機械学習による非均質材の非線形解析

1. 機械学習による非均質材の非線形解析
鈴木良郎 （東京工業大学）
支配方程式 機械学習により
得られた離散化式
提案する数値解析
一般的な数値解析
支配方程式
“直接的”に導出
離散化式
解析対象
“間接的” に導出
解析手法
(FDM, FEM, FVM)
解析モデル
研究目的 「機械学習による非線形解析は可能か？」の検証
機械学習（回帰分析）

2. 回帰分析による離散化式（隣り合う点の関係式）の推定 2
支配方程式:
𝑑
𝑑𝑥
𝑘
𝑑𝑢
𝑑𝑥
= 0 ←定常熱伝導場
熱伝導率 k は温度（u）依存性をもつ
→本例題は非線形問題となる
u1 unu2 u3
各点の温度
ui-1 ui ui+1間の真の関係性 回帰分析に基づく関係式ui = f(ui-1, ui+1)
学習用データ
ui
機械学習（回帰分析）により妥当な関係式ui = f(ui-1, ui+1)を
構築できれば提案手法による非線形解析は実現可能といえる
ui-1 ui+1
ui
ui-1 ui+1

3. 提案法の解析手順
ui = f(ui-1, ui+1)
ui = b1ui-1+b2ui+1
3. 回帰式を用いた棒全体の解析
全ての点に対し回帰式を立て、連立する
1次多項式
……
u1…un が収束するまで連立式を繰り返し計算する u1…unを決定
ui = b1ui-1+b2ui+1+b3ui-1
2+b4ui+1
2 b5ui-1ui+1
Neural network
2次多項式
2. 回帰分析
1. 学習データの取得
既存手法（FEM, FDM）により多数の学習データui-1 ui ui+1を生成
ui+1
ui-1
ui
u1 unu2 u3
0oC 1oC
u1= 0
u2= f(u1, u3)
u3= f(u2, u4)
un= 1
…
Input Output
1次式では非線形性を表現不可
ui–1 ui+1ui
回帰係数
非線形性を表現可

4. • 学習データは (i)バイアス無し，(ii)有りの二種
• (i), (ii)ともラテン超方格を用いてバランスよく選定
ui–1ui+1
ui
二種類の学習データ
ui+1
ui–1ui+1
ui
4
(i) バイアス無しのデータ
0 < ui–1, ui+1 < 1
–1 < ui+1–ui–1 < 1
ui+1 ≒ ui–1 でないものも含む
(ii) バイアス有りのデータ
0 < ui–1, ui+1 < 1
0 < ui+1–ui–1 < 0.25
ui+1 ≒ ui–1 のデータのみ含む
ui–1 ui+1ui
学習データ 回帰式を表す曲面
ui–1
ui+1
ui–1
有用なデータ 有用でないデータ
学習データ

5. 例題1: 均質な棒 5
熱伝導率: 𝑘 𝑢 = 𝑢 + 0.1
0oC
𝑥
u1 u21u2 u3
1oC
0 10.05 0.1
𝑢𝑖 = −0.1 + 0.5 𝑢𝑖−1 + 0.1 2 + 𝑢𝑖+1 + 0.1 2
ui-1, ui, ui+1 間の真の関係式:
𝑢
𝑥
= −0.1 + 1.2𝑥 + 0.01
真の温度分布 𝑢 𝑥:
例題1の検証事項
ui-1, ui, ui+1 間の関係式のタイプが回帰式と異なっていても
回帰式はui-1, ui, ui+1 間の非線形関係を表現できるか？
関数のタイプが
前述の回帰式（3ページ）と異なる

6. Neural network
(3層, 25ノード)
真の温度
5次多項式 局所2次多項式
4次多項式2次多項式 3次多項式
0oC
𝑥
u1 u21u2 u3
1oC
0 10.05 0.1
位置座標, x
温度u[oC]
ui–1
ui+1
600個のバイア
ス無しデータ
0 <ui–1, ui+1 < 1
熱伝導率: 𝑘 𝑢 = 𝑢 + 0.1
均質な棒

7. 熱伝導率: 𝑘 𝑢 = 𝑢 + 0.1
0oC
𝑥
1oC
0 10.05 0.1 ui–1
ui+1
均質な棒
u1 u21u2 u3
600個のバイアス
有りデータ
0 <ui+1-ui-1 < 0.25
Neural network
(3層, 25ノード)
真の温度
5次多項式 局所2次多項式
4次多項式2次多項式 3次多項式
位置座標, x
温度u[oC]

8. 例題2: 複合材の棒 8
ui-1, ui, ui+1 間の真の関係式:
取得不可
真の温度分布の解析解:
取得不可
例題2の検証事項：
ui-1, ui, ui+1 の関係を関数で表現できないケースでも
回帰式はui-1, ui, ui+1の関係を表現できるか？
熱伝導率: 𝑘1 = 𝑢 + 0.1
𝑘2 = 0.5
0oC 1oC

9. 温度の参照解
ui–1
ui+1
複合材の棒 600個のバイア
ス無しデータ
0 <ui–1, ui+1 < 1
Neural network
(3層, 25ノード)5次多項式 局所2次多項式
4次多項式2次多項式 3次多項式
位置座標, x
温度u[oC]
熱伝導率: 𝑘1 = 𝑢 + 0.1
𝑘2 = 0.5
0oC 1oC

10. 複合材の棒
熱伝導率: 𝑘1 = 𝑢 + 0.1
𝑘2 = 0.5
0oC 1oC
ui–1
ui+1
600個のバイア
ス有りデータ
0 <ui+1-ui-1 < 0.25
Neural network
(3層, 25ノード)5次多項式 局所2次多項式
4次多項式2次多項式 3次多項式
位置座標, x
温度u[oC]
温度の参照解

11. 112次元複合材の解析方法
ミクロ構造複合材構造（マクロ構造）
1 2 3 4 5
10 11 12 13 14
19 20 21 22 23
6 7 8 9
15 16 17 18
24 25 26 27
15 16
76
11
28 29 30 31 32
非線形
FEMによる
データ生成
u11 = b1u6+b2u7+b3u15+b4u16
+ b5u6
2+b6u7
2+b7u15
2+b8u16
2
+ b9u6u7+b10u7u15+…
学
習
過
程
u6 u7 u11 u15 u16間の関係性を
表す回帰式の例（2次多項式）

12. 12
50oC
100oC75oC
0 oC
解析モデル
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 20 40 60 80 100
温度 [oC]
熱伝導率[W/m/oC]
母材（白色）
円形含有物（灰色）
母材
（白色）
提案手法 全域細メッシュFEM
節点数 925 >200,000
回帰式 2次多項式
学習データの数 80, 180, 240, 320
(バイアス有りデータ)
提案手法 vs.全域細メッシュFEM
例題3: 2次元複合材の非線形熱伝導

13. 0
0.1
0.2
0.3
0 1000 2000
総解析時間 [s]
提案手法
FEM
(参照解)
0
0.1
0.2
0.3
0 100 200 300 400
学習データの数
提案手法
13
提案手法 (925 節点) FEM (>200,000 節点)温度 [℃]
100
85
75
65
55
45
35
25
15
0
80
180 240 320
平均温度誤差[oC]
平均温度誤差[oC]
例題3: 2次元複合材の非線形熱伝導

14. 結言 14
機械学習（回帰分析）に基づく非線形解析ソルバ
を提案した
本ソルバでは，多項式やNeural networkにより，
近隣節点の関数値（温度，変位，圧力など）の非
線形関係を表現する
本ソルバを2次元の非線形定常熱伝導問題に適
用した．解析モデル全域を細かくメッシュ分割した
FEMに比べ
最大温度誤差： 0.05%
総解析時間： 68 %削減