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森に学び、森を守る
「雲南市の地域自主組織」
×里山再生 ×「雲南市の教育」
平成26年3月
プラチナ構想スクール
雲南市 板持 周治
(政策企画部地域振興課)
=∞
●神話が息づく、奥深い歴史がある。
●安心安全な食を先導する民間事業者がある。
●森林が8割弱を占める豊かな自然環境、未利用資源がある。
●高度経済成長期以前は、「たたら製鉄」が盛んで、身近な里山が
あった。
●“雲南市の地域自主組織”とも云われる小規模多機能自治組織が
市内全域にあり、住民自治力・自律力が強い。
●“雲南市の教育”とも云われる、体系的なふるさと教育・キャリア教
育が充実している。
雲南市の特徴
1
2
SWOT分析
強さ 弱さ
可能性 リスク
・未利用資源として、森林資源が
豊富にある。
・里山への関心が高まっている。
・環境問題への関心は地球規模
で高い。
・過疎化、高齢化が進行。
・中山間地域で、平地が少ない。
・雇用吸収力が低い。
・住民自治力が高い。
・森林資源が豊富。
・教育が充実している。
・高齢化先進地。
・普通交付税一本算定による
財政力の低下。
①森林面積が8割弱と大部分を占めるにも関わらず、
有効利用されていない。
②近年、林地残材を利用した森林バイオマスのエネ
ルギー利用(チップボイラー)に取り組んでいるが、
根本的な解決につながるのか?
③H24年度に、各地域の拠点である約30の交流
センターの施設整備計画を策定。今後の整備に
あっては、「原則木造」を打ち出した。
着想の背景
3
4
①雲南市の森林の状況
・民有林面積 約4万ha(総面積の73%)
・スギ・ヒノキ人工林 1.4万ha(35%)
・人工林の大半が間伐対象森林
4
②森林バイオマスエネルギー事業
• 森林~チップ燃料~熱供給のサプライチェーンを構築。
収集・運搬
市民参加型林地残材収集
残材の保管(乾燥) チップ化 供 給
森林整備 林地残材収集
ストックヤード(中継土
場)の設置
○大原地区(加茂)
○飯石地区(掛合) 山陰丸和林業、
一部移動式破砕機
でチップ化
公共施設へ先行
的に導入。後に、
民間施設に拡大
○熱利用
○空調利用
熱需要施設などへの
木質チップボイラーを設置
運 搬
5
(特徴)市民参加型収集運搬システム
6
H26年2月時点で、745トンを市民参加で収集
木材利用の根幹は、モノとしての利用
7
■プラチナ構想ハンドブックP.122
国際連合大学 武内副学長
「2-5環境を保全し農林水産業を再生する」より
「バイオマス利用については、まずモノとして利
用することをエネルギー利用よりも優先すべき
である。木質バイオマスの場合は、木材として
の利用を優先し、端材などその残りをエネル
ギーに利用する。」
Ⅰ 交流センターの基本的基準
~交流センターはどんな施設であるべきか~
Ⅱ 基本的整備方針
~どのような整備を行うか~
・建て替え or 改修 or 移設
・耐震化、長寿命化
Ⅲ 判断基準
~整備(優先順位含む)の判断基準~
Ⅳ 施設別整備方針
約30施設
8
③交流センター施設整備計画
【H24年度策定】
①地域自主組織の活動拠点としての機能を発揮できること。
→対策)・一定規模の事務室が確保できること。
・地域の創意工夫が活かせる施設に。
②地域住民が寄りやすい場所であること。
→対策)地域の中心地が望ましい。
③地域住民(子ども~高齢者)が集える施設であること。
→対策)集会機能(最も多い集会)。
高齢化社会に対応したものであること。
→バリアフリー、集会室はできるだけ1Fに。福祉トイレ・・・等
④地域の防災拠点としての機能が発揮できること。
→対策)耐震、耐水害、避難所機能(調理室、シャワー等)
9
Ⅰ 交流センターの基本的基準
~交流センターはどんな施設であるべきか~
【交流センター施設整備計画(骨子抜粋)】
10
①施設の安全性、交流センターとしての機能が低い施設は、改修ま
たは建て替えを検討する。
②里山再生、定期的なメンテナンスコスト、整備のし易さ、地域密着
の施設であること等を考慮し、建て替えは原則木造、改修について
も内装の木質改装を検討する。
③旧耐震基準で建築された建物(S56.6以前)については、耐震診断、
それに伴う改修経費、現時点での経過年数等を鑑み、基本的には
建て替えとし、安全性の確保から早期の整備を検討する。
④近隣公共施設との一体化が地域自主組織の強化につながると考
えられる場合は、一体化を視野に施設整備を検討する。
⑤一定の安全性、機能性が担保できる施設については定期的なメ
ンテナンスを計画的に行い、長寿命化を図る。
Ⅱ 交流センターの基本的整備方針
~どのような整備を行うか~
【交流センター施設整備計画(骨子抜粋)】
11
「なお、木造化にあたっては、その地域産材、もしくは雲南市産材の利用を優先
するとともに、伐採、建築、植樹、育樹といった一連の循環型サイクルを教育面
でも活用するよう努めるものとする。」
木造化スキームのポイント
【交流センター施設整備計画(骨子抜粋)】
■「林地本材」として活用し、里山再生を王道で!
■子の代、孫の代まで愛着のもてるものに!
■自分達の地域に愛着を育むきっかけに!
■「木」の特性を活かす!
⇒教育への活用
…伐採~乾燥~製材~建築~植樹~育樹~ の循環型サイクル
⇒セルフビルド・セルフリペア
…一部は地域で仕上げ、簡易な修理は自らできるように。
(アイディアの前提)
■未利用資源として、豊富な森林資源を活かすこと。
…本材利用を軸とした、構造的問題の解決。
■小規模多機能自治による、住民自治力を活かすこと。
■次代の人材を育てる持続的な仕組みにすること。
(基本的な方向性)
■地域力を活かした、身近で、持続的な、循環型社会の構築
(基本アイディア)
■地域のハブとなる身近な建築物への地元材の活用。
■地元材の活用を通じた、教育(子ども)と学習(大人)の循環。
⇒地域の「人」×「材」による、循環型地域社会の構築
基本アイディア・方向性
12
※整備一巡で
市内全域をほぼ網羅。
※数年に1回はどこかの施設を整備。
基本スキーム
13
計画的整備
本材(建材) 林地残材
小規模多機能自治力
交流C
植樹・保育・
学び
森林
教育
交流センター木造化スキーム
山林
14
森林
組合
製材所
建築
業者
設計
業者
市
専門家
監修
地域
自主
組織
議会
①全体計画作成
②中期計画作成(5年間)
③’事業計画作成
①’②’③’計画説明
④予算上程(設計・木材調達)
⑫予算上程(施工)
④’⑫’予算承認
③事業計画協議
⑤実施
設計
発注
⑥設計
協議
⑦成果品
納品
⑧木材 調達発注
⑨伐採地協議
⑩伐採
(前年秋冬)
⑪搬出・乾燥
(約1年半)
⑯製材
県中山間
地域研究C
島根大学
⑮乾燥・
強度試験 ⑬施工
発注
⑬’施工計画協議
⑭木材調達
⑰納品
⑱完成
引渡し
⑲成果報告
⑳意見
全般的監修
1年目 2年目 3年目
設計・伐採 乾燥・植樹 木材試験・施工 ねらい)里山再生、教育(校外学習)・生涯学習の場、施設への愛着醸成等
植樹協議
植樹指導
新植発注
森林環境教育の導入
15
■導入モデル
国際NGO FEE Japan(国際環境教育基金)
による、北欧で開発された国際的な森林環境教育プログラム。
“森林(もり)の国”日本こそ、導入すべき!
⇒フィールドはあるので、インストラクターを養成
※(一社)FEE Japan HPより
森林環境教育の導入
16
※(一社)FEE Japan HPより
マルチステークホルダープロセス
17
■プラチナ構想ハンドブックP.121
国際連合大学 武内副学長
「2-5環境を保全し農林水産業を再生する」より
「複合産業化を可能とするためには、それを束
ねる新しい地域管理の仕組みが必要である。
私たちは、それを「新たなコモンズ」と呼んでい
る。農林水産業従事者に加えて、地方自治体、
企業、NPO、都市住民など、さまざまなステー
クホルダーが水平的な関係を維持しながら、そ
れぞれの役割を発揮しつつ、地域管理に参画
する仕組みである。」
マルチステークホルダープロセス
(推進体制)
18
森林
組合
市
地域自
主組織
学校
製材所 建築
業者
設計者
専門
機関
監修者
地域
円卓会議
※基本計画時点から開催
19
交流センター建築実例
松笠交流センター(H26年3月竣工予定;改築)
…木造平屋建て、床面積444㎡
木材使用量179.31㎥(うち県産材0.89%、市産材0%) ←整備計画策定前
建築費約1.27億円(㎡当り28.6万円)
木材使用量をこれまでの実例から1施設当り180m3と仮定すると、
森林面積換算で実質1~1.5ha程度にしかならないが、地域のシン
ボルとしての発信効果は高い。
こうした流れをつくることができれば、学校施設はもとより、住宅への
地元産材の利用への波及効果が期待できる。
そして、ここに教育と学習の要素を組み入れることにより、学んだ子
ども達が大人になった時には、森林は生活の一部となり、当たり前
のように地元産材を使ってくれる“循環サイクル”につながっていく。
森を活用する、というよりも、「森に学び、森を守る」。
これが本プロジェクトの本旨である。
20
おわりに
雲南市:板持

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