E-Learning Section-21 医療コミュニケーションスキルアップ 基礎編

1. E-Learning Section-21
医療コミュニケーションスキルアップ
基礎編
株式会社葵 調 剤

2. Lesson 21-1 医療コミュニケーション基礎
2
医療現場ではコミュニケーションへの関心が高まっています。
コミュニケーションにより相手と良好な信頼関係を築くためには，話を聴いて受け入れるという
姿勢を常に示しながら，相手の意思や考え方を理解し認める気持ち（カウンセリングマインド）
を持ち続けることと，行動科学に基づいた面接スキル（知識と技術）を身につけることが重要
です。また，医療コミュニケーションにおいては，患者と医療者との関係が，医療者主導でもな
く患者主導でもない，対等なパートナーとしての関係であることが重要です。医療者がコミュニ
ケーションスキルを上達させるためには，自らのホスピタリティマインド（もてなしの心）の充実
に加えて，カウンセリング法の基本スキルや医療面接技法を身につけ，それぞれの医療職種
の業務での医療コミュニケーションの事例を学び，患者の心理状態や患者が医療者へ期待し
ているコミュニケーションについて理解することが必要です。
医療コミュニケーションとは
葵調剤

3. Lesson 21-2 医療コミュニケーション基礎
3
カウンセリング法
カウンセリングとは基本的には傾聴スキルのことをいいます。
カール・ロジャースの来談者中心法が最も有名です。来談者中心法においては、
相手の感情や考えを無条件に肯定し、共感するという姿勢がカウンセラーに求
められます。
1.カウンセリングの基本原理
①治そうとは思わず、分かろうとすること
患者さんの中には「実は今のままでいたい（極端に言ってしまえば治りたくない）」と思っている
人がいます。ですから，クライアントがどうしてこのような状況になったのか分かろうとするほう
がカウンセリングの成功率が高いです。とにかく相手の身になって話を聞くことが大切です。
②言葉じりはつかまず、感情をつかむ
言葉は感情に左右されるものです。患者さんの言葉の裏にある感情をつかむことが大切です。
察しの良い薬剤師は，その患者さんと同じ様な体験（病気）をした人が多いです。無理に病気
になることはありませんが，察しの良い薬剤師になるためには，いろんな病気の体験をした患
者さんの話を聞くことです。そうすると，患者さんの感情に気付くようになります。
葵調剤

4. Lesson 21-3 医療コミュニケーション基礎
4
カウンセリング法
2.カウンセリングの３本柱
カウンセリングの方法は年齢や疾患によって工夫しなくてはならないものですが，ど
の患者さんでも使えそうな方法がコーヒーカップ方式である。これは人間関係をもつ
ときの３本柱とも言えます。
（１）リレーションを作る
（２）問題の把握
（３）適切な処置
さて，ではどうしたらこの３本柱をもった面接をすることができるでしょうか。
葵調剤
(1) (3)
(2)
※コーヒーカップ方式
カウンセリングの流れを図示したも
のがコーヒーカップに似ているため、
そう呼ばれる。

5. Lesson 21-4 医療コミュニケーション基礎
5
カウンセリング法
3.カウンセリングの基本技法
（１）受容（単語の繰り返し，うながしを含む）
一番使う頻度が高い技法です。カウンセリングは社交会話ではないので，相手の世界に入り
込み，相手の目で，相手の世界を見ることが必要になってきます。薬剤師は受容することで自
分の考えに固執せず，患者さんと同じ考えをもつことができるようになります。また，患者さん
は受容されることで，薬剤師を受け入れます。咎められることがないので自己肯定感が高まり
ます。
（２）繰り返し（言い換え）
繰り返しとは，聞いたことを繰り返すことですが，この方法で患者さんの自問自答を促進するこ
とができます。問題を解決する場合には良い方法です。ポイントとしては結局この人は何を言
いたいのか，ということをつかむこと。患者さんが難しい話ばかりしたり，べらべらしゃべったり
して，なかなか何を言いたいのかつかめない場合には「ようするに，あなたの言いたいことを一
言で言うと？」などと，問いかけてみるのもよいです。繰り返しがうまくいくと，患者さんは分
かってもらえたという感じがします。
葵調剤

6. Lesson 21-4 医療コミュニケーション基礎
6
カウンセリング法
3.カウンセリングの基本技法
（３）明確化（感情・意味の反射）
明確化とは患者さんが言葉にしていないが，潜在的に気付いていることを薬剤師が言葉にし
てやることです。例えば，「死にたいんですけど。」と言ってきた患者さんの潜在意識には「生き
たい。」という気持ちが隠されています。そういうときには「生きる意味さえ見つかれば生きたい，
と言っているように聞こえるけど？」というとよいです。意識の拡大が悩みを解決してくれます。
（４）支持
薬剤師が患者さんに「私もそう思うよ。」「みんな，そうだと思うよ」などと言う方法です。
この方法は自己受容を促進します。ただし，支持するためには根拠が必要です。根拠には，理
論的なもの，類似の事例を出す方法，自分を振り返り個人体験を持ち出す方法があります。
葵調剤

7. Lesson 21-5 医療コミュニケーション基礎
7
カウンセリング法
4.問題の扱い方
（１）リファー
リファーとは他にまわすと言う意味です。自分で手に負えない問題の場合は医師等にまかせるのがよいです。
全部自分で抱え込むことは患者さんの治療の手助けを妨げることになりかねません。
（２）ケースワーク
物理的に何かをして助けたり，環境を変えたりすることです。
（３）スーパービジョン
How toを教えるということです。例えば食事療法や運動療法のアドバイスなどをし、生活改善などを図ります。
（４）コンサルテーション
情報提供とアドバイスをすることです。情報の得方を教えたり，得た情報の使い方や使う方法をアドバイスします。
◎アドバイスをする場合のポイント
・無理矢理しない。相手が気兼ねなく拒否できるようにしておく。
・命に関わる場合は強引にする。
・実行したときに生じる問題も予告しておく。
・アドバイスを受けた人が戻ってきたら，もう一度一緒に考える。
葵調剤