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E-Learning Section-32
疑義照会・処方提案
総合内科編
株式会社葵 調 剤
Lesson 32-1 疑義照会:止瀉薬の併用
2
51歳 男性
ロペミンカプセル1mg 2Cap 1日2回朝
夕食後
7日分
タンニン酸アルブミン 3g 1日3回毎
食後
7日分
ビオフェルミン配合散 3g 1日3回毎
食後
7日分
Case-1 止瀉薬の併用
①タンニン酸アルブミンの作用機序
タンニン酸アルブミンは腸に至って初めて膵液(すいえき)により徐々に分解してタ
ンニン酸を遊離し、全腸管にわたって収れん作用を及ぼし、止瀉作用を示す。
②ロペラミド塩酸塩の作用機序
ロペラミド塩酸塩は腸壁内コリン作動性ニューロン機能を抑制し、腸管の輪状筋
方向の進展により誘発されるアセチルコリンとプロスタグランジンの放出を抑制す
ることにより、止瀉作用、消化管機能抑制作用、抗分泌作用を示す。
Lesson 32-1 疑義照会:止瀉薬の併用
3
51歳 男性
ロペミンカプセル1mg 2Cap 1日2回
朝夕食後
7日分
タンニン酸アルブミン 3g 1日3回
毎食後
7日分
ビオフェルミン配合散 3g 1日3回
毎食後
7日分
Case-1 止瀉薬の併用
この処方のポイント
「ロペミンとタンニン酸アルブミンの同時服用」
添付文書上では併用注意となっている
タンニン酸アルブミンとロペラミド塩酸塩を同時服用することにより、ロペラミド塩酸塩の効果が
減弱するおそれがあるため、投与間隔を空けなければならない。
【理由】
①ロペラミド塩酸塩は弱塩基性薬物であり、腸内では解離型として存在することから、タンニン
酸と難溶性の化合物を形成する。
②タンニン酸アルブミンから解離したアルブミンがロペラミドを吸着する。
Lesson 32-1 疑義照会:止瀉薬の併用
4
疑義照会の例)
今回、タンニン酸アルブミンとロペミンが同時服用の指示となっていますが、2剤の同時服用により、ロ
ペミンの効果が減弱してしまいます
しかし、服用時間をずらすことにより効果減弱を回避することができますので、タンニン酸アルブミンの
服用時間を「食後」から「食間」にしてはいかがでしょうか?
医師)そうでしたか。それは知りませんでした。では、タンニン酸アルブミンは「食間」でお願いします。
他の薬剤での併用注意の例)
ニューキノロン系と酸化マグネシウムや鉄剤など、チラーヂンSと鉄剤など
51歳 男性
ロペミンカプセル1mg 2Cap 1日2回
朝・夕食後
7日分
タンニン酸アルブミン 3g 1日3回
毎食間
7日分
ビオフェルミン配合散 3g 1日3回
毎食後
7日分
Case-1 止瀉薬の併用
Lesson 32-2 疑義照会:総合内科と眼科処方
5
Case-2 総合内科と眼科処方
山田一夫 43歳 男性
【総合内科処方せん】
フロモックス錠100mg 3錠 1日3回毎食後 7日分
ロキソニン錠60mg 3錠 1日3回毎食後 7日分
ムコスタ錠100mg 3錠 1日3回毎食後 7日分
PL配合顆粒 3g 1日3回毎食後 7日分
ポララミン錠2mg 2錠 1日2回朝夕食後 7日分
【眼科処方せん】
キサラタン点眼液005% 1瓶 1回1滴1日1回 両眼点眼
(注:閉塞隅角緑内障で処方されているとのこと)①ポララミン錠の添付文書には、禁忌として「緑内障の患者」の記載がある。慎重投与では眼圧亢進
のある患者は「抗コリン作用により眼内圧が上昇し症状が悪化するおそれがある」と記載がある。
②PL配合顆粒の添付文書には、禁忌として緑内障の患者は「本剤中のプロメタジンメチレンジサリチ
ル酸塩は抗コリン作用を有し、緑内障を悪化させるおそれがある」との記載がある。
③キサラタン点眼液はぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進することにより眼圧を低下させ
る。
Lesson 32-2 疑義照会:総合内科と眼科処方
6
疑義照会の例
(薬剤師)今、先生の外来を受診された山田さんが薬局に来られたのですが、眼科にもかかられて
いて閉塞隅角緑内障の治療をしています。今回、先生の出されたポララミン錠とPLですが、
禁忌の項目に緑内障患者が入っていますが、どのようにされますか?
(内科医)そうなのか。眼科のことは聞いてなかったな。じゃあ、PLは中止にしてもらえますか?
それからポララミンは何か他のものに替えられませんか?
(薬剤師)わかりました。PLは中止させて頂きます。ポララミンはどのような理由で処方されたので
しょうか?
(内科医)今回は山田さんが鼻水が止まらなくて困っているとの事だったので処方しました。
(薬剤師)それでしたら、アレロック錠はいかがでしょうか。アレロック錠は緑内障禁忌ではないですし、
鼻閉の改善効果もあります。
(内科医)そうなんですか。それでは、そのように変更しましょう。
アレロック錠5mg 2錠 分2朝食後寝る前7日分でお願いします。
(薬剤師)わかりました。山田さんには安全使用の面から、眼科の先生にもアレロック錠を内服して
いることを伝えるように説明しておきます。
(内科医)ありがとうございます。宜しくお願いします。
Case-2 総合内科と眼科処方
Lesson 32-2 疑義照会:総合内科と眼科処方
7
抗ヒスタミン薬の世代分類とH1拮抗作用(参考資料)
世代 商品名 緑内障添付文
書記載
Ki(nM)
H1 Mus
第1
アタラックス 慎重投与 ― ―
ポララミン 禁忌 ― ―
第1(第2)
ザジテン なし 0.16 130
セルテクト なし 32 5000
第2
クラリチン なし 42 14000
ジルテック なし 28 11000
ゼスラン 禁忌 4.4 5.0
第2(第3)
アゼプチン なし 3.2 2100
アレロック なし 6.5 4200
エバステル なし 120 7200
アレジオン なし 12 3200
アレグラ なし 4.2 180
Ki:レセプター親和性
H1:ヒスタミン
Mus:ムスカリン
(チェック)
緑内障には開放隅角緑内障と閉塞隅角
緑内障があり、後者は散瞳することにより
急性発作を起こすため抗コリン作用を持
つ薬剤は禁忌となっています。
ただし、実際には開放隅角緑内障の場合、
臨床的に問題ないと判断され、投与される
こともあります。
Case-2 総合内科と眼科処方
Lesson 32-3 疑義照会:定時薬と感冒薬
8
Case-3 定時薬と感冒薬の相互作用
「クラビットとフェロミアの同時服用」
クラビット錠はニューキノロン系の抗菌薬。ニューキノロン系の抗菌剤は重金属イオンとキレー
トを形成し、吸収が阻害されてしまうため効果が減弱すると言われており、アルミニウムまたは
マグネシウム含有の制酸薬など、鉄剤との併用時には1~2時間の間隔を空けるように注意さ
れている。
36歳 女性
クラビット錠
500mg
1錠 1日1回朝食後 5日分
ムコソルバン錠
15mg
3錠 1日3回毎食後 7日分
アスベリン錠
20mg
3錠 1日3回毎食後 7日分
フェロミア錠50mg 2錠 1日2回朝夕食後 7日分
(フェロミアは貧血で継続服用中の定時薬)
この処方のポイント
Lesson 32-3 疑義照会:定時薬と感冒薬
9
Case-3 定時薬と感冒薬の相互作用
今回のケースでは用法の変更を提案していますが、「服用間隔をあける」という服薬指導を行
い、疑義照会は行わない、「鉄剤との相互作用のない抗菌薬への処方変更を提案する」といっ
た対応も考えられます。
疑義照会の例
(薬剤師)今回処方されたクラビット錠ですが、鉄剤との同時投与で効果の減弱が報告されて
います。朝食後と夕食後にフェロミア錠が処方されていますので、服用時に1時間
程度の間隔を空けるということでも対処できますが、クラビットの服用を昼食後に
変更することは可能ですか?
(医師)特に問題ありません。クラビット錠500mgは1日1回、1回1錠昼食後に服用するように
患者さんに伝えて下さい。
チェック

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