2023年CFMD東京_PF発表会

1. 担当医：手術はできません
抗がん剤治療やるなら本人に告知します
抗がん剤治療やらないなら、本人には告知しません
抗がん剤治療によって2-3ヶ月長く生きられるかもしれない
予後は半年でしょう
長男：抗がん剤治療は希望しません
今後は、診療所で診てもらいます 心苦しい
家族(夫、長男)
・伝えてほしくない
・今元気なのに,鬱になるかも
・本当に治らないのか？
担当医(筆者)
・早く本人に伝えたい
・どこかで言わざるを得ない
・自分自身のプロフェッショ
ナリズムに反する
本人
・吐いてしまうのはなぜ？
・便が黒い
・お父さんが心配
診療所スタッフ
・家族の意向が
優先されるのでは？
・まだ告知の時ではない
退院直後
家族(夫、長男)
・伝えたくない
・ショックではないか？
担当医(筆者)
・残された時間を
有意義に
使ってもらいたい
本人
・しこりが触れる
・お父さんが毎晩
泣いている
診療所スタッフ
・もう気づいているかも
告知を後悔
しないように
支援したい
事例選択理由
自分自身のプロフェッショナリズムを見つめ直す中で、
COMPASSIONATE CAREを実践することができた事例
主 体 を 信 じ て 支 援 す る こ と
診療所で初めてがんを告知した
いつどうやって告知すべきか
自分自身のプロフェッショナリ
ズムを揺り動かされた事例
プロフェッショナリズム
Class of 2023
北足立生協診療所 日向 佑樹
事例 8 0 歳代女性
・急性の背部痛
・採血で肝胆道系酵素上昇
膵頭 部 癌に よ る 胆 管 炎 ( ス テ ー ジ Ⅳ )
( 十 二 指 腸 浸 潤 、 腹 膜 転 移 あ り )
→ P T G B D 後、胆管ステント挿入
病院主治医と長男との面談
お陰様で
すっかり良くなりました
＠定期外来
本人へ告知
お葬式のお金を準備していた
お父さんのことが心配
(本人)
伝えられて安心した(家族)
終末期ケアを
進められるようになった(医療者)
退院2ヶ月後
ご家族に見守られながら
自宅看取り
説明責任
自分の活動を正当化し責任をとる
患者・社会のニーズに応える
人間性(ヒューマニズム)
尊敬・共感・同情
敬意・誠実性を備える
ってなんだろう？と悩み続けた
患 者 の 幸 せ
何も知らない本人
・会社を夫婦で立ち上げ
・夫婦二人三脚で会社を大きくしてきた
・今も、夫とダブルベッドで寝ている
・昔は社交ダンスが趣味だった
・現在は長男、次男が会社を経営
・長女は県外に在住
考察
→患者に対して正直であるべき
結論：患者の主体性を発動させ、支援する
(Compassion care)
主体性(Autonomy)とは
本事例の場合、自分の現実を直視し、自分の問
題として自らの意思で方針を決定したり、自分を
表現し、自分らしさを手放さない(自分らしく生
きる)プロセスであると定義した。
告知によって、患者の主体を取り戻し、人生の
最終段階における課題や自分らしさを支援するこ
とに注力した。
前医と家族の間で行われた「告知しない」という
合意形成を覆しての本人への告知であり、自分が正
しい行動だったのか最後まで不安であった。
振り返ると、患者にとっての幸せを常に問い、
「家族の希望に沿うだけでなく、告知し、患者自身
のautonomyを支援すべき」というプロフェッショナ
ルリズムに従って、粘り強く交渉するという
Compassionate Careを実践できた事例であったよ
うに思う。今後も、卓越した家庭医になるべく、患
者の主体性に働きかける実践を意識していきたい。
他人の痛みを感じ(Sympathy)
他人の立場で気持ちを理解(Empathy)
その状況で、他人が苦しんでいることを
和らげるためにできることをすること
(Compassion)
参考文献
・伊藤真理，秋元典子（2015）：看護学領域における主体性の概念分析，
日本クリティカルケア看護学会誌，11(3)，1–10
・Stern DT.Measuring medical professionalism.Oxford University Press,2006.