メディアとコンテンツ 第2回

2. 若大将シリーズ
• 青春(二世)スタア・加山雄三のヒットシ
リーズ。1961年7月『大学の若大将』でス
タート。主人公は御曹司でお金持ち，スポ
ーツも万能。恋と勉強が弱点。受験勉強を抜けた先
に待つバラ色の大学生活?
• 『エレキの若大将』は6作(1965年12月19日，併
映は『怪獣大戦争』)。主題歌『君といつまでも』
(詞:岩谷時子/曲:弾厚作)は300万枚超
(公称)のヒット。ただし，レコード会社
のアウトサイダーだったので，大賞は獲
れず，橋幸夫の『霧氷』が獲得

3. 『高校三年生』のロケ地は愛知県江南市の滝学園高等学校

4. アイドルの源流(その2)
―“御三家青春歌謡映画”
とグループサウンズ―
メディアとコンテンツ ②

5. 『いつでも夢を』
橋
幸
夫
・
吉
永
小
百
合
の
デ
ュ
エ
ッ
ト
。
一
九
六
二
年
九
月
二
〇
日
。
詞
:
佐
伯
孝
夫
/
曲
:
吉
田
正
(
ビ
ク
タ
ー
専
属
)
。
累
計
二
六
〇
万
枚
(
公
称
値
)
。
第
四
回
日
本
レ
コ
ー
ド
大
賞
受
賞

6. 映画『いつでも夢を』
1963年1月11日公開。野村孝監督。東京の下町を舞台に，
定時制高校で学ぶ勤労生徒らの「底辺での葛藤」を描く。
主たる観客層の「等身大の関心事」をテーマとした。

7. テレビ的ミーハーの完成
• 吉永小百合(1945年3月生まれ)は日活映
画の“最後のスタア”(現在でもめったにテ
レビ番組には出演しない)。それだけに，
“サユリスト”と呼ばれるファン層には神格
化されている
• 同世代の御三家は“青春歌謡映画”に出演も
しているが，主戦場は歌番組を中心とし
たテレビ。テレビを舞台としたミーハー
相手のビジネス(アイドルビジネス)の原形
を確立した

8. 御三家：橋幸夫・西郷輝彦・舟木一夫
夜・盛り場・波止場・恋・涙・怨みに
代表される旧来の「歌謡曲」に馴染め
ないティーンエイジャーの市場参入
翻訳ポップス(ロカビリー含む)と歌謡
曲を融合。「清く，美しく，切ない」
青春を職業作家が描く(青春歌謡)
三田明を加えて「四天王」という用例も

9. レコード，雑誌(平凡/明星)，テレビ
(ロッテ歌のアルバムなど)の相乗効果
平均2ヶ月のサイクルで発売される新
曲は同名映画(青春歌謡映画)の主題歌
にもなる
橋(43年生)は60年『潮来笠』でデ
ビュー。舟木(44年生)はデビュー曲が
120万枚。西郷(47年生)は鹿児島出
身。三田(47年生)はスカウト番組(ホ
イホイ・ミュージックスクール)出身。
御三家ビジネス

10. 橋幸夫『若いやつ』(‘62)
作詞:佐伯孝夫/作曲:吉田正

11. 作
詞
：丘
灯
至
夫
／
作
曲
：
遠
藤
実
『
紅
白歌合戦』
一九六三年

12. アイドルとしての舟木一夫
• 高校在籍時(愛知高等学校)にホリプロにス
カウトされ，1963年6月，高卒18歳でデ
ビューするまで，まったく芸歴がなかった
• 学生服でデビュー(戦前の教育を受けた保守
的な保護者や教師が持つ「青春像」を体現
したラッピングなので，“安心感”があった)
• 少年的な羞じらい，はにかみ，ナイーブさ
にあふれ「胸がキュンキュンした」(今もフ
ナキストの義姉談)

13. 作詞:宮川哲夫/作曲:吉田正

14. 作詞:水島哲/作曲:北原じゅん

15. 『花はおそかった』(映像は84年)
歌:美樹克彦。少女小説的な歌詞。詞:星
野哲郎/曲:米山正夫。一九六七年三月

16. 「青春歌謡」はプロで年輩の，レ
コード会社専属の作詞/作曲家が
大人の目から見た理想の純情な若
者像を描き，若い歌手が歌った
60年代を生きる若者の感覚とのズ
レが拡大した→フォークソング，
エレキ(GS)などシンガーソングラ
イトへの指向性。’66年以降に大
きなうねりになる

17. メリトクラシー：業績主義を社会
の選抜の原理とする仕組み
学歴エリート：メリトクラシーを
通じて選び出されるエリート(選
良＝社会の指導者層)
メリットの定義の標準化と画一化
／「公平」な手続きの徹底

18. 高校進学率が急上昇

19. 50年：46.7％→60年：57.7％
→69年:79.4％→74年：90％超
高校生総数：60年：324万人
→65年:463万人(5年間で140万
人増：団塊世代)→74年:427万人

20. 大学進学率の向上(’55/’75)
男性 15％→ 43％ (約3倍)
女性 4％→ 32％ (約8倍)
高度成長期→若者の高学歴化(受験戦争)
1966年:中卒・高卒の就職者数がピー
ク(142万人←団塊の世代が社会に)
自らの裁量で処分できる所得を持つ
ティーンエージャーの登場(ファッショ
ン・映画・音楽・出版物)

21. 『北国の街』(‘65)
海彦と雪子は大学受験
を控えた高校三年生
毎日の通学列車で，ほ
のかな慕情を抱くが，キ
ッカケがなかった。が…。
二人は男子高と女子高で，席を同じくせず

22. 同心円状のアイドル
• 「あなたはね，ボクたちの高校ではアイ
ドルですよ」
• 家
• ご近所
• 学園
• 街
• 地域
• 国民的
• 世界的
• 宇宙的

23. 海彦の父(織物職人)が結核に倒れ，
海彦は受験(東京行き)を断念する
雪子も実は…白血病で余命は5年
ほど。受験で東京に出るものの，
近い将来には「永遠の別れ」が予
見される

25. 不治の病→肉体関係の成立を阻む
「ぼくたちの愛を確かなものに実
らせるためには，お互いにもっと
もっといろんな経験が必要だと思
う。ぼくたちが精神的肉体的に成
長し変化しても，ずっと愛し続け
られるかどうか試したいんだ」
純潔を守る装置としての「病」

26. バンドサウンド
1966年にザ・ビートルズが来日
公演(日本武道館)
エレキ・ギターとバンド・サウ
ンドに目覚めた若者がグループ
サウンズ(GS)を結成した
少女マンガ的世界のコスチュー
ムと甘ったるい歌詞

27. 1966.6.30～7.2
ヤ
ア
ヤ
ア
ヤ
ア
→
日
本
武
道
館
↑
熱
狂
す
る
女
性

28. ウェルカム・ビートルズ
♪世界中の人 みんなのアイドル / かがやく栄光 四人の若者

30. 1960年代後半。若者層(団塊の世代・ベ
ビーブーマー)による世界的異議申し立て
運動。フラワーチルドレンやヒッピー(米)，
全共闘運動(日)
政治的要因も加わり，親世
代の文化・生活様式(エスタブリ
ッシュ)の全否定
対抗文化(カウンターカルチャー)
ウッドストック(‘69)

31. 何に対抗?
産業社会への信頼 お約束事群の破壊
科学技術への信奉 神秘(自然)主義
意識(自我)への信頼 現実からの離脱
メリトクラシーの貫徹 友愛・連帯(コミュニタス)
物欲の追求 清貧/自然への回帰
「成熟」の強制 「成熟」の拒否
マスメディアへの信頼 身の丈に合ったメディア

32. ポストモダン文化運動
近代合理主義・生活(文化)様式そのものへ
の懐疑
「30歳より上の人間を信用するな!」
Don’t trust over 30’s
「LOVE & PEACE」「Beautiful」―ア
メリカ社会が持つ市民的抵抗と草の根民
主主義の伝統に対する一体感と誇り

33. Beatles「Revolution」―「破壊について語
るときには僕を入れないで」(ジョン・レノ
ンは非暴力平和主義で一極のカリスマに)
Rolling Stones「Street Fighting
Man」「悪魔を憐れむ歌」―権威・
権力への反抗心
ミック・ジャガーも対極のカリスマに
ロックの浸透と一般化

34. Street Fighting Man

35. • 日本でのロックの初期受容形式。1967-68
年に爆発的なブームとなる
• スパイダース(『フリフリ』)，タイガース
(『君だけに愛を』)，テンプターズ(『忘れ得
ぬ君』)が“御三家”。別格にブルーコメッツ
(『青い瞳』)，ワイルドワンズ(『思い出の
渚』)。破壊者にオックス(『スワンの涙』)
• NHKによる出演拒否(理由は会長が長髪嫌い
だったから)など社会現象に。ユース世代か
らローティーン・キッズ世代にファン層低下
グループサウンズ(GS)

36. ザ・ワイルドワンズ
『想い出の渚』湖から渚へ
寺内タケシ・加山雄三らのエ
レキ、湘南を最も受け継いだ
グループ。六六年一一月五日。
詞:鳥塚繁樹／曲：加瀬邦彦

37. レコード大賞受賞!!
ジャッキー吉川とブルー・
コメッツ『ブルー・シャト
ウ』一九六七年三月一五日
詞:橋本淳/曲:井上忠夫
実はヨナ抜きの日本音階。森
と泉(湖)という、伝統的な叙情
を踏襲(紅白にも出場)

38. ザ・ジャガーズ
一
九
六
七
年
六
月
一
日
詞
・
曲
:
清
川
正
一

39. ヴィレッジシンガーズ
『
亜
麻
色
の
髪
の
乙
女
』
一
九
六
八
年
二
月
二
五
日
詞
:
橋
本
淳
曲
:
す
ぎ
や
ま
こ
う
い
ち

40. ザ・スパイダース
一
九
六
八
年
三
月
五
日
詞
:
菅
原
芙
美
恵
曲
:
か
ま
や
つ
ひ
ろ
し

41. ザ・タイガース
1968年3月15日。5枚目『花の首飾り』。詞:菅原房子・な
かにし礼。雑誌「明星」公募歌。曲:すぎやまこういち
映画『世界はボクらを待っている』(’68)から

42. 銀河のロマンス

43. ザ・テンプターズ
一
九
六
八
年
六
月
一
五
日
詞
:
な
か
に
し
礼
曲
:
村
井
邦
彦

44. アイドル及びアイドルソング(乙女の夢想の
世界の肯定)の原型(男女を問わず)。オタク
と腐女子の原点?
長髪，ミリタリールックなど価値の紊乱(衣
裳デザイナー:コシノジュンコ)
ロックから思想性・音楽性を切り離し，大
衆性を加味したロック歌謡
レコード会社の専属作家・歌手制度への風
穴(GSは洋楽レーベルで発売)
メジャーGSの役割

45. オックス『ガールフレンド』
1968年5月5日。詞:橋本淳/曲:筒美京平

46. 「失神」が社会問題化

47. バイセクシャルな赤松愛

48. GS→アイドルへ
若いフリーの作詞･作曲家の登場
阿久悠，なかにし礼，村井邦彦，筒美京
平ら。専属作家制度の枠外で「洋楽レー
ベル」からGS曲は発売
乙女的な価値意識に基づいた楽
曲世界(可愛さ・甘ったるさ)
「少女マンガの世界から抜け出してき
たような」と評される
男子もその世界に魅了される