

Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?
Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?
Think User : UXデザインにおけるユーザー設計とは?
 
エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)
エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)
エンジニアのためのUser Centered Designの考え方(入門編)
 
Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927
Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927
Uxデザイナーがpoとして開発チームと”握る”ためにやっていること 170927
 
事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナー
事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナー事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナー
事業での実践としてのUXデザイン @ 『UXデザインの教科書』出版記念セミナー
 
UXデザインをゆるく学ぶ意味
UXデザインをゆるく学ぶ意味UXデザインをゆるく学ぶ意味
UXデザインをゆるく学ぶ意味
 
チャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージング
チャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージングチャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージング
チャレンジ!グラフィックレコーディング2016 ~描くことで見える世界を拡げよう!~ オープニング&クロージング
 
エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-
エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-
エクスペリエンスデザインによる価値創出- how to reframe the value by UX design-
 
ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方
ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方
ChatworkのUXリサーチと プロダクトへの生かし方
 
ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)
ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)
ユーザエクスペリエンス・デザイン・ガイド(User Experience Design Guide)
 
グッドパッチのデザインカルチャーの作り方
グッドパッチのデザインカルチャーの作り方グッドパッチのデザインカルチャーの作り方
グッドパッチのデザインカルチャーの作り方
 
20150806_UXnama_Goodpatch
20150806_UXnama_Goodpatch20150806_UXnama_Goodpatch
20150806_UXnama_Goodpatch
 
〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜
〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜
〜100万人から教わったウェブサービスの極意〜
 
定性調査のポイント
定性調査のポイント定性調査のポイント
定性調査のポイント
 
[Presentation]hc dsaloninkyoto2016
[Presentation]hc dsaloninkyoto2016[Presentation]hc dsaloninkyoto2016
[Presentation]hc dsaloninkyoto2016
 
グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301
グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301
グラフィックレコーディングをやってみよう!ワークショップ資料 150301
 
PMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチ
PMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチPMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチ
PMと並走してプロダクトにつなげるUXリサーチ
 
身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi Sayuda
身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi Sayuda身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi Sayuda
身体性から考える 未来のビジョンデザイン 左右田智美 / Embodiment Vision -Design Tomomi Sayuda
 
[UX]は投げ捨てろ!
[UX]は投げ捨てろ![UX]は投げ捨てろ!
[UX]は投げ捨てろ!
 
立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8
立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8
立ち上げ期のSaaSで大事にしている「UX」- UX Bridge vol.8
 
[Uxtokyojam]2014 final public
[Uxtokyojam]2014 final public[Uxtokyojam]2014 final public
[Uxtokyojam]2014 final public
 

意味をデザインするを考える

  • 2. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 徳田 彩 UXデザイナー HCD-Net 認定 人間中心設計スペシャリスト Aya Tokuda Webマーケティング会社でSEO・Webデザイナーを経験し、その後フリー ランスで、Web領域だけでなく、フードコーディネーターとしてケータリ ングやカフェの立ち上げを行う。現在はネットイヤーグループにて、UX リサーチ/UXデザイン/IA/UIデザインを担当。 社内の人間中心設計の資格取得プロジェクトを発足・活動を行う。 母子家庭の相対的貧困を研究中。第69回デザイン学会にてグッドプレゼン テーション賞を受賞。 経歴 UXデザイン・IA・UIデザイン ワークショップ 企画・ファシリテーション ユーザー調査・ユーザービリティテスト プロジェクト設計・ディレクション 実績・スキル
  • 3. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 誰しもが 誰かのために よりよい答えを探求し、創造している 01
  • 4. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. デザイナーだけでなく 世の中の人はみな創造をしている デザイナーにしか出来ない技術や経験もありますが、「誰かのため に何かをする」小さな創作は世の中すべての人は既にやっています。 世界中の生活者や顧客はニーズと問題を抱えており、その問題を もっと上手に解決するために、みな毎日仕事をしています。誰もが、 作り手です。
  • 5. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. プロダクト サービス コミュニティ 国の施策 地球環境 対象となる規模 対象となる人々 正解は存在しないからこそ、 常によりよい答えを探し続ける デザインの対象は、プロダクトの範囲に留まらず、コミュニ ティや文化のあり方、国の施策や地球規模まで広がっている。 対象となる人々が増えるほど、たくさんの価値観が存在し、 定義が難しい。対象となる「誰か」に合わせて進むべき方向 性を再定義する必要があります。 未開の地であればあるほど、正解は存在せず、常によりよい 答えを探究し続けることに、デザイナーの思考力が活きてき ます。
  • 6. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 人々は人生に目的を持っている。 私たちが毎朝目覚めるのは、 世界にもっと意味のあるモノゴトを作り出すためなのである。
  • 7. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 顧客は 歩く、解決すべき問題か? 02
  • 8. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. XXの課題解決 △△のニーズ 受け取ってくれる 人々のために 意味を問い続け ギフトを贈る 事業開発や、モノゴトを創るとき「XXの課題解決を」「◯◯のニーズが」の視点で話 していることを、よく見かけます。ユーザー中心、人間中心と言いつつ、どこか人々 を「歩く解決すべき問題」として見ていないでしょうか。私たちが作り出したものを 受け取ってくれる人々、提供する製品やサービスを大切にしてくれる人々のために、意 味を問い続け、ギフトを贈る気持ちを忘れてはいけません。
  • 9. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. HOW(解決手段)の前に WHY(意味)を熟慮する 03
  • 10. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 正解のコモディティ化 世の中はどんどん便利になり、手段は標準化され、正解が溢れている。 一方、取り組むべき「問い」は見つけづらくなっている。 問題を捉え直し、再定義する それが、人々にとって価値のあるアイデアになる
  • 11. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 行動文脈や深層心理から 人々の欲求の意味を探索する • 人々の観察 • 背景・要因 • 文化や時代の流れ 明らかにしたい問いを立て 欲求の意味を考える 人々の根幹の不安は何か? 本質的には何を求めているか?
  • 12. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 重要なことは、正しい答えを見つけることではない。 正しい問いを探すことである。
  • 13. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. どうやって 意味をデザインするのか? 04
  • 14. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 頭の中の物差しを捨てる 虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う 様々な角度から仮説推論で考える 人々を観察し その事象を色んな角度で解釈する 内在している問題 の発見
  • 15. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 頭の中の物差しを捨てる 内在している問題を発見するには?
  • 16. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 頭の中の物差しを捨てる 虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う 様々な角度から仮説推論で考える 人々を観察し その事象を色んな角度で解釈する 内在している問題 の発見
  • 17. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う 多角的に眺める 全体を俯瞰する 背景や文脈から考える 内在している問題を発見するには?
  • 18. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 特定の枠組みの中で問題を特定する場合 新規事業を考える・未解決な領域を開拓していく場合 問題提起の仕方から視界が狭くなってしまう ケースがある
  • 19. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. ユーザーにとっての 一連の体験の中から問題を特定していく ユーザーがサービスを認知する段階から、利用後、 また思い出すまでが一連の流れ インタビュー、行動記録など
  • 20. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. デバイスなどの領域を狭めず、 大きな抽象度で人々の課題を捉える 様々な統計データや、時事情報、社会問題などから 要因を繋いでいく 人類学で使われるエスノグラフィー調査など
  • 21. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 人々を観察し その事象を色んな角度で解釈する 内在している問題 の発見 頭の中の物差しを捨てる 虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う 様々な角度から仮説推論で考える
  • 22. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 様々な角度から仮説推論から問題を捉える Abduction 人々に起きている背景や文脈 コンテクスト メタファー 比喩的に捉える リフレーム 別の枠組みで考え直す 「見方を創る」ことがアイデアの発散につながる
  • 23. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 意味の再形成する ReFreame → Vision
  • 24. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. デザイン思考 アート思考 問題発見 何を提供すべきか In Side – Out Side Out Side – In Side
  • 25. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 人々の価値観や生活背景などを知り、 共感し(同感ではなく共感!) いろんな角度から解釈をし、 その本質を違う枠組みで伝える。
  • 26. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. iPodは 1000曲の音楽がはいったトランプセット • 1000曲を「iPod」にではなく、「ポケット」に • USB MP3機器よりも「4時間50分早いではなく」、 「30倍」早い。 • 10時間バッテリー しかも1時間で80%充電 • FireWireケーブル 1本ですべてが完結 「転送と電源 のどちらも対応」 • iPodはトランプ ひと組のサイズです。 • 「1000曲の音楽がはいったトランプセット」 • そして、実際に「ポケット」から登場させる
  • 27. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 良いデザインは 利用者に◯◯を与えない 05
  • 28. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 月末になるとお金がなく貯金もできない という課題があったら、あなたはどう問いかけますか?
  • 29. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 家計簿アプリを使って 毎月の収支を把握してみたら? まずは、この先どのくらい貯金 すべきかライフステージから考 えてみたら? あなたの人生で一番譲れない ことは何?
  • 30. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 家計簿アプリを使って 毎月の収支を把握してみたら? 本質の問題は解決されない ソリューションから考えてしまう 本質の問題が、いつ・どのくらい必要か分からず、 不安な事ではないか?だった場合、本質の問題が解決さ れていないので、価値がないものになってしまいます。 手段を提示する前に、何が根本の問題なのか深く探る必 要があります。
  • 31. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. まずは、この先どのくらい貯金 すべきかライフステージから考 えてみたら? 押し付けがましく感じてしまう 正解(正論)をそのまま提示する ユーザーの事象や課題に対して、解決策をそのまま提 示しても、ユーザー自ら問題に気付くように態度変容 を促すようにしないといけません。 自ら大事さに気付いてないので、恩着せがましく感じ てしまう。
  • 32. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. あなたの人生で一番譲れないこ とは何? 自然と態度変容し 自らアクションを起こしたと感じる 疑問を誘発する ステージ/リテラシーに合わせたコミュニケーションで 自ら疑問を抱かせるようにします。ユーザーが疑問を 抱き、自らアクションを起こしたと認識することが大 事。自然と自分が変わっていき、人生が豊かになった と感じる。そのきっかけとなった、オーナーへの感謝 にもつながります。
  • 33. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 正解を与えるのではなく 疑問を誘発し、行動を促す デザインは「正解」を導くことではなく、「疑問 を誘発する」こと。 ユーザーは正解に誘導されると恩着せがましく感 じてしまう。 重要なのは、ユーザーが「自ら疑問を抱き、自ら アクションを起こした」と認識すること。 デザインするとは、「新しい私の発見」により、 新たな意欲と行動を生み出すことが目的。 いつの間にか自然と態度変容した時に 人は喜び、オーナーへと感謝に繋がる。
  • 34. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 人間中心にデザインするには、「誰かのために」ギフトを贈るということを忘れない 創造はデザイナーだけではない、いつも自分たちは創造していると自認する 解決手段の前に、今起きていることを色んな角度から解釈し仮説を立てる 問題の本質から、既存の枠を外して求めていることを捉え直す 外で起きている事象から、自分の問題として共感し、 何を提供できれば良いかの情熱を生み出す 良いデザインとは、ユーザーに正解を与えず、 問いを考えさせる
  • 35. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 皆が自分の問題として捉え向き合ったときに そのサービスは、「誰かが作った」のではなく 「皆で共創した」という状態が生まれる
  • 36. © Netyear Group Corporation. All Rights Reserved. 今日の話が、何かの行動の変化に繋がったら幸いです THANK YOU

Editor's Notes

  1. では、 「意味をデザインする」を考えるについてお話しさせていただくのですが みなさん「意味をデザインする」ってどうゆうこと?と思ったかもしれません。 よく「ユーザー中心」とか「UX」など どこの企業でも、ユーザーのエクスペリエンスを重視されてきていますので 今日はそのプロセスとか、手法などを 日々の業務の中で活用いただけるようなことを、お話ししようと思ったのですが プロセスや手法よりも、その土台となる 日々、サービスやプロダクトを届ける、私たちが様々な問題とどう向き合っていくのか? そういったについて考えていけたらと思い 「意味をデザインする」を考える というテーマにしました。
  2. 話の途中で疑問が沸いたり、感想や共感があれば、いつでもチャットに送ってください。 なんならお試しに、「テスト」と打っても大丈夫ですよ! そんな感じで気楽にご活用くださいね。 急に名指しで拾ったりしないので、遠慮せずコミュニケーションしていきましょう。 今日の本題に入る前に最初にちょっと わたしがどんな人間なのか?どんな仕事をしているのかをお伝えさせてください。 現在ネットイヤーグループで、UXデザイナーとして、日々クライアント企業のサービスやプロダクトのエクスペリエンスを考えています。 プロジェクト計画から、ユーザーへのリサーチ、現状の問題の設定から、どうなったらいいのかを考え、企画していきます。 実際に設計やビジュアルに落とし込む場合もありますし、 元々のキャリアはWebやパーティなどのデザインを行っていました。 デザインの領域は変化していきましたが、 わたしは常々、今やってることは、誰かのためになっているだろうか? 意味があることか? ということを考えてきました。 今日は、そんな「誰かのために意味のあるものを」と考えてきた話をお伝えしていけたらと思います。
  3. 具体的なお話の前に、 皆さんも含めた、私たち、サービスを人々へ与える人間としての姿勢について、触れていきたいと思います。 わたしは今日、UXデザイナーという立場でここでお話しさせていただいています。 デザイナーという立場から、クライアントのサービスやプロダクトの問題解決をしていますが。 何かを解決策を生み出すのは、デザイナーだけの特殊技能ではありません。
  4. 人々の問題と向き合う皆さんすべてが、毎日何かしら誰かのために、創造をしています。 この役割は、デザイナーだけのもではなく、 ・自分にもできる ・自分たちは日々創造をしているのだと 自己認識していただきたいと思っています。 企画関連や、コールセンターの方々は、toCのユーザーへアプローチされていると思いますので、実感しやすいかもしれません。 推進、営業事務の方々は、おそらくBtoBの領域で業務を担われている方が多いのかと思いますが、 対象の「人々」が、toCの生活者でなかったとしても、「誰かのために何かをする」という行為は同じはずです。 そのために、みんな、毎日何かしら誰かのために、考え、工夫をしています。 どうすれば、より良くなるようにアイデアが出せるか?というのは、 デザイナーにしか出来ないわけではありません。
  5. そして、誰かのために、より良い答えを探求する この、他者への貢献というのは、「誰かのため」というわかりやすいギフトです。 今日、デザインの対象はさらに広がり、コミュニティや文化のあり方、国の施策や地球環境に至るまでアプローチしている。 沢山の人がいるということは、沢山の価値観があるということ。つまり何がその人にとって正しいのかは、非常に定義しにくくなっている。 デザインの対象となる「誰か」が変われば、あるいは社会状況や周囲を取り巻く関係性が変化すれば、必ず進むべき方向性の再定義から始めなければならない。 そこには絶対の正解は存在せず、常によりよい解を探究し続けることに、デザイナーの思考が活きてきます。 でも、そうは言っても、毎朝暖かいベッドから抜け出して、仕事に向かうにには、強い理由が必要ですよね?
  6. 私たちは日々「問題解決」について考えています。 でも、私たちがなぜ働き、なぜ他者のためにモノゴトを供給し、なぜイノベーションを起こさねばならないのか これは、ミラノ工科大学のロベルト・ベルガンディ教授の言葉ですが 世界には大きなことから小さなことまで、たくさんの問題が溢れていますが 毎朝暖かいベッドから抜け出すには、強い理由が必要です。 彼は、その理由を「意味を見つけるためだ」と言います。 私たちは、人生の長い時間を仕事に費やします。 その目的はより良く暮らすためにお金を稼ぐことでしょうか? 会社に貢献して評価を得るためでしょうか? 私たちは、「ニーズ」ではなく「目的」によって突き動かされています。 意味のあるモノゴトを作る出すために、私たちは毎朝目覚めている、ということなんです。
  7. そして、私たちの目的は、意味のある物事を作り出すことですが それを届けるユーザーについて、みなさんにはどう写っていますか? 事業開発や、モノゴトを創るとき「XXの課題解決を」「◯◯のニーズが」の視点で話しているのをよく耳にします。 ユーザー中心や人間中心と言いつつ、どこか顧客を「歩く解決すべき問題」と見ていませんか?
  8. 私たちが作り出したものを受け取ってくれる人々、 提供する製品やサービスを大切にしてくれる人々のために、 意味を問い続け、ギフトを贈る。 私たちも、子供たちも、問題やニーズを持って生まれてきたわけではないですよね? 今みなさんは、 決済サービスを通じて、人々の「生活を豊かにする」、というのをビジョンに、人々へサービスを提供していらっしゃると思います。 その価値が、ギフトになっているはずです。 その気持ちをまずは、大事にしていくことが必要だと考えています。
  9. そして、これも仕事をする上でよくあるのが 解決手段から考えてしまう、ということです。 人々にとって、本当に価値のある、意味のあるものは 一足飛びに出てきません。 意味をデザインすることが重要なのにも関わらず、 立ち止まって問い直すことがとても少ないと感じています。
  10. 私たちが今生きている社会は、とても便利になりましたよね? ですが、便利になったことにより、手段は標準化され、正解がコモディティ化されている。 正解が溢れる一方、本当に取り組むべき「問い」が何なのか、見つけづらくなってしまっている。 日々の仕事の中では、新しい商品・サービスの開発や事業開発、運用の改善などさまざまなシーンで多様な問題に向き合う。 「どのように新しい○○をつくるか?」「どのように○○を変更するか?」。そのような問題に、真っ正面から答えようとしていないか? 改めて、根本の問題はなんなのか?を捉え直し、再定義することが、人々にとって価値のアイデアに繋がります。
  11. 問題を再定義するには、人々を知る必要がある。 しかし、現状の「プロダクトで出来ること」からの理想的な答えは、人々(利用者)は、持っていない。 そのため、顕在化している課題解決では、根本的な問題は解決されない。 解決手段の前に、前提となる疑問を考える必要ある。 人々の根幹の不安は何か? 本質的には何を求めているか? 人々が本当に実現したい理想がなんなのか。 明らかにしたい問いを立て、欲求の意味を考える。
  12. みなさんもピーター・ドラッカー のこの名言はご存知ですよね? 重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである 間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない。 これに対して、アメリカのカリフォルニア大学 デビッド・ティース教授も 「解明するには時間がかかる。簡単にできることなら、とっくに誰かが解明しているはずだ。」と言っています。 やり方を変えるのではなく、やることを変えろという話です
  13. 前置きが長くなりましたが、 では、どうやって意味をデザインしていくのか?
  14. 先ほど、 問題を再定義するには、人々を知る必要がある。 しかし、現状の「プロダクトで出来ること」からの理想的な答えは、人々(利用者)は、持っていない。 と、お伝えしました。 問題を再定義するには、まず、人々の内在している問題を発見しなければなりません。 そのためには、 ・頭の中の物差しを捨てる ・虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う ・様々な角度から仮説推論で考える という3つのことが必要です。
  15. 内在している問題を発見するには、 ・人々を観察すること ・そしてその事象を色んな角度で解釈する必要があります。 そのためには、自分の常識「モノサシ」を捨ててください。 人は頭の中に「モノサシ」を自然と作って、そのモノサシの中でしか捉えられません。 既存のモノサシを捨てる そのためには、他社の意見をたくさん受け止め、たくさんの仮説を作る
  16. 次に、虫の目・鳥の目・魚の目で問題提起を行う
  17. 人々を理解する上では「解像度をあげる」必要があります。 頭の物差しを捨てバイアスを取った後、様々な観点から問題を見る必要があるからです。 根本を探るために、深く探り、広く原因を把握しなければならないんです。 異なるアプローチや視点を幅広く検討することで、元々考えていた仮説とは別のところにある原因や可能性に気づくこともあります。 多角的に眺める虫の目:現場に直接行き、情報を仕入れ、多面的に理解する 全体を俯瞰する鳥の目:近視眼的にならず、一度距離をおいて、業界や文化など大きな枠から見直す 背景や文脈から考える魚の目:時代の流れというより、人々に起きている問題の背景や行動文脈を把握する 例えば、「デジタル化の波に乗って、もっとキャッシュレスを浸透させていかなければならない」という課題があったとします。 浸透しない課題を考えたときに、 キャッシュレスの取扱店舗が少ないのかもしれませんし、 使いづらいのかもしれませんし 現金主義者は、デジタル上の「お金」が怖いのかもしれませんし そうしたキャッシュレス自体の課題から原因を深堀していくことが通常だと思います。 しかし、もっと広い視野で考えてみるとどうでしょうか? 私たちは文化人類学で使われる、エスノグラフィー という調査で生活者を観察したりします、 例えば、数十年その領域で活躍してきた専門家はすでに十分な深さの視点を身につけているので話を聞いたりも有効です。 Intelなどのアメリカの企業では、実際に人類学者が、顧客の無意識の動機を解明しながら、未来形成に貢献しています。
  18. この問題の発見の時に 特定の枠組みの中(例えば、サイト・アプリ・カスタマーセンターとか)で、問題を特定する場合に 視野が狭くなってしまうケースがあります。
  19. そんな時は ユーザー利用・領域など、それぞれ分けて考えず、ユーザーにとっての一連の体験の中から問題を特定していくと良いです。 ユーザーがサービスを認知する段階から、利用後、また思い出すまでが一連の流れです。 インタビュー、行動記録などが役に立つと思います。
  20. また、新規事業を考える・未解決な領域を開拓していく場合です。 デバイスなどの領域を狭めず、大きな抽象度(お金とか)で人々の課題を捉えていきましょう 様々な統計データや、時事情報、社会問題などから関連要因を繋いでいくことが大事です ここでは、広く捉える必要があるので、人類学で使われるエスノグラフィー調査などが役に立ちます。
  21. 内在している問題の発見の3つ目 捉えた事象を、様々な角度から仮説推論で考える、ということです。
  22. デザイナーは仮説推論から問題を捉えます。 論理的思考でよく聞くのが「帰納法」と「演繹法」。仮説推論とは、仮説を立て、わからないことを理解するために、推論することです。 多様な価値観やニーズ・要因が絡み合う「厄介な問題」には、何を正しいとするのか 前提そのものが複雑に絡みあってしまい、帰納法・演繹法では解くことが難しい。 しかし、観察された事実にし対して、様々な仮説を投げかけ、様々な角度でその事実を捉えようとすることで、解決の糸口を見出す。 多様な見方をメタ的に捉えることで、新しい問題を発見したり、アイデアを発散させる。 (アイデアの発散とは、単にアイデアを100出せば見つかるだろうというものではない) メタファー:直接的な言語の言い換えの「比喩」ではなく、物事の本質をイメージさせる「隠喩」がメタファー。落語における「~とかけまして…と解く。その心は○○」概念がそれに近い。その心は、というのが共通の本質部分。 メタファーとリフレームについては、後ほど、事例を紹介しますが、 その前に意味を作り直すことについて、お話しします
  23. 内在する問題を発見したら、次はその存在の意味を再形成する。 捉え直した問題の本質の部分から、どうあれば良いか?と「存在」を問い直すことです 冒頭で、私たちが、毎朝暖かいベッドから抜け出すには、強い目的が必要だとお話ししました。 これはつまり「ビジョン」のことです。 その強い目的やビジョンは、ただ過ごしていたら生まれませんよね?
  24. 先ほど、佐々木からデザイン思考の話をしたので、デザイン思考がなんなのかはお分かりかと思います。 わたしは、問題発見までをデザイン思考、その先の「何を提供するべきか」はアート思考で行うのが良いと考えています。 問題発見までをデザイン思考 「元々外にあった人々の問題を自分に取り込む」ということ。 デザイン思考は、外を観察して得た情報から問題を発見する、内に取り込んでいく「アウトサイドイン」というプロセス。 デザイン思考は、「解決手段を創造的に行う」ことを提唱しているが、そこが難しいんじゃないか 必要なのは、元々自分に持ってなかった課題を、観察して自分ごと化することで、「自分の問題として共感し、どうあったらいいかを考える」ということ その先の「何を提供するべきか」はアート思考で  「自分の中にある問題提起を、人々に発信する」 アート思考は逆に、内から外へ向かう「インサイドアウト」。今度は、自分の問題として捉えた、ユーザーの問題を、外にアウトプットする。 作り手が世の中に提供したい、自分が欲しいものなど、使命感や情熱があるか どうかそのエネルギーが必要で、強い気持ちがないと続かない。 イノベーションには使命感や情熱が必要になる。 IDEOのデザイン思考は、自分たちの外側にいるユーザーを見つめ、課題解決をする Appleのスティーブ・ジョブズは、自分の中にある問題を、ビジョン化し、外に出した。 どちらが良い悪いではない。 ただ1つ言いたいのは、日本でもデザイン思考を取り入れようと多くの企業で掲げられてきましたが、それによってイノベーションは起きていませんよね? デザイン思考が悪いわけではなく、それを方法論やフレームワークとして手順に沿って穴埋めすれば良いと考えてしまっていることが悪いのです。
  25. つまり、何が言いたいかと言うと まずは、人々の価値観や生活背景などを知り、共感し(同感ではなく共感!)、いろんな角度から見て、解像度を広く深く構造化し、捉えた本質を違う枠組みで伝える。 そこからスタートするんです。 日本人は、同感したり、同調したりが得意ですが、(シンパシー)、そうではなく役になり切るように共感(エンパシー)が大事。 ここは掘り下げると時間がいくらあっても足りないので、またいつか。
  26. さて、まだピンときていない方に少し事例をご紹介します。 アップルは、アマゾンやフェイスブック(Facebook)などのようにミッションを明示していません。 しかし、ブランド観は明確です。広告では「リードする」「再定義する」「革命を起こす」といったメッセージを打ち出し、アップルが目指す世界観を表現しています。 また、テレビCMで使われた「Think different.(違う視点で考える)」「Your Verse(あなたの詩=あなたらしく生きる)」などのフレーズが印象に残っているという方も多いと思います。 彼が伝えたいコアのメッセージが、ソリューションに散りばめられているからこそ、人々は魅了されています。 先ほどの、メタファーとして捉え、リフレームするやり方として、iPodのプレゼンでイメージしてみてください。 iPodの登場時、iPodは「1000曲の音楽がはいったトランプセット」だと、スティーブ・ジョブズはレトリック的な表現をしました。 「音楽を携帯し、気軽に楽しむ」という文化や新しい価値をトランプで表現しています。 もちろん、SONYのウォークマンの話や、音楽レーベルとのライセンスを独自に構築した背景もありますが、 ここでは企業が成し遂げたい事、そしてそれをどうメッセージとして届けるか?について紹介したいと思いました。 ------------------ 日本ではSONYのウォークマンが成功しました。「音楽を携帯し、気軽に楽しむ」という文化や新しい価値を、SONYが最初に創造したのですが、 ソニーとAppleの違いは ・SONYは「技術力の勝利」だと捉えてしまった ・音楽レーベルに配慮しすぎてライセンスに厳格でありすぎた ・コンテンツとハードウエアでセクションが分断化され、部門ごとに利益を意識するカンパニー制を採用していた ・そのため、全体最適を考えられなかった 日本の企業には多く見られる課題なんだと思います。
  27. 最後に、良いデザインについて少しだけお話しします。 問題を発見し、意味を変えても、良いデザインを行わないと利用されない状態が生まれてしまいます。
  28. さて、みなさん人生の中で、「月末になるとお金がない、貯金ができない」と不安を抱いたことはありませんか? 今回お聞きになってるみなさんは金融リテラシーが高いでしょうし、管理をしっかりされてそうなのでないかもしれません。 ただ、世の中の多くの人はよく感じる課題です。
  29. あなたなら、困っている友人や子どもにどれを問いかけますか? 「月末になるとお金がなく貯金もできない」という問題に対して、あなたならどう問いかけますか? 3つから選んでみてください。 家計簿アプリを使って毎月の収支を把握してみるように勧める まずは今のライフステージから、この先どのくらい貯金すべきか考えてもらう あなたの人生で一番譲れないことは何?
  30. では、わたしが考える問いの解説をしてみます。
  31. 一見これでも良さそうですが 本質の問題はここではないか?と仮説立てて解決策を提示した場合、 ユーザーの事象や課題に対して、解決策をそのまま提示しても、ユーザー自ら問題に気付くように態度変容を促すようにしないと ユーザーは自ら大事さに気付いてないので、正解を提示されても、恩着せがましく感じてしまう。 (両親からあれしなさい、これしなさい、と言われているのを思い出してみてください)
  32. ③疑問を誘発する ではどうするか?これはあくまでも例なので、この問いかけが正しいわけではありません。 例えば、先ほどのように「本質の問題が、いつ・どのくらい必要か分からず、不安な事ではないか?だった場合」 ファイナンシャルデザインの考え方では、ライフステージや金融リテラシーに合わせたコミュニケーションが必要です。 しかし、先ほどのようにそのまま投げかけては口うるさい親のようになってしまいます。 そのため、自ら疑問を抱かせ、「自分は今、どんな状態なのか?どうなったらいいか?」と ユーザーが疑問を抱き、自らアクションを起こしたと認識することが大事です。(教育やマネジメントの考え方に近い) それは、自然とユーザー自身が変わっていき、人生が豊かになったと感じる。そして、そのきっかけとなった、オーナーへの感謝にもつながります。
  33. ここまでお話ししたことを振り返ります。 人間中心にデザインするには、「誰かのために」ギフトを贈るということを忘れない 創造はデザイナーだけではない、自分たちはいつも創造をしていると自認する 解決手段の前に、今起きていることを色んな角度から解釈し仮説を立てる 問題の本質から、既存の枠を外して求めていることを捉え直す 外で起きている事象から、自分の問題として共感し、何を提供できれば良いかの情熱を生み出す 良いデザインとは、ユーザーに正解を与えず、問いを考えさせる
  34. 最後にお伝えしたいのは、デザインは、デザイナーだけが作るものではありません。 そして、自分たちの仕事は誰の何のためなのかの目的を忘れず、お互いが対話を繰り返し、モノゴトを一緒に作っていく必要があります。 そうして、みんなが、その「誰か」の問題を、自分の問題として捉え、向き合ったときに そのサービスは、プロダクトオーナーやデザイナーなど「誰かが作った」のではなく、 自分も含めて「皆で作った」と実感できる状態が生まれると思います。 わたしは、それが土台として大事だと感じています。