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公道扱い。集会には管理者と警察両方
の事前許諾が必要だが,道路として 公
共の福祉 が優先され,集会が許可され
ない場合も(管
理者が)。警察が
届けを却下する
ことはない
通路
ジャズフェスティバルなど,
公的なイベントに限って,演奏
などが許諾される場合も。
管理者にのみ事前許諾申請が必要
広場
浜松駅 北口 駅前広場KITARA
通路? 広場?
北口 公共広場 は多くのイベントが開催され
ている(管理は浜松まちづくり公社)。だが,
観客が集まりすぎると,駅構内との通行に障
害が生じているんだが……。
集会など「表現の自由」を制限する
法律は国レベルで制定できない(青少
年健全育成条例と同じ)
「集会,集団行進及び集団示威運動
に関する条例」(東京都など)で規制。
暴動を抑制し,秩序を維持するため
 例えば,事前届け出をしなかったり,公安委員会の指
定条件に反して集団示威運動などを行った主催者,指
導者又は 動者には1年以下の自由刑又は30万円以下
の罰金刑
公安条例
1970年代,
雑誌の思想,
デザインの思想。
メディア・デザイン論③
2005年,スタンフォード大学卒業式
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参入障壁が低い(出版取次と取引でき
なくても,書店との直取引や通販が
ありうる)
単発の書籍ではなく定期刊行物なの
で,作り手と受け手との間に親密な
関係を形成しやすい(なじみの関係)
写植製版の登場で,活版に比
べてコストが低廉化し,
デザインにも凝れる
なぜ70年代に雑誌だったのか?
若者文化における雑誌とは何かの思
想の広報・宣伝手段ではない
ある意識を共有するコミュニティの
内部連絡メディアである
雑誌とはコミュニティ形成のための
メディアであり,コミュニティ内部
での双方向での情報流通を保証する
手段なのである
雑誌の性格
『ニッポン戦後サブカルチャー史』第4回(2014年,NHK Eテレ)より
ヒッピーなど対抗文化を生き
る人たちが,必要な道具を見つ
け,それを手に入れるための
メディア=『WEC』
ブランドはコンピュータに
も土地鑑があり, マルチメ
ディア と総称された初期
PC文化とも接点があった
対抗文化の思想
ブランドが住んでいたメン
ローパークにはfacebook
がいま本社を構えている
『WEC』の発行元は“自
由大学”の運営組織
あるテーマのもとに,書物・道具・
サービスを集めて1冊に編集する。
1968年創刊
カタログ雑誌という方法論
最終号(71年)で発行部数が150万に
「地球全体を意識する」「アクセス
(入手)の方法の提示」を重
視する編集方針が支持
アメリカはそも
そも生活必需財
をカタログ通販
で購入する伝統
カタログという伝統
双方とも使用フォント
はHelvetica
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「共通する意志を持つ人が集まり,採
算を考えずに作られる」のが同人誌
営利出版ではなく,運動の成果として
雑誌(刊行物)がある,イデア型の出版
と言える
『WEC』もスチュワート・ブランド
の元に集まった人たちが対抗文化を支
援するために創った,壮大な同人誌
だったと総括できる(PDFで$5/冊)
商業誌と 同人 誌(運動体の雑誌)
①道具として有益なもの
②自立の教育に適切なもの
③上質かつ低価格なもの
④郵便で入手が可能なもの
 システム全体の理解
 シェルターと土地の利用
 産業と手工芸
 コミュニケーション
 コミュニティ
 放浪
 学習
カタログ収録の基本方針
WECの母体のポイント・ファウン
デーションは 自由大学 (学校に行か
ない人のための学校)の運営組織であ
り,『WEC』は「自己教育」(自分
のために自分による自分を育てる教
育)のための「教科書」でもあった
『WEC』で紹介した商品は本部にあ
る Whole Earth Truck Store で購
入できた
教育革命 対抗文化
産業社会への信頼 お約束事群の破壊
科学技術への信奉 神秘(自然)主義
意識(自我)への信頼 現実からの離脱
メリトクラシーの貫徹 友愛・連帯
物欲の追求 清貧/自然への回帰
「成熟」の強制 「成熟」の拒否
マスメディアへの信頼 身の丈に合ったメディア
ブランドは「マクビ
ーカード」と呼ばれる
ノッチカードで情報管
理していた。例えば州
(50)は,2の6乗(64)
以内なので,六つの穴
で管理できる→コンピ
ュータへの親和性
情報管理
「ツールやアイディアへのアクセ
ス」を提供する『WEC』は,「それ
らを求める人」である受け手が持つ
潜在的力にはたらきかけ,それを開
花させ機能させる「エンパワーメン
ト」の手段として機能したと言える
それこそが『WEC』とインターネッ
トとをつなぐ共通性である
エンパワーメント
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『WEC』の基本情報は,商品名,
価格,連絡先(住所/電話番号),そし
て顕名制の推薦文(レコメンド)
新しいカタログが出るたびにレコメ
ンド情報はアップデートされた
『WEC』は「レコメンド欄を介し
て同好の士がつながる仕組み」も用
意していた(→80年代のWELLとい
う電子掲示板に発展する)
リコメンド 思想を伝える『WEC』フォロワー
ヒッピーのコミューン
間の情報共有を目指
した『Kaliflower』
エコロジカル・ライフ
スタイルに特化した
グリーンウオッシュ
神秘学,ヨガ,代
替エネルギーなど
ニューエイジ
既成の体制(資本)の押しつけによる情
報・知識ではなく, 必要と思われる実
用知識や自己教育のための知的道具 を
新しい世代が検討選択して編集したこと
サバイバル(生き残る)
ノマド(遊牧生活)
セルフエイド(自足)
現実には急進的〈自然に帰れ〉ではなく,
人間がエコシステムの一部だと自覚する
こと
『WEC』の意義
既存の社会に対して直接的に訴えか
ける方向ではなく,社会・文化のあ
り方から退却し,オルタナティブ(従
来のものとは根本的に異なる,別の)
生活の在り方や社会の仕組みを模索
する方向
オルタナティブ
1972年からリード大学に学んだジョ
ブズは,禅・瞑想・インド哲学・菜
食主義など多様なヒッピー・カル
チャーに傾倒する。その教導誌が
『WEC』だったと思われる
エコロジー・バックパッキング・代
替エネルギー(反原発)など,いまある
社会(文化)運動 の原点もまた
『WEC』にある
ジョブズの愛読 書
長髪,ジーンズ,自然食,ロック音楽
フリーセックス,同性愛,フェミニズム
禅,ドラッグによる精神的解放(ヒッ
ピー)
超科学的現象への信頼(ニューエイジ)
ミニコミ(フライヤー),フリーラジオ,
CB無線などオルターナティブメディア
コミューン(共同生活)→エコ・ヴィレッ
ジ
対抗文化が生んだもの
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『ニッポン戦後サブカルチャー史』第4回(2014年,NHK Eテレ)より
「新宿プレイマップ」(69∼72)。編
集長は本間健彦。新都心新宿PR委員
会(会長:田辺茂一紀伊國屋書店社主)。
演劇人,作家らが委員会に名を連ねる。
街を呼吸するタウン誌
「新宿メディアポリス宣言」(69,抜粋)
新宿は,日本の青春なのだ。
青春を動かすものは,権力でも,金でもない。
青春を動かすもの。それはメディアだ。
私たちは新宿を「メディア」にあふれた都市に
したい。
新宿では,すべてのものが,すべてのことが,
「メディア」となる可能性を孕んでいる。
新宿は文明の子宮なのだ。
すべての萌芽が,文明の胎児がここで目覚め,
育っていく。
1970年代の日本ではマスコミに対峙
するミニコミとして,若者が創刊す
る雑誌が注目された。部数が少なく,
頒布地域も限定し(せざるをえず),扱
う領域も狭めたがゆえに「ミニコ
ミ」という呼び方が定着した
そうした「ミニコミ誌」の多くは,
『WEC』の 編集革命 の影響を色濃
く受けていた
マスコミとミニコミ 商業カタログ雑誌の視点
平凡出版(マガジンハウス)は,カリフォルニアを中心に
アメリカ製の商品を詰め込んだムック(75年)に続き,シ
ティボーイ向け雑誌として「POPEYE」を創刊(76年)
植草甚一責任編集で晶文社か
ら創刊の大判雑誌。誌名商標権
の問題などもあり,4号でJICC「宝島」
に移行。植草甚一はサブカル好事家
「ワンダーランド」
植草はミステリ,
ジャズ,映画,海
外雑誌,ダンディ
ズムなど,1970年
代の若者文化の中
で,〈信頼するに
足る唯一無二の大
人〉としてサブカ
ル世界を席巻した
『全都市カタログ』
月刊「宝島」(JICC出版局)は,1975年3月・11月に
「The Manual for Cityboys」のカタログ特集。76年
に『全都市カタログ』をムックで発売。日本ではアー
スではなくシティに変換されている
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『ニッポン戦後サブカルチャー史』第4回(2014年,NHK Eテレ)より
中央大学学生の矢内廣らが『ぴあ』
を創刊(72年)。映画館の上映情報・
コンサート情報を網羅的に掲載した
雑誌。論評・批
評はせず,中立的
情報提供に徹した
評価するのは受け
手の側である
エンタメ生活情報誌
「ぴあ」類似のコンセプトの「京阪神Lマガジ
ン」は1977年3月に創刊。
編集側は「何が面白いか/何に価値が
あるのか」という判断を意識的に避
け,可能な限り多くの情報を網羅的
に提示するように努める
受け手側がその情報を駆使して,新
たな価値を発見し,創造していく。
その過程で新たなパワーを得る
確かにジョブズが言う「ペーパー
バック時代のGoogle」である
カタログ雑誌という革命
映画の上映時間案内は新聞(広告)か,
映画館で配付されるチラシか小冊子で
しか知ることができなかった
「ぴあ」の登場で,自分の行動範囲ぎ
りぎりの情報を網羅的に1冊で知るこ
とができた
つまり,読む人の生活スタイル,情報
の受け取り方,情報行動の様式を変え
た。それがメディアデザインの本質だ
生活のスタイルを変える
大喜利系ネタ雑誌『ビックリハウス』
(パルコ出版,74年),全面投稿雑誌
『ポンプ』(78年)が創刊。後者は選別
なしに投稿を並列に並べる手法(選別は
読者)。前者は,ラジ
オの投稿と同様,編
集者により「芸の優
劣」が評価された
投稿雑誌
全面投稿雑誌『ポンプ』
の誌面と「取扱い説明書」
読者と完全に双方向な
メディアを1970年代に
志向していたことがわか
る
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『ニッポン戦後サブカルチャー史』第4回(2014年,NHK Eテレ)より 『ニッポン戦後サブカルチャー史』第4回(2014年,NHK Eテレ)より
ロックの浸透につれてレビュー/評論
誌が創刊『ミュージック・マガジン』
(69/4),『ロッキング・オン』(72)
など。後者は読者投稿誌。玉石混淆で,
しばしばロックや音
楽から逸脱していく
「ごった煮マガジン」
になっていく
ロック雑誌
松岡正剛・戸田ツトムらが創刊(工
作舎)。領域を超越した知の集積(プ
リコラージュ)という編集手法は
『WEC』直系と言える
思想,建築,科学,生活な
ど「カウンター思想誌」の色
彩が濃い
『遊 オブジェマガジン』(71年)

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