適切なインフォームド・コンセント とは?
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
医師が情報を持ち、
医師が決める
オレが決める型
医師と患者が情報を
共有し、決定も
共有する
共有型
患者が情報をもら
い、患者が決定
する
患者が決めな型
Shared Decision Making (意思決定の共有)
に基づく インフォームド・コンセント
1982 米国大統領委員会報告書 (A report on ethical and legal implications of informed consent in the patient-
practitioner relationship 1-3.1982)より
患者とのコミュニケーション技術
悪いニュースを伝える方法 -SPIKES-
Setting (場の設定)
Perception (認識度を知る)
Invitation (希望を確認する)
Knowledge (情報提供)
Empathy & exploration (共感と探索)
Strategy & summary (戦略と要約)
米国臨床腫瘍学会公式カリキュラム2003より
Optimizing Cancer Care, ASCO publication
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患者とのコミュニケーション技術
(わが国における患者の意向を基に作成)
悪いニュースを伝える方法 -SHARE-
Supportive environment (支持的な場の設定)
How to deliver the bad news (悪い知らせの伝え方)
Additional information (付加的な情報)
Reassurance and Emotional support (安心感と情緒的
サポート)
Fujimori et al. (2007) Psychoncology 16:573-81
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内富庸介, がん医療におけるコミュニケーション・スキル 悪い知らせをどう伝えるか. 医学書院, 2007
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
基本:面談中常に気をつけること
礼儀正しく患者に接する
初対面の時には自己紹介する
面談室に患者が入ってきたら挨拶をする
S
患者の目や顔を見て接する S
患者に質問を促し,その質問に十分答え
る
「ご質問はありますか?」 H
患者の質問にいらいらした様子で対応し
ない
患者の言葉を途中で遮ること
貧乏ゆすり
ペンを廻す
マウスをいじる,など
S
S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート
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大事な話の前には患者は緊張しているの
で,患者の気持ちをやわらげる言葉をか
ける
身近なことや時節の挨拶,患者の個人的な関
心事などに ついて一言触れる
表情(微笑む)などのノンバーバル・コミュニ
ケーション
「最近寒いですが風邪を引いたりしていません
か?」
RE
症状,これまでの経過,面接の目的につ
いて振り返り,患者の病気に対する認識
を確認する
「ご自分の病状をどの様にお考えですか?」
「治療効果について,ご自分ではどのように感
じていますか?」など
H
家族に対しても患者と同じように配慮する 「ご家族はどうでしょうか?」 RE
他の医療者(たとえば,他の医師や看護
師)を同席させる場合は患者の了承を得
る
「看護師の○○を同席させてもよろしいでしょう
か?」
S
S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート
STEP1:面談を開始する(患者が面談室に入ってから悪い知らせを伝え
るまで)
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悪い知らせを伝える前に,患者が心の準
備をできるような言葉をかける
「大切なお話です」
「予想されていた結果かもしれませんが・・・」
「お時間は十分ありますか」
「少し残念なお話をしなければならないのです
が」
RE
患者が感情を表に出しても受け止める
沈黙の時間をとる
患者の言葉を待つ
RE
悪い知らせによって生じた気持ちをいた
わる言葉をかける
「つらいでしょうね」
「驚かれたことでしょう」
「ショックだったでしょうか」
「お気持ちはわかります」など
RE
患者に理解度を確認しながら伝える
オープンクエスチョンを使う
一気に話さず、小出しに伝える
「ここまでいかがでしょうか?」
「話をすすめても良いでしょうか?」
H
質問や相談があるかどうか尋ねる 「何かご質問はありますか?」 H
S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート
STEP2:悪い知らせを伝える
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
がんの治る見込みを伝える
「治ることは非常に困難です。今の生活の質を
如何に保つかが今後の目標です」
「うまく共存を目指していきましょう」
A
患者が希望を持てるように,「できないこ
と」だけでなく「できること」を伝える
「治療はもうありません」 ×
「積極的な治療は、効果の期待も少なく、副作
用で苦しむだけになります。緩和的治療と
いって苦しみを抑えていく治療も大切な治療
です。」
「あきらめることなく、一緒に考えていきましょ
う」
RE
患者のこれからの日常生活や仕事につい
ても話し合う
「たとえば,日常生活やお仕事のことなど,病
気以外のことも含めて気がかりなことはありま
すか?」
「今後大切にしたいことは何でしょうか?」
RE
S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート
STEP3:治療を含め今後のことについて話し合う
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
説明に用いた紙を患者に渡す H
今後も責任を持って診療にあたること,見
捨てないことを伝える
「今後も最善を尽くして行きたいと思います」
「今後も責任を持って診療していきます」
「決して見捨てることはしません」
など
RE
患者の気持ちを支える言葉をかける
「「大丈夫ですよ」
「一緒に頑張っていきましょうね」
など
RE
S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート
STEP4:面談をまとめる
コミュニケーション技術による患者への精神状態への影響
研修を受けた
介入群
(n=292)
平均値±標準偏差
研修を受けて
いない対照群
(n=309)
平均値±標準偏差
P値
不安* 4.83±3.75 5.17±3.42 0.333
抑うつ* 4.59±3.75 5.32±4.04 0.027
満足度** 8.58±1.62 8.35±1.74 0.095
信頼感** 9.15±1.28 8.87±1.54 0.009
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
30名のオンコロジストをコミュニケーション技術研修を受ける群と、受けない群に
ランダムに割り付け患者の精神状態を評価: 国立がん研究センターで施行
Fujimori, Kubota, Katsumata et al. J Clin Oncol 32, 2014
*HADS:不安、抑うつを評価する尺度、数値が高いと悪い傾向
**数値が高いと良い傾向
緩和ケアという「第4の治療」
化学療法
+ 緩和ケアチーム(緩和ケア医、専門看護
師)による月1度以上のサポート
化学療法のみ
手術適応のない肺がん患者 n=151
NEJM 2010;363:8
結果:
• QOL (FACT-L)の向上 (P=0.03)
• うつ症状の軽減 (38% vs. 16%, P=0.01)
• 末期状態での積極治療(死亡の4日以内の化学療
法、ホスピスケアなし、3日以内のホスピス入院)の
減少(54%vs.33%, P=0.05)
• 生存期間の向上(8.9 vs. 11.6 mos. P=0.02)
Early Palliative Care
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亡くなる2ヶ月以内に化学療法していた患者の割合
2015/3/6 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
早期緩和ケア群(n=32) 対照群(n=25)
P=0.02
亡くなる2ヶ月以内の化学療法
亡くなる2ヶ月以内に化学療法なし
J Clin Oncol 29:2319-2326: 2011
がん患者とのコミュニケーションの重要性
• 転移性肺がん・大腸がん患者の大半(69%, 81%)は、化学療法に
よってがんが治癒すると誤解している
• 進行がん患者と、終末期ケア(End of life discussion)の話し合いをし
ないと、ホスピスに入院する期間が短く、精神的苦痛が多く、最後の週
に積極的治療(蘇生術など)が行われる傾向があり、QOLも低くなる
• 患者へ緩和ケアについての話し合いをしなかった医師が、患者が亡く
なる直前(最後の3ヶ月以内)まで抗がん剤を続ける傾向があった (P
<0.0001)
2015/3/6 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
NEJM 2012;367(17);1616-25
JAMA2008;300:1665
Hashimoto, Katsumata et al. The Oncologist 2009;14:752–759
再発・進行がん患者さんとのコミュニケーション
転移・再発した時点で以下の、話し合いを繰り返しすること
1. 病状の理解
• がんを治すことは困難であること
2. 意思決定支援
• 過剰な抗がん剤治療を避ける
• 緩和ケア・緩和療法という治療オプションの提示
3. ACP(Advanced Care Planning)
1. 大切にしたいことは?楽しみにしていることは?(生活の質について)
2. 身の回りのことができなくなってきた場合、どこで(在宅・入院・ホスピ
ス)どのように過ごしたいか?(End of Life Discussion)
3. 余命宣告をしない(Hope the Best, Prepare the Worst)
4. どんな状況になっても見放さないこと(孤独にさせないこと、将来の約束)
2015/3/6 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital