島根大学法文学部法経学科福祉経済ゼミ発表スライド

1. 子育て支援が地方を救う
－島根県邑南町における『日本一の子育て村構想』
を通じた「まちの持続可能性」の取り組みについて－
島根大学法文学部法経学科
福祉経済論 宮本ゼミ
岩倉 幸
金川 摩美
鈴木 友子
松原 京佑
水田 佳輝
安田 瑛
矢田 若葉

2. 報告内容
はじめに
1.島根県邑南町の概要
2.攻めと守りの定住プロジェクト
2-1 “攻め”のA級グルメ構想
2-2 “守り”の日本一の子育て村
2-3 移住者ケア
2-4 財源対応
3.まとめ
おわりに

3. はじめに 「少子化対策の政策展開」
1989年 「1.57ショック」
1990年〜2000年代「少子化対策の展開」
出生率の低下に歯止めがかからない
2009年以降「子ども・子育て
支援の充実」
子育て支援と地方創生
「少子化対策は国政における最重要課題」⇒「ニッポン一億総活躍プラン：希望出生率1.8」をめざす

4. 問題意識
• 少子高齢化と人口減という課題に直面する地方都市
• 各自治体は地方創生の実現に向けた総合戦略を策定し、具体的な取り
組みを本格的に始動
• 国政における最重要課題として取り上げられる少子化対策
• 自治体は、具体的な取り組みとして「子育て支援の充実」に注目、競い
合い
• 自治体は一定の成果をあげることが課題となっている

5. 本報告の目的
• こうした動きに先んじて、島根県邑南町(おうなんちょう)は、
「子育て支援の充実」で「まちの持続可能性」に取り組んでき
た。そして、出生率の上昇を実現している。
• 島根県邑南町の取り組みがなぜ一定の成果を上げることが
できたのか、その背景・要因を探ることを目的とする。

6. 島根県邑南町(おおなんちょう) 【概要】
• 平成16年に羽須美村、瑞穂町、石見町が合併してできた町
• 大正9年〜昭和35年頃は人口が25,000人以上で推移
現在の人口は約11,000人
• 町内は自然豊かな風景が広がる一方で、大型スーパー、ホーム
センターなどがある
高速自動車道を利用すると広島市内に約1時間で行ける距離に
あり利便性は悪くない
• 「A級グルメ立町」と「日本一の子育て村構想」を柱に定住人口の
増加と産業振興を実践しており、この“攻めと守りの戦略”で出
生率上昇と移住希望者が増えている

7. 平成16年10月1日町村合併 発足12年目

8. 邑南町はどんなまち？

9. 嬉しい成果
出生数 平成27年 70名(前年68名)
合計特殊出生率 平成26年 2.07
未就学児童数 424人
(うち397人が保育所に通園)
（出所）邑南町提供資料より作成

10. 合計特殊出生率の推移
（出所）邑南町人口ビジョン（平成27年）をもとに作成
2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
邑南町 2.11 1.75 2.65 1.72 2.07
島根県 1.63 1.61 1.68 1.7 1.7
国 1.39 1.39 1.41 1.43 1.42
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
邑南町
島根県
国

11. （出所）邑南町役場提供資料より作成

12. 邑南町の人口の推移
（出所）邑南町人口ビジョン（平成27年）をもとに作成
2,788 2,652 2,361 2,030 1,688 1,425 1,273
9,641 9,402
8,462
7,511
6,920 6,402 5,835
3,305 3,741
4,290
4,915
5,180
5,117
4,805
15,734 15,795
15,117
14,456
13,866
12,944
11,959
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
16,000
18,000
20,000
1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年
総数
65歳以上
15－64歳
0－14歳
（人）

13. このまま何も手を
打たなければ・・・。

14. （出所）「明日が見える・地域が輝く邑南戦略」（地方版総合戦略）をもとに作成

15. ここに文字を入力攻めと守りの定住プロジェクト(平成23年度から)
(1) “攻め”のA級グルメ構想
(2) “守り”の日本一の子育て村
を目指して
(3) 徹底した移住者ケア
売り出し マスコミへのPR 取材・視察は断らない姿勢

16. （出所）邑南町役場提供資料より作成

17. 島根県内市町村のU・Iターン者数と20～30代女性の割合（平成27年度）
（出所）邑南町定住促進課資料より作成

18. 定住人口の推移
（出所）邑南町定住促進課資料より作成

19. 消えたりしな
い
へこたれない

20. （出所）邑南町役場提供資料より作成

21. 2-1
“攻め”のA級グルメ構想

22. Ａ級グルメの取り組み
A級＝永久として邑南町の誇りである食文化を100年先の子ども達に伝えていくこ
と
地域活性化、持続可能なまちを目指し地域おこし協力隊を活用
レストラン素材香房ajikura 邑南町立食の学校
（出所）誰もが幸せになれる町邑南町へようこそ
http://www.soumu.go.jp/main_content/000325638.pdf

23. （出所）邑南町役場提供資料より作成

24. 成果
数値目標（平成27年度末）
•食と農に関する5名の企業家輩出
•定住人口200名の確保
•観光入込み客数100万人の実現
24名
128名
92万人

25. Ａ級グルメ構想 “攻め”の仕掛け人は
スーパー公務員 寺本英仁さん 邑南町 商工観光課職員
ＮＨＫ総合 9月26日 放送
ＮＨＫ プロフェッショナル
仕事の流儀

26. 2-2
“守り”の日本一の子育て村構想

27. 日本一の子育て村構想全体像
（出所）邑南町役場提供資料より作成

28. 日本一の子育て村“守り”の仕掛人
スーパー公務員 田村哲さん 邑南町 定住促進課 室長
徹底した移住者ケアと「日本一の子育て村構想」の統括推進者

29. 公立邑智病院
医療提供体制
産婦人科医 常勤
小児科医 常勤
麻酔科医 常勤
安心して産み育て
られる医療体制
お お ち

30. 公立邑智病院
病児保育室「コスモス」
・平成23年7月開設(実施主体は邑南町)
・定員：3名
・対象児：6ヶ月〜9歳まで
・職員配置：保育士1名、看護師1名
・利用時間：月〜金曜日(8:30〜18:00)
・利用料金：登録料(無料)、1日(2,000円)半日(1,000円)
子育て支援ポイント付与
・昼食、おやつ付き(500円、病院食を提供)
・登録数：367名
・利用実績：平成20年115名、平成27年404名

31. 子育てサロン
• Ｈ13.9立ち上げ
• 対象者：邑南町在住の小学校就学前の乳幼児とその保護者
• 職員配置：常時2名
• 利用時間：月～金曜日（9：30～16：00）
• 利用料金：無料 子育て支援ポイント対象サービス
• 利用者数：1.2～10組
1050人（474組） （Ｈ27年度）

32. （出所）邑南町役場提供資料より作成

33. （出所）邑南町役場提供資料より作成

34. （出所）邑南町役場提供資料より作成

35. 2-3 移住者のケア
• 移住コーディネーターや定住促進支援員相談窓口に配置
• 移住前や移住後の不安を相談
• 空き家バンクを活用した住居探し
• 移住後の就職先探し
• 週末移住体験や移住後の人生設計など知る機会の充実にも努めてい
る

36. • 日本一の子育て村構想を充実させるためには、財源確保が不可欠であ
る。
• 邑南町は、この財源確保について様々に思案する中で過疎地域という
地域特性を生かした財源確保の在り方を模索していき、過疎地域のみ
に認められた「過疎債」の活用を図る。
2-4 財源対応
過疎債活用の経緯

37. • 過疎債（過疎対策事業債）は過疎地域の市町村に認められた
地方債である。邑南町もそのひとつである。
• 平成22年の過疎法改正により、新たに「ソフト事業」も過疎対策
事業費（充当率100％、元利償還の7割を交付税措置）の対象
としている。
過疎債とは

38. 過疎債を活用することのメリット
（出所）「過疎債の活用例」より一部抜粋

39. • 過疎法改正により、邑南町が取り組む
日本一の子育て村構想における様々な事業へ
過疎債を充当することが可能になった。
• 過疎債を有効に活用することによって日本一の子育て村構想
のための一般財源の支出を振替え、向こう5年間の財源確保
の見通しをたてた。
→「邑南町日本一の子育て村推進基金」造成
過疎法終了後の財源を確保
（平成25年度時点：約3億130万円）
（出所）邑南町役場提供資料
邑南町での過疎債の活用

40. 3.まとめ

41. （出所）邑南町役場提供資料より作成

42. （出所）邑南町役場提供資料より作成

43. 邑南町の取り組みの展開のまとめ
• 邑南町では、合併後のまちづくりが課題であった。
• 少子高齢化と人口減という課題に直面する課題先進地域でもあった。
• 町長のトップダウンのもと 「日本一の子育て村構想」を掲げ、子育て支援の充
実で「まちの持続可能性」を目指す。
• 「日本一の子育て村構想」というメッセージ性の強い戦略が町外のマスコミ、視
察等の注目・関心を集める。
• 町外からの注目・関心・称賛が町民の「日本一の子育て村構想」への理解・関
心・自信に繋がり、「子育て支援の充実」で「まちの持続可能性」につなげようと
いう、子育て世代以外のすべての年齢層の理解・協力を得る体制が構築でき
た。

44. ・町の魅力・資源を活かした政策であったこと
・過疎地域、田舎だからこそ可能な資源・財源を探し、政策に結びつ
けたこと
・基本理念は「住民主役」、「地域に答えを求める」というスタンス
なぜ、「日本一の子育て村構想」という
子育て支援の充実策を打ち出せたのか

45. 町の魅力・資源とは
① 広島市内に近いという立地性
② 都会人を引き付ける田舎の魅力⇒サンショウウオが生息する、スイス
を意識させ、思わず息をのみ込む自然美
③ 豊かな自然に育まれた食材⇒A級グルメ、産直市場の可能性
④ 財源対応⇒過疎債、ソフト事業の活用
⑤ 医療・福祉供給体制⇒公立総合病院の存在、産婦人科医、小児科
医、麻酔科医の常勤体制の確保
⑥ 保育・教育⇒町長は「たとえ子供が1人になる保育所があっても保育
所の統廃合はしない方針を明言」、その他独自の支援の充実
⑦ 人材(役場職員、町民、移住者等のオール邑南体制)

46. おわりに
• “攻め”と“守り”のプロジェクト、定住促進・定着支援の充実で人口
社会増、合計特殊出生率の上昇へ
• 移住者の定着、子育て世代の呼び込みに成功
• 子育て支援の充実が「まちの持続可能性」につながるということを
すべての町民が実感できる戦略となったことが、邑南町が一定の
成果に辿りつくことができた要因ではないかと考えられる
• 現体制を維持、向上するための対策
• 今後の課題として、町内でも人口減、高齢化が進んでいる「まちの
周辺部」への対応が急務
• まだまだ挑戦が続く邑南町

47. 参考文献• 邑南町HP http://www.town.ohnan.lg.jp/
• 邑南町定住促進課資料
• 邑南町「まち・ひと・しごと創生総合戦略」
• http://www.town.ohnan.lg.jp/docs/2015103000015/files/senryaku_ohnan.pdf
• 誰もが幸せになれる町邑南町へようこそ
• http://www.soumu.go.jp/main_content/000325638.pdf
• 邑南町子育て支援ガイド
• http://www.town.ohnan.lg.jp/docs/2011042800013/files/kosodate-guide20110826.pdf?phpMyAdmin=ikE-
1iLh5mPM0VcNLSlwnkbqB30
• 邑南町子育て支援ポイント付与制度実施要綱
• http://www1.g-reiki.net/town.ohnan/reiki_honbun/r073RG00000986.html
• なるほどＢＯＯＫ すくすくジャパン！
• 邑南町観光協会 http://www.ohnan-kanko.com/
• 平成２５年版邑南町勢要覧
• 邑南町人口ビジョン（2015年）
• 邑南町農林商工等連携ビジョン（2011年）

48. ご清聴ありがとうございました。