待機児童対策　2016年作成

待機児童の現状と対策
服部泰輔

本日は、クリックしていただきありがとうございます。
保育対策の不備により生じる待機児童の問題は、メディアを
騒がしていますが、データに基づく議論はあまりされていません。
本スライドでは、現在の待機児童の実情と今後の対策に関する
私見をまとめました。
興味があれば、最後まで見ていただけたら幸いです。
前書き

待機児童の定義
保育所への入所希望があり、入所・利用資格があるにも関わらず、
入所できずに入所を待っている児童のこと
厚生労働省の統計では、
・他に入所可能な保育所があるにも関わらず、
第１希望の保育所に入所するために待機している児童
・地方単独保育事業（＊）を利用しながら待機している児童
は、待機児童から除きます。
（＊）地方自治体が助成・監督する無認可保育所

保育所等定員数・利用児童数の推移
厚生労働省 Press Release
（平成２７年９月２９日）より
保育所の定員数は、年々増やしていますが、利用児童数も増加しています。
平成２７年度の定員充足率は約９４％です。

保育対策関連予算の推移
3881 4082 4304 4611
6248
7975
9294
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
予算（億円）
政府（安倍政権）は保育対策の予算を急増させています。
平成２２年度ー平成２７年度保育対策関係予算案の概要参考
＊平成２８年度は予算案です

保育所等の待機児童数・保育所等の利用率の推移
保育所の利用率は上昇しつづけ、１・２歳児において顕著ですが、
待機児童数は横ばいです。厚生労働省 Press Release

保育所利用者数の背景にある社会事情
・核家族化の進行
・共働き世帯の増加
・母子家庭の増加など
上記の影響は、幼稚園の在園者数と保育所の利用児童数推移にもみられます。
終業時間が早い幼稚園の在園者数は減少しています
1,000,000
1,500,000
2,000,000
2,500,000
平成17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
幼稚園在園者数
保育所利用児童数
（人）
平成27年子ども・若者白書より

年齢別の保育所等の利用児童の割合
０歳児は１０人に１人、１・２歳児は、２－３人に１人、
３歳児以上は、約半数（幼稚園含まず）が保育所を利用しています。
就学前児童数保育所利用児童数利用児童の割合
０歳児１０２０千人１２８千人１２.５％
１－２歳児２０８３千人７９３千人３８.１％
３歳以上児３１５５千人９２０千人４６.０％

年齢区分別の待機児童の割合
待機児童（総児童数の約１％）の約９割は、０歳児と１・２歳児です。
年齢利用児童数待機児童数
０歳児１２８千人５.４％３２６６人１４.１％
１・２歳児７９３千人３３.４％１６６３６人７１.８％
３歳以上児１４５２千人６１.２％３２６５人１４.１％
全年齢２３７４千人１００.０％２３１６７人１００.０％

待機児童の多い県
全国待機児童マップ
（平成２７年４月１日）
都道府県
待機児童数
（人）
東京都７８１４
沖縄県２５９１
千葉県１６４６
大阪府１３６５
埼玉県１０９７
兵庫県９４２
宮城県９２６
静岡県７８０
福岡県７５９
待機児童は、東京・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡などの都市部で多いです。
東京都の待機児童の割合は、３．６％（２７人に１人）です。
待機児童がいない県も１０県以上あります。
待機児童数の上位県

保育所の拡充政策における都市と地方の違い
地方では自家用車の通勤が多い。
都市部（東京都区部・大阪府）では、自家用車の通勤が低く（１０％・２０％）、
かつ、自動車の保有率が地方と比較し低い。
通勤時に子供を預けることのできる行動半径が異なる。
車通勤２０分 ⇒ 平均時速３０ｋｍ ⇒ １０ｋｍ
電車通勤（徒歩）２０分 ⇒ 平均時速４ｋm ⇒ １ｋｍ弱
総務省平成２２年度国勢調査利用交通手段参考
東京都市圏における世帯の自動車保有及び交通行動の要因分析参考
地方都市では、保育施設の空きができた場合に遠距離から預けることが可能。
都市部では、通勤途中に保育施設がなければ、難しい。

・保育関連の予算は、積極的に増やしており、定員数も毎年増加しています。
・保育所を利用する人は増えていますが、待機児童数は横ばいです。
・保育所は、０歳児は１０人に１人、１・２歳児は、２－３人に１人、
３歳児以上は、約半数が利用しています。
・待機児童の約９割は、０歳児と１・２歳児です。
・待機児童は、主として都市部で生じやすく、地域差が大きい。
ここまでのまとめ
日本政府は、対策を立て、保育所の予算・定員数を増やしている。
しかし、都市部の０歳児、１・２歳児の整備が追いついていない。
また、地域差が大きく、地域ごとの対応も必要です。

０歳、１－２歳児の保育コスト

児童の一人当たりの保育費用（年収別の個人負担）
１人あたりの平均保育料（個人負担分）２０４９１円 / 月
厚生労働省（２０１２年）「地域児童福祉事業等調査」など参考
国基準保育料
世帯年収例（所得割額）保育料負担（月あたり）
３００万円（９.２万円）３００００円
４００万円（１８.５万円）４４５００円
６００万円（２３.３万円）６１０００円
１０００万円（４４.５万円）１０４０００円
＊３人世帯、共働き、１歳児１人の場合
＊各都市により実際の負担額は異なる。

児童の一人当たりの保育費用（公的負担含む）
板橋区役所（２０１３年）「保育園児１人にかかる費用と保護者の平均保育料」
年齢保育料の平均月額１人当たりの月額費用
０歳児１９１００円４０６１００円
１歳児１９３００円２０３０００円
２歳児２２５００円１８１８００円
３歳児１６０００円１０８０００円
４－５歳児１４７００円９８０００円
個人負担も高額ですが、
０歳児から２歳児を保育所に預けた場合の社会的な費用はもっと高額です。

乳幼児の保育費用が高額な背景
児童の年齢保育士１人で担当できる児童の人数
０歳児３人
１－２歳児６人
３歳児２０人
４－５歳児３０人
児童福祉法児童福祉施設最低基準
厚生労働省平成２６年度賃金構造基本統計調査
保育士の人件費：３１６万７０００円＋社会保険料の会社負担（約１５％）
０歳児から２歳児の世話には、人手が必要です。

保育所に乳幼児を預けてアルバイトした場合の収支
個人収支：
時給１２００円＊８時間＊２０日＝１９２０００円
保育料（２万円）＊人数（減免措置あり）
社会負担（１人あたり保育料）：
０歳児３８万円１歳児１８万円２歳児１６万円
３歳児９万円
保育所に２人以上預けてアルバイトするのは、
高給取り以外では社会的に避けた方がよさそうです。
しかし、子育てにはお金が必要です。
板橋区の保育料を参考

まとめと考察
・０歳児、１・２歳児の保育費用は、３歳児と比較し、高額です。
・高額な理由としては、乳幼児には人手が必要な事が挙げられます。
（＊将来的には、保育士の給与上昇によりさらに費用が必要です。）
・少子化対策としては、夫婦あたりの子供を増やしたいのですが、
そのためには、収入が必要です。
・乳幼児を２人以上保育所に預けるのは、個人収入と社会負担の
バランスが悪いです。

少子化の現状
（夫婦あたりの子供の人数について）

０人１人２人３人４人以上
１９８７年２.７９.６５７.８２５.９３.９
１９９７年３.７９.８５３.６２７.９５.０
２００５年５.６１１.７５６.０２２.４４.３
２０１０年６.４１５.９５６.２１９.４２.２
国立社会保障・人口問題研究所
第１４回出生動向基本調査より
夫婦当たりの出生子ども数の推移（結婚期間１５～１９年）
夫婦あたりの子供の出生数は、減少しつつあります。

理想の子どもの人数
２０１０年度調査より
１人約４％
２人約５０％
３人約４０％
４人以上約５％
理想の子どもの人数は現実の人数より多いです。

理想の子どもの人数を持たない理由
理想の子どもの人数を持たない理由は、お金の問題が第一位。
３０代では、不妊や体力的な問題もあがります。
第１４回出生動向基本調査より

まとめ
夫婦あたりの子ども人数は、減少しています。
しかし、理想の子ども数は、現実の人数を上回ります。
その理由は、お金の問題が第一位です。
お金の問題を解決すれば、出生数の増加につながります。

保育対策の「これまで」と「これから」
保育施設を拡充する
需要を減らす供給を増やす
保育の必要な児童数を減らす
女性の社会進出
女性のキャリア形成
少子化対策をしつつ、
公的な保育需要を抑制する
⇒ 家庭における保育推進
（現行の政府方針）（新しい方針を加える）

問題点のまとめ
夫婦の共働き
女性の社会進出
核家族化
家庭保育力の低下
保育施設の拡充
・子供の人数が増えるにつれて
共働きで収入を増やす必要があるが、
子供の人数が多いと共働きは困難。
・共働きになると子どもを施設に預ける
必要があり、保育需要が増す。
・個人収入と社会負担を比較すると、
本人を経済的に直接支援し、
家庭で育児をした方がよい場合がある。
ただし、全員を支援するのは難しい。

解決策
女性のキャリアに子沢山の専業主婦の道をつくる。
第3子以降を中心とした児童手当の支給額の増額し、
仕事として子育てをする道を作る。
このキャリアを選択したい場合は、必然的に若い年齢で
結婚・出産する必要があり、結婚年齢の若年化につながる。
他には、育児休業制度の拡充など

待機児童対策　2016年作成

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