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抽象表現を具体的表現に変えるトレーニングの試み①
           ~数式や曲線と円から物語を作ろう!!~


                          学校法人朝日学園 朝日塾小学校
                                 教諭 佐久間賢志


Ⅰ はじめに


 この実践は、私が日頃から児童に身に付けさせたいと考えている「抽象的なものを具体化
する」
  「具体的なものを抽象化する」という二つのスキルのうち、前者を取り扱ったものであ
る。この二つのスキルを自由自在に扱うことができれば、あるテーマで文章を書く取り組み
(小学校では作文)をするときにかなり伝わる文章を書くことができるようになるのでは
ないか?という仮説があるからである。また、それは文章化のためのスキルにはとどまらな
いのではないか。一つの事例から、何かを学び一般化することは、
                             「抽象化」であり、それを別
の事象に応用することは「具体化」と考えているのである。学習者にとって、 「抽象化」
                                   この    と
「具体化」 学習の切り口として持っておくべきスキルだと考える。
     は、                        今回、小学校3年生か
ら6年生までの児童に、同じスタイルの授業を行ったわけであるが、考察に値する作文がた
くさん生まれた。後述するが、数式を文章化する実践は、概ね失敗で、曲線と円から物語を作
る実践は概ね成功だと言える。多くの方に、この実践をご笑覧いただき、ご指導いただけれ
ば幸いです。


Ⅱ 試みその①(「1+1=2」を物語にしよう)


 試みの一つ目は、
        「数式を物語にする」という活動です。四則計算のうち、足し算を文章化
させる活動をしました。こちらの意図することがなかなか伝わらなかったこともあり、「物
語」というよりは、
        「説明的な文章」を書いてしまう児童が多く見られた。初めのうちは、
                                       「1
+1を人に伝わるように文章化して欲しい」という指示の仕方だったので、児童も「物語」を
書いていいのか、
       「説明文」を書いていいのか混乱した様子だった。また、
                                「お話を作ってくだ
さい」という指示をしても、
            「問題文」を作ると勘違いし、なかなかうまく「物語作り」まで昇
華できずジレンマを感じたのが実際のところです。ただ、中には、こちらの意図を汲み、きち
んと物語文を書いた児童もいた。児童の文章を後に掲載するが、小学三年にして、1+1=
2という数式から、これだけの発想ができる子がいるということは、指導者としては希望の
光となった。個人の資質にもよるのだろうが、実践を重ね多くの児童が、想像力を働かせ、数
式から物語を作れるように指導できるように成りたいものである。
以下、児童の文章を3パターン掲載する。
 ・1+1の文章化:その①(説明文になってしまっている)
  たとえば、たされる数とあわせる記号とあわされる数にして、それでたとえば、ケシ
     ゴムが1こあって、それで友だちにケシゴムをもらったら、ケシゴムはあわせて2こ
     になるから1+1になる


 ・1+1の文章化:その②(問題文作成になってしまっている)
  ある日、マリコちゃんは、ねこを見つけました。お家にもって帰って、育てました。
     一週間たって、ある日、ねこがねこをうみました。合わせて何ひきですか?


 ・1+1の文章化:その③(きちんと物語文なっている)
  『一匹の犬』
  家に、元気な犬が一匹いました。
  「犬、いっぴきじゃあ、さみしいなぁ。」
  とかい主が言いました。その犬は、まだ、生まれて8ヶ月ぐらいだった犬です。かわ
     いくて、手のひらにのるような、小さい犬です。
     「でも、もう一匹かうと、おおさわぎになるかなぁ。」
     と思いました。でも、元気な犬一匹でも、なんかさびしい気持ちです。どっちにしよ
     うかまよっているうちに、夜中になってしまいました。
     そして、よく日、あまりもさびしいので、ペットやさんに行って、犬を買うことにし
     ました。
     「どんな犬がいいかなぁ。」
     とまよっている中、やっとえらべました。
     「この犬にしてください。」
     といって、もう一匹犬をかいました。そしたら、家の犬と、かった犬であわせて二匹
     になりました。
     「これで家に帰っても、さびしくないぞ。」
     と言って、歩いて、ペットやで買った犬といっしょに家に帰っていきました。


Ⅲ 試みその②(曲線と円を描き、グループで絵本を作ろう)


 次の取り組みは、個々人で曲線と円を描き、その後4~5人のグループになり、持ち寄っ
た絵を並べ、絵本(紙芝居)のように物語を作る活動である。前述の数式を物語にする活動
と違い、こちらの活動は多くの子が目を輝かせ、活動に参加し、おもしろい物語がたくさん
できた。活動(指示)の手順は次のようなものである。
 1   白い紙を配る。
 2   右端から左端へ一本の線を描くように指示する。(曲線・直線などを問わず、何本か
黒板で事例を示す。)
 3   線で区切られた上側に円を一つ描くように指示する。(場所や大きさは問わない。フ
     リーハンドで描かせ、楕円やつぶれた円も可)
 4   4~5人のグループを作る。
 5   持ち寄った絵を、お話になるように並べる。
 6   お話を作りながら、できたお話を原稿用紙に書かせる。


 作業そのものも簡単で、おもしろいストーリがたくさんできた。『全脳思考』のチャート
 で物語りを作るのにも似ていうるが、曲線がシルエットになり場所をイメージするきっ
 かけを作り、円の場所や大小や位置が感情の起伏を読み取るきっかけになっている気が
 した。
  児童が円からイメージした登場人物は以下のようなものがある。
  【男の子・玉・ボール・わたがし雲・シャボン玉・せんすいかん・まめもち・ゴリ
ラ・
      ピン球・スーパーボール・マカロン・ハンバーガー・ふうせん】
  当初の意図通り、円形から具体物がでてきたので、発想のトレーニングとしては、有
     効なのではないか。
     以下に、グループで話し合いながら作った物語と実際の絵を掲載する。児童が抱える
     内面を解釈したくなるような物語がたくさんできたので、是非、多くの方に実践して
     いただきたいと思う。


     その1『スーパーボール君のたび』



                                  




   スーパーボール君が階段であそんでいました。外を見ようとしたら、まどからおち
  てアイスクリームのコーンにはまってしまいました。自分の家にはいろうとしていた
  ら、しらない人の家にはいってしまいました。しらない子どもがいたので、いろいろ
  とあそばれてました。しらないお父さんが
  「しらない物であそぶな!!」
  と言ったので海になげられました。くじらの上にのったので、しおふきで、自分の家
  のやねにぶつかり、スーパーボール君がのびて、動かなくなりました。
  2、3日たって、かたまってしまい、お母さんにみつかってやねからとってもらいま
     した。それから、3、4日たってびょう院に行って、もとのすがたになおしてもらい
     ました。
その2『ふうせんのぼうけん』



                               



   今日は、友だちの家にふうくんがあそびに行くことになりました。とんでいくと人
  間にけられてどこかにとんでいってしましました。しばらくとんでいくと、がけにお
  ちてしまいと中の岩にあたってしまい、しぼんでしまいました。たおれているとアラ
  イグマに空気を入れてもらってまたどこかへとんでいきました。しばらくとんでいる
  とふかい谷におちていきました。下にはトランポリンがあり、ふうくんはそこへいっ
  て、またとんでいきました。つぎは、楽しそうなすべり台がありました。そこへ行っ
  てみるとおちてしまい、そして、またそこにトランポリンがありはねかえされてとん
  でいきました。しばらく行くとウォータースライダーがあって、そこへ行ったらはね
  かえされて山を下って上っていきました。また行くと下りざかがあって、そこへいっ
  たらぐにゃぐにゃの道があって、しばらくいくと明かりが見えて、ぶじ友だちの家に
  つきました。


Ⅳ おわりに(今後の課題)
 抽象と具象をいったりきたりする取り組みをもう少し段階的に、系統立ててやりたいと
いうのが本音である。数式を物語化するのは多少乱暴な気もしたが、回を重ねれば必ずでき
るようになり、数式に意味を児童独自の物語というラベリングができれば、公式を覚えたり
編み出したりする学習者へと成長するのではないかと期待している。また、線と円から物語
を作る活動では、児童やチームの内面を読み取ったり、解決策を見いだすきっかけになった
りするのではないかと感じる。
 今回の取り組みで感じたのは、線と円からお話を作る活動では、どの児童も目を輝かせ、
生き生きと活動に取り組んだ。今回の取り組みの大きな特徴は、
                            「正解がない」というところ
にあります。
     「正解がない」問題に、積極的に取り組んでこそ、今後の社会に役立つ人材へと
成長すると確信している。今回の実践をきっかけに、今後も様々なアプローチを続けたい。

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  • 2.  ・1+1の文章化:その①(説明文になってしまっている)   たとえば、たされる数とあわせる記号とあわされる数にして、それでたとえば、ケシ ゴムが1こあって、それで友だちにケシゴムをもらったら、ケシゴムはあわせて2こ になるから1+1になる  ・1+1の文章化:その②(問題文作成になってしまっている)   ある日、マリコちゃんは、ねこを見つけました。お家にもって帰って、育てました。 一週間たって、ある日、ねこがねこをうみました。合わせて何ひきですか?  ・1+1の文章化:その③(きちんと物語文なっている)   『一匹の犬』   家に、元気な犬が一匹いました。   「犬、いっぴきじゃあ、さみしいなぁ。」   とかい主が言いました。その犬は、まだ、生まれて8ヶ月ぐらいだった犬です。かわ いくて、手のひらにのるような、小さい犬です。 「でも、もう一匹かうと、おおさわぎになるかなぁ。」 と思いました。でも、元気な犬一匹でも、なんかさびしい気持ちです。どっちにしよ うかまよっているうちに、夜中になってしまいました。 そして、よく日、あまりもさびしいので、ペットやさんに行って、犬を買うことにし ました。 「どんな犬がいいかなぁ。」 とまよっている中、やっとえらべました。 「この犬にしてください。」 といって、もう一匹犬をかいました。そしたら、家の犬と、かった犬であわせて二匹 になりました。 「これで家に帰っても、さびしくないぞ。」 と言って、歩いて、ペットやで買った犬といっしょに家に帰っていきました。 Ⅲ 試みその②(曲線と円を描き、グループで絵本を作ろう)  次の取り組みは、個々人で曲線と円を描き、その後4~5人のグループになり、持ち寄っ た絵を並べ、絵本(紙芝居)のように物語を作る活動である。前述の数式を物語にする活動 と違い、こちらの活動は多くの子が目を輝かせ、活動に参加し、おもしろい物語がたくさん できた。活動(指示)の手順は次のようなものである。 1 白い紙を配る。 2 右端から左端へ一本の線を描くように指示する。(曲線・直線などを問わず、何本か
  • 3. 黒板で事例を示す。) 3 線で区切られた上側に円を一つ描くように指示する。(場所や大きさは問わない。フ リーハンドで描かせ、楕円やつぶれた円も可) 4 4~5人のグループを作る。 5 持ち寄った絵を、お話になるように並べる。 6 お話を作りながら、できたお話を原稿用紙に書かせる。  作業そのものも簡単で、おもしろいストーリがたくさんできた。『全脳思考』のチャート  で物語りを作るのにも似ていうるが、曲線がシルエットになり場所をイメージするきっ かけを作り、円の場所や大小や位置が感情の起伏を読み取るきっかけになっている気が した。  児童が円からイメージした登場人物は以下のようなものがある。  【男の子・玉・ボール・わたがし雲・シャボン玉・せんすいかん・まめもち・ゴリ ラ・ ピン球・スーパーボール・マカロン・ハンバーガー・ふうせん】   当初の意図通り、円形から具体物がでてきたので、発想のトレーニングとしては、有 効なのではないか。 以下に、グループで話し合いながら作った物語と実際の絵を掲載する。児童が抱える 内面を解釈したくなるような物語がたくさんできたので、是非、多くの方に実践して いただきたいと思う。 その1『スーパーボール君のたび』          スーパーボール君が階段であそんでいました。外を見ようとしたら、まどからおち   てアイスクリームのコーンにはまってしまいました。自分の家にはいろうとしていた   ら、しらない人の家にはいってしまいました。しらない子どもがいたので、いろいろ   とあそばれてました。しらないお父さんが   「しらない物であそぶな!!」   と言ったので海になげられました。くじらの上にのったので、しおふきで、自分の家   のやねにぶつかり、スーパーボール君がのびて、動かなくなりました。   2、3日たって、かたまってしまい、お母さんにみつかってやねからとってもらいま した。それから、3、4日たってびょう院に行って、もとのすがたになおしてもらい ました。
  • 4. その2『ふうせんのぼうけん』          今日は、友だちの家にふうくんがあそびに行くことになりました。とんでいくと人 間にけられてどこかにとんでいってしましました。しばらくとんでいくと、がけにお ちてしまいと中の岩にあたってしまい、しぼんでしまいました。たおれているとアラ イグマに空気を入れてもらってまたどこかへとんでいきました。しばらくとんでいる とふかい谷におちていきました。下にはトランポリンがあり、ふうくんはそこへいっ て、またとんでいきました。つぎは、楽しそうなすべり台がありました。そこへ行っ てみるとおちてしまい、そして、またそこにトランポリンがありはねかえされてとん でいきました。しばらく行くとウォータースライダーがあって、そこへ行ったらはね かえされて山を下って上っていきました。また行くと下りざかがあって、そこへいっ たらぐにゃぐにゃの道があって、しばらくいくと明かりが見えて、ぶじ友だちの家に つきました。 Ⅳ おわりに(今後の課題)  抽象と具象をいったりきたりする取り組みをもう少し段階的に、系統立ててやりたいと いうのが本音である。数式を物語化するのは多少乱暴な気もしたが、回を重ねれば必ずでき るようになり、数式に意味を児童独自の物語というラベリングができれば、公式を覚えたり 編み出したりする学習者へと成長するのではないかと期待している。また、線と円から物語 を作る活動では、児童やチームの内面を読み取ったり、解決策を見いだすきっかけになった りするのではないかと感じる。  今回の取り組みで感じたのは、線と円からお話を作る活動では、どの児童も目を輝かせ、 生き生きと活動に取り組んだ。今回の取り組みの大きな特徴は、 「正解がない」というところ にあります。 「正解がない」問題に、積極的に取り組んでこそ、今後の社会に役立つ人材へと 成長すると確信している。今回の実践をきっかけに、今後も様々なアプローチを続けたい。