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第21回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議 in 横浜
著作権利用
許可区分
ダウンロード 印刷 二次利用
◎長谷山貴博1 、宮澤千夏1 、原まみ1 、小林邦俊1 、丸山理恵1
渡邊理紗2 、塩川絢子2 、渡邉理恵子2 、松本和彦1 、奥山隆平1
1信州大学医学部附属病院 臨床研究支援センター
2協和キリン株式会社 研究開発本部
チャットシステムの利用により
新規立ち上げ業務が効率よく展開した事例報告
A 〇 〇 〇
P-033
本演題は協和キリン株式会社より依頼された治験での事例であり、共同演者に同社社員を含んでいます
本演題発表に関連して、開示すべきCOI開示にある企業等はありません
目的
• 初回面会からIRB締切までの期間が3週間しかない試験の立ち上
げ業務があった(通常は6~8週間ほどを要する)
• 迅速かつ円滑なコミュニケーションが不可欠と考え、チャット
システムを利用することにした
利用方法
• ユーザーは7名
(CRC2名、事務局3名、CRA2名)
• 業務テーマ毎に9つのチャンネルを設置
(雑談、作戦会議、初回IRB、プロトコル合意、同意説明文書
遺伝子解析、契約関係、検査者認定、被験者の支払い)
• 事前の取り決めにて、被験者の個人情報や依頼者の機密情報な
どは掲載しないこととした
利用データ
• 利用期間:15.5営業日
• 投稿数:425投稿
• 文字数:23, 020文字
⇒1営業日あたりの投稿数は27個(平均54文字)
⇒迅速かつ円滑なコミュニケーションが取れた
54文字といえばこのくらいの文字数にな
るようです。このくらいのテキストが一
営業日につき27個飛び交っていました。
投稿数の推移
IRB締切
関係者が一堂に会している感覚で、
お互いにフォローし合いながら進められた
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
11/10 11/11 11/12 11/13 11/14 11/15 11/16 11/17 11/18 11/19 11/20 11/21 11/22 11/23 11/24 11/25 11/26 11/27 11/28 11/29 11/30 12/1
CRA
事務局
CRC
とある文書の作成風景
CRA
事務局
CRC
※実際のやり取りを元にした作成したイメージ図であり、完全に一致するものではありません。
原案送付
改善提案
送ります
開けず…
案作成 賛同
賛同 完成報告
進捗確認 提出
受領報告
ヒアリング結果と考察
• 立ち上げ業務完了後にユーザーへ感想などをヒアリングした結
果と、それに対する考察をまとめる
• 以下の3項目に分類した
A) 連絡の高速化
B) チームワークの向上
C) 機能の活用
A) 連絡の高速化
タイムリーなやりとり
• ビジネスメール特有の前置きが省略でき、投稿せずともスタン
プでリアクションが取れたため、連絡のスピードが上がり連携
や情報共有がよりタイムリーになった
心理的ハードルの低下
• 小さなことでも躊躇なく質問することができたため、問題を早
期発見・解決することができた
システムの仕様に依存
しており再現性は高い
文字が伝える情報量には限界があるため、
音声や映像を使う手段も併用すべき?
コミュニケーション手段の使い分け
情報量
メール
電話 Web会議 対面
チャット
B) チームワークの向上
チームメイキング
• カジュアルなやり取りができ、副担当も参加しやすかったため、
業務開始後の早期にチームとしての一体感が感じられた
コミュニケーション
• 全体の様子が掴みやすく、自分以外の他ユーザー間のやり取り
もタイムリーに確認することができ、お互いに確認・対応漏れ
をカバーし合うことができた
チャットシステムの仕様に起因
したとは言えず再現性は低い
運用や工夫が
寄与したのでは?
カジュアルな雰囲気づくりのためにしたこと
• 初回ログイン時にウェルカムメッセージを送る
• 意識的に雑談する
• スタンプを多用する
• なるべく早く、短く返す
• プロジェクトのゲーミフィケーション
(作戦名、勝利・敗北条件を設定)
ウェルカムメッセージ
招待ありがとうございます!
どうぞよろしくお願いいたします
いらっしゃいませ!
狭いところですが…つ
「しらたま」っていいます
こう見えて男の子です 笑
お忙しいですか?
寒くなってきたのでご自愛ください
わあああ、ありがとうございま
す!!(猫さんが可愛いです)
しらたまちゃんの写真で、元気がで
てきました
ありがとうございます!
なるほどー
こんな感じねー
それを見ているCRC
事務局
事務局
事務局
CRA
CRA
CRA
C) 機能の活用
効果
• メンション機能で相手を呼び出せた
• ステータス(オン/オフライン)表示機能によって、遠隔で業
務するお互いの状況が推測できた
反省点
• どのような機能があるか把握しきれず、機能を十分に使いこな
せなかった
各ユーザーの理解度や習熟度に左右されるため、
事前レクチャーを十分に行う必要がある
事前レクチャーで必要なこと
確認
• サービスが提供する機能と使い方
• 利用環境や所属組織ポリシーなどによる利用規制の有無
取決め
• サービス利用の目的
• 利用における基本的なルール
• トラブル時の代替方法
まとめ
• 期間が短い新規立上げ業務にチャットシステムを利用した
• 迅速かつ円滑なコミュニケーションが取れた
• 「連絡の高速化」は再現性が高いが、音声/映像ツール併用も必要
• 「チームワークの向上」は再現性が低いが、工夫次第で再現可能
• 「機能の活用」のメリットを引き出すには、事前レクチャーが必要
⇒治験実施中も活用できるのではないか、引き続き検証していく

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