この発表資料は,2018年10月25日にパシフィコ横浜で開催された,「第52回日本てんかん学会学術集会(The 52nd Congress of the Japan Epilepsy Society )」で報告した資料です.
Created by 上原賢祐
詳細:https://kenyu-life.com/2018/10/30/epilepsy_modeling/
【目的】
これまで経験的,複合的に判別されていたてんかん波に関して,脳波の振動モデルを構築し,てんかん波判別の実現可能性について検討することを目的としている.
【方法】
てんかんモデルラット4体のアルファ波帯域脳波を解析対象とする.解析方法は,生体信号モデルとしてしばしば利用される非線形振動子により脳波をモデル化し,モデル内に含まれるパラメータを実験的に同定する方法とした.モデルは,減衰性と復元性,非線形性,外部入力の信号強度,各周波数および位相差パラメタを有する.六つのモデルパラメタを約0.5秒の解析窓毎に,モデルの出力と実波形の誤差で定義される評価関数を最小とするように同定した.解析には,正常時とてんかん波の振幅が十分に発達した明らかな異常時の脳波を各10秒間ずつ使用した.同定した値からパラメタ毎の区間平均を算出し,正常時の値を基準に正規化を行った.そして得られた値を用いて,同定したパラメータの特性を正常時と異常時で比較し,てんかん波判別の実現可能性について検討した.
【結果】
4体を解析した結果,異常時の非線形パラメタは正常時の値の25%以下まで減少することが確認された.脳波などの生体システムでは,正常状態においてカオス的に振る舞いを示すが,異常が発生するとカオスが消失し周期的になることが知られており,我々の脳波解析手法においてもそれを証明することができ,本手法の有効性が確認された.さらに,信号強度パラメータは約3倍以上に増加し,測定点の脳波と周囲から伝わる波の角周波数分布にも特徴が見られた.
【結論】
本研究では,てんかん波判別の実現可能性について検討することを目的とし,てんかんモデルラットのアルファ波帯域脳波を解析した結果,正常時に比べて異常時の非線形パラメタは減少し,外部入力の信号強度を表すパラメタは増加した.さらに,測定点の脳波と周囲から伝播する波の角周波数に関するパラメタの分布範囲に違いが見られた.