関西英語教育学会(KELES)主催の第21回卒論・修論研究発表セミナーでの発表スライドです。 日程：2018年2月11日 場所：神戸国際大学 発表者：中西淳

1. 日本人英語学習者の前置詞使用の問題点の解明
-頻度・共起語・用法の3つの観点から-
神戸大学大学院国際文化学研究科
中西 淳
mail: atsushi.aout11@gmail.com
1

2. はじめに
①現代英語における前置詞
②前置詞の曖昧さ
③英語学習者と前置詞
④着目する観点
2

3. 現代英語における前置詞
3
１ the 61847 11 I 8875
２ of 29391 12 for 8412
３ and 26817 13 that 7308
４ a 21626 14 you 6954
５ in 18214 15 he 6810
６ to 16284 16 be 6644
７ it 10875 17 with 6575
８ is 9982 18 on 6475
９ to 9343 19 by 5096
10 was 9236 20 at 4790
British National Corpus(BNC)
頻出語彙トップ20
前置詞
冠詞
代名詞
動詞
その他
前置詞は現代英語の中の高頻度語の4割
(8/20)を占めている。
⇩⇩
頻度上，英語のライティングにおいて重要
前置詞とはどのようなものであるか？

4. 前置詞の曖昧さ
4
いくつかの文法書には前置詞の定義がない
英語学辞典にも意味機能についての記述がない
英語学習者は前置詞を適切に理解・使用できているか？
Jespersen (1924)：前置詞・副詞・接続詞・間投詞を
まとめて「不変化詞」
Long (1973) ：副詞の中に前置詞・接続詞を含む
Palmer (1951) ：副詞(前置詞)は品詞の「がらくた箱」
ジーニアス
英和大辞典
オックスフォード
現代英英辞典
ロイヤル
英文法
of 16 13 11
in 18 18 10
to 23 18 9
for 20 20 14
with 18 17 12
on 18 18 10
by 14 16 8
at 16 15 8
from 10 14 10
語義数が多く，その数も様々...
主要9前置詞の辞書・文法書における語義数
英語学用語辞典(荒木編，1999)
伝統文法の八品詞の一つ。通例，形態上の変化がなく，
名詞句の前に位置し，それを目的語とし前置詞句を形成
する。

5. 英語学習者と前置詞
5
Even if you are φ(→at) the top of a company, you can't decide what to do on your own.
Most of(→φ) accidents are because of speeding.
My house is located at(→in) Ryogoku, which is famous for sumo.
オンライン英作文学習者コーパス(望月，2013)から引用
英語学習者の前置詞使用には，必要な場面での不使用，不必要な場面での
使用，異なる前置詞の使用，など様々な問題が存在する。
これらの問題点をどのように解明すべきか？

6. 着目する観点
6
頻度
用法共起語
学習者が使用する前置詞の量
は適切か？頻度
学習者が使用する前置詞の前
後の言語環境は適切か？共起語
学習者が使用する前置詞の意
味用法は適切か？用法
3元アプローチ

7. 先行研究
①英語母語話者の前置詞使用
②英語学習者の前置詞使用
7

8. 英語母語話者の前置詞使用
8
前置詞の頻度
Francis & Kučera
(1982)
Mindt & Weber
(1986)
→現代英語における前置詞の使用割合は約12.12％
→前置詞全体の9割を以下の前置詞が占めている。
about, at, between, by, for, from, in, into, on, of, over, to, through, with
前置詞の共起語
Kennedy (1998) →前置詞に先行する品詞割合
[名詞(45.5%)：動詞(30%)：副詞(3.5%)：その他(14. 5%)：文頭(6.5%)]
前置詞の用法
O'Hara & Wiebe
(2003)
atの用法
Penn Treebank [空間(73%)：時間(24%)：様態(2%)：方向(1%)]
FrameNet [受け手(32%)：その他(9%)：現象(9%)：着点(8%)：内容(5%)：...]

9. 英語学習者の前置詞使用
9
前置詞の頻度
Granger &
Rayson (1998)
松下 (2012)
→英語学習者は前置詞全体を過少使用
→日本人学習者はfor，at，byなどを過剰使用，as，on，toなどを過少使用
前置詞の共起語
Arts & Granger
(1998)
村尾(2013)
→英語学習者は前置詞を含む3語連鎖を過少使用
→ofを含む連語表現の種類数は「下位学習者＜上位学習者＜英語母語話者」
前置詞の用法
Cho(2002)
Hayashi(2001)
→日本人学習者は時間や空間を表す前置詞を具体から抽象へ意味拡張して習
得していく。
→日本人学習者は似たプロトタイプの表現を多く用いており，抽象度の高い
用法での正誤判断の正答率は低い。

10. 先行研究の課題①
前置詞の頻度・共起語・用法につ
いて，異なるデータ・異なる前置
詞を対象としている。
本研究の特徴①
前置詞の頻度・共起語・用法につ
いて，同一のデータで，同一の前
置詞を対象に分析を行う。
先行研究の課題②
日本人学習者の習熟度を考慮せず，
全体でまとめて議論している。
本研究の特徴②
日本人学習者を習熟度レベルで下
位群と上位群に分けた議論を行う。
先行研究の課題と本研究の特徴
10

11. リサーチデザイン
①目的とRQ
②データ
11

12. 目的とRQ
• 日本人学習者の英作文中に見られる前置詞の使用傾向を①頻度・②共起
語・③用法の3つの観点から分析することで，日本人学習者の前置詞使用
の問題点を解明することを目的とする。
12
RQ1
日本人学習者は，英語母語話者と同様の頻度で，前置詞を使用できている
か，また，習熟度の上昇にともない望ましい変化が生じているか？
RQ2
日本人学習者は，英語母語話者と同様の共起パタンで，前置詞を使用でき
ているか，また，習熟度の上昇にともない望ましい変化が生じているか？
RQ3
日本人学習者は，英語母語話者と同様の意味用法で，前置詞を使用できて
いるか，また，習熟度の上昇にともない望ましい変化が生じているか？

13. データ
13
ICNALE(International Corpus Network of Asian Learners of English) Written Essays
内容 論説文(以下の2つのトピックに対する賛否を論じたもの)
It is important for college students to have a part-time job.
Smoking should be completely banned at all the restaurants in the country.
環境 辞書なし・制限時間20分・1作文200〜400語
元データ 使用データ
対象 英語母語話者200人400本
10か国・地域のアジア圏学習者(中国
人・韓国人など)計2600人5200本
英語母語話者200人400本
日本人英語学習者400人800本
総語数 約130万語 約27万語

14. 結果と考察
14
前置詞の頻度
前置詞の共起語
前置詞の用法

15. 前置詞の頻度
15
用法共起語
頻度
前置詞の使用状況

16. 日本人学習者の前置詞使用状況(頻度)
The train reached to the station.
→The train reached the station.
Look at the long hair girl.
→Look at the girl with long hair.
This bar's manager is only twenty five years old.
→The manager of this bar is only twenty five years old.
16
前置詞を正しく理解し，必要な量だけ使用できているか？

17. 目的とRQ
17
• 目的
日本人学習者の前置詞の使用状況が，英語母語話者とどの程度乖離しているかを解明する。
• リサーチクエスチョン
RQ1 日本人学習者による前置詞の使用状況は英語母語話者にどの程度乖離しているか？
RQ2 日本人学習者による前置詞の使用状況は習熟度の上昇にともない英語母語話者に近接
していくか？
頻度
RQ1 日本人学習者・英語母語話者間 全体頻度
多様性
個別頻度RQ2 日本人学習者の異なる習熟度間比較

18. 本研究における前置詞頻度の分析視点
18
頻度
全体頻度
個別頻度
多様性
前置詞全体として，適切な量使
用できているか？全体頻度
前置詞を幅広く使用できている
か？多様性
前置詞を個別に見ると，適切
な量使用できているか?個別頻度

19. 手法
19
事前処理
日本人学習者と英語母語話者間(RQ1)・異なる習熟度の学習者間(RQ2)でフィッ
シャーの正確確率検定全体頻度
日本人学習者と英語母語話者(RQ1)・異なる習熟度の学習者(RQ2)のそれぞれ
Guiraud’s R[type/log(token)]を算出多様性
日本人学習者と英語母語話者間(RQ1)・異なる習熟度の学習者間(RQ2)での対数
尤度比統計量が10を上回るものを特定個別頻度
分析データ 「200人分400本」をそれぞれ抽出
分析対象 Tree TaggerでIN・TOとタグ付けされたものの頻度を抽出
＊IN：辞書で「前置詞」と定義されたもの
TO：「TO + VB(動詞原型)」を除外したもの 52種

20. (結果)RQ1 日本人学習者・英語母語話者間比較
20
フィッシャーの正確確率検定→日本人学習者 ＜ 英語母語話者
OR=.86, 95% CI=.83 ~ .87, p<.001
過少使用の原因
①動詞の自他性の理解の不足? ②所有格ofの過剰使用? ③文構造の分断?
全体頻度
Guiraud’s R→日本人学習者(0.21) ＜ 英語母語話者(0.22)
あまり大きな差は見られないが，日本人学習者は英語母語話者より前置詞の多
様性が低いことが確認された。
多様性
個別頻度
過剰使用 at(54.41), for(43.30), near(35.29),by(31.06),with(25.02), through(15.38)
①トピック文を流用したもの(“at all the restaurants”, “for college students”, “agree with”)
②母語の影響によるもの(near「〜の近くに」, by「〜によって」, through「〜を通して」)
過少使用
as(197.39), on(85.47), to(81.68), upon(59.54), towards(48.49),in(39.43),
off(32.25), throughout(13.35)
①多義性が高く，意味拡張がされていないもの(on, to, in)
②あまりなじみのない慣用表現の一部 (“such as”, “be better off”)
③語形上，あまり馴染みがないもの(upon，towards，throughout)

21. 21
フィッシャーの正確確率検定→下位群 ＜ 上位群 (<英語母語話者)
OR=.97, 95% CI=.94 ~ .99, p=.03
下位群と上位群で有意な差は見られたものの，オッズ比(OR) は小さく，英語母語話者と
は乖離したままであった。
全体頻度
Guiraud’s R→下位群(0.21)＝上位群(0.21) (＜英語母語話者)
下位群と上位群で前置詞の多様性に変化は見られず，英語母語話者への近接は
見られなかった。
多様性
個別頻度
下位群 なし [10以下：except(4.32), near(3.51), over(3.45)]
対数尤度比統計量は10以下であるが，日本人学習者全体において過剰使用であったnearに
ついては習熟度の上昇にともない減少している。
上位群 for(11.55) [10以下：upon(6.08), without(5.61), before(4.70)]
forは日本人学習者全体において過剰使用であり，習熟度の上昇にともない英語母語話者と
のズレが大きくなっている。
(結果)RQ2 日本人学習者の習熟度間比較

22. まとめ
22
日本人学習者の前置詞使用量は英語母語話者の85%程度であり，習熟度が上昇しても
3％程度しか増加しない。
日本人学習者は前置詞を英語母語話者ほど多様に使用できておらず，習熟度が上
昇しても多様性は上がらない。
日本人学習者はon, inのような多義性の高い前置詞，upon, throughoutのような
語形が複雑な前置詞などを過少使用していた。
日本人学習者はトピックから引用した前置詞(at ＋ restaurant，agree with )，日本
語の影響を受けた前置詞(near[〜の近く]，by[〜によって])などを過剰使用していた。

23. 前置詞の共起語
23
頻度
用法共起語
前置詞の使用環境

24. 24
aaa
spend A on B
depend on A
rely on A
and so on
keep on A
on every Tuesday
from now on
on
＊ICNALE-JPNの
A2作文から引用
同じ表現を多用しすぎ…?
日本人学習者の前置詞使用環境(共起語)
前置詞を適切な使用環境(共起語)の中で使用できて
いるか？

25. 目的とRQ
25
• 目的
日本人学習者の前置詞の使用環境が，英語母語話者とどの程度乖離しているかを解明する。
• リサーチクエスチョン
RQ1 日本人学習者による前置詞の使用環境は英語母語話者にどの程度乖離しているか？
RQ2 日本人学習者による前置詞使用環境は習熟度の上昇にともない英語母語話者に近接し
ていくか？
共起語
RQ1 日本人学習者・英語母語話者間比較 多様性
個別頻度RQ2 日本人学習者の異なる習熟度間比較

26. 手法
26
事前処理
日本人学習者と英語母語話者間(RQ1)・異なる習熟度の学習者間(RQ2)でそれぞ
れGuiraud’s R[type/log(token)]を算出多様性
日本人学習者と英語母語話者間(RQ1)・異なる習熟度の学習者間(RQ2)での対数
尤度比統計量が10を上回るものを特定個別頻度
分析データ 「200人分400本」をそれぞれ抽出
分析対象 in, on, atを含む3語クラスターの頻度を抽出

27. 27
Guiraud’s R→in：日本人学習者(0.57) ＜ 英語母語話者(0.66)
on：日本人学習者(0.65) ＜ 英語母語話者(0.82)
at：日本人学習者(0.42) ＜ 英語母語話者(0.67)
頻度に注目した際，日本人学習者はin, onを過少使用，atを過剰使用する傾向にあったが，
共起語の多様性はin, on, atいずれも日本人学習者は英語母語話者より低かった。
多様性
個別頻度
過剰使用
in
in the country(233.62), restaurants in the(211.14), in the future(43.33), in the
restaurant(43.14), in fact i(19.93), smoke in the (18.06), in spite of(14.23)...
on and so on(176.21), the ban on(11.51)
at
completely banned at(172.77), banned at all(129.37), at all the(126.03), at the
restaurant(13.25), at all restaurants(10.16)
過少使用
in
smoking in restaurants(38.08), banning smoking in(29.53), banned in
restaurants(18.14), job in college(14.77), in all restaurants(14.18)...
on なし[10以下：on their studies(5.99), on the job(3.94)]
at at restaurants in(34.74), smoking at restaurants(10.68)...
①全体的な対数尤度比統計量の値は過剰クラスター＞過少クラスター
②日本人学習者は「前置詞＋the＋具象単数名詞」のパタンで多用(in/at the restaurant...)
③日本人学習者はトピック文や定型表現の一部として多用(in the country, and so on)
(結果)RQ1 日本人学習者・英語母語話者間比較

28. 28
Guiraud’s R→in：下位群(0.59) ＞ 上位群(0.57) (＜ 英語母語話者)
on：下位群(0.66) ＞ 上位群(0.62) (＜ 英語母語話者)
at：下位群(0.44) ＞ 上位群(0.43) (＜ 英語母語話者)
in, on, atすべての前置詞クラスターの多様性は習熟度にともない低下している。
多様性
個別頻度
下位群
in なし[10以下：a job in(6.06), seat in the(4.95)]
on なし[10以下：on if we(1.72), so on as(1.72)]
at at the restaurants(10.25)
上位群
in なし[10以下：is banned in(6.34), lung cancer in(6.34)]
on なし[10以下：bad effect on(3.31), on part time job(3.31)]
at smoking at restaurants(17.75)
①比較的に対数尤度比統計量は小さく，習熟度の上昇による変化はあまり見られない。
②atのみに対数尤度比統計量が10を上回るクラスターが見られ，atの使用は習熟度のの上昇で多少変
化すると考えられる。
(結果)RQ2 日本人学習者の習熟度間比較

29. まとめ
29
in, on, atという基本前置詞であるにも関わらず，日本人学習者と英語母語話者で共
起パタンは大きく異なっており，習熟度に伴う変化はほとんど見られない。
日本人学習者は前置詞を同じ共起パタンで何度も使用しており，習熟度が上昇
すると，一層その傾向は強くなり，同じ表現をより多用するようになる。
日本人学習者は [前置詞＋the＋具象単数名詞]のパタンや，定型句(and so on)やト
ピック文(in the country)の一部として前置詞を多用している。
中間言語で誤って獲得した表現パタンが修正されないまま，化石化していく傾向が見られる。

30. 前置詞の用法
30
頻度
共起語 用法
前置詞の意味用法

31. 日本人学習者の前置詞意味用法(用法)
31
大学生にinを用いた英作文を行ってもらった結果...
前置詞を適切な意味用法の中で使用できているか？

32. 目的とRQ
32
• 目的
日本人学習者の前置詞の意味用法が，英語母語話者とどの程度乖離しているかを解明する。
• リサーチクエスチョン
RQ1 日本人学習者による前置詞の意味用法は英語母語話者にどの程度乖離しているか？
RQ2 日本人学習者による前置詞の意味用法は習熟度の上昇にともない英語母語話者に近接
していくか？
用法
RQ1 日本人学習者・英語母語話者間比較
RQ2 日本人学習者の異なる習熟度間比較

33. 手法
33
事前処理
日本人学習者と英語母語話者間(RQ1)・異なる習熟度の学習者間(RQ2)で フィッ
シャーの正確確率検定
①「中核使用」「定型使用」「トピック使用」すべて合わせて
②「中核使用」 のみ
用法別
頻度
分析データ 「20人分40本」をそれぞれ抽出
分析対象 in，on，atを『英語多義ネットワーク辞典』(瀬戸編, 2007)の意味
枠組みを用いて，用法別頻度を抽出する。すべての用例を意味分
類した後，「中核使用」「定型使用」「トピック使用」に細分化
する。
＊1 意味分類：in(7) [空間][形][材料][知覚][期間][活動][状態]
：on(4) [表面][身体][活動][影響]
：at(4) [場所][時間][数値][活動]
＊2「定型使用」:「in + country」「at + restaurants」
＊3「トピック使用」: Phrasal Expressions List(Martinez & Schimitt, 2012)を参照

34. 『英語多義ネットワーク辞典』
(瀬戸編, 2007)の枠組み
定型句の一部として用いら
れたと考えられる前置詞
トピック文から引用したと
考えられる前置詞
in(7)
on
(4)
at
(4)
「in + country」
in the country
in their countries
etc.
「at + restaurant」
at all the restaurants
at a restaurant
etc.
Phrasal Expressions List
(Martinez & Schimitt, 2012)の
中のin, on, atを含む表現
(111種)
「in order to」
「on average」
「at first」
etc.
空間の中で in the country
形の中で stood in a line
材料の中で written in pen
知覚の中で in sight
期間の中で in 1966
活動の中で in class
状態の中で in most cases
34
「中核使用」 「定型使用」 「トピック使用」
本研究の意味用法における分析視点
分析①
分析② 意味用法を理解できていない？？

35. 35
①「中核使用」「定型使用」「トピック使用」すべて合わせて
②「中核使用」のみ用法別
頻度
過剰使用
in なし[PMW値：「材料」]
on なし[PMW値：「身体」]
at 「場所」(OR=2.74, 95% CI=2.38 to 2.91, p<.001)
過少使用
in 「状態」(OR=.61, 95%CI=.40 to .84, p<.05) [PMW値：「期間」「状態」...]
on なし[PMW値：「活動」「影響」...]
at なし
過剰使用
in なし
on なし
at なし
過少使用
in 「状態」 (OR=.19, 95% CI=.10 ~ .39, p<.01) [PMW値：「期間」]
on 「活動」 (OR=.30, 95% CI=.12 ~ .76, p<.05) [PMW値：「影響」]
at なし[PMW値：「数値」]
「中核使用」に限れば，日本人学習者の過剰使用は存在せず，過少使用には「状態」「活動」などの
抽象的な用法が多かった。
(結果)RQ1 日本人学習者・英語母語話者間比較

36. 36
①「中核使用」「定型使用」「トピック使用」すべて合わせて
②「中核使用」のみ用法別
頻度
下位群
in なし[PMW値：「材料」]
on なし[PMW値：「表面」「影響」]
at なし
上位群
in なし[PMW値：「形」「材料」「期間」]
on なし[PMW値：「活動」]
at なし
下位群
in なし[PMW値：「空間」「活動」]
on なし[PMW値：「表面」「影響」]
at なし
上位群
in なし[PMW値：「状態」]
on なし[PMW値：「活動」]
at なし[PMW値：「活動」]
下位群と上位群で有意な差の見られる用法は存在しなかった。
PMW値の差を見ると，習熟度のよる具体(「空間(in)」)→抽象(「状態(in)」)に変化？
(結果)RQ2 日本人学習者の習熟度間比較

37. まとめ
37
全用例を用法別に見たところ，日本人学習者は「場所(at)」を過剰使用，「状態
(in)」を過少使用していた。
「中核使用」に絞ってみると，過剰使用されている用法はなく，「活動(on)」
「状態(in)」を過少使用していた。
inやonについては，日本人学習者は「状態(in)」や「活動(on)」のような抽象的
な用法での使用が少なく，これが前置詞の過少使用の原因であると言える。
統計的な差はないが，習熟度の上昇により，具体的用法(「空間(in)」「表面(on)」)から，
抽象的用法(「状態(in)」「活動(on)」)へと意味拡張している可能性が示唆された。

38. まとめ
①本研究で得られた知見
②課題と制約
38

39. 本研究で得られた知見
39
頻度
日本人学習者の前置詞全体の使用量は英語母語話者の約85％
にとどまり，習熟度が上昇しても英語母語話者に近接しない
ことが示された。
共起語
日本人学習者は英語母語話者に比べ，定型句やトピック文の
一部として前置詞を多用しており，また，同じような表現を
何度も繰り返して用いていることが明らかになった。
用法
日本人学習者は，inの「状態」やonの「活動」など，前置詞
の抽象的用法を苦手とし，過少使用する傾向が明らかになっ
た。

40. 制約と課題
40
前置詞の機械的な分類(他のタグセットとの比較も?)頻度
レマ化の考慮(in a/the restaurantはひとまとめに?)共起語
意味分類枠の定め方(他の分類枠組みも考慮?)用法
①前置詞の定義(4章:タグセットの定義, 5章:in, on, atすべて)
②トピックの制約(レストランでの禁煙・大学生のバイトのみ)
③学習者の誤用への考慮
全体