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グローバル・ベンチャー
を目指す起業家のための
国際起業戦略
2012年2月22日
John Y. Sasaki
増 島 雅 和
3. John Y. Sasaki
! 米国で生まれ育つ
! 1991年 カリフォルニア大学バークレー
校ロー・スクール卒 (J.D.)
! 1994年‐1997年 日本で勤務(小松・狛法律事務所、
アンダーソン・毛利法律事務所)
! 1997年‐2002年 シリコンバレーのウィルソン・ソン
シーニ ・グッドリッチ & ロサーティ法律事務所に勤務
! ベンチャー企業の顧問・法務一般
! ベンチャー・キャピタル・ファイナンス
! 株式公開
! M&A
! 日米ジョイント・ベンチャー
! 2002年‐2006 モルガン・ルイス&バッキアス 東京
事務所パートナー
! 2006年‐JSV外国法事務弁護士事務所設立
4. Masa Masujima
! 弁護士(日本法・ニューヨーク州法)
! 森・濱田松本法律事務所 在籍
! 専門はM&Aとコーポレートファイナンス
! 日米ベンチャー実務に10年以上携わる
! Wilson Sonsini法律事務所でシリコンバレーの実務を体得
! Rekoo Japan(サンシャイン牧場)、クーポッド(Groupon Japan)、
オーマ(SPYSEE、READYFOR)等の立上げ、投資案件を担当
! 起業家向けベンチャー投資実務情報提供サイトStartup Innovator
(http://startupinnovators.jp/)管理人
6. なぜグローバルを狙うか
世界全体のスマートフォン出荷台数:4億9140万台
(IDC 2012年2月調べ)
英語圏の人口:第一言語で3.9億人 ESLで6億人
(北方中国語9億人)
英語圏のスマートフォン普及率:軒並み30%超
日本は6%とも言われるが(Google調べ)、14.5%とも(CIAJ)
他方で、日本のコマース利用率は主要国(30%弱)に
比べて高い(45%)
課金・マネタイズの容易さの問題はあるが、市場面
ではグローバルを狙うことは合理的
7. いつグローバルを相手にするか
2つのアプローチ:
! 日本市場を攻略してからグローバル展開
! 初めからグローバルを狙う
“entrepreneurial effort”がビジネスモデル開発にあることを考えると、
ビジネスモデルの作り方に重要な影響を与える
(マーケットの大きさによる)スケーラビリティと、(ス
ケーラブルなビジネスをものにするための)投資コスト
! 終局的には資金調達の問題に帰着
! 従来型ビジネスとITビジネスで大きな差があるのか
8. どこにオペレーションを置くか
! 一般論としては、オペレーションの場所とマーケットは
近いほうがよい
! 意思決定の適切性・迅速性を担保
! 開発のスピード・方向性や機能の取捨選択の適切性
! ローコストオペレーションの実現
事業基礎が脆弱なスタートアップにとっての必要条件に
深く関連
! IT系の事業では、オペレーションの場所とターゲットと
するマーケットのリンクは比較的小さい
! デメリットを上回るメリットを見いだせるか
11. 海外エンティティ利用の選択肢
! 海外HoldCoモデル
ü 海外の持株会社、日本の事業子会社
ü オペレーションの場所は原則として日本
! 海外オペレーションモデル
ü 海外の親会社、日本の子会社
ü オペレーションの場所は原則として海外
! 海外子会社モデル
ü 日本の親会社、海外の子会社
ü オペレーションの場所は原則として日本
12. 海外エンティティの利用(資金調達・エグジット)
! 海外の投資家の選好
ü 日本のエンティティは選ばれにくい(事例が少なく、法制を理解するた
めのコストが嫌われる)
ü 投資家に好かれるエンティティ:デラウェア法人、ケイマン法人
! 投資資金の性質
ü 日本にもアーリーステージの投資資金/投資家は増加
ü 日本にはグロースキャピタルが不足(投資規模が小さい)
海外VCを相手に大規模投資を狙う場合には選択肢となりうる。
! エグジットの可能性
ü 海外のエグジットの可能性は、海外(デラウェア/ケイマン法人)の方
が高い
ü IPOとM&Aの双方に当てはまる
13. デラウェア法人の特徴
! 設立手続き
! 1ページの定款(Bylawsによって補完)
! 1日で設立できる
! 最低資本金と最低額面額はない
! 現地の代表取締役は必要なし(訴訟書類送達受領代理
人(agent for service of process)は必要)
! 現物出資が容易(取締役会決議のみ)
! 銀行口座は不要
14. デラウェア法人の特徴
! コーポレート・ガバナンス
! 登記制度はない(Good standingは別途証明)
! 株主承認事項は少なく、議決要件は書面決議と総会開催
の場合とで異ならない
! 取締役会は最低年1回
! 維持コスト:
ü 訴訟書類送達受領代理人の費用
ü 連邦税
ü 州税(franchise tax)
ü デラウェア州への提出資料は特になし
15. デラウェア法人の特徴
! 資金調達とエグジット
! 柔軟な種類株式制度
ü みなし清算条項
! 種類株式の評価実務
ü 優先株式と普通株式の価格差
! 柔軟な転換社債制度
ü 転換後株式の内容決定を留保できる
ü 社債の条件も柔軟
! エグジットのストラクチャーの柔軟性
ü 逆三角合併(reverse triangular merger)
16. デラウェア法人の特徴
! ストック・インセンティブプラン
! 株主によりストック・プランを決定
ü SOのほか、制限株式など複数の株式報酬の仕組みを導入
ü オプションプール(枠)を確保
! オプションの内容は、ストックプランの枠内で取締役会で
付与の都度決定
ü 行使価額は付与時に取締役会で決める
! 税制適格オプション(ISO)と非適格オプション(NSO)
ü ISOからNSOへの変更が可能
! 海外法人発行のオプションも税制適格とすることが可能
18. 資本/資金調達政策
<海外法人/海外投資家>
! 起業家のインセンティブ引き出しを重視
! スウェットエクイティの許容
! 制限株式によるインセンティブ歪みの是正
! ストラクチャルで効率的なガバナンスを重視
! 段階的投資モデルによるガバナンスの一本化
<日本法人/日系投資家>
! 投資リスクを意識した慎重な投資
! 元本回収リスク(ダウンサイドリスク)に敏感
! 投資リスクを起業家と分担する発想
! ガバナンスの非効率性への仕組み上の対応に鷹揚
! 「他の投資家の行動リスク」を低く評価
19. エクイティ・インセンティブ
! 報酬制度の中心
! 税務上の取扱いを含む設計のしやすさが人材リソースの獲得・
維持にとって重要なポイント
<米国>
! 株主承認のストック・プランと4∼5年のベスティング方式
! 海外法人によるISO要件の充足、証券法上の取扱い
<日本>
! ISO要件充足のため待機期間2年の縛りとSO管理事務の縛り
! 行使の都度の登記変更の事務負担
! 海外法人によるISO要件の充足、金商法上の例外規定
20. 法制上の比較
米国(デラウェア州)
日本
会社の設立
設立の資料
u 1ページの定款
u 2‐3ページの定款
申請の期間
u 1日
u 1‐2週間
最低資本金
u なし u なし
最低額面額
u なし u なし
現物出資
u 法律上可能 u 法律上可能
u 第三者の評価が不要 u 第三者の評価が必要
現地の取締役
u 不要 u 代表者1名必要
u 現地の訴訟書類送達受領代理
人(agent for service of
process)は必要
21. 法制上の比較
米国(デラウェア州)
日本
コーポレート・ガバナンス
登記事項
u 特になし u 取締役の情報、ストック・オプショ
ンの内容、発行済み株数等
定款の変更
u 手続きが1日 u 手続きが1‐2週間、登記の変
更も必要
株主の決議事項
u 株主の承認事項が少ない u 株主の承認事項が多い
u 書面でも過半数/67%同意で u 書面の場合は全員一致が必要
決められる
株主総会
u 最低年1回 u 最低年1回
取締役会
u 最低年1回 u 最低年4回(3ヶ月に1度報告義
u (通常四半期毎) 務)
合意書
u 可能 u 可能
u 取締役会は全員必要 u 取締役会は全員必要
電話やビデオの参 u 可能 u 可能
加
22. 法制上の比較
米国
日本
資金調達とエグジット
優先株式
u 法律上可能 u 法律上可能
u 条項の柔軟性がある u 条項の柔軟性が限られている
優先株と普通株の u 最初の段階はまで可能(10- u 多少柔軟化の兆し
株価の差
to-1 Rule)
u 後は厳しくなっている
みなし清算
u 定款上できる u 定款で行われる例は少ない
転換社債
u そのまま転換できる u CBとワラントの組み合わせが必
要
三角合併
u 買手がそのまま株式を売手に u 買手がまず子会社に株式を譲渡
発行できる しなければならい
23. 法制上の比較
米国
日本
ストック・オプション
オプションの枠
u 株主の決議で決定 u 株主の決議で決定
u 枠がなくなるまで付与できる u 1年以内で付与しなければ
オプションの条件 u 取締役の決議で決定 u 株主の決議で決定
(行使価額も含め
て)
行使価額
u 付与時で決定 u 枠を作る時で決定
税制適格オプショ u 付与から2年から持つ u 付与から2年行使できない
ン(ISO)の基本条 u 行使から1年持つ
件
ISOがNSOの変 u 可能 u 不可能
更
他の国のオプショ u 可能 u 難しい
ンの税制適格扱い
26. 検討を要する事項
! 基本的な要件を満たした上で考えるべきこと
! 従業員の所在地
ü 全員がビザを取得するのは至難の業
! 顧客の所在地
ü 「世界中」とは言っても、合理的にどこにフォーカスするのか
! 投資家の所在地
ü 自社のビジネスモデルが合理的に見て世界を相手に受け入れられ
るのか
「シリコンバレーでの起業資格」には「メジャーリーグへの挑戦資
格」に似た側面
27. リーンファイナンスモデルと海外展開
! リーンスタートアップ理論
! 開発手法の方法論にとどまらず、アントレプレナーシップ発揮のため
の組織戦略論
ü 方法論その1:開発のムダを可視化=有効学習(validated
learning)
ü 方法論その2:開発(Build)-測定(Measure)-学習(Learn)フィー
ドバックを回して製品開発
ü 方法論その3:転向(pivot)/維持(preserve)
⇒ Growth(スケール)レベルへ
! リーンファイナンスモデル
! リーンスタートアップモデルに合わせたファイナンスモデル
! スケールレベルまで投資を極力抑える
⇒ 少額投資モデルの理論的基礎
国内法人でモデルのバリデーションまで行い、スケールレベルで
海外法人活用が理想
28. スケールフェーズでのインバージョン
! スケールフェーズでの海外移転の最大のネックは税
! 譲渡益課税をいかに回避するかがポイント
! 三角合併を利用した海外移転ストラクチャー
A社
100%
A社
100%
合併契約
HD Sub株
HD
100%
HD株
Sub Sub
① HD設立
④ 相互増資
② Sub設立(株式取得)
※ Subの払込額はA社の時価総額相当
③ A社とSubでSubを存続会社と
する合併契約
29. スケールフェーズでのインバージョン
99.9%
HD株式
0.1%
A社
HD HD
0.1%
99.9%
合併
新A社
100%
100%
Sub
⑤ 合併効力発生
! HDをデラウェア法人とするケースではワークする。
! A社株主にHD株式のみ交付されるため譲渡益課税繰延べが原則
ü 外国人株主には繰延べが認められない
ü 但し、国内にPEを持たない外国人株主には、譲渡益が国内源泉所得に該当
する場合には譲渡益課税は一定の場合に限定
ü コーポレートインバージョン対策税制は、HDがデラウェア法人であれば基本的
にはクリア
31. Contact
<John Y. Sasaki>
Email: jsasaki@jsvlaw.com
<増島 雅和>
Email: masa.masujima@gmail.com
Twitter: hakusansai
Facebook Page:
https://www.facebook.com/startupinnovators