日本の使用済み燃料、再処理か貯蔵か？　フランク・フォンヒッペル

1. 日本の使用済み燃料、再処理か貯蔵か? 方針変更の障害とその克服のための戦略
フランク・フォンヒッペル (共同作業 田窪雅文)
プリンストン大学科学・国際安全保障プログラム
核分裂性物資に関する国際パネル（IPFM)共同議長
朝日・プリンストン共催シンポジウム使用済み燃料の管理ー再処理か貯蔵か
浜離宮朝日ホール 2013年12月5日 午後1時～6時

2. 方針変更に反対する議論
1.立地道県が再処理の代替策として使用済み燃料を原発敷地内 で乾式貯蔵することを認めないだろう。
2.青森県は、六ヶ所再処理工場の受け入れプール内の使用済み 燃料3000トンを送り返すことを要求する（再処理の廃棄物は置い ておくが）とともに、ヨーロッパでの日本の使用済み燃料再処理で 生じた廃棄物を受け入れなくなるだろう。
3.再処理は、原発で発生する放射性廃棄物の量と寿命を減らす。
4.六ヶ所再処理工場が運転されないと、日本の「再処理等積立金」 は工場建設のための借入金の返済に使えなくなり、その結果倒 産する電力会社が出てくる恐れがある。
5.MOX利用をしないとなると、日本はその分離済みプルトニウムを どう処分するのか。

3. 1. 「立地道県が再処理の代替策として使用済み燃料を原発 敷地内で乾式貯蔵することを認めないだろう」
反論:
1. 乾式貯蔵はプール貯蔵より安全. フクシマでは、1－4号機の使用 済み燃料プールについて大いに心配されたが、キャスクに貯蔵され た燃料の安全性については全く心配されなかった。

4. フクシマの4号機のプールは、
稠密貯蔵ラックを使っていた
Calculations based on several codes and models to turn-around time and fidelity
0 9
2 4 6 8
1 3 5 7
0 9
2 4 6 8
1 3 5 7
0 9
2 4 6 8
1 3 5 7 CR
CR
CR CR CR
CR CR CR CR
30 CR
0
2
4
6
8
9
1
3
5
7
CR
CR CR
CR
CR
CR
CR
CR
C
E F P M W F P M
UNIT 4 SFP HEAT GENERATION RATE DISTRIBUTION POOL LEVEL FOR VARIOUS 16 0.19 kW
24 0.16 kW
14 0.20 kW
10 0.22 kW
12 0.21 kW
9 0.23 kW
5 0.30 kW
8 0.24 kW
2 0.55 kW
4 0.40 kW
1 1.12 kW
IF 3.60 kW
冷却期間
約5年
未使用燃料
BWR の燃料集合
体には約170 kg U
が入っている

5. 稠密なラックの場合、冷却水がなくなると、空気冷却が上手く行か
ない
5年以上経った使用済み燃料を乾式貯蔵キャスクに移せば
プールではオープン・フレーム・ラックが使える
田中俊一原子力委員会委員長と川勝平太静岡県知事もこれを認識
.
より安全

6. 立地道県の懸念は安全性ではなく、使用済み燃料が敷地内から出 て行かないかもしれないというもの。米国でもヤッカマウンテン処分 場計画のキャンセル以来、同じ問題があるが、50州の170以上の市 民団体が再処理に反対し、原発敷地内乾式貯蔵を支持する声明に 署名している:
「照射済み燃料の再処理は、いかなる国においても核廃棄 物問題の解決をもたらしていない。それどころか、管理の 必要な数々の余分な廃棄物の流れを生みだし、問題を悪 化させている。再処理は高くつき汚染をもたらす上に、核 拡散の脅威を拡大させる。」（2010年）
http://www.psr.org/resources/principles-for-safeguarding.pdf

7. これらのグループは「強化された」敷地内貯蔵を要求している。 日本のむつの施設のようなもの（288基のキャスク：約3000ト ンの容量－－日本の全ての原発の取り出し量約5年分）
ドイツは、13の原発に強化され た乾式貯蔵施設を持つ。
（リンゲン/エムスランド原発 キャスク130基、1250トン)
107 m
70 m

8. 2. 「青森県は、六ヶ所再処理工場の受け入れプール内の使用済み 燃料3000トンを送り返すことを要求する（再処理の廃棄物は置いて おくが）とともに、ヨーロッパでの日本の使用済み燃料再処理で生じ た廃棄物を受け入れなくなるだろう。」
反論:
•3000トンというのは、日本の15の原子力発電所でわずか20基ずつ の乾式貯蔵キャスクがあれば貯蔵できる。
•適切な税金を県やむつ市に払って、むつの貯蔵施設に貯蔵するこ ともできる。.
•.英仏にある日本の廃棄物は、両国自身の再処理廃棄物のわずか 10％の量にすぎない。両国は、六ヶ所再処理工場の運転コストより ずっと低いコストで一時的に日本の廃棄物を保管することができる。 そして、ヨーロッパの貯蔵容量は、長期にわたって続く。英国の「原 子力廃止措置機関（NDA)」はセラフィールド再処理施設の除染に 100年かかると見ている。

9. 3.「再処理は、原発で発生する放射性廃棄物の 量と寿命を減らす」
反論:
•再処理とMOX燃料でのプルトニウム・リサイクルは、放射性廃棄物 の量も寿命もそれほど減らさない。
使用済みMOX燃料には、未使用MOXのプルトニウムの量の約70 が入っている。フランスでさえ、使用済みMOX燃料を再処理してい ない。
また再処理とMOX燃料製造の過程で新しい廃棄物の流れが生ま れる。
•.再処理と、もんじゅのような高速炉でのリサイクルとを何百年にもわ たって続ければ、プルトニウムの量を相当に減らすことができる。し かし、地下深くの処分場に入れられるプルトニウムからの危険は、 地上の分離済みプルトニウムの危険と比べると微々たるものである。

10. 0
20
40
60
80
100
120
1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025
Metric tons of separated plutonium
Total
In Japan
In Japan if RRP operates and MOX delayed
Total if RRP operates and MOX delayed
In Europe
日本は分離済みプルトニウムをすでに44トンも保有。過去14年間に
2.5トンしかMOX燃料として消費できていない。予見できる将来にこ
れ以上プルトニウムを分離すべき理由はない。
英仏保管分
日本国内
核兵器5000発分
(IAEAの計算基準)
合計
ごごう
合計
日本国内
日本国内：六ヶ所が運転、MOX利用が遅れた場合
合計：六ヶ所が運転、MOX利用が遅れた場合
ヨーロッパ保管分
分
離
済
みプルトニウムの量
単
位
：
トン

11. 0
100
200
300
2005 2015 2025 2035 2045 2055 2065 2075 2085
¥ Billions per year
4. “六ヶ所再処理工場が運転されないと、
「再処理等積立金」での借入金の返済ができない”
反論.建設用借入金の返済ができるように国会で法律を改正す
ることができる。
日本国民は、年間約2000億円を40年間にわたって節約できる。
合計約8兆円。
乾式貯蔵のコストは1兆円以下
運転期間 廃止措置期間
(日本原子力委員会による六ヶ所再処
理工場の運転・廃止措置コスト見積も
り 2011年10月23日)
年間コスト
単位：
10
億円

12. 5. 「MOX利用なしで、日本はその分離
済みプルトニウムをどう処分するのか」
一つの可能性は「熱間等方圧加圧法
（HIP)」により溶出度の低いセラミック
にすること
(英国「国立原子力研究所（NNL）」)
15 cm
5 km
通常の処分場
約2 kg
プルトニウム
+ディープ・ボアホール
(5 km) での処分 (米国?)
プルトニウム

13. 結論
•原発立地道県には、乾式貯蔵を導入すべき安全上の理由があ る。
.乾式貯蔵が受け入れられれば、再処理工場への輸送は必要な くなる。
•.青森県には、ヨーロッパでの日本の使用済み燃料再処理で生じ た放射性廃棄物の貯蔵と、六ヶ所再処理工場にすでにある3000 トンの使用済み燃料の貯蔵（むつの施設で）を続けることについ て十分な補償をすることができる。
•再処理を中止すれば日本の国民は、約8兆円の節約ができる。
•そして日本は、核不拡散体制を脅かさなくなる。