 こちらは、臨床実習にて私(杉長彬)がスー
パーバイザーをする際の、ケースレポートの
まとめ方マニュアルです。
 人間作業モデル(MOHO)を私なりに解釈し、
患者さんの情報収集をする際のポイントが書
いてあります。
 人間作業モデルについては、私の解釈ですの
で、キールホフナーが伝えていることとは、
違う危険性もあります。
 詳しくは成書(人間作業モデル 共同医書出
版)をご参照ください。
ちゃんとした知識が知りた
かったら本を読むか、作業
行動学会主催のMOHO基礎講
習会に参加してね☆
 まず、作業療法士は、
「患者さんの“作業”の状態をよくする仕事
なんだ。」という前提から始めます。
 では、人にとって作業とは、
 1 仕事
 2 遊び
 3 ADL
 この3つに分類できます。
 疾患や障害のために
人は作業が出来なくなる状態(作業機能障
害)に陥ります。(簡単にいえば作業の障害)
 この作業の障害を改善したり、作業の障害を
補って“良い”生活を送れるようにするの
が、作業療法士の仕事です。
患者さんにとって“大切な作業”が
出来るようにするのが
作業療法士の仕事なんだね!
 疾患や病気のために自分にとって大切な作業が出
来なくなること
 例
 脳梗塞からくる片麻痺の為に、「トイレ動作
(ADL)」が出来なくなる。
 認知症からくる暴力的な行動の為に、「孫の世話
をしながらのんびり過ごす(余暇)」という作業
が出来なくなる。
 統合失調症のために、生活リズムが崩れ、そのた
めに「仕事・人の役立つこと」が出来なくなる。
 なんで人って作業(行動)するの?しないの?”
というのを解決したり介入のきっかけを探すのに
使えると思います。
まず、人を3つの構成要素+環境の要素に分解して
考えていきます。
1.意志
2.習慣化
3.遂行技能
4.環境
病院の中にも、活動的な患者さんと活
動的じゃない患者さんがいるのは不思
議だよね? その違いは何だろう?
まずは、この4
つを覚えよう!
意志
習慣化
遂行技能
環境
①能力の自己認識(個人的原因帰属)
②興味関心
③価値
④習慣
⑤役割
⑥運動技能
⑦コミュニケーションと交流技能
⑧処理技能
⑨物理的環境
⑩社会的環境
4つの要素からさらに細
かく10個に分類できる
んだね。
意志
個人的原因帰属
興味関心
価値
習慣化
習慣
役割
遂行技能
運動
コミュニケーションと交流技能
処理
環境
物理的環境
社会的環境
その人に
とって大切
な作業が出
来るか出来
ないか??
ふーん
1 意志:やる気もないし、
自信もない
2 習慣化:毎日だーらだらしてすごす
3 遂行技能:そしたらどんどん出
来ないことが増えてきちゃった。
4 環境:さらに、だんだん周囲の人
冷たい視線が気になるようになってき
た。
5 それでますます、やる
気も起きないし自信もな
くなっちゃうよね。
悪循環がおき
作業機能障害
が起きている!
廃用症
候群
発話減少
認知機能低下
 これら10個の要素から人を評価していくのが人間
作業モデルの考え方です。
 まずはこの10個の項目で人を見るという事をして
みましょう。
 全体的に人の事をとらえるということが分かって
くるのではないかと思います。
 その上で、目の前の人にとって大切な作業ってな
んだろう?って考えてみてください。
精神科の評価ってわらりづらいけど、
これなら評価項目がわかりやすいね
 4つの要素は相互に影響を及ぼしあう。
意志
習慣化
遂行技能
環境
MOHOはシステム理論を基盤にしているので、1つ1つ
の要素が相互に影響及ぼし合うという考え方をする
んだよ!
システム理論とは:部分や要素に還元されず、逆にそれらを決定する
全体性についての科学のこと。
システムは互いに影響しあう要素からなるものである。システムは部
分に還元することができない。システムは目的に向かって動いてい
る。などの考え方だよ。
それ以上のことは私にはうまく説明できません!すいません(汗)
 片麻痺があって体が動かない(遂行技能・運
動技能)ので、やる気が出ず(意志)、ほぼ
寝たきりの生活(習慣化)をしていると、ます
ます体を動かさないで廃用を起きてしまう遂
行・運動技能)
「遂行」
身体が動
かない。
「習慣」
臥床傾向
「意志」
やる気が
出ない。
まさに
悪循環だね!
そんな方でも、好きな卓球のプログラム(意志・興味)
に誘うと、毎日卓球をするようになる(習慣化)、毎日
体を動かしていると、段々と体が動くようになってく
る(遂行技能・運動技能)。
そうするとますますやる気に満ちあふれ、
本人の自信(能力の自己認識)もついてくる
「遂行」
体力がついて
くる
「習慣」
毎日卓球
をする!
「意志」
卓球は好
き。 ますますやる気が
出てきちゃう!
 認知症のある方が、今まで好きだった料理がうまくで
きなくなると(遂行技能・処理)。そのことによって
すっかり自信をなくしてしまい(意志・能力の自己認
識)、だんだん外に出たりしなくなり、家に引きこも
りがちになってしまった(習慣化・習慣)。そのおか
げでますます認知症が進んでしまった。
「遂行」
料理がで
きない。
「意志」
自信がな
くなる。
「習慣」
引きこも
りがち
これもまた
悪循環だね!
 その方に、本人の興味(興味)のあるお花の水遣りを仕
事を頼んだら(習慣化・役割)、花を育てる仕事が楽し
くなってきて、だんだん活動的になり(習慣化・習
慣)、だんだんと前のように意欲的になり自分に自信
が出てきた。(意志・能力の自己認識) さらに、今ま
で少し苦手だった日付の感覚がでてきた。(遂行技
能・処理)
「遂行」
日付の感覚が出て
きて、認知機能が
良くなった!
「習慣」
毎日水や
りする!
「意志」
お花が好
き。
システム論的な人の見方が分
かってきたかな?
能力の自己認識
自信がないから
「できないよ・・」
「無理だよ・・・」
「もうおばあちゃんだから」
興味・関心
興味がない 嫌いだから
「歌は嫌いだよ」
「身体を動かすのは面倒だよ。」
価値観
やる事に価値を感じられない
ばかばかしくってやるきなれない
「私はもっと高尚な事がやりたいよ」
意志 習慣
習慣
ご飯を食べたらずっと寝る
ことになっている。
「痛い」と訴えたらすぐに
寝かせる習慣になっている
役割
病棟内では患者という役割
をもっている。
世話をされる人っていう役
割しかない。
日常の会話からも
評価できることが
いっぱいあるね。
運動技能
歩けない
どこかが痛い
手足が動かない
処理技能
すぐいろんなことを忘れてしま
う。
道具がうまく上手くつかえない
困ったことがあるとどうしていい
か分からない。
コミュニケーションと交流技能
人見知りで集団の場に出ていけな
い
上手く話せない
話している言葉がよくわからない
他患者とすぐけんかしてしまう。
遂行技能 環境
物理的環境
日中常に抑制ベルトにて
行動制限されている
車椅子生活を余儀なくさ
れている
野球をやりたけど病院に
はグランド場がない
社会的環境
トランプをやりたいけ
ど友達がいない。
話をしたいけど話す人
がいない。
家族が全く来なくてや
る気が出ない
お金がなくてやりたい
事ができない。
観察からわかること
もいっぱいあるね。
 まずは、こちらを書きましょう。
 Ⅰ 症例選択の理由
 Ⅱ 一般情報
 1 属性 氏名(A氏) 年代 性別
 2 診断名 障害名 合併症
 3 既往歴
 4 服薬状況
 5 家族構成 婚姻歴
 6 教育歴
 7 職業歴
 8 経済状況
カルテを見せ
てもらおう!
 Ⅲ 他部門からの情報
 1 医師
 治療方針 どのようになったら退院できるか
 2 看護師
 日中のADL状況 ご家族の面会情報 看護上の目標
問題点
 3 PSW
 ご家族の経済状況 ご家族の今後の退院先への意向
ご家族からの希望
 4 理学療法士 (もし担当していれば・・)
 Ⅳ 作業療法評価
 1 本人の希望
 2 本人が困っている事
「希望とか困っているこ
となんて無い」と言われ
たらそのように評価す
る。
【人間作業モデル
による評価をして
みよう!】
観察、面接の評価
ポイント! いよいよ評価だね!
頑張ろう♪
 誉めた時の反応はどうか?
 →得意そうにするか?
 OTを拒否する理由は何か?
 →「もう年だからできないよ・・・」「目が見え
ないからできないよ・・・」などの発言が特徴的
 もしくは、歩けないのに歩こうとするなど自分の
能力を過剰に見積もる。と言う事もあり得る。
自信があればいろ
んな事ができる
ね。
 「好きな事はありますか?」「何が好きです
か」と聞いた時の答えはどうか?
 活動ごとの様子 楽しそうな活動 つまらな
そうな活動は何か?
 興味関心チェックリスト
 「興味のあることはないです。」と答えた場
合⇒「興味関心がない。」「意欲低下。」な
どの評価が出来る。
歌が好き、おしゃべりが
好き、塗り絵が好き、釣
りが好き。など人の趣
味っていっぱいあるね。
 大切にしていることは何か?
 価値観を表すような話をするか?
 「家族を大切にしている」とか
 「仕事を大切にしている」など
 直接言葉にしなくても、家族の話になると、とた
んに目を輝かせて楽しそうに話す。などの様子が
見られる場合は、家族を大切にしている。などの
評価をすることもできる。
 また、病前の職業歴、家族での様子などもご本人
の価値観を想像するのに役にたつ。
わしは、頑固一徹
まがった事は大嫌いじゃ!
 1日の過ごし方はどうか?
 ADLを自分で行えているのか 声かけ・介助
など必要か
 OT中に本人にとって習慣になっていることは
あるか?
 病前何か習慣になっていたことはあるか?
朝の散歩が
私の習慣です。
 入院中の役割はあるのか?
 たいていの入院患者様の場合 患者役割のみ場合が多い
 誰かの友達という役割
 OT中は何か役割をしめすか?
 (日付を毎回答える人、料理の時は“混ぜる人”とか)
 元々どのような役割を持っていた方なのか?
 親 勤労者 妻 夫
朝の水やりが
私の役割♪
子育てが
私の役割♪
 歩行の状態はどうか?
 セーフティベルト使用の理由は? ふらつきか?
 上肢手指の作業能力など
 物をうまく動かす事ができるか?(協調性)
 作業中にうまく動くことが出来るか?
 自由自在に動くことができるのか?
 レクが見えるように姿勢を調整する。向きを変え
る等の行動が見られるか?
 体操をするときに上肢は動くのか?下肢は動くの
かなど観察できる。
 エネルギーはどうか?(OT中途中で疲れてしまう。
最初に飛ばしすぎて後で疲れる。最初から最後ま
で集中できる。などの様子を評価する。)
 物や道具の使い方はどうか?(鈴を上手く触れるか?
車いすの操作はどうか?鉛筆を上手く使ってぬり絵を
塗れるか?)
 行為や工程の一つ一つをやり遂げる。活動に最初から
最後まで取り組めるか?
 問題が生じたら,やり方を変える(→レクがよく見え
るように変えようとする。トイレに行きたい時に自分
で人に声かける等の対処をする。)
 知識を活かせるか?OTSの顔を覚えているか?OTが何
をやる所なのか覚えているか?
 OTからの指示 「こちらに座りましょう。」「これ
を混ぜて下さい。」「これをここに貼って下さい。」
など対して適切に行動できるかどうか?
 見当識等も処理に含まれる 「どこに住んでいるんで
すか?」「家はここから遠いですか?」
 話ができるか? 自分とはよく話が出来るか?
 視線は合うか?ジェスチャーはとるのか?
 言葉は聞き取りやすいか?声が小さかったり、こ
もっていたりして聞き取りにくいか?
 患者さんは他患と良く話しているのか? 看護師
や他スタッフとはどうか? ご家族とは話をする
のか?OTSとはよく話すが他の人と話さないなどの
場面は見られるのか?
 会話は、患者さんの方から話しかけてくるのか?OT
からから話しかけないと、患者さんの方から話し
かけてこないのか?
 どんな話をするのか?
 部屋は個室か相部屋か
 行動制限があったり、セーフティベルトなど使用
しているか?
 本人を活動的にさせる道具は病院内には何がある
のか?(動きの良い車いす。いつでも歌える音楽
プレイヤー、いつでもぬり絵が出来る道具がある
のか? テレビはどうか?机やいすの高さは本人
を活動的にするのか?しないのか?)
 病棟内に話せるような患者さんはいるのか
 家族の面会は多いのか少ないのか
⇒「面会簿でチェックする。」
 家族の経済的状況は
 家族の退院先の希望は
 家族との人間関係はどうか?
 ご家族と仲が良いのか良くないのか?
 周りに本人に活動を促すような人はいるの
か?
応援してくれる人がいれば
作業もはかどっちゃうね!
 仕事的生産的活動は?
 ADL IADL 日常生活活動は?
 遊び、余暇活動は?
 この3点から対象者が作業機能障害の状態にあ
るのかどうか?を考察する。
 作業機能障害ではない場合
作業療法の対象ではない。
 面接、話を聞く時のポイント
 興味関心チェックリストを使用する。
 役割チェックリスト
 作業質問紙 OQ
 作業に関する自己評価 OSA-Ⅱ
 作業遂行歴面接 OPHI-2 の質問項目などを参考にする。
 観察する時のポイント
 MOHOST
 ACIS
 VQ
 などを参考にする。
 質問紙をそのまま使用しても良いが、対象者とのラポール
を重視し、あくまで参考程度に使用してもOK
 Ⅴ 評価のまとめ
 まずはとにかく頑張って書いて下さい。
 項目を決めて、
段落ごとに書くのがポイントです。
 意志、習慣化、遂行、環境 4つの要素の関係を
まとめてみる。(図にすると分かりやすい)
 Ⅵ 問題点・目標の設定
 OTとして対処できそうな問題を立てる。
 たくさん上げすぎず、1つか2つくらいに絞る
 Ⅶ プログラム作成
現在の状態を悪循環として表現する。
欠陥
個人的原因帰属の低下
(自信の低下)
挑戦的課題の
回避
一層の自信の
欠如 技能の浸食
治療仮説を立てる。
意味のある活動
での成功
個人的原因帰属感の増加
(自信の低下)
活動を行うため
の自発的選択
自信の増加
技能の増加
 まずは、本人がやってくれそうな活動を選
ぶ。
 本人の好きなことを活動にする。
 活動が決まらなければ、会話を主体としたア
プローチを試み、その中で本人の興味のもて
そうな活動を探していてく。
 これで初期評価レポートは完成だ!
1期 4月1日~4月20日
「自信がなく、作業活動に消極的な時期」
2期 4月21日~5月2日
「OTSのとの関わりを通して、徐々にやりたいことを話し始
める時期」
3期 5月3日~5月15日
「園芸、書道など昔好きだった趣味を生き生きと取り組む字
時期」
3期くらいに分け、それぞれの時期に象徴的なタイトルをつける。
その上でその間のかかわりがどのようなものであったか、記載する。
 再評価について
 MOHOの10個の項目に分けて、それぞれがどのよ
うに変化したのか 記載する。
 考察について 考えるポイント
 この患者さんから自分が学んだことは何か?
 この関わりから自分が学校のみんなに伝えたい
ことは何か?
 この関わりから作業療法にはどんな意味・目的
があると考えたか?
 この患者さんは未来にどんな可能性があるか?
 自分が伝えたいことを書いてある文章を、教
科書や自分の文献の中から探す。
 そして、「○○先生もこう言っている。」と
いうような形で、自分の伝えたいことを補足
するように、引用文献を使う。

人間作業モデルとは久喜すずのき病院評価マニュアル