森林ボランティアにおけるリスクマネジメント

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私たちは森林保全活動を行っている方々が安全な活動ができるような“仕組み”を考えています。
森づくりフォーラムシンポジウム～森づくり・野外活動の安全を考える～
森林ボランティアにおけるリスクマネジメント
プロジェクトマネジメントチーム森中大晴
2016年4月17日 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター

森の安全を考える会森林ボランティアにおけるリスクマネジメント
• リスクマネジメントってなんだろう
• リスクマネジメント
• リスクマネジメントの実際
• 事故に遭わない起こさない
©森の安全を考える会, All Right Reserved. 22016/04/17

森の安全を考える会誰こいつ？
森中大晴（もりなかひろはる）後期アラフォー
• 本業･･･国内製薬メーカー開発担当
• もうひとつの顔･･･福祉ボランティア(主に旅行介助、外出介助)、
某社会福祉法人評議委員
• 裏の顔･･･森の安全を考える会発起人の一人、
事務的なお仕事、企画、運営、広報を担当
応急手当普及員
• その他の顔･･･NPO法人花咲き村理事
• 出身･･･玉川大学農学部（昆虫学）
2004年の府中青年の家閉所記念プロジェクト「転ばぬ先の森林ボ
ランティア安全読本」作成に関わり、本格的に森林ボランティアに
参加する。プロジェクト修了後、安全読本を実践するために有志と
共に“森の安全を考える会”を立ち上げる
2016/04/17 ©森の安全を考える会, All Right Reserved. 3

リスクマネジメントってなんだろう

森の安全を考える会リスクはどこにあるのか？

雨上がりの日、チェーンソーを使っての間伐作業中、
昼近くになって急に上空で風が強く巻き始めた。
チェーンソー
作業経験豊富
雨上がり
足場は悪い
傾斜がある
お昼には終わらせたい
疲れた
人工林
突風
風を甘く見た
お昼近く
初心者

リスクの3要素
場面･･･人工林か広葉樹林かなど、活動の場がどのような状況で、
そこでどのような作業をどのような道具を使って行うのかという「場面」
人･･･年齢・性別、経
験・技術の程度、性
格、立ち居振る舞い
など、一人ひとり様々
な特徴を持つ「人」
時間軸･･･家を出てから活動老終えて家に戻るまでの参加者の時
系列と、企画・準備から運営、終了後の反省会までの団体の時系
列という「時間軸」

森の安全を考える会リスクはいつ起こるのか？
ヒヤリ・ハット事例から
• 収集したヒヤリハットからリスクを見いだす
ヒヤリ・ハットは、ただ集め、回覧するだけでは無く、分析すること
• ヒヤリ・ハット報告を「人」、「場面」、「時間軸」を切り口に分析し
てみる
• 収集したヒヤリ・ハットから、次のような時にリスクがあった（事故や
ケガが起こりがち）
– 作業の開始と終了、休憩とお昼時の前後15分(魔の15分間)
– 作業手順の飛ばし(魔が差す、これ位大丈夫の気持ち)
– 3年目の慣れ(余裕の甘え、油断)
– 目的の喪失(やる気の低下)

ヒヤリ・ハット
• 活動の上で、アクシデント（実際の事故やケガ）には至らなかっ
たが、その直前（または、きっかけ）となりうる事象（イニシデン
ト）
経験した者にとっては「ひやり」(>_<;としたり、「はっと」Σ(゜Д゜)
したり下場面であることから「ヒヤリ・ハット」という。
• ハインリッヒの法則
– ひとつの重大な事故は、
– 29の小さな事故と、
– 300のこう言ったヒヤリ・ハット（イニ
シデント）の上に起きている

• 林業における死亡災害(1990(平成2)年～1999(平成11)
年)に見る「こんな跨にプロの災害は起こっている」
林業労働災害事例集 2002(平成14)年、林業労働災害防止協会
• 伐木作業
– かかり木処理中
– 退避の誤り
– 伐倒木が隣接木に接触
– 伐倒方向の急変
– 倒れる時期が割れなどで早く
なった
– 伐倒木に接触
– 風による伐倒方向が変化
– 枝など物の飛来や落下
• 造材作業
– 取り扱い中の材や工具で災害
– 他人の造材作業の巻き添え
– 校などものの飛来や落下
• 造林作業
– 刈り(機械作業による)

森の安全を考える会リスクを見逃さない”力“とは？
本人が、作業者が、そしてリーダーが、
• 作業現場における危険発生の可能性に対する高い感受性を持
つこと
• 危険予知能力(想像力)を高めること
危険予知トレーニング(KYT)をもちいたトレーニング

リスクマネジメント

森の安全を考える会リスクマネジャ
• リスクマネジメントの計画・実施・分析を中心的に行う者
会長
リーダリーダリーダ
リスクマネジャ
• リーダー＝リスクマネジャ
• リスクマネジャ ≠ リーダー
• 望ましくは、リーダーがリスクマネジャを
兼務するのではなく、独立した担当と
して配置する
• リスクマネジャは、組織図の上位に
位置して組織全体を見渡せるよう
に配慮する

森の安全を考える会リスクマネジメントプラン
リスクマネジメントプラン
•リスクマネジメントへの取り組みや計画を決定
リスク識別
•どのリスクが活動に影響を及ぼすかを決定し文書化
活動マニュアル
定性的リスク分析
•主観的にリスクを評価する
定量的リスク分析
•客観的にリスクを評価する
R-Map法
リスク対応計画
•リスクに対応するタイミングを追求し、脅威を減らすための対策を決定
し方針を決定
リスク監視・管理
•取り残したリスクの監視
•新たなリスクの特定
•リスク軽減計画の実施、これらの効果を評価

森の安全を考える会リスクマネジメントプラン作成の手順
1. リスクマネジメント実施のための基礎情報の収集活動のステーク
ホルダー（利害関係者）を特定し、情報を収集する
2. リスクマネジメント方針の決定
3. 責任範囲の明確化
4. リスクテイクできる範囲の明確化
5. リスクマネジメントプランの作成

森の安全を考える会リスクマネジメントプランの作成
一般的なリスクマネジメントプラン
• 業務（活動、作業）目的
• 適用範囲（配布先）
• リスクマネジメントプロセス、方法論
• 責任分担
• 予算措置
• リスク基準（点数付け、許容値）
• 書式・報告フォーマット
• リスク監査と記録方法
• その他

記述項目記述内容
方法論どんな手法で実施するか
責任分担すべての利害関係者の責任範囲
ボランティア団体事情から言うとなかなか難しいと思いますが、そこ
はあなた自身が無用な責任を負わなくて良いように日頃から周りを
説得しておきます
予算措置リスクマネジメント運営のための予算
特別な予算という位置づけではなく、例えばケガに対処するために
救急箱を追加購入する、保険をかけるための予算など
基準団体として活動リーダーとして、どこまでリスクが受容できるのか、
事前に決定した許容度など
タイミングリスクマネジメントの実施頻度
報告書式作成すべき報告書を定義し，あらかじめ決定した報告書の形式無
用な報告書の作成作業は排除する
監査・追跡方法きちんと運用がまわっているか監査・追跡する方法

• 責任分担
• 予算措置
• その他

• 責任分担
• 予算措置
• その他
身の丈のリスクマネジメントプラン
• 作業名（作業説明）
• 適用範囲（どこから、どこまで）
• リスク評価方法と基準
• 責任範囲
• 予算措置
• リスク軽減実施の報告方法
• プランの確認と修正
• その他

リスク識別
R-Map法
し方針を決定

森の安全を考える会リスク識別
どのリスクが活動に影響を及ぼすか
• そもそも“どのリスク”って？
• 「リスク」が発生するのは何があるから？
• その「活動」はどうやってやるの？
• 「やり方」はどこかに書ける？
• そう「活動マニュアル（作業手順書）」があれば･･･
ぜひ、活動マニュアル（作業手順書）を作りましょう

リスク識別
R-Map法
し方針を決定

森の安全を考える会定性的リスク分析と定量的リスク分析
• リスク分析
– 定性的(主観的)
– 定量的(客観的)
• 必ずしも、ふたつを別々にして行う必要はない
• 現実的な方法として
1. 定性的リスク分析で「やる必要がある」と感じたリスク
2. このリスクについて、定量的リスク分析を実践する
一番重要なことは無駄に時間をかけないことです。

目的の違い
• 定性的リスク分析
識別されたリスクの影響度とその起こりやすさを評価する
• 定量的リスク分析
リスクの発生確率と影響度を数値的に評価し、対応が必要とな
るリスクを見極める

ツール「R-Map法」
• 危害の程度×発生頻度
– 危害の頻度
– 発生頻度
定性的な表現例
Ⅳ 致命的死亡、重症、入院治療を要す
Ⅲ 重大長期（2週間以上）の通院加療
Ⅱ 中程度短期（2週間未満）の通院加療
Ⅰ 軽微軽傷
0 無傷なし
レベル定性的な表現例（毎月の活動）
5 頻発する年7回以上の活動で発生
4 しばしば年3～6回の活動で発生
3 時々年に1～2回程度の活動で発生
2 起こりそうにない２～5年に1回
1 まず考えられない 5年以上で1回
0 ありえない 25年以上で1回

ツール「R-Map法」
5
年7回以上の活動
で発生
C B A1 A2 A3
4
年3～6回の活動で
発生
C B B A2 A3
3
年に1～2回程度の
活動で発生
C B B A2 A3
2 ２～5年に1回 C C B A1 A2
1 5年以上で1回 C C B B A2
0 25年以上で1回 C C C B A1
無傷軽傷
通院加療
(短期)
通院加療
(長期)
死亡・重症
入院治療
0 I II III IV

森の安全を考える会あなたの許容範囲・みんなの許容範囲
20xx年4月17日の朝刊記事より
NPOが画期的なガンの薬を発見！！
NPO法人森づくりフォーラムが、都内の山林に画期的なガンの治療
薬があることを突き止め、これを製品化することに成功しました。
この薬は、一回の投与だけで、すべてのガンに有効な薬として期待さ
れていますが、体質によっては、重大な副作用を発症してしまうため、
その使用については様々な物議を醸しだしています。

森の安全を考える会あなたの許容範囲・みんなの許容範囲
あなたは、ガンにおかされています。
そこで、この薬を使用することを医師に勧められていますが、この薬は、
体質によって重大な副作用が発生してしまいます。あなたは使用し
ますか？
A) 完治するが、5％の確立で死亡する
B) 歩けなくなってしまうが、75％の確立で完治する
C) 強烈な痛みが1ヶ月続くが、50％の確立で完治する
D) 他の薬が効かなくなってしまうが、25％の確立で完治する

リスク識別
R-Map法
し方針を決定

森の安全を考える会リスク対応計画
• 活動マニュアル（リスク識別）で得られ、
• R-Map法（リスク分析）で優先順位をつけたリスクについて、
• リスクマネジメントプランにしたがって、対応方法を計画します。

例えば･･･
• 道具の片付け（という活動マニュアル）の中で、ケガや事故を起
こしそうなリスクを抽出します
– 大鎌や鉈等の刃物を研ぐとき指を切ってしまう
– 大鎌や鉈等の研ぎ終わりに油を引き忘れる
– チェーンソーの刃を研ぐときに、チェーンで手を引っかけてしまいケガをする
– 動力機のガソリンを抜くときに、タバコの火が引火する
• 得られたリスクを、R-Map法（発生頻度×危害の程度）をもち
いて優先順位をつけます
– 指切り → ガソリン → チェーンソー → 油引き忘れ
• どのようにすれば、このケガや事故を防げるかを考え、書き下ろす
→リスク対応計画 → チェックリスト等

以下のことを考慮する
• 許容可能なリスクは、ダイナミックに変化する
– 社会通念の変化（社会環境の変化）
– 使用者の属性（代替わり、経験の有無）
• ヒューマンエラーは一定の確率で必ず発生する
– 錯誤（さくご）･･･目標設定は正しいが実施の際に「誤り」、「うっかり」、
「思い込み」、「取り違え」
– 失念･･･作業のし忘れ、記憶の忘却（過去記憶と未来記憶）
– ミステイク･･･目標設定自体の誤り、知識不足による判断ミス
– 違反･･･故意、初心者やベテランのルール違反

ヒューマンエラーと常識と非常識
• シャンプーした猫を、電子レンジで乾かして死亡させた
• 冷凍食品には防腐剤が入っているので常温で1週間くらいは大
丈夫だと思った
• 飲みかけの100％果汁ジュースを、夏場にロッカーで1週間保管
• ロングライフ牛乳を、開封後でも賞味期限まで大丈夫だと思って
飲んだ
• 缶入り飲料を、缶のまま電子レンジで温めようとした
• 一般家庭用液晶テレビを浴室で使用した
• 米ぬか入浴剤を、ぬか漬けに使った
常識と非常識のボーダーラインは、発生確率で見極める

ヒューマンエラーへの対策
• 誤りにくく設計
– 機械など、誤操作しにくいものを選択する
– 重要な表示は大きくする
– 間違った手順を踏むと、それ以上、進まないようなマニュアルにする
• 誤っても安全な設計
– 枝打ち時に、枝打ち鉈、ノコにケーブルを付ける
– 刈り払い機のスロットル変更

リスク識別
R-Map法
し方針を決定

森の安全を考える会リスク監視・管理
• 取り残したリスクの監視
– 定性的、定量的リスク分析で低リスク評価となり
リスク対応計画に含めなかったリスクについて、レベルが上がっていないかを
監視する
• 新たなリスクの特定
– ヒヤリ・ハット事例を通じて新たなリスクが発生していないかを特定する
– 新たなリスクが特定できたら、リスクマネジメントプランフローに従い、プランの
改訂を行う
• リスク軽減計画の実施
– リスク軽減計画を立てて終わりではなく、実施を行う。
– また、実施結果（リスク軽減報告）を分析し、その効果を評価する

森の安全を考える会リスクマネジメント策定時の注意点
• 継続的に実施可能であるか
– リスクマネジメントには日常的な活動であることを加味した内容づくりが必
要です。
• 手順は適切に作成されているか
– リスクマネジメント活動の手順においては、各担当・係において管理する項
目が重複または間隙しないことが必要です。
• 参画すべきすべての関係者がリスクマネジメント活動に組み込ま
れているか
– リスクマネジメントにかかわるすべての関係者が計画に登場し、責任などの
所在が明確になっていることが必要です。
• 定期レビューのための仕組みが存在しているか
– リスクマネジメント計画のチェックそ定期的に実施するための仕組みの構築
が必要となります。また、チェック方法、仕組みなどについても、定期的な監
視ないしはレビューが必要です。

森の安全を考える会リスクマネジメント策定時の注意点
• 利用すべき運営資源、責任の所在及び実施時期は適切である
か
– 対象となっているリスクを管理するに当たって、運営資源の利用は有効で
あるか、さらに責任の所在及び実施時期について問題ないか考慮します。
• リスク対策の優先順位は適切であるか
– そのリスクの発生が、活動にとって大きく(悪)影響を及ぼすものであるのか
否か。また、そのリスクが優先的に管理されるべきものであるかどうかを論理
的に判断します。
• 策定したリスクマネジメント計画はリスクマネジメント方針と適切に
対応しているか
– 団体のリスクマネジメント基準としてのリスクマネジメント方針に矛盾しない
プログラムの内容になっていることが必要です。

森の安全を考える会ご静聴ありがとうございました
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森の安全を考える会一般市民のリスク認知
リスクを認知する一般市民の心理的尺度は死亡率、事故率といっ
た医学・疫学や工学によって推定される物理的な尺度とは異なった
次元を持っている
(1)恐ろしさ
(2)未知性
(3)関与者の数
3つの次元から把握することができる
(4)生態系へ与える影響度
4つの次元によってリスクの属性をカテゴリー化し、そのカテゴリーに対
するリスク認知の大きさを相対的に評価すること等が社会心理学者
から提案されています。

森の安全を考える会ヒヤリ・ハット
グループでチェーンソーを使った間伐作業
木の倒れた方向が違った
一歩間違うと重大事故

状況・想定
イニシデント
アクシデント
• これからやろうとしたこと
→もちろん安全かつ有効な方法で
• 思いも寄らない方向へ・流れへ
→いや～どきどきした。
• 事故、ケガといった状況
→やっちまった

•
「ひやり」や「はっ」とすることはいつ起こってもおかしくない
予想だにしない時に起こるもの

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