Rencontres pédagogiques du Kansai 2018

1. 大阪市立大学大学院文学研究科
フランス語圏言語文化学
福島 祥行
yf@chat--noir.com
関西フランス語教育研究会
年次大会
27 mars 2018
《他者》をむかえいれる
―ラーニング・ポートフォリオによる実践―
Accueillir les «autres» :
des pratiques du portfolio d'apprentissage

2. 2/42《他者》とは？
 《他者》の例：《言語》や《文化》を異にする人、
《価値観》を共有しない人、初対面の人 etc.
 しかしながら、われわれの世界には、自分ではない人
びとが存在し、その人びとと社会をつくって暮らして
いる／暮らしていかねばならない（《他者》は排除で
きない）。
 《他者》≠《自己》：《自己》とおなじコードを共有
するわけでもなく、推論によって内面をしるわけでも
ない。

3. 3/42《他者》とは？
 独我論世界1：十人十色＝知覚も認識も相異なる《わ
たし》だけの世界。他人とのコミュニケーションは推
論によるしかない。
わたし1
わたし3
わたし2
わたし5
わたしn
わたし4

4. 4/42《他者》とは？
 独我論世界2：以心伝心＝知覚も認識もまったくおな
じ《わたし》だけの世界。コミュニケーションが無意
味。
わたし
1
わたし
3
わたし
2
わたし
5
わたし
n
わたし
4

5. 5/42《他者》とは？
 独我論世界にはコミュニケーションが存在しない（コ
ミュニケーションの必要がないため）。
 われわれの世界は《他者》とのコミュニケーションに
よってなりたっている（非独我論的世界）⇒《他者》
の必要性。
 教育現場における《他者》の例：
 学生にとっての教員
 異なる時間の《自己》
 直接的対話相手（共発話者 co-énonciateur）

6. 6/42ラーニング・ポートフォリオ
 portfolio （ ⇐ porto folio ⇐ portafogli （ 伊 ） =
portefeuille 紙ばさみ）＝ 資料のバインダー ⇒ みずか
らの業績を説明するための資料集 ⇒ Teaching Portfolio
（教え手のふりかえりの素材） ⇒ Learning Portfolio
（学び手のふりかえり［省察 réflexion ］の素材）。
 学び手が、みずからの学びの痕跡（教科書の書きこみ、
プリント、写メ、録音、授業外での気づき etc.）を保
存し、後に、学びの軌跡をふりかえる réfléchir ため
のアイテム。

7. 7/42ラーニング・ポートフォリオ
 日本では、2000年前後から、「総合的学習の時間」が
導入⇒グループ学習など「非個体的能力」の発露のた
め、従来の評価方法がつかえない⇒プロセスの評価と
学び手じしんによる評価へというながれのなか、ラー
ニング・ポートフォリオが着目された（加藤・安藤
1999）。

8. 8/42ラーニング・ポートフォリオ
 「教え」から「学び」へのトレンドのなか、学び手じ
しんの「評価」の重要性が高まる ⇒ 「自己評価」
auto évaluation のトレーニングとしてのラーニン
グ・ポートフォリオ。
 学習を一過性の体験におわらせず、定着をはかるため
の「リフレクション（ふりかえり、省察）」の重要性
が指摘（Schön 1983） ⇒ 学び体験の言語化＝意識化
＝社会化（外化）による、学びなおしの場としての
ラーニング・ポートフォリオ。

9. 9/42実践の過程
 「指示明示的」な方が書きやすい。
 しかし、それが継続すると、しだいにルーティンとな
り、新鮮味がうすれ、惰性的記述となる惧れ。
 「自律性」陶冶のためには、フリースペース！

10. 10/42実践の過程
 しかし、「指示非明示的」は書きにくい？
 さいしょは「指示明示的」、じょじょに「指示非明示
的」へ？
 福島のラーニング・ポートフォリオ導入初年度（2008
年度）の軌跡をふりかえると……

11. 11/42実践の過程
 ラーニング・ポートフォリオに慣れていないうちは、
書いてくれない？
 明示的指示がおおすぎても書いてくれない？
 なんでもよいのでプリントに書きこむ機会をふやすに
は？

12. 12/42《他者》をむかえいれる環境
 「弱いロボット」
の思想（岡田 2012,
2017, 福島 2017）
 「 ス キ 」 （ ＝ 弱
さ）をしめすこと
で 、 イ ン タ ラ ク
ションを誘発する
＝《他者》をむか
えいれる。

13. 13/42《他者》をむかえいれる環境
教え手 学び手
inter-action
を誘発する装
置としての
ラーニング・
ポートフォリ
オ
ロボット こども
弱さ
弱いロボット
助け
スキ＝機会提供
ツッコミ＝ふりかえり

14. 14/42参考文献
 岡田美智男 (2012). 『弱いロボット』東京: 医学書院.
 岡田美智男 (2017). 『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』東京: 講談社.
 加藤幸次・安藤輝次 (1999).『総合学習のためのポートフォリオ評価』東京: 黎明書房.
 Schön, Donald, A. (1983).『省察的実践とは何か――プロフェッショナルの行為と思考―― 』［柳沢昌
一・三輪建二編訳］東京: 鳳書房, 2007.
 Zubizarreta, John (2008). " The Learning Portfolio: A Powerful Idea for Significant Learning ", IDEA
PAPER, #44, https://www.ideaedu.org/Portals/0/Uploads/Documents/IDEA%20Papers/
IDEA%20Papers/IDEA_Paper_44.pdf.
 土持ゲーリー法一 (2009).『ラーニング・ポートフォリオ』東京: 東信堂.
 土持ゲーリー法一 (2011).『ポートフォリオが日本の大学を変える――ティーチング／ラーニング／ア
カデミック・ポートフォリオの活用』東京: 東信堂.
 福島祥行 (2011). 「外国語教育における学習ポートフォリオの活用――初級フランス語における導入
のこころみ――」 『外国語教育フォーラム 金沢大学外国語教育論集』第5号: 14-26.
 福島祥行 (2017). 「相互行為分析からみたグループワークにおける「アクティブ」の発露について」,
『外国語教育メディア学会（LET）第57回全国研究大会発表予稿集』: 154-155.
 溝上慎一 (2017). 「大学教育におけるアクティブラーニングとは」, 溝上慎一 (編)『高等学校におけ
るアクティブラーニング』アクティブラーニング・シリーズ4, 東京: 東信堂: