情報技術思想論 トゥルーマン・ショー

1. 情報技術思想論 赤尾⑥
『トゥルーマン・ショー』

2. ピーター・ウィアー監督
トゥルーマン・バーバンクは番組の主役
で，5000個のカメラで一挙手一頭足が全
世界に生中継される
1998年
ジム・キャリー，エド・ハリス
脚本:アンドリュー・ニコル(ガタカ，シ
モーヌ，ドローン・オブ・ウォー)

3. リアリティーショー(番組)
1990年代から登場したテレビ番組の形式
「演技や台本や“やらせ”がない(との相互了解が
成立している)，出演者の行動を(隠し)カメラが
追う形式のテレビ番組」
『トゥルーマン・ショー』で，主人公は約束事
を了解していないが，周りは設定(脚本/リアク
ション)を熟知している

4. 虚構で作られた日常
シーヘヴンと呼ばれる架空の街で，
妻，家族，友人たち(を演じる役者やエキ
ストラたち)と過ごす
出生直後にこの世界に送り込まれた
トゥルーマンだけが衆人環視の虚構
であることを知らない(真実の人だけ
が知らない)
運営者
シーヘヴン
外部現実世界
(遮断)
役者
広告
闖入者

5. トゥルーマンの違和感
高校時代に消えた“初恋の人(シルヴィア)”と，海
難事故で死んだ父親
この二人を演じた役者は運営に不満を持ち，父
親役はシーヘヴンに現れる
さまざまな出来事から「外部の存在」を感じ始
めたトゥルーマンが，あらゆる手段で脱出を試
みる
妨害に打ち克ち，外部に脱出するという点では
リベラル個人主義だし，メディア批判映画

6. プロダクトプレイスメント
劇中において，役者の小道具とし
て，または背景として実在する企業
名・商品名(商標)を表示させる手法
のことを指す
『トゥルーマン・ショー』の経費は
すべてこの仕組みと「変形生CM」に
よって賄われる
妻が突然始める「生コマ」に主人公が
違和感を覚えて脱出を決意(“やりすぎ/過剰”だった)

7. 論点①資本の論理
「広告」はもはや顕かではいけない。広告だと
認知されない形で，都市(メディア)空間の中に
“幽霊”のように漂っているのが理想とされる(い
わゆるソフト・セル・アド)。広告(虚飾)/非広告
(現実)の区別は失われる
妻・メリルはなぜあれほど不自然な形で広告を
実践したのか? 結果的に失敗だったのか? 資本の
論理を貫徹する限り，やむをえなかったのか?

8. 論点②脱出後のトゥルーマンは?
シーヘヴンから脱出後，トゥルーマンはどうし
たのか? 衆人環視の支配から解放された彼はどう
ふるまったのか?
マスメディアが指令する役割を逃れることがで
きるのか? トゥルーマンだと知り話しかけてくる
人をどう扱うのか? そもそも外部世界で一人で生
きていく能力があるのか?

9. 論点③その後の視聴者は?
トゥルーマンがいなくなったら，「誰かの生活
の一部始終をのぞき見る」という欲求は充足で
きなくなる。これまであったものがなくなるの
は，まったくなかったことに比べるとはるかに
つらい
キャストと設定を代えて，トゥルーマン 2ndシー
ズンを作る? 女性バージョンとか? 他民族とか?
そもそもシーヘヴンなしで広告システム(資本主
義)が成立するするのか?

10. 論点④見せたい欲望
メディアによる監視に戦々兢々としているだけ
でなく，自ら積極的に“トゥルーマン”になりたい
と“志願”する人が多いのではないか?
ライブカメラ，日記，リアリティーショーなど，
「多くの人に覗き見せて監視されたい」という
複雑で捻れた欲望が潜在しているのではないか

11. 見たい人は NETFLIXで
iTunes Storeでは，
購入2000円，
レンタル400円