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1
伝統的構法の設計法作成
及び性能検証実験検討委員会
第四回フォーラムin滋賀
「石場建てを含む伝統的構法
木造建築物の設計法」報告会
Ⅳ. 設計法の内容
1) 詳細設計法
2014年7月12日
日本建築総合試験所 長瀬 正
2
■対象建築物(標準・詳細・汎用)
丸太や製材した木材を使用し,木組みを生かした継手・仕
口によって組上げた軸組構法による伝統的木造建築物
詳細設計法の適用範囲
■建築物の規模(標準・詳細)
階数≦ 2階
延べ面積≦ 500m2
高さ≦ 13m
軒の高さ≦ 9m
スタート
標準
設計法
詳細
設計法
汎用
設計法
汎用:
標準の仕様や規模
制限を外す
標準:
重量は住宅程度
標準の仕様
詳細:
寺社も対象
標準の仕様を外す
対象建築物により
設計法を選択
告示 大臣認定
3
■実験
実大振動台実験や構造要素実験の結果を設計に反映させる。
■木組み接合部
伝統的構法木造建築物が耐震性能を発揮するためには,接合部が
大変形時まで性能を保持することが必要。金物を極力使用しな
い木組みには,大工棟梁の技術と知恵が伝承・結集されている。
基本的な考え方
2010年度 振動台実験 2012年度 振動台実験
・摩擦係数
・建物耐力
・偏心
・1階床重量
No.5
および
No.6
・柱脚滑り
・偏心
・水平構面
・1,2階バランス
・設計法検証
・クライテリア
・柱脚仕様
・2階床構面
・2階床開口
・部分2階の下屋
・柱脚滑り
・床開口
■部分2階モデル
No.1
および
No.2
No.3 No.4
■上部構造■柱脚滑り
4
使用材料に関する規定
材 料 規 定
木 材
品質,防腐措置,許容応力度及び材料強度
は関連する令・告示による。
鋼 材
品質,許容応力度及び材料強度は関連す
る令・告示の規定による。
コ ン ク
リ ー ト
品質,規格,設計基準強度は関連する令・
告示の規定による。
礎 石
建築基準法には石材の規定がない。
JIS A 5003による。
適用範囲:原則として,建築物に使用する
天然産の石材を使用する。
種類:石材の種類は硬石,準硬石を用いる
ことを原則とし,吸水・透水性,強度,摩耗性,
耐候性を考慮して選定する。
欠点:「寸法の不正確,そり,き裂,むら,くさ
れ,欠け,へこみ」など 構造耐力上支障とな
る欠点のあるものは使用しない。
形状:石材の形状は原則として角石,板石
とする。ただし,柱脚が水平方向に移動し
ない場合等,礎石が平板である必要のな
い場合はこの限りでない。板石の厚さは
60mm以上とする。
仕上げ:柱脚の水平移動を拘束しない設
計をする場合は,石材の仕上げは「びしゃ
んたたき」程度とする。
種類
圧縮強さ
(kgf/cm2)
吸水率
(%) 比重
硬 石 500以上 5未満 約2.7~2.5
準硬石
500未満
100以上
5以上
15未満
約2.5~2
軟 石 100未満 15以上 約2未満
種類 形状および寸法
角 石
幅が厚さの3倍未満で,ある長さを
もっていること。
板 石
厚さが15cm未満で,かつ幅が厚さ
の3倍以上であること。
間知石
面が原則としてほぼ方形に近い
もので,控えは四方落としとし面に
直角に測った控えの長さは,面の
最小辺の1.5倍以上であること。
割 石
面が原則としてほぼ方形に近い
もので,控えは二方落としとし, 面
に直角に測った控えの長さは、
面の最小辺の1.2倍以上であるこ
と。
JIS A 5003 石材
5
地震力以外の荷重外力
荷重及び
外力
荷重・外力の組み合わせ 限界
状態
設計法
一般 多雪区域
長 期
常 時
G固定+P積載
G+P 使用
限界
長期許容
応力度設計積雪時 G+P+0.7S
短 期
積雪時 G+P+S雪 G+P+S
損傷
限界
短期許容
応力度設計暴風時 G+P+W風
G+P+W
G+P+0.35S+W
最大級の
荷重・外力
積雪時 G+P+1.4S G+P+1.4S
安全
限界
終局強度
設計暴風時 G+P+1.6W
G+P+1.6W
G+P+0.35S+1.6W
■従来の短期設計に加えて安全限界として,積雪荷重を1.4倍,風
圧力を1.6倍して,材料強度を用いて設計する
■レベル1(r=50年)に対するレベル2(r=500年)の荷重比率
1993年学会荷重指針の再現期間換算係数R
雪 R=0.344+0.168ln(r)=1.39→1.4倍
風速R=0.580+0.107ln(r)=1.24→1.25倍,風荷重1.252=1.56→1.6倍
6
地震力
①震源
②伝播
解放工学的
基盤
表層地盤
地震
基盤
地表面
地震動
= ×
②波動
伝播
×
③地盤
増幅
①震源
断層
③A地震基盤~工学的基盤
③B工学的基盤~地表
③A増幅
②伝播
③A増幅
③B増幅Gs
S0d,S0s
SAd,SAs
詳細設計法の地震力は令82条
の5の限界耐力計算による。
新耐震設計法の層せん断係数
に代わって加速度応答スペクト
ルから地震力を計算する。
SAd=S0d・Gs・Fh・p・q・Z
SAs=S0s・Gs・Fh・p・q・Z
S0d, S0s=稀,極稀地震動の解放工学的基
盤における加速度応答スペクトル
Gs=表層地盤の加速度増幅率
Fh=建築物の減衰による加速度低減率
p=建築物の階数,周期による調整係数
q=建築物の有効質量による調整係数
Z=地震地域係数
0
2
4
6
8
10
0 1 2 3
解放工学的基盤加速度
応答スペクトル
周期(s)
加速度応答スペクトル(m/s2)
極めて稀に
発生する
基盤地震動S0s稀に発生する
基盤地震動S0d
0
1
2
3
0 1 2 3
0.0
0.5
1.0
1.5
0 0.1 0.2 0.3
表層地盤増幅率
Gs(簡略法)
第1種
第2種
第3種
Gs
周期(s)
減衰による
加速度低減率Fh
Fh
減衰h
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
0 1 2 3
限界耐力計算の地震力
地震動の大きさは新耐震と同じ
短周期=加速度一定 長周期=速度一定
新耐震1G=980gal
短周期では地盤の応答
倍率は1.5
→980×1.23/1.5=800gal
多質点系のベースシア応
答は1質点系の応答の
0.816倍→短周期では新
耐震の1/0.816=1.23倍
1次2次 3次4次
1次
1.0 0.816
多質点系のベースシア応
答は1質点系の応答の
0.900倍→長周期では新
耐震の1/0.900=1.1倍
長周期では地盤の応答
倍率は2.025
→(960/T)×1.1/2=512/T
新耐震
1種100kine,2種150kine
3種200kine
1次2次 3次4次
1次
1.0 0.900
Sa
T
Sa一定
Sa
T
Sv一定
SaはTに反比例
限界耐力計算
工学的基盤
800gal
320gal
512/T
新耐震Rt
2種地盤
960/T
980gal
1200gal
限界耐力計算
地表面
Gsは略算法
1/1.5 1.23
1/2
1.1
限界耐力計算
2種地盤
1種
地盤
3種
地盤 1種
地盤
3種
地盤480gal
周期(秒)
加速度応答(gal)
限界耐力計算の階数による加速度分布の
調整係数p
低層建物では割増しを元に戻している
1階建 2階建 3階建 4階建 5階建以上
p=0.8 p=0.85 p=0.9 p=0.95 p=1.00
7
8
荷重・外力に対する安全性の検証
荷重・外力
の種類
建築物
の耐力
検 討 方 法
長 期 長期許容
応力度
架構としての応力計算は省略できる。
直接に力を受ける部材について検討する。
短 期
短期許容
応力度
S雪 直接に力を受ける部材を検討する。
稀
地震
稀に発生する地震について
応答計算を行う。
W風 損傷限界地震時のせん断耐力が風圧力
より大きい時は計算を省略できる。
最大級 材料強度
1.4S
雪 直接に力を受ける部材を検討する。
極稀
地震
極めて稀に発生する地震について
応答計算を行う。
1.6W
風
安全限界地震時のせん断耐力が風圧力
より大きい時は計算を省略できる。
さらに部材の検討として,長期,短期ならびに最大級の荷重・外力に対して,柱,横架
材,小屋組部材,水平構面,屋根葺き材,接合部の検討を行う。
9
地震動レベルと
設計のクライテリア
地震動の入力レベル 要 求 性 能
変 形 の
クライテリア
稀に
発生する
地震動
建設地において,
建築物の存在期
間中に1度以上
遭遇する事を想
定する地震動
損傷
限界
以下
損傷防止:構造耐力上
主要な部分の変形に
よって補修を要する損
傷が生じない。
代表
層間変形角
:1/90以下
極めて
稀に
発生する
地震動
建設地において,
建築物の構造安
全性への影響度
が最大級のレベ
ルの地震動
安全
限界
以下
人命保護:倒壊・崩壊
が生じない,即ち,人間
が生存可能な空間を
維持する。補修により
再使用可能である。柱
に折損を生じない。
代表
層間変形角
:1/20以下
最大
層間変形角
:1/15以下
代表変形1/20以下:伝統的構法木造建築物の構造耐力要素や仕口接合部の実験では, ほと
んどが1/15変形までは十分変形性能を保持している。設計では, 1/15以上まで担保できる変形
性能を有する構造耐力要素,継手・仕口をデータベースから確認して採用する。
最大変形1/15以下:近似応答計算による平均的な変形1/20に対して,偏心や床構面剛性等に
よって最大となる変形を修復可能な損傷に留めるために1/15以下とする。
10
地震応答計算の流れ
応答変形角
の確認
設計のクライテリア
を満足しない
近似応答計算による
検証用地震動に対する
代表変形角の算定
柱脚は移動しないとして
応答計算する
各層鉛直構面の
最大変形角の算定
偏心および床の変形によ
る偏心増大率を考慮する
柱脚滑り量の算定
エンド
設計のクライテリア
を満足する 柱脚の移動を拘束しない
場合のみ検討する
礎石の大きさ
標準:400mm以上
詳細:計算による
建築物重量および
柱軸力の算定
各階復元力特性の算定
柱脚の上下移動のみを
許容する場合は,浮上り
を考慮する
11
構造要素の復元力
①全面壁 ②小壁付き柱 ③柱傾斜復元力 ④柱ほぞ ⑤貫
石場
建て土台
-40
-20
0
20
40
60
80
100
120
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1変形角
1/50 1/25 1/101/17 1/13
せん断力(kN)
層の復元力
①全面壁 ⑤貫
PΔ
②小壁付き柱
③柱傾斜
(PΔ無視)
④柱ほぞ
浮き上がりの履歴はループを描か
ないので, 減衰計算では,柱の傾斜
復元力と同様に,塑性化による履
歴減衰には含めない。
変形
せん断力
復元力
(浮き上がり
考慮)
浮き上がり
限界時
せん断耐力
復元力
(浮き上がり無視)
12
■階高
復元力特性と応答計算
石場建て形式 土台形式
礎石天
2階
1階
石場建て形式
(地長押有り)
2階
1階
地長押芯
2階
1階
土台芯
下屋の長さが
1.5mを超える場
合は,一体モデル
の他,下屋を分割
した部分モデル
でも検討
■部分2階建て
1.5mを超える
一体
モデル
下屋
モデル
2階建て
モデル
平面形がW1/W2>4の場合は4を超えない
ゾーンに分割した部分モデルでも検討
長さ4W2以下
に分割
幅W2
ゾーンA
ゾーンB
長さW1
■細長い平面
幅W2
幅W2
13
近似応答計算
平家および2階建ての地震応答を,近似応答計算により求める。
計算は変位増分法によるが,2階建ての場合は各階の変形モードを
適切に設定できる計算法を用いる。
■限界耐力計算
・等価1質点のスペクトル応答
・地盤増幅を考慮した入力地震動
・2つの限界変形角(損傷,安全)を検証
・変位応答を直接に計算
設計法 応答計算 降伏設計モード
標準
範囲を限定して,応答結果を
まとめた設計法
1階先行降伏に限定
詳細
建物ごとに応答計算を行う
1階先行,2階先行, 1・2階
同時降伏など任意汎用
■詳細設計法の新しい計算法
・2階先行降伏の場合,2階を基準ステップとした限界耐力計算
・柱脚の滑りを考慮した限界耐力計算 (石場建て)
■3つの設計法
0
50
100
150
200
250
0 0.02 0.04 0.06 0.08
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
二階建て建物の降伏モード
14
■従来の設計の多くが1階先行降伏と
なっている。
■これは限界耐力計算の解の安定性
が高いことにもよるが,構造設計的な
視点からは,2階先行降伏や1,2階同時
降伏とする考え方は排除されるべきで
はない。
0.1
1
10
100
1 1.5 2 2.5 3
せん断力係数比C2/Cb
応答変形角比γ=γ2/γ1
RH=0.8 RW=
1.5 1.0 0.75 0.50
0.25
RW=0.75の場合の
1,2階同時降伏
C2/Cb=1.33
1.33
1階先行降伏
γ1>γ2
2階先行降伏
γ2>γ1
■2階降伏の場合は耐力
の差によって,変形が大きく
(対数的に)変動する
■限界耐力計算の数式を用いた
2階建て建物の1,2階の応答関係
ここで
δ1
δ2
W2
W1
δ2-δ1
γ1
γ2
h2
Q2=C2W2
Q1=Cb(W1+W2)
h1
重量比 階高比
応答
変形角比
限界耐力計算の改良
15
C2 /Cb>RCO:1階降伏 C2 /Cb<RCO:2階降伏 C2 /Cb=RCO:同時降伏
u1
u2
変形角γ
せん断力Q
1階
2階
u1
u2
変形角γ
せん断力Q
1階
2階
1階降伏であれば
変形の大きな1階
で変位増分を行う
u1
u2
せん断力Q
変形角γ
1階
2階
2階降伏であれば
変形の大きな2階
で変位増分を行う
方 法 出 典 固有値計算 各階変形と等価剛性の計算法
増分
2階 1階
変位
増分法1
2004伝統構法を
生かす木造耐震
設計マニュアル
初期剛性のみ
基準変形に対応する各ステップの他階変形は初期剛性
に対する固有モードu2/u1と剛性比を用いて計算する。
各ステップの他階等価剛性は,前ステップの変形よりも
大きい最小の変位点の等価剛性を用いる。
新規 既往
変位
増分法2
2010年JSCA関西
レビュー委員会
収斂計算は
しない
他階について,前ステップの変形よりも大きい最小の変
位点の等価剛性を用いて各ステップで固有値解析を行
い固有モードu2/u1から他階変形を計算する。
新規 既往
収斂
計算法1
詳細設計法
各ステップ毎
に収斂計算を
行う
各ステップ毎に, 基準階変形と等価剛性が整合するよう
に,繰り返して固有値計算を行い,固有モードから他階変
形を計算する。
新規 新規
収斂
計算法2
収斂計算法1に同じ。減衰評価を縮約1質点系ではな
く,1,2階それぞれで行ない,ひずみエネルギーで重み付
けして減衰定数を与える。
新規 新規
1,2階同時降伏や2階先行降伏が精度よく扱えるように改良
計算法
比較
16
2階を変位
増分させる
1階を変位
増分させる
モデル
1,2階
同時
降伏
2階
降伏
1階
降伏
1,2階
同時
降伏
2階
降伏
変位
増分法1
× ○ × × ×
変位
増分法2
× ○ ○ ○ ×
収斂
計算法1
○ ○ ○ ○ ○
収斂
計算法2
○ ○ ○ ○ ○
2階変位増分 1階変位増分(従来法)
変位
増分法1
変位
増分法2
収斂
計算法1
収斂
計算法2
■4つの計算法の精度
○安定 ×不安定
■2階降伏
モデルの
限界耐力
計算結果
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
Q(kN)
γ(rad)
2階1/32
1階1/153
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
Q(kN)
2階1/26
1階1/66
γ(rad)
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
γ(rad)
Q(kN)
2階1/28
1階1/114
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
Q(kN)
γ(rad)
2階1/30
1階1/37
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
γ(rad)
Q(kN)
2階1/30
1階1/123
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
2階1/22
1階1/133
Q(kN)
γ(rad)
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
γ(rad)
Q(kN)
2階1/27
1階1/112
0
100
200
300
0 0.05 0.1
Q(kN)
γ(rad)
復元力
稀
極稀
Q(kN)
γ(rad)
2階1/25
1階1/139
2階先行降伏の場合は2階
を基準ステップとすること
で従来の方法でも精度よく
計算できる
17
偏心率と水平構面による補正
②偏心による
増幅を加算δs
①応答計算δm
③床変形による
増幅を加算δ
剛心重心
剛心からの距離L
偏心距離e 床面
δ/δs
標準床
柔らか
い床
1.0
1.1
1.2
1.3
0.0 0.1 0.2 0.3
③床構面による割増
偏心率Re
L/re
3.0
2.0
1.0
偏心率Re
δs /δm
1.0
1.5
2.0
0.0 0.1 0.2 0.3
re=弾力半径
②偏心による増大
各階変形は,近似応答計算による
変形δmを,偏心と水平構面の変形
を考慮して割増す。
δmは階高の1/20,割り増された最
大変形δは1/15以下とする。
18
部材の検討:水平構面
標準床の仕様
■屋根
野地板(最上階の屋根)は厚さ15mm以上。
釘はN50脳天打ち。
■床
スギ,ヒノキ,マツ材等(幅120mm,厚さ30mm以
上),釘は脳天打ち。
釘はN90(板厚30mm),N125(板厚38mm以上),
各根太(または梁)に一箇所あたり2本以上。
釘の縁あき25mm,間隔は70mm以上。
根太(又は梁)間隔は板厚30mmの場合は
500mm以下。長手方向は本実。
■部分2階で下屋部分の屋根
野地板・釘は屋根(最上階)と同等以上の性能
とする。下屋部分の屋根を受ける母屋につい
ては,母屋を受ける位置には必ず柱または束柱
を設ける。母屋と柱の仕口接合部には込み栓
を設ける。
床梁
床梁
床梁
床梁
床梁
床板
2-N90
床梁
床梁
根太
床板
床梁
床梁
床梁
2-N90
板張り床
床を剛床として扱うことは
できない:床の変形(柔床)
計算の都合から剛床とするような補強
も望ましいことではない。
立体モデル解析
数値計算結果
定性的定量的な
把握=解析解
設計法
19
床と壁の剛性比γ
■後藤隆洋,スギ板を用いた水平構面の構造性能
建築技術2010年12月号「伝統的構法による木造住宅の性能検証」
0
2
4
6
8
10
12
14
0 20 40 60
荷重kN/m
変形角10-3rad
試験体寸法
2.73m×1.82m
1/100
変形
1/50
変形
H34 斜め張り 684 528
H43 落とし込み 306 274
H44 雇い材 333 294
H11 ころばし根太 155 115
H33 根太なし横張り 123 92
H21 屋根垂木 121 84
H34
H43
H44
H11
H33
H21
床面剛性kN/m/rad
1/50剛性
100kN/m/rad
2.73m
t=6cm
1/20変形時
壁剛性
k=96kN/m
■壁剛性■床剛性
床変形を1/50とすれば
K=100kN/m/rad
Q=7.28kN,δ=0.11m
床剛性s=66kN/m
5.2m 床剛性比
γ=s/k
=66/96=0.7
実際のγは1
以上と考え
られる
0.0
0.5
1.0
1.5
0.01 0.1 1 10 100
20
柔床の偏心
柔床では両端の変形は減少
するが,中央は増加する。
偏心率0.302
1.09
0.82
1.00
0.50
1 1 1
1 1 2
x1 x2 x3
柔床では振られ
る側への地震力
が伝達されない
のでX1減
0.55
床剛性比γが10以上
であれば剛床
剛床→←柔床
X1
X2
X3
変形
床剛性比γ
0.0
1.0
2.0
3.0
0.01 0.1 1 10 100
柔床では両端の変形は増大
するが,中央は減少する。
偏心率0.346
2.50
1.00
2.00
1.40
0.80
柔床では内側
への地震力が
伝達されない
のでX1増
x1 x2 x3
1 1 1
0.4 1 1
剛床→←柔床
X1
X2
X3
変形
床剛性比γ
柱脚の滑り量の計算
21
解析よりも設計のための計算法
立体モデル
平面モデル
質点モデル
詳細な応答計算
エネルギー法
エネルギー一定則
変位一定則
簡単な応答計算 力
変形
復元力
極稀地震
稀地震
滑り
限界耐力計算
エネルギー一定則
滑り量は速度の二乗に比例,
摩擦係数に反比例
x2 x3
x1xS
滑りを無視した弾
性応答
滑りを考慮した
弾塑性応答
変形 変形
力
力 両者の面積を等しくす
るx3を求める
x2 x3
Q2
Q1S1
S2
S1=S2
x1
Q1
x1
k=mω2
k=mω2
xs=x3-x1
変位一定則
滑り量は入力の変位スペクトルSDから, 滑り耐力
QSに対応する建物変形QS/kを除いたもの
滑りを考慮した限界耐力計算
滑りを無視した
弾性応答
滑りを考慮した
弾塑性応答
変形 変形
力
力 両者の変位が等しい
x2
Q2=αmg
Q1=QS
=μmg
x1 x3
x3=x2
x1
Q1=QS
=μmg k=mω2
k=mω2
xs=x2-x1
周期調整係数 減衰の評価
地盤連成
告示
(スウェイ)
滑りを考慮
した定式化
滑りを考慮した限界耐力計算
22
基礎の慣性力m0aG=α0Q
ks
xt
xs xe
Q
μ
ke
(1+α0)Q
m
m0=γm
(1+α0)Q
=μ(1+γ)mg
ke=mωe
2
xe xt
滑り量xs= xt-xe
Q
kt=(1+γ)mωt
2
ks=(1+γ)mωs
2
変形
力
柱脚滑り
上部建物
建物応答
全体
応答A
B
周期調整係数
滑りモデル 滑り応答
滑り減衰の評価
W=(1/2)kexe
2
ΔW=πcωexe
2
h=ΔW/4πW=c/2√(mke)
xe
変形
減衰力
W=(1/2)ksxs
2
ΔW=4ksxs
2
h=ΔW/4πW=2/π=0.637
F=μ(1+γ)mg=ksxs
xs
ks
摩擦力
変形
cxe=cωexe
・
滑りは一様でないので
矩形面積をβで低減
h=2β/π (β=0.5~0.25)
建物の粘性減衰 柱脚の摩擦減衰
β=0.5
柱脚せん力
滑り
β=0.25
滑り
β=0.25
滑り
柱脚せん力 柱脚せん力
滑りによる減衰
実大実験によれば
滑りの減衰パメータβ
は0.25-0.4程度
βは矩形に対するループ面積
23
実大実験による検証
No.4試験体(2011年1月)
実験結果
限界耐力計算
μ=0.4,β=0.4
方向 階
変形角 滑りcm 変形角 滑り
cm平均 最大 平均 最大 固定 滑り
長辺
2 1/40 1/33
3.4 4.8
1/95 1/60
5.8
1 1/35 1/24 1/20 1/34
短辺
2 1/48 1/39
6.0 10.0
1/92 1/56
6.0
1 1/33 1/15 1/19 1/32
24
Eディフェンス震動台実験 BCJ-L2地震動
No.5,6試験体(2012年9月)
実験結果(平均)
限界耐力計算
μ=0.4,β=0.25
方向 階
変形角 滑りcm 変形角 滑り
cmNo.5 No.6 No.5 No.6 固定 滑り
長辺
2 1/27 1/23
8.8 7.6
- 1/22
5.5
1 1/19 1/21 - 1/18
短辺
2 1/50 1/45
3.9 2.6
- 1/41
9.0
1 1/22 1/22 - 1/21
摩擦係数が小さいほど滑りやすい
耐力の大きい建築物ほど滑りやすい
負担重量の小さい構面ほど滑りやすい
偏心による変形が滑りを増幅させる
バラツキの考慮
μ 摩擦係数
β 滑り減衰パラメータ
α0基礎の加速度
25
部材の検討
長期,短期ならびに最大級の荷重・外力に対して,①柱,②横架材,
③小屋組部材,④水平構面,⑤屋根葺き材,⑥接合部の検討を行う。
通し柱の折損しない条件
ΔR=1,2階の変形角差
α=断面欠損を考慮し
た断面有効率
β=1.5(スギ),
1.2(ヒノキ)
H=1,2階合計高さ
D=柱成
Fb=材料強度
E=ヤング係数
ΔR
H
H2
H1
小壁で拘束された柱の折損
差鴨居
で拘束
差鴨居
で拘束
:柱の折損
26
柱脚の設計
柱の移動 柱脚の形式 柱脚の拘束
水平・上下
とも拘束
土台が礎石上に
設置される土台
形式
柱脚の移動を2方向とも拘束し,基礎に水平,上下方向の力を伝達させる。
長期,短期および最大級の荷重により柱に生じる力を基礎に伝達させる。
水平は拘束
上下は自由
土台形式または
石場建て形式
柱脚を水平方向に対して拘束し,上下方向には自由とする。基礎に対して
水平方向の力を伝達し,柱の引抜き力を伝達しない。長期,短期および最
大級の荷重時に生じる水平方向の力を基礎に伝達させる。
水平・上下
とも自由
土台形式または
石場建て形式
土台と基礎あるいは柱脚と基礎は,接合しない。柱脚の移動量に対応で
きる納まりとする。
アンカー
ボルト
座金の
めり込み
上下・水平拘束
土台形式
Ld
土台の曲げ
モーメント
土台
柱脚
込み栓
水平拘束・上下自由
土台形式1
水平拘束・上下自由
土台形式2
土台
ダボ筋を差し込むだ
けで上下は拘束しな
い。土台に差し込ま
れるダボ長さ
150mm以上
土台
柱脚上下は
拘束しない
ほぞ長さ
150mm以上
水平・上下自由
石場建て形式
水平・上下自由
土台形式
柱脚は土台に緊結
土台を礎石に載せる
柱脚を礎石
に載せる
27
礎石と柱脚
■礎石の大きさ
滑り量(2010,2012年実験)
極稀地震BCL-L2波:10cm
巨大地震JMA神戸波:20cm
礎石幅を40cm以上とすれば
滑り計算は省略できる
変位一定則による説明
変位(cm)
告示極稀
周期(秒)
減衰5%
10%
15%
20%
周期1.5秒
減衰15%で
SD=20cm
変位(cm)
周期(秒)
JMA神戸NS 減衰5%
10%
15%
20%
周期1.8秒
減衰15%で
SD=30cm
xs=20-10=10cm xs=30-10=20cm
滑り量
地動変位
建物変位
■柱脚の折損
基礎地震力am0
a=1.2×0.4G=0.48G
せん断力Q
Q+am0
Ph
M=Ph
・跳出し柱脚,地震力は, Q+am0
・基礎の加速度は
a=0.4G×1.2=0.48G
・柱脚の負担する地震力は
1.2×(Q+am0)
・柱の折損は材料強度で検討
試験体No.5の注脚(石場建て)
28
詳細設計法の実用化に向けて
実務設計者が実践的に使える設計法
・実験結果データを羅列するのではなく,力学
モデルの解析的な数式表現によって設計
パラメータの意味を把握して,望ましい方向
を明らかにする。
・柱脚の滑り,2階先行降伏など設計の自由度
を広げる新しい計算法を提供する。
・具体的な設計例によって,
設計法を検証する。
・標準設計法とのバランス
を確認する。

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