久米島・那覇研修会報告書
平成29年1月27日〜28日
【あやこcafé資料】2016年度 視察
江東区議会 民進党・無所属クラブ
鈴木 綾子
写真:久米島町 大田町長と勉強会参加者
視察勉強会 行程表(1日目)
■主催者:ローカル・マニフェスト地方議員連盟
■参加者:鈴木 綾子
■日時:平成29年1月27日(木)・28日(金)
視察勉強会 行程表(2日目)
■主催者:ローカル・マニフェスト地方議員連盟
■参加者:鈴木 綾子
■日時:平成29年1月27日(木)・28日(金)
■研修会:未来フォーラム「若者とつくる政治のカタチ」
■主催者:ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟
■場所:那覇市 若狭公民館
■内容:
14:00 未来フォーラム「若者とつくる政治のカタチ」
【報告1】 「島と自治~久米島視察を踏まえて」
高橋美野梨 北海道大学北極域研究センター 助教
【報告2】 「データで見る議会改革最前線」(仮題)
西川裕也 早稲田大学マニフェスト研究所
【講 演】 「政策のベクトルを若い世代へ 」
川上文浩 岐阜県可児市議会議員
【報告3】 「公民館をいかした政治参加の取り組み」
新田繁睦 Voter’s NET代表
◇フリーディスカッション(会場との質疑応答・意見交換など)
17:30 終了
久米島町視察
【久米島の地形】
沖縄本島の西約100キロに位置し、古くから琉球列島の中でもっとも美し
い島と言われ、琉球王朝時代には交易の拠点として栄える。スヌーピーア
イランドといわれる。島全体が県立自然公園に指定され、美しいビーチ(は
ての浜が有名)やダイビングスポット、フィッシングスポットは、毎年多くの観
光客を魅了している。
【久米島の産業】
主要産業はサトウキビ、黒毛和牛、泡盛。
日本一の取水量を誇る海洋深層水の研究施設があり、世界で唯一の海洋
温度差発電の実証プラントや、海洋深層水の漁業・農業への活用など、最
先端の研究が行われている。海洋深層水 の雇用 は、200名程度海洋深層
水関係の売り上げが20億円。県外から、海洋深層水を学びに久米島に来
て、雇用につなげるという仕組みづくりも実施。
【人口動態】
人口減少と少子高齢化が進み、ピーク時には17,000人を超えていた人口
も、現在は約8,200人まで減少。2014年5月に日本創成会議が発表した「消
滅可能性都市」では、2040年までの30年間で20~39歳の女性の人口が5割
以上減少すると推定される896自治体の一つに数えられる。(久米島町の
減少率は67.9%)。30年程前までは一学年300人近かった子どもたちの数も、
ここ数年は100人を切る。
久米島町の概要・大田町長との意見交換
久米島町の大田町長を表敬訪問し、久米島の概要や産業振興、海洋深層
水事業、教育などについて、お話を伺い、意見交換を行った。
久米島視察:じんぶん館 視察
久米島町では、教育を中心とした地域活性化を目指して、島に唯一の高
校である久米島高校の魅力化に取り組んでいる。高校との連携のもと、島
外から生徒を募集する離島留学、生徒の学力向上や進路実現をサポート
する町営塾、地域を題材に課題解決型の学習をする地域学の導入などを
行っている。
じんぶん館は、平成28年4月にオープンした交流学習センターで、県外から
久米島高校に入学する離島留学生用の宿泊施設と、町営塾「久米島学習
センター」を兼ね備えた施設。
久米島町交流学習センター「じんぶん館」
【建物構造】鉄骨造4階建(敷地面積:1,195㎡)
【開設年月】平成28年4月
【居室収容人数】24人(男女とも4人部屋×3室)
久米島視察
平成27年度に開校した高校生対象の町営塾。大学進学対策から授業の
補習、テスト対策など、進路や習熟度に合わせた個別指導と自立学習を実
施。ゼミ形式の「ちゅらゼミ」では様々なカリキュラムで社会人基礎力を身に
つけ、議論を通し生徒それぞれの夢について考える。
①普通の塾との違い
学習センターは民間と公の機関が協力して運営する塾。離島で他の地域以
上の教育機会があることを実現するための塾。進学実績をあげることだけ
ではなく、島の人材育成も実施。
②久米島で学習センターをする理由
すでに人口流出が激しかった離島の海士町にある島前高校で学習セン
ターが発足し、国公立大学の進学率が向上しただけでなく、また島に戻って
きたいと考える子どもたちの増加、都会から島の高校に移住し、通学する
島留学により、学習センター、高校を中心に町が活性化したという事例にな
らい、さらなる島の発展につなげていくため。
③授業内容
学校の成績アップから大学進学までを目的とした個別指導を実施。科目は
国語・数学・理科・社会・小論文・推薦AO入試対策まで幅広く対応。通塾曜
日や日数は、基本的には高校1・2年生は週2日、高校3年生(受験生)は
週5日で進めている。
月謝:1-2年、生活保護世帯は5000円 3年生は7,000円。
(生活保護世帯は学習支援費5,010円が申請可能)
久米島学習センター
久米島視察
①経緯と概要
平成21年には沖縄県教育委員会より、園芸科の生徒募集を平成26年度を
もって停止するとの提案を受け、園芸科は廃科の危機に直面
久米島のような離島にとって、園芸科の廃科は単に一つの科がなくなると
いうだけには収まらない。基幹産業である農業の担い手不足を招くだけで
なく、子どもたちの学びの選択肢が狭まることで、島外進学を選ぶ生徒が
増える可能性がある。それにともなって一家転住が増え、人口減少が加速
し、島の衰退にもつながりかねない、島の将来を左右する問題。
この問題に対処するため、行政や教育委員会、町商工会、地域住民有志
などによる「久米島高校の魅力化と発展を考える会」を発足。本格的に高校
魅力化プロジェクトがスタート。
園芸科の存続を求める署名運動や住民大会、町長や町教育長、町議会議
長による働きかけなどのかいあって、園芸科廃科はいったん延期。その後
も、「島の教育は島全体で応援する」との考えの下、オール久米島で高校魅
力化プロジェクトを進めている。
②久米島高校魅力化の目的と3つの柱
目的:生徒数を増やし、園芸科を存続させ魅力ある高校づくりを行う。
3つの柱
1・授業の魅力化:探求学習の導入。地域と密着した学び
2・離島留学:様々な価値観を持った生徒同士の交流から視野を広げる
3・町営塾:ICTを用いた個別学習、課題解決型プロジェクト学習
推薦、AO入試対策
久米島高校魅力化事業
久米島視察
ハワイ島にあるハワイ郡と久米島町は、ともに域内に海洋深層水の研究施
設があることから、2011年に姉妹都市になった。
久米島高校では、ハワイ郡コナ市にあるコナワエナ高校へ、毎年夏に3週
間の短期留学が可能。費用は、9割を町が負担する。
試験と面接を経て選抜される3名の生徒(普通科2名・園芸科1名)は、ホー
ムステイをしながらコナワエナ高校に通い、現地の高校生活やホストファミ
リーとの生活を体験。ハワイ沖縄県人会の方々との交流や、毎年ホノルル
で開かれるハワイ沖縄フェスティバルの見学など、ハワイと沖縄・日本との
絆を感じる機会も多くつくっている。
生きた英語を学び、国際感覚を身につけることに役立っている。
ハワイ島短期留学
離島留学(島留学)
①概要
久米島町では、町外から沖縄県立久米島高等学校へ入学する生徒を久米
島町離島留学生として、町営寮の提供と身元引受人の紹介をしている。現
在21名の生徒が留学中。
②対象とする生徒
新たに高校1年生にあがる生徒が対象で募集人数は約10人。
高校3年間を親元を離れて過ごすことになる離島留学では、まず基本的な
生活習慣が身につき、自律した生活ができることが大前提となる。
学業や部活などに全力で取り組む意欲のある生徒、地域活動や社会貢献
活動に関心がある生徒、興味関心のあることに自らチャレンジする姿勢を
持った生徒が対象。心の矯正や癒しを目的とするものではない。
③受け入れ体制
交流学習センター「じんぶん館」の宿泊施設を、寮として提供。
久米島視察
Q島留学について、留学生は何を期待して久米島で学ぶのか?
7月に東京・大阪で説明会。
アンケートによると、多いのは、①自然の豊かなところで過ごしたい②少人
数で行き届いた指導に期待③離島医療に興味がある など。
Q ICTの利活用は?
受験生1人一台 iPad を貸与。
スタディサプリを活用して学んでいる。
じんぶん館にはWi-Fiが整備されており通信環境も良好。
生徒には費用負担はなく、地域おこし協力隊の経費を使って必要な設備を
整備。
Qハワイ短期留学の体験者の声は?
ハワイで観光を学べた。沖縄の文化に関心が深まったなどの声が多い。
質疑応答
所感
久米島町では、離島における地域振興の活
きた事例を学び、大変有意義だった。
少子高齢化による人口減少などの影響もあ
る中、地域振興においては、海洋深層水の関
連事業が年間の売上が20億円などを超え、
久米島の持つ豊かな自然を活用した地域活
性化を着実に進めている。また、久米島高校
魅力化事業においては、次世代を担う若い世
代を育てていくため、島の出身者だけでなく、
全国から意欲のある学生を募集し、島留学、
じんぶん館による寮生活、学びのサポートを
行うなど、先進的な取り組みを行っている。タ
ブレットを用いた学習や、Wi-Fiの整備なども
進んでおり、大変参考になる事例であり、離
島のみならず全国に通用する施策であると感
じた。
久米島視察:海洋深層水関連事業
日本最大の海洋深層水取水設備が稼働している久米島町は、15年以上
にわたり、海洋深層水を中心とした町の活性化を進めてきた。
久米島町では、海洋深層水 の雇用 200名程度となり、海洋深層水関係の
売り上げが20億円を超えるなど、海洋深層水関連産業の雇用創出地方創
生の観点からも注目を集めている取り組みである。
沖縄海洋深層水研究所
2000年の開所以来、クルマエビ等の水産分野、夏場に栽培が困難な葉も
の野菜等の農業分野を中心に様々な複合利用技術を研究開発し、民間企
業への技術移転を行い、10年間で海洋深層水利用産業を島の主要産業へ
と成長させた。この実績を基に、地域資源である海洋深層水の更なる利用
拡大により、エネルギーの自給率向上、地産地消・循環型社会の構築を目
指している。
化粧品製造:㈱ポイントピュール
海洋深層水を使用した化粧品製造・販売。久米島沖2.3km、水深612
m からくみ上げられる海洋深層水は、雑菌が少なく、ミネラル分を豊富に含
んでいる。沖縄県海洋深層水研究所に隣接しており、研究所から直結した
パイプラインで外気に触れることなく取水。取水された海洋深層水は、精製
され、化粧品の原料として活用。
久米島視察:海洋深層水関連事業
海洋深層水を活用した海ぶどうの養殖を行なっている。
沖縄県内で最も規模が大きく、県内から出荷される約半分の180トンの海ぶ
どうの生産を行なっている。
海洋深層水を使うことによってミネラルと温度調整が可能で、安定的な生産
や品質の保持にも役立っている。
海ぶどう養殖:久米島海洋深層水開発(株)
カキ養殖:ジーオーファーム
海洋深層水を使った牡蠣の陸上養殖を行う施設。
ジーオーファーム社は、全国でオイスターバーを経営するゼネラル・オイス
ターの子会社。卵の受精から成貝に生育するまで一貫して陸上で行うのは
世界初。海洋深層水は表層水に比べ温度調節が容易で、通常2年程度か
かる生育期間を大幅に短縮することができる。
雑菌がいない海洋深層水を用いることで、ウイルスフリーの食あたりしない
安心、安全なカキとして世界に売り込むことを目指している。
久米島視察:海洋深層水関連事業
海洋深層水を活用した車海老の養殖を行っている。
海洋深層水で車エビを育てると、表層の海水には少ないミネラルなどの成
分が豊富にあるため、非常に美味しく安全でかつ、健全な車エビを育てるこ
とが可能となる。久米島の海洋深層水を使った車エビは、日本一の生産量
を誇っている。
車海老の養殖
バーデハウス久米島
海洋深層水を使った温浴施設。
バーデとは、ドイツの伝統的温浴法で、日本でいう「湯治」のこと。施設は海
に面した風光明媚な環境にあり、スパ、サウナ、休憩設備などを有している。
プールでの教室の開催などもあり、島民の健康維持や観光スポットとしても
注目を集めている。
那覇:未来フォーラム
島嶼学会会員として、グリーンランドの島嶼研究を
行なっている高橋氏による講演。島の自治制度の
紹介やグリーンランド研究についてのお話。
久米島町は、海洋深層水の関連事業が年間の売
上が20億円などを超え、また若者を活用した街の
活性化を進めている。久米島の持つ豊かな自然を
活用した地域活性化を着実に進めている。沖縄県
は自然に恵まれた環境であり、それぞれの自治体
の持つ固有の自然、資源などを生かした地域活性
化や産業振興を行なっているが、久米島町はその
好例の一つであると言える。
島と自治:高橋美野梨 北海道大学北極域研究センター 助教
データでみる議会改革最前線:西川裕也 早稲田大学マニフェスト
研究所
議会改革や若者の政治参画に関わる、シティズンシップ教育の先進自治体
の事例の紹介をもとにした内容。
■議会改革の事例
①兵庫県議会の政務活動費のWeb公開
②所沢市議会の議会報告会
③東村山議会の議会報告会。
③沖縄県の宮古市議会のワークショップ
■シティズンシップ教育の事例
①大阪市議会
②八尾市議会「模擬市議会議員選挙」
③大分市議会「大分県高校生議会」
④早稲田大学マニフェスト研究所
「学校模擬選挙マニュアル」出版。クラーク・マニ研モデルの開発。
模擬選挙については、クラーク・マニ研モデルをクラーク国際高校と連携し
て実施。
那覇:未来フォーラム
第10回マニフェスト大賞、成果賞最優秀賞を
受賞した可児市議会の議会改革の取り組み
について紹介する内容。特に、若者の政治参
画に関連し、「地域課題懇談会」NPO縁塾と
連携して取り組んでいる「エンリッチプロジェ
クト」や模擬投票などについて詳しく説明。
政策のベクトルを若い世代へ若者と議会が創る地域の未来!
川上文浩 岐阜県可児市議会議員
公民館をいかした政治参加の取り組み:新田繁睦 Voter’s NET代
表
・若者の政治参画・投票率を向上させるための
本質的な課題
・公民館を拠点に取り組んだ事例
・若者の政治参画を促すための社会的要請
等についての説明と、那覇市若狭公民館で実
践している公民館を活かした政治参加の取り
組みに関する紹介などを行った。
所感
今回参加した未来フォーラムは、若者の政治参画、シティズンシップ教育に
特化した内容だった。沖縄県の事例だけでなく、岐阜県可児市の若者議会
や、議会をあげた地域課題懇談会、NPOと連携したシティズンシップ教育の
具体例は大変参考になるものだった。
那覇市若狭公民館の取り組みは、シティズンシップ教育の中で、政治的な
中立の難しさが課題となる中で、地域の若者が政治に抵抗なくつながれる
環境づくりが素晴らしいと感じた。
先進事例を絶えず学び、意見交換などを重ねることにより、江東区におけ
る若者の政治参画の推進もしっかりと進めていきたい。

久米島・那覇勉強会報告書