母子愛育会 周産期医療研修会
<看護Cコース:NICU>
NICUにおける母乳育児支援
愛仁会高槻病院 新生児小児科
菊池 新
2017年2月28日(火) 9:20~10:50
本日お話しする内容
1. はじめに
2. 母乳で育てるお母さんが増えています
3. 母乳育児の利点~特に早産児において~
4. NICU/GCUにおける母乳育児支援の実態
5. 早産児に対する母乳育児支援の実践
6. 早産児のサイトメガロウイルス感染症
7. NICUにおけるもらい乳と母乳銀行の現状
8. 最後に
社会医療法人愛仁会 高槻病院
臨床研修指定病院
総合周産期母子医療センター
赤ちゃんにやさしい病院
地域医療支援病院
日本医療機能評価機構
認定病院(ver.5.0)
病床数 477 床
一般 326 床
産科 47 床
MFICU 6 床
NICU 21 床
GCU 24 床
分娩件数 1484 件 (2011年)
新病院が今年完成します!
母乳で育てるお母さんが
増えています
母乳育児に関する妊娠中の考え
乳幼児栄養調査(厚生労働省)
復職しても母乳育児する母親が増加
出産施設の支援が栄養法を左右する
出産施設の支援が栄養法を左右する
母乳育児に対する抵抗や反発の声も
• 完全母乳で追い詰められたお母さんの切実な声も
• 偽「母乳」のネット販売では実際には母乳を薄め、細
菌汚染された不衛生なものが売られていた
→母乳で育てる母親をターゲットにした詐欺行為
• また一般の人から街中で授乳する母親や電車での
ベビーカーの使用に関する批判がネットニュースの
トップ項目に
• 反発や批判が渦巻く一方で、誤った情報が書かれて
いたり、子どもや母親の気持ちを考えない心ない言
葉や記事も多く見受けられる
偽「母乳」のインターネット販売
偽「母乳」事件のその後
乳児の栄養に関する支援者として
• 周産期医療のプロフェッショナルとして
求められているのは
1. 根拠に基づいた適切な情報を提供すること
2. 母と子の病状、環境など状況にあった方法
を一緒に考えられるバランス感覚
3. 最終的に母親が自分で考えて自分で選んだ
と自信が持てるように支援すること
4. どんな栄養方法を選択したとしても、必要な
支援を継続して行うこと
母乳育児の利点
WHOの推奨する乳幼児栄養法
• 生後1時間以内に母乳育児(直接授乳)を
開始する
• 生後6か月間は母乳だけで育てる
• その後は、すべての小児に栄養的に十分で安
全な補完食(離乳食)を与える
• 2歳まで、もしくはそれ以上母乳育児を続ける
UNICEF/WHO赤ちゃんとお母さんにやさしい
母乳育児支援ガイド アドバンス・コース(医学書院)
乳幼児における母乳育児の効果
• 全世界で母乳育児を行えば毎年82万人の子どもと、
2万人の女性を救うことができると推測される(Lancet
2016)
• 母乳だけで育てられた乳児は、母乳代用品で育てら
れた乳児に比べ、病気罹患率が少なくとも2.5倍少な
くなる
• 母乳だけで育てられていない乳児は、生後6か月以
内に下痢症で死亡する率が25倍になる
• 生後4か月以上母乳だけで育てられた乳児は、全く
母乳で育てられない乳児に比べ、急性中耳炎にかか
る回数が半分である
「赤ちゃんとお母さんにやさしい病院」とは
• 国連児童基金(UNICEF)と世界保健機構(WHO)は
母乳育児を中心とした、母子に対する適切なケアを
推進する目的で、1989年に
「母乳育児成功のための10か条」を提唱
• 10か条を長きに渡り尊守し、実践する産科施設を
「赤ちゃんにやさしい病院」と認定※
世界154の国・地域に約20,000以上の認定施設
• 世界中で「赤ちゃんにやさしい病院運動(BFHI)」を展
開し、母子の健康増進に努めている
• ※日本では社団法人日本母乳の会が認定している
母乳育児成功のための10か条
1. 母乳育児の方針を全ての医療に関わっている人に、常に知らせること
2. 全ての医療従事者に母乳育児をするために必要な知識と技術を教えること
3. 全ての妊婦に母乳育児の良い点とその方法を良く知らせること
4. 母親が分娩後30分以内に母乳を飲ませられるように援助をすること
5. 母親に授乳の指導を充分にし、もし、赤ちゃんから離れることがあっても母
乳の分泌を維持する方法を教えてあげること
6. 医学的な必要がないのに母乳以外のもの水分、糖水、人工乳を与えないこ
と
7. 母子同室にすること。赤ちゃんと母親が1日中24時間、一緒にいられるよう
にすること
8. 赤ちゃんが欲しがるときは、欲しがるままの授乳をすすめること
9. 母乳を飲んでいる赤ちゃんにゴムの乳首やおしゃぶりを与えないこと
10. 母乳育児のための支援グループ作って援助し、退院する母親に、このよう
なグループを紹介すること
先進国で母乳育児と比較した人工栄養の危険度
疾患 相対リスク
アレルギー疾患 2~7倍
中耳炎 3倍
胃腸炎 3倍
髄膜炎 3.8倍
尿路感染症 2.5~5.5倍
1型糖尿病 2.4倍
乳幼児突然死症候群 2倍
肺炎・気管支炎 1.7~5倍
炎症性腸疾患 1.5~1.9倍
ホジキン腫瘍 1~6.7倍
アメリカ小児科学会:母乳育児のすべて-お母さんになるあなたへ-, メディカ出版, 2002.
中耳炎を
減らします
肺炎を
減らします
下痢症を
減らします
母乳育児の利点
赤ちゃんにとっての利点 母親にとっての利点
1. 疾病の予防や軽症化
2. 母乳は最適な栄養源である
3. 顔全体の筋肉や顎を発達させ
る
4. 消化に良く、便秘になりにくい
5. 免疫機能を強化する
6. 愛着と信頼感を深める
7. いつも新鮮・適温・衛生的
8. アレルギーのリスクを下げる
9. 認知能力を発達させる
10.早期接触により体温・呼吸数
の安定や常在細菌叢の獲得
を助ける
1. 妊娠前の体重復帰を促す
2. 排卵を抑制する
3. 精神的な安定をもたらす
4. 乳癌・卵巣癌・子宮体癌の罹患率を
低下させる
5. 閉経後の大腿骨頸部骨折や骨粗鬆
症が減る可能性がある
6. 衛生的・経済的で手間がかからない
7. 災害時にも衛生環境が悪化しても、
授乳でき、母と子双方の精神的安定
に役立つ
8. 児が欲しがるとき、欲しいだけ飲ませ
ることができる
22
涌谷桐子編:すぐ使える70の事例から学ぶ母乳育児支援ブック, 2009(一部改変)
低出生体重児・早産児の母乳育児の利点
• 胃腸での停滞がより少なく、消化管の負担が少ない。
• 腸管の透過性改善や成熟を促す。
• 母乳中の酵素が児の未熟な消化吸収を助ける。
• MRSA保菌率や敗血症の罹患率が減少する。
• 壊死性腸炎のリスクが低下する。
• 知能指数を向上させる。
• 視機能を発達させ、未熟児網膜症のリスクが低下する。
• 抗酸化作用があり、酸化的ストレスから早産児を守る。
中村和恵:Neonatal Care 25(8):791, 2012 より作成
超早期授乳の炎症予防効果
Bacterial translocation*の増加
サイトカインの放出 超早期授乳
母乳中のインターロイキン10(IL-10)や
血小板活性化因子の不活化因子(PAF-AH)などの
抗炎症物質や、IgA、IgG等の免疫グロブリンが
腸管での過剰な炎症反応を抑えるためと考えられ
ている。
周 産 期 障 害
急性臓器障害(肺)
全身性炎症反応
仮死、低酸素、出血、敗血症
多 臓 器 不 全
*Bacterial translocation:細菌の腸管外への病的以降
大山牧子. JJPEN. 19(1): 31-7, 1997.
超早期授乳のMRSA保菌防御効果
河原田勉, 氏家次郎ら
超早期授乳および母乳口腔内滴下のメチシリン耐性
黄色ブドウ球菌保菌に対する防御効果
未熟児新生児誌. 2004; 16(2): 72-80.
目的: 超早期授乳によるMRSA保菌防御効果を検証
方法: 単一の大学病院NICUに入院した早産児
超早期授乳群を実施した早期群50名と、出生体重を
マッチさせた従来の授乳方法群50名と比較
結果:MRSA保菌率が有意に低下
早期群50例 従来群50例 有意差
在胎週数 30.2±4.2週 30.3±3.4週 N.S.
出生体重 1299±558 g 1257±473 g N.S.
抗生剤投与(生後3日以内) 20例 37例 P<0.001
人工換気日数 63.0±30.3日 59.3±45.9日 N.S.
入院日数 117.9±76.1日 127.4±79.8日 N.S.
授乳開始時間 16.6±3.8時間 145.5±111.4時間 P<0.001
100ml/kg/日に達した日齢 18.7±13.7 24.9±16.7 P<0.05
28.6%
47.4%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
MRSA保菌率
多変量解析では、
従来群がMRSAを
保菌する危険率は
早期産の11倍
敗血症の予防効果
Furman L, Taylor G, et al.
The effect of maternal milk on neonatal morbidity of
very low-birth-weight infants.
Arch Pediatr Adolesc Med. 2003;157(1):66-71.
目的: 母乳による極低出生体重児の死亡率改善に対する
量依存性効果の検証
対象: 単一NICUに入院した極低出生体重児109名
出生体重平均1,056g、在胎平均28週、男児57%
結果: 母乳栄養児79名(66%)
うち32名は生後4週まで母乳を50mL/kg以上与えられた
在胎週数、性別、人種などの交絡因子を除外しても、
母乳50ml/kg/day以上の児は敗血症の回数が73%低下
未熟児網膜症の予防効果
Hylander MA, Strobino DM, et al.
Association of human milk feedings with a reduction in retinopathy
of prematurity among very low birthweight infants.
J Perinatol. 2001; 21(6):356-62.
目的: 極低出生体重児の未熟児網膜症(ROP)発症率に
対する母乳栄養の効果を検証
対象: 単一大学病院NICUに入院した極低出生体重児283名
そのうち生存し眼科診察を受けた174名のみが対象
結果: 在胎週数、酸素投与日数、Apgarスコア5分値、人種等
交絡因子を除外しても、母乳栄養はROPのリスクを
54%低下させた。
未熟児網膜症の予防効果
神経学的発達の改善効果
Vohr BR, Poindexter BB, et al.
Beneficial effects of breast milk in the neonatal
intensive care unit on the developmental outcome of
extremely low birth weight infants at 18 months of age.
Pediatrics. 2006 Jul;118(1):e115-23.
目的: 超低出生体重児の認知・行動の発達に対する母乳栄養
の効果を検証
対象: 超低出生体重児1035名
在胎週数平均26週、出生体重平均約800g
結果: 母乳栄養群775名(74.9%) ※混合を含む
人工栄養群260名(25.1%)
神経学的発達の効果は・・・
神経学的発達の改善効果
• 修正18~22ヶ月時点におけるBayley発達検査において
母乳栄養群は人工栄養群と比較して
①精神発達指数 MDI≧85が有意に多く
②運動発達指数 PDIの平均値が有意に高く
③行動情緒評価 BRSのうち2項目が有意に高かった。
• 母乳栄養群では1歳までの再入院率が人工栄養群と比較して
有意に少なかった。(23.2% vs 30.1%)
• NICU入院中の母乳摂取量が10ml/kg/day増加する毎に、
MDIスコアが0.53ポイント、
PDIスコアが0.63ポイント、
BRSスコアが0.82ポイント上昇した。
→母乳はELBWにおいても量依存性に神経学的発達を改善
BFHIの新生児病棟への拡大の動き
 2010年 第4回先進国BFH会議
新生児病棟にもBFHを拡大していこうという動き
 2011年 第1回neo-BFHI会議 (スウェーデン)
世界24か国からの参加者
 2015年 第2回NeoBFHI会議 (スウェーデン)
世界32か国からの参加者、日本も初めて参加
1. 新生児病棟におけるBFHIの推進
2. 施設認定の枠組みについての議論
Neo-BFHI:BFHIのNICU拡大版
NeoBFHI:新生児病棟で母乳育児が成功
するための3原則と10か条
<3原則>
1. スタッフは個々の母親とその状況に注目する
こと
2. 施設は環境に配慮された家族中心のケアを
提供すること
3. 保健医療システムは産前、出産、産後ケア、
および退院後ケアを継続して行えるようにす
ること
NeoBFHI:新生児病棟で母乳育児が成功
するための3つの原則と10か条
<10か条>
1. 母乳育児についての基本方針を文書にし、関係する全ての
保健医療スタッフに周知徹底すること
2. この方針を実践するのに必要な知識と技能を、全ての関係
する保健医療スタッフにトレーニングしましょう
3. 早産児または病的新生児を出産するかも知れない妊娠中の
全ての女性に母乳分泌の確立・維持方法と母乳育児の利点
について情報提供しましょう
4. 産後早期からその後長期にわたって制限なく母親と赤ちゃん
の肌と肌の接触(カンガルー・マザー・ケア)が、正当な理由
のある場合以外は制限なく実施できるよう勧めましょう
5. 母親に母乳分泌の確立と維持の方法を教え、赤ちゃんの常
置が安定していることだけを唯一の基準として早期からの直
接授乳を確立させましょう
NeoBFHI:新生児病棟で母乳育児が成功
するための3つの原則と10か条
<10か条>
6. 医学的に必要でない限り、赤ちゃんには母乳以外の栄養や
水分を与えないようにしましょう
7. 母親と赤ちゃんが24時間一緒にいられるようにしましょう
8. 赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょ
う。早産児と病的新生児には、必要に応じて準自律哺乳を
以降の過程として勧めましょう。
9. 少なくとも直接授乳が確立するまでは人工乳首以外の方法
を用い、おしゃぶりやニップルシールドは正当な理由がある
場合にのみ使用するようにしましょう
10. 両親が母乳育児を継続できるように支援し、退院後利用で
きる母乳育児を支援するサービスやグループについて紹介
しましょう
NICU/GCUにおける
母乳育児支援の実態
NICUを有するBFH施設アンケート
【目的】
• 今後のNeoBFHI活動推進のために、NICU/GCUを有する
BFH認定施設における施設概要や母乳育児支援の実態を明
らかにすること。
【方法】
• BFNICUワーキングチームで調査用紙を作成し、2016年3月
時点でNICU病棟を有するBFH28施設に郵送し回答を得た。
• 施設概要は2015年4月1日時点、入院数は2015年データで
回答を依頼した。
【結果】
• 震災のため休止中の1施設を除く、27施設より回答を得た。
(有効回答率96%)
菊池新, 畑崎喜芳ら:新生児成育医学会誌28(3):744-745,2016.
結果:施設概要(認定・病床数)
1) 周産期施設認定 2)NICU病床数
39
48%
52%
総合周産期母子医療センター
地域周産期母子医療センター
22%
56%
18%
4%
3-6床 9-12床 15-21床 24床-
結果:施設概要(入院数)
3) 年間入院数(NICU+GCU) 4)体重別入院数
40
37%
33%
19%
7%
4%超低出生体重児
-10人
11-20人
21-30人
31人-
無回答
7%
30%
37%
4%
11%
11%
-100 101-200 201-300
301-400 401-500 501-
30%
33%
18%
15%
4%極低出生体重児
-10人
11-20人
21-30人
31人-
無回答
結果:施設概要(NICU看護スタッフ)
7) スタッフ総数 8) 1床ごとのスタッフ数
41
7%
15%
41%
22%
4% 11%
-10名 11-20名 21-30名
31-40名 41名- 無回答
※看護師・助産師合計 11%
19%
52%
7%
11% <2.0
2.0-2.5
2.5-3.0
3.1-
無回答
15%
56%
7%
11%
11% 0%
1-33%
34-66%
67%-
無回答
9) 助産師割合(%)
結果:施設概要(GCU看護スタッフ)
10) スタッフ総数 11) 1床あたりのスタッフ数
42
11%
30%
26%
7%
4%
22%
-10名 11-20名 21-30名
31-40名 41名- 無回答
※看護師・助産師合計
22%
37%
8%
11%
22%
<1.0
1.0-1.5
1.6-2.0
2.1-
無回答
11%
52%
4%
7%
26%
0%
1-33%
34-66%
67%-
無回答
12) 助産師割合(%)
結果:施設概要(家族用設備)
14) 家族用スペース 15) カンガルーケア実施時の
プライバシー確保
43
48%
52%
家族が休憩・食事できる部屋
あり なし
41%
59%
保育器周辺の家族スペース
あり なし
89%
22%
15%
26%
4%
結果:母乳育児支援に関する方針
67%
29%
4%
方針の有無
あり
あし
無回答
61%
39%
方針あり:文書化
文書あり
文書なし
56%
22%
22%
方針なし:決定者
主治医判断
看護職判断
その他
結果:初乳までの経腸栄養管理
初乳が得られるまでの
経腸栄養管理
もらい乳実施の有無
59%
0%
7%
70%
11%
15%
15%
70%
あり
特殊症例のみ
なし
結果:母乳育児支援に関する教育
39%
8%
9%
22%
9%
13%
部門共通
年1-2回
年3-4回
年5-6回
年9-10回
年12-24回
50%
25%
12%
13%
病棟単独
年1-2回
年3回
年6回
無回答
85%
30%
4%
① ② ③
実施の有無と方法
①部門共通
②NICU・GCU単独
③決まった教育なし
結果:産前の情報提供
37%
67%
74%
4%
22%
52%
67%
実施者の職種
全体
緊急母体搬送
19%
89%
19%
11%
63%
緊急母体搬
送
全体
0% 50% 100%
実施の有無
あり
なし
時間的余裕があれば
結果:産前の情報提供実施状況
8%
12%
40%
36%
4%
全体の実施率
0-25%
25-50%
50-75%
75%-100%
無回答
16%
92%
84%
92%
4%
① ② ③ ④ ⑤
情報提供の内容
① 10か条全部 ③ 母子関係の
② 治療上早産児や 確立に重要
疾患児に母乳が ④ 搾乳が必要な理由
必要である理由 ⑤ その他
早産児に対する
母乳育児支援の実際
いつから直接哺乳を開始するか
• 生後早期から口腔周囲に適切な刺激を与える
(母親の指、綿棒による母乳塗布)
• 人工呼吸器から離脱したらカンガルーケア時に乳頭
をふくませる
• できるだけ不快な刺激を避け、おっぱいに触れたり、
なめたり、匂うなど、乳房を快適な場所と思わせる
• 直接授乳の開始基準は、修正週数や体重で一律に
決めず、呼吸や心拍の安定していることが重要
• 最終的な決定はお母さんと赤ちゃんが行う
水野克己著編:エビデンスに基づく早産児母乳育児マニュアル
早産児にとっての直接授乳の利点
• 哺乳瓶と比較すると1回の哺乳量は少ないが、
無呼吸やSpO2低下が少なく、より安全である。
• 長期に搾乳を続けてきたお母さんにとって、
効果的な母乳分泌刺激の方法であり、
また児の成長を肌で感じることができる。
哺乳方法による摂取量の違い
対象:
超低出生体重児12名
平均在胎26±2週
平均出生体重672±95g
方法:
経口哺乳を1日1回10日間
観察し、哺乳前後での
体重測定で哺乳量を計算
びん哺乳
平均31g
直接授乳
平均9g
射乳反射により、哺乳力に見合った量の母乳が分泌され、
直接哺乳では児は自分のペースで哺乳している
Blaymore Bier JA, et al. Pediatrics; 100(6): E3, 1997.
酸
素
飽
和
度
体
温
心
拍
数
呼
吸
数
直接授乳のほうが有意に
酸素飽和度・体温が高かった
直接授乳のほうが
呼吸数が多い傾向があった
Blaymore Bier JA, et al. Pediatrics; 100(6): E3, 1997.
早産児の哺乳行動評価(Nyqvistら)
修正28週 しっかりした探索
効果的な乳輪把握
より長く吸着が可能
修正31週 繰り返し嚥下が可能
修正32週 長い吸啜が10回以上
長短の吸啜が30回以上
ウプサラ大学での哺乳開始基準
「重症や不安定な状態でないこと」
KMC中に児がおっぱいを欲しがったら
• カンガルーケア前に搾乳し、いつでも開始できる
準備を
• カンガルーケア中に
「おっぱいを欲しがるサイン」
が見られるようになったら、おっぱいを吸わせてみる
おっぱいを欲しがるサインFeeding Cues
早めのサイン 遅めのサイン
• 体をもぞもぞと動かす
• 手や足を握りしめる
• 手を口や顔に持ってくる
• 探索反射を示す
• 軽く(または激しく)おっぱいを
吸うように口を動かす
• 舌を出す
• クーとかハーというような
柔らかい声を出す
• 啼泣
• 疲れきってしまう
• 眠りこんでしまう
Crying is a late
indicator of
hunger
『泣くのは空腹の
遅めの合図』
授乳に適した児の睡眠/覚醒状態
深
い
睡
眠
浅
い
睡
眠
う
と
う
と
静
か
な
覚
醒
活
動
的
な
覚
醒
啼
泣
State 1 2 3 4 5 6
この時期を選ぶ
Brazelton TB, Nugent JK, Neonatal Behavior Assessment Scale, 3rd ed. 1995.
いわゆる「乳頭混乱」を減らすために
補足用デバイスの種類
①カップ、スプーン
②シリンジ、スポイト
③ニップルシールド
④ナーシング・サプリメンター
⑤フィンガー・フィーディング
⑥スペシャルニーズフィダー・唇顎口蓋裂用乳首
⑦通常の哺乳瓶と人工乳首
水野克己著編:エビデンスに基づく早産児母乳育児マニュアル
カップフィーディング
<有利な点>
• 人工乳首を避け、いわゆる「乳頭混乱」を減らす
• 安価で入手しやすい
• 使いやすく、母親や家族に教えやすい
• 無呼吸や徐脈の出現においては、哺乳瓶と同じくらい安全
• 災害時や衛生環境が良くない地域でも利用できる
<不利な点>
• 摂取量が増えると注ぎ足す必要がある
• 哺乳瓶を比べると少量しか摂取できず、時間がかかる
• 児が「吸啜」を学びにくい
• こぼれやすい Malhotra N, et al. Early Hum Dev. 54: 29-38, 1999.
Dowling DA, et al. J Hum Lact. 18(1): 13-20, 2002.
さまざまな授乳用カップ
英Orthofix『Feeding Cup』
Medela『ベビーカップTM』
Bondla (Paladai)
1800年代に
使用されていた
授乳用陶器
その他の主な補足デバイス
スペシャルニーズフィダー
• 口唇口蓋裂や他の神経学的な
障害を持つ赤ちゃん向け
• 哺乳力に合わせた流量調整が
可能
• 逆流防止弁により母乳が
溢れ出るのを防止
ソフトフィダー
• 少量の母乳を飲む赤ちゃんや
吸啜の練習、投薬に使用
• シリンジへ直接取り付けて使用
• ソフトシリコーン製で、
赤ちゃんの口を傷つけない
ベビーカップ
• 早産児、哺乳力の弱い赤ちゃんや
短期的なデバイス使用時
• 少量の補足や
投薬に使用
• 目盛表示付き
ソフトカップ
• 早産、哺乳力の弱い赤ちゃん、
短期間な使用時
• スプーン形のソフトな吸い口を、
赤ちゃんの下唇の上にのせる
• 母乳をこぼしにくく、どれだけ
母乳を摂取したかわかりやすい
補足用デバイスの選択基準
• 安全に使用できるか
• 低コストであり、入手しやすいか
• 使いやすく、清潔に保ちやすいか
• 児へのストレスが少ないか
• 適切な量の乳汁を20~30分で哺乳できるか
• それを使用する期間は長期か
• その方法は母乳育児技術の習得に役立つか
Wight NE. Pediatr Ann. 2003; 32(5): 329-36.
カップと哺乳瓶による哺乳の影響
Yilmaz G, et al.
Effect of Cup Feeding and Bottle Feeding on
Breastfeeding in Late Preterm Infants:
A Randomized Controlled Study.
J Hum Lact; 2014. 30(2):174-9.
【目的】
早産児でのカップと哺乳瓶による哺乳が長期の母乳育児に与
える影響について検討
【方法】
経口哺乳開始前の在胎32~35週の早産児522名を、
無作為にカップ授乳群254名、瓶哺乳群268名の2群にわけて
退院時、退院後3か月、6か月時点の母乳育児状況を検討
カップと哺乳瓶による哺乳の影響
在胎32~35週の後期早産児
を出産した母親733名
同意の得られた607名を
ランダム化
研究に同意得られず126名
瓶哺乳308名 カップ哺乳299名
検討対象268名
退院時・退院後3か月・
退院後6か月に調査
検討対象254名
退院時・退院後3か月・
退院後6か月に調査
研究方法を逸脱21名
要治療状態19名
研究方法を逸脱26名
要治療状態19名
結果:退院時、退院後3・6か月の母乳率
母乳または混合
91
82
59
99
88
69
0
20
40
60
80
100
退院時 3か月 6か月
哺乳瓶 カップ
母乳のみ
46 47
42
72
77
57
0
20
40
60
80
100
退院時 3か月 6か月
哺乳瓶 カップ * P<0.001
** P<0.0001
** ***
*
カップ授乳は災害時対策の一つ
【授乳用カップ】(一部抜粋)
• 流水が使用できずまた電気やガスも使えない場合は、洗浄が
難しいので、哺乳びんも吸い口つきのコップも不適切である。
• 乳児用哺乳びんはたとえ最適な環境であっても、適切に洗うこ
とがとりわけ困難である。イギリスでの哺乳びんの洗浄度を調
べた研究によると、洗った哺乳びんの60%以上が清潔とはい
えないレベルに細菌で汚染されていた。
• 災害時には、使える水の制限があり、調乳する場所も汚染され
ており、哺乳びんと人工乳首を適切に洗浄することは不可能で
あろう。よって、児の感染症のリスクが高くなる。災害時を含
め、資源の不足している状況において人工乳を飲ませなけれ
ばならない場合は、カップで授乳することが勧告されている。
Gribble KD, Berry NJ. Int Breastfeed J. 2011 Nov 7;6(1):16.
実際のカップ授乳
• YouTubeTM
「カップ授乳」または「コップ授乳」で検索
• NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会
「カップを使っての授乳」(大山牧子先生)
http://jalc-net.jp/hisai/cupfeeding2005.pdf
早産児の経口哺乳確立に向けて
• お母さんにあらかじめ時間が必要なことを伝えておく
「○○ちゃんペースで少しずつ飲めるようになります」
• 早産児の哺乳の特徴をお母さんに説明して、あせらず、
根気よく支援する
• 直接授乳の機会が増やせるよう、面会について話し合う
一回の面会時間を延ばす
面会回数を増やす
覚醒に合わせて夜間に面会する など
• 自律哺乳に向けて母子同室がスムーズに行えるよう調整する
眠りがちの赤ちゃんを起こす方法
• 毛布や厚い衣服を脱がせ、赤ちゃんが手足を動かし
やすくする
• 赤ちゃんを抱く角度をもう少し起こして授乳する
• 赤ちゃんの体をやさしくマッサージして話しかける
(頬や足を叩いたりつっついたりして痛みを与えるこ
とは避ける)
• それでも起きなければ30分待ってから再度試みる
赤ちゃんがよく泣く場合
• バスタオルで身体全体をしっかりと包み込む
• それだけでは落ち着かない場合、赤ちゃんの首の後
ろと太ももを抱え、丸まった姿勢をとってみる、
あるいはやさしく揺らしてみる
• バスタオル等でくるんだまましっかりと抱いておっぱ
いをあげてみる
• できるだけ部屋は薄暗く、静かな環境が望ましい
多胎の赤ちゃんの場合
• 早産児、低出生体重児で産まれることが多い
• 同胞間で体重差がみられることも少なくない
• 正期産児でも、呼吸や哺乳などいろんな面で
未熟性を認める場合がある
• 複数の赤ちゃんを育てる上で、
夫や家族の協力、社会資源の
利用が不可欠になってくる
多胎の赤ちゃんの母乳育児支援
• 多胎の授乳方法は基本的には単胎と同じ
(ポジショニング、ラッチオン)
• ひとりずつ授乳する以外に、同時授乳することもできる
• 同時授乳によって授乳時間が半分になる
• 母親が赤ちゃんの扱いに慣れてから勧めていくと良い
• 「双胎・品胎の場合も十分な量の母乳を出すことができる」と
いうことを支援者が理解した上で、お母さんの考え方や負担を
考慮して個別に授乳方法を決定する
早産児の
サイトメガロウイルス感染症
サイトメガロウイルス(CMV)
• 正式名称:ヒトヘルペスウイルス5(HHV-5)
• 免疫能が正常であれば大半は無症状で
多くは幼少期に感染(不顕性感染)
その後生涯にわたって潜伏感染
• 感染経路:感染者の血液・唾液・尿・涙・母乳・精液等
• 母子感染経路は3つ ①血行性:子宮内で胎盤を通して
②経産道:出生時に
③経母乳:出生後の経母乳感染
• 潜伏期間:20~60日
• 免疫が低い超早産児や免疫不全を有する乳幼児では
重篤な症状を呈することがある
CMV母子感染における2つの問題
1. 妊娠初期の母親が初めてCMVに感染
し、胎児にもCMVが感染する
「先天性CMV感染症」
2. 早産で出生し、出生後に母乳を介して
CMVに感染する
「早産児の(後天性)CMV感染症」
先天性CMV感染症
• 妊婦が初感染すると約40%で胎児の先天性感染が発生
• 感染児の約2割で低体重、小頭症、点状出血、血小板減少、
肝脾腫、黄疸、難聴、知的障害、網脈絡膜炎などの臨床症状
あり
• 脳内石灰化や脳室拡大などの
頭部画像所見の異常を加えると
約3割が症候性
• 一部の感染児においては、出生時
無症候性であっても、遅発性に
難聴や精神発達遅滞を発症
• 発生頻度は全出生児300人に1人
(先天性代謝異常より多い)
CMV母子感染と出生児障害のリスク
妊婦のCMV抗体保有率:1980年は93%→2005年には70%まで低下
CMVの経母乳感染に関する報告
 Vochemら(ドイツ1998)
• 対象:在胎32週未満の極低出生体重児
母
56名
CMV IgG抗体 母乳中CMVDNA
陽性29名(52%) 23名(93%)
陰性27名(48%) -
児
67名
後天性CMV感染17名(25%)
時期 人数 在胎(平均)
生後8週~ 12名 29.9±1.8週
生後4~7週 5名 24.4±0.5週
CMV抗体陽性の母に限定すると27名中17名(59%)が感染
すべて超低出生体重児
うち4名に顕著な症状あり
CMVの経母乳感染に関する報告
 Buxmannら(ドイツ2009)
対象:在胎31週以下の早産児
栄養:在胎33週まで凍結母乳を使用
母48名
母CMVIgG抗体陽性
29名(60%)
母体CMVIgG抗体陽性の児35名
尿中CMV陽性5名(14%)⇒うち2例が発症
1 人工換気を要する肺炎
2 上気道感染症状、一過性血小板減少
症候性CMV感染児は、無症候性感染児に比べ有意に
入院期間が長く、有意に人工乳使用量が多かった。
母体CMV-IgG抗体価は症候性CMV感染児で有意に高かった。
早産児における重篤なCMV感染症
 Okulu E, et al. 2012(トルコ)
在胎28週 880g 男児 日齢1~新鮮母乳栄養 日齢35に発症
症状:呼吸状態・皮膚色悪化、肝腫大、活動性低下
検査:GOT/GPT/gGTP 354/148/236 U/L, D-Bil 15.8 mg/dL
血清・尿・気管分泌物中CMVDNAを検出
母乳中CMVDNA 1,600,000 copies/mL
治療:日齢42~Ganciclovir を25日間継続
予後:入院中のABRは正常(それ以外の記載なし)
 Fischer C, et al. 2010(スイス)
在胎28週6日 780g 男児 冷凍母乳栄養 日齢58に発症
症状:血便、血小板減少、好中球減少、肝脾腫、呼吸障害
検査:尿中CMVDNA 581,100 copies/mL
治療:Ganciclovirを28日間継続
予後:修正18か月にて軽度発達遅滞あり
CMV抗体陽性母体からの経母乳感染
新鮮母乳での感染率 凍結母乳での感染率
報告者 感染率
Vochem M他, 1998 59% (17/29)
Hamprecht K他, 2001 38% (33/87)
Mosca F他, 2001*1 25% (5/20)
Miron D他, 2005 6% (4/70)
Meier J他, 2005 55% (21/55)
*1 対象34週未満, 免疫グロブリン投与
報告 感染率
Sharland M他, 2002 5.5% (1/18)
Yasuda A他, 2003 *2 10% (3/30)
Jin WT他, 2004 *3 15% (6/40)
Wakabayashi他, 2012 *4 71% (5/7)
*2 生後6-11日は新鮮母乳、その後
凍結母乳
*3 在胎35週未満かつ出生体重1500g未満
*4 感染者4名は母乳栄養、残る1名は
混合(母乳80%)
NICUにおける
もらい乳と母乳銀行の現状
もらい乳の実態調査
「もらい乳」32施設で実施、無殺菌で感染例も…厚労省研究班調査
• もらい乳を、全国の新生児集中治療室(NICU)の25%が実施していること
が、厚生労働省研究班による初の実態調査で分かった。殺菌していないも
らい乳を通じ、早産児が感染症にかかったとみられる例もあり、研究班は
今年度中に殺菌の手順などをまとめた運用基準を策定する。(中略)
• 調査は今年7月、NICUがある全国179施設に実施した。回答した126施
設中、32施設(25%)がもらい乳を使っていた。もらい乳は、冷凍保存した
ものが早産児に提供されるが、低温殺菌していないため、早産児にウイル
スや細菌が感染する危険性がある。
• 今回の調査では、もらい乳が原因と考えられる感染症の有無を尋ねたとこ
ろ、早産児が感染すると重症化するサイトメガロウイルスと、薬が効きにく
いタイプの大腸菌の2件が報告された。(中略)
• 調査をまとめた同病院の水野克己小児内科教授は、「早産児は年々増え
ており、母乳バンクの需要は高まっている。安全な母乳を提供できるシス
テムを広めたい」と話している。
(2014年11月6日読売新聞)
もらい乳:ドナーの適応(高槻病院)
以下の基準を満たす母親で、医師から提供を依頼し、
同意を得られた場合に母乳の無償提供を依頼する。
① 妊娠中血液検査で梅毒・HBV・HCV・HTLV-1・HIVが
すべて陰性であること。
② 妊娠中血液検査でCMV抗体がlgG/lgMともに陰性(未
実施の場合は産科に検査を依頼する)であること。
ただしレシピエントが在胎≧35週の場合、CMVlgG(+)、lgM(-)でも可。
(ドナーがCMVlgM抗体(+)の場合母乳中のウイルス量が多い)
③ 直近3か月以内に輸血歴がないこと。
④ もらい乳開始時点で喫煙や授乳禁忌となる薬剤を内
服していないこと。
もらい乳:レシピエントの適応(高槻病院)
• 以下のうちで、母親自身の母乳が入手できない場合、
もらい乳の利点と注意点を医師から家族に説明し、
書面にて同意を得られた場合にのみ実施する。
1. 極低出生体重児の急性期:胎便栓症候群や壊死性腸
炎予防目的
2. 極低出生体重児の消化管手術後
3. 母乳以外の栄養で腸管原性の感染症(主に腸炎、壊死
性腸炎、敗血症)を繰り返した場合
4. その他主治医が必要と判断した場合
(例:母が抗がん剤投与中、活動性結核罹患中など)
※極低出生体重児は1000g未満の児も含みます。
もらい乳:説明書と同意書(高槻病院)
母乳中ウイルス不活化の方法
方法 感染防御効果
冷凍
-20℃7日間
ウイルス量は1/10~1/100に減少するが、
完全に感染力をなくすことはできず、
重篤なCMV感染症を呈する早産児の報告あり
低温殺菌
62.5℃30分
ほとんどのウイルスを不活性化する効果あり
ただし酵素活性の低下など失うものも多い
高温殺菌
72℃5-16秒
感染性は低温殺菌同様に消失する
酵素類の失活は低温殺菌に比べて少ない
院内母乳銀行の運用開始(昭和大学)
日本製母乳低温殺菌装置の開発
2017年1月現在
医薬品医療機器総合機構
(PMDA)による審査中
Take Home Message
• 多くのお母さんが母乳で育てたいと思っています
• そしてもちろん健やかに育ってほしいと切に願っています
• 正期産児や健康な赤ちゃんはもちろん、早産児や病気をもつ
赤ちゃんにとっても母乳は最高の栄養です
• 周産期医療に関わる私たちは、すべてのお母さんがわが子
がより健康に育つために必要な支援をしています
• 母乳を含む乳幼児の栄養について、必要でかつ適切な支援
ができるよう、十分な知識と技能が必要です
• 今あなたが働いている施設の母乳育児支援がお母さんや赤
ちゃんにとってどうなのかを振り返っていただくことで、さらに
何が必要かを考えていただくきっかけになれば幸いです

母子愛育会研修会2017『NICUにおける母乳育児支援』

Editor's Notes

  • #4 当院の概要です。病床数477床、2001年に総合周産期母子医療センター、2008年に赤ちゃんにやさしい病院の認定を受けており、現在産科47床、MFICU6床、NICU21床、GCU30床です。
  • #58 上段:児の様子 下段:母乳育児 <うとうとした状態> 目は聞いているかも、不規則な呼吸、軽い驚愕反射を伴う体の動き、リラックスしている 刺激で覚醒するが容易に睡眠の状態に戻る。非栄養的吸畷がみられる。 <静かな覚醒> 目はぱっちり、刺激に反応、最小限の体の動き 他者と相互に関係、むずかったりイライラする前なら授乳を試みるよいタイミング <活動的な覚醒> 目は開いて、速く不規則な呼吸、刺激や不快に対してより敏感、活動的 おむつ交換や抱っこして静かに話してなだめる、啼泣し始める前に授乳を開始 <啼泣>遅めのサイン 目は開けているorぎゅっと閉じて、不規則な呼吸・吸啜、とても活動的、四肢をバタバタ 授乳を試みる前に、抱っこ、おくるみ、静かに話しかける、ゆらゆらさせる、などでなだめる。