by 公立邑智病院　泌尿器科 安食春輝 ---- 排尿障害 排尿症状に影響する因子 薬剤 他領域の疾患 治療の実際 薬剤選択 ①α１ブロッカー ②PDE5阻害薬 ③5a還元酵素阻害薬 ④β3受容体作動薬/抗コリン薬 ⑤漢方製剤/花粉抽出成分 男性 女性/蓄尿障害 女性/排尿障害 尿閉 or 治療を要する尿路感染+残尿≧100ml バルーンカテーテル留置 正しく留置するには Take home message ---- ＜NEURAL GP Networkとは＞ 島根県初・総合診療医育成プロジェクト 地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造 診療医療の育成は現場においてのみ可能である。 しかし、現場だけでは日本全体の総合診療を成長させるには不十分。 だから、わたしたちは今、 島根県からITを駆使して総合医療のニューラルネットワーク構築を目指します。 NEURAL GP Network WEBサイト: https://shimanegp.com/

1. 非専門医に求められる
排尿障害の治療
公立邑智病院 泌尿器科
安食春輝

2. 排尿障害
尿勢低下
尿線途絶
尿閉
頻尿
腹圧性尿失禁
尿意切迫感
前立腺肥大症
神経因性膀胱
尿道狭窄症
尿道炎
膀胱結石症
前立腺炎
前立腺癌
過活動膀胱
低活動膀胱
溢流性尿失禁
切迫性尿失禁
排尿障害 蓄尿障害

3. 背景因子の除去
排尿障害の治療
• ３本柱の治療
• 前提として
行動療法
薬物療法
手術療法等

4. 排尿症状に影響する因子
• 薬剤
• 他領域の疾患
代謝疾患
神経疾患
循環器疾患
精神疾患
腎疾患

5. 薬剤
４つだけ覚えておく。
精神科的薬剤 総合感冒薬
泌尿器科的薬剤
喘息治療薬

6. 他領域の疾患
注意すべき患者の訴え（キーワード）
① 代謝疾患 ② 循環器・腎疾患
④ 精神疾患
③ 神経疾患
口渇・多飲・多尿 下腿浮腫
自身の症状を覚えていない
尿意・便意の鈍麻

7. 治療の実際
• 男性
• 女性/蓄尿障害
• 女性/排尿障害
• 尿閉 or 治療を要する尿路感染＋残尿 ≧100ml

8. 薬剤選択
• 男性の治療では、α1ブロッカーを第１選択。
• 薬種を増やさない配慮。すでに多剤併用している症例では、
増悪因子となっていないか検討。
• １剤目の選択は容易、２剤目の選択が重要。

9. ① α1ブロッカー
• タムスロシン、ナフトピジル
排尿障害の目立つ症例にタムスロシン。
蓄尿障害の目立つ症例にナフトピジル。
• シロドシン
（私の）第２選択、理由は用法。
1日２回内服→アドヒアランス低下を懸念。
• ウラピジル
女性の排尿障害。投与前から血圧低下に十分な注意を。

10. ② PDE5阻害薬
• タダラフィル（本邦唯一の保険収載薬。）
諸種の症状に効果あるとされる。
一方で得手が分かりにくい。
経験からは排尿後滴下症状（キレの悪さ）の改善に有用。
• 虚血性心疾患合併例に禁忌とされているが、
実臨床では幅広く使える。
PDE5; phosphodiesterase 5

11. ③ 5α還元酵素阻害薬
• デュタステリド、フィナステリド
• 前立腺容積の縮小効果が証明されているが即効性はない（６ヶ月）
• 男性機能低下、PSA高値のマスキング効果に注意点。
• 事前のvolume評価と癌の除外を兼ねてMRIを用いることが多い。
測定値を２倍した値を、半年間隔で追跡。

12. ④ β3受容体作動薬/抗コリン薬
• 蓄尿障害緩和のためにadd on 使用。
• ミラベグロン、ビベグロン
→高い安全性。口渇は比較的高頻度。
• プロピベリン
→ガイドラインではエビレンスレベル４だが、分割処方できる。
効果不十分例で追加投薬に便利。
必ず緑内障治療歴をチェック

13. ⑤ 漢方製剤/花粉抽出成分
• 猪苓湯
→ 排尿困難、排尿痛、炎症症状の遷延などに。
• 牛車腎気丸
→ 蓄尿障害(頻尿)、冬季の症状悪化、腰痛合併例などに
• セルニチンポーレンエキス
→ 慢性前立腺炎に対する唯一の保険適応薬。男性の会陰部、
尿道部鈍痛などの緒症状に。

14. 男性
排尿障害/蓄尿障害ともに、スタートは一緒。
α1ブロッカー
5αRI タダラフィル
β３作動薬
抗コリン薬
猪苓湯/
花粉抽出成分
牛車腎気丸
効果不十分
大きな前立腺 頻尿
冬季の症状/冷え性
「痛み」を伴う キレの悪さ
5αRI; 5-alpha reductase inhibitor

15. 女性/蓄尿障害
多尿による頻尿の除外後にスタート。
ウラピジル
抗コリン薬 猪苓湯
牛車腎気丸
頻尿 膿尿あり
抗生剤治療
β３作動薬
残尿 ≧100ml
冬季の症状/冷え性
効果不十分 「痛み」を伴う 尿所見改善後
症状残存

16. 女性/排尿障害
特殊な病態、薬剤も少ない。鑑別のみでOK
排尿困難感/残尿感あり 残尿 ≧100ml
残尿量をチェック 症状の有無をチェック
骨盤臓器脱のチェック
残尿 <100ml
残尿 ≧100ml
疑いなし 疑いあり
泌尿器科 婦人科 or 女性泌尿器科

17. 尿閉 or 治療を要する尿路感染
＋残尿 ≧100ml
• 短期的な対応
• 尿道痛や会陰部痛を訴える症例は処置前に専門医へ
バルーンカテーテル留置

18. バルーンカテーテル留置
• 短期的（〜７日間）には万能解？
• 抜去後には必ず残尿量の評価を行う。
周術期の排尿管理 重症尿路感染症急性期の排尿管理
腎後性腎不全の解除
諸種の要因で安静が必要な症例の排尿管理
臀部褥瘡の悪化防止
残尿量 ≧100ml で泌尿器科コンサルトを

19. 正しく留置するには
• 男性では尿道の牽引
• 女性では体位
尿道損傷を疑う症例では禁
目線を下げ尿道出口部と正対
会陰部打撲後の尿閉 or 骨盤骨折を伴う尿閉
羞恥心に配慮した上で、内診台の利用も有効

20. • 排尿障害は治療に先立ち、
背景の増悪因子の除去を。
• 薬物療法は選択順序を定めて単純化、
２剤まで。
• バルーンカテーテル留置は、処置環境を整
えて実施する。無理な操作は避ける。
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