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投票率80%の国、スウェーデンから学ぶ「対話の場」の重要性
主催:NPO法人 Youth Create
2018年1月26日(金) 19:30~21:30
両角達平
両角達平 (モロズミ タツヘイ)
88年生 長野出身
仕事
フリーのコンサルタント・ライター・研究者
生業 : ユースワーク、若者政策研究、記事執筆、 NPO支援、スウェーデン視察コーディネート 、 翻訳、
通訳、北欧留学相談 etc.
ブログ: Tatsumaru Times (http://tatsumarutimes.com) 編集者
学業
Degree of Master of Science : International and Comparative Education (Stockholm University)
東京大学教育学部 学校内容開発コース 特別研究生 (2017年)
静岡県立大学国際関係学部 国際言語文化学科 学士
著書
スウェーデンではなぜ81%の若者が選挙に投票するのか? (合同出版) (予定)
など
2
活動の原点 :
YEC (若者エンパワメント委員会)
 静岡県立大学の学生サークル
 大学生が、中高生世代の本当の「やりた
い!」を応援するプロジェクト
 ミッション:すべての若者が思いを形に
することを通じて、社会の作り手となる
ために
 2009年発足 (現在8期目)
 平成25年度内閣府「社会貢献青年表彰」
3
https://youth-empowerment.jimdo.com/
社会活動  YEC(若者エンパワメント委員会) 創
設・元代表・サポーター (静岡)
 中・高校生施設職員交流会 TEENS
 シティズンシップ教育フォーラム(JCEF)
 NPO法人 Rights 理事
 国際シンクタンク Youth Policy Labs オ
フィスチーム (ベルリン)
 内閣府 子ども若者育成支援点検評価会
議 構成員 (2011年)
Organizations and causes I care about
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
4
若者が活躍する社会
スウェーデン
Quick fact about Swedish youth
5
首都: ストックホルム(市人口約93万人)
通貨: スウェーデン・クローナ(SEK)
人口: 約1000万 (2017年)
公用語: スウェーデン語
政治:立憲君主制・一院制
主要産業:機械工業、化学工業、林業、IT
「優しさと厳しさの絶妙なバランス感覚(岡沢憲夫)」
6
外務省:スウェーデン基礎データ
スウェーデンの
教育事情⑴
 義務教育期間:9年間
 教育の地方分権化・学校選択制・教育
バウチャーを導入した教育政策
 PISA (国際学習到達度調査)の結果
 外国生まれの人口の比率
 スウェーデン: 16%
 日本:1.1%
 学校間の教育格差は小さい
 学費を徴収することは違法
 大学入学の平均年齢
 スウェーデン:25歳
 日本:19歳
Education in Sweden
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
7
スウェーデンの30歳以下の若者の投票率は81%
8
海外では政治の話題が「日常的」は本当か?
9
社会参加意識の高い今日のスウェーデンの若者
 16~24歳の若者で政党の党員であると回答した若者の割合: 5.6%
 市議会選挙で指名された18~24歳の若者の割合: 5%
 地域の意思決定者に意思表明をする機会があると感じている若者の
割合
 16~19歳の若者は21.5%
 20~24歳の若者は14.7%
 住んでいる地域の、自分自身に関連のある問題に影響を与えたいと
思っている16-25歳の若者の割合: 45.6%
 少なくとも1つの協会・クラブ活動 (förening)に属する若者の割合
 25-29歳:70%
 16~24歳:58%
10
スウェーデンの若者白書の2016年版
「Ung Idag 2016」
日本とスウェーデンの若者の意識の比較 11
日本 スウェーデン
若者の国政選挙の
投票率
33.4% (20-29歳) 81% (18-29歳)
政党に加わっている
若者の割合
1.4% (29歳以下) 9.6% (29歳以下)
社会現象が変えられと思
う若者の割合
30.2% (13-29歳) 43.4% (13-29歳)
署名をしたことがある、ま
たはするかもしれない若者
の割合
27.4% (29歳以下) 73.7% (29歳以下)
出典: 明るい選挙推進協会, 世界価値観調査2010-2014, 内閣府子ども若者白書
若い政治家が多い
 選挙権・被選挙権は国政地方選も18歳
 16歳選挙権の導入を検討中
 若い国会議員の割合
 18~24歳:2.3%
 25~29歳:8.3%※
 現在最年少の国会議員が穏健党青年部所属
の22歳のヤスペル・カールソン
 現政権の連立内閣 24人の中の若い大臣
 グスタフ・フリドリーン (33歳)
教育大臣
2002年の国政選挙において19歳で当選
 アイーダ・ハジアリッチ (29歳)
高校・知識向上担当大臣
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ生まれ
 ガブリエル・ヴィークストロム(31歳)
国民健康・医療およびスポーツ担当大
臣 社会民主党青年部の代表
※Ung Idag :http://www.ungidag.se
スウェーデンでは若者が
どう社会参加しているのか?
How young people in Sweden tale part in sociery?
13
若手政治家の活躍①
 エマ・オプス市議は23歳
 19歳から市議会議員を務める
 普段はストックホルムの大学生。
 14歳の時に地方紙に学校経営の問題で投書
し「自分の意見で社会を変えられる」と感じ
たことがきっかけ
 市議は、パートタイムなので本業(学生も)
を兼務するのが普通
14
若手政治家の活躍②
 グスタフ・フリドリーン (33歳) 教育大臣
 11歳:環境党の青年部会のメンバーになる
 16歳:環境等青年部会の代表に選ばれる
 2002年の国政選挙において19歳で当選
 「議員が一生の仕事であってはならない」
 「政治という場はあくまで我々が生きる社会の
現状を捉え、その社会を変革していくための
ベースに過ぎないのだから、そこで仕事をする
政治家は現実社会との接点を失ってはならな
い」
 ジャーナリストに転身後、2010年に政界に復帰
 2014年 環境党共同代表を務め、社民党連立政
権下にて教育大臣に任命
15
政党青年部の役割
事例:穏健党青年部ヨンショーピン支局
 党員要件は、13歳から30歳
 気軽な雰囲気の中で政治的な対話を楽しむ
 話し合いから生まれた政策アイデアを毎年実施
される青年部の党大会で意見表明する
 選挙の際には、学校に穏健党の主張を伝えるた
めに学校に招待されることもある
 主義は穏健党と近いが、具体的政策においては
本部(成人部)とは異なる若者世代を重視した
政策
 若い政治家のキャリアステップとなっている
 本部、大学生部、基礎学校・高校生部から構成
 党員は全体で2500人で、うち青年部は350人
 会費は年間約560円
若い力で民主主義を支えるスウェーデンから 国は予算、制度から政治参画を
促す体制整備を (両角達平) :http://ci.nii.ac.jp/naid/40020814609
①若者の声を育む社会参加の機会
(Active citizenship)
17
多様な社会参加の場
18
公式の場
(Formal)
社会科の授業
ロールプレイ
模擬選挙
生徒会
政党青年部
全国若者協議会 (LSU)
余暇の場
(Non-formal)
若者会 (SUR)
若者団体 (NGO, スポーツ,
趣味, スタディーサークル)
余暇活動施設
その他の場
(In-formal)
若者文化/はやり
デモ・抗議活動
消費参加
Andersson et.al Partispace - Deliverable 2.2 Comparative report.
https://doi.org/10.5281/zenodo.48113 を参考
学校で起きていること
In the school
19
学校で民主主義を学ぶ
Källängens skola 小学校4年生の社会科の授業
20
配布されていたプリント 配布されていたプリントの和訳プリントの課題に取り組む生徒
学校で生徒は自分への影響力を高める
 自分で何を学習するか
 この教科の中で何を学ぶか (課題)
 この時間はどこで学習するか(場所)
 誰と学習するか (共同学習者)
 この課題がどの程度をゴールとするか(到達度)
 何を学んだか (自己評価)
21
自分の学びの主体は自分だから、自分の学習に対して影響力をもつ
スウェーデンの学校教育における「主体性と発信力」育成
- 「影響力の発揮」というキーワードに着目して, 佐藤麻里子 より
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
生徒の学習機会、権利に影響力を持てることを保障する
スウェーデン生徒会連合 (Sveriges Elevkårer)
 代表:マティアス・ハルベリ (21歳)(2015)
 加盟生徒会数: 250 (8200人の個人会員、18万人と間接的に関わる)
 目的
 全国の高校の生徒会の活性化
 生徒、生徒会の権利の擁護
 学校環境の改善
 活動
 研修会開催
 教材開発
 全国生徒会大会の主催
 模擬選挙のサポート
 グッズ販売
 正規職員数:45人 事務所:ストックホルム
 (平均年齢22歳)
 年間の取引、約 3 億5600万円。うち 88%は政府からの補助金
 諮問機関としての「生徒会」(student council)ではなく、独立した生徒会の連合組
織 (student body)
22
若者が社会への影響力を高める実践
スウェーデンの高校の学生自治会の取り組み
J-CEF NEWS .no8(2015 Autumn)
学校外で起きていること
Leisure time
23
スウェーデンの若者の
余暇活動における参加
2. 若者団体
◼ 二人に一人が所属
◼ 豊富な助成金
◼ 若さを保つ仕組み
◼ Måtplats = Meeting Place = 出会いの場
◼ 13歳から25歳が対象
◼ 290の自治体に1500施設 / 3700人の職員
1. 施設 (ユースセンター)
24
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
若者団体の種類
出典:Forkby, T. (2014).
25
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
 ヨーテボリの若者101人(12~17歳)から構成される
 理念
 若者が若者協議会、地域の行政、政治家に影響を与えるこ
とができる
 議論される内容を決めるのは若者自身
 理事会はネットの選挙で選ばれる
 大会議を年5回、委員会ごとの会議を毎週
 主な活動は、政治家、行政への提言・質問・意見具申
 地方選挙における16歳選挙権の導入
 若者の公共交通機関の時間限定の無償利用可 (実現)
 ウォータースライド祭り
 毎年350万円の予算 (12万以上の出費は自治体から許可)
26
若者の声を地域行政に反映させる若者協議会
ヨーテボリ若者協議会の例
スウェーデン人研究者が語る、若者参加と大人の規範意識
http://tatsumarutimes.com/archives/9111
若者協議会を束ねる全国組織: スウェーデン若者協議会
 スウェーデン全国に点在する若者協議会の
全国団体
 若者の地域社会での影響力を高める活動
 拠点を学校に置かず、特定の政治思想にし
ばられることもない
 活動
 イベントの企画・議会への請願
 政治家と直接会う集会の開催
 書籍発行・送付
 全国の若者協議会向けのリーダーシップ
研修
 自治体に若者政策のアドバイス
 財源:国からの若者団体向けの助成金
27
http://www.sverigesungdomsrad.se
地域の若者協議会の
活動をサポート
• 全国集会年に4回
• 組織運営の研修合宿
• 政治家から「どうしたら若者が政治
に関心をもってもらえるのか?」と
いう相談が相次ぐ
• →「若者が社会に影響を与える方
法」についてまとめた書籍を発行
• スウェーデン全国若者会(SUR)のメン
バーは、全国の加盟している若者会
から12人が選挙で選ばれる
• その中の有給の職員は5人
28
②若者の声を届ける仕組み
29
若者の声を吸い上げる仕組み
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若者団体と若者団体協議会の関係
32
国
スウェーデン若者団体協議会LSU
全国若者協議会
(SUR)
穏健党青年部本部
スウェーデン
生徒会連合
県
ヨーテボリ県 若
者協議会
ヨンショーピン県 穏
健党青年部
ストックホルム県
生徒会連合
地方自
治体
ヨーテボリ若者
協議会
ヨンショーピン穏健党
青年部
ストックホルム生
徒会連合
若者担当大臣と面談を
している若者団体
33
 Amateur culture advisory group
BOOSTER National Association
House of Dreams
FAS - Swedish Council for Working Life and Social
Fryshuset
Federation of Young Disabled
Municipality of Kristinehamn
LSU - Swedish Youth Organisations
the Liberal Youth
The network NuNi
National Sports Confederation
Roma Youth Association
RUS - National Association of Youth for Social health
Save the Children Youth
SIOS-Youth Committee
SKL - Local Authorities and Regions
SCRUB - Network for Sweden's Christian Youth Movement
SSU - The Swedish Social Democratic Youth League
Swedish Guide and Scout Council
Sweden's Student Councils' Central (SECO)
Sweden's Young Muslims
Swedish Youth Council
UNF - Youth Temperance Association
National Board for Youth Affairs
Strategi for ungdomspolitiken, 2009
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
若者の声を聞くユースワーカー
 「政治家が若者の声を聞いていない」
→2004年にユース・デモクラシー・コー
ディネーターを設置
 役割:若者の声を聞いて、政策に反映
させる
 1 若者の影響力を高める
 2 市民の対話の促進
 3 High Risk Weekend
 方法
 若者がいるとこにいく
 「市長」なら何をしたいか聞く
 提案には必ず答える
 市議直通の連絡先を公開
34
クリスティンハム 市
公共健康部門 統括責任者
ユース・デモクラシー・コーディネーター
ヨハン・エーマン (45)
なぜ若者と政治が
近い社会なのか?
35
民主主義政策の強調があるから
(demokratipolitiken)
「民主主義政策の目標は、ひとりひとりの影響を発揮する機会が強めら
れ、人権が尊重されることである」
5つ方針
1. すべての人の平等な選挙への参加
2. 被選挙権の平等な行使、選出される機会の拡大
3. 選挙がないときの、市民の影響力、透明性と参加の向上
4. 民主主義の意識を高めること
5. 民主主義を守り、暴力的な過激主義を減らすこと
(Prop. 2008/09: 1 bit 2008/09: CU1, Comm. 2008/09: 83).
http://www.regeringen.se/regeringens-politik/demokrati-och-manskliga-rattigheter/©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
36
直接的な対話の場
選挙小屋の前での演説 選挙小屋で宿題をする中学生
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
37
ICT×市民参加のウェブツール・アプリ
Speak app Vote IT
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
38
スウェーデンのある自治体
の投票率を上げた方法
 18歳の初めて投票する若者に「デモクラシー
パスポート」なるものを配布
 図書館に「デモクラシーセンター」を設置
 公の場での対話の場の提供。情報共有や学び
の場になる
 「デモクラシーナビゲーター」をフルタイム
の職員として雇い、ファシリテーションをし
てもらって、参加者のひとりひとりの声が聞
かれるようにした
 このプロジェクトは、ファルーン市のすべて
の9つの政党が合意したことによってはじま
た
 ソマリア系スウェーデン人を雇いパンフレッ
トをアラビア語に翻訳や討論会の通訳をする
などして、アラビア語を話し市民への配慮も
忘れなかった
 結果、EU選挙の投票率は45%から54%へ上昇
し、スウェーデンの総選挙の投票率も82%か
ら87%へ上昇
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
39
若い人でも政治家になりやすい仕組み
 選挙権、被選挙権は18歳
 →選挙権は16歳への引き下げも視野に入れている
 政党青年部、若者団体、NGOが政治家のキャリアステップになっている
 政治家は、副業でできる
 出馬の際に供託金はいらない
 選挙は、国政選挙・地方選挙同時に4年に一度開催
 多党制、比例代表制、一院制(349議席 任期4年)
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
40
 「学校は価値中立とはなり得ない」と認めている
 学校は民主主義を絶対的な価値として浸透に努める
 すべての生徒は以下の項目で差別されてはならない
 性別
 人種
 宗教
 信条
 ジェンダー
 性的指向
 年齢
 身体障害
 その他の侮辱的な扱い
 平等と差別禁止の原則、学校の民主主義を教える義務が適用される
政治教育のハウツー本
Prata politik (政治について話そう)
41スウェーデンの学校での政治的中立の保ち方
スウェーデンは学校で「政治的中立」をどのようにして保っているのか?
http://tatsumarutimes.com/archives/4242
目標
13歳から25歳のすべての若者が、良質な生活環境
に恵まれ、自身の人生を形作る力を持ち、コミュニ
ティの発展に影響力を持てるようになること、
With a focus on young people - a policy of good living conditions, power and influence. (Prop. 2013/14: 191)
特徴
 教育庁下の若者市民社会庁が管轄
 「若者は社会の問題ではなく、社会のリ
ソース(資源)」
スウェーデン若者政策の目標:
若者の影響力を高めること
42
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
就労
家庭
学校教育余暇活動
政治
若者団体の活動を
支援する若者政策
1. 若者団体へ助成金の拠出
・約30億円の助成金を106の子ども・若者団体に
拠出(2014)
・助成条件:60%の会員が6歳から25歳
・短期プロジェクト枠もある
(テーマが毎年変わる)
2. 調査・研究・出版
・子ども・若者白書(Ung Idag)
・テーマレポート (Fokus)
3. 協議会の実施
・意見具申へのフィードバック
・若者団体と若者政策担当大臣との面
談の開催
若者・市民社会庁の施策
43
スウェーデン若者市民社会庁 ホームページより
(https://www.mucf.se/myndighetens-organisation)
組織体制
まとめ
 大人が若者を変えられるってまだ思っているんですか?
 そもそもどうやって私たち大人が若者の余暇活動の選択に影響を与えようというのか?
(1945年, 政府報告書)
 「教育・個人の成長」「就労・キャリア支援」に偏る日本の若者参加の場
 →果たして本当に参加の結果、社会や自分への影響力を持てているのか?
 対話には訓練の場が必要→ Active Citizenship(積極的な市民)の実践の場
 若者の団体、ボランティア、グループの活動 自体が「社会参加」であり若い民主主義の実践
 政党青年部をまっとうに機能させる / 若者中間・代表組織が必要
 しかし「多忙化」する日本の中高大生..
 「普通の人」が社会に影響を与えられるようにするにはどうしたらいいか?
 政治家が「普通の人」なスウェーデン
 若者団体、NGO、ボランティア、協会、中間組織と政治が圧倒的に近い
 政治家・NPO・ユースワーカーに求められるコーディネーター的スキルとマインド
 ファシリテーション / 異分野を超える
 英国EU離脱、トランプ支持者、無投票者の背景を理解しようとする試み
44
補足資料
45
ポストモダン社会における若者参加 2.0
46
積極的な参加
若者主導&発
参加
-大人主導で決定を共に
-相談される
-知らされる
非参加の状態
-名ばかり参加
-操り参加
-お飾り参加
社会・市民
教育・雇用政治
権力関係の転換
参加のための
資源をつける
権利としての
参加
若者の社会
への
自分への
影響力を
高める
Reinterpretation of Youth Participation, Morozumi, 2017
ヨーロッパにおいて
若者政策が浮上した社会的背景
 1970 ~ 若者の失業問題、高学歴化、社会的関心の希薄化、消費市場の拡大 (宮本みち子)
 →社会的に排除される若年層の増大、二極化、移行期の複線化、多様化
 →若者が「社会的排除」層にあることを認識
 1990 ~ 若者政策 の誕生
 2001 EU 若者白書 (White Paper on Youth)
 3つの目標
1. 若者の積極的シティズンシップ
2. 若者の経験分野を拡大し認識を広げる
3. 若者の自律を促す
 2010-2018 若者分野における欧州の協力のための新しい枠組み
• 教育と労働市場におけるすべての若い人たちのためのより平等な多くの機会を提供する。
• すべての若者の積極的市民性、社会的包摂、連帯を促進する。
47
スウェーデンの
若者政策の歴史的発展
1. 国レベルの子ども・若者政策の誕生(1898)
2. 利用者参加 のはじまり
 大人が若者の余暇活動の選択に影響を与えようというのか? (1945)
3. ユースワークの導入
 オープン・アクティビティが基本
 資金をつける
4. 若者を消費者にさせない (1980~)
5. 子どもの権利としての参加 (1990~)
6. 参加から影響力へ
48
スウェーデンの若者政策の歴史からのメッセージ
大人の若者への視線の転換
そもそもどうやって私たち
大人が若者の余暇活動の選
択に影響を与えようという
のか?(1945年, 政府報告書)
消費者化する若者と社会への警告
若者が、商品や物品の、
さらには自身の人生の
『消費者』になってしま
い、結果として自身の人
生をも自分で決めること
ができなっている(1981,
Ej till salu )
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
49
なぜ若者参加が必要なのか?
1. 基本的人権だから
2. 子ども・若者が排除されなくなるから
3. 若者が生きる力や能力を高め、自信が持てるようになり
価値観や規範意識、抱負を抱くようになる
4. 政策、公共サービス、実践の質が向上するから
5. 積極的な市民になるためには、訓練が必要だから
欧州議会の提言によると、家庭、学校、職場、余暇活動、若者の活動で、民主主義を教え
ることを怠ると、若者は政治に対してひがみっぽくなり、投票率は下がり、政治家、政党、
政治的な若者団体への不信感が募る。さらに、研究によると 市民教育の経験がない若者は、
同調圧力により極端な思考に陥り、暴力的な政治活動をしやすくなる
A European framework for youth policy. Council of Europe, ,2002
若者参加の諸条件
若者参加
①若者の声を育む
社会参加の機会
(Active
citizenship)
②若者の声を届け
る仕組み
③民主的な対話の
場を保障する価
値・原則
©️Morozumi Tatsuhei (http://tatsumarutimes.com)
51

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