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卒業論文発表
配筋情報の自動入力アルゴリズムを用いた
3次元解析モデルの作成効率化
背景
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
<土木分野における国際的なCIMの推進>
解析の自動化・省力化
・入力データの自動生
成による解析の大幅省
力化
・レーザーで物体表面の3次元座標を計測
・相対誤差は数mm、絶対誤差は数cm
・任意の部分を切り取ってCADデータ化が可能
<点群データ>
技術革新による維持管理の新たな可能性
実構造物に基づく解析
・図面のない構造物の解析
・構造物のタイムリーな情
報を用いた解析
米国 BIM for Infrastructure(2009年~)
国土交通省「CIM制度検討会」(2012年8月~)
・点群データから構造物の3次元モデルを作成
・部材名や材質などの属性情報を持つ
・2015年3月までに49件の試行事業
1/12
<既存構造物の場合>
<新規構造物の場合>
マルチスケール解析CIM(統合型情報プラットフォーム)
点群情報 図面
設計情報
環境情報点群情報
コンクリート施工情報 現在の配筋位置情報
補強情報
維持管理への
フィードバック
常に最新の状態
にアップデート
維持管理への
フィードバック
作成
作成
背景 ‐ グランドデザイン
入力
(+モデル修正)
2/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
情報をシームレスつなぐことで、土木構造物の現況に即した的確なフィードバックが高頻度で可能に
目的
形状:図面から
配筋:図面から
点群データから
両端の座標と断
面積から
形状:点群データor
設計データから
配筋:点群データor
電磁波技術の発展に
よる位置情報から
従来
<3次元解析モデル作成の今後>
本研究
<本研究の目的>
・新しい維持管理方法を実現するためには、
情報をシームレスにつなぐ必要がある
・本研究では,手始めに最も重要な形状情報・配筋
情報の半自動入力化に取り組んだ
<マルチスケール解析の分散ひび割れモデル>
・東京大学コンクリート研究室では従来より鉄筋と
コンクリートを一体とした構成則を開発
・RC構造物の非線形挙動を正確に再現
メッシュ形状と配筋のバラバラな情報ではな
く、RC要素ごとの鉄筋比が解析に必須!
3/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
形状情報と配筋情報を半自動入力することによるメッシュ作成の大幅効率化
将来
形状:
配筋:
<対象構造物>
・3径間連続PC箱桁ラーメン橋
・曲線橋かつ張出部が特殊な形状
<従来のマルチスケール解析入力データ作成方法>
・図面から断面を作成し,線形に引き延ばす
・曲線部分については手動でヘキサメッシュを作成
し,繋ぎ合わせて表現
・鉄筋比については図面から大まかに手計算
→メッシュ作成・鉄筋比計算が困難
※性能評価ではなく,配筋情報の自動入力アルゴリ
ズムを用いた効率的な3次元モデル作成手法の確立が
本研究の目的です.
4/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
効率的な3次元モデル作成手法の確立が目的
ターゲット
概要 ‐ 3次元モデル作成フロー
3DCAD 市販メッシャー
IFC(CIM)
変換プログラム(鉄筋比を計算)
CSV(配筋情報)
形状 メッシュ+属性情報+拘束条件情報
解析用インプットデータ
点群
共同研究中
経時変化する情報
3次元の点や線、
面の組み合わせによ
って構成したデータ
・BIMの国際規格
・形状と属性情報
を持つ
・鉄筋属性も定義
・鉄筋の両端のxyz座標
・鉄筋の断面積
を鉄筋ごとに並べたもの
(本研究では図面から)
・加速度
・強制変位
・属性ごとに要素にid
を付与
・拘束条件ごとに節点
にidを付与
5/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
形状の情報と鉄筋の情報を別々に与え,変換プログラムで要素ごとの鉄筋比を計算
配筋
物性値
<3DCADデータ> <メッシュデータ>
手法 ‐ メッシュ作成 6/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
<点群データ>
点群の届かない地中構造物や支承部分はメッシャー上で追加
・橋梁の下をレーザースキャ
ナーを搭載した車(MMS)で走
行し,点群データを取得
・本来は橋梁の上も走り,GPS
をもとに上下のデータを統合
・取得からGPSを用いた座標
データの編集に約1ケ月かかる
・点群データから自動生成した
3DCADデータを,メッシュ作成
のためにすべての面が閉じるよ
うに手動で編集したもの
・現時点ではこの編集に1週間程
度かかる
・粗い部分や線が重なっている部
分を削除
・レーザーの届かない桁や支承,
地下構造物は手動で編集
・メッシュ作成後,属性ごと・拘
束条件ごとのidを付与
・この部分は2-3日で可能
手法 ‐ メッシュ作成
<属性idの可視化> <拘束条件idの可視化>
7/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
属性と拘束条件の可視化による手戻り防止
手法 ‐ 配筋情報自動入力アルゴリズム 8/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
要素ごとに全ての鉄筋について通過判定を行い、その要素のxyz方向の鉄筋比に加算していく
開始
終了
全ての要素を
計算したか
Yes No
全ての鉄筋を
計算したか
Yes
No
②要素面の法線ベクトルを求める
③平面と鉄筋
の衝突判定
Yes
④鉄筋と平面の交点座標を求める
⑤要素面と鉄
筋の衝突判定
Yes
⑥要素のxyz方向の鉄筋比を計算
No
①要素の体積を算定
手法 ‐ 配筋情報自動入力アルゴリズム 9/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
要素の面ごとに通過判定を行い、通過した面の数で要素内の鉄筋の状態を判別
②要素面の法線ベクトルを求める①要素の体積を求める
スカラー3重積の絶対値の1/6から
四面体の体積を5つ求めることで
正確な体積を計算する.
要素の1つの面に注目し,その面の
法線ベクトルを求める.
③平面と鉄筋の衝突を判定する
要素面上の点と鉄筋の両端を結ぶ
ベクトルと,法線ベクトルの内積
2つの符号から要素面の属する平
面との衝突を判定する.
④鉄筋と平面の交点座標を求める
鉄筋の両端と平面との距離を内積
の絶対値から求め,内分より交点
の座標ベクトルが求まる.
⑤要素面と鉄筋の衝突を判定する
節点間のベクトルと節点と交点を
結ぶベクトルの外積4つの向きか
ら,要素面との衝突を判定する.
⑥鉄筋比を計算する
通過した面の数から要素内の鉄筋
量を計算.鉄筋の方向ベクトルと
①から各方向の鉄筋比が求まる.
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶まとめと今後
①要素の体積算定
要素の各節点の座標が分かっているので、各節点間のベクトルが求まり、
スカラー3重積の絶対値の1/6から四面体の体積を5つ求めることで要素の
体積が求まる
鉄筋比の算定
(x方向の鉄筋比)=(x方向の鉄筋量)÷(要素の体積)
(y方向の鉄筋比)=(y方向の鉄筋量)÷(要素の体積)
(z方向の鉄筋比)=(z方向の鉄筋量)÷(要素の体積)
4つの四面体に分割することで複雑な形をした要素の体積も求められる
補足
最初の情報:鉄筋の両端のxyz座標と断面積
要素を構成する節点のxyz座標
最初の情報:鉄筋の両端のxyz座標と断面積
要素を構成する節点のxyz座標
要素の面ごとに通過判定を行い、通過した面の数で要素内の鉄筋の状態を判別
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶まとめと今後
②要素の面が属する平面の法線ベクトルを求める
要素の1つの面に注目し、
その面を構成する節点の間のベクトルを2つ求め、
外積を計算してその平面の法線ベクトルnを求める
n
補足
まず要素の面を含む3次元空間上の平面と鉄筋が衝突するかを判定
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶まとめと今後
③要素の面を含む平面と鉄筋の衝突判定
面を構成する節点の1つ(aとする)と鉄筋の両端
を結ぶベクトルをv1とv2とすると
(v1とnの内積)×(v2とnの内積)≦0
→鉄筋は要素の面を含む平面と衝突
(v1とnの内積)×(v2とnの内積)>0
→衝突しない
◯
×
最初の情報:鉄筋の両端のxyz座標と断面積
要素を構成する節点のxyz座標
n
a
v1
v2
v1
v2
補足
最初の情報:鉄筋の両端のxyz座標と断面積
要素を構成する節点のxyz座標
内分から鉄筋と要素の面を含む3次元空間上の平面との交点を求める
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶まとめと今後
④鉄筋と平面の交点の座標を求める
鉄筋の両端と平面との距離をd1d2とすると、
d1 =(v1とnの内積の絶対値)÷(nの大きさ)
d2 =(v2とnの内積の絶対値)÷(nの大きさ)
であるから、内分より
(d1/(d1+d2))v2 + (d2/(d1+d2))v1 = v3
を②の節点aの座標に足すことで交点の座標が求まる
n
a
v2
v1
d2
d1
交点
補足
最初の情報:鉄筋の両端のxyz座標と断面積
要素を構成する節点のxyz座標
外積の向きから、交点が要素の面の中にあるかを判定
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶まとめと今後
⑤交点が要素の面の中にあるか判定
面の節点間のベクトルと節点から交点へ向かうベクトル
を求め、同じ節点を起点に持つベクトル同士の外積を順
番を固定して4種類計算する。このとき、
外積ベクトルがすべて同じ向き:要素の面の中を通過
同じ向きではない:要素の面の外を通過
向きの判定は外積ベクトル同士の内積の積の正負で判断
◯
×
補足
最初の情報:鉄筋の両端のxyz座標と断面積
要素を構成する節点のxyz座標
鉄筋の長さと断面積を各方向に完全に割り振ることが可能
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶まとめと今後
⑥要素のxyz方向の鉄筋量を計算
②~⑤を各面について繰り返す。その結果として
(1)1つの面を通過:外向き法線ベクトル6つと鉄筋の端を
結ぶベクトルの内積を計算し,全ての内積が負の方(=要素
の中にある方)の端と交点との距離を計算
(2)2つの面を通過:交点間の距離から鉄筋の長さを計算
(3)面を通過しない(1)の計算を用いて、鉄筋の両端が
要素の中にあるか判定
なお、ある面との交点が他の面との交点と同じ座標の場合は
通過面数をひとつ減らす。
鉄筋の両端のxyz座標から鉄筋の方向ベクトルを求める。
→各方向の鉄筋量が求まる。
1つの面を通過
2つの面を通過
n
◯
×
補足
手法 ‐ 配筋情報自動入力アルゴリズム
番号付けa 番号付けb
x y z x y z
1 0 0 1 0 0 1
2 1 0 1 1 0 1
3 1 0 1 0 1 1
4 0 1 1 0 1 1
5 0 0 0 0 0 0
6 1 0 0 1 0 0
7 1 0 0 0 1 0
8 0 1 0 0 1 0
番号付けa 番号付けb
x y z x y z
0 0 0.2 0 0 0.2
左側 右側
x y z x y z
(1) 0.2 0 0 0.1 0 0
(2) 0.1 0.05 0.05 0.1 0.05 0.05
(3) 0 0 0 0 0 0
実際のメッシュ
・鉄筋の断面積0.2
・(1)(2)は妥当
・(3)は0となる
→実構造物では可能性
が低いと考えたため警告で対応した
三角柱要素の例
・鉄筋の断面積0.1
・2通りの番号付けともに妥当
10/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
鉄筋が要素面に属してしまう場合以外の大部分のケースに関して適用可能
<結果>
<結果>
<いくつかの例で試験>
結果 11/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶ まとめと課題
個別要素の精度は不明確だが,全体として入力した鉄筋の大部分が反映されていた
<例:P18橋脚張出部>
入力鉄筋の総体積(csvデータと図面より計算)
= 2465275cm3
Σ(出力後の要素の鉄筋比の和)×(要素の体積)
= 2194152cm3
→全体として鉄筋の89%が鉄筋比に反映された
ID739
X
Y
Z
<アルゴリズム>
<考えられる誤差の原因>
・施工図と実際の構造物のずれ
→電磁波技術の進展 or 配筋時の点群データ取得によ
り,鉄筋の位置座標を計測できるようになれば解消
X : 0.0
Y : 0.01520719
Z : 0.00259398
断面積:約10000cm2
X : 0
Y : (7×D35+3×D16)/104 = 0.07292
Z : (5×D16+1×D19)/104 = 0.0012795
<おおまかな手計算>
<研究成果>
・3DCADデータと配筋情報自動入力アルゴリズム
を用いた3次元解析モデルの作成効率化
<今後の課題>
・配筋位置情報の効率的な測定方法の開発
・レーザーの届かない箇所の取り扱い
・点群データからメッシュ作成用の閉じた3DCAD
データの自動生成
・BIMの国際規格であるIFC形式を用いたデータ変換
・境界要素や三角柱要素などの,変換時に新たに節
点を追加する必要のある要素の自動変換
・物性値や地盤情報の自動入力
12/12
背景▶目的▶ターゲット▶概要▶手法▶結果▶まとめと課題
まとめと課題
物性値の入力
数日 数日
全体の配筋の計算
2-3か月 2-3日
全体のメッシュ作成
2-3か月 (3DCADから)2-3日
従来の手法(予想) 本研究の手法
短縮
・マルチスケール解析の適用範囲拡大
‐複雑で大規模な構造物
‐タイなどの途上国の図面のない構造物

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卒論発表

Editor's Notes

  1. 「配筋情報の自動入力アルゴリズムを用いた3次元解析モデルの作成効率化」と題しまして、コンクリート研究室の小澤が発表させて頂きます。よろしくお願いします。
  2. 近年、土木分野ではCIMの推進が行われています。このシムの特徴といたしましては、点群データから構造物の3次元モデルを作成し、またそのモデルが部材名や材質などの属性情報を持つことが挙げられます。このCIMを用いてFEM解析を行うことで,解析の自動化・省力化と、実構造物に基づく解析が実現します。 ここで述べた点群データとは,レーザーで物体表面の3次元座標を計測したもので、レーザースキャナなーの誤差は数mm、GPSを含めた精度は数cmと言われております。 ご覧のような点群データから,任意の部分を切り取って3DCADデータにすることができます このような技術の発達と近年ますます高まっている本格的な維持管理手法の必要性から、本研究では次のような維持管理方法を提案します。
  3. まず,既存構造物の場合は点群情報と図面からCIMを作成します。一方新設構造物の場合は設計情報からCIMを作成します. 作成されたCIMをプラットフォームにして、点群情報、環境情報、補強情報、施工情報、配筋情報などを常に最新の状態になるようにアップデートします。 これらの情報を用いてマルチスケール解析を行うことで、土木構造物の現況に即した的確なフィードバックが高頻度で可能になります。 また、過去の解析結果をもとに,モデルを修正して解析の精度を上げていくことも考えられます.
  4. 以上のような維持管理手法を実現するためには、さまざまな情報をシームレスに繋ぐ必要があります。 本研究では手始めとして、形状情報と配筋情報の半自動入力化に取り組みました. 東京大学コンクリート研究室では従来より鉄筋とコンクリートを一体とした構成則を開発してきました。 これにより、RC構造物の非線形挙動を正確に再現できます。 従いまして、メッシュ形状と配筋のバラバラな情報ではなく、RC要素ごとの鉄筋比が解析に必要となります。 従来は形状作成と鉄筋比の計算を図面から読み取って行っていましたが、本研究では形状は点群データから、鉄筋比に関しては鉄筋の両端の座標と断面積から計算します。 将来的には、形状は点群データまたは設計データから、配筋は施工時の点群データまたは電磁波技術の発展による位置情報から読み取ることになると期待されます。
  5. 3次元モデル作成の対象構造物は右図のような3径間連続PC箱桁ラーメン橋です。 これはご覧のように曲線橋かつ張出部が特殊な形状をしており、従来のマルチスケール解析入力データ作成方法ではメッシュ作成・鉄筋比計算が困難な構造物となっております。
  6. そこで本研究ではこのような流れで3次元解析モデルを作成しました. 全体的な流れとしては、形状情報と配筋情報を別々に与え、変換プログラムに2つの情報を入力することで鉄筋比を計算します。 また、配筋情報として本研究では鉄筋の両端のxyz座標と鉄筋の断面積をcommaで区切ったものcsvファイルを用います。 本研究では図面から読み取って表計算ソフトを用いて座標を入力しますが、将来的にはCIMの標準規格になることが予想されているIFC形式から、これらの情報を読み取ることになります。
  7. 次に形状情報について具体的に説明します。 今回は橋梁の下から取得した点群データをもとに3DCADデータを自動生成し、 それをメッシュ作成用に編集したものを市販のメッシャーに読み込みました。 この編集の自動化については、ELYSIUM社と共同研究中です。 この3DCADデータをさらにメッシャー上で編集したのち、メッシュを切って属性と拘束条件ごとにidを付与します。
  8. 左側が属性idに基づいて色分けしたもので、右側の白く見える部分が同じ拘束条件をもつ節点となります。 こうした可視化により解析前に諸条件を確認できるため、ミスを減らすことにつながります。
  9. 次に変換プログラムについて説明します。 本研究で開発した配筋情報自動入力アルゴリズムのフローチャートはこのようになります。 全体の流れとしては、要素ごとにすべての鉄筋について通過判定を行い、通過する場合はその要素のxyz方向の鉄筋比に加算していきます。
  10. より詳しく説明したものがこちらになります。 まずスカラー3重積から要素の正確な体積を計算します。 次に要素の1つの面に注目し、その面の法線ベクトルを求めます。 ある節点と鉄筋の両端を結ぶベクトルと、法線ベクトルの内積の符号から要素面の含まれる3次元空間上の平面と鉄筋が衝突するか判定します 次に左下に参りまして、三番の内積の絶対値を法線ベクトルの大きさで割ることで鉄筋の両端と平面との距離を求め、内分より交点の座標ベクトルを求めます。 そして節点間のベクトルと、節点と交点を結ぶベクトル4つの外積ベクトルの向きから、要素面との衝突を判定します。 一から5までを各面について行い、最後に通過した面の数から要素内の鉄筋の状態を判断して、鉄筋量を求めます。 鉄筋の方向ベクトルと要素の体積がわかっているので、各方向の鉄筋比が求まります。
  11. このアルゴリズムをいくつかの例で試験したところ、左側の(3)のように鉄筋が要素面の属する平面に属してしまう場合以外は、妥当な結果が得られました。 実構造物の節点の座標のように揃っていない値を用いる場合は、(3)のようなことが起こる可能性はかなり低いと考えたため、本研究では警告をだすだけにとどめました。 また右図のような三角柱要素に対しても、節点の番号のつけ方に関わらず妥当な計算結果が得られました。
  12. 以上のアルゴリズムに作成したメッシュと図面から読み取った鉄筋の座標を入力したところ、予想した通り先ほどの警告は一度も出ませんでした。 また、入力した鉄筋の総体積の89%が出力後の要素内に存在することがわかり、大部分が反映されていることがわかりました。 さらに、要素を無作為にひとつ取り出して図面を見ながらの手計算とアルゴリズムの結果を比べてみたところ、オーダー単位では合致していましたが数倍の開きがありました。 この原因については、施工図と実際の構造物のずれと、鉄筋の両端の座標を手動で入力したことによるずれが考えられます.
  13. まとめにうつります。 研究成果としては複雑な構造物の3次元解析モデルの作成効率化が挙げられます。 課題としては、。。。です。 (時間を見て)ありがとうございました