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探求の道 Lead Clearly 1. 探求の道 Lead Clearly
- 継続した研究活動 -
大阪市立大学医学部附属病院
中央放射線部
片山 豊
2021 年 10 月 03 日
第 65 回近畿支部学術大会
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本講演内容に利益相反事項はありません.
2. 自己紹介
[職歴]
• 1998 年: オートバイ用マフラーの開発・製造
• 2003 年: 大阪大学医学部附属病院
• 2004 年: 市立泉佐野りんくう総合医療センター
• 2006 年: 社会医療法人仙養会 北摂総合病院
• 2007 年: 大阪市立大学医学部附属病院
[研究歴]
• 2006 年: モンテカルロシミュレーションを用いた医療被ばくの線量評価
• 2010 年: スパースコーディングを用いたステレオマッチング
• 2013 年: バイラテラルフィルタを用いたデノイズ処理
• 2014 年: スパースコーディングを用いた超解像
• 2017 年: 深層学習を用いた超解像
• 2018 年: 超解像を用いたデノイズ処理
• 2019 年: 敵対的生成ネットワークを用いた放射線画像の生成
• 2020 年: 非参照型メトリクスを用いた放射線画像の評価
[学会]
• 2021 年: 日本放射線技術学会 近畿支部 研究教育委員会 委員 趣味で古い電子機器を GAN で再現
放射線科医局にて撮影 (2018 年 3 月)
3. 4. 1. 学術活動の動機 (モチベーション)
• 診療放射線技師を志した動機
• 救急医療に携わりたい
• 困っている人の役に立ちたい
⇒ 救急医療以外でも人の役に立ちたい
• 先輩の影響
• 医用画像処理の研究をしていた
⇒ 先輩と同じフィールドに立ちたい
• 研究を通じて
診療の役に立つ技術の確立し普及したい
株式会社リジットの山本修司さん
(2009 年 10 月)
大阪大学病院の長谷川浩典さん
(2004 年 3 月)
5. 1. 学術活動の動機 (モチベーション)
• 無条件に研究に協力してくださる非医療従事者の共同研究者
日浦慎作先生 (兵庫県立大学) 上田健太郎さん (古河電工)
第6回 New Clear Imaging Conference
2018 年 1 月 27 日
企業の方ですが
利益相反はありません.
6. 1. 学術活動の動機 (モチベーション)
• 大学病院だから
• 比較的装置の更新頻度が高い
• 様々なメーカ様の協力が得やすい
• 相談できる先輩が多い
⇒ 研究がし易い環境
• 研究も仕事 (だと思っている)
⇒ 学術活動が評価される体系がある
• 大学病院故にセクショナリズムが強い
⇒ 部門でカテゴライズされる
⇒ 学術発表している部門の人間
7. 1. 学術活動の動機 (モチベーション)
• 新しいことをするのが楽しい⇒ 学術活動は Lifework
第40回 日本核医学技術学会総会学術大会
2020 年 11 月 13 日
第 60 回 近畿支部学術大会 懇親会
2017 年 1 月 28 日
Cafe & Music Second Rooms
2019 年 12 月 21 日
≫
8. 2. 研究 seeds の選定
• 仕事で困っていること
• 患者の苦痛を解決 (軽減) できる手段がないかなど
⇒ 定量性を変えずに検査時間の短縮や画質改善の実現
• 疑問に感じたこと (若い方の方が気付きが多い)
• 当たり前にしていることに疑問を持つなど
⇒ 核医学検査のノイズ低減処理は
⇒ SPECT は Butterworth Filter,PET は Gaussian Filter が多い理由
• 楽したいこと
• ルーチンワークの自動化など
⇒ 骨シンチグラフィの追加撮像の可否や FDG-PET の追跡検査の可否を自動判断
9. 2. 研究 seeds の選定
• 臨床検査の中に研究課題は沢山ある
⇒ 臨床検査を対象とした研究は得たい結果が見えている
⇒ 病院で働く診療放射線技師は課題が豊富
半導体検出器搭載 PET/CT 装置
SIEMENS 社製 Biograph Vision
3.0 Tesla MR 装置
SIEMENS 社製 MAGNETOM Vida
320 列 MSCT 装置
Canon 社製 Aquilion ONE
10. 2. 研究 seeds の選定
• 研究テーマ ⇒ 画像処理/画像解析
• computer vision (CV)/artificial intelligence (AI) 技術の医用応用
• CV とは「コンピュータが動画像を如何によく理解できるか」を扱う研究分野
⇒ 人間の視覚が行えるタスクの自動化を追求
• コンピュータが実世界の情報を取得する全ての過程を扱う
• センシングのためのハードウェアから可視化のためのソフトウェアや
情報認識のための人工知能的理論まで
適用範囲が幅広い
• ディジタル画像全般を扱うカテゴリー
⇒ 課題を言葉にできれば実現可能
LiDAR Scanner を用いた距離画像の生成
11. 3. 成果の想定
• 画像処理
• 医用画像に適用されている画像処理技術は古典的なものが多い
⇒ 非線形ではあるが CV/AI 技術を用いればより良好な結果は出る
⇒ 最新機器がなくとも研究発表はできる
• 画像解析
• 機械学習の基本は自動化
⇒ 既存の枠組を AI に置換
⇒ 一般診療で取得できるデータから
⇒ 偏りのないデータを集めることが重要
• 処理アルゴリズムよりもデータセットが重要
⇒ データセットの考察を課題に取り組む
12. 3. 成果の想定
• 非侵襲的な研究はとりあえずやってみるの精神で OK !
• CV/AI では研究開始前に正しい結果を想定し,
出力されている結果を客観的に評価することが重要
• 評価者は適切なデータセットを用い
検討されている課題なのかを判断すべき
⇒ データセットの工夫で成果は変わる
Ueda, D., Katayama, Y., Yamamoto, A., Ichinose, T., Arima, H., Watanabe, Y., ... & Miki, Y. (2021).
Deep Learning–based Angiogram Generation Model for Cerebral Angiography without Misregistration Artifacts.
Radiology, 299(3), 677. Table 1: Characteristics of Data Sets より引用
13. 4. 学術活動のデザイン
• 課題の確定
• CV/AI を用いた画像処理 (超解像/デノイズ) は従来手法に比べて高性能
• 核医学画像は生データを取り扱える
• 核医学画像は低解像度であり,高性能な処理端末を必要としない
• 核医学画像は古典的な処理が多く,伸びしろが大きい
• AI を用いた画像解析 (Detection/Classification) は臨床適応時期
• 画像のビット数を無視すれば環境構築が最大の難関
• 環境構築が完了すれば臨床の場でどう使うかを探索
• データセットが異なると結果が変わるので自施設での検証に意味はある
• どちらの課題もモダリティに依存しない
• 手を動かせば (とりあえず) 結果の出る課題がある
14. 4. 学術活動のデザイン
• 締切の決定 (締切がなくての論文を書ける人には不要)
• エントリーできる学術大会は全て演題登録を行う (と宣言する)
• 放射線技術学会 (総会学術大会・秋季学術大会・近畿支部学術大会)
• 専門学会 (核医学技術学会)
⇒ 開発環境から離れたくない
⇒ (長時間飛行機に乗りたくない/私費の旅費を抑えたい) ので
⇒ 日帰りで参加できる学会をチョイス
• 締切を設定することで一つの課題に区切りを付けられる
• いつでも演題登録が可能なように演題の在庫を持つ
• 放射線領域でない学会や勉強会で発表をする機会を作る
15. 直近 6 年度の学会発表一覧
1. 2016/04 第 72 回 日本放射線技術学会総会学術大会: Application of Super-Resolution to Single-Photon Emission Computer Tomography
2. 2016/06 第 175 回 医用画像情報学会: 核医学画像へ超解像を適用することによる画質改善効果の評価
3. 2016/10 第 44 回 日本放射線技術学会秋季学術大会: スパースコーディングを用いたSPECT画像の超解像に適した辞書の作成
4. 2016/11 第 36 回 日本核医学技術学会総会学術大会: スパースコーディングを用いたか核医学画像の超解像に適した辞書の作成
5. 2017/01 第 60 回 近畿支部学術大会: 核医学画像に対する超解像の最適なパラメータの検討 (大会長賞受賞)
6. 2017/04 第 73 回 日本放射線技術学会総会学術大会: Consideration of the optimal parameters of the super-resolution for the nuclear medicine images
7. 2017/07 第 50 回 日本核医学会 近畿地方会: 深層学習を用いた超解像
8. 2017/10 第 37 回 日本核医学技術学会総会学術大会: 深層学習を用いた超解像
9. 2017/10 第 45 回 日本放射線技術学会秋季学術大会: 深層学習を用いた超解像
10. 2018/01 第 61 回 近畿支部学術大会: 平滑化フィルタを適用した PET 画像に対する深層学習を用いた超解像の適用による高解像度画像の再構築
11. 2018/04 第 74 回 日本放射線技術学会総会学術大会: Comparison of high resolution images reconstructed applying super-resolution using supervised and unsupervised learning
12. 2018/07 第 51 回 日本核医学会 近畿地方会: 線形補間処理を用いない超解像の提案 (深層学習)
13. 2018/10 第 46 回 日本放射線技術学会 秋季学術大会: ディジタルマンモグラフィに対する超解像を用いたノイズ低減処理の提案 (深層学習)
14. 2018/11 第 62 回 近畿支部学術大会: 吸収補正用 CT に対する圧縮センシングを用いた 被ばく線量低減への検討 (大会長賞受賞)
15. 2019/04 第 75 回 日本放射線技術学会総会学術大会: Improvement of Resolution Using Super Resolution for Mammography (深層学習)
16. 2019/08 第 9 回 ディジタル画像ミーティング: 深層学習を用いた超解像による高解像度化処理 - マンモグラフィの石灰化評価 – (深層学習)
17. 2019/10 第 47 回 日本放射線技術学会秋季学術大会: 超解像を適用した画像の分解能特性 (深層学習)
18. 2019/12 第 63 回 近畿支部学術大会: コイル塞栓術中のコイル干渉をリアルタイムに把握できるアルゴリズムの開発
19. 2020/11 第 40 回 日本核医学技術学会総会学術大会: No-Reference Metric による核医学画像の評価
20. 2020/11 第 36 回 日本脳神経血管内治療学会:コイル塞栓術中のコイル干渉を把握できるアルゴリズムの開発
21. 2021/06 MATLAB EXPO JP 2021: CT 画像の客観的評価を実現する非参照型メトリクスのカスタムモデルの作成
22. 2021/10 第 49 回 日本放射線技術学会 秋季学術大会: 超解像の適用対象による画質改善効果の違い
23. 2021/11 第 41 回 日本核医学技術学会総会学術大会: 半導体 PET への超解像適用による画質改善効果の基礎的検討
超解像技術 → CV 技術の医用応用 → 人工知能技術の医用応用
第60回 近畿支部学術大会
福西 康修 大会長
第62回 近畿支部学術大会
南部 秀和 大会長
16. 直近 6 年度の講演一覧
1. 2017/03 第 24 回 核医学技術セミナー: Sparse coding Super-Resolution を用いた核医学画像処理
2. 2017/05 平成 29 年度 近畿支部 春季勉強会: 核医学画像に対する超解像の最適なパラメータの検討
3. 2018/09 平成 30 年度 近畿支部 学術研究発表ブラッシュアップセミナー: 研究に使える便利なフリーソフト: ImageJ
4. 2019/05 平成 31 年度 近畿支部 春季勉強会: 吸収補正用 CT に対する圧縮センシングを用いた被ばく線量低減への検討
5. 2019/08 第 9 回 ディジタル画像ミーティング: 深層学習を用いた超解像による高解像度化処理
6. 2019/10 2019 年度 国公私立大学病院医療技術関係職員研修: 研究活動を通じた科研費取得の 1 モデル
7. 2020/01 第 8 回 New Clear Imaging Conference: 人工知能を用いた医用画像処理技術
8. 2020/01 2019 年度 近畿支部 実践セミナー 『やってみよう Deep Learning! 』: Deep Learning 概論
9. 2020/04 JRC2020 Web シンポジウム: 病院で働く技師による深層学習を用いた研究
10.2020/10 AI 最新技術 Update 会 10 月: Arxiv で直近 1 ヶ月人気の論文まとめ
11.2021/04 JRC2021 シンポジウム: 非参照型メトリクスを用いた動画の物理評価
12.2021/04 SENS>AIT Web Seminar: 人工知能技術を用いた医用画像処理
13.2021/10 放射線技術学会 第 65 回 近畿支部学術大会: 探求の道 Lead Clearly ← 今回
14.2021/12 AI 最新技術 Update 会 12 月: Arxiv で直近 1 ヶ月人気の論文まとめ
(発表: 23 回 + 講演: 14 回) / 6 年 ≒ 6.2 / 年 ⇒ 二ヶ月に一回以上
17. 18. 5. 研究環境 (業務と研究のバランス)
• 研究は私にとって趣味
• 臨床検査を行いお金を稼いでいる
• 研究は余暇に行う
• 研究活動は始業前に行う
• 頭がクリア
• 電話対応を行う必要がない
• 会議がない
学術活動
臨床検査
19. 0 1
23
2
22
21 3
20 4
5
19
18 6
7
17
16 8
15 9
10
14
11
13
12
就寝
臨床業務
通勤
通勤
メールの返信
アルゴリズムの実装
文献検索
論文執筆
学術支援
勉強会
自由時間
5. 研究環境 (業務と研究のバランス)
タイムスケジュール
1 日 2 時間 ×5 日 = 10 時間 (1 週間)
⇒ 1 年を 50 週 とすれば年間 500 時間
⇒ 約 20 日間相当の時間が得られる
04:00 <起床>
• メールの返信
⇒ Gmail の後で送信を利用
06:00 <病院到着>
• アルゴリズムの実装
• 文献検索・論文執筆
08:00 <業務の用意>
08:45 <始業>
• 診療放射線技師の仕事
⇒ 臨床業務・会議
17:15 <終業>
• 学術支援
• 勉強会
22:00 <就寝>
20. 6. 研究の進め方 (AI の場合)
• 成果が想定されてる課題を決定しデータセットの作成および検証
⇒ 結果を評価して再検討の繰り返し
⇒ 最新の論文 (話題) をチェックして常に次の課題を探す
Plan Do Check Action
Plan Do Check Action
21. 6. 研究の進め方 (心がけていること)
• 医療にとらわれず技術を鳥瞰できる体系を作る
⇒ 気になった手法は片っ端から試す (実装する)
⇒ 試さず後悔するより試してみて失敗するほうが良い
• Isotope を使った実験を行う時は入念に実験プランを考える
⇒ 実験に参加する人に影響がないように配慮 (被ばく低減)
22. 23. 6. 研究の進め方
• 2000 年頃は人工知能の研究は時代遅れと言われていた
⇒ 何かがきっかけで状況が大きく変わる時がある
⇒ 何事も否定せず,一先ず手を動かしてみる
引用: 総務省 HP 第 1 部 特集 IoT・ビッグデータ・AI ~ネットワークとデータが創造する新たな価値 ~
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142120.html
24. 25. 26. 7. 成果の公開と社会への普及・展開
• 研究のゴールは論文なのか?
⇒ 論文は研究のゴールの一つ
⇒ 最終的に患者に還元したい
• 論文投稿のスピード
• 論文は急いで書く必要はないが
技術のトレンドは一時的
⇒ 2010 年頃から Deep Learning が流行し他を駆逐
⇒ 2020 年頃から Transformer が流行し Deep Learning を駆逐
⇒ 2021 年 Transformer に匹敵する gMLP* が公開
• 書き方を知りたければ,近畿支部の事業 “論文塾” などに参加
* Hanxiao Liu, Zihang Dai, David R. So, Quoc V. Le “Pay Attention to MLPs” arxiv.org/abs/2105.08050
* Multilayer perceptron (MLP)
27. 7. 成果の公開と社会への普及・展開
• 論文
• 放射線技術学会 ← 日本の技師さんに読んで貰いたい論文
• 骨シンチグラフィへのバイラテラルフィルタの適用. 日本放射線技術学会雑誌, 69(12), 1363-1371.
• PET 画像に対する超解像を用いたデノイズ手法の適用. 日本放射線技術学会雑誌, 74(7), 653-660.
• Radiology ← 世界に向けて発信したいこと
• Deep learning for MR angiography: automated detection of cerebral aneurysms. Radiology 290.1 (2019): 187-194.
• Deep Learning–based Angiogram Generation Model for Cerebral Angiography without Misregistration Artifacts. Radiology 299.3 (2021): 675-681.
• 寄稿
• 放射線技術学会誌 ← 普段の研究活動を見て声をかけて頂ける
• 教育講座 - 放射線技術学における ImageJ の活用 - 9.画像の表示と処理・解析. 日本放射線技術学会雑誌 75 (8), 815-824.
• 新春座談会 - AI が医療をどう変えるか放射線科のこれから. 日本放射線技術学会雑誌 77 (1), 1-13.
• 教育講座 - CT の基礎と最新技術 - 10.最新の人工知能技術. 日本放射線技術学会雑誌 77(12), 掲載予定
• 雑誌
• 画像処理技術の現状と将来展望. インナービジョン 2020 年 1 月号, 16-18.
• 一般社団法人での非医療従事者への講演 ←論文と SlideShare を見て依頼
• SENS>AIT Web Seminar 画像計測
28. 論文紹介
片山豊, et al. PET 画像に対する超解像を用いたデノイズ手法の適用.
日本放射線技術学会雑誌, 2018, 74.7: 653-660.
この論文を見た企業の方から
声をかけて頂くことが多くなりました.
29. 論文のポイント
• 要点: 平滑化効果が統計ノイズの違いによる影響を受け難い
• 高周波数帯域の情報が欠落しない平滑化手法の提案
• 発想の転換 ⇒ 余り常識にこだわる必要はない
• デノイズの論文なのに直接的なデノイズ処理を PET 画像に適用しない
• 画角の小さな PET 画像にダウンサンプリング処理を適用する
• 超解像を直接的なアップサンプリング処理として適用しない
• 実現するための問題点 ⇒ 解決すべき課題
• 教師あり手法を用いた画像処理には教師データが必要
• 装置の幾何学的な制約や被ばく線量の最適化のため高品質画像の取得が困難
⇒ 医用画像を使用できないため自然画像のみからモデルを作成
30. 31. 7. 成果の公開と社会への普及・展開
• 人工知能 Vol.36 No.3 (2021 年 5 月号)
• 編集委員からの抱負と提言 2021*
• 私の論文が採択されないのはどう考えても
編集委員会が悪い!
• 趣味で探求を続けることは
われわれ医療従事者の特権である!
研究者の果たすべき役割の一つに「何の役に立つのか
わからないが将来社会に役立つかもしれない技術」をつ
くっていくことにあるのではないだろうか.これは常
に利益を追求しなければならない営利企業の開発部門と
は異なる研究者の特権ともいえる.
* https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/36/3/36_312/_pdf
32. 7. 成果の公開と社会への普及・展開
• 人工知能 Vol.36 No.3 (2021 年 5 月号)
• 編集委員からの抱負と提言 2021*
• 私の論文が採択されないのはどう考えても
編集委員会が悪い!
• 探求を続けることで
誰かの役に立つ可能性がある!
というわけで,「何の役に立つのかわからないから
Reject」,「新規性が見当たらないから Reject」などとい
う安易な判断を行わず,「今は何の役に立つんだかよくわ
からないけれど,何かあったときには役立つ研究」も評
価できるようになることを編集委員としての今年の抱負
としたい.
* https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/36/3/36_312/_pdf
33. 最後に
• 9:00 ~ 17:00 の仕事を満足するために 17:00 ~ 9:00 に学ぶ
⇒ そのアウトプットとしての学術活動
• 研究を続けることでお声かけ頂ける機会が増えました
• 良い研究を論文にまとめても必ず誰かの目にとまる訳ではないが
論文投稿や学会発表 (発信) をしないと誰の目にもとまらない
⇒ 数多く発信していれば誰かの目に留まる可能性が高くなる
⇒ その研究が誰かの役に立つかもしれない
• 研究での評価は業務評価に比べて比較的フラットな評価
⇒ 仕事がし易い環境が構築できる
⇒ 他部門からのハラスメントが少し減った気がする
34. Editor's Notes #2 大阪市大病院の片山です.
宜しくお願いします.
本講演内容に利益相反事項はありません. #3 自己紹介です.
職歴ですが,20 代前半はメジャーファクトリーでオートバイ用のマフラーの開発・製造を行っていました.2003 年より,診療放射線技師として働き出したのですが,就職氷河期と言われる時代だったので,正規の仕事がなく,大学病院,市民病院,市中病院と職場を移動し,2007 年より大阪市立大学医学部附属病院で働いています.
研究歴ですが,私は主に画像処理の研究をしています.
2010 年頃からスパースコーディングを用いた画像処理を行っています.
2014 年頃からはスパースコーディング中でも超解像と言う入力画像より高解像度の出力画像を生成する処理を主なテーマとしてきました.
2017 年頃からは超解像をキーワードに深層学習を用いた画像処理を始め,2019 年頃より敵対的生成ネットワークを用いた画像生成を行っています.
2020 年頃より非参照型メトリクスを用いた放射線画像の評価を行っています.
2021 年度より近畿支部の研究教育委員会で委員をさせて頂いています.
普段は放射線科医師と人工知能関連の共同研究をしていることが多いです.
趣味で古い電子機器を敵対的生成ネットワークで再現する試みを行っています. #4 本日は,学術活動の動機,研究 seeds の選定,成果の想定,学術活動のデザイン,研究環境,研究の進め方,成果の公開と社会への普及・展開についてお話させて頂きます. #5 先ず学術活動の動機です.
精神的なモチベーションです.
私は救急医療に携わりたいとう思いで診療放射線技師になりました.
しかし私自身に運動制限があり,今現在,救急医療には携われていませんが,困っている人の役に立ちたいという思いから学術活動を続けています.
何故,人の役に立ちたいと言う思いから学術活動を続けているかと言うと,放射線技になって最初に居てた施設で画像処理の研究をして患者様の治療の役に立つ技術を確立させようとしている先輩がいました.
そのような先輩に憧れて私は画像処理の研究を続けています.
将来的には研究を通じて診療の役に立つ技術を提供したいと考えています. #6 スライドの方々は私が行っているほぼ全ての研究に協力して下さっている医療従事者ではない共同研究者の方たちです.
私の思いつきに対して研究の幅を広げるようなアドバイスをして下さいます.
こう言った工学系の方との交流により私の研究の幅が広がりました. #7 次に物理的なモチベーションです.
私は今,大学病院で働いています.
大学病院は民間の病院に比べて比較的装置更新の頻度が高く,また,様々なメーカ様の協力が得やすく,非常に研究がしやすい環境にあると思います.
強制はしませんが私個人は大学病院では研究も仕事だと思っていますし,当院では学術活動が評価される体系があります.
大学病院のネガティブな因子としては,当院はセクショナリズムが非常に強く部門でカテゴライズされ,人の取り合いがあったり,学術発表している部門の人間という意識が非常に強く,部門の活性のためにと言う側面もあります. #8 学術活動の動機について精神的,物理的な理由をお話させて頂きましたが,根本的には新しいことをするのが楽しいので研究は趣味だと思っています. #9 次に研究 seeds の選定についてです.
研究の課題は仕事で困っていることや疑問に感じたこと,楽したいことから選ぶと良いと思います. #10 普段行っている臨床検査の中に研究課題は沢山あり,そういった研究課題は得たい結果が見えているので解決に向けて取り組みやすいと思います.
臨床検査を対象とした研究を行いやすいことは病院で働く診療放射線技師の特権だと思います. #11 私の研究テーマは画像処理や画像解析です.
これらを包括しているジャンルとしては computer vision となります.
computer vison と言う単語は余り聞き慣れないと思いますが,コンピュータが動画像を如何に理解できるかを扱う研究分野で人間の視覚が行えるタスクを自動化することを追求しています.
computer vision では,ハードウェアからソフトウェアまでコンピュータが実世界の情報を取得するすべての過程を扱うジャンルであり,人工知能理論も computer vison に含まれており,ディジタル画像全般を取り扱うカテゴリです.
私の研究テーマは computer vision の医用応用と言い換えることができます.
画像処理は行いたいことを数式として表現できれば実現出来ると言えますが,CV 系の課題はちょっと乱暴な言い方ですが,課題を言葉にできれば実現可能だと思います. #12 次に成果の想定です.
先ず画像処理について考えると,医用画像に適用されている画像処理技術はアーチファクトの発生を嫌い古典的なものが多いです.そのため,非線形処理となるが最新の画像処理技術を医用画像に適用すると通常処理に比べて良好な結果が出る傾向にあり,芽が出る種が沢山あります.
また,画像解析で取り扱う AI の基本は自動化ですので,AI を用いていない既存の枠組を AI に置き換えることで課題になります.
AI を用いた課題で重要なのは成果ではなくデータセットの客観性と妥当性だと考えます. #13 実際に何かできそうなことを思いついた時は非侵襲的な研究であればとりあえずやってみれば良いと思います.
CV/AI の研究に限らずですが,研究を開始する前に想定される結果を考え,出力されている結果を客観的に評価することが重要だと考えています.
残念ながら AI 関連の発表に関しては検討が不完全なものが多い印象です.
評価する方も AI 関連の課題が適切なデータセットを用い検討されている課題なのかを判断すべきだと考えます. #14 次に学術活動のデザインについてです.
私の研究テーマの一つである画像処理はモダリティに依存することなく手を動かせば結果の出る課題が沢山あります.
私は放射線画像の中でも核医学画像を対象とした発表が多かったのですが,いくつか理由があります.
核医学画像は他のモダリティの画像と異なり撮像したままの生データが簡単に取り扱えます.また,核医学画像は他のモダリティに比べて低解像度なので高性能な処理端末を必要としません.更に核医学画像は古典的な処理が多く,伸びしろが多いので課題に困ることは少ないためです.
次に画像解析についてです.AI を用いた画像解析の医用応用は臨床適応期にあり,様々な課題が考えられます.
AI の課題でフルスクラッチでコーディングを行うことは少ないので,画像のビット数を無視すれば環境構築ができ,データセットの作成ができれば形になりますので,課題に相応しい偏りのないデータセットを作成することが課題です.
CV/AI のどちらの課題もモダリティに依存することなく手を動かせば結果の出る課題が沢山あります. #15 そういった事情から私の学術活動のデザインは締切を先に決定する所からはじめました.
周りにエントリーできる全ての学術大会に演題登録を行うと宣言して自分を追い込んでから発表していきました.
ただ,できるだけ開発環境から離れたくないので,日帰りでも参加できる国内の学会を主に選びました.
締切がなくても論文を書ける人には不要なことかと存じますが,締切を設定することで一つの課題に区切りが付きます.
研究活動を続けて行くに連れて課題が見つかりにくくなってくると思い,いつでも演題登録が可能なように課題の在庫を持つようにしています.
それと建設的なディスカッションを行うために,放射線領域でない学会や勉強会でも発表をする機会を作るようにしています. #16 直近の学会発表一覧です.
黄色で書いているのが超解像技術の医用応用の課題で青色が人工知能技術の医用応用の課題です.
近畿支部学術大会も毎年エントリーさせて頂き,二度も大会長賞を頂きました.
私が関西での発表を続けているのは,普段から顔を合わせることができる人達と自分の課題について議論がしたいからです. #17 次に直近の講演一覧です.
学会発表を沢山させて頂いていることで良くお声掛け頂けるようになりました.
6 年間に発表 23 回,講演 14 回させて頂いたので,二ヶ月に 1 回強の頻度でプレゼンテーションさせて頂いていました.
#18 この様に継続して研究活動ができた理由がいくつかあるのですが,私が超解像の研究を行いだした時,同一コミュニティに研究者の人工が少なかったので研究がしやすく,たまたま超解像から CV/AI と研究対象が拡大し,その後たまたま AI が流行しその流れに乗れました.
更に大学病院で働いていたことより,AI に必要な資産が揃っており,研究活動が続けられ CV/AI のコミュニティで活躍できる機会を頂けました.
非常に運が良かったのだと思います. #19 次に研究環境についてです.
研究と業務のバランスですが,曖昧な部分も多くありますが,研究は私にとって趣味なので研究は余暇に行っています.
基本的に研究活動は始業前に行うことが多いです.
理由は頭がクリアなこと,電話対応を行う必要がないこと,会議がないことが理由です. #20 余り興味がないかと存じますが,私の普段のタイムスケジュールです.
病院の出入り口が 6:00 に開くので 6:00 に着くように予定を組んでいます.
一日 2 時間自由時間は,週 5 日間で 10 時間となり,1 年間を 50 週間と考えれば年間 500 時間となり,約 20 日相当の時間が作れます.
研究は自分のリズムで行いたいので,メール作成などは Gmail の送信日時指定送信を利用して空いた時間に文章を作成しています.
病院で作業しているのは,自宅には誘惑されるものが多いことと院内ネットワークからはある程度の文献を見ることができるためです. #21 次に研究の進め方についてです.
私が普段取り組んでいる人工知能関連の研究であれば,成果が想定されている課題を決定し,データセットの作成及び検証を繰り返します.
スライドに示しているように PDCA サイクルで考えます.並行して最新の論文を読んで,その中から使える技術があれば同じデータセットで別の課題を検証したりしています. #22 研究を進める時に心がけていることは,医療にとらわれず新しい技術を鳥瞰できる体系を作り,日々のルーチンとして情報をキャッチできるようにしています.
自分の自由になる時間には限りがあるので,キャッチした技術の中から気になった手法を実装して試すようにしています.
試さずに後悔するよりも試してみて失敗するほうが良いと思っています.
但し,放射性医薬品を用いた実験を行う際は被ばく低減のために実験プランを入念に考えます. #23 実装して終わった課題ですが,数年前に自動運転のタスクで天下一品のマークが車両進入禁止マークと誤認される現象が話題になりました.
医療で同様のことが起こらないかを考えて試そうと思いましたが,私が行っているような AI を用いた病気の検出では病気の画像パターンを学習させるのでデータセットの作成ができていれば誤認識することは少ないということに気づきここから課題を広げることができませんでした.
この様に研究テーマは医療に限定する必要はなく広い範囲の論文を見ることで新たな気付きがあると思います. #24 ここ数年で急速に人工知能技術が一般的になりましたが,2000 年頃は人工知能技術は時代遅れと言われていました.
数年前に敵対的生成ネットワークが話題になったことや,最近は Transformer が圧倒的な性能を記録していることで人工知能ブームは続いていますが,ちょっとしたことが切っ掛けで状況が大きく変わることがあるので,何事も否定せず一先ず手を動かしてみることが大事だと思います.
#25 最後のセクションです.
成果の公開と社会への普及・展開です.
成果の公開となると論文などになると思います.
スライドに提示しているのは私の Google Scholar のキャプチャになります.
黄色が核医学関連の成果になります. #26 私の思うスタンダードな研究の流れは,学会で発表を行い会場でディスカッションをして研究内容をブラッシュアップして論文投稿を行い,査読者とディスカッションをし論文掲載され他の論文で引用されると言った感じだと思います.
以前,後輩に論文投稿は学会発表に比べて派手さがなく労力が大きいから余り好きではないと言われました. #27 過去の研究会で,研究のゴールは論文ですという講演を聞きました.
この意見は間違いではなく ,論文は研究のゴールの一つだと思います.
しかし我々医療人が行っている研究のゴールは患者様へ何かを還元することだと思います.
患者様へ何かを還元する方法の一つが論文を書き広く認知して貰うこととなるので論文を書くことは研究のゴールで間違いないです.
論文は急いで書く必要はないのですが,技術のトレンドは一時的なものです.
2000 年頃は衰退期だった人工知能技術が深層学習が登場したことで 2010 年頃から流行し,他の技術を駆逐していきましたが,2020 年頃から Transformer が流行し深層学習を駆逐しました.
更に 2021 年頃 gMLP と言う Transformer に匹敵する技術が登場したスピード感で技術は流れています.
論文を書くつもりなのであればある程度早く書いたほうが良いと思います.
書き方がわからなければ近畿支部の事業の論文塾などに参加して頂ければと思います. #28 私が論文を投稿する時に投稿先にする学会の選別ですが,日本の技師さんに読んで貰いたい論文は放射線技術学会に投稿し,世界に向けて発信したいことは Radiology に投稿するようにしています.
Abstract のみの英語の和文論文誌や和文論文誌自体の意義を問われる事も増えてきましたが,全く新しい技術を得る時に母国語以外の文章から知識を得ることの難しさもあり,和文論文誌にも一定の意義はあると考えます.
投稿した論文や普段の活動を見て雑誌から記事の依頼があったり,私の講演スライドは殆ど SlideShare で公開してるのですが,それを見て一般社団法人から非医療人向けの講演の依頼があり,直接的な論文の引用以外にも社会への普及と発展は実現することが可能だと思います. #29 色々なきっかけになった放射線技術学会に採択された 2018 年の論文を少しご紹介致します.
PET 画像に対する超解像を用いたデノイズ手法の適用と言うタイトルの論文です. #30 この論文では統計ノイズの違いによる影響を受けにくい高周波数帯域の情報が欠落しない平滑化手法を提案しました.
この論文のポイントはデノイズ処理を提案しているにも関わらず直接的なデノイズ処理を適用していないこと,それでなくとも画角の小さな PET 画像にダウンサンプリング処理を適用していることです.更に超解像処理はボケの少ないアップサンプリング処理なのですが,ダウンサンプリング処理を適用した画像の復元に使い,直接的なアップサンプリング処理としては使いませんでした.
当初,核医学画像に対して超解像を適用して高解像度化を行った論文を投稿したのですが,査読者からの評価が悪く Reject されました.
そこでどうやって医療の中に落とし込むかを考え論文にしたものになります. #31 元画像と通常処理適用画像と提案手法適用画像を供覧致します.
詳細は論文を読んで頂ければと思いますが,提案手法は視覚的にもボケが少なく,目標画像と類似していることが分かり,PET 画像のデノイズ処理として有用である事が示唆されました. #32 今年の春頃,AI 関連の雑誌記事でバズっていたものを紹介します.
2021 年 5 月号の人工知能と言う雑誌の編集委員からの抱負と提言と言う記事です.PDF が公開されているので興味を持たれた方は御覧下さい.
この文章はタイトルはフザケていますが内容はとても前向きなもので,”研究者の果たすべき役割の一つに「何の役に立つのかわからないが将来社会に役立つかもしれない技術」をつくっていくことにあるのではないだろうか.これは常に利益を追求しなければならない営利企業の開発部門とは異なる研究者の特権ともいえる.” と書かれています.
これは,我々医療従事者が趣味で研究を続けることは特権であると言い換えることができると思います. #33 また,私も何度か論文を投稿した際に指摘されたことですが,「何の役に立つのかわからないから Reject」ということや「新規性が見当たらないから Reject」などという安易な判断を行わず,「今は何の役に立つんだかよくわからないけれど,何かあったときには役立つ研究」も評価できるようになることを編集委員としての今年の抱負としたい.と探求を続けることで誰かの役に立つ可能性がありそれを評価できる体型を作りたいと言うものでした.
放射線技術学会もそういう風になってくれたら良いなと思いました.
#34 最後にまとめです.
私の研究は 9:00 から 17:00 の日勤帯を満足するために 17:00 から 9:00 を使い学んだことのアウトプットとして行っています.
研究活動を続けていることで様々な方からお声かけ頂ける機会が増えました.
良い研究を論文にまとめても必ず読んで頂ける訳ではありませんが発信をしないと誰の目にも止まりません.努力は必ず報われるわけではありませんが,報われている方はすべからず努力をしてきた方だと思います.数多く発信していれば誰かの目に留まる可能性が高くなり,その研究が誰かの役に立つ可能性が高くなると思っています. #35 最後に研究を続けることで様々な方からお声かけ頂ける機会が増えました.
良い研究を論文にまとめても必ず読んで頂ける訳ではないが発信 をしないと誰の目にも止まりません.努力は必ず報われるわけではありませんが,報われている方はすべからず努力をしてきた方だと思います.数多く発信していれば誰かの目に留まる可能性が高くなり,その研究が誰かの役に立つ可能性が高くなると思っています. #36 本講演を終えるにあたり,このような発表の機会を与えて頂いた滋賀医科大学医学部附属病院 木田 哲生先生,放射線技術学会 第 65 回近畿支部学術大会 実行委員の先生方に深く感謝申し上げます.
ありがとうございました.