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第25回日本サイコオンコロジー学会シンポジウム
- 3. 自己紹介
2004年3月 福島県立医科大学卒業
2004年4月 福島労災病院 初期臨床研修医
(新臨床研修制度第一期生)
2006年4月~2010年3月
福島県立医科大学麻酔科学講座
ペインクリニック・緩和ケアチーム・(麻酔)
2008年4月~10月
国立がんセンター中央病院精神科
短期がん専門研修医
2010年4月~
医療法人社団爽秋会
ふくしま在宅緩和ケアクリニック
在宅緩和ケア医として勤務
第25回日本サイコオンコロジー学会 シンポジウム
6ヶ月間のサイコオンコロジー研修
- 5. 当院の紹介
• ふくしま在宅緩和ケアクリニック
• ふくしま緩和ケア訪問看護ステーション
• 爽秋会ふくしま在宅緩和ケア支援事業所
<スタッフ>
医師 2名(常勤) 看護師 5名 ケアマネジャー兼MSW 2名 事務員 2名
【主な患者種別・人数など】
<常時受け持ち患者数>
・在宅がん患者 約20名
(がん患者の年間看取り数 昨年は約80名)
・有料老人ホーム1施設(非がん) 約30名
・グループホーム2施設(非がん) 計約30名
・在宅非がん患者(高齢者、脳血管疾患、神経難病など) 約35名
【がん患者の平均在宅療養日数】 70.7日 (1ヶ月未満≒50%)
第25回日本サイコオンコロジー学会 シンポジウム
- 11. せん妄 ⇒ 家族の介護負担 ↑
60代 男性 妻・息子と同居
診断名:膵臓癌末期、肝転移、二次性糖尿病
経過:X年5月確定診断。X年12月当院紹介となる。
痛みにモルヒネ持続静注とNSAIDsの併用。退院日に初回訪問。
帰宅後、満足感とともに痛みが軽減し、モルヒネ投与量を漸減。
1月上旬から「こんな病気になってしまって情けない」、
「夜間眠れない」の訴えに、アルプラゾラム頓用投与開始。
1月下旬から、「ここは福島か」「たばこ・・・コーヒー・・・」などの言動
あり。ハロぺリドール投与、モルヒネ以外の薬剤の中止にても昼夜
逆転・徘徊などの行動が持続。看護師連日訪問して対応したが家
族介護負担も大きく、経過観察・そのままご自宅で永眠。
家族:「これがもう少し続いていたら在宅継続無理だった」と
- 12. 治療を必要としなかった せん妄 の1例
70代 男性 妻・息子と同居
診断名:胆管癌末期、癌性腹膜炎、多発骨転移
経過:初発から17年の経過。経過中に3度の手術を経験。病状もすべて理解し
ており、経口摂取ができるうちの退院を希望され、X年2月当院紹介となる。
退院後早期にご自宅で宴会を開き「生きていることはこんなにう
れしいとは」「生きた言葉(生きている人の言葉という意味)を聞く
のは良いなあ」とお話し。身体症状は安定。
震災以降、チャプレンと面談、「賛美歌を歌いたい」とお話しされ
当院MSWと賛美歌を合唱。
4月、意識障害、昼夜逆転症状などのせん妄が疑われたが興奮
も苦痛もなく「先に逝った友人がいる、光が見える」などの幻視が
中心だった。せん妄の治療はせずに経過を見たが、約1週間後、
家族に見守られ永眠。
家族:「せん妄あったが穏やかだったと思う、お迎えがきたのかな」と
- 13. 家族の介護環境に困難を伴った例
60代 男性 妻との二人暮らし
診断名:悪性中皮腫末期、多発肝転移
経過:X年 咳・息切れで発症、X+2年 胸水・多発肝転移の増悪で当院紹介と
なる。腹水貯留・腹満感・呼吸苦の緩和を行い、身体症状はうまくコントロール
されていたが徐々にADL低下しベッド上生活となる。妻と二人暮らしであり、妻
は双極性障害の診断で近医精神科病院に入退院を繰り返していた。
妻は、医療者に興奮したり、自室に閉じこもるなどの精神症状の
が見られ、介護を担うことは困難であった。
本人は自宅で最期まで過ごすことを希望されホームヘルパーを
利用しながら在宅療養を継続した。遠方に住む息子夫婦が付き
添い、妻が退院した約1週間後に永眠された。
ヘルパー、看護師の訪問だけでは不十分な介護環境
⇒本人の強い希望で在宅看取り
- 14. グリーフケアの必要性を感じた症例
80代 男性 妻との二人暮らし
診断名:中・下咽頭癌再発・末期
経過:X年7月 確定診断、化学放射線療法を行い肉眼的にはCRとなったがそ
れ以後本人通院せず、X+1年1月 再発進行を認めたが治療を拒否。同年4月
に慢性硬膜下血腫発症し、血腫除去術施行。退院後当院紹介となった。
妻は、当初から在宅療養への不安を口にしていた。夫が退院後
は「どうしてこんな病気になってしまったのか、もう亡くなってしまう
のかと思うとつらい」と、涙を流している状態であった。7月にご本
人は妻・娘に見守られ永眠。
8月に看護師がグリーフケアのため訪問。「家で看取ることがで
きて良かった」という思いと「あのときこうしていれば・・・」という思
いが交錯する中で、自宅に籠り、人にも会わず悲しんでいた。
どの様なグリーフ・ケアを行う事が出来たのか?
- 20. <まとめ>
1. がん患者の精神症状(せん妄)への対応
2. 家族・遺族ケア
3. 在宅緩和ケア医・他職種(特に介護福祉職)
がサイコオンコロジーを学ぶ機会の増加
在宅緩和ケアにおけるサイコオンコロジーの役割を考える上で
1. 在宅緩和ケアの特性・環境の違いを理解する
2. 在宅緩和ケアで問題となりやすい事項を理解する
3. 在宅緩和ケアチームの構成を理解する
4. 各地域のシステム・リソースを知っておく
第25回日本サイコオンコロジー学会 シンポジウム
在宅緩和ケアを支えるためにサイコオンコロジーに求められること