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平 成 2 7 年 度 証 券 ゼ ミ ナ ー ル 大 会
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第三テーマ C ブロック
中小企業の資金調達について1 0
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龍谷大学 三谷ゼミナール C 班
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目 次
序 章
第 1 章 中 小 企 業 を 取 り 巻 く 環 境
第 1 節 中 小 企 業 と は
第 2 節 中 小 企 業 に お け る 現 状 と 課 題5
第 3 節 中 小 企 業 政 策 に つ い て
第 2 章 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 取 り 巻 く 環 境
第 1 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 定 義 と 役 割
第 2 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 現 状 分 析
第 3 章 資 金 調 達 に お け る 現 状 と 課 題1 0
第 1 節 民 間 金 融 機 関
第 2 節 メ ザ ニ ン フ ァ イ ナ ン ス
第 3 節 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ
第 4 節 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル
第 5 節 政 府 系 金 融 機 関1 5
第 6 節 信 用 補 完 制 度
第 7 節 官 民 フ ァ ン ド
第 4 章 中 小 企 業 金 融 に お け る 現 状 と 課 題
第 1 節 中 小 企 業 が 成 長 す る 上 で の 課 題
第 2 節 信 用 保 証 制 度 の 課 題2 0
第 5 章 こ れ か ら の 中 小 企 業 金 融 政 策
第 1 節 信 用 保 証 制 度 改 革
第 2 節 コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 活 性 化 へ の 提 言
終 章 ・ 参 考 文 献
3
序 章
日 本 に お け る 中 小 企 業 の 現 状 に つ い て 、 低 生 産 性 や 産 業 構 造 の 転 換 の 遅 れ な
ど の 問 題 点 が 指 摘 さ れ て き た 。 ま た 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に つ い て は 日 本 経 済 再 生
本 部 の 『 日 本 再 興 戦 略 - J A P A N i s B A C K - 』 に お い て も 「 新 産 業 の
育 成 」 や 「 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン の 促 進 」 が 明 記 さ れ て い た が 、 大 企 業 の 技5
術 の 自 前 主 義 な ど 、 既 存 企 業 と の ア ラ イ ア ン ス は 不 十 分 で あ り 、 中 小 ・ ベ ン チ
ャ ー 企 業 が 持 続 的 に 成 長 す る エ コ シ ス テ ム を 整 え て い く 必 要 が あ る と さ れ て い
る 。
中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 す る に は 「 資 金 調 達 」 は 重 要 な 課 題 の 一 つ と さ
れ 、 現 在 多 く を 占 め る 金 融 機 関 か ら の 融 資 に お い て は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業1 0
の 事 業 性 や 技 術 を 評 価 す る 「 目 利 き 能 力 」 の 不 足 が 指 摘 さ れ て い る 。 金 融 機 関
に 代 わ る 供 給 主 体 と し て ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル が あ げ ら れ る が 、 十 分 に 機 能 し
て い る と は 言 え ず 、 様 々 な 課 題 が 指 摘 さ れ て い る 。
本 論 文 で は 中 小 企 業 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 現 状 ・ 課 題 を 挙 げ 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ
ー 企 業 が 成 長 す る 上 で 重 要 と さ れ る 資 金 調 達 に つ い て 考 察 す る 。 次 に 今 後 中1 5
小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 資 金 調 達 と 成 長 を 阻 害 し て い る 問 題 点 、 中 小 企 業 金 融 に
お い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る 信 用 補 完 制 度 の 問 題 点 を 挙 げ 、 そ の 解 決 策 と し
て 「 信 用 保 証 制 度 改 革 」 「 コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 活 性 化 」 を 提
言 す る 。
4
第 1 章 中 小 企 業 を 取 り 巻 く 環 境
本 章 で は 、 中 小 企 業 の 定 義 と 役 割 を 確 認 し 、 中 小 企 業 の 現 状 と 課 題 に つ い て
考 察 す る 。
第 1 節 中 小 企 業 と は
中 小 企 業 の 定 義 は 、 中 小 企 業 基 本 法 第 2 条 に よ っ て 、 業 種 別 、 従 業 員 数 、5
資 本 金 規 模 を 基 準 に し て 定 め ら れ て い る 1
。
日 本 公 庫 総 研 ( 2 0 1 5 ) に よ る と 、 日 本 に お け る 企 業 数 の う ち 中 小 企 業 の 割 合
は 約 9 9 . 7 % で あ り 雇 用 者 割 合 は 6 9 . 7 % と な っ て い る 。 こ の 点 を 三 大 都 市 圏
と 地 方 圏 で 比 較 す る と 、 三 大 都 市 圏 で は 中 小 企 業 が 占 め る 割 合 は 約 9 9 . 6 % ( そ
の 内 小 規 模 企 業 は 8 5 . 3 % ) と な っ て お り 、 地 方 圏 に お い て は 約 9 9 . 9 % ( そ の1 0
内 小 規 模 企 業 は 8 7 . 5 % ) を 占 め て い る 。
中 小 企 業 従 業 員 数 割 合 は 三 大 都 市 圏 5 9 . 2 % ( 1 6 2 5 万 人 ) 、 地 方 圏 が
8 5 . 2 % ( 1 5 9 2 万 人 ) と 、 地 方 圏 に お い て 中 小 企 業 従 業 員 割 合 が 多 く 、 都 道 府 県
別 で 中 小 企 業 従 業 者 数 の 割 合 を 見 る と 全 国 平 均 の 6 9 . 7 % を 下 回 っ て い る の は 、
東 京 都 と 大 阪 府 だ け で あ る 。 従 業 員 数 を 割 合 で な く 実 数 で 見 る と 、 東 京 都 が 突1 5
出 し て い る こ と か ら 、 東 京 へ 一 極 集 中 し て い る こ と が 考 察 で き る 。
ま た 、 中 小 企 業 の 役 割 と し て 藪 下 ・ 武 士 俣 ( 2 0 0 6 ) は 「 雇 用 の 担 い 手 」 「 競
争 の 担 い 手 」 「 成 長 産 業 の 担 い 手 」 「 多 様 化 す る ニ ー ズ に 応 え る 」 「 地 域 経 済
の 中 核 」 「 社 会 的 分 業 構 造 の 担 い 手 」 の 6 つ を 挙 げ て い る 。
第 2 節 中 小 企 業 に お け る 現 状 と 課 題2 0
1
従 業 員 、 製 造 業 そ の 他 3 0 0 人 以 下 、 卸 売 業 1 0 0 人 以 下 、 小 売 業 5 0 人 以 下 、 サ ー ビ ス
業 1 0 0 人 以 下 、 資 本 金 、 製 造 業 そ の 他 3 億 円 以 下 、 卸 売 業 1 億 円 以 下 、 小 売 業 5 0 0 0 万
円 以 下 、 サ ー ビ ス 業 5 0 0 0 万 円 以 下
5
中 小 企 業 の 現 状 を 中 小 企 業 庁 が 公 表 し て い る 「 中 小 企 業 景 況 調 査 」 を 基 に 考
察 す る 。 「 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 業 況 判 断 D I 2
」 に よ る と 、 リ ー マ ン シ ョ
ッ ク 後 の 2 0 0 9 年 Ⅰ 期 ま で 悪 化 し 続 け て い た 業 況 判 断 D I は 、 そ の 後 、 2 0 1 1
年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 が 発 生 し た 時 期 は 悪 化 し た も の の 、 徐 々 に 改 善 傾 向 に
あ っ た 。 し か し 、 2 0 1 4 年 4 月 か ら 消 費 税 率 が 5 % か ら 8 % に 引 き 上 げ ら れ 、5
業 績 判 断 D I は 大 き く 悪 化 、 2 0 1 5 年 Ⅲ 期 現 在 、 消 費 税 率 引 き 上 げ 以 前 の 値 に
は 戻 っ て い な い 。 ま た 、 製 造 業 ・ 非 製 造 業 の 「 資 金 繰 り D I 」 の 推 移 を 見 る と 、
回 復 傾 向 に あ る も の の 、 未 だ マ イ ナ ス 値 で あ る 。
図 表 1 - 1 企 業 規 模 別 に 見 た 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 業 況 判 断 D I の 推 移
1 0
図 表 1 - 2 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 資 金 繰 り D I の 推 移
出 所 : 図 表 1 - 1 , 1 - 2 と も に 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 b )
2
前 年 度 よ り も 業 況 が 「 好 転 」 と 答 え た 企 業 の 割 合 ( % ) か ら 「 悪 化 」 し た と 答 え た 企 業
の 割 合 ( % ) を 引 い た も の で あ る 。
6
つ ま り 、 中 小 企 業 の 業 況 は 、 消 費 税 率 引 き 上 げ 以 降 や や 悪 化 し て い る が 、 資
金 繰 り や 借 入 難 易 度 は 回 復 傾 向 に あ り 、 中 小 企 業 に と っ て 資 金 調 達 が 容 易 な 状
況 に な り つ つ あ る 。
次 に 、 中 小 企 業 の 抱 え る 大 き な 問 題 点 と し て 「 人 手 不 足 」 「 生 産 性 の 低 下 」
「 開 廃 業 率 」 が あ げ ら れ る 3
。5
・ 人 手 不 足
中 小 企 業 に 関 わ ら ず 、 企 業 が 経 営 活 動 を 行 う 上 で 「 人 材 」 は 必 要 不 可 欠 で あ
る 。 し か し 、 日 本 で は 近 年 人 手 不 足 が 深 刻 化 し て お り 、 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 ) の
「 地 域 別 に み た 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 従 業 員 過 不 足 D I の 推 移 」 を 見 る と 、
2 0 0 9 年 ま で 従 業 員 過 剰 感 は プ ラ ス 値 で あ っ た が 、 2 0 1 1 年 に は ほ ぼ 全 地 域 で1 0
マ イ ナ ス 値 に 転 落 し て い る 。 そ の 後 、 従 業 員 の 不 足 感 が 過 剰 感 を 大 き く 上 回 る
状 況 と な っ て い る 。 ま た 、 企 業 の 成 長 に 不 可 欠 な 研 究 開 発 ・ 製 品 や 国 内 営 業 と
い っ た 中 核 人 材 が 不 足 し 、 企 業 が 成 長 の 阻 害 要 因 と な る 可 能 性 が あ る 4
。 今 後 、
少 子 高 齢 化 に 伴 い 人 手 不 足 が 顕 著 に な る 可 能 性 が あ り 早 急 な 対 策 が 望 ま れ る 。
ま た 、 大 企 業 に は 人 材 が 余 剰 し て い る 所 も あ り 、 2 0 1 5 年 1 0 月 か ら パ ソ ナ グ1 5
ル ー プ や パ ナ ソ ニ ッ ク な ど 大 手 企 業 が 地 方 企 業 に O B な ど を 派 遣 す る サ ー ビ ス
を 始 め る 。 こ の よ う に 、 大 企 業 の 余 剰 人 材 を 中 小 企 業 に 派 遣 す る こ と は 解 決 策
の 一 つ で あ ろ う 。
・ 生 産 性 の 低 下
3
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 a )
4
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 a ) の ア ン ケ ー ト 調 査 で は 、 研 究 開 発 ・ 製 品 5 7 . 2 % 、 国 内 営 業 5 0 . 9 % 、
海 外 営 業 4 3 . 4 % 、 I T 関 連 4 2 . 7 % 、 経 営 3 1 . 5 % 、 財 務 ・ 会 計 2 4 . 3 % の 中 核 人 材 が 不
足 し て い る 。
7
中 小 企 業 の 生 産 性 は 大 企 業 と 比 較 し て 低 い 水 準 と な っ て い る 。 中 小 企 業 の 生
産 性 が 低 下 し た 理 由 に つ い て 、 後 藤 ( 2 0 1 4 ) に よ る と 「 経 済 の 低 迷 を 背 景 に 余
剰 感 の 高 ま っ た 雇 用 を 吸 収 し た た め 、 単 純 に 生 産 性 を 測 る 上 で の 分 母 が 増 加 し
た こ と 」 「 中 小 企 業 の イ ノ ベ ー シ ョ ン 活 動 が 停 滞 し 、 ひ い て は 生 産 性 を 押 し 下
げ た 可 能 性 」 「 活 力 あ る 企 業 の 参 入 や 成 長 、 あ る い は 業 況 の 低 迷 す る 企 業 の 縮5
小 や 退 出 と い っ た 企 業 の 新 陳 代 謝 が 滞 っ た 可 能 性 」 の 3 つ を 挙 げ て い る 。 日 本
で は 将 来 人 口 減 少 が 予 測 さ れ 労 働 生 産 人 口 も 減 少 し て い く と 考 え ら れ て い る た
め 、 中 小 企 業 の 生 産 性 を 如 何 に し て 向 上 さ せ る か が 課 題 で あ る 。
・ 開 廃 業 率 の 低 下
日 本 の 開 廃 業 率 は 先 進 諸 国 と 比 較 し て も 低 水 準 で あ り 、 日 本 再 興 戦 略 に お い1 0
て も 現 状 の 3 % か ら 1 0 % へ の 目 標 を 掲 げ て い る 。 特 に 、 新 産 業 創 出 ・ 雇 用 創
出 の 観 点 で 貢 献 度 が 高 い と さ れ る 製 造 業 系 の 開 業 率 が 低 調 と な っ て お り 、 原 因
の 一 つ に 、 実 用 化 ま で に 多 額 の 研 究 開 発 資 金 が 必 要 と な る た め 、 他 の 業 種 に 比
べ 起 業 お よ び 成 功 へ の ハ ー ド ル は 高 い こ と が 挙 げ ら れ る 5
。
ま た 廃 業 率 に 関 し て は 、 事 業 継 承 が 進 ん で い な い こ と が 一 つ の 要 因 と し て 考1 5
え ら れ る 。 少 子 高 齢 化 を 背 景 に 親 族 外 継 承 も 視 野 に 入 れ た 後 継 者 を 検 討 す る 企
業 が 4 割 を 超 え 、 必 要 性 が 謳 わ れ て い る が 、 実 際 、 事 業 継 承 が 円 滑 に 進 ん で い
る と は 言 い 難 い 。 ま た 、 親 族 外 継 承 に お い て 事 業 を 引 き 継 ぐ 際 に 問 題 が あ る と
考 え て い る 経 営 者 は 6 2 . 6 % も 存 在 し 、 具 体 的 に 「 借 入 金 の 個 人 保 証 の 引 継 ぎ
が 困 難 」 「 後 継 者 に よ る 自 社 株 式 や 事 業 用 資 産 の 買 い 取 り が 困 難 」 を 挙 げ て い2 0
る 6
。
5
野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 )
6
財 務 省 ( 2 0 1 4 )
8
第 3 節 中 小 企 業 政 策
中 小 企 業 政 策 の 種 類 は 多 岐 に わ た り 、 「 中 小 企 業 全 般 」 「 業 種 別 施 策 」 「 現
状 不 況 な 業 種 に 対 す る 施 策 」 「 零 細 企 業 対 策 」 「 下 請 け 企 業 対 策 」 な ど が あ る 。
中 小 企 業 政 策 の 施 行 に は 、 1 9 4 8 年 に 商 工 省 の 外 局 と し て 設 立 さ れ た 中 小 企 業
庁 が 中 心 的 役 割 を 担 っ て き た 。 戦 後 間 も な い 当 時 は 中 小 企 業 を 弱 者 と 見 る 「 二5
重 構 造 論 」 の 認 識 が 強 く 、 公 的 な 政 策 支 援 が 必 要 と さ れ て い た 。 し か し 、 時 代
や 経 済 状 況 の 変 化 と 共 に 、 政 策 的 な 意 義 や 対 象 も 二 重 構 造 論 的 な 保 護 政 策 か ら
の 脱 却 が 行 わ れ 、 成 長 に 重 点 が 置 か れ た 政 策 へ と 変 化 し て い っ た 7
。
現 在 の 中 小 企 業 政 策 は 、 1 9 9 9 年 に 改 正 さ れ た 中 小 企 業 基 本 法 に 基 づ き 様 々
な 政 策 が 施 行 さ れ て い る 。 政 策 実 行 に お け る 費 用 は 一 般 会 計 予 算 で 「 中 小 企 業1 0
対 策 費 」 と し て 計 上 さ れ る 。 2 0 1 3 年 に お け る 中 小 企 業 対 策 費 の 内 訳 を 見 る と 、
日 本 政 策 金 融 公 庫 へ の 補 助 金 ・ 出 資 金 、 信 用 保 証 制 度 に お け る 信 用 保 証 協 会 連
合 会 等 へ の 補 助 金 と い っ た 、 い わ ゆ る 金 融 関 連 の 費 用 が 半 分 以 上 を 占 め て い る 。
こ れ ら 以 外 で は 、 中 小 企 業 の 経 営 支 援 や 海 外 支 援 等 、 ま た 中 小 企 業 基 盤 整 備 機
構 へ の 交 付 金 な ど に 振 り 分 け ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 国 家 予 算 全 体 を 見 る1 5
と 、 こ こ 数 年 で 一 般 会 計 予 算 の 歳 出 は 9 0 兆 円 台 で 推 移 し て い る 中 、 中 小 企 業
に 対 す る 費 用 は 1 8 1 1 億 円 と 約 5 0 0 分 の 1 に し か 過 ぎ な い 。
図 表 1 - 5 中 小 企 業 対 策 費 の 内 訳 ( 2 0 1 3 年 )
7
後 藤 康 雄 ( 2 0 1 4 )
9
出 所 : 後 藤 康 雄 ( 2 0 1 3 ) 3 0 9 頁 よ り 筆 者 作 成
第 2 章 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 取 り 巻 く 環 境
戦 後 の 様 々 な 新 興 企 業 を 輩 出 し た 時 代 は 終 焉 し 、 現 在 で は マ ー ケ ッ ト の 飽 和5
に よ る 大 企 業 の 寡 占 が 平 常 化 し て お り 、 か つ て の リ ス ク を 恐 れ ず に 新 規 事 業 を
起 こ す 企 業 が 減 少 し て い る 。 「 失 わ れ た 2 0 年 」 を 脱 し 、 日 本 経 済 が さ ら な る
成 長 を 遂 げ る た め に は 、 中 小 企 業 の 中 で も と り わ け 成 長 意 欲 の あ る 企 業 へ の 支
援 は 重 要 で あ る 。
し た が っ て 本 章 で は 、 特 に ベ ン チ ャ ー 企 業 に 焦 点 を 当 て 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に1 0
お け る 現 状 分 析 、 資 金 調 達 状 況 を 考 察 す る 。
第 1 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 定 義 と 役 割
ベ ン チ ャ ー 企 業 の 定 義 は 具 体 的 に 明 記 さ れ て お ら ず 、 松 田 ( 2 0 1 4 ) に よ る と
「 リ ス ク を 恐 れ ず 新 し い 領 域 に 挑 戦 す る 起 業 家 に 率 い ら れ た 若 い 企 業 で 、 製 品
や 商 品 の 独 創 性 、 事 業 の 独 立 性 、 社 会 性 、 さ ら に 国 際 性 を 持 っ た 企 業 」 と 定 義1 5
さ れ て い る 。 ま た 経 済 産 業 省 ( 2 0 0 7 ) で は 「 既 存 企 業 に は 生 み 出 し 得 な い 技
術 ・ ビ ジ ネ ス モ デ ル の 大 き な 変 化 ・ 革 新 を も た ら す 可 能 性 が あ る 」 と 認 識 さ れ
て い る 。
第 2 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 現 状 と 課 題
10
国 内 の ベ ン チ ャ ー 投 資 動 向 と し て 、 資 金 調 達 を 受 け る 企 業 数 は 減 少 傾 向 に あ
る が 、 資 金 調 達 額 は 2 0 1 3 年 度 か ら 増 加 傾 向 で あ り 、 2 0 1 4 年 度 に は 総 額
1 0 0 0 億 円 を 超 え る な ど 、 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 以 前 の 水 準 ま で 回 復 し て い る 。 1
社 あ た り の ス テ ー ジ 別 資 金 調 達 の 中 央 値 を 見 る と 、 企 業 が 成 長 段 階 を 経 る に つ
れ て 必 要 に な る 資 金 額 が 増 加 し て い る ( 図 表 2 - 2 ) 。 理 由 と し て 、 ス タ ー ト ア5
ッ プ 期 の キ ャ ッ シ ュ レ ス か ら 生 じ る 「 死 の 谷 」 を 越 え て 事 業 が 軌 道 に 乗 り 出 す
と 、 ス タ ー ト ア ッ プ 期 と は 比 較 に な ら な い 額 の 資 金 が 必 要 に な る と 考 え ら れ る 。
日 本 の ベ ン チ ャ ー 企 業 の 資 金 調 達 環 境 は 、 成 長 段 階 に 沿 っ た 資 金 需 要 の ニ ー
ズ を 満 た し て い る と は 言 い 難 い 。 そ の 要 因 の 一 つ に 、 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル
( 以 下 、 V C ) が 米 国 の お よ そ 2 0 分 の 1 、 エ ン ジ ェ ル 投 資 家 に お い て は お よ そ1 0
3 2 0 分 の 1 と 顕 著 に 少 な く 8
、 米 国 の 投 資 家 は 「 起 業 家 が 起 業 家 を 生 む 」 と 一
般 的 に 言 わ れ て お り 、 成 功 し た 起 業 家 が シ ー ズ 期 の ベ ン チ ャ ー 企 業 に 出 資 す る
と い う サ イ ク ル が 浸 透 し て い る た め で あ る 。
図 表 2 - 1 未 公 開 企 業 の 資 金 調 達 額 ( 2 0 0 6 年 〜 2 0 1 4 年 )
1 5
出 所 : 野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 )
8
内 閣 府 ( 2 0 1 4 a )
11
図 表 2 - 2 未 公 開 企 業 の 1 社 あ た り 資 金 調 達 額 の 中 央 値 ( ス テ ー ジ 別 )
出 所 : 野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 )
次 に 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 成 長 さ せ る た め に は 、 資 金 供 給 以 外 の 経 営 支 援 も 必
要 で あ る 。 ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー の ア ン ケ ー ト 調 査 に よ る と5
「 人 材 確 保 」 8 6 . 7 % 、 「 販 路 拡 大 」 5 9 . 6 % 、 「 資 金 調 達 」 5 6 . 6 % 、 「 技 術
開 発 」 3 1 . 9 % と 、 資 金 調 達 以 外 に も ベ ン チ ャ ー 企 業 の 経 営 ニ ー ズ と し て 必 要
で あ る と さ れ て い る 。
図 表 2 - 3 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 経 営 ニ ー ズ
1 0
出 所 : ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー ( 2 0 1 4 )
次 に 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 が 各 成 長 段 階 で 直 面 す る リ ス ク を 考 察 す る 。 ベ ン チ ャ
ー 企 業 は 各 成 長 段 階 に お い て 、 図 表 2 - 4 , 5 の よ う な リ ス ク を 抱 え て い る 。
1 5
12
図 表 2 - 4 わ が 国 の ベ ン チ ャ ー 企 業 支 援 に か か る 課 題
出 所 : 野 村 ( 2 0 1 4 b )
図 表 2 - 5 ベ ン チ ャ ー 企 業 が 直 面 す る リ ス ク
直 面 す る リ ス ク 具 体 的 内 容
開 発 リ ス ク ア イ デ ア が 開 発 者 の 頭 の 中 に あ る 事 業 立 ち 上 げ の 前 段 階 で
あ り 、 本 当 に 実 現 可 能 か 外 部 か ら の 的 確 な 判 断 が 下 せ な い
製 造 リ ス ク
( 死 の 谷 )
ア イ デ ア を 基 に 事 業 を 立 ち 上 げ る 段 階 に お い て 経 営 の 複 雑
化 ・ 資 金 需 要 拡 大 の 必 要 性 と い っ た 問 題 が 発 生 す る
販 売 リ ス ク 開 発 リ ス ク 時 よ り も 金 融 機 関 に よ る リ ス ク 評 価 は 容 易 と さ
れ て い る が 、 企 業 と し て ま だ 未 熟 な 段 階 で あ る
経 営 リ ス ク
( ダ ー ウ ィ ン の
海 )
市 場 化 の 段 階 で 製 品 や サ ー ビ ス が 市 場 に 受 け 入 れ ら れ る か
が 不 明
成 長 リ ス ク 優 れ た 技 術 ・ ア イ デ ア を 保 有 し て い た と し て も 、 経 営 を 軌
道 に 乗 せ る の は 経 営 者 の 経 営 能 力 に 依 存 す る
出 所 : 村 本 ( 2 0 1 5 ) 1 9 4 - 1 9 7 頁 を 基 に 筆 者 作 成5
政 府 を は じ め 、 こ れ ら の リ ス ク を 乗 り 越 え る た め の 様 々 な 施 策 が 実 施 さ れ て
き た が 、 「 起 業 家 を 志 す 層 の 薄 さ 」 「 ベ ン チ ャ ー の 自 立 ( 事 業 化 ・ 市 場 化 ) に
繋 が る 施 策 の 不 在 」 「 縦 割 り 行 政 に よ る 施 策 の 分 断 化 」 「 国 の イ ノ ベ ー シ ョ ン
政 策 と ベ ン チ ャ ー 支 援 策 が 明 確 に リ ン ク し て い な い 」 な ど の 課 題 に よ り 十 分 に
機 能 し て い る と は 言 い 難 い 現 状 で あ る 9
。1 0
9
野 村 ( 2 0 1 4 b )
13
第 3 章 資 金 調 達 に お け る 現 状 と 課 題
中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 を 成 長 ・ 育 成 す る た め に は 、 成 長 資 金 を い か に 供 給 す
る か が 課 題 と な る 1 0
。 内 閣 府 ( 2 0 1 4 b ) に よ る と 、 成 長 資 金 は 「 企 業 の ラ イ フ
サ イ ク ル の 各 段 階 に お け る 企 業 価 値 の 向 上 や 維 持 に 資 す る 取 組 み を 支 え 、 そ の
供 給 促 進 は 、 企 業 の 成 長 に 向 け た リ ス ク テ イ ク を 促 し 、 経 済 成 長 に 資 す る こ と 」5
と さ れ 、 そ の 資 金 の 供 給 方 法 と し て エ ク イ テ ィ や シ ニ ア デ ッ ト 、 そ の 中 間 で あ
る 優 先 株 や 劣 後 デ ッ ト な ど の メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス と い っ た 中 長 期 的 な 資 金
が 挙 げ ら れ て い る が 、 量 ・ 質 と も に 不 足 し て い る 。
本 章 で は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 を 支 え る 資 金 調 達 に つ い て 、 「 民 間
金 融 機 関 」 「 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ 」 「 メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス 」 「 ベ ン チ1 0
ャ ー キ ャ ピ タ ル 」 「 政 府 系 金 融 機 関 」 「 官 民 フ ァ ン ド 」 「 信 用 補 完 制 度 」 を 中
心 に 考 察 す る 。
第 1 節 民 間 金 融 機 関
中 小 企 業 金 融 に お け る 大 き な 問 題 点 と し て 「 情 報 の 非 対 称 性 」 「 逆 選 択 の 問
題 」 が 挙 げ ら れ る 。 「 情 報 の 非 対 称 性 」 と は 、 貸 し 手 が 借 り 手 の 情 報 を 同 レ ベ1 5
ル に 把 握 す る こ と は 難 し い と い う こ と で あ り 、 ま た 借 り 手 で あ る 中 小 企 業 が 持
つ 情 報 を 金 融 機 関 は 全 て 把 握 す る こ と は 不 可 能 で あ る が 故 に 起 こ る も の で あ る 。
例 え ば 、 金 融 機 関 が 貸 出 金 利 を 設 定 し 、 そ れ に 対 し て 自 ら の 債 務 履 行 能 力 を 知
っ て い る 借 り 手 は 、 そ の 金 利 が 適 正 金 利 よ り 高 け れ ば 借 入 れ を 止 め 、 実 際 に 見
合 う 金 利 よ り 低 け れ ば 積 極 的 に 借 入 れ を 行 う 「 逆 選 択 」 の 問 題 を 引 き 起 こ す 。2 0
特 に 中 小 企 業 は 財 務 諸 表 の 開 示 を 求 め ら れ て い な い た め 、 金 融 機 関 か ら す れ ば
情 報 の 収 集 が 難 し い 1 1
。
1 0
内 閣 府 ( 2 0 1 4 b )
1 1
小 野 有 人 ( 2 0 0 7 ) 3 4 頁
14
次 に 、 中 小 企 業 向 け 貸 出 の 実 態 を 見 る と 、 貸 出 は こ こ 数 年 、 微 増 微 減 を 繰 り
返 し な が ら 横 ば い で 推 移 し て い る 。 預 金 に 対 す る 貸 出 比 率 で あ る 預 貸 率 は 年 々
減 少 傾 向 に あ り 、 金 融 機 関 の 預 金 量 が 増 え 続 け て い る と 見 る こ と が で き る が 、
企 業 が 借 り 入 れ に そ れ ほ ど 意 欲 的 で な い 実 情 を 表 し て い る 。
図 表 3 - 1 中 小 企 業 向 け 貸 出 比 率 等 の 推 移5
出 所 : 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 a )
金 融 機 関 か ら 中 小 企 業 に 融 資 を す る 際 、 一 般 的 に 企 業 の 決 算 書 な ど の 財 務 諸
表 を 基 に 貸 出 を 行 う 。 こ の 貸 出 手 法 を ト ラ ン ザ ク シ ョ ン バ ン キ ン グ ( 以 下 、 ト
ラ バ ン ) と い う 。 ト ラ バ ン に は 、 統 計 的 デ ー タ に 基 づ い て 、 企 業 の 信 用 度 を 点1 0
数 化 し て 貸 し 出 す ク レ ジ ッ ト ス コ ア リ ン グ な ど が あ る 。 ト ラ バ ン は 定 量 的 な デ
ー タ を 基 に 審 査 を 行 う た め 、 審 査 コ ス ト や 人 件 費 が 削 減 で き 、 中 小 企 業 に と っ
て も 審 査 期 間 の 短 縮 が 図 れ る と い っ た メ リ ッ ト が 存 在 す る が 、 経 理 ・ 財 務 の 資
料 を 整 備 す る 必 要 が あ り 、 収 益 実 績 な ど の い わ ゆ る ト ラ ッ ク ・ レ コ ー ド の 整 備
が 不 可 欠 に な り 、 か え っ て コ ス ト 増 に 繋 が る 等 の デ メ リ ッ ト が 存 在 す る 。1 5
次 に 金 融 機 関 が 貸 出 す る 際 の 担 保 比 率 構 成 を 見 る 。 図 表 3 - 2 か ら も 分 か る
よ う に 、 不 動 産 や 保 証 に 頼 る 貸 出 が 多 い の が 現 状 で あ る 。
2 0
15
図 表 3 - 2 貸 出 の 担 保 の 状 況
出 所 : 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 b ) 4 頁
こ う い っ た 財 務 諸 表 ・ 不 動 産 担 保 依 存 型 の 貸 出 を 改 め る べ く 、 近 年 注 目 さ れ
て い る の が A B L ( A s s e t B a s e d L e n d i n g ) と 、 リ レ ー シ ョ ン シ ッ プ バ ン キ ン5
グ で あ る 。
A B L と は 、 企 業 が 保 有 す る 「 在 庫 」 や 「 売 掛 金 」 な ど を 担 保 と す る 融 資 手
法 で あ る 。 金 融 円 滑 化 法 が 2 0 1 3 年 3 月 に 終 了 す る の に 合 わ せ 、 東 京 都 が 先 駆
け て 導 入 し た 制 度 で あ る が 知 名 度 が 低 く 全 国 に 浸 透 し て い な い の が 現 状 で あ り 、
規 模 も 中 小 企 業 向 け 融 資 残 高 全 体 の 0 . 1 % と 少 な く 、 A B L を 導 入 す る に 至 っ て1 0
は 「 動 産 を 担 保 に す る ほ ど 、 担 保 に 余 裕 が な い 」 と い っ た イ メ ー ジ を 持 つ た め 、
必 要 性 が 指 摘 さ れ な が ら も 、 在 庫 や 売 掛 債 権 に 対 す る 担 保 権 の 設 定 が 取 引 先 に
よ る 信 用 不 安 を 引 き 起 こ す 可 能 性 は 根 強 く 、 A B L の 市 場 規 模 は 2 0 1 1 年 ま で
4 0 0 0 億 円 ~ 6 0 0 0 億 円 を 推 移 し 融 資 を 受 け る 手 段 と し て 普 及 し て い な い の が
現 状 で あ っ た 1 2
。 し か し 2 0 1 2 年 、 2 0 1 3 年 と 融 資 実 行 額 ・ 残 高 と も に 急 増 し 、1 5
2 0 1 1 年 と 比 較 し て 約 5 倍 に 伸 び て い る 。
1 2
事 業 再 生 研 究 機 構 ( 2 0 0 7 ) 6 1 頁
16
図 表 3 - 3 A B L の 市 場 規 模
出 所 : デ ロ イ ト ト ー マ ツ コ ン サ ル テ ィ ン グ ( 2 0 1 5 )
2 0 0 2 年 の 金 融 行 政 当 局 に よ る 「 金 融 再 生 プ ロ グ ラ ム 」 の 中 で 、 地 域 密 着 型
金 融 の 必 要 性 が 挙 げ ら れ 、 そ の 解 決 策 の 一 つ と し て 「 長 期 継 続 す る 関 係 の 中 か5
ら 、 借 り 手 企 業 の 経 営 者 の 資 質 や 事 業 の 将 来 性 等 に つ い て の 情 報 を 得 て 、 融 資
を 実 行 す る ビ ジ ネ ス モ デ ル 1 3
」 と さ れ る 、 リ レ ー シ ョ ン シ ッ プ バ ン キ ン グ ( 以
下 、 リ レ バ ン ) の 推 進 が 掲 げ ら れ た 。 企 業 と よ り 密 接 か つ 長 期 的 な 関 係 を 築 く
こ と で 、 企 業 の 内 部 事 情 や 技 術 力 、 経 営 者 の 資 質 な ど の ソ フ ト な 情 報 、 い わ ゆ
る 定 性 情 報 を 入 手 し や す く 、 そ れ を 基 に 、 リ ス ク 把 握 が 正 確 か つ 明 確 に な り 、1 0
過 度 な 担 保 ・ 保 証 に 依 存 す る こ と な く 貸 出 を 行 う も の で あ る 。
リ レ バ ン に つ い て は 、 2 0 1 5 年 4 月 ~ 6 月 に か け て 、 金 融 庁 が 利 用 者 等 1 4
を
対 象 に 聞 き 取 り ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し た 。
図 表 3 - 4 地 域 金 融 機 関 の 地 域 密 着 型 金 融 の 取 組 み 等 に 対 す る 利 用 者 等 の 評 価
1 3
金 融 庁 ( 2 0 0 3 )
1 4
中 小 企 業 者 4 7 8 名 、 商 工 会 議 所 ・ 商 工 会 の 経 営 相 談 員 等 4 5 1 名 、 消 費 生 活 セ ン タ ー
職 員 等 9 5 名 の 計 1 , 0 2 4 名
17
出 所 : 金 融 庁 ( 2 0 1 5 )
顧 客 企 業 へ の 訪 問 等 に よ る 日 常 的 ・ 継 続 的 な 接 触 で は 、 積 極 的 ・ や や 積 極 的
以 外 の 回 答 が 約 4 5 % で あ り 、 リ レ バ ン が 推 進 さ れ て 約 1 0 年 経 過 し て い る こ と
を 考 慮 し て も 低 い 値 で あ る 。 顧 客 で あ る 中 小 企 業 へ の 訪 問 を 拒 ん で い る 原 因 の5
一 つ に 、 行 員 一 人 当 た り の 担 当 社 数 の 多 さ が 挙 げ ら れ る 。 一 人 に つ き 、 約 2 0
〜 3 0 社 を 担 当 し て い る 現 状 1 5
で は 、 一 社 一 社 が 抱 え る 諸 課 題 に 向 き 合 う 時 間
は 制 限 さ れ 、 中 小 企 業 の 事 業 や フ ァ イ ナ ン ス に 関 す る 相 談 、 さ ら に は 的 確 な ソ
リ ュ ー シ ョ ン 提 案 と い っ た 金 融 サ ー ビ ス が 阻 害 さ れ て い る の で は な い か と 推 測
さ れ る 。 ま た 、 目 利 き 能 力 を 発 揮 し た 事 業 性 評 価 1 6
に 対 す る 項 目 で は 約 7 0 % も1 0
の 顧 客 が 十 分 で は な い と 回 答 し て い る た め 、 独 自 技 術 や 綿 密 な 事 業 計 画 を 保 有
し て い て も 過 大 な 担 保 設 定 の 要 求 も し く は 融 資 を 受 け ら れ な い と い っ た ケ ー ス
が 考 え ら れ る 。
1 5
東 京 商 工 会 議 所 ( 2 0 1 2 ) 6 7 頁
1 6
事 業 性 評 価 に 関 し て は 日 本 経 済 再 生 本 部 ( 2 0 1 4 ) 8 8 頁 に 定 義 さ れ て い る 。
18
今 後 の 民 間 金 融 機 関 の 役 割 と し て 、 従 来 か ら の 財 務 諸 表 や 担 保 に 依 存 し た 貸
し 出 し で は な く 、 企 業 の 事 業 性 を 評 価 し て 貸 し 出 し を 実 施 す る 役 目 が 求 め ら れ
る 。
第 2 節 メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス
メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス と は 、 一 般 の 債 権 よ り も 債 務 弁 済 の 順 位 が 劣 る ロ ー5
ン で あ る 「 劣 後 ロ ー ン 」 、 一 般 債 権 者 よ り も 債 務 弁 済 の 順 位 が 劣 る 社 債 で あ る
「 劣 後 債 」 、 普 通 株 式 に 対 し て 、 剰 余 金 の 配 当 そ の 他 の 権 利 が 優 先 す る 株 式 で
あ る 「 優 先 株 式 」 等 の 資 金 供 給 手 段 の 総 称 で あ り 、 契 約 条 件 や 設 計 等 に よ り デ
ッ ト と エ ク イ テ ィ 双 方 の 特 色 を 生 か し た 柔 軟 な 商 品 を 実 現 す る こ と が 可 能 と さ
れ て い る 1 7
。1 0
メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス は 、 「 バ イ ア ウ ト ・ メ ザ ニ ン 」 と 「 コ ー ポ レ ー ト ・
メ ザ ニ ン 」 に 分 類 さ れ 、 2 0 1 1 年 の 融 資 実 績 と し て 、 バ イ ア ウ ト ・ メ ザ ニ ン が
2 5 6 億 円 、 コ ー ポ レ ー ト ・ メ ザ ニ ン が 1 2 1 億 円 で あ る 1 8
。 中 小 企 業 が 融 資 さ
れ る メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス の 主 な も の と し て 、 デ ッ ト ・ エ ク イ テ ィ ・ ス ワ ッ
プ ( 以 下 、 D E S ) 、 デ ッ ト ・ デ ッ ト ・ ス ワ ッ プ ( 以 下 、 D D S ) 、 資 本 性 劣 後 ロ1 5
ー ン が あ る 。 資 本 性 劣 後 ロ ー ン に お い て は 、 日 本 政 策 金 融 公 庫 が 中 心 と な っ て
取 り 組 ん で お り 、 融 資 額 も 年 々 増 加 傾 向 に あ る ( 図 表 3 - 5 ) が 、 D E S に お い て
は 融 資 実 績 が 少 な い の が 現 状 で あ る 。
2 0
1 7
会 計 上 、 劣 後 ロ ー ン は 負 債 、 優 先 株 式 は 株 主 資 本 と し て 計 上 さ れ る
1 8
三 菱 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 )
19
図 表 3 - 5
日 本 政 策 金 融 公 庫 中 小 企 業 事 業 部 門 に お け る 資 本 性 劣 後 ロ ー ン の 実 績
出 所 : 植 杉 ・ 小 野 、 他 ( 2 0 1 4 )
メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス が 発 達 し て い な い 要 因 と し て 、 三 菱 総 合 研 究 所5
( 2 0 1 3 ) に よ れ ば 「 市 場 が 小 さ く 、 プ レ イ ヤ ー が 少 な い 」 「 ス ト ラ ク チ ャ リ ン
グ に 手 間 が か か る 」 、 特 に メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス の 認 知 度 の 向 上 ・ 供 給 主 体
の ノ ウ ハ ウ 、 人 材 不 足 を 大 き な 課 題 と し て 挙 げ て い る 。
D E S ・ D D S は 事 業 継 承 や 再 成 長 期 に 、 資 本 性 劣 後 ロ ー ン は 創 業 期 や 再 成 長 期
の 資 金 調 達 手 段 と し て 期 待 さ れ て い る た め 、 今 後 、 メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス の1 0
認 知 度 を 向 上 さ せ 、 ど の よ う に ノ ウ ハ ウ を 蓄 積 し て い く か を 検 討 し な け れ ば な
ら な い 。
第 3 節 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ
近 年 、 新 た な 資 金 調 達 の 方 策 と し て ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ ( 以 下 、 C F ) が
注 目 さ れ て い る 。 C F に は 明 確 な 定 義 は な い が 、 「 新 規 ・ 成 長 企 業 等 と 資 金 提1 5
供 者 を イ ン タ ー ネ ッ ト 経 由 で 結 び 付 け 、 多 数 の 資 金 提 供 者 か ら 少 額 ず つ 資 金 を
集 め る 仕 組 み 1 9
」 と さ れ 、 イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の ポ ー タ ル サ イ ト を 通 じ て ア イ デ
ア を 提 案 し 、 そ れ に 共 感 し た 投 資 家 か ら 資 金 を 調 達 す る 方 策 で あ る 。
1 9
金 融 庁 ( 2 0 1 3 ) 2 頁
20
日 本 で の 市 場 規 模 は 2 0 1 4 年 度 で 約 1 9 7 億 円 、 2 0 1 5 年 度 予 測 で は 約 2 8 3
億 円 と さ れ て お り 2 0
、 日 本 の C F 市 場 に お い て も 拡 大 が 期 待 さ れ て い る 。 日 本
に お け る C F は 5 つ の パ タ ー ン に 分 類 さ れ 、 資 金 提 供 者 へ の リ タ ー ン が な い
「 寄 付 型 」 リ タ ー ン と し て モ ノ ・ サ ー ビ ス を 受 け 取 る 「 購 入 型 」 元 本 と 利 子 を
受 け 取 る 「 融 資 型 」 利 益 の 中 か ら 収 益 や 資 産 を 受 け 取 る 「 投 資 型 」 株 式 に よ る5
キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン や イ ン カ ム ゲ イ ン に よ る 収 益 を 得 る 「 株 式 型 2 1
」 が あ る 。
C F の メ リ ッ ト と し て ① 審 査 の 際 、 個 人 や 企 業 の 熱 意 が 重 視 さ れ る 。 ② 投 資
家 の 応 援 し た い 気 持 ち を 企 業 に 伝 え ら れ る 。 ③ 購 入 型 C F の 場 合 、 価 値 の 高 い
商 品 が リ タ ー ン と し て 得 ら れ る 、 の 3 点 が 挙 げ ら れ る 。 ま た 、 C F は B t o C の
モ ノ づ く り 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の シ ー ド 期 に 大 き く 寄 与 す る と 考 え ら れ る 。1 0
従 来 、 モ ノ づ く り 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 資 金 調 達 す る 際 、 シ ー ド 期 に は 商 品
が 完 成 さ れ て い な い 、 も し く は 見 込 み 生 産 を す る と 在 庫 と し て 残 っ て し ま う と
い う 可 能 性 が あ り 、 資 金 供 給 側 と し て は 高 い リ ス ク を 背 負 う こ と に な る が 、
C F を 有 効 活 用 す れ ば 商 品 開 発 に 先 行 し て 資 金 が 調 達 で き 、 ま た マ ー ケ テ ィ ン
グ 活 動 の 一 貫 と し て も 活 用 で き る 2 2
。1 5
し か し C F は 、 モ ニ タ リ ン グ や ガ バ ナ ン ス の 仕 組 み が 十 分 と は 言 え ず 、 ま た
B t o B の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 は 、 一 般 人 に と っ て 投 資 の 判 断 が し 難 い な ど の
課 題 が あ る 。 こ れ ら の 課 題 を 解 決 す れ ば 、 C F 市 場 の 拡 大 に よ り 、 創 業 期 の 中
小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に と っ て 有 用 な 資 金 調 達 方 策 の 一 つ に な る で あ ろ う 。
2 0
矢 野 研 究 所 ( 2 0 1 5 )
2 1
金 融 商 品 取 引 法 が 改 正 さ れ 、 2 0 1 5 年 5 月 よ り 株 式 型 C F が 解 禁 さ れ 「 一 人 当 た り 一 社
5 0 万 円 」 を 上 限 に イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 未 公 開 株 式 に 投 資 す る こ と が 可 能 に な っ た 。
2 2
C F を 活 用 し た 例 と し て 、 ソ ニ ー と Q r i o が 共 同 開 発 し た ス マ ー ト ロ ッ ク が あ げ ら れ る 。
設 定 目 標 額 は 1 5 0 万 で あ っ た が 、 1 5 倍 の 2 5 4 0 万 の 資 金 調 達 に 成 功 し た 。
21
第 4 節 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル
V C と は 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に 対 し て 投 資 し 、 投 資 後 の 支 援 に よ り 企 業 価 値 を
高 め 、 将 来 的 に キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン を 得 る 主 体 を 指 す 。 V C に は 事 業 の 形 態 に 応
じ て 「 独 立 系 ・ 銀 行 系 ・ 事 業 会 社 系 ・ 保 険 会 社 系 ・ 政 府 系 」 の 5 種 類 に 分 類
さ れ る 。 日 本 で は 、 銀 行 系 V C が 投 資 額 の 多 く を 占 め 、 ま た 、 株 式 の 持 株 比 率5
や 自 己 資 本 比 率 と い っ た 銀 行 に か か る 規 制 は な く 、 銀 行 の ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の
資 金 供 給 手 段 と し て 活 用 さ れ て い る 。
ま た 、 近 年 は 事 業 会 社 が 自 己 の 資 金 を 用 い て 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に 対 し 投 資 や
ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル ( 以 下 、 C V C ) が 注 目
を 集 め て い る 。 C V C は 、 一 般 的 な V C と 違 い 、 資 金 だ け で は な く 親 会 社 が 持 つ1 0
ブ ラ ン ド 、 R & D な ど の ノ ウ ハ ウ 、 顧 客 基 盤 な ど の 経 営 資 源 を 活 用 し て 中 小 ・
ベ ン チ ャ ー 企 業 に ハ ン ズ オ ン 支 援 を す る こ と が 期 待 さ れ て お り 、 オ ー プ ン イ ノ
ベ ー シ ョ ン や ベ ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム の 中 心 に な る と 期 待 さ れ て い る 。
V C の 投 資 額 を 見 る と 、 2 0 0 6 年 以 降 減 少 し 、 2 0 1 0 年 以 降 増 加 し て い る が 、
諸 外 国 と 比 較 し て も 投 資 額 は 少 な い ( 図 表 3 - 7 ) 。 ま た 、 投 資 額 が 増 加 し た の1 5
は 海 外 向 け 投 資 の 拡 大 が 背 景 に あ り 、 投 資 件 数 に お い て は 2 0 0 8 年 の リ ー マ ン
シ ョ ッ ク 以 降 大 き く 減 少 し 、 近 年 で は 横 ば い 傾 向 で あ る 。
図 表 3 - 6 V C の 年 間 投 資 額
出 所 : ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー ( 2 0 1 5 )2 0
22
図 表 3 - 7 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 投 資 ( 対 G D P 比 )
出 所 : O E C D ( 2 0 1 5 )
次 に 、 V C 投 資 を 企 業 の ラ ウ ン ド 別 に 分 け 、 ラ ウ ン ド ご と の 投 資 金 額 ・ 件 数
を 見 る 。 投 資 件 数 で は 全 体 に 占 め る シ ー ド 期 の 比 率 は 1 8 % と 約 5 分 の 1 を 占5
め て い る が 、 投 資 金 額 の 比 率 を 見 る と シ ー ド 期 の 比 率 は 2 % と 顕 著 に 少 な い 。
つ ま り 、 日 本 の V C が シ ー ド ス テ ー ジ に お い て 多 数 の ベ ン チ ャ ー 企 業 に 少 額 の
分 散 投 資 を 行 っ て い る こ と を 表 し て お り 、 ま た C V C の 投 資 件 数 は 約 2 5 % を 推
移 、 金 額 は 1 0 % 台 を 推 移 し て お り 一 定 の 額 を 供 給 し て い る と 伺 え る 。 し か し 、
1 社 当 た り の 資 金 調 達 額 の 中 央 値 で は 少 な く 、 ボ リ ュ ー ム の あ る 資 金 を 供 給 し1 0
て い る と は 言 い 難 い ( 図 表 2 - 2 ) 。
図 表 3 - 8 日 本 の ラ ウ ン ド 別 の V C 投 資 の 件 数
1 5
23
図 表 3 - 9 日 本 の ラ ウ ン ド 別 の V C 投 資 金 額
出 所 : 図 表 3 - 8 , 9 と も に 藤 野 ( 2 0 1 5 )
次 に ど の 分 野 の 企 業 に 投 資 が 行 わ れ て い る か を 見 る と 、 I T サ ー ビ ス 等 が
5 0 . 6 % と ほ ぼ 半 数 を 占 め て い る 一 方 で 、 今 後 の 日 本 経 済 の 発 展 に 重 要 視 さ れ て5
い る 研 究 開 発 型 ベ ン チ ャ ー へ の 投 資 は 2 1 . 1 % と I T サ ー ビ ス 等 に 比 べ 小 規 模 で
あ る 。
図 表 3 - 1 0 フ ァ ン ド に よ る シ ー ド ス テ ー ジ へ の 新 規 投 資 先
出 所 : 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 a )1 0
第 5 節 政 府 系 金 融 機 関
政 府 系 金 融 機 関 と は 、 政 府 が 経 済 発 展 、 国 民 生 活 の 安 定 な ど の 政 策 を 実 現 す
る 目 的 で 特 殊 法 人 と し て 設 立 さ れ 、 出 資 金 の 多 く を 国 か ら 受 け て い る 金 融 機 関
を 指 す 。 本 節 で は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に 大 き く 関 与 し て い る 、 商 工 組 合 中
24
央 金 庫 ( 以 下 、 商 工 中 金 ) と 日 本 政 策 金 融 公 庫 ( 以 下 、 公 庫 ) に つ い て 考 察 す
る 。
・ 商 工 組 合 中 央 金 庫
商 工 中 金 は 「 中 小 企 業 の 、 中 小 企 業 に よ る 、 中 小 企 業 の た め の 金 融 機 関 」 と
謳 わ れ て お り 、 フ ル バ ン ク 機 能 を 持 つ 。 中 小 企 業 者 の 金 融 の 円 滑 化 を 目 的 と し5
て お り 、 融 資 対 象 は 、 出 資 者 で あ る 中 小 企 業 団 体 と そ の 団 体 に 所 属 す る 構 成 員
で あ る 。 融 資 の 使 途 は 、 設 備 資 金 、 長 期 運 転 資 金 、 短 期 運 転 資 金 ( 手 形 貸 付 ・
当 座 貸 越 ・ 手 形 割 引 ) で あ る 。 事 業 に 必 要 と す る 資 金 に つ い て 長 期 短 期 を 問 わ
ず す べ て の 資 金 を 取 扱 い 、 中 小 企 業 の 新 た な 資 金 調 達 手 段 に つ い て も 積 極 的 に
開 発 し 、 提 供 し て い る 2 3
。 ま た リ ー マ ン シ ョ ッ ク や 震 災 な ど が 発 生 し た 際 に 、1 0
危 機 対 応 業 務 と し て 資 金 供 給 を す る 「 セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト の 役 割 2 4
」 を 果 た し 、
地 域 金 融 機 関 と 業 務 協 力 文 書 を 締 結 や 、 個 別 案 件 で の 融 資 、 再 生 支 援 、 M & A
支 援 の ほ か 、 A B L 等 の 勉 強 会 も 実 施 し て い る 。 2 0 1 5 年 4 月 よ り 、 地 域 経 済 に
影 響 力 を 有 す る 地 域 中 核 企 業 に よ る イ ノ ベ ー シ ョ ン ( 新 事 業 進 出 や 戦 略 的 な 経
営 改 善 等 ) の 取 組 み を 金 融 面 か ら 支 援 し 、 地 域 経 済 の 活 性 化 を 図 る こ と を 目 的1 5
に 「 地 域 中 核 企 業 支 援 貸 付 」 を 創 設 し た 。
図 表 3 - 1 1
商 工 中 金 の 貸 出 と 民 間 金 融 機 関 の 中 小 ・ 中 堅 企 業 向 け 貸 出 増 減 率 の 推 移
( 前 年 同 期 比 較 増 減 率 : % )
2 3
資 金 調 達 の 多 様 化 に 向 け て 、 近 年 で は A B L を 取 り 入 れ た 融 資 も 行 っ て い る 。
2 4
融 資 実 績 は 、 2 0 1 5 年 1 0 兆 8 0 5 2 億 円 、 2 0 1 4 年 9 兆 5 6 6 7 億 円 、 2 0 1 3 年 7 兆 1 3 3 4
億 円 、 2 0 1 2 年 6 兆 6 0 3 7 億 円 、 2 0 1 1 年 4 兆 8 2 5 5 億 円 ( 商 工 中 金 , 2 0 1 5 ) 。
25
出 所 : 商 工 組 合 中 央 金 庫 ( 2 0 1 5 ) 6 頁
・ 日 本 政 策 金 融 公 庫
公 庫 は 、 信 用 保 証 制 度 に お け る 信 用 保 証 協 会 へ の 資 金 の 経 由 、 ま た 、 商 工 中
金 の 危 機 対 応 業 務 に 必 要 な 資 金 の 経 由 な ど 中 小 企 業 の 資 金 調 達 に 関 わ る 重 要 な5
役 割 を 果 た し て お り 、 近 年 の 金 融 緩 和 に よ る 資 金 余 剰 な ど を 背 景 に 、 起 業 支 援
を 重 視 す る 政 策 方 針 や ベ ン チ ャ ー 企 業 融 資 残 高 が 増 加 し て い る 。
図 表 3 - 1 2 創 業 ( 創 業 前 及 び 創 業 後 1 年 以 内 ) 融 資 実 績
出 所 : 日 本 政 策 金 融 公 庫 H P1 0
公 庫 の 中 小 企 業 事 業 は 「 融 資 ・ 証 券 化 支 援 ・ 信 用 保 険 の 多 様 な 機 能 と 長 年 に
わ た り 培 っ た 審 査 力 、 全 国 約 5 万 社 の 顧 客 デ ー タ ベ ー ス に 基 づ く 豊 富 な 情 報 を
活 か し 、 『 創 業 ・ 新 事 業 支 援 』 『 早 期 事 業 再 生 支 援 』 『 証 券 化 支 援 』 『 経 営 相
談 支 援 』 『 人 材 育 成 協 力 』 の 分 野 で 地 域 金 融 機 関 が 行 う 地 域 密 着 型 金 融 の 一 層
の 推 進 を 支 援 」 し て お り 、 具 体 的 に は 再 生 案 件 や 新 規 案 件 を 中 心 に 地 域 金 融 機1 5
26
関 と 緊 密 な 情 報 交 換 を 行 い 、 当 事 業 の 資 本 性 ロ ー ン を 活 用 し た 協 調 支 援 2 5
に 取
り 組 ん で い る 。
公 庫 は 地 域 金 融 機 関 と 業 務 提 携 ・ 協 力 し て お り 、 協 調 融 資 ス キ ー ム を 構 築 し
た 民 間 金 融 機 関 の 数 は 2 0 1 5 年 3 月 末 時 点 で 3 2 4 機 関 に も 及 ぶ 2 6
。 中 小 企 業
事 業 は 、 資 本 性 ロ ー ン ( 挑 戦 支 援 資 本 強 化 特 例 制 度 ) を 活 用 し 、 民 間 金 融 機 関5
と 連 携 し て 協 調 融 資 を 行 う な ど 、 新 規 事 業 を 目 指 す 企 業 の 資 金 繰 り と 財 務 体 質
強 化 の 支 援 を 行 っ て い る 。
公 庫 の 中 小 企 業 事 業 の 貸 出 先 の 決 定 要 因 と 利 用 効 果 を 検 証 し た 植 杉 ・ 内 田 ・
水 杉 ( 2 0 1 4 ) に よ る と 、 公 庫 に よ る 貸 出 は 、 信 用 性 が 高 い 企 業 に 貸 出 を 行 い 、
財 務 諸 表 に 加 え 、 独 自 に 生 産 し た 情 報 を 加 え て 算 出 し た 内 部 格 付 け に よ り 貸 出1 0
を 決 定 し て い る 。 ま た 、 日 本 の 景 気 低 迷 期 ( 1 9 9 0 年 代 後 半 〜 2 0 0 0 年 代 初 頭 、
2 0 0 8 年 秋 以 降 ) に お い て 、 民 間 の 補 完 を す る 貸 出 行 動 を と っ て い る 可 能 性 を
示 し 、 2 0 0 9 年 以 降 は 土 地 保 有 比 率 の 低 い 企 業 で 公 庫 貸 出 確 率 が 高 く 、 担 保 に
依 存 し な い 貸 出 を 実 施 し て い る 点 を 証 明 し た 。 公 庫 の 貸 出 効 果 は 「 資 金 ア ベ イ
ラ ビ リ テ ィ の 改 善 」 「 資 本 ス ト ッ ク の 増 加 」 を も た ら す が 、 利 益 率 等 の 企 業 パ1 5
フ ォ ー マ ン ス に お い て は 公 庫 の 利 用 は 有 効 で は な い と し て い る 。
次 に 、 根 本 ・ 深 沼 ・ 渡 部 ( 2 0 0 6 ) に よ る と 、 政 府 系 金 融 機 関 は 、 主 に 民 間 金
融 機 関 か ら 借 り ら れ な い 企 業 を 対 象 と し て お り 、 創 業 期 の 企 業 に 限 定 し て い え
ば 政 府 系 金 融 機 関 が 民 間 金 融 機 関 と 競 合 し て い る と い う 事 実 は 見 受 け ら れ な い
と し て い る 。 ま た 、 政 府 系 金 融 機 関 の み か ら 借 り 入 れ た 企 業 が 創 業 年 数 の 経 過2 0
と と も に 緩 や か に 成 長 し て い く と い う 可 能 性 を 検 証 し 、 結 果 と し て 「 政 府 系 金
2 5
日 本 政 策 金 融 公 庫 H P
2 6
2 0 1 5 年 3 月 末 時 点 で 4 5 8 機 関 と 業 務 連 携 ・ 協 力 に か か る 覚 書 を 締 結 。 2 0 0 9 年 4 月
以 降 に 具 体 的 な 連 携 を 行 っ た 地 域 金 融 機 関 は 、 4 3 7 行 に 及 ぶ 。
27
融 機 関 が 民 間 金 融 機 関 を 補 完 し た 上 で 、 企 業 を 成 長 に 導 い て い る と 評 価 で き る 」
と 分 析 し て い る 。
つ ま り 、 公 庫 の 貸 出 は 民 間 の 金 融 機 関 が リ ス ク を 取 れ な い と こ に 貸 出 し 、 公
庫 独 自 の ノ ウ ハ ウ を 生 か し て 企 業 の 支 援 を 行 っ て い る こ と が 考 察 で き る 。
第 6 節 信 用 補 完 制 度5
中 小 企 業 が 民 間 金 融 機 関 の 融 資 を 受 け や す く す る た め の 制 度 と し て 、 信 用 保
証 制 度 と 信 用 保 険 制 度 の 二 つ の 制 度 に よ っ て 成 り 立 つ 「 信 用 補 完 制 度 」 が 存 在
す る 。
信 用 保 証 制 度 は 中 小 企 業 が 金 融 機 関 か ら 融 資 を 受 け る 際 、 そ の 借 入 債 務 を 信
用 保 証 協 会 が 保 証 す る こ と に よ り 、 中 小 企 業 の 資 金 調 達 を 円 滑 化 す る こ と を 目1 0
的 と し て い る 。 信 用 保 証 制 度 を 取 り 扱 う 信 用 保 証 協 会 は 、 4 7 都 道 府 県 と 4 市
( 横 浜 市 、 川 崎 市 、 岐 阜 市 、 名 古 屋 市 ) の 5 1 協 会 存 在 し 、 中 小 企 業 ・ 小 規 模
事 業 者 の 金 融 円 滑 化 の た め に 設 立 さ れ た 公 的 機 関 で あ る 。
信 用 保 証 協 会 は 、 中 小 企 業 の 金 融 機 関 か ら 借 り 入 れ を 保 証 す る こ と に よ り 、
そ の 借 り 入 れ が デ フ ォ ル ト し た 際 に 、 債 務 者 で あ る 金 融 機 関 に 対 し て 、 中 小 企1 5
業 に 代 わ り に 保 証 債 務 を 弁 済 す る ( 代 位 弁 済 ) 2 7
。 信 用 保 証 を 受 け ら れ る 企 業
に は 業 種 や 規 模 に よ る 制 限 が 決 め ら れ て い る 。 保 証 付 き 融 資 を 受 け た 中 小 企 業
は 、 信 用 保 証 協 会 に 信 用 保 証 料 を 支 払 う 。 信 用 保 証 料 は 9 段 階 の 保 証 料 率 体
系 に な っ て お り 、 そ の 保 証 料 率 は 貸 借 対 照 表 の 作 成 の 有 無 に よ っ て 変 化 す る 。
2 7
奥 田 悟 ( 2 0 1 3 )
28
貸 借 対 照 表 を 作 成 し て い る 場 合 、 C R D ( 中 小 企 業 信 用 リ ス ク デ ー タ ) 協 会 2 8
の リ
ス ク 評 価 シ ス テ ム を 用 い て 保 証 料 率 が 決 め ら れ る 2 9
( 図 表 3 - 1 3 ) 。
信 用 保 険 制 度 と は 、 信 用 保 証 協 会 が 金 融 機 関 に 代 位 弁 済 し た 金 額 の 7 0 % ~
8 0 % が 日 本 政 策 金 融 公 庫 か ら 補 填 さ れ る 制 度 で あ る 。 公 庫 以 外 に も 信 用 保 証
協 会 は 自 治 体 か ら 損 失 の 一 部 が 補 填 さ れ て い る 。5
図 表 3 - 1 3 信 用 保 証 料 率 決 定 の プ ロ セ ス
出 所 : 北 海 道 信 用 保 証 協 会 ( 2 0 1 5 )
図 表 3 - 1 4 信 用 補 完 制 度 の 枠 組 み
1 0
出 所 : 福 島 県 信 用 保 証 協 会 H P
2 8
中 小 企 業 庁 の 発 案 に よ り 平 成 1 3 年 に 設 立 さ れ た 中 小 企 業 に 関 す る 日 本 最 大 の デ ー タ
ベ ー ス 機 関
2 9
経 営 安 定 関 連 ( セ ー フ テ ィ ネ ッ ト ) 保 証 や 流 動 資 産 担 保 融 資 保 証 ( A B L 保 証 ) な ど に
関 し て は 、 一 律 の 信 用 保 証 料 が 適 用 さ れ る 。
29
次 に 、 信 用 保 証 制 度 の 保 障 債 務 残 高 と 利 用 率 ・ 保 証 承 諾 額 ・ 代 位 弁 済 額 を 考
察 す る 。 保 証 承 諾 額 は 、 2 0 0 8 年 度 の 約 2 0 兆 円 か ら 右 肩 下 が り と な っ て お り
2 0 1 3 年 度 で は 約 9 兆 円 と な っ て い る ( 図 表 3 - 1 6 ) 。 代 位 弁 済 額 も 、 保 証 承 諾
額 に 連 れ て 減 少 し て い る 。 中 小 企 業 向 け 貸 し 出 し に 占 め る 信 用 保 証 付 き 融 資 貸
し 出 し の 割 合 は 保 証 承 諾 額 が 減 少 し て い る 中 、 1 3 % 前 後 を 推 移 し て い る 3 0
。 こ5
れ は 、 中 小 企 業 向 け 貸 し 出 し の 全 体 額 が 減 少 傾 向 に あ る た め 、 信 用 保 証 付 き 貸
し 出 し の 割 合 も 変 化 し て い な い と 考 え ら れ る 。
図 表 3 - 1 5 保 証 債 務 残 高 と 保 証 利 用 率 の 推 移
出 所 : 岡 田 ( 2 0 1 3 )1 0
図 表 3 - 1 6 保 証 債 務 承 諾 額 推 移 及 び 内 訳
出 所 : 内 閣 府 ( 2 0 1 4 b )
第 7 節 官 民 フ ァ ン ド
3 0
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 3 )
30
官 民 フ ァ ン ド と は 、 政 策 目 的 に 基 づ き 、 政 府 出 資 を 中 心 に 民 間 も 一 部 を 出 資
す る な ど に よ り 「 官 」 と 「 民 」 が 連 携 し て 投 資 を 推 進 す る 組 織 で あ り 、 成 長 が
期 待 さ れ る 分 野 へ リ ス ク マ ネ ー を 供 給 す る こ と で 、 民 間 の 力 を 最 大 限 引 き 出 す
た め の 「 呼 び 水 」 と な る 役 割 が 期 待 さ れ て い る 3 1
。 本 節 で は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ
ー 企 業 の 成 長 に 重 要 な フ ァ ン ド で あ る 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構 ( 以 下 、 中 小 機5
構 ) に つ い て 説 明 す る 3 2
。
中 小 機 構 は 、 2 0 0 4 年 に 3 つ の 特 殊 法 人 3 3
が 統 合 さ れ て 創 立 さ れ 、 中 小 企 業
の 創 業 か ら 事 業 再 生 ・ 災 害 対 策 な ど の セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト ま で 、 中 小 企 業 の ラ
イ フ ス テ ー ジ に あ っ た 支 援 を 実 行 し て い る 。 そ の 一 環 と し て 中 小 機 構 は 、 中 小
企 業 の 起 業 ・ 成 長 ・ 再 生 ・ 震 災 復 興 を 支 援 す る 各 フ ァ ン ド へ の 出 資 事 業 を 実 施1 0
し て い る 。 現 在 、 運 営 し て い る フ ァ ン ド 事 業 は 、 創 業 又 は 成 長 初 期 の 段 階 に あ
る 中 小 企 業 を 支 援 す る 「 起 業 支 援 フ ァ ン ド 」 、 成 長 が 見 込 ま れ る 新 事 業 展 開 を
支 援 す る 「 中 小 企 業 成 長 支 援 フ ァ ン ド 」 、 再 生 に 取 り 込 む 中 小 企 業 を 支 援 す る
「 再 生 支 援 フ ァ ン ド 」 の 3 つ で あ る 。 具 体 的 な 支 援 策 は 、 民 間 の 投 資 会 社 が 運
営 す る フ ァ ン ド に 有 限 責 任 組 合 ( L P ) と し て 出 資 し 、 中 小 企 業 の 資 金 調 達 の1 5
3 1
商 工 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 4 )
3 2
官 民 フ ァ ン ド は 、 2 0 1 4 年 9 月 時 点 で 他 、 産 業 革 新 機 構 ・ 地 域 経 済 活 性 化 支 援 機 構 ・
民 間 資 金 等 活 用 事 業 推 進 機 構 な ど 1 1 フ ァ ン ド 存 在 す る 。
3 3
中 小 企 業 総 合 事 業 団 ( 信 用 保 険 部 門 を 除 く ) 、 地 域 振 興 整 備 公 団 ( 地 方 都 市 開 発 整 備
等 業 務 を 除 く ) 及 び 産 業 基 盤 整 備 基 金
31
円 滑 化 、 ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 い 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 や 中 小 企 業 の 新 事 業 展 開 の 促
進 、 中 小 企 業 の 再 生 を 支 援 し て い る 3 4
。
第 4 章 中 小 企 業 金 融 に お け る 課 題
第 1 節 信 用 補 完 制 度 に お け る 問 題 点5
日 本 の 信 用 保 証 制 度 で は 、 特 別 保 証 制 度 や 緊 急 保 証 制 度 に よ っ て 、 保 証 割 合
が 1 0 0 % の 期 間 が 長 期 に 渡 っ た た め 、 金 融 機 関 が 保 証 付 き 融 資 を 実 施 す る 際 、
適 切 な 審 査 を せ ず に リ ス ク の 高 い 中 小 企 業 に 保 証 付 き 融 資 を 行 う モ ラ ル ハ ザ ー
ド が 発 生 し て い た 。 ま た 、 保 証 料 が 一 律 で あ っ た た め 保 証 付 き 融 資 を 受 け る 中
小 企 業 側 に も 、 銀 行 の モ ニ タ リ ン グ を 怠 る モ ラ ル ハ ザ ー ド が 発 生 し て い た 。 緊1 0
急 保 証 制 度 の 実 態 を 見 る と 、 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 直 後 に か か わ ら ず 、 「 金 融 機 関
か ら 断 ら れ た の で 利 用 し て い る ( あ る い は 期 待 し て い る ) 」 と 答 え た 中 小 企 業
は 1 3 % に し か 過 ぎ な い 。 む し ろ 「 手 元 流 動 性 を 高 め る た め 」 や 「 金 融 機 関 の
プ ロ パ ー 融 資 か ら の 借 換 」 が そ れ ぞ れ 6 2 . 6 % 、 7 . 4 % を 占 め て お り 3 5
、 信 用 保
証 の 本 来 の 主 旨 と は 違 っ た 利 用 が さ れ 、 経 営 が さ ほ ど 悪 く な い 中 小 企 業 が 金 融1 5
機 関 の プ ロ パ ー 融 資 よ り も 好 条 件 で 資 金 調 達 さ れ て い た 3 6
。
小 西 ・ 長 谷 部 ( 2 0 0 2 ) で は 、 ① 特 別 保 証 制 度 の 実 施 に よ り 短 期 的 に は 倒 産 回
避 効 果 が 認 め ら れ た が 、 中 長 期 的 に は 認 め ら れ な か っ た こ と ② 特 別 保 証 制 度 は
中 小 企 業 向 け 貸 出 の 増 加 に 貢 献 し た こ と を 示 し 、 特 別 保 証 制 度 は 不 良 な 企 業 に
3 4
出 資 額 は フ ァ ン ド の 上 限 の 1 / 2 が 上 限 。 フ ァ ン ド へ の 出 資 要 件 と し て 、 組 合 の 存 続 期
間 は 1 2 年 以 内 と し 、 G P は 投 資 後 の 業 況 や 進 捗 状 況 な ど の 継 続 的 な 把 握 、 経 営 や 技 術 等
に 関 す る ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う こ と な ど が 明 記 さ れ て い る 。
3 5
植 杉 ・ 小 野 、 他 ( 2 0 0 9 )
3 6
大 庫 ( 2 0 1 3 )
32
も 融 資 を 実 行 す る 誘 因 を 与 え 、 結 果 と し て 資 金 配 分 の 効 率 性 を 損 な う 制 度 で あ
り 、 中 長 期 的 に は 倒 産 件 数 が 増 加 す る こ と に 繋 が っ た と 分 析 し て い る 。
つ ま り 、 特 別 保 証 制 度 は 優 良 か 不 良 で あ る か に 関 わ ら ず 、 ほ ぼ 無 条 件 で 保 証
承 諾 を 出 し た た め 、 再 建 の 見 込 み が な い 企 業 に も 貸 し 出 さ れ た 。 短 期 的 に は 倒
産 は 免 れ る が 、 も と も と 体 力 の な い 企 業 は 中 長 期 的 に 見 る と 倒 産 す る た め 、 信5
用 保 証 協 会 の さ ら な る 財 政 悪 化 に 繋 が っ て い た 。
第 2 節 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 す る 上 で の 課 題
中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 は 、 そ の 国 の 経 済 成 長 に 大 き な 役 割 を 果 た し 、
G D P と 新 規 開 業 率 の 関 係 に お い て も 、 上 昇 す れ ば G D P も 上 昇 す る と の 研 究 も
あ る 3 7
。 日 本 に お い て も こ の よ う な 観 点 か ら 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 へ1 0
の 支 援 策 を 講 じ て き た が 、 明 確 な 成 果 を 出 し て い る と は 言 い 難 く 、 特 に 新 産 業
の 創 出 ・ 雇 用 創 出 の 観 点 か ら 期 待 さ れ て い る 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業
が 成 長 し て い な い 。 成 長 に 必 要 な 資 金 供 給 に お い て も 、 I T 分 野 な ど で は リ ス
ク マ ネ ー は 十 分 に 供 給 さ れ て い る が 、 研 究 開 発 を 伴 う 分 野 で は 未 だ に 不 十 分 で
あ る ( 図 表 3 - 1 0 ) 。 そ の 大 き な 要 因 と し て 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業1 5
は 、 I T 系 と 比 較 し て 、 初 期 投 資 に 費 用 が 掛 か り 、 成 果 が 出 る ま で に 期 間 が 長
い こ と で リ ス ク が 高 い と 認 識 さ れ て い る 。
研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 は 、 製 品 を 開 発 し た と し て も 、 過 去 の 販 売
実 績 が な い た め 最 初 の 買 い 手 が 見 つ か ら な い 課 題 と 、 最 初 の 買 い 手 が 見 つ か っ
た と し て も 次 に 市 場 に 向 け て 製 品 を 改 良 し 販 売 す る た め の 販 売 拡 路 や 取 引 先 が2 0
な い 問 題 が あ る ( 市 場 化 ・ 事 業 化 の 問 題 ) 。 ま た 、 技 術 者 出 身 が 多 く 、 V C か
ら の 出 資 を 受 け る 際 に V C に 対 し て 自 社 の 技 術 や 事 業 の 優 位 性 を 伝 え ら れ て い
3 7
野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 )
33
な い こ と や 、 そ も そ も 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 技 術 が 未 熟 と V C 側
か ら 指 摘 し て い る 3 8
。
こ の よ う な 問 題 を 解 決 す る 一 つ の 方 策 と し て 、 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン や ベ
ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム と い わ れ る 既 存 の 大 企 業 な ど と の 連 携 が 重 要 で あ る が 、
日 本 で は 大 企 業 の 自 社 内 開 発 ・ 生 産 に よ る い わ ゆ る 「 自 前 主 義 」 に よ っ て 、 中5
小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 と の 連 携 に 積 極 的 で は な い た め 、 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン
や ベ ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム の 取 り 組 み が 遅 れ て い る 。
図 表 4 - 1 大 企 業 の 外 部 連 携 先
出 所 : 文 部 科 学 省 科 学 技 術 ・ 学 術 政 策 研 究 所 ( 2 0 1 3 )1 0
・ 金 融 機 関 ・ V C の 目 利 き 能 力 不 足
中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 を 支 え る に は 、 そ の 事 業 性 や 技 術 を 見 極 め る 目
利 き 力 が 必 要 で あ る 。 2 章 で 考 察 し た よ う に 、 日 本 で は 金 融 機 関 に 依 存 す る 形
で の 資 金 供 給 が 行 わ れ て い る が 、 金 融 機 関 は 企 業 の 事 業 性 や 技 術 を 評 価 す る
「 目 利 き 能 力 」 が 不 足 し て お り 、 事 業 性 や 技 術 を 評 価 し た 融 資 を 行 え て い な い 。1 5
各 金 融 機 関 に お い て 、 目 利 き 能 力 向 上 の 取 り 組 み が な さ れ て い る が 、 金 融 機 関
3 8
価 値 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 )
34
が 身 に つ け ら れ る も の で は な い と も 言 わ れ て お り 3 9
、 金 融 機 関 の 代 わ り に 目 利
き 能 力 を 発 揮 す る 主 体 が 必 要 で あ る 。
金 融 機 関 に 代 わ っ て 目 利 き 能 力 を 発 揮 す る 主 体 と し て 期 待 さ れ る の が V C で
あ る が 、 V C も ま た 、 目 利 き 能 力 不 足 が 指 摘 さ れ て い る 。 特 に 、 独 立 系 や 銀 行
系 の V C に お い て そ の よ う な 指 摘 は 多 く 、 価 値 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 ) が 行 っ た V C5
へ の ア ン ケ ー ト 調 査 で 、 6 5 % の V C が 技 術 へ の 目 利 き 能 力 が 不 足 し て い る と 回
答 し て い る 。
・ V C 産 業 の 未 発 達
3 章 で も 考 察 し た よ う に 、 日 本 は 諸 外 国 と 比 較 し て V C 投 資 が 不 足 し て お り
( 図 表 3 - 7 ) 、 そ の 中 で も 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の リ ス ク マ ネ ー1 0
が 不 足 し て い る 。 創 業 融 資 や 研 究 開 発 費 と い っ た も の は 、 将 来 利 益 を 生 み 出 す
か の 判 断 が 困 難 で あ り 、 民 間 の 金 融 機 関 に と っ て リ ス ク マ ネ ー と な る 4 0
。 こ の
よ う な リ ス ク マ ネ ー の 供 給 主 体 で あ る V C は 十 分 に 機 能 し て い る と は 言 え ず 、
そ の 要 因 と し て 前 述 の 「 V C の 目 利 き 能 力 不 足 」 「 V C の 資 金 量 不 足 」 等 が 挙 げ
ら れ る 。 ま た 、 V C の 投 資 期 間 が 1 0 年 程 度 で あ り 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ1 5
ャ ー 企 業 が 求 め る 1 0 年 を 超 す 長 期 資 金 を 供 給 で き て い な い 。 投 資 を 行 う の が
レ イ タ ― 、 つ ま り I P O 直 前 の よ う な 企 業 に 集 中 し 、 シ ー ド や ア ー リ ー と い っ
た 初 期 の 段 階 で の 投 資 が 少 な い ( 図 表 3 - 8 ) 。 さ ら に 、 レ イ タ ― に 投 資 を 実 施
し て も 少 額 か つ 分 散 し た 投 資 し か 行 わ ず 、 事 業 化 ・ 市 場 化 の 段 階 で あ る レ イ タ
3 9
内 閣 府 ( 2 0 1 4 c ) 2 5 頁
4 0
村 本 ( 2 0 1 5 ) は 、 金 融 機 関 の 貸 出 は ロ ー リ タ ー ン ロ ー リ ス ク で あ り 、 ハ イ リ ス ク ハ イ
リ タ ー ン で あ る リ ス ク マ ネ ー の 供 給 に は 適 し て い な い と 指 摘 し て い る 。
35
― 期 で 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 大 口 の 資 金 ニ ー ズ を 満 た せ ず 、 ま た
米 国 と 比 較 し て も V C へ の 資 金 供 給 量 も 大 き な 差 が あ る 4 1
。
こ れ ら の 課 題 は V C へ の 批 判 の 一 つ で あ る 「 エ ク ジ ッ ト の I P O 偏 重 」 に 繋 が
る 。 投 資 期 間 が 経 過 す る と V C は 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に I P O を 要 求 す る 。 た
と え I P O が 達 成 さ れ た と し て も 、 上 場 後 の ビ ジ ネ ス プ ラ ン や 経 営 基 盤 な ど を5
備 え て い な い と I P O 後 に 失 速 す る ケ ー ス が 多 い 。 本 来 、 I P O は 資 金 調 達 の 一
つ の 手 段 で あ り 、 I P O を 中 小 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 最 終 目 的 と す べ き で は な い 。
ま た 、 各 V C に 対 し て も 様 々 な 課 題 が 指 摘 さ れ て お り 、 内 田 ・ 孫 ( 2 0 1 3 ) は
独 立 系 V C に つ い て 、 未 熟 な 企 業 を I P O さ せ る 傾 向 に あ り 、 名 声 の 低 い ア ン ダ
ー ラ イ タ ー を 用 い て 上 場 基 準 の 緩 い 市 場 で 企 業 を I P O さ せ て い る こ と を 明 か1 0
し て い る 。
銀 行 系 V C に つ い て は 藤 野 ( 2 0 1 5 ) が 有 識 者 の ヒ ア リ ン グ な ど を 基 に 、 銀 行
系 V C の 社 員 は 本 体 で あ る 銀 行 か ら の 出 向 が 大 半 を 占 め る た め 、 銀 行 同 様 目 利
き 能 力 が 不 足 し て い る 。 ま た 、 融 資 業 務 の 意 識 か ら リ ス ク を 取 ら ず シ ー ド ・ ア
ー リ ー ス テ ー ジ に 消 極 的 で あ り 、 レ ー タ ー ス テ ー ジ へ の 投 資 が 中 心 で あ る 。 出1 5
向 期 間 も 3 年 ほ ど で 銀 行 に 戻 る た め V C の 業 務 に つ い て の ノ ウ ハ ウ が 身 に つ か
な い 。 V C で は 資 金 を 供 給 す る だ け で な く ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う こ と が 求 め ら
れ る が 、 銀 行 系 V C は ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 え て い な く V C の 役 割 を 果 た し て い
な い と 指 摘 し て い る 。 比 佐 ( 2 0 0 8 ) は 、 銀 行 系 V C は 情 報 の 非 対 称 性 を 解 消 し 、
資 金 制 約 の 問 題 を 解 消 す る 役 割 を 果 た す と い う よ り は 、 む し ろ リ ス ク を 回 避 し2 0
て い る 可 能 性 が 高 い と し て い る 。
4 1
野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 ) の ヒ ア リ ン グ 調 査 で も 、 「 技 術 関 連 の 目 利 き 力 の あ る 人 材 の
不 足 」 「 少 額 で の 分 散 投 資 」 「 事 業 拡 張 ・ 安 定 化 に 差 し 掛 か る レ イ ト ス テ ー ジ で の 資 金
供 給 元 の 不 足 」 が 指 摘 さ れ て い る 。
36
C V C に つ い て は 、 野 村 ( 2 0 1 4 a ) 藤 野 ( 2 0 1 5 ) ら が 、 米 国 に 比 べ 業 種 が 狭 く 日
本 で は K D D I や サ イ バ ー エ ー ジ ェ ン ト と い っ た I T 系 や メ デ ィ ア 系 を 中 心 と し
て 展 開 さ れ て い る た め 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ 投 資 す る 主 体 が 少
な く 、 中 長 期 的 な 戦 略 に 基 づ い て の 戦 略 的 投 資 で は な く 財 務 目 的 の 投 資 と な っ
て い る と 指 摘 し て い る 4 2
。5
第 5 章 こ れ か ら の 中 小 企 業 金 融 政 策
第 1 節 信 用 保 証 制 度 改 革
今 後 の 信 用 補 完 制 度 は 、 政 策 金 融 体 系 の 中 で 直 接 融 資 と 並 ん で 車 の 両 輪 と い
う べ き 役 割 を 果 た さ な け れ ば な ら な い 4 3
。1 0
3 章 で も 述 べ た よ う に 、 中 小 企 業 向 け 貸 出 の う ち 保 証 付 き 融 資 は 約 1 3 % と
中 小 企 業 に お い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る 4 4
。 今 後 の 信 用 保 証 制 度 の あ り 方 と
し て 、 従 来 担 っ て き た セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト の 役 割 に 加 え て 創 業 期 な ど の 金 融 機
関 が リ ス ク を 取 れ な い と こ ろ を 補 填 す る 役 割 が 重 要 で あ り 、 金 融 機 関 も 創 業 向
け 融 資 で 保 証 付 き 融 資 を 利 用 し た い 意 向 が あ る ( 図 5 - 1 ) 。1 5
4 2
日 本 に お い て 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に 投 資 す る 大 企 業 が 少 な い 理 由 と し て 、
野 村 ( 2 0 1 4 a ) で は 「 過 去 に ベ ン チ ャ ー 投 資 に 失 敗 し 、 リ ス ク の 高 い ベ ン チ ャ ー 企 業 に 投
資 す る こ と に 消 極 的 に な っ て い る 」 と さ れ て い る 。
4 3
村 本 ( 2 0 1 5 ) 3 2 1 頁
4 4
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 3 )
37
図 表 5 - 1 起 業 ・ 創 業 に 係 る 融 資 を 推 進 す る た め の 取 組 み
出 所 : 日 本 政 策 金 融 公 庫 ( 2 0 1 4 )
現 在 、 信 用 保 証 制 度 の 保 証 割 合 は 、 部 分 保 証 ( 8 0 % 保 証 ) と 復 興 緊 急 保 証 や
セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト 保 証 な ど の 全 額 保 証 ( 1 0 0 % 保 証 ) が 併 存 し て お り ( 図 表 3 -5
1 6 ) 、 そ の 結 果 、 本 来 信 用 保 証 を 受 け な く て も よ い 企 業 が 信 用 保 証 を 受 け て い
る と の 指 摘 や 、 貸 し 出 し 審 査 が 緩 い と い っ た モ ラ ル ハ ザ ー ド が 発 生 し て い た 。
今 後 の 信 用 補 完 制 度 は 、 金 融 機 関 の モ ラ ル ハ ザ ー ド を 是 正 す る た め に 、 金 融
機 関 に 保 証 付 き 貸 出 を 行 う 企 業 の 選 定 を し っ か り と 見 極 め る た め の イ ン セ ン テ
ィ ブ が 必 要 で あ る 。 し か し な が ら 、 た だ 金 融 機 関 の 負 担 を 重 く す る な ど し て 締1 0
め 付 け を 行 う だ け で は 、 逆 選 択 の 問 題 を 引 き 起 こ し 、 適 切 な 制 度 の 利 用 を 阻 害
す る も の と な る 。
従 っ て 我 々 は 、 金 融 機 関 に 適 切 な 制 度 利 用 を 促 す た め に 「 金 融 機 関 別 の 保 証
割 合 設 定 」 を 提 言 す る 。
金 融 機 関 別 の 保 証 割 合 設 定 と は 、 毎 年 の 事 故 率 に 応 じ て 保 証 割 合 を 変 動 さ せ1 5
る 制 度 の こ と で あ り 、 ド イ ツ の 住 宅 金 融 の 保 証 に お い て は 、 金 融 機 関 の 信 用 保
証 付 き 貸 出 に お け る 事 故 率 を 基 に 保 証 割 合 を 設 定 し て い る 。 つ ま り 、 保 証 付 き
融 資 の 事 故 率 が 高 い 金 融 機 関 に は 次 年 度 の 保 証 割 合 を 引 き 上 げ 、 逆 に 事 故 率 が
38
低 い 金 融 機 関 に は 次 年 度 の 保 証 割 合 を 引 き 下 げ て お り 4 5
、 金 融 機 関 に 適 切 な モ
ニ タ リ ン グ を 行 う イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え て い る 。 日 本 に お い て も こ の 制 度 に 則
っ た 形 を と る 。
ま ず 、 現 状 の 信 用 保 証 制 度 に お け る 全 額 保 証 ( 1 0 0 % ) と 全 国 一 律 の 責 任 共 有
制 度 ( 8 0 % ) を 撤 廃 し 、 6 0 % ~ 9 0 % の 部 分 保 証 に 切 り 替 え る 。 そ の 後 、 代 位 弁5
済 率 が 悪 化 し た 金 融 機 関 に お い て は 次 年 度 に 保 証 割 合 を 引 き 上 げ 、 代 位 弁 済 率
が 改 善 し て い る 金 融 機 関 は 次 年 度 に 保 証 割 合 を 引 き 下 げ る 。 こ の 金 融 機 関 ご と
に 保 証 割 合 を 差 別 化 し 、 企 業 を し っ か り と 審 査 さ せ る こ と で 、 金 融 機 関 に よ る
モ ラ ル ハ ザ ー ド を 防 ぐ こ と が で き る と 考 え る 。
こ の 改 善 策 を 行 う こ と に よ り 、 金 融 機 関 の モ ラ ル ハ ザ ー ド が 改 善 さ れ 、 金 融1 0
機 関 の 目 利 き 能 力 の 向 上 に 繋 が り 、 信 用 保 証 を 受 け る べ き 企 業 の み に 信 用 保 証
を 利 用 さ れ る こ と が 期 待 で き る 。 ま た 、 融 資 だ け で は な く 、 ハ ン ズ オ ン 支 援 や
リ レ バ ン の 向 上 に も 繋 が り 、 信 用 保 証 の 適 切 な 制 度 運 用 に 繋 が る と 考 え る 。
第 2 節 コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 活 性 化 へ の 提 言
4 章 で 考 察 し た よ う に 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 す る 上 で 、 資 金 面 で の1 5
支 援 以 外 に も 、 人 材 や ノ ウ ハ ウ と い っ た 経 営 資 源 が 必 要 で あ る 。 そ の 中 で も 大
企 業 と の 連 携 が 重 要 で あ る が 、 前 述 し た よ う に 大 企 業 と 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業
の 連 携 は 余 り 行 わ れ て い な い ( 図 表 4 - 1 ) 。 つ ま り 、 大 企 業 と 中 小 ・ ベ ン チ ャ
ー 企 業 の 連 携 を 促 す こ と が 可 能 な C V C を 活 性 化 さ せ る こ と は 有 効 で あ る と 考
え る 。 米 国 で は 、 日 本 よ り も V C 投 資 に お い て C V C は 長 年 定 着 し て お り 、 倉 林2 0
( 2 0 1 4 ) に よ る と 、 米 国 で は 独 立 系 V C に 比 べ 、 C V C に 投 資 さ れ た 企 業 の 時 価
総 額 は 3 倍 に も 及 び 倒 産 確 率 も 低 い と し 、 C V C は 価 値 あ る 投 資 家 で あ る と さ
れ て い る 。 し か し 、 日 本 の C V C に は 業 種 の 偏 り や 、 V C 自 体 の 問 題 と い っ た 、
4 5
吉 野 ( 2 0 1 4 )
39
解 決 す べ き 課 題 が 数 多 く 存 在 す る 。 今 後 、 日 本 に お い て C V C の 活 性 化 ・ 定 着
に 向 け 、 I T ・ メ デ ィ ア 系 以 外 の 業 種 へ の 拡 大 、 大 企 業 だ け で な く 地 方 の 中 堅
企 業 に 対 し て も 普 及 さ せ 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の よ う な リ ス ク あ
る 所 に 資 金 を 供 給 す る 必 要 が あ る 。
こ れ ら の 課 題 を 踏 ま え 、 我 々 は 「 C V C と 銀 行 系 V C ・ 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構5
に よ る 共 同 出 資 に よ る フ ァ ン ド 創 出 」 を 提 案 す る 。
こ の ス キ ー ム の 特 徴 は 、 大 企 業 に よ る C V C と 投 資 先 企 業 と の 二 者 関 係 に 、
銀 行 系 V C と 中 小 機 構 を 含 め た 支 援 体 制 を 確 立 し た 点 で あ る ( 図 表 5 - 1 ) 。
図 表 5 - 1 C V C と 銀 行 系 V C ・ 中 小 機 構 に よ る 共 同 出 資 の ス キ ー ム
1 0
出 所 : N E C キ ャ ピ タ ル ソ リ ュ ー シ ョ ン H P を 基 に 筆 者 作 成
C V C と 銀 行 系 V C ・ 中 小 機 構 の 共 同 出 資 に よ る メ リ ッ ト と し て 、 お 互 い の 課
題 を 解 決 し な が ら 、 お 互 い の ノ ウ ハ ウ を 活 か す こ と が で き る 。 C V C の ノ ウ ハ
ウ と し て 、 大 企 業 そ の も の が 保 持 し て い る 「 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 事 業 性 、
技 術 の 目 利 き 能 力 」 「 自 社 の 技 術 や 販 路 を 使 っ た ハ ン ズ オ ン 支 援 」 「 人 材 派 遣 」1 5
等 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 に 必 要 な 経 営 資 源 を 提 供 す る こ と が で き る 。
銀 行 系 V C の ノ ウ ハ ウ と し て 「 支 店 を 生 か し た ネ ッ ト ワ ー ク に よ る 案 件 発 掘 」
「 企 業 と の マ ッ チ ン グ 」 「 豊 富 な 資 金 量 」 が 挙 げ ら れ 、 投 資 先 が 市 場 化 ・ 事 業
40
化 の 際 、 銀 行 本 体 か ら の 大 型 の 融 資 が 受 け ら れ る こ と が 期 待 で き る 。 実 際 、 内
田 ・ 孫 ( 2 0 1 3 ) に よ る と 「 銀 行 系 V C に よ る ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 が 、 親
企 業 の 貸 出 を 増 加 さ せ 、 利 益 を 増 加 さ せ る と い う 戦 略 目 的 で 行 わ れ て い る 」 と
い う 先 行 研 究 の 結 果 を 検 証 し 、 そ の 仮 説 が 真 で あ る こ と 示 し て い る 。
V C 同 士 に お け る シ ン ジ ケ ー シ ョ ン の 効 果 は 、 未 上 場 企 業 に 対 し て 複 数 の ベ5
ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル が 共 同 投 資 を 行 う 際 の メ ン バ ー 構 成 に つ い て 実 証 的 に 分 析
し た 滝 澤 ・ 宮 川 ( 2 0 1 5 ) に よ る と 「 異 な る V C の 協 同 を 促 す こ と が 資 本 市 場 の
機 能 を よ り 高 め る 可 能 性 が あ る 」 と し 、 「 銀 行 を 中 心 と す る 間 接 金 融 を 主 た る
資 金 供 給 チ ャ ネ ル と し て き た 日 本 の 金 融 市 場 に お い て 、 特 に 初 回 投 資 ラ ウ ン ド
に お け る ス ク リ ー ニ ン グ 機 能 の 面 で は 多 様 な メ ン バ ー 構 成 が 経 済 的 な 利 益 を も1 0
た ら す 可 能 性 が あ る 」 と 分 析 し て い る 。
V C と C V C の 連 携 に つ い て 浦 木 ( 2 0 1 1 ) は 、 「 V C と C V C は 補 完 的 な 関 係 性 に
あ る 」 と し て い る 。 V C は 投 資 契 約 や 投 資 家 構 成 の マ ネ ジ メ ン ト , 投 資 コ ン セ
プ ト , 経 営 陣 の 採 用 , 資 金 調 達 の プ ラ ン ニ ン グ な ど に 関 し て 強 み を 持 ち 、 そ れ
に 対 し C V C は オ ペ レ ー シ ョ ナ ル な 部 分 で の 実 質 的 な サ ポ ー ト 、 顧 客 開 拓 や 原1 5
料 調 達 、 ス ケ ー ル ア ッ プ 、 工 業 的 生 産 の ノ ウ ハ ウ 知 財 戦 略 、 物 流 戦 略 な ど で 強
み が あ る た め 、 お 互 い の 強 み を 合 わ せ れ ば 強 力 な サ ポ ー ト 体 制 が 確 立 す る と 述
べ て い る 。 ま た 、 内 閣 府 ( 2 0 1 4 b ) で 指 摘 さ れ て い る よ う に 、 銀 行 系 V C が 目 利
き 能 力 の あ る C V C と 共 同 出 資 を 行 う こ と に よ り 、 銀 行 系 V C 、 親 の 銀 行 へ の 目
利 き 能 力 の 向 上 が 期 待 で き る 。2 0
こ れ ら の 先 行 研 究 か ら も 、 C V C と 銀 行 系 V C の 共 同 出 資 は シ ナ ジ ー 効 果 を 生
み 出 し 、 さ ら に お 互 い が 保 有 し て い る 情 報 を 基 に ス ク リ ー ニ ン グ 効 果 が あ る こ
と を 示 し 、 共 同 出 資 が 有 効 で あ る こ と を 証 明 で き る 。 ま た 中 小 機 構 が フ ァ ン ド
の 下 支 え を す る こ と に よ り 、 フ ァ ン ド 規 模 の 増 額 、 更 な る 民 間 資 金 の 呼 び 水 、
公 的 機 関 の 出 資 先 と い う 信 用 力 の 向 上 ・ ガ バ ナ ン ス や 組 織 体 制 の 向 上 が 期 待 で2 5
41
き 4 6
、 日 本 の V C に お け る 課 題 で あ る 資 金 不 足 の 改 善 、 V C の 適 切 な 運 用 に 繋 が
る も の と な る 。
つ ま り 、 こ の ス キ ー ム を 行 う こ と で 、 C V C の 目 利 き 能 力 ・ 経 営 支 援 、 銀 行
系 V C の ネ ッ ト ワ ー ク や 資 金 量 、 中 小 機 構 の 下 支 え 能 力 に よ り 、 リ ス ク が あ る
と さ れ て い る 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 資 金 供 給 や ハ ン ズ オ ン 支 援 、5
事 業 化 ・ 市 場 化 の 段 階 で の 新 た な 資 金 供 給 が 行 え る よ う に な る 。 具 体 的 に は 、
シ ー ド 期 に は 、 C V C の 目 利 き 能 力 ・ 銀 行 系 V C の ネ ッ ト ワ ー ク を 生 か し て 案 件
発 掘 を 行 い 、 ス タ ー ト ア ッ プ 期 に は C V C の R & D に お け る ノ ウ ハ ウ 等 の 経 営 資
源 を 活 用 し て ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う 。 ア ー リ ー 期 に は C V C の 親 会 社 が 最 初 の
買 い 手 と な り 、 そ の 後 C V C の 顧 客 基 盤 ・ 銀 行 系 V C の ビ ジ ネ ス マ ッ チ ン グ を 活1 0
用 し 、 事 業 化 ・ 市 場 化 の 問 題 を 解 決 す る 。 レ ー タ ー ス テ ー ジ で は 、 銀 行 系 V C
の 本 体 か ら の 融 資 や 継 続 し た C V C の 親 と の 連 携 に よ り 、 成 長 後 に も 継 続 し た
支 援 が 実 施 で き る 。 ( 図 表 5 - 2 )
図 表 5 - 2 各 成 長 段 階 に お け る 支 援 の 流 れ
1 5
出 所 : 筆 者 作 成
4 6
石 井 芳 明 ( 2 0 1 1 ) 1 2 - 1 3 頁
42
次 に 、 こ の ス キ ー ム を よ り 活 性 化 す る た め の 事 前 策 と し て 、 以 下 、 3 つ の 政
策 ① ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 の 恒 久 化 ② 認 定 フ ァ ン ド 要 件 の 緩 和 ③ 中 小 機 構 に
よ る C V C の ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス の 開 示 制 度 を 提 言 す る 。
① ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 の 恒 久 化
経 済 産 業 省 が 大 企 業 ・ 中 堅 企 業 の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 を 促 す 税 制5
優 遇 と し て 「 法 人 版 エ ン ジ ェ ル 税 制 」 と も 呼 ば れ て い る ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税
制 が 存 在 す る 。 ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 と は 「 認 定 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド を 通 じ
て ベ ン チ ャ ー 企 業 株 式 へ の 出 資 額 の 8 0 % を 上 限 に 損 失 準 備 金 を 積 み 立 て 、 損
金 算 入 す る こ と 4 7
」 が 可 能 な 税 制 優 遇 で あ り 、 事 業 会 社 の ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の
投 資 を 促 進 さ せ ら れ る と 期 待 さ れ て い る が 、 2 0 1 7 年 3 月 末 ま で の 時 限 借 置 と1 0
な っ て い る 。
今 後 日 本 に お い て 事 業 会 社 の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 、 C V C を 定 着
さ せ る イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え る た め に は 、 こ の よ う な 制 度 は 継 続 さ せ る 必 要 が
あ り 、 時 限 措 置 で あ る と 長 期 的 な 視 点 を も っ て の 投 資 が 行 え な い 可 能 性 が 存 在
す る 。1 5
し た が っ て 、 時 限 措 置 を 廃 止 し 「 期 間 の 恒 久 化 」 を 提 言 す る 。
② 認 定 フ ァ ン ド 要 件 の 緩 和
ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 を 受 け る た め に は 、 認 定 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド へ 出 資
し な け れ ば な ら な い 。 し か し 現 在 、 認 定 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド と 認 可 さ れ て い る
フ ァ ン ド は 3 つ し か 存 在 せ ず 、 こ の よ う な 状 況 で は 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ2 0
の 投 資 が 促 進 さ れ な い 。 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド が 経 済 産 業 省 か ら 認 定 を 受 け る に
は い く つ も の 要 件 を ク リ ア す る 必 要 が あ る 4 8
。 し か し 、 認 定 フ ァ ン ド が 3 つ し
か な い 現 状 を 考 慮 す る と 認 定 要 件 が 厳 し い 可 能 性 が あ り 、 ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進
税 制 を 活 用 す る た め に も 認 定 要 件 の 緩 和 は 必 要 で あ る 。
4 7
経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 b )
4 8
認 定 フ ァ ン ド 要 件 に つ い て は 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 b ) を 参 照 さ れ た い 。
43
し た が っ て 、 ① フ ァ ン ド の 投 資 事 業 の 実 施 期 間 を 1 0 年 か ら 1 5 年 に 延 長 ②
出 資 約 束 金 額 2 0 億 円 以 上 を 1 0 億 円 以 上 に 緩 和 の 2 点 を 提 言 す る 。 出 資 約 束
金 額 を 下 げ る こ と で フ ァ ン ド 設 立 が 容 易 に な り 、 実 施 期 間 を 1 5 年 に 延 長 す る
こ と に よ り 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 が 実 施 し 易 く な り 、 地
方 の 中 堅 企 業 に も C V C 設 立 の 機 会 を 与 え 、 地 方 の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に も5
投 資 さ れ る と 期 待 で き る 。
③ 中 小 機 構 に よ る ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス の 開 示 制 度
野 村 ( 2 0 1 4 a ) で は C V C の 取 り 組 み へ の 足 掛 か り と し て 「 先 行 す る 企 業 の ベ
ス ト プ ラ ク テ ィ ス の 積 み 上 げ 」 が 不 可 欠 と さ れ 、 滝 澤 ・ 宮 川 ( 2 0 1 5 ) も 「 投 資
案 件 情 報 の 共 有 や ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 間 で の 人 的 交 流 を 促 進 す る よ う な 公 的1 0
プ ラ ッ ト ホ ー ム を 整 備 す る こ と が 一 つ の 政 策 的 取 り 組 み と し て 期 待 さ れ る 」 と
述 べ て い る 。 日 本 で は 1 9 9 0 年 代 以 降 、 数 多 く の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 支 援 策
が 取 ら れ て き た が 、 結 果 が ど の よ う に な っ た か の 検 証 が 不 十 分 と の 指 摘 が あ る
4 9
。 ま た V C に 関 し て は 、 ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー 等 が 情 報 を 収
集 し て い る が 、 不 十 分 で あ り 、 C V C に 関 し て も 情 報 量 が 少 な い の が 現 状 で あ1 5
る 。 こ の よ う な 情 報 量 や プ ラ ッ ト ホ ー ム の 不 足 は さ ら な る 失 敗 や 回 避 を 呼 び 、
C V C を 成 功 さ せ る た め の 大 き な 足 枷 と な る 。
し た が っ て 、 我 々 は 中 小 機 構 に よ る 情 報 収 集 ・ 公 開 を 提 言 す る 。 具 体 的 に は 、
C V C ・ 銀 行 V C が 出 資 す る フ ァ ン ド に 中 小 機 構 が 出 資 や 公 的 機 関 と し て の ハ ン
ズ オ ン 支 援 を 行 う 際 、 そ の フ ァ ン ド が 「 ど の よ う に 投 資 判 断 を 行 っ た か 」 「 投2 0
資 後 の ハ ン ズ オ ン 支 援 を ど の よ う に 行 い そ の 結 果 ど の よ う な 影 響 が で た か 」
「 被 投 資 先 の ハ ン ズ オ ン 支 援 に 対 す る 意 見 」 「 C V C と 銀 行 系 V C の 共 同 出 資 に
よ る 影 響 」 を 情 報 収 集 す る 。 こ れ ら を 中 小 機 構 が 公 表 す る こ と に よ り 、 C V C
の 有 用 性 の 効 果 検 証 、 新 た に C V C を 実 施 し よ う と す る 企 業 へ の ベ ス ト プ ラ ク
テ ィ ス と な る 。2 5
4 9
石 井 ( 2 0 1 1 )
44
こ の よ う に 、 「 ベ ン チ ャ ー 企 業 投 資 促 進 税 制 の 恒 久 化 」 「 認 定 フ ァ ン ド 要 件
の 緩 和 」 「 中 小 機 構 に よ る C V C の 情 報 開 示 」 を 行 う こ と で 、 共 同 出 資 フ ァ ン
ド が よ り 活 性 化 さ れ 、 リ ス ク の 高 い 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 資 金
調 達 が 促 進 さ れ る こ と に な る で あ ろ う 。
5
終 章
中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 や 新 産 業 の 育 成 が 国 策 と し て 挙 げ ら れ て い る 中 、
我 々 は 資 金 調 達 に お け る 問 題 点 を 指 摘 し 、 そ の 解 決 策 と し て 「 信 用 保 証 制 度 改
革 」 「 C V C の 活 性 化 」 を 提 言 し た 。
信 用 保 証 制 度 改 革 に お い て は 、 大 き な 問 題 点 で あ る モ ラ ル ハ ザ ー ド を 解 消 す1 0
る た め に 「 金 融 機 関 別 の 保 証 割 合 設 定 」 を 設 け 、 金 融 機 関 に 適 切 な モ ニ タ リ ン
グ を 行 う イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え る こ と で 、 金 融 機 関 が 引 き 起 こ す モ ラ ル ハ ザ ー
ド の 是 正 を 促 す こ と に な る 。 ま た 、 C V C の 活 性 化 を 図 る た め に 「 C V C と 銀 行
系 V C ・ 中 小 機 構 に よ る 共 同 出 資 フ ァ ン ド 創 出 」 の よ う な 、 目 利 き 能 力 を 補 完
し た リ ス ク マ ネ ー を 供 給 す べ き で あ る 。1 5
中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 経 営 は 資 金 調 達 だ け で 成 り 立 つ こ と は な く 、 資 金 供
給 主 体 と の 間 に お け る 双 方 の 情 報 の 非 対 称 性 を 解 消 し た 上 で 、 技 術 や ノ ウ ハ ウ 、
人 材 と い っ た 経 営 資 源 を 確 保 し な け れ ば な ら な い 。 そ の た め に は 、 様 々 な 企 業
や 公 的 機 関 と 連 携 す る 場 、 い わ ゆ る 「 ベ ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム 」 を 構 築 ・ 整 備
し 、 民 間 企 業 が 自 ら 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 支 援 を 行 え る 制 度 設 計 を 検 討 し な け2 0
れ ば な ら な い 。
45
【 参 考 文 献 ・ 資 料 】
磯 崎 哲 也 ( 2 0 1 4 ) 『 起 業 の エ ク イ テ ィ ・ フ ァ イ ナ ン ス 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社
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小 野 有 人 ( 2 0 0 7 ) 『 新 時 代 の 中 小 企 業 金 融 』 東 洋 経 済
後 藤 康 雄 ( 2 0 1 4 ) 『 中 小 企 業 の マ ク ロ パ フ ォ ー マ ン ス 』 日 本 経 済 新 聞 出 版 社
齋 藤 茂 樹 ( 2 0 1 2 ) 『 イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ エ コ シ ス テ ム と 新 成 長 戦 略 』 丸 善 出 版
事 業 再 生 研 究 機 構 ( 2 0 0 7 ) 『 A B L の 理 論 と 実 践 』 株 式 会 社 商 事 法 務
日 本 政 策 投 資 銀 行 ( 2 0 1 2 ) 『 コ ン サ ル テ ィ ン グ 実 務 体 系 』 株 式 会 社 き ん ざ い1 0
藪 下 史 郎 ・ 武 士 俣 友 生 ( 2 0 0 6 ) 『 中 小 企 業 金 融 入 門 』 東 洋 経 済 新 報 社
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松 田 修 一 ( 2 0 1 4 ) 『 ベ ン チ ャ ー 企 業 〈 第 4 版 〉 』 日 本 経 済 新 聞 出 版 社
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S e r i e s , 1 1 - P - 0 1 6
46
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査 結 果 の 概 要 」 R I E T I D i s c u s s i o n P a p e r S e r i e s 1 5 - J - 0 2 8
植 杉 威 一 郎 ・ 内 田 浩 史 ・ 水 杉 裕 太 ( 2 0 1 4 ) 「 日 本 政 策 金 融 公 庫 と の 取 引 関 係 が
企 業 パ フ ォ ー マ ン ス に 与 え る 効 果 の 検 証 」 R I E T I D i s c u s s i o n P a p e r
S e r i e s 1 4 - J - 0 4 55
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D i s c u s s i o n P a p e r S e r i e s 0 9 - j - 0 2 0
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に 関 す る 実 証 分 析 」 信 託 研 究 奨 励 金 論 集 第 3 4 号
岡 田 悟 ( 2 0 1 3 ) 「 信 用 保 証 制 度 を め ぐ る 現 状 と 課 題 」 国 立 国 会 図 書 館 I S S U E
B R I E F N U M B E R 7 9 4 ( 2 0 1 3 . 6 . 2 5 . )1 5
価 値 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 ) 「 研 究 開 発 型 ベ ン チ ャ ー の 投 資 判 断 に 関 す る 調 査 報 告
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金 融 庁 ( 2 0 1 5 ) 「 地 域 金 融 機 関 の 地 域 密 着 型 金 融 の 取 組 み 等 に 対 す る 利 用 者 等
の 評 価 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 等 の 概 要 」
金 融 庁 ( 2 0 1 3 ) 「 新 規 ・ 成 長 企 業 へ の リ ス ク マ ネ ー の 供 給 の あ り 方 等 に 関 す る2 0
ワ ー キ ン グ ・ グ ル ー プ 」
金 融 庁 ( 2 0 0 3 ) 「 リ レ ー シ ョ ン シ ッ プ バ ン キ ン グ の 機 能 強 化 に 関 す る ア ク シ ョ
ン プ ロ グ ラ ム 」
47
倉 林 陽 ( 2 0 1 4 ) 「 米 国 コ ー ポ レ ー ト べ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の ベ ス ト プ ラ ク テ ィ
ス の 分 析 と 日 本 の 大 手 企 業 に お け る 課 題 」 同 志 社 大 学 技 術 ・ 企 業 ・ 国 際 競 争
力 研 究 セ ン タ ー ワ ー キ ン グ ペ ー パ ー 1 4 - 0 4
経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 a ) 「 研 究 開 発 型 ベ ン チ ャ ー 事 業 支 援 ( V C 等 連 携 に よ る ベ ン
チ ャ ー 事 業 化 支 援 事 業 ) 説 明 資 料 」5
経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 b ) 「 企 業 の ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 に つ い て 」 2 0 1 5 年 5 月
経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 a ) 「 財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 投 融 資 分 科 会 」 2 0 1 4 年 1 0 月
1 7 日
経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 b ) 「 A B L の 普 及 促 進 の 政 策 的 意 義 に つ い て 」 2 0 1 4 年 2 月
経 済 産 業 省 ( 2 0 0 8 ) 「 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 創 出 ・ 成 長 に 関 す る 検 討 会 最 終 報 告1 0
書 」 2 0 0 8 年 4 月
経 済 同 友 会 ( 2 0 1 3 ) 「 中 小 企 業 の 成 長 力 を 高 め る 地 域 金 融 機 関 へ 」 2 0 1 3 年 3
月
小 西 大 ・ 長 谷 部 賢 ( 2 0 0 2 ) 「 公 的 信 用 保 証 の 政 策 効 果 」 一 橋 大 学 機 関 リ ポ ジ ト
リ H E R M E S - I R , D e p a r t m e n t a l B u l l e t i n P a p e r1 5
商 工 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 4 ) 「 中 小 企 業 と 投 資 フ ァ ン ド 」
商 工 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 ) 「 中 小 企 業 各 政 府 系 金 融 機 関 の 役 割 」
商 工 組 合 中 央 金 庫 ( 2 0 1 5 ) 「 商 工 組 合 中 央 金 庫 デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー 誌 」
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 a ) 「 中 小 企 業 白 書 2 0 1 5 年 版 」
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 b ) 「 中 小 企 業 景 況 調 査 ( 2 0 1 5 年 7 - 9 月 期 ) 」2 0
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 4 ) 「 産 業 競 争 力 強 化 法 に 基 づ く 創 業 支 援 の 促 進 に つ い て 」
2 0 1 4 年 1 月
中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 3 ) 「 財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 投 融 資 分 科 会 参 考 資 料 」 2 0 1 3
年 1 0 月 2 3 日
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  • 1. 1 平 成 2 7 年 度 証 券 ゼ ミ ナ ー ル 大 会 5 第三テーマ C ブロック 中小企業の資金調達について1 0 1 5 龍谷大学 三谷ゼミナール C 班
  • 2. 2 目 次 序 章 第 1 章 中 小 企 業 を 取 り 巻 く 環 境 第 1 節 中 小 企 業 と は 第 2 節 中 小 企 業 に お け る 現 状 と 課 題5 第 3 節 中 小 企 業 政 策 に つ い て 第 2 章 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 取 り 巻 く 環 境 第 1 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 定 義 と 役 割 第 2 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 現 状 分 析 第 3 章 資 金 調 達 に お け る 現 状 と 課 題1 0 第 1 節 民 間 金 融 機 関 第 2 節 メ ザ ニ ン フ ァ イ ナ ン ス 第 3 節 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ 第 4 節 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 第 5 節 政 府 系 金 融 機 関1 5 第 6 節 信 用 補 完 制 度 第 7 節 官 民 フ ァ ン ド 第 4 章 中 小 企 業 金 融 に お け る 現 状 と 課 題 第 1 節 中 小 企 業 が 成 長 す る 上 で の 課 題 第 2 節 信 用 保 証 制 度 の 課 題2 0 第 5 章 こ れ か ら の 中 小 企 業 金 融 政 策 第 1 節 信 用 保 証 制 度 改 革 第 2 節 コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 活 性 化 へ の 提 言 終 章 ・ 参 考 文 献
  • 3. 3 序 章 日 本 に お け る 中 小 企 業 の 現 状 に つ い て 、 低 生 産 性 や 産 業 構 造 の 転 換 の 遅 れ な ど の 問 題 点 が 指 摘 さ れ て き た 。 ま た 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に つ い て は 日 本 経 済 再 生 本 部 の 『 日 本 再 興 戦 略 - J A P A N i s B A C K - 』 に お い て も 「 新 産 業 の 育 成 」 や 「 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン の 促 進 」 が 明 記 さ れ て い た が 、 大 企 業 の 技5 術 の 自 前 主 義 な ど 、 既 存 企 業 と の ア ラ イ ア ン ス は 不 十 分 で あ り 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 持 続 的 に 成 長 す る エ コ シ ス テ ム を 整 え て い く 必 要 が あ る と さ れ て い る 。 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 す る に は 「 資 金 調 達 」 は 重 要 な 課 題 の 一 つ と さ れ 、 現 在 多 く を 占 め る 金 融 機 関 か ら の 融 資 に お い て は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業1 0 の 事 業 性 や 技 術 を 評 価 す る 「 目 利 き 能 力 」 の 不 足 が 指 摘 さ れ て い る 。 金 融 機 関 に 代 わ る 供 給 主 体 と し て ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル が あ げ ら れ る が 、 十 分 に 機 能 し て い る と は 言 え ず 、 様 々 な 課 題 が 指 摘 さ れ て い る 。 本 論 文 で は 中 小 企 業 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 現 状 ・ 課 題 を 挙 げ 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 す る 上 で 重 要 と さ れ る 資 金 調 達 に つ い て 考 察 す る 。 次 に 今 後 中1 5 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 資 金 調 達 と 成 長 を 阻 害 し て い る 問 題 点 、 中 小 企 業 金 融 に お い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る 信 用 補 完 制 度 の 問 題 点 を 挙 げ 、 そ の 解 決 策 と し て 「 信 用 保 証 制 度 改 革 」 「 コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 活 性 化 」 を 提 言 す る 。
  • 4. 4 第 1 章 中 小 企 業 を 取 り 巻 く 環 境 本 章 で は 、 中 小 企 業 の 定 義 と 役 割 を 確 認 し 、 中 小 企 業 の 現 状 と 課 題 に つ い て 考 察 す る 。 第 1 節 中 小 企 業 と は 中 小 企 業 の 定 義 は 、 中 小 企 業 基 本 法 第 2 条 に よ っ て 、 業 種 別 、 従 業 員 数 、5 資 本 金 規 模 を 基 準 に し て 定 め ら れ て い る 1 。 日 本 公 庫 総 研 ( 2 0 1 5 ) に よ る と 、 日 本 に お け る 企 業 数 の う ち 中 小 企 業 の 割 合 は 約 9 9 . 7 % で あ り 雇 用 者 割 合 は 6 9 . 7 % と な っ て い る 。 こ の 点 を 三 大 都 市 圏 と 地 方 圏 で 比 較 す る と 、 三 大 都 市 圏 で は 中 小 企 業 が 占 め る 割 合 は 約 9 9 . 6 % ( そ の 内 小 規 模 企 業 は 8 5 . 3 % ) と な っ て お り 、 地 方 圏 に お い て は 約 9 9 . 9 % ( そ の1 0 内 小 規 模 企 業 は 8 7 . 5 % ) を 占 め て い る 。 中 小 企 業 従 業 員 数 割 合 は 三 大 都 市 圏 5 9 . 2 % ( 1 6 2 5 万 人 ) 、 地 方 圏 が 8 5 . 2 % ( 1 5 9 2 万 人 ) と 、 地 方 圏 に お い て 中 小 企 業 従 業 員 割 合 が 多 く 、 都 道 府 県 別 で 中 小 企 業 従 業 者 数 の 割 合 を 見 る と 全 国 平 均 の 6 9 . 7 % を 下 回 っ て い る の は 、 東 京 都 と 大 阪 府 だ け で あ る 。 従 業 員 数 を 割 合 で な く 実 数 で 見 る と 、 東 京 都 が 突1 5 出 し て い る こ と か ら 、 東 京 へ 一 極 集 中 し て い る こ と が 考 察 で き る 。 ま た 、 中 小 企 業 の 役 割 と し て 藪 下 ・ 武 士 俣 ( 2 0 0 6 ) は 「 雇 用 の 担 い 手 」 「 競 争 の 担 い 手 」 「 成 長 産 業 の 担 い 手 」 「 多 様 化 す る ニ ー ズ に 応 え る 」 「 地 域 経 済 の 中 核 」 「 社 会 的 分 業 構 造 の 担 い 手 」 の 6 つ を 挙 げ て い る 。 第 2 節 中 小 企 業 に お け る 現 状 と 課 題2 0 1 従 業 員 、 製 造 業 そ の 他 3 0 0 人 以 下 、 卸 売 業 1 0 0 人 以 下 、 小 売 業 5 0 人 以 下 、 サ ー ビ ス 業 1 0 0 人 以 下 、 資 本 金 、 製 造 業 そ の 他 3 億 円 以 下 、 卸 売 業 1 億 円 以 下 、 小 売 業 5 0 0 0 万 円 以 下 、 サ ー ビ ス 業 5 0 0 0 万 円 以 下
  • 5. 5 中 小 企 業 の 現 状 を 中 小 企 業 庁 が 公 表 し て い る 「 中 小 企 業 景 況 調 査 」 を 基 に 考 察 す る 。 「 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 業 況 判 断 D I 2 」 に よ る と 、 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 後 の 2 0 0 9 年 Ⅰ 期 ま で 悪 化 し 続 け て い た 業 況 判 断 D I は 、 そ の 後 、 2 0 1 1 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 が 発 生 し た 時 期 は 悪 化 し た も の の 、 徐 々 に 改 善 傾 向 に あ っ た 。 し か し 、 2 0 1 4 年 4 月 か ら 消 費 税 率 が 5 % か ら 8 % に 引 き 上 げ ら れ 、5 業 績 判 断 D I は 大 き く 悪 化 、 2 0 1 5 年 Ⅲ 期 現 在 、 消 費 税 率 引 き 上 げ 以 前 の 値 に は 戻 っ て い な い 。 ま た 、 製 造 業 ・ 非 製 造 業 の 「 資 金 繰 り D I 」 の 推 移 を 見 る と 、 回 復 傾 向 に あ る も の の 、 未 だ マ イ ナ ス 値 で あ る 。 図 表 1 - 1 企 業 規 模 別 に 見 た 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 業 況 判 断 D I の 推 移 1 0 図 表 1 - 2 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 資 金 繰 り D I の 推 移 出 所 : 図 表 1 - 1 , 1 - 2 と も に 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 b ) 2 前 年 度 よ り も 業 況 が 「 好 転 」 と 答 え た 企 業 の 割 合 ( % ) か ら 「 悪 化 」 し た と 答 え た 企 業 の 割 合 ( % ) を 引 い た も の で あ る 。
  • 6. 6 つ ま り 、 中 小 企 業 の 業 況 は 、 消 費 税 率 引 き 上 げ 以 降 や や 悪 化 し て い る が 、 資 金 繰 り や 借 入 難 易 度 は 回 復 傾 向 に あ り 、 中 小 企 業 に と っ て 資 金 調 達 が 容 易 な 状 況 に な り つ つ あ る 。 次 に 、 中 小 企 業 の 抱 え る 大 き な 問 題 点 と し て 「 人 手 不 足 」 「 生 産 性 の 低 下 」 「 開 廃 業 率 」 が あ げ ら れ る 3 。5 ・ 人 手 不 足 中 小 企 業 に 関 わ ら ず 、 企 業 が 経 営 活 動 を 行 う 上 で 「 人 材 」 は 必 要 不 可 欠 で あ る 。 し か し 、 日 本 で は 近 年 人 手 不 足 が 深 刻 化 し て お り 、 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 ) の 「 地 域 別 に み た 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 従 業 員 過 不 足 D I の 推 移 」 を 見 る と 、 2 0 0 9 年 ま で 従 業 員 過 剰 感 は プ ラ ス 値 で あ っ た が 、 2 0 1 1 年 に は ほ ぼ 全 地 域 で1 0 マ イ ナ ス 値 に 転 落 し て い る 。 そ の 後 、 従 業 員 の 不 足 感 が 過 剰 感 を 大 き く 上 回 る 状 況 と な っ て い る 。 ま た 、 企 業 の 成 長 に 不 可 欠 な 研 究 開 発 ・ 製 品 や 国 内 営 業 と い っ た 中 核 人 材 が 不 足 し 、 企 業 が 成 長 の 阻 害 要 因 と な る 可 能 性 が あ る 4 。 今 後 、 少 子 高 齢 化 に 伴 い 人 手 不 足 が 顕 著 に な る 可 能 性 が あ り 早 急 な 対 策 が 望 ま れ る 。 ま た 、 大 企 業 に は 人 材 が 余 剰 し て い る 所 も あ り 、 2 0 1 5 年 1 0 月 か ら パ ソ ナ グ1 5 ル ー プ や パ ナ ソ ニ ッ ク な ど 大 手 企 業 が 地 方 企 業 に O B な ど を 派 遣 す る サ ー ビ ス を 始 め る 。 こ の よ う に 、 大 企 業 の 余 剰 人 材 を 中 小 企 業 に 派 遣 す る こ と は 解 決 策 の 一 つ で あ ろ う 。 ・ 生 産 性 の 低 下 3 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 a ) 4 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 a ) の ア ン ケ ー ト 調 査 で は 、 研 究 開 発 ・ 製 品 5 7 . 2 % 、 国 内 営 業 5 0 . 9 % 、 海 外 営 業 4 3 . 4 % 、 I T 関 連 4 2 . 7 % 、 経 営 3 1 . 5 % 、 財 務 ・ 会 計 2 4 . 3 % の 中 核 人 材 が 不 足 し て い る 。
  • 7. 7 中 小 企 業 の 生 産 性 は 大 企 業 と 比 較 し て 低 い 水 準 と な っ て い る 。 中 小 企 業 の 生 産 性 が 低 下 し た 理 由 に つ い て 、 後 藤 ( 2 0 1 4 ) に よ る と 「 経 済 の 低 迷 を 背 景 に 余 剰 感 の 高 ま っ た 雇 用 を 吸 収 し た た め 、 単 純 に 生 産 性 を 測 る 上 で の 分 母 が 増 加 し た こ と 」 「 中 小 企 業 の イ ノ ベ ー シ ョ ン 活 動 が 停 滞 し 、 ひ い て は 生 産 性 を 押 し 下 げ た 可 能 性 」 「 活 力 あ る 企 業 の 参 入 や 成 長 、 あ る い は 業 況 の 低 迷 す る 企 業 の 縮5 小 や 退 出 と い っ た 企 業 の 新 陳 代 謝 が 滞 っ た 可 能 性 」 の 3 つ を 挙 げ て い る 。 日 本 で は 将 来 人 口 減 少 が 予 測 さ れ 労 働 生 産 人 口 も 減 少 し て い く と 考 え ら れ て い る た め 、 中 小 企 業 の 生 産 性 を 如 何 に し て 向 上 さ せ る か が 課 題 で あ る 。 ・ 開 廃 業 率 の 低 下 日 本 の 開 廃 業 率 は 先 進 諸 国 と 比 較 し て も 低 水 準 で あ り 、 日 本 再 興 戦 略 に お い1 0 て も 現 状 の 3 % か ら 1 0 % へ の 目 標 を 掲 げ て い る 。 特 に 、 新 産 業 創 出 ・ 雇 用 創 出 の 観 点 で 貢 献 度 が 高 い と さ れ る 製 造 業 系 の 開 業 率 が 低 調 と な っ て お り 、 原 因 の 一 つ に 、 実 用 化 ま で に 多 額 の 研 究 開 発 資 金 が 必 要 と な る た め 、 他 の 業 種 に 比 べ 起 業 お よ び 成 功 へ の ハ ー ド ル は 高 い こ と が 挙 げ ら れ る 5 。 ま た 廃 業 率 に 関 し て は 、 事 業 継 承 が 進 ん で い な い こ と が 一 つ の 要 因 と し て 考1 5 え ら れ る 。 少 子 高 齢 化 を 背 景 に 親 族 外 継 承 も 視 野 に 入 れ た 後 継 者 を 検 討 す る 企 業 が 4 割 を 超 え 、 必 要 性 が 謳 わ れ て い る が 、 実 際 、 事 業 継 承 が 円 滑 に 進 ん で い る と は 言 い 難 い 。 ま た 、 親 族 外 継 承 に お い て 事 業 を 引 き 継 ぐ 際 に 問 題 が あ る と 考 え て い る 経 営 者 は 6 2 . 6 % も 存 在 し 、 具 体 的 に 「 借 入 金 の 個 人 保 証 の 引 継 ぎ が 困 難 」 「 後 継 者 に よ る 自 社 株 式 や 事 業 用 資 産 の 買 い 取 り が 困 難 」 を 挙 げ て い2 0 る 6 。 5 野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 ) 6 財 務 省 ( 2 0 1 4 )
  • 8. 8 第 3 節 中 小 企 業 政 策 中 小 企 業 政 策 の 種 類 は 多 岐 に わ た り 、 「 中 小 企 業 全 般 」 「 業 種 別 施 策 」 「 現 状 不 況 な 業 種 に 対 す る 施 策 」 「 零 細 企 業 対 策 」 「 下 請 け 企 業 対 策 」 な ど が あ る 。 中 小 企 業 政 策 の 施 行 に は 、 1 9 4 8 年 に 商 工 省 の 外 局 と し て 設 立 さ れ た 中 小 企 業 庁 が 中 心 的 役 割 を 担 っ て き た 。 戦 後 間 も な い 当 時 は 中 小 企 業 を 弱 者 と 見 る 「 二5 重 構 造 論 」 の 認 識 が 強 く 、 公 的 な 政 策 支 援 が 必 要 と さ れ て い た 。 し か し 、 時 代 や 経 済 状 況 の 変 化 と 共 に 、 政 策 的 な 意 義 や 対 象 も 二 重 構 造 論 的 な 保 護 政 策 か ら の 脱 却 が 行 わ れ 、 成 長 に 重 点 が 置 か れ た 政 策 へ と 変 化 し て い っ た 7 。 現 在 の 中 小 企 業 政 策 は 、 1 9 9 9 年 に 改 正 さ れ た 中 小 企 業 基 本 法 に 基 づ き 様 々 な 政 策 が 施 行 さ れ て い る 。 政 策 実 行 に お け る 費 用 は 一 般 会 計 予 算 で 「 中 小 企 業1 0 対 策 費 」 と し て 計 上 さ れ る 。 2 0 1 3 年 に お け る 中 小 企 業 対 策 費 の 内 訳 を 見 る と 、 日 本 政 策 金 融 公 庫 へ の 補 助 金 ・ 出 資 金 、 信 用 保 証 制 度 に お け る 信 用 保 証 協 会 連 合 会 等 へ の 補 助 金 と い っ た 、 い わ ゆ る 金 融 関 連 の 費 用 が 半 分 以 上 を 占 め て い る 。 こ れ ら 以 外 で は 、 中 小 企 業 の 経 営 支 援 や 海 外 支 援 等 、 ま た 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構 へ の 交 付 金 な ど に 振 り 分 け ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 国 家 予 算 全 体 を 見 る1 5 と 、 こ こ 数 年 で 一 般 会 計 予 算 の 歳 出 は 9 0 兆 円 台 で 推 移 し て い る 中 、 中 小 企 業 に 対 す る 費 用 は 1 8 1 1 億 円 と 約 5 0 0 分 の 1 に し か 過 ぎ な い 。 図 表 1 - 5 中 小 企 業 対 策 費 の 内 訳 ( 2 0 1 3 年 ) 7 後 藤 康 雄 ( 2 0 1 4 )
  • 9. 9 出 所 : 後 藤 康 雄 ( 2 0 1 3 ) 3 0 9 頁 よ り 筆 者 作 成 第 2 章 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 取 り 巻 く 環 境 戦 後 の 様 々 な 新 興 企 業 を 輩 出 し た 時 代 は 終 焉 し 、 現 在 で は マ ー ケ ッ ト の 飽 和5 に よ る 大 企 業 の 寡 占 が 平 常 化 し て お り 、 か つ て の リ ス ク を 恐 れ ず に 新 規 事 業 を 起 こ す 企 業 が 減 少 し て い る 。 「 失 わ れ た 2 0 年 」 を 脱 し 、 日 本 経 済 が さ ら な る 成 長 を 遂 げ る た め に は 、 中 小 企 業 の 中 で も と り わ け 成 長 意 欲 の あ る 企 業 へ の 支 援 は 重 要 で あ る 。 し た が っ て 本 章 で は 、 特 に ベ ン チ ャ ー 企 業 に 焦 点 を 当 て 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に1 0 お け る 現 状 分 析 、 資 金 調 達 状 況 を 考 察 す る 。 第 1 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 定 義 と 役 割 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 定 義 は 具 体 的 に 明 記 さ れ て お ら ず 、 松 田 ( 2 0 1 4 ) に よ る と 「 リ ス ク を 恐 れ ず 新 し い 領 域 に 挑 戦 す る 起 業 家 に 率 い ら れ た 若 い 企 業 で 、 製 品 や 商 品 の 独 創 性 、 事 業 の 独 立 性 、 社 会 性 、 さ ら に 国 際 性 を 持 っ た 企 業 」 と 定 義1 5 さ れ て い る 。 ま た 経 済 産 業 省 ( 2 0 0 7 ) で は 「 既 存 企 業 に は 生 み 出 し 得 な い 技 術 ・ ビ ジ ネ ス モ デ ル の 大 き な 変 化 ・ 革 新 を も た ら す 可 能 性 が あ る 」 と 認 識 さ れ て い る 。 第 2 節 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 現 状 と 課 題
  • 10. 10 国 内 の ベ ン チ ャ ー 投 資 動 向 と し て 、 資 金 調 達 を 受 け る 企 業 数 は 減 少 傾 向 に あ る が 、 資 金 調 達 額 は 2 0 1 3 年 度 か ら 増 加 傾 向 で あ り 、 2 0 1 4 年 度 に は 総 額 1 0 0 0 億 円 を 超 え る な ど 、 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 以 前 の 水 準 ま で 回 復 し て い る 。 1 社 あ た り の ス テ ー ジ 別 資 金 調 達 の 中 央 値 を 見 る と 、 企 業 が 成 長 段 階 を 経 る に つ れ て 必 要 に な る 資 金 額 が 増 加 し て い る ( 図 表 2 - 2 ) 。 理 由 と し て 、 ス タ ー ト ア5 ッ プ 期 の キ ャ ッ シ ュ レ ス か ら 生 じ る 「 死 の 谷 」 を 越 え て 事 業 が 軌 道 に 乗 り 出 す と 、 ス タ ー ト ア ッ プ 期 と は 比 較 に な ら な い 額 の 資 金 が 必 要 に な る と 考 え ら れ る 。 日 本 の ベ ン チ ャ ー 企 業 の 資 金 調 達 環 境 は 、 成 長 段 階 に 沿 っ た 資 金 需 要 の ニ ー ズ を 満 た し て い る と は 言 い 難 い 。 そ の 要 因 の 一 つ に 、 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル ( 以 下 、 V C ) が 米 国 の お よ そ 2 0 分 の 1 、 エ ン ジ ェ ル 投 資 家 に お い て は お よ そ1 0 3 2 0 分 の 1 と 顕 著 に 少 な く 8 、 米 国 の 投 資 家 は 「 起 業 家 が 起 業 家 を 生 む 」 と 一 般 的 に 言 わ れ て お り 、 成 功 し た 起 業 家 が シ ー ズ 期 の ベ ン チ ャ ー 企 業 に 出 資 す る と い う サ イ ク ル が 浸 透 し て い る た め で あ る 。 図 表 2 - 1 未 公 開 企 業 の 資 金 調 達 額 ( 2 0 0 6 年 〜 2 0 1 4 年 ) 1 5 出 所 : 野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 ) 8 内 閣 府 ( 2 0 1 4 a )
  • 11. 11 図 表 2 - 2 未 公 開 企 業 の 1 社 あ た り 資 金 調 達 額 の 中 央 値 ( ス テ ー ジ 別 ) 出 所 : 野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 ) 次 に 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 成 長 さ せ る た め に は 、 資 金 供 給 以 外 の 経 営 支 援 も 必 要 で あ る 。 ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー の ア ン ケ ー ト 調 査 に よ る と5 「 人 材 確 保 」 8 6 . 7 % 、 「 販 路 拡 大 」 5 9 . 6 % 、 「 資 金 調 達 」 5 6 . 6 % 、 「 技 術 開 発 」 3 1 . 9 % と 、 資 金 調 達 以 外 に も ベ ン チ ャ ー 企 業 の 経 営 ニ ー ズ と し て 必 要 で あ る と さ れ て い る 。 図 表 2 - 3 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 経 営 ニ ー ズ 1 0 出 所 : ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー ( 2 0 1 4 ) 次 に 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 が 各 成 長 段 階 で 直 面 す る リ ス ク を 考 察 す る 。 ベ ン チ ャ ー 企 業 は 各 成 長 段 階 に お い て 、 図 表 2 - 4 , 5 の よ う な リ ス ク を 抱 え て い る 。 1 5
  • 12. 12 図 表 2 - 4 わ が 国 の ベ ン チ ャ ー 企 業 支 援 に か か る 課 題 出 所 : 野 村 ( 2 0 1 4 b ) 図 表 2 - 5 ベ ン チ ャ ー 企 業 が 直 面 す る リ ス ク 直 面 す る リ ス ク 具 体 的 内 容 開 発 リ ス ク ア イ デ ア が 開 発 者 の 頭 の 中 に あ る 事 業 立 ち 上 げ の 前 段 階 で あ り 、 本 当 に 実 現 可 能 か 外 部 か ら の 的 確 な 判 断 が 下 せ な い 製 造 リ ス ク ( 死 の 谷 ) ア イ デ ア を 基 に 事 業 を 立 ち 上 げ る 段 階 に お い て 経 営 の 複 雑 化 ・ 資 金 需 要 拡 大 の 必 要 性 と い っ た 問 題 が 発 生 す る 販 売 リ ス ク 開 発 リ ス ク 時 よ り も 金 融 機 関 に よ る リ ス ク 評 価 は 容 易 と さ れ て い る が 、 企 業 と し て ま だ 未 熟 な 段 階 で あ る 経 営 リ ス ク ( ダ ー ウ ィ ン の 海 ) 市 場 化 の 段 階 で 製 品 や サ ー ビ ス が 市 場 に 受 け 入 れ ら れ る か が 不 明 成 長 リ ス ク 優 れ た 技 術 ・ ア イ デ ア を 保 有 し て い た と し て も 、 経 営 を 軌 道 に 乗 せ る の は 経 営 者 の 経 営 能 力 に 依 存 す る 出 所 : 村 本 ( 2 0 1 5 ) 1 9 4 - 1 9 7 頁 を 基 に 筆 者 作 成5 政 府 を は じ め 、 こ れ ら の リ ス ク を 乗 り 越 え る た め の 様 々 な 施 策 が 実 施 さ れ て き た が 、 「 起 業 家 を 志 す 層 の 薄 さ 」 「 ベ ン チ ャ ー の 自 立 ( 事 業 化 ・ 市 場 化 ) に 繋 が る 施 策 の 不 在 」 「 縦 割 り 行 政 に よ る 施 策 の 分 断 化 」 「 国 の イ ノ ベ ー シ ョ ン 政 策 と ベ ン チ ャ ー 支 援 策 が 明 確 に リ ン ク し て い な い 」 な ど の 課 題 に よ り 十 分 に 機 能 し て い る と は 言 い 難 い 現 状 で あ る 9 。1 0 9 野 村 ( 2 0 1 4 b )
  • 13. 13 第 3 章 資 金 調 達 に お け る 現 状 と 課 題 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 を 成 長 ・ 育 成 す る た め に は 、 成 長 資 金 を い か に 供 給 す る か が 課 題 と な る 1 0 。 内 閣 府 ( 2 0 1 4 b ) に よ る と 、 成 長 資 金 は 「 企 業 の ラ イ フ サ イ ク ル の 各 段 階 に お け る 企 業 価 値 の 向 上 や 維 持 に 資 す る 取 組 み を 支 え 、 そ の 供 給 促 進 は 、 企 業 の 成 長 に 向 け た リ ス ク テ イ ク を 促 し 、 経 済 成 長 に 資 す る こ と 」5 と さ れ 、 そ の 資 金 の 供 給 方 法 と し て エ ク イ テ ィ や シ ニ ア デ ッ ト 、 そ の 中 間 で あ る 優 先 株 や 劣 後 デ ッ ト な ど の メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス と い っ た 中 長 期 的 な 資 金 が 挙 げ ら れ て い る が 、 量 ・ 質 と も に 不 足 し て い る 。 本 章 で は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 を 支 え る 資 金 調 達 に つ い て 、 「 民 間 金 融 機 関 」 「 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ 」 「 メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス 」 「 ベ ン チ1 0 ャ ー キ ャ ピ タ ル 」 「 政 府 系 金 融 機 関 」 「 官 民 フ ァ ン ド 」 「 信 用 補 完 制 度 」 を 中 心 に 考 察 す る 。 第 1 節 民 間 金 融 機 関 中 小 企 業 金 融 に お け る 大 き な 問 題 点 と し て 「 情 報 の 非 対 称 性 」 「 逆 選 択 の 問 題 」 が 挙 げ ら れ る 。 「 情 報 の 非 対 称 性 」 と は 、 貸 し 手 が 借 り 手 の 情 報 を 同 レ ベ1 5 ル に 把 握 す る こ と は 難 し い と い う こ と で あ り 、 ま た 借 り 手 で あ る 中 小 企 業 が 持 つ 情 報 を 金 融 機 関 は 全 て 把 握 す る こ と は 不 可 能 で あ る が 故 に 起 こ る も の で あ る 。 例 え ば 、 金 融 機 関 が 貸 出 金 利 を 設 定 し 、 そ れ に 対 し て 自 ら の 債 務 履 行 能 力 を 知 っ て い る 借 り 手 は 、 そ の 金 利 が 適 正 金 利 よ り 高 け れ ば 借 入 れ を 止 め 、 実 際 に 見 合 う 金 利 よ り 低 け れ ば 積 極 的 に 借 入 れ を 行 う 「 逆 選 択 」 の 問 題 を 引 き 起 こ す 。2 0 特 に 中 小 企 業 は 財 務 諸 表 の 開 示 を 求 め ら れ て い な い た め 、 金 融 機 関 か ら す れ ば 情 報 の 収 集 が 難 し い 1 1 。 1 0 内 閣 府 ( 2 0 1 4 b ) 1 1 小 野 有 人 ( 2 0 0 7 ) 3 4 頁
  • 14. 14 次 に 、 中 小 企 業 向 け 貸 出 の 実 態 を 見 る と 、 貸 出 は こ こ 数 年 、 微 増 微 減 を 繰 り 返 し な が ら 横 ば い で 推 移 し て い る 。 預 金 に 対 す る 貸 出 比 率 で あ る 預 貸 率 は 年 々 減 少 傾 向 に あ り 、 金 融 機 関 の 預 金 量 が 増 え 続 け て い る と 見 る こ と が で き る が 、 企 業 が 借 り 入 れ に そ れ ほ ど 意 欲 的 で な い 実 情 を 表 し て い る 。 図 表 3 - 1 中 小 企 業 向 け 貸 出 比 率 等 の 推 移5 出 所 : 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 a ) 金 融 機 関 か ら 中 小 企 業 に 融 資 を す る 際 、 一 般 的 に 企 業 の 決 算 書 な ど の 財 務 諸 表 を 基 に 貸 出 を 行 う 。 こ の 貸 出 手 法 を ト ラ ン ザ ク シ ョ ン バ ン キ ン グ ( 以 下 、 ト ラ バ ン ) と い う 。 ト ラ バ ン に は 、 統 計 的 デ ー タ に 基 づ い て 、 企 業 の 信 用 度 を 点1 0 数 化 し て 貸 し 出 す ク レ ジ ッ ト ス コ ア リ ン グ な ど が あ る 。 ト ラ バ ン は 定 量 的 な デ ー タ を 基 に 審 査 を 行 う た め 、 審 査 コ ス ト や 人 件 費 が 削 減 で き 、 中 小 企 業 に と っ て も 審 査 期 間 の 短 縮 が 図 れ る と い っ た メ リ ッ ト が 存 在 す る が 、 経 理 ・ 財 務 の 資 料 を 整 備 す る 必 要 が あ り 、 収 益 実 績 な ど の い わ ゆ る ト ラ ッ ク ・ レ コ ー ド の 整 備 が 不 可 欠 に な り 、 か え っ て コ ス ト 増 に 繋 が る 等 の デ メ リ ッ ト が 存 在 す る 。1 5 次 に 金 融 機 関 が 貸 出 す る 際 の 担 保 比 率 構 成 を 見 る 。 図 表 3 - 2 か ら も 分 か る よ う に 、 不 動 産 や 保 証 に 頼 る 貸 出 が 多 い の が 現 状 で あ る 。 2 0
  • 15. 15 図 表 3 - 2 貸 出 の 担 保 の 状 況 出 所 : 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 b ) 4 頁 こ う い っ た 財 務 諸 表 ・ 不 動 産 担 保 依 存 型 の 貸 出 を 改 め る べ く 、 近 年 注 目 さ れ て い る の が A B L ( A s s e t B a s e d L e n d i n g ) と 、 リ レ ー シ ョ ン シ ッ プ バ ン キ ン5 グ で あ る 。 A B L と は 、 企 業 が 保 有 す る 「 在 庫 」 や 「 売 掛 金 」 な ど を 担 保 と す る 融 資 手 法 で あ る 。 金 融 円 滑 化 法 が 2 0 1 3 年 3 月 に 終 了 す る の に 合 わ せ 、 東 京 都 が 先 駆 け て 導 入 し た 制 度 で あ る が 知 名 度 が 低 く 全 国 に 浸 透 し て い な い の が 現 状 で あ り 、 規 模 も 中 小 企 業 向 け 融 資 残 高 全 体 の 0 . 1 % と 少 な く 、 A B L を 導 入 す る に 至 っ て1 0 は 「 動 産 を 担 保 に す る ほ ど 、 担 保 に 余 裕 が な い 」 と い っ た イ メ ー ジ を 持 つ た め 、 必 要 性 が 指 摘 さ れ な が ら も 、 在 庫 や 売 掛 債 権 に 対 す る 担 保 権 の 設 定 が 取 引 先 に よ る 信 用 不 安 を 引 き 起 こ す 可 能 性 は 根 強 く 、 A B L の 市 場 規 模 は 2 0 1 1 年 ま で 4 0 0 0 億 円 ~ 6 0 0 0 億 円 を 推 移 し 融 資 を 受 け る 手 段 と し て 普 及 し て い な い の が 現 状 で あ っ た 1 2 。 し か し 2 0 1 2 年 、 2 0 1 3 年 と 融 資 実 行 額 ・ 残 高 と も に 急 増 し 、1 5 2 0 1 1 年 と 比 較 し て 約 5 倍 に 伸 び て い る 。 1 2 事 業 再 生 研 究 機 構 ( 2 0 0 7 ) 6 1 頁
  • 16. 16 図 表 3 - 3 A B L の 市 場 規 模 出 所 : デ ロ イ ト ト ー マ ツ コ ン サ ル テ ィ ン グ ( 2 0 1 5 ) 2 0 0 2 年 の 金 融 行 政 当 局 に よ る 「 金 融 再 生 プ ロ グ ラ ム 」 の 中 で 、 地 域 密 着 型 金 融 の 必 要 性 が 挙 げ ら れ 、 そ の 解 決 策 の 一 つ と し て 「 長 期 継 続 す る 関 係 の 中 か5 ら 、 借 り 手 企 業 の 経 営 者 の 資 質 や 事 業 の 将 来 性 等 に つ い て の 情 報 を 得 て 、 融 資 を 実 行 す る ビ ジ ネ ス モ デ ル 1 3 」 と さ れ る 、 リ レ ー シ ョ ン シ ッ プ バ ン キ ン グ ( 以 下 、 リ レ バ ン ) の 推 進 が 掲 げ ら れ た 。 企 業 と よ り 密 接 か つ 長 期 的 な 関 係 を 築 く こ と で 、 企 業 の 内 部 事 情 や 技 術 力 、 経 営 者 の 資 質 な ど の ソ フ ト な 情 報 、 い わ ゆ る 定 性 情 報 を 入 手 し や す く 、 そ れ を 基 に 、 リ ス ク 把 握 が 正 確 か つ 明 確 に な り 、1 0 過 度 な 担 保 ・ 保 証 に 依 存 す る こ と な く 貸 出 を 行 う も の で あ る 。 リ レ バ ン に つ い て は 、 2 0 1 5 年 4 月 ~ 6 月 に か け て 、 金 融 庁 が 利 用 者 等 1 4 を 対 象 に 聞 き 取 り ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し た 。 図 表 3 - 4 地 域 金 融 機 関 の 地 域 密 着 型 金 融 の 取 組 み 等 に 対 す る 利 用 者 等 の 評 価 1 3 金 融 庁 ( 2 0 0 3 ) 1 4 中 小 企 業 者 4 7 8 名 、 商 工 会 議 所 ・ 商 工 会 の 経 営 相 談 員 等 4 5 1 名 、 消 費 生 活 セ ン タ ー 職 員 等 9 5 名 の 計 1 , 0 2 4 名
  • 17. 17 出 所 : 金 融 庁 ( 2 0 1 5 ) 顧 客 企 業 へ の 訪 問 等 に よ る 日 常 的 ・ 継 続 的 な 接 触 で は 、 積 極 的 ・ や や 積 極 的 以 外 の 回 答 が 約 4 5 % で あ り 、 リ レ バ ン が 推 進 さ れ て 約 1 0 年 経 過 し て い る こ と を 考 慮 し て も 低 い 値 で あ る 。 顧 客 で あ る 中 小 企 業 へ の 訪 問 を 拒 ん で い る 原 因 の5 一 つ に 、 行 員 一 人 当 た り の 担 当 社 数 の 多 さ が 挙 げ ら れ る 。 一 人 に つ き 、 約 2 0 〜 3 0 社 を 担 当 し て い る 現 状 1 5 で は 、 一 社 一 社 が 抱 え る 諸 課 題 に 向 き 合 う 時 間 は 制 限 さ れ 、 中 小 企 業 の 事 業 や フ ァ イ ナ ン ス に 関 す る 相 談 、 さ ら に は 的 確 な ソ リ ュ ー シ ョ ン 提 案 と い っ た 金 融 サ ー ビ ス が 阻 害 さ れ て い る の で は な い か と 推 測 さ れ る 。 ま た 、 目 利 き 能 力 を 発 揮 し た 事 業 性 評 価 1 6 に 対 す る 項 目 で は 約 7 0 % も1 0 の 顧 客 が 十 分 で は な い と 回 答 し て い る た め 、 独 自 技 術 や 綿 密 な 事 業 計 画 を 保 有 し て い て も 過 大 な 担 保 設 定 の 要 求 も し く は 融 資 を 受 け ら れ な い と い っ た ケ ー ス が 考 え ら れ る 。 1 5 東 京 商 工 会 議 所 ( 2 0 1 2 ) 6 7 頁 1 6 事 業 性 評 価 に 関 し て は 日 本 経 済 再 生 本 部 ( 2 0 1 4 ) 8 8 頁 に 定 義 さ れ て い る 。
  • 18. 18 今 後 の 民 間 金 融 機 関 の 役 割 と し て 、 従 来 か ら の 財 務 諸 表 や 担 保 に 依 存 し た 貸 し 出 し で は な く 、 企 業 の 事 業 性 を 評 価 し て 貸 し 出 し を 実 施 す る 役 目 が 求 め ら れ る 。 第 2 節 メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス と は 、 一 般 の 債 権 よ り も 債 務 弁 済 の 順 位 が 劣 る ロ ー5 ン で あ る 「 劣 後 ロ ー ン 」 、 一 般 債 権 者 よ り も 債 務 弁 済 の 順 位 が 劣 る 社 債 で あ る 「 劣 後 債 」 、 普 通 株 式 に 対 し て 、 剰 余 金 の 配 当 そ の 他 の 権 利 が 優 先 す る 株 式 で あ る 「 優 先 株 式 」 等 の 資 金 供 給 手 段 の 総 称 で あ り 、 契 約 条 件 や 設 計 等 に よ り デ ッ ト と エ ク イ テ ィ 双 方 の 特 色 を 生 か し た 柔 軟 な 商 品 を 実 現 す る こ と が 可 能 と さ れ て い る 1 7 。1 0 メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス は 、 「 バ イ ア ウ ト ・ メ ザ ニ ン 」 と 「 コ ー ポ レ ー ト ・ メ ザ ニ ン 」 に 分 類 さ れ 、 2 0 1 1 年 の 融 資 実 績 と し て 、 バ イ ア ウ ト ・ メ ザ ニ ン が 2 5 6 億 円 、 コ ー ポ レ ー ト ・ メ ザ ニ ン が 1 2 1 億 円 で あ る 1 8 。 中 小 企 業 が 融 資 さ れ る メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス の 主 な も の と し て 、 デ ッ ト ・ エ ク イ テ ィ ・ ス ワ ッ プ ( 以 下 、 D E S ) 、 デ ッ ト ・ デ ッ ト ・ ス ワ ッ プ ( 以 下 、 D D S ) 、 資 本 性 劣 後 ロ1 5 ー ン が あ る 。 資 本 性 劣 後 ロ ー ン に お い て は 、 日 本 政 策 金 融 公 庫 が 中 心 と な っ て 取 り 組 ん で お り 、 融 資 額 も 年 々 増 加 傾 向 に あ る ( 図 表 3 - 5 ) が 、 D E S に お い て は 融 資 実 績 が 少 な い の が 現 状 で あ る 。 2 0 1 7 会 計 上 、 劣 後 ロ ー ン は 負 債 、 優 先 株 式 は 株 主 資 本 と し て 計 上 さ れ る 1 8 三 菱 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 )
  • 19. 19 図 表 3 - 5 日 本 政 策 金 融 公 庫 中 小 企 業 事 業 部 門 に お け る 資 本 性 劣 後 ロ ー ン の 実 績 出 所 : 植 杉 ・ 小 野 、 他 ( 2 0 1 4 ) メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス が 発 達 し て い な い 要 因 と し て 、 三 菱 総 合 研 究 所5 ( 2 0 1 3 ) に よ れ ば 「 市 場 が 小 さ く 、 プ レ イ ヤ ー が 少 な い 」 「 ス ト ラ ク チ ャ リ ン グ に 手 間 が か か る 」 、 特 に メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス の 認 知 度 の 向 上 ・ 供 給 主 体 の ノ ウ ハ ウ 、 人 材 不 足 を 大 き な 課 題 と し て 挙 げ て い る 。 D E S ・ D D S は 事 業 継 承 や 再 成 長 期 に 、 資 本 性 劣 後 ロ ー ン は 創 業 期 や 再 成 長 期 の 資 金 調 達 手 段 と し て 期 待 さ れ て い る た め 、 今 後 、 メ ザ ニ ン ・ フ ァ イ ナ ン ス の1 0 認 知 度 を 向 上 さ せ 、 ど の よ う に ノ ウ ハ ウ を 蓄 積 し て い く か を 検 討 し な け れ ば な ら な い 。 第 3 節 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ 近 年 、 新 た な 資 金 調 達 の 方 策 と し て ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ ( 以 下 、 C F ) が 注 目 さ れ て い る 。 C F に は 明 確 な 定 義 は な い が 、 「 新 規 ・ 成 長 企 業 等 と 資 金 提1 5 供 者 を イ ン タ ー ネ ッ ト 経 由 で 結 び 付 け 、 多 数 の 資 金 提 供 者 か ら 少 額 ず つ 資 金 を 集 め る 仕 組 み 1 9 」 と さ れ 、 イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の ポ ー タ ル サ イ ト を 通 じ て ア イ デ ア を 提 案 し 、 そ れ に 共 感 し た 投 資 家 か ら 資 金 を 調 達 す る 方 策 で あ る 。 1 9 金 融 庁 ( 2 0 1 3 ) 2 頁
  • 20. 20 日 本 で の 市 場 規 模 は 2 0 1 4 年 度 で 約 1 9 7 億 円 、 2 0 1 5 年 度 予 測 で は 約 2 8 3 億 円 と さ れ て お り 2 0 、 日 本 の C F 市 場 に お い て も 拡 大 が 期 待 さ れ て い る 。 日 本 に お け る C F は 5 つ の パ タ ー ン に 分 類 さ れ 、 資 金 提 供 者 へ の リ タ ー ン が な い 「 寄 付 型 」 リ タ ー ン と し て モ ノ ・ サ ー ビ ス を 受 け 取 る 「 購 入 型 」 元 本 と 利 子 を 受 け 取 る 「 融 資 型 」 利 益 の 中 か ら 収 益 や 資 産 を 受 け 取 る 「 投 資 型 」 株 式 に よ る5 キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン や イ ン カ ム ゲ イ ン に よ る 収 益 を 得 る 「 株 式 型 2 1 」 が あ る 。 C F の メ リ ッ ト と し て ① 審 査 の 際 、 個 人 や 企 業 の 熱 意 が 重 視 さ れ る 。 ② 投 資 家 の 応 援 し た い 気 持 ち を 企 業 に 伝 え ら れ る 。 ③ 購 入 型 C F の 場 合 、 価 値 の 高 い 商 品 が リ タ ー ン と し て 得 ら れ る 、 の 3 点 が 挙 げ ら れ る 。 ま た 、 C F は B t o C の モ ノ づ く り 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の シ ー ド 期 に 大 き く 寄 与 す る と 考 え ら れ る 。1 0 従 来 、 モ ノ づ く り 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 資 金 調 達 す る 際 、 シ ー ド 期 に は 商 品 が 完 成 さ れ て い な い 、 も し く は 見 込 み 生 産 を す る と 在 庫 と し て 残 っ て し ま う と い う 可 能 性 が あ り 、 資 金 供 給 側 と し て は 高 い リ ス ク を 背 負 う こ と に な る が 、 C F を 有 効 活 用 す れ ば 商 品 開 発 に 先 行 し て 資 金 が 調 達 で き 、 ま た マ ー ケ テ ィ ン グ 活 動 の 一 貫 と し て も 活 用 で き る 2 2 。1 5 し か し C F は 、 モ ニ タ リ ン グ や ガ バ ナ ン ス の 仕 組 み が 十 分 と は 言 え ず 、 ま た B t o B の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 は 、 一 般 人 に と っ て 投 資 の 判 断 が し 難 い な ど の 課 題 が あ る 。 こ れ ら の 課 題 を 解 決 す れ ば 、 C F 市 場 の 拡 大 に よ り 、 創 業 期 の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に と っ て 有 用 な 資 金 調 達 方 策 の 一 つ に な る で あ ろ う 。 2 0 矢 野 研 究 所 ( 2 0 1 5 ) 2 1 金 融 商 品 取 引 法 が 改 正 さ れ 、 2 0 1 5 年 5 月 よ り 株 式 型 C F が 解 禁 さ れ 「 一 人 当 た り 一 社 5 0 万 円 」 を 上 限 に イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 未 公 開 株 式 に 投 資 す る こ と が 可 能 に な っ た 。 2 2 C F を 活 用 し た 例 と し て 、 ソ ニ ー と Q r i o が 共 同 開 発 し た ス マ ー ト ロ ッ ク が あ げ ら れ る 。 設 定 目 標 額 は 1 5 0 万 で あ っ た が 、 1 5 倍 の 2 5 4 0 万 の 資 金 調 達 に 成 功 し た 。
  • 21. 21 第 4 節 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル V C と は 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に 対 し て 投 資 し 、 投 資 後 の 支 援 に よ り 企 業 価 値 を 高 め 、 将 来 的 に キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン を 得 る 主 体 を 指 す 。 V C に は 事 業 の 形 態 に 応 じ て 「 独 立 系 ・ 銀 行 系 ・ 事 業 会 社 系 ・ 保 険 会 社 系 ・ 政 府 系 」 の 5 種 類 に 分 類 さ れ る 。 日 本 で は 、 銀 行 系 V C が 投 資 額 の 多 く を 占 め 、 ま た 、 株 式 の 持 株 比 率5 や 自 己 資 本 比 率 と い っ た 銀 行 に か か る 規 制 は な く 、 銀 行 の ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 資 金 供 給 手 段 と し て 活 用 さ れ て い る 。 ま た 、 近 年 は 事 業 会 社 が 自 己 の 資 金 を 用 い て 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 に 対 し 投 資 や ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル ( 以 下 、 C V C ) が 注 目 を 集 め て い る 。 C V C は 、 一 般 的 な V C と 違 い 、 資 金 だ け で は な く 親 会 社 が 持 つ1 0 ブ ラ ン ド 、 R & D な ど の ノ ウ ハ ウ 、 顧 客 基 盤 な ど の 経 営 資 源 を 活 用 し て 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に ハ ン ズ オ ン 支 援 を す る こ と が 期 待 さ れ て お り 、 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン や ベ ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム の 中 心 に な る と 期 待 さ れ て い る 。 V C の 投 資 額 を 見 る と 、 2 0 0 6 年 以 降 減 少 し 、 2 0 1 0 年 以 降 増 加 し て い る が 、 諸 外 国 と 比 較 し て も 投 資 額 は 少 な い ( 図 表 3 - 7 ) 。 ま た 、 投 資 額 が 増 加 し た の1 5 は 海 外 向 け 投 資 の 拡 大 が 背 景 に あ り 、 投 資 件 数 に お い て は 2 0 0 8 年 の リ ー マ ン シ ョ ッ ク 以 降 大 き く 減 少 し 、 近 年 で は 横 ば い 傾 向 で あ る 。 図 表 3 - 6 V C の 年 間 投 資 額 出 所 : ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー ( 2 0 1 5 )2 0
  • 22. 22 図 表 3 - 7 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 投 資 ( 対 G D P 比 ) 出 所 : O E C D ( 2 0 1 5 ) 次 に 、 V C 投 資 を 企 業 の ラ ウ ン ド 別 に 分 け 、 ラ ウ ン ド ご と の 投 資 金 額 ・ 件 数 を 見 る 。 投 資 件 数 で は 全 体 に 占 め る シ ー ド 期 の 比 率 は 1 8 % と 約 5 分 の 1 を 占5 め て い る が 、 投 資 金 額 の 比 率 を 見 る と シ ー ド 期 の 比 率 は 2 % と 顕 著 に 少 な い 。 つ ま り 、 日 本 の V C が シ ー ド ス テ ー ジ に お い て 多 数 の ベ ン チ ャ ー 企 業 に 少 額 の 分 散 投 資 を 行 っ て い る こ と を 表 し て お り 、 ま た C V C の 投 資 件 数 は 約 2 5 % を 推 移 、 金 額 は 1 0 % 台 を 推 移 し て お り 一 定 の 額 を 供 給 し て い る と 伺 え る 。 し か し 、 1 社 当 た り の 資 金 調 達 額 の 中 央 値 で は 少 な く 、 ボ リ ュ ー ム の あ る 資 金 を 供 給 し1 0 て い る と は 言 い 難 い ( 図 表 2 - 2 ) 。 図 表 3 - 8 日 本 の ラ ウ ン ド 別 の V C 投 資 の 件 数 1 5
  • 23. 23 図 表 3 - 9 日 本 の ラ ウ ン ド 別 の V C 投 資 金 額 出 所 : 図 表 3 - 8 , 9 と も に 藤 野 ( 2 0 1 5 ) 次 に ど の 分 野 の 企 業 に 投 資 が 行 わ れ て い る か を 見 る と 、 I T サ ー ビ ス 等 が 5 0 . 6 % と ほ ぼ 半 数 を 占 め て い る 一 方 で 、 今 後 の 日 本 経 済 の 発 展 に 重 要 視 さ れ て5 い る 研 究 開 発 型 ベ ン チ ャ ー へ の 投 資 は 2 1 . 1 % と I T サ ー ビ ス 等 に 比 べ 小 規 模 で あ る 。 図 表 3 - 1 0 フ ァ ン ド に よ る シ ー ド ス テ ー ジ へ の 新 規 投 資 先 出 所 : 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 a )1 0 第 5 節 政 府 系 金 融 機 関 政 府 系 金 融 機 関 と は 、 政 府 が 経 済 発 展 、 国 民 生 活 の 安 定 な ど の 政 策 を 実 現 す る 目 的 で 特 殊 法 人 と し て 設 立 さ れ 、 出 資 金 の 多 く を 国 か ら 受 け て い る 金 融 機 関 を 指 す 。 本 節 で は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に 大 き く 関 与 し て い る 、 商 工 組 合 中
  • 24. 24 央 金 庫 ( 以 下 、 商 工 中 金 ) と 日 本 政 策 金 融 公 庫 ( 以 下 、 公 庫 ) に つ い て 考 察 す る 。 ・ 商 工 組 合 中 央 金 庫 商 工 中 金 は 「 中 小 企 業 の 、 中 小 企 業 に よ る 、 中 小 企 業 の た め の 金 融 機 関 」 と 謳 わ れ て お り 、 フ ル バ ン ク 機 能 を 持 つ 。 中 小 企 業 者 の 金 融 の 円 滑 化 を 目 的 と し5 て お り 、 融 資 対 象 は 、 出 資 者 で あ る 中 小 企 業 団 体 と そ の 団 体 に 所 属 す る 構 成 員 で あ る 。 融 資 の 使 途 は 、 設 備 資 金 、 長 期 運 転 資 金 、 短 期 運 転 資 金 ( 手 形 貸 付 ・ 当 座 貸 越 ・ 手 形 割 引 ) で あ る 。 事 業 に 必 要 と す る 資 金 に つ い て 長 期 短 期 を 問 わ ず す べ て の 資 金 を 取 扱 い 、 中 小 企 業 の 新 た な 資 金 調 達 手 段 に つ い て も 積 極 的 に 開 発 し 、 提 供 し て い る 2 3 。 ま た リ ー マ ン シ ョ ッ ク や 震 災 な ど が 発 生 し た 際 に 、1 0 危 機 対 応 業 務 と し て 資 金 供 給 を す る 「 セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト の 役 割 2 4 」 を 果 た し 、 地 域 金 融 機 関 と 業 務 協 力 文 書 を 締 結 や 、 個 別 案 件 で の 融 資 、 再 生 支 援 、 M & A 支 援 の ほ か 、 A B L 等 の 勉 強 会 も 実 施 し て い る 。 2 0 1 5 年 4 月 よ り 、 地 域 経 済 に 影 響 力 を 有 す る 地 域 中 核 企 業 に よ る イ ノ ベ ー シ ョ ン ( 新 事 業 進 出 や 戦 略 的 な 経 営 改 善 等 ) の 取 組 み を 金 融 面 か ら 支 援 し 、 地 域 経 済 の 活 性 化 を 図 る こ と を 目 的1 5 に 「 地 域 中 核 企 業 支 援 貸 付 」 を 創 設 し た 。 図 表 3 - 1 1 商 工 中 金 の 貸 出 と 民 間 金 融 機 関 の 中 小 ・ 中 堅 企 業 向 け 貸 出 増 減 率 の 推 移 ( 前 年 同 期 比 較 増 減 率 : % ) 2 3 資 金 調 達 の 多 様 化 に 向 け て 、 近 年 で は A B L を 取 り 入 れ た 融 資 も 行 っ て い る 。 2 4 融 資 実 績 は 、 2 0 1 5 年 1 0 兆 8 0 5 2 億 円 、 2 0 1 4 年 9 兆 5 6 6 7 億 円 、 2 0 1 3 年 7 兆 1 3 3 4 億 円 、 2 0 1 2 年 6 兆 6 0 3 7 億 円 、 2 0 1 1 年 4 兆 8 2 5 5 億 円 ( 商 工 中 金 , 2 0 1 5 ) 。
  • 25. 25 出 所 : 商 工 組 合 中 央 金 庫 ( 2 0 1 5 ) 6 頁 ・ 日 本 政 策 金 融 公 庫 公 庫 は 、 信 用 保 証 制 度 に お け る 信 用 保 証 協 会 へ の 資 金 の 経 由 、 ま た 、 商 工 中 金 の 危 機 対 応 業 務 に 必 要 な 資 金 の 経 由 な ど 中 小 企 業 の 資 金 調 達 に 関 わ る 重 要 な5 役 割 を 果 た し て お り 、 近 年 の 金 融 緩 和 に よ る 資 金 余 剰 な ど を 背 景 に 、 起 業 支 援 を 重 視 す る 政 策 方 針 や ベ ン チ ャ ー 企 業 融 資 残 高 が 増 加 し て い る 。 図 表 3 - 1 2 創 業 ( 創 業 前 及 び 創 業 後 1 年 以 内 ) 融 資 実 績 出 所 : 日 本 政 策 金 融 公 庫 H P1 0 公 庫 の 中 小 企 業 事 業 は 「 融 資 ・ 証 券 化 支 援 ・ 信 用 保 険 の 多 様 な 機 能 と 長 年 に わ た り 培 っ た 審 査 力 、 全 国 約 5 万 社 の 顧 客 デ ー タ ベ ー ス に 基 づ く 豊 富 な 情 報 を 活 か し 、 『 創 業 ・ 新 事 業 支 援 』 『 早 期 事 業 再 生 支 援 』 『 証 券 化 支 援 』 『 経 営 相 談 支 援 』 『 人 材 育 成 協 力 』 の 分 野 で 地 域 金 融 機 関 が 行 う 地 域 密 着 型 金 融 の 一 層 の 推 進 を 支 援 」 し て お り 、 具 体 的 に は 再 生 案 件 や 新 規 案 件 を 中 心 に 地 域 金 融 機1 5
  • 26. 26 関 と 緊 密 な 情 報 交 換 を 行 い 、 当 事 業 の 資 本 性 ロ ー ン を 活 用 し た 協 調 支 援 2 5 に 取 り 組 ん で い る 。 公 庫 は 地 域 金 融 機 関 と 業 務 提 携 ・ 協 力 し て お り 、 協 調 融 資 ス キ ー ム を 構 築 し た 民 間 金 融 機 関 の 数 は 2 0 1 5 年 3 月 末 時 点 で 3 2 4 機 関 に も 及 ぶ 2 6 。 中 小 企 業 事 業 は 、 資 本 性 ロ ー ン ( 挑 戦 支 援 資 本 強 化 特 例 制 度 ) を 活 用 し 、 民 間 金 融 機 関5 と 連 携 し て 協 調 融 資 を 行 う な ど 、 新 規 事 業 を 目 指 す 企 業 の 資 金 繰 り と 財 務 体 質 強 化 の 支 援 を 行 っ て い る 。 公 庫 の 中 小 企 業 事 業 の 貸 出 先 の 決 定 要 因 と 利 用 効 果 を 検 証 し た 植 杉 ・ 内 田 ・ 水 杉 ( 2 0 1 4 ) に よ る と 、 公 庫 に よ る 貸 出 は 、 信 用 性 が 高 い 企 業 に 貸 出 を 行 い 、 財 務 諸 表 に 加 え 、 独 自 に 生 産 し た 情 報 を 加 え て 算 出 し た 内 部 格 付 け に よ り 貸 出1 0 を 決 定 し て い る 。 ま た 、 日 本 の 景 気 低 迷 期 ( 1 9 9 0 年 代 後 半 〜 2 0 0 0 年 代 初 頭 、 2 0 0 8 年 秋 以 降 ) に お い て 、 民 間 の 補 完 を す る 貸 出 行 動 を と っ て い る 可 能 性 を 示 し 、 2 0 0 9 年 以 降 は 土 地 保 有 比 率 の 低 い 企 業 で 公 庫 貸 出 確 率 が 高 く 、 担 保 に 依 存 し な い 貸 出 を 実 施 し て い る 点 を 証 明 し た 。 公 庫 の 貸 出 効 果 は 「 資 金 ア ベ イ ラ ビ リ テ ィ の 改 善 」 「 資 本 ス ト ッ ク の 増 加 」 を も た ら す が 、 利 益 率 等 の 企 業 パ1 5 フ ォ ー マ ン ス に お い て は 公 庫 の 利 用 は 有 効 で は な い と し て い る 。 次 に 、 根 本 ・ 深 沼 ・ 渡 部 ( 2 0 0 6 ) に よ る と 、 政 府 系 金 融 機 関 は 、 主 に 民 間 金 融 機 関 か ら 借 り ら れ な い 企 業 を 対 象 と し て お り 、 創 業 期 の 企 業 に 限 定 し て い え ば 政 府 系 金 融 機 関 が 民 間 金 融 機 関 と 競 合 し て い る と い う 事 実 は 見 受 け ら れ な い と し て い る 。 ま た 、 政 府 系 金 融 機 関 の み か ら 借 り 入 れ た 企 業 が 創 業 年 数 の 経 過2 0 と と も に 緩 や か に 成 長 し て い く と い う 可 能 性 を 検 証 し 、 結 果 と し て 「 政 府 系 金 2 5 日 本 政 策 金 融 公 庫 H P 2 6 2 0 1 5 年 3 月 末 時 点 で 4 5 8 機 関 と 業 務 連 携 ・ 協 力 に か か る 覚 書 を 締 結 。 2 0 0 9 年 4 月 以 降 に 具 体 的 な 連 携 を 行 っ た 地 域 金 融 機 関 は 、 4 3 7 行 に 及 ぶ 。
  • 27. 27 融 機 関 が 民 間 金 融 機 関 を 補 完 し た 上 で 、 企 業 を 成 長 に 導 い て い る と 評 価 で き る 」 と 分 析 し て い る 。 つ ま り 、 公 庫 の 貸 出 は 民 間 の 金 融 機 関 が リ ス ク を 取 れ な い と こ に 貸 出 し 、 公 庫 独 自 の ノ ウ ハ ウ を 生 か し て 企 業 の 支 援 を 行 っ て い る こ と が 考 察 で き る 。 第 6 節 信 用 補 完 制 度5 中 小 企 業 が 民 間 金 融 機 関 の 融 資 を 受 け や す く す る た め の 制 度 と し て 、 信 用 保 証 制 度 と 信 用 保 険 制 度 の 二 つ の 制 度 に よ っ て 成 り 立 つ 「 信 用 補 完 制 度 」 が 存 在 す る 。 信 用 保 証 制 度 は 中 小 企 業 が 金 融 機 関 か ら 融 資 を 受 け る 際 、 そ の 借 入 債 務 を 信 用 保 証 協 会 が 保 証 す る こ と に よ り 、 中 小 企 業 の 資 金 調 達 を 円 滑 化 す る こ と を 目1 0 的 と し て い る 。 信 用 保 証 制 度 を 取 り 扱 う 信 用 保 証 協 会 は 、 4 7 都 道 府 県 と 4 市 ( 横 浜 市 、 川 崎 市 、 岐 阜 市 、 名 古 屋 市 ) の 5 1 協 会 存 在 し 、 中 小 企 業 ・ 小 規 模 事 業 者 の 金 融 円 滑 化 の た め に 設 立 さ れ た 公 的 機 関 で あ る 。 信 用 保 証 協 会 は 、 中 小 企 業 の 金 融 機 関 か ら 借 り 入 れ を 保 証 す る こ と に よ り 、 そ の 借 り 入 れ が デ フ ォ ル ト し た 際 に 、 債 務 者 で あ る 金 融 機 関 に 対 し て 、 中 小 企1 5 業 に 代 わ り に 保 証 債 務 を 弁 済 す る ( 代 位 弁 済 ) 2 7 。 信 用 保 証 を 受 け ら れ る 企 業 に は 業 種 や 規 模 に よ る 制 限 が 決 め ら れ て い る 。 保 証 付 き 融 資 を 受 け た 中 小 企 業 は 、 信 用 保 証 協 会 に 信 用 保 証 料 を 支 払 う 。 信 用 保 証 料 は 9 段 階 の 保 証 料 率 体 系 に な っ て お り 、 そ の 保 証 料 率 は 貸 借 対 照 表 の 作 成 の 有 無 に よ っ て 変 化 す る 。 2 7 奥 田 悟 ( 2 0 1 3 )
  • 28. 28 貸 借 対 照 表 を 作 成 し て い る 場 合 、 C R D ( 中 小 企 業 信 用 リ ス ク デ ー タ ) 協 会 2 8 の リ ス ク 評 価 シ ス テ ム を 用 い て 保 証 料 率 が 決 め ら れ る 2 9 ( 図 表 3 - 1 3 ) 。 信 用 保 険 制 度 と は 、 信 用 保 証 協 会 が 金 融 機 関 に 代 位 弁 済 し た 金 額 の 7 0 % ~ 8 0 % が 日 本 政 策 金 融 公 庫 か ら 補 填 さ れ る 制 度 で あ る 。 公 庫 以 外 に も 信 用 保 証 協 会 は 自 治 体 か ら 損 失 の 一 部 が 補 填 さ れ て い る 。5 図 表 3 - 1 3 信 用 保 証 料 率 決 定 の プ ロ セ ス 出 所 : 北 海 道 信 用 保 証 協 会 ( 2 0 1 5 ) 図 表 3 - 1 4 信 用 補 完 制 度 の 枠 組 み 1 0 出 所 : 福 島 県 信 用 保 証 協 会 H P 2 8 中 小 企 業 庁 の 発 案 に よ り 平 成 1 3 年 に 設 立 さ れ た 中 小 企 業 に 関 す る 日 本 最 大 の デ ー タ ベ ー ス 機 関 2 9 経 営 安 定 関 連 ( セ ー フ テ ィ ネ ッ ト ) 保 証 や 流 動 資 産 担 保 融 資 保 証 ( A B L 保 証 ) な ど に 関 し て は 、 一 律 の 信 用 保 証 料 が 適 用 さ れ る 。
  • 29. 29 次 に 、 信 用 保 証 制 度 の 保 障 債 務 残 高 と 利 用 率 ・ 保 証 承 諾 額 ・ 代 位 弁 済 額 を 考 察 す る 。 保 証 承 諾 額 は 、 2 0 0 8 年 度 の 約 2 0 兆 円 か ら 右 肩 下 が り と な っ て お り 2 0 1 3 年 度 で は 約 9 兆 円 と な っ て い る ( 図 表 3 - 1 6 ) 。 代 位 弁 済 額 も 、 保 証 承 諾 額 に 連 れ て 減 少 し て い る 。 中 小 企 業 向 け 貸 し 出 し に 占 め る 信 用 保 証 付 き 融 資 貸 し 出 し の 割 合 は 保 証 承 諾 額 が 減 少 し て い る 中 、 1 3 % 前 後 を 推 移 し て い る 3 0 。 こ5 れ は 、 中 小 企 業 向 け 貸 し 出 し の 全 体 額 が 減 少 傾 向 に あ る た め 、 信 用 保 証 付 き 貸 し 出 し の 割 合 も 変 化 し て い な い と 考 え ら れ る 。 図 表 3 - 1 5 保 証 債 務 残 高 と 保 証 利 用 率 の 推 移 出 所 : 岡 田 ( 2 0 1 3 )1 0 図 表 3 - 1 6 保 証 債 務 承 諾 額 推 移 及 び 内 訳 出 所 : 内 閣 府 ( 2 0 1 4 b ) 第 7 節 官 民 フ ァ ン ド 3 0 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 3 )
  • 30. 30 官 民 フ ァ ン ド と は 、 政 策 目 的 に 基 づ き 、 政 府 出 資 を 中 心 に 民 間 も 一 部 を 出 資 す る な ど に よ り 「 官 」 と 「 民 」 が 連 携 し て 投 資 を 推 進 す る 組 織 で あ り 、 成 長 が 期 待 さ れ る 分 野 へ リ ス ク マ ネ ー を 供 給 す る こ と で 、 民 間 の 力 を 最 大 限 引 き 出 す た め の 「 呼 び 水 」 と な る 役 割 が 期 待 さ れ て い る 3 1 。 本 節 で は 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 に 重 要 な フ ァ ン ド で あ る 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構 ( 以 下 、 中 小 機5 構 ) に つ い て 説 明 す る 3 2 。 中 小 機 構 は 、 2 0 0 4 年 に 3 つ の 特 殊 法 人 3 3 が 統 合 さ れ て 創 立 さ れ 、 中 小 企 業 の 創 業 か ら 事 業 再 生 ・ 災 害 対 策 な ど の セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト ま で 、 中 小 企 業 の ラ イ フ ス テ ー ジ に あ っ た 支 援 を 実 行 し て い る 。 そ の 一 環 と し て 中 小 機 構 は 、 中 小 企 業 の 起 業 ・ 成 長 ・ 再 生 ・ 震 災 復 興 を 支 援 す る 各 フ ァ ン ド へ の 出 資 事 業 を 実 施1 0 し て い る 。 現 在 、 運 営 し て い る フ ァ ン ド 事 業 は 、 創 業 又 は 成 長 初 期 の 段 階 に あ る 中 小 企 業 を 支 援 す る 「 起 業 支 援 フ ァ ン ド 」 、 成 長 が 見 込 ま れ る 新 事 業 展 開 を 支 援 す る 「 中 小 企 業 成 長 支 援 フ ァ ン ド 」 、 再 生 に 取 り 込 む 中 小 企 業 を 支 援 す る 「 再 生 支 援 フ ァ ン ド 」 の 3 つ で あ る 。 具 体 的 な 支 援 策 は 、 民 間 の 投 資 会 社 が 運 営 す る フ ァ ン ド に 有 限 責 任 組 合 ( L P ) と し て 出 資 し 、 中 小 企 業 の 資 金 調 達 の1 5 3 1 商 工 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 4 ) 3 2 官 民 フ ァ ン ド は 、 2 0 1 4 年 9 月 時 点 で 他 、 産 業 革 新 機 構 ・ 地 域 経 済 活 性 化 支 援 機 構 ・ 民 間 資 金 等 活 用 事 業 推 進 機 構 な ど 1 1 フ ァ ン ド 存 在 す る 。 3 3 中 小 企 業 総 合 事 業 団 ( 信 用 保 険 部 門 を 除 く ) 、 地 域 振 興 整 備 公 団 ( 地 方 都 市 開 発 整 備 等 業 務 を 除 く ) 及 び 産 業 基 盤 整 備 基 金
  • 31. 31 円 滑 化 、 ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 い 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 や 中 小 企 業 の 新 事 業 展 開 の 促 進 、 中 小 企 業 の 再 生 を 支 援 し て い る 3 4 。 第 4 章 中 小 企 業 金 融 に お け る 課 題 第 1 節 信 用 補 完 制 度 に お け る 問 題 点5 日 本 の 信 用 保 証 制 度 で は 、 特 別 保 証 制 度 や 緊 急 保 証 制 度 に よ っ て 、 保 証 割 合 が 1 0 0 % の 期 間 が 長 期 に 渡 っ た た め 、 金 融 機 関 が 保 証 付 き 融 資 を 実 施 す る 際 、 適 切 な 審 査 を せ ず に リ ス ク の 高 い 中 小 企 業 に 保 証 付 き 融 資 を 行 う モ ラ ル ハ ザ ー ド が 発 生 し て い た 。 ま た 、 保 証 料 が 一 律 で あ っ た た め 保 証 付 き 融 資 を 受 け る 中 小 企 業 側 に も 、 銀 行 の モ ニ タ リ ン グ を 怠 る モ ラ ル ハ ザ ー ド が 発 生 し て い た 。 緊1 0 急 保 証 制 度 の 実 態 を 見 る と 、 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 直 後 に か か わ ら ず 、 「 金 融 機 関 か ら 断 ら れ た の で 利 用 し て い る ( あ る い は 期 待 し て い る ) 」 と 答 え た 中 小 企 業 は 1 3 % に し か 過 ぎ な い 。 む し ろ 「 手 元 流 動 性 を 高 め る た め 」 や 「 金 融 機 関 の プ ロ パ ー 融 資 か ら の 借 換 」 が そ れ ぞ れ 6 2 . 6 % 、 7 . 4 % を 占 め て お り 3 5 、 信 用 保 証 の 本 来 の 主 旨 と は 違 っ た 利 用 が さ れ 、 経 営 が さ ほ ど 悪 く な い 中 小 企 業 が 金 融1 5 機 関 の プ ロ パ ー 融 資 よ り も 好 条 件 で 資 金 調 達 さ れ て い た 3 6 。 小 西 ・ 長 谷 部 ( 2 0 0 2 ) で は 、 ① 特 別 保 証 制 度 の 実 施 に よ り 短 期 的 に は 倒 産 回 避 効 果 が 認 め ら れ た が 、 中 長 期 的 に は 認 め ら れ な か っ た こ と ② 特 別 保 証 制 度 は 中 小 企 業 向 け 貸 出 の 増 加 に 貢 献 し た こ と を 示 し 、 特 別 保 証 制 度 は 不 良 な 企 業 に 3 4 出 資 額 は フ ァ ン ド の 上 限 の 1 / 2 が 上 限 。 フ ァ ン ド へ の 出 資 要 件 と し て 、 組 合 の 存 続 期 間 は 1 2 年 以 内 と し 、 G P は 投 資 後 の 業 況 や 進 捗 状 況 な ど の 継 続 的 な 把 握 、 経 営 や 技 術 等 に 関 す る ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う こ と な ど が 明 記 さ れ て い る 。 3 5 植 杉 ・ 小 野 、 他 ( 2 0 0 9 ) 3 6 大 庫 ( 2 0 1 3 )
  • 32. 32 も 融 資 を 実 行 す る 誘 因 を 与 え 、 結 果 と し て 資 金 配 分 の 効 率 性 を 損 な う 制 度 で あ り 、 中 長 期 的 に は 倒 産 件 数 が 増 加 す る こ と に 繋 が っ た と 分 析 し て い る 。 つ ま り 、 特 別 保 証 制 度 は 優 良 か 不 良 で あ る か に 関 わ ら ず 、 ほ ぼ 無 条 件 で 保 証 承 諾 を 出 し た た め 、 再 建 の 見 込 み が な い 企 業 に も 貸 し 出 さ れ た 。 短 期 的 に は 倒 産 は 免 れ る が 、 も と も と 体 力 の な い 企 業 は 中 長 期 的 に 見 る と 倒 産 す る た め 、 信5 用 保 証 協 会 の さ ら な る 財 政 悪 化 に 繋 が っ て い た 。 第 2 節 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 す る 上 で の 課 題 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 は 、 そ の 国 の 経 済 成 長 に 大 き な 役 割 を 果 た し 、 G D P と 新 規 開 業 率 の 関 係 に お い て も 、 上 昇 す れ ば G D P も 上 昇 す る と の 研 究 も あ る 3 7 。 日 本 に お い て も こ の よ う な 観 点 か ら 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 へ1 0 の 支 援 策 を 講 じ て き た が 、 明 確 な 成 果 を 出 し て い る と は 言 い 難 く 、 特 に 新 産 業 の 創 出 ・ 雇 用 創 出 の 観 点 か ら 期 待 さ れ て い る 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 し て い な い 。 成 長 に 必 要 な 資 金 供 給 に お い て も 、 I T 分 野 な ど で は リ ス ク マ ネ ー は 十 分 に 供 給 さ れ て い る が 、 研 究 開 発 を 伴 う 分 野 で は 未 だ に 不 十 分 で あ る ( 図 表 3 - 1 0 ) 。 そ の 大 き な 要 因 と し て 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業1 5 は 、 I T 系 と 比 較 し て 、 初 期 投 資 に 費 用 が 掛 か り 、 成 果 が 出 る ま で に 期 間 が 長 い こ と で リ ス ク が 高 い と 認 識 さ れ て い る 。 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 は 、 製 品 を 開 発 し た と し て も 、 過 去 の 販 売 実 績 が な い た め 最 初 の 買 い 手 が 見 つ か ら な い 課 題 と 、 最 初 の 買 い 手 が 見 つ か っ た と し て も 次 に 市 場 に 向 け て 製 品 を 改 良 し 販 売 す る た め の 販 売 拡 路 や 取 引 先 が2 0 な い 問 題 が あ る ( 市 場 化 ・ 事 業 化 の 問 題 ) 。 ま た 、 技 術 者 出 身 が 多 く 、 V C か ら の 出 資 を 受 け る 際 に V C に 対 し て 自 社 の 技 術 や 事 業 の 優 位 性 を 伝 え ら れ て い 3 7 野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 )
  • 33. 33 な い こ と や 、 そ も そ も 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 技 術 が 未 熟 と V C 側 か ら 指 摘 し て い る 3 8 。 こ の よ う な 問 題 を 解 決 す る 一 つ の 方 策 と し て 、 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン や ベ ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム と い わ れ る 既 存 の 大 企 業 な ど と の 連 携 が 重 要 で あ る が 、 日 本 で は 大 企 業 の 自 社 内 開 発 ・ 生 産 に よ る い わ ゆ る 「 自 前 主 義 」 に よ っ て 、 中5 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 と の 連 携 に 積 極 的 で は な い た め 、 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン や ベ ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム の 取 り 組 み が 遅 れ て い る 。 図 表 4 - 1 大 企 業 の 外 部 連 携 先 出 所 : 文 部 科 学 省 科 学 技 術 ・ 学 術 政 策 研 究 所 ( 2 0 1 3 )1 0 ・ 金 融 機 関 ・ V C の 目 利 き 能 力 不 足 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 を 支 え る に は 、 そ の 事 業 性 や 技 術 を 見 極 め る 目 利 き 力 が 必 要 で あ る 。 2 章 で 考 察 し た よ う に 、 日 本 で は 金 融 機 関 に 依 存 す る 形 で の 資 金 供 給 が 行 わ れ て い る が 、 金 融 機 関 は 企 業 の 事 業 性 や 技 術 を 評 価 す る 「 目 利 き 能 力 」 が 不 足 し て お り 、 事 業 性 や 技 術 を 評 価 し た 融 資 を 行 え て い な い 。1 5 各 金 融 機 関 に お い て 、 目 利 き 能 力 向 上 の 取 り 組 み が な さ れ て い る が 、 金 融 機 関 3 8 価 値 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 )
  • 34. 34 が 身 に つ け ら れ る も の で は な い と も 言 わ れ て お り 3 9 、 金 融 機 関 の 代 わ り に 目 利 き 能 力 を 発 揮 す る 主 体 が 必 要 で あ る 。 金 融 機 関 に 代 わ っ て 目 利 き 能 力 を 発 揮 す る 主 体 と し て 期 待 さ れ る の が V C で あ る が 、 V C も ま た 、 目 利 き 能 力 不 足 が 指 摘 さ れ て い る 。 特 に 、 独 立 系 や 銀 行 系 の V C に お い て そ の よ う な 指 摘 は 多 く 、 価 値 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 ) が 行 っ た V C5 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 で 、 6 5 % の V C が 技 術 へ の 目 利 き 能 力 が 不 足 し て い る と 回 答 し て い る 。 ・ V C 産 業 の 未 発 達 3 章 で も 考 察 し た よ う に 、 日 本 は 諸 外 国 と 比 較 し て V C 投 資 が 不 足 し て お り ( 図 表 3 - 7 ) 、 そ の 中 で も 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の リ ス ク マ ネ ー1 0 が 不 足 し て い る 。 創 業 融 資 や 研 究 開 発 費 と い っ た も の は 、 将 来 利 益 を 生 み 出 す か の 判 断 が 困 難 で あ り 、 民 間 の 金 融 機 関 に と っ て リ ス ク マ ネ ー と な る 4 0 。 こ の よ う な リ ス ク マ ネ ー の 供 給 主 体 で あ る V C は 十 分 に 機 能 し て い る と は 言 え ず 、 そ の 要 因 と し て 前 述 の 「 V C の 目 利 き 能 力 不 足 」 「 V C の 資 金 量 不 足 」 等 が 挙 げ ら れ る 。 ま た 、 V C の 投 資 期 間 が 1 0 年 程 度 で あ り 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ1 5 ャ ー 企 業 が 求 め る 1 0 年 を 超 す 長 期 資 金 を 供 給 で き て い な い 。 投 資 を 行 う の が レ イ タ ― 、 つ ま り I P O 直 前 の よ う な 企 業 に 集 中 し 、 シ ー ド や ア ー リ ー と い っ た 初 期 の 段 階 で の 投 資 が 少 な い ( 図 表 3 - 8 ) 。 さ ら に 、 レ イ タ ― に 投 資 を 実 施 し て も 少 額 か つ 分 散 し た 投 資 し か 行 わ ず 、 事 業 化 ・ 市 場 化 の 段 階 で あ る レ イ タ 3 9 内 閣 府 ( 2 0 1 4 c ) 2 5 頁 4 0 村 本 ( 2 0 1 5 ) は 、 金 融 機 関 の 貸 出 は ロ ー リ タ ー ン ロ ー リ ス ク で あ り 、 ハ イ リ ス ク ハ イ リ タ ー ン で あ る リ ス ク マ ネ ー の 供 給 に は 適 し て い な い と 指 摘 し て い る 。
  • 35. 35 ― 期 で 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 大 口 の 資 金 ニ ー ズ を 満 た せ ず 、 ま た 米 国 と 比 較 し て も V C へ の 資 金 供 給 量 も 大 き な 差 が あ る 4 1 。 こ れ ら の 課 題 は V C へ の 批 判 の 一 つ で あ る 「 エ ク ジ ッ ト の I P O 偏 重 」 に 繋 が る 。 投 資 期 間 が 経 過 す る と V C は 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に I P O を 要 求 す る 。 た と え I P O が 達 成 さ れ た と し て も 、 上 場 後 の ビ ジ ネ ス プ ラ ン や 経 営 基 盤 な ど を5 備 え て い な い と I P O 後 に 失 速 す る ケ ー ス が 多 い 。 本 来 、 I P O は 資 金 調 達 の 一 つ の 手 段 で あ り 、 I P O を 中 小 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 最 終 目 的 と す べ き で は な い 。 ま た 、 各 V C に 対 し て も 様 々 な 課 題 が 指 摘 さ れ て お り 、 内 田 ・ 孫 ( 2 0 1 3 ) は 独 立 系 V C に つ い て 、 未 熟 な 企 業 を I P O さ せ る 傾 向 に あ り 、 名 声 の 低 い ア ン ダ ー ラ イ タ ー を 用 い て 上 場 基 準 の 緩 い 市 場 で 企 業 を I P O さ せ て い る こ と を 明 か1 0 し て い る 。 銀 行 系 V C に つ い て は 藤 野 ( 2 0 1 5 ) が 有 識 者 の ヒ ア リ ン グ な ど を 基 に 、 銀 行 系 V C の 社 員 は 本 体 で あ る 銀 行 か ら の 出 向 が 大 半 を 占 め る た め 、 銀 行 同 様 目 利 き 能 力 が 不 足 し て い る 。 ま た 、 融 資 業 務 の 意 識 か ら リ ス ク を 取 ら ず シ ー ド ・ ア ー リ ー ス テ ー ジ に 消 極 的 で あ り 、 レ ー タ ー ス テ ー ジ へ の 投 資 が 中 心 で あ る 。 出1 5 向 期 間 も 3 年 ほ ど で 銀 行 に 戻 る た め V C の 業 務 に つ い て の ノ ウ ハ ウ が 身 に つ か な い 。 V C で は 資 金 を 供 給 す る だ け で な く ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う こ と が 求 め ら れ る が 、 銀 行 系 V C は ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 え て い な く V C の 役 割 を 果 た し て い な い と 指 摘 し て い る 。 比 佐 ( 2 0 0 8 ) は 、 銀 行 系 V C は 情 報 の 非 対 称 性 を 解 消 し 、 資 金 制 約 の 問 題 を 解 消 す る 役 割 を 果 た す と い う よ り は 、 む し ろ リ ス ク を 回 避 し2 0 て い る 可 能 性 が 高 い と し て い る 。 4 1 野 村 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 ) の ヒ ア リ ン グ 調 査 で も 、 「 技 術 関 連 の 目 利 き 力 の あ る 人 材 の 不 足 」 「 少 額 で の 分 散 投 資 」 「 事 業 拡 張 ・ 安 定 化 に 差 し 掛 か る レ イ ト ス テ ー ジ で の 資 金 供 給 元 の 不 足 」 が 指 摘 さ れ て い る 。
  • 36. 36 C V C に つ い て は 、 野 村 ( 2 0 1 4 a ) 藤 野 ( 2 0 1 5 ) ら が 、 米 国 に 比 べ 業 種 が 狭 く 日 本 で は K D D I や サ イ バ ー エ ー ジ ェ ン ト と い っ た I T 系 や メ デ ィ ア 系 を 中 心 と し て 展 開 さ れ て い る た め 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ 投 資 す る 主 体 が 少 な く 、 中 長 期 的 な 戦 略 に 基 づ い て の 戦 略 的 投 資 で は な く 財 務 目 的 の 投 資 と な っ て い る と 指 摘 し て い る 4 2 。5 第 5 章 こ れ か ら の 中 小 企 業 金 融 政 策 第 1 節 信 用 保 証 制 度 改 革 今 後 の 信 用 補 完 制 度 は 、 政 策 金 融 体 系 の 中 で 直 接 融 資 と 並 ん で 車 の 両 輪 と い う べ き 役 割 を 果 た さ な け れ ば な ら な い 4 3 。1 0 3 章 で も 述 べ た よ う に 、 中 小 企 業 向 け 貸 出 の う ち 保 証 付 き 融 資 は 約 1 3 % と 中 小 企 業 に お い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る 4 4 。 今 後 の 信 用 保 証 制 度 の あ り 方 と し て 、 従 来 担 っ て き た セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト の 役 割 に 加 え て 創 業 期 な ど の 金 融 機 関 が リ ス ク を 取 れ な い と こ ろ を 補 填 す る 役 割 が 重 要 で あ り 、 金 融 機 関 も 創 業 向 け 融 資 で 保 証 付 き 融 資 を 利 用 し た い 意 向 が あ る ( 図 5 - 1 ) 。1 5 4 2 日 本 に お い て 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に 投 資 す る 大 企 業 が 少 な い 理 由 と し て 、 野 村 ( 2 0 1 4 a ) で は 「 過 去 に ベ ン チ ャ ー 投 資 に 失 敗 し 、 リ ス ク の 高 い ベ ン チ ャ ー 企 業 に 投 資 す る こ と に 消 極 的 に な っ て い る 」 と さ れ て い る 。 4 3 村 本 ( 2 0 1 5 ) 3 2 1 頁 4 4 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 3 )
  • 37. 37 図 表 5 - 1 起 業 ・ 創 業 に 係 る 融 資 を 推 進 す る た め の 取 組 み 出 所 : 日 本 政 策 金 融 公 庫 ( 2 0 1 4 ) 現 在 、 信 用 保 証 制 度 の 保 証 割 合 は 、 部 分 保 証 ( 8 0 % 保 証 ) と 復 興 緊 急 保 証 や セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト 保 証 な ど の 全 額 保 証 ( 1 0 0 % 保 証 ) が 併 存 し て お り ( 図 表 3 -5 1 6 ) 、 そ の 結 果 、 本 来 信 用 保 証 を 受 け な く て も よ い 企 業 が 信 用 保 証 を 受 け て い る と の 指 摘 や 、 貸 し 出 し 審 査 が 緩 い と い っ た モ ラ ル ハ ザ ー ド が 発 生 し て い た 。 今 後 の 信 用 補 完 制 度 は 、 金 融 機 関 の モ ラ ル ハ ザ ー ド を 是 正 す る た め に 、 金 融 機 関 に 保 証 付 き 貸 出 を 行 う 企 業 の 選 定 を し っ か り と 見 極 め る た め の イ ン セ ン テ ィ ブ が 必 要 で あ る 。 し か し な が ら 、 た だ 金 融 機 関 の 負 担 を 重 く す る な ど し て 締1 0 め 付 け を 行 う だ け で は 、 逆 選 択 の 問 題 を 引 き 起 こ し 、 適 切 な 制 度 の 利 用 を 阻 害 す る も の と な る 。 従 っ て 我 々 は 、 金 融 機 関 に 適 切 な 制 度 利 用 を 促 す た め に 「 金 融 機 関 別 の 保 証 割 合 設 定 」 を 提 言 す る 。 金 融 機 関 別 の 保 証 割 合 設 定 と は 、 毎 年 の 事 故 率 に 応 じ て 保 証 割 合 を 変 動 さ せ1 5 る 制 度 の こ と で あ り 、 ド イ ツ の 住 宅 金 融 の 保 証 に お い て は 、 金 融 機 関 の 信 用 保 証 付 き 貸 出 に お け る 事 故 率 を 基 に 保 証 割 合 を 設 定 し て い る 。 つ ま り 、 保 証 付 き 融 資 の 事 故 率 が 高 い 金 融 機 関 に は 次 年 度 の 保 証 割 合 を 引 き 上 げ 、 逆 に 事 故 率 が
  • 38. 38 低 い 金 融 機 関 に は 次 年 度 の 保 証 割 合 を 引 き 下 げ て お り 4 5 、 金 融 機 関 に 適 切 な モ ニ タ リ ン グ を 行 う イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え て い る 。 日 本 に お い て も こ の 制 度 に 則 っ た 形 を と る 。 ま ず 、 現 状 の 信 用 保 証 制 度 に お け る 全 額 保 証 ( 1 0 0 % ) と 全 国 一 律 の 責 任 共 有 制 度 ( 8 0 % ) を 撤 廃 し 、 6 0 % ~ 9 0 % の 部 分 保 証 に 切 り 替 え る 。 そ の 後 、 代 位 弁5 済 率 が 悪 化 し た 金 融 機 関 に お い て は 次 年 度 に 保 証 割 合 を 引 き 上 げ 、 代 位 弁 済 率 が 改 善 し て い る 金 融 機 関 は 次 年 度 に 保 証 割 合 を 引 き 下 げ る 。 こ の 金 融 機 関 ご と に 保 証 割 合 を 差 別 化 し 、 企 業 を し っ か り と 審 査 さ せ る こ と で 、 金 融 機 関 に よ る モ ラ ル ハ ザ ー ド を 防 ぐ こ と が で き る と 考 え る 。 こ の 改 善 策 を 行 う こ と に よ り 、 金 融 機 関 の モ ラ ル ハ ザ ー ド が 改 善 さ れ 、 金 融1 0 機 関 の 目 利 き 能 力 の 向 上 に 繋 が り 、 信 用 保 証 を 受 け る べ き 企 業 の み に 信 用 保 証 を 利 用 さ れ る こ と が 期 待 で き る 。 ま た 、 融 資 だ け で は な く 、 ハ ン ズ オ ン 支 援 や リ レ バ ン の 向 上 に も 繋 が り 、 信 用 保 証 の 適 切 な 制 度 運 用 に 繋 が る と 考 え る 。 第 2 節 コ ー ポ レ ー ト ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 活 性 化 へ の 提 言 4 章 で 考 察 し た よ う に 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 が 成 長 す る 上 で 、 資 金 面 で の1 5 支 援 以 外 に も 、 人 材 や ノ ウ ハ ウ と い っ た 経 営 資 源 が 必 要 で あ る 。 そ の 中 で も 大 企 業 と の 連 携 が 重 要 で あ る が 、 前 述 し た よ う に 大 企 業 と 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 連 携 は 余 り 行 わ れ て い な い ( 図 表 4 - 1 ) 。 つ ま り 、 大 企 業 と 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 連 携 を 促 す こ と が 可 能 な C V C を 活 性 化 さ せ る こ と は 有 効 で あ る と 考 え る 。 米 国 で は 、 日 本 よ り も V C 投 資 に お い て C V C は 長 年 定 着 し て お り 、 倉 林2 0 ( 2 0 1 4 ) に よ る と 、 米 国 で は 独 立 系 V C に 比 べ 、 C V C に 投 資 さ れ た 企 業 の 時 価 総 額 は 3 倍 に も 及 び 倒 産 確 率 も 低 い と し 、 C V C は 価 値 あ る 投 資 家 で あ る と さ れ て い る 。 し か し 、 日 本 の C V C に は 業 種 の 偏 り や 、 V C 自 体 の 問 題 と い っ た 、 4 5 吉 野 ( 2 0 1 4 )
  • 39. 39 解 決 す べ き 課 題 が 数 多 く 存 在 す る 。 今 後 、 日 本 に お い て C V C の 活 性 化 ・ 定 着 に 向 け 、 I T ・ メ デ ィ ア 系 以 外 の 業 種 へ の 拡 大 、 大 企 業 だ け で な く 地 方 の 中 堅 企 業 に 対 し て も 普 及 さ せ 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の よ う な リ ス ク あ る 所 に 資 金 を 供 給 す る 必 要 が あ る 。 こ れ ら の 課 題 を 踏 ま え 、 我 々 は 「 C V C と 銀 行 系 V C ・ 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構5 に よ る 共 同 出 資 に よ る フ ァ ン ド 創 出 」 を 提 案 す る 。 こ の ス キ ー ム の 特 徴 は 、 大 企 業 に よ る C V C と 投 資 先 企 業 と の 二 者 関 係 に 、 銀 行 系 V C と 中 小 機 構 を 含 め た 支 援 体 制 を 確 立 し た 点 で あ る ( 図 表 5 - 1 ) 。 図 表 5 - 1 C V C と 銀 行 系 V C ・ 中 小 機 構 に よ る 共 同 出 資 の ス キ ー ム 1 0 出 所 : N E C キ ャ ピ タ ル ソ リ ュ ー シ ョ ン H P を 基 に 筆 者 作 成 C V C と 銀 行 系 V C ・ 中 小 機 構 の 共 同 出 資 に よ る メ リ ッ ト と し て 、 お 互 い の 課 題 を 解 決 し な が ら 、 お 互 い の ノ ウ ハ ウ を 活 か す こ と が で き る 。 C V C の ノ ウ ハ ウ と し て 、 大 企 業 そ の も の が 保 持 し て い る 「 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 事 業 性 、 技 術 の 目 利 き 能 力 」 「 自 社 の 技 術 や 販 路 を 使 っ た ハ ン ズ オ ン 支 援 」 「 人 材 派 遣 」1 5 等 、 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 に 必 要 な 経 営 資 源 を 提 供 す る こ と が で き る 。 銀 行 系 V C の ノ ウ ハ ウ と し て 「 支 店 を 生 か し た ネ ッ ト ワ ー ク に よ る 案 件 発 掘 」 「 企 業 と の マ ッ チ ン グ 」 「 豊 富 な 資 金 量 」 が 挙 げ ら れ 、 投 資 先 が 市 場 化 ・ 事 業
  • 40. 40 化 の 際 、 銀 行 本 体 か ら の 大 型 の 融 資 が 受 け ら れ る こ と が 期 待 で き る 。 実 際 、 内 田 ・ 孫 ( 2 0 1 3 ) に よ る と 「 銀 行 系 V C に よ る ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 が 、 親 企 業 の 貸 出 を 増 加 さ せ 、 利 益 を 増 加 さ せ る と い う 戦 略 目 的 で 行 わ れ て い る 」 と い う 先 行 研 究 の 結 果 を 検 証 し 、 そ の 仮 説 が 真 で あ る こ と 示 し て い る 。 V C 同 士 に お け る シ ン ジ ケ ー シ ョ ン の 効 果 は 、 未 上 場 企 業 に 対 し て 複 数 の ベ5 ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル が 共 同 投 資 を 行 う 際 の メ ン バ ー 構 成 に つ い て 実 証 的 に 分 析 し た 滝 澤 ・ 宮 川 ( 2 0 1 5 ) に よ る と 「 異 な る V C の 協 同 を 促 す こ と が 資 本 市 場 の 機 能 を よ り 高 め る 可 能 性 が あ る 」 と し 、 「 銀 行 を 中 心 と す る 間 接 金 融 を 主 た る 資 金 供 給 チ ャ ネ ル と し て き た 日 本 の 金 融 市 場 に お い て 、 特 に 初 回 投 資 ラ ウ ン ド に お け る ス ク リ ー ニ ン グ 機 能 の 面 で は 多 様 な メ ン バ ー 構 成 が 経 済 的 な 利 益 を も1 0 た ら す 可 能 性 が あ る 」 と 分 析 し て い る 。 V C と C V C の 連 携 に つ い て 浦 木 ( 2 0 1 1 ) は 、 「 V C と C V C は 補 完 的 な 関 係 性 に あ る 」 と し て い る 。 V C は 投 資 契 約 や 投 資 家 構 成 の マ ネ ジ メ ン ト , 投 資 コ ン セ プ ト , 経 営 陣 の 採 用 , 資 金 調 達 の プ ラ ン ニ ン グ な ど に 関 し て 強 み を 持 ち 、 そ れ に 対 し C V C は オ ペ レ ー シ ョ ナ ル な 部 分 で の 実 質 的 な サ ポ ー ト 、 顧 客 開 拓 や 原1 5 料 調 達 、 ス ケ ー ル ア ッ プ 、 工 業 的 生 産 の ノ ウ ハ ウ 知 財 戦 略 、 物 流 戦 略 な ど で 強 み が あ る た め 、 お 互 い の 強 み を 合 わ せ れ ば 強 力 な サ ポ ー ト 体 制 が 確 立 す る と 述 べ て い る 。 ま た 、 内 閣 府 ( 2 0 1 4 b ) で 指 摘 さ れ て い る よ う に 、 銀 行 系 V C が 目 利 き 能 力 の あ る C V C と 共 同 出 資 を 行 う こ と に よ り 、 銀 行 系 V C 、 親 の 銀 行 へ の 目 利 き 能 力 の 向 上 が 期 待 で き る 。2 0 こ れ ら の 先 行 研 究 か ら も 、 C V C と 銀 行 系 V C の 共 同 出 資 は シ ナ ジ ー 効 果 を 生 み 出 し 、 さ ら に お 互 い が 保 有 し て い る 情 報 を 基 に ス ク リ ー ニ ン グ 効 果 が あ る こ と を 示 し 、 共 同 出 資 が 有 効 で あ る こ と を 証 明 で き る 。 ま た 中 小 機 構 が フ ァ ン ド の 下 支 え を す る こ と に よ り 、 フ ァ ン ド 規 模 の 増 額 、 更 な る 民 間 資 金 の 呼 び 水 、 公 的 機 関 の 出 資 先 と い う 信 用 力 の 向 上 ・ ガ バ ナ ン ス や 組 織 体 制 の 向 上 が 期 待 で2 5
  • 41. 41 き 4 6 、 日 本 の V C に お け る 課 題 で あ る 資 金 不 足 の 改 善 、 V C の 適 切 な 運 用 に 繋 が る も の と な る 。 つ ま り 、 こ の ス キ ー ム を 行 う こ と で 、 C V C の 目 利 き 能 力 ・ 経 営 支 援 、 銀 行 系 V C の ネ ッ ト ワ ー ク や 資 金 量 、 中 小 機 構 の 下 支 え 能 力 に よ り 、 リ ス ク が あ る と さ れ て い る 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 資 金 供 給 や ハ ン ズ オ ン 支 援 、5 事 業 化 ・ 市 場 化 の 段 階 で の 新 た な 資 金 供 給 が 行 え る よ う に な る 。 具 体 的 に は 、 シ ー ド 期 に は 、 C V C の 目 利 き 能 力 ・ 銀 行 系 V C の ネ ッ ト ワ ー ク を 生 か し て 案 件 発 掘 を 行 い 、 ス タ ー ト ア ッ プ 期 に は C V C の R & D に お け る ノ ウ ハ ウ 等 の 経 営 資 源 を 活 用 し て ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う 。 ア ー リ ー 期 に は C V C の 親 会 社 が 最 初 の 買 い 手 と な り 、 そ の 後 C V C の 顧 客 基 盤 ・ 銀 行 系 V C の ビ ジ ネ ス マ ッ チ ン グ を 活1 0 用 し 、 事 業 化 ・ 市 場 化 の 問 題 を 解 決 す る 。 レ ー タ ー ス テ ー ジ で は 、 銀 行 系 V C の 本 体 か ら の 融 資 や 継 続 し た C V C の 親 と の 連 携 に よ り 、 成 長 後 に も 継 続 し た 支 援 が 実 施 で き る 。 ( 図 表 5 - 2 ) 図 表 5 - 2 各 成 長 段 階 に お け る 支 援 の 流 れ 1 5 出 所 : 筆 者 作 成 4 6 石 井 芳 明 ( 2 0 1 1 ) 1 2 - 1 3 頁
  • 42. 42 次 に 、 こ の ス キ ー ム を よ り 活 性 化 す る た め の 事 前 策 と し て 、 以 下 、 3 つ の 政 策 ① ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 の 恒 久 化 ② 認 定 フ ァ ン ド 要 件 の 緩 和 ③ 中 小 機 構 に よ る C V C の ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス の 開 示 制 度 を 提 言 す る 。 ① ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 の 恒 久 化 経 済 産 業 省 が 大 企 業 ・ 中 堅 企 業 の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 を 促 す 税 制5 優 遇 と し て 「 法 人 版 エ ン ジ ェ ル 税 制 」 と も 呼 ば れ て い る ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 が 存 在 す る 。 ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 と は 「 認 定 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド を 通 じ て ベ ン チ ャ ー 企 業 株 式 へ の 出 資 額 の 8 0 % を 上 限 に 損 失 準 備 金 を 積 み 立 て 、 損 金 算 入 す る こ と 4 7 」 が 可 能 な 税 制 優 遇 で あ り 、 事 業 会 社 の ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 を 促 進 さ せ ら れ る と 期 待 さ れ て い る が 、 2 0 1 7 年 3 月 末 ま で の 時 限 借 置 と1 0 な っ て い る 。 今 後 日 本 に お い て 事 業 会 社 の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 、 C V C を 定 着 さ せ る イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え る た め に は 、 こ の よ う な 制 度 は 継 続 さ せ る 必 要 が あ り 、 時 限 措 置 で あ る と 長 期 的 な 視 点 を も っ て の 投 資 が 行 え な い 可 能 性 が 存 在 す る 。1 5 し た が っ て 、 時 限 措 置 を 廃 止 し 「 期 間 の 恒 久 化 」 を 提 言 す る 。 ② 認 定 フ ァ ン ド 要 件 の 緩 和 ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 を 受 け る た め に は 、 認 定 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド へ 出 資 し な け れ ば な ら な い 。 し か し 現 在 、 認 定 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド と 認 可 さ れ て い る フ ァ ン ド は 3 つ し か 存 在 せ ず 、 こ の よ う な 状 況 で は 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ2 0 の 投 資 が 促 進 さ れ な い 。 ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド が 経 済 産 業 省 か ら 認 定 を 受 け る に は い く つ も の 要 件 を ク リ ア す る 必 要 が あ る 4 8 。 し か し 、 認 定 フ ァ ン ド が 3 つ し か な い 現 状 を 考 慮 す る と 認 定 要 件 が 厳 し い 可 能 性 が あ り 、 ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 を 活 用 す る た め に も 認 定 要 件 の 緩 和 は 必 要 で あ る 。 4 7 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 b ) 4 8 認 定 フ ァ ン ド 要 件 に つ い て は 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 b ) を 参 照 さ れ た い 。
  • 43. 43 し た が っ て 、 ① フ ァ ン ド の 投 資 事 業 の 実 施 期 間 を 1 0 年 か ら 1 5 年 に 延 長 ② 出 資 約 束 金 額 2 0 億 円 以 上 を 1 0 億 円 以 上 に 緩 和 の 2 点 を 提 言 す る 。 出 資 約 束 金 額 を 下 げ る こ と で フ ァ ン ド 設 立 が 容 易 に な り 、 実 施 期 間 を 1 5 年 に 延 長 す る こ と に よ り 、 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 投 資 が 実 施 し 易 く な り 、 地 方 の 中 堅 企 業 に も C V C 設 立 の 機 会 を 与 え 、 地 方 の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 に も5 投 資 さ れ る と 期 待 で き る 。 ③ 中 小 機 構 に よ る ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス の 開 示 制 度 野 村 ( 2 0 1 4 a ) で は C V C の 取 り 組 み へ の 足 掛 か り と し て 「 先 行 す る 企 業 の ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス の 積 み 上 げ 」 が 不 可 欠 と さ れ 、 滝 澤 ・ 宮 川 ( 2 0 1 5 ) も 「 投 資 案 件 情 報 の 共 有 や ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 間 で の 人 的 交 流 を 促 進 す る よ う な 公 的1 0 プ ラ ッ ト ホ ー ム を 整 備 す る こ と が 一 つ の 政 策 的 取 り 組 み と し て 期 待 さ れ る 」 と 述 べ て い る 。 日 本 で は 1 9 9 0 年 代 以 降 、 数 多 く の 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 支 援 策 が 取 ら れ て き た が 、 結 果 が ど の よ う に な っ た か の 検 証 が 不 十 分 と の 指 摘 が あ る 4 9 。 ま た V C に 関 し て は 、 ベ ン チ ャ ー エ ン タ ー プ ラ イ ズ セ ン タ ー 等 が 情 報 を 収 集 し て い る が 、 不 十 分 で あ り 、 C V C に 関 し て も 情 報 量 が 少 な い の が 現 状 で あ1 5 る 。 こ の よ う な 情 報 量 や プ ラ ッ ト ホ ー ム の 不 足 は さ ら な る 失 敗 や 回 避 を 呼 び 、 C V C を 成 功 さ せ る た め の 大 き な 足 枷 と な る 。 し た が っ て 、 我 々 は 中 小 機 構 に よ る 情 報 収 集 ・ 公 開 を 提 言 す る 。 具 体 的 に は 、 C V C ・ 銀 行 V C が 出 資 す る フ ァ ン ド に 中 小 機 構 が 出 資 や 公 的 機 関 と し て の ハ ン ズ オ ン 支 援 を 行 う 際 、 そ の フ ァ ン ド が 「 ど の よ う に 投 資 判 断 を 行 っ た か 」 「 投2 0 資 後 の ハ ン ズ オ ン 支 援 を ど の よ う に 行 い そ の 結 果 ど の よ う な 影 響 が で た か 」 「 被 投 資 先 の ハ ン ズ オ ン 支 援 に 対 す る 意 見 」 「 C V C と 銀 行 系 V C の 共 同 出 資 に よ る 影 響 」 を 情 報 収 集 す る 。 こ れ ら を 中 小 機 構 が 公 表 す る こ と に よ り 、 C V C の 有 用 性 の 効 果 検 証 、 新 た に C V C を 実 施 し よ う と す る 企 業 へ の ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス と な る 。2 5 4 9 石 井 ( 2 0 1 1 )
  • 44. 44 こ の よ う に 、 「 ベ ン チ ャ ー 企 業 投 資 促 進 税 制 の 恒 久 化 」 「 認 定 フ ァ ン ド 要 件 の 緩 和 」 「 中 小 機 構 に よ る C V C の 情 報 開 示 」 を 行 う こ と で 、 共 同 出 資 フ ァ ン ド が よ り 活 性 化 さ れ 、 リ ス ク の 高 い 研 究 開 発 型 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 へ の 資 金 調 達 が 促 進 さ れ る こ と に な る で あ ろ う 。 5 終 章 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 成 長 や 新 産 業 の 育 成 が 国 策 と し て 挙 げ ら れ て い る 中 、 我 々 は 資 金 調 達 に お け る 問 題 点 を 指 摘 し 、 そ の 解 決 策 と し て 「 信 用 保 証 制 度 改 革 」 「 C V C の 活 性 化 」 を 提 言 し た 。 信 用 保 証 制 度 改 革 に お い て は 、 大 き な 問 題 点 で あ る モ ラ ル ハ ザ ー ド を 解 消 す1 0 る た め に 「 金 融 機 関 別 の 保 証 割 合 設 定 」 を 設 け 、 金 融 機 関 に 適 切 な モ ニ タ リ ン グ を 行 う イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 え る こ と で 、 金 融 機 関 が 引 き 起 こ す モ ラ ル ハ ザ ー ド の 是 正 を 促 す こ と に な る 。 ま た 、 C V C の 活 性 化 を 図 る た め に 「 C V C と 銀 行 系 V C ・ 中 小 機 構 に よ る 共 同 出 資 フ ァ ン ド 創 出 」 の よ う な 、 目 利 き 能 力 を 補 完 し た リ ス ク マ ネ ー を 供 給 す べ き で あ る 。1 5 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 の 経 営 は 資 金 調 達 だ け で 成 り 立 つ こ と は な く 、 資 金 供 給 主 体 と の 間 に お け る 双 方 の 情 報 の 非 対 称 性 を 解 消 し た 上 で 、 技 術 や ノ ウ ハ ウ 、 人 材 と い っ た 経 営 資 源 を 確 保 し な け れ ば な ら な い 。 そ の た め に は 、 様 々 な 企 業 や 公 的 機 関 と 連 携 す る 場 、 い わ ゆ る 「 ベ ン チ ャ ー エ コ シ ス テ ム 」 を 構 築 ・ 整 備 し 、 民 間 企 業 が 自 ら 中 小 ・ ベ ン チ ャ ー 企 業 支 援 を 行 え る 制 度 設 計 を 検 討 し な け2 0 れ ば な ら な い 。
  • 45. 45 【 参 考 文 献 ・ 資 料 】 磯 崎 哲 也 ( 2 0 1 4 ) 『 起 業 の エ ク イ テ ィ ・ フ ァ イ ナ ン ス 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社 入 山 章 栄 ( 2 0 1 5 ) 「 第 1 4 回 組 織 学 習 ・ イ ノ ベ ー シ ョ ン の 理 論 1 」 『 D i a m o n d H a r v a r d B u s i n e s s R e v i e w 』 1 1 月 号 大 庫 直 樹 ( 2 0 1 3 ) 『 あ し た の た め の 銀 行 学 2 』 株 式 会 社 フ ァ ー ス ト プ レ ス5 小 野 有 人 ( 2 0 0 7 ) 『 新 時 代 の 中 小 企 業 金 融 』 東 洋 経 済 後 藤 康 雄 ( 2 0 1 4 ) 『 中 小 企 業 の マ ク ロ パ フ ォ ー マ ン ス 』 日 本 経 済 新 聞 出 版 社 齋 藤 茂 樹 ( 2 0 1 2 ) 『 イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ エ コ シ ス テ ム と 新 成 長 戦 略 』 丸 善 出 版 事 業 再 生 研 究 機 構 ( 2 0 0 7 ) 『 A B L の 理 論 と 実 践 』 株 式 会 社 商 事 法 務 日 本 政 策 投 資 銀 行 ( 2 0 1 2 ) 『 コ ン サ ル テ ィ ン グ 実 務 体 系 』 株 式 会 社 き ん ざ い1 0 藪 下 史 郎 ・ 武 士 俣 友 生 ( 2 0 0 6 ) 『 中 小 企 業 金 融 入 門 』 東 洋 経 済 新 報 社 野 間 幹 晴 ( 2 0 1 4 ) 「 コ ー ポ レ ー ト ・ ベ ン チ ャ ー ・ キ ャ ピ タ ル に よ る イ ノ ベ ー シ ョ ン と 企 業 価 値 の 探 求 」 『 一 橋 ビ ジ ネ ス レ ビ ュ ー 』 第 6 2 巻 2 号 、 9 0 - 1 0 3 頁 村 本 孜 ( 2 0 1 5 ) 『 中 小 企 業 支 援 ・ 政 策 シ ス テ ム ― 金 融 を 中 心 と し た 体 系 化 』 蒼 天 社 出 版1 5 松 田 修 一 ( 2 0 1 4 ) 『 ベ ン チ ャ ー 企 業 〈 第 4 版 〉 』 日 本 経 済 新 聞 出 版 社 家 森 信 善 ( 2 0 1 0 ) 『 地 域 の 中 小 企 業 と 信 用 保 証 制 度 』 中 央 経 済 社 吉 井 一 洋 ( 2 0 1 5 ) 「 日 本 の ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 の 問 題 点 」 『 金 融 財 政 事 情 』 2 0 1 5 年 9 月 1 4 日 号 2 0 石 井 芳 明 ( 2 0 1 1 ) 「 ベ ン チ ャ ー 政 策 評 価 の 事 例 研 究 - ベ ン チ ャ ー フ ァ ン ド 事 業 に よ る リ ス ク 資 金 供 給 の 有 効 性 - 」 R I E T I P o l i c y D i s c u s s i o n P a p e r S e r i e s , 1 1 - P - 0 1 6
  • 46. 46 植 杉 威 一 郎 ・ 小 野 有 人 、 他 ( 2 0 1 4 ) 「 金 融 円 滑 化 法 終 了 後 に お け る 金 融 実 態 調 査 結 果 の 概 要 」 R I E T I D i s c u s s i o n P a p e r S e r i e s 1 5 - J - 0 2 8 植 杉 威 一 郎 ・ 内 田 浩 史 ・ 水 杉 裕 太 ( 2 0 1 4 ) 「 日 本 政 策 金 融 公 庫 と の 取 引 関 係 が 企 業 パ フ ォ ー マ ン ス に 与 え る 効 果 の 検 証 」 R I E T I D i s c u s s i o n P a p e r S e r i e s 1 4 - J - 0 4 55 植 杉 威 一 郎 、 他 ( 2 0 0 9 ) 「 金 融 危 機 下 に お け る 中 小 企 業 金 融 の 現 状 」 R I E T I D i s c u s s i o n P a p e r S e r i e s 0 9 - j - 0 2 0 植 杉 威 一 郎 ( 2 0 0 6 ) 「 中 小 企 業 金 融 安 定 化 特 別 保 証 制 度 の 検 証 」 『 信 用 保 険 月 報 』 浦 木 忠 子 ( 2 0 1 2 ) 「 C V C は 企 業 の 持 続 可 能 性 を 促 進 す る ツ ー ル に な り え る か ? 」1 0 『 研 究 技 術 計 画 』 内 田 交 謹 ・ 孫 月 ( 2 0 1 3 ) 「 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 投 資 行 動 と パ フ ォ ー マ ン ス に 関 す る 実 証 分 析 」 信 託 研 究 奨 励 金 論 集 第 3 4 号 岡 田 悟 ( 2 0 1 3 ) 「 信 用 保 証 制 度 を め ぐ る 現 状 と 課 題 」 国 立 国 会 図 書 館 I S S U E B R I E F N U M B E R 7 9 4 ( 2 0 1 3 . 6 . 2 5 . )1 5 価 値 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 5 ) 「 研 究 開 発 型 ベ ン チ ャ ー の 投 資 判 断 に 関 す る 調 査 報 告 書 」 金 融 庁 ( 2 0 1 5 ) 「 地 域 金 融 機 関 の 地 域 密 着 型 金 融 の 取 組 み 等 に 対 す る 利 用 者 等 の 評 価 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 等 の 概 要 」 金 融 庁 ( 2 0 1 3 ) 「 新 規 ・ 成 長 企 業 へ の リ ス ク マ ネ ー の 供 給 の あ り 方 等 に 関 す る2 0 ワ ー キ ン グ ・ グ ル ー プ 」 金 融 庁 ( 2 0 0 3 ) 「 リ レ ー シ ョ ン シ ッ プ バ ン キ ン グ の 機 能 強 化 に 関 す る ア ク シ ョ ン プ ロ グ ラ ム 」
  • 47. 47 倉 林 陽 ( 2 0 1 4 ) 「 米 国 コ ー ポ レ ー ト べ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル の ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス の 分 析 と 日 本 の 大 手 企 業 に お け る 課 題 」 同 志 社 大 学 技 術 ・ 企 業 ・ 国 際 競 争 力 研 究 セ ン タ ー ワ ー キ ン グ ペ ー パ ー 1 4 - 0 4 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 a ) 「 研 究 開 発 型 ベ ン チ ャ ー 事 業 支 援 ( V C 等 連 携 に よ る ベ ン チ ャ ー 事 業 化 支 援 事 業 ) 説 明 資 料 」5 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 5 b ) 「 企 業 の ベ ン チ ャ ー 投 資 促 進 税 制 に つ い て 」 2 0 1 5 年 5 月 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 a ) 「 財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 投 融 資 分 科 会 」 2 0 1 4 年 1 0 月 1 7 日 経 済 産 業 省 ( 2 0 1 4 b ) 「 A B L の 普 及 促 進 の 政 策 的 意 義 に つ い て 」 2 0 1 4 年 2 月 経 済 産 業 省 ( 2 0 0 8 ) 「 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 創 出 ・ 成 長 に 関 す る 検 討 会 最 終 報 告1 0 書 」 2 0 0 8 年 4 月 経 済 同 友 会 ( 2 0 1 3 ) 「 中 小 企 業 の 成 長 力 を 高 め る 地 域 金 融 機 関 へ 」 2 0 1 3 年 3 月 小 西 大 ・ 長 谷 部 賢 ( 2 0 0 2 ) 「 公 的 信 用 保 証 の 政 策 効 果 」 一 橋 大 学 機 関 リ ポ ジ ト リ H E R M E S - I R , D e p a r t m e n t a l B u l l e t i n P a p e r1 5 商 工 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 4 ) 「 中 小 企 業 と 投 資 フ ァ ン ド 」 商 工 総 合 研 究 所 ( 2 0 1 3 ) 「 中 小 企 業 各 政 府 系 金 融 機 関 の 役 割 」 商 工 組 合 中 央 金 庫 ( 2 0 1 5 ) 「 商 工 組 合 中 央 金 庫 デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー 誌 」 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 a ) 「 中 小 企 業 白 書 2 0 1 5 年 版 」 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 5 b ) 「 中 小 企 業 景 況 調 査 ( 2 0 1 5 年 7 - 9 月 期 ) 」2 0 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 4 ) 「 産 業 競 争 力 強 化 法 に 基 づ く 創 業 支 援 の 促 進 に つ い て 」 2 0 1 4 年 1 月 中 小 企 業 庁 ( 2 0 1 3 ) 「 財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 投 融 資 分 科 会 参 考 資 料 」 2 0 1 3 年 1 0 月 2 3 日