SlideShare a Scribd company logo
1 of 172
Download to read offline
マーケティング戦略の
 手引きとヒント
     (第4版)




      2011 年 9 月
  株式会社経営教育総合研究所
はしがき

 失敗しない経営は経営者の理想であり、夢です。しかし、絶対に失敗しな
い経営のための方程式や特効薬は残念ながら、世の中にはありません。
 では、どうすればよいか。できるだけ、失敗しないように工夫すればよい
のです。
 そのために、先輩の経営者やビジネスマンたちは、「戦略」という概念を
生み出しました。特に、お客様に対し、モノを売る際には、「マーケティン
グ(戦略)」という考え方を用いれば、失敗しにくいということを発見しま
した。20世紀初頭のことと言われています。
 簡単にいえば、マーケティングとは、これからモノを売ろうと思っている
お客様(見込み客の場合もありますが)に対し、最高にすばらしい製品をお
手ごろな価格で販売するためのさまざまな工夫のことです。
 たとえば、すばらしいクルマが手頃な価格で売られていても、そのことに
お客様が気づいていなければ、買ってはいただけません。ですから、お客様
とのコミュニケーションは、マーケティングの中ではとても重要なチェッ
ク・ポイントになるわけです。
 また、せっかく商談が成立して(モノが売れても)、お約束させていただ
いた期日までに、お客様のところに納品されなければ、満足していただける
どころか、お叱りを受けてしまいます。お客様にご購入いただいた商品(本
書では製品とよびますが)をいかに早く、確実にお届けできるか。これも、
マーケティングでは、欠かすことのできないチェック・ポイントとなるわけ
です。
 よい製品をお手ごろ価格で提供することは、お客様にとっての価値を作る
(創造する)という段階であり、とても大切です。そのことをお客様にお伝
えし、商談が決まれば、きちんとお届けすること、すなわち、価値を情報と
してお伝えし、商品をお届けする(伝達する)という段階も大切です。価値
の創造と伝達、これがセットとなってはじめて、お客様にモノを売ることが
できるのです。
 さて、皆さんは、どんなお客様にモノを売っていますか?   商品ではなく、
サービスを提供している方もいるでしょう。消費者ではなく、企業や業者と
取引をされている方もいるでしょう。自社の他の部署とやりとりをしている



                  i
方もいらっしゃるでしょう。でも、広い意味で、「“誰か”に“何か”を提
供している」という点では本質的にはみな同じです。ですから、マーケティ
ングは、業種や業態、企業の規模の大小にかかわらず、使うことができる、
たいへん柔軟かつ重宝なものなのです。
 「誰に向けて売るのか」 これはとても重要なチェック・ポイントですね。
            。
そもそも、何を売るか、いくらで売るかということは、お客様の顔を思い浮
かべながら、はじめて決めることができるのです。
 私が、学生街に高級フランス料理店を構えたとしましょう。その店で出す
フランス料理はたいへんおいしいものだとしましょう。しかし、大学の昼休
みに、学生たちは、私の店には食べに来ないでしょう。隣のあまりきれいで
はないラーメン屋のほうがずっと繁盛しているはずです。彼らにとっては、
1杯300円のラーメンのほうがずっと価値があるからです。
 「はじめに、お客様ありき」。これがマーケティングの出発点です。


 本書は、これから、マーケティングの感覚・手法を取り入れて、ビジネス
を成功させたいと考えている方を対象に、さまざまな専門用語・視点・切り
口・方法・手順・フレームワーク(枠組み)・簡単な事例をぎっしりと詰め
込み体系的に整理した要点集であり、便覧です。ですから、タイトルは、「手
引きとヒント」としました。索引も充実しています!
 企画書を作ったり、明日からの販売計画を考えたりするとき、何もない状
態からではなかなかアイディアが浮かばないものです。何か、ヒントがほし
い…もし、そう思ったときには、是非是非、本書をぱらぱらとめくってみて
ください。
 箇条書きになっている箇所、ゴシックで指定してある重要用語、図表やチ
ャート、事例…これらが、皆さんが、マーケティング戦略を考えるときのヒ
ントになってくれるはずです。
 本書は百科事典ではありませんので、記述が抽象的で、言葉足らずだな、
難しいな…と感じる箇所も多いと思います。あくまでも、便覧・ヒント・手
引きですので、どうかこの点はご容赦ください。
 こんなときはどうすればよいか。ここから先はインターネットの出番です。
もう少し調べてみたいと思った用語や事項について、調べてみてください。
ネット上には、その用語や事項に関するより詳しい説明や具体的な事例がい
たるところで紹介されているはずです。どんどん、研究してみてください。


                 ii
もちろん、マーケティングに関する書籍を乱読していただくのも大賛成です。
巻末には、本書を執筆するに当たって参考にした文献を一覧にしてあります。
ただはじめは、ハードな学術書よりも2,000円以内くらいで入手できるソフ
トな入門書のほうが読みやすいかもしれません。


 一方、本書は、企業の中で、部下や後輩にマーケティングについて指導す
るお立場にいらっしゃる方々のためのガイドブックとしても使えます。社内
セミナーや研修、朝礼やミーティングの際に、マーケティングについての話
をしなければならない際に、本書を「ネタ本」としてお役立ていただければ
幸いです。実は、私自身、本書を辞書代わりにしようと思っているところで
す。
 私がいつも、コンサルティング先のお客様にお伝えし、あるいは、ビジネ
ス・スクールでの講義・講演の際に板書し、パワーポイントで説明している
情報の中でも、特に重要なものを集めてあります。先人たちの受け売りだけ
ではなく、私と私の所属する経営教育総合研究所独自の視点を加えてありま
す。ご質問があれば、どしどしお寄せください。


 “マーケティングなんて、人によって解釈が異なり、つかみどころがない
まやかしのような言葉で、知っていていなくても別に大差ない” 世の中に
は、こんなふうにマーケティングに対する誤解や偏見を持った方もいらっし
ゃいます。ですが、本当は、マーケティングにもきちんとした定義があり、
企業がお客様にモノを売るために役立つ方法論がたくさん開発されている
のです。
 本書を読み、少しでもこんな誤解や偏見がなくなれば、うれしく思います。
 お手元に置き、末永く愛用していただければ幸いです。




               2011年9月
               株式会社経営教育総合研究所   竹永   亮




                  iii
目            次

1.    マーケティングと マーケティング戦略 ......................................................................... 1
     I. マーケティングの全体像 ....................................... 2
      1. 古典的なマーケティングの定義 .................................................... 2
      2. マーケティング関連基本用語 ....................................................... 4
      3. マーケティング・コンセプトの変遷 ............................................. 9
      4. マーケティングの中心概念の変化............................................... 11
      5. 新しいマーケティングの定義 ..................................................... 13
     II. マーケティング戦略の プロセス.............................. 14
      1. マーケティング戦略のプロセス .................................................. 14
      2. 事業理念の確認 .......................................................................... 14
      3. 事業環境の調査・分析 ................................................................ 14
      4. 標的市場の設定 .......................................................................... 15
      5. マーケティング目標の設定 ......................................................... 16
      6. マーケティング・ミックスの開発............................................... 18
      7. マーケティング計画の作成・実施・統制・評価.......................... 21

2.    事業環境の調査・分析 ................................................................................................. 23
     I. 事業環境 .................................................... 24
      1. 事業環境の定義と分類 ................................................................ 24
      2. 外部環境と内部環境 ................................................................... 25
      3. 有利環境と不利環境 ................................................................... 27
     II. 事業環境の調査・分析の フレームワーク...................... 28
      1. SWOT分析 .............................................................................. 28
      2. バーニーのVRIO分析 ............................................................ 29
      3. ポーターの5つの競争要因 ......................................................... 32
      4. 見えざる資産を発見する7つの視点 ........................................... 33
      5. DREAにおける環境分析 ......................................................... 34
     III. 消費者の購買行動分析 ...................................... 36
      1. 消費者購買行動と消費財市場 ..................................................... 36
      2. 消費者行動に影響を与える特性 .................................................. 36
      3. 消費者の意思決定プロセス研究(短期モデル).......................... 39



                                                        iv
4. 消費者の意思決定プロセス研究(長期モデル).......................... 40
      5. 新製品に対する消費者の意思決定プロセス研究.......................... 42
      6. 消費者の購買タイプ研究 ............................................................ 44
     IV. 企業の購買行動分析 ......................................... 49
      1. 生産財市場 ................................................................................. 49
      2. 企業の購買行動 .......................................................................... 50
     V. 事業環境の調査・分析の プロセス............................. 52
      1. 調査目的の明確化 ....................................................................... 52
      2. 調査の計画・実行 ....................................................................... 52
      3. 調査結果の分析・報告 ................................................................ 55

3.    標的市場の設定 ............................................................................................................. 57
     I. 標的市場の設定に用いる フレームワーク....................... 58
      1. BCGのPPM .......................................................................... 58
      2. 製品・市場マトリックス分析 ..................................................... 60
      3. PMS ........................................................................................ 61
      4. 競争優位の源泉 .......................................................................... 62
      5. 競争地位別戦略 .......................................................................... 63
     II. 標的市場の設定 ............................................. 65
      1. 標的市場の設定の3段階(STP) ........................................... 65
      2. 市場細分化(セグメンテーション) ........................................... 65
      3. 標的市場の設定(ターゲティング) ........................................... 69
      4. 競争優位のための製品の位置づけ(ポジショニング) ............... 72
      5. ドメインの再定義 ....................................................................... 73

4.    価値創造戦略 ................................................................................................................. 77
     I. 製品戦略 .................................................... 78
      1. 製品 ............................................................................................ 78
      2. 製品の分類 ................................................................................. 80
      3. 製品についての意思決定 ............................................................ 84
      4. サービス・マーケティング ......................................................... 89
      5. 新製品開発戦略 .......................................................................... 93
      6. 製品ライフサイクル戦略 ............................................................ 95
     II. 価格戦略 .................................................. 100


                                                              v
1. 価格設定の際に考慮すべき要因 .................................................100
      2. 一般的な価格設定法 ..................................................................102
      3. 新製品の価格設定法 ..................................................................103
      4. 製品ミックスによる価格設定法 .................................................104
      5. 価格調整戦略 .............................................................................105
      6. 価格変更 ....................................................................................106

5.    価値伝達戦略 ...............................................................................................................109
     I. コミュニケーション戦略 ..................................... 110
      1. コミュニケーション戦略の統合 .................................................110
      2. 広告 ...........................................................................................113
      3. 販売促進 ....................................................................................116
      4. 広告活動(PR活動) ...............................................................119
      5. 人的販売 ....................................................................................120
     II. チャネル戦略 .............................................. 125
      1. 流通チャネルの機能 ..................................................................125
      2. チャネル組織の基本構造 ...........................................................126
      3. チャネル設計とチャネル管理の意思決定 ...................................129
      4. ロジスティックスの管理 ...........................................................130
      5. 小売業 .......................................................................................132
      6. 卸売業 .......................................................................................136

6.    マーケティングの拡張..................................................................................................139
     I. 新しいマーケティング ....................................... 140
      1. 需要の管理 ................................................................................140
      2. 顧客満足度の管理 ......................................................................141
      3. リレーションシップ・マーケティング.......................................144
      4. 顧客進化 ....................................................................................148
      5. ダイレクト・マーケティング ....................................................149




                                                             vi
vii
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント




      1. マーケティングと
        マーケティング戦略




©株式会社経営教育総合研究所       1        無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント




    I. マーケティングの全体像

1. 代表的なマーケティングの定義
 マーケティング(marketing) 多くのマーケティング研究者によって、
                   は、
様々な定義がなされている。その中で、代表的なものは、次の通りである。

(1) 1985年のAMA(アメリカマーケティング協会)の定義
 ① 定義…「マーケティングとは、個人目標および組織目標を満たす交換
   を創造するための、アイディア・商品・サービスのコンセプト、価格
   設定、プロモーション、流通の計画と実行のプロセスである」
 ② 特徴
  a. 交換の概念が重視されている点
  b. 目的が明確になっている点
  c. 非営利組織や無形財などを製品として含んでいる点
  d. 製品・価格・プロモーション・流通というマーケティング・ミック
     スの4つの要素が組み込まれている点

(2) 2004年のAMA(アメリカマーケティング協会)の定義
 ① 定義…「マーケティングとは、組織的な活動であり、顧客に対し価値
   を創造し、価値についてコミュニケーションを行い、価値を届けるた
   めの一連のプロセスであり、さらに組織および組織の利害関係者(ス
   テークホルダー)に利益をもたらす方法であり、顧客関係を管理する
   ための一連のプロセスである」
 ② 特徴
  a. 価値(顧客価値)が重視されている点
  b. 顧客関係(リレーションシップ)の管理が重視されている点
  c. 対象を顧客には限定せず、企業の利害関係者全体に拡大された点
  d. マーケティングの機能・プロセスに着目している




©株式会社経営教育総合研究所       2        無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント


(3) コトラーの定義
 ① 定義…「個人やグループが製品や価値をつくり出し、それを他者と交
   換することによって必要なものや欲しいものを獲得するという社会
   的かつ経営的プロセスである」
 ② 特徴
  a. 交換という概念が含まれている点
  b. 単に経営的なプロセスではなく、社会的なプロセスである点が強調
     されている点

(4) ドラッカーの定義
 ① 定義…「マーケティングは販売よりもはるかに広範な活動であり、そ
   の最終到達点としての顧客の見地から行う、企業全体に関わる活動で
   ある」
 ② 特徴
  a. マーケティングが販売(セリング)よりも広範な活動、上位概念で
     あることの示唆
  b. 顧客志向でなければならないという指摘
  c. 全社的な活動であることの指摘

(5) 1990年のJMA(日本マーケティング協会)の定義
 ① 定義…「マーケティングとは、企業およびその他の組織が、グローバ
   ルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて
   行う市場創造のための総合的な活動である」
 ② 特徴
  a. 企業以外の組織、すなわち、非営利的組織もマーケティングの主体
     としている点
  b. 国際社会の到来を反映して、グローバルな視野の必要性を説いてい
     る点
  c. 顧客との相互理解という用語を用い、顧客満足度や顧客との関係性
     構築の重要性を示唆している点
  d. ニーズや市場を追いかけるだけではなく、市場を創造することに触
     れている点




©株式会社経営教育総合研究所       3        無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                        手引きとヒント


  e. 総合的な活動とし、マーケティングの範疇が企業の活動の中でも大
         きなウェイトを占めることを示している点



2. マーケティング関連基本用語

(1) マーケティングの発想に関する用語
 ① ニーズ(needs)
  a. 定義…人間が欠乏を感じている状態であり、ウォンツに比べて本質
         的・目的的な欲求である
         【例】美しくなりたい、通勤の足がほしい、家族と話しをしながら
         料理がしたい
  b. 特性
           顧客自体がニーズに気づいていない場合がある
             【例】街でたまたま見つけた雑貨に対するウォンツを感じている
             顧客は、自らのニーズを認識していない。
           ニーズは2層構造から成り立っている(ニーズ二元論)
         ·    見かけのニーズ(visible needs)
              【例】「安全性を考えて、メルセデス・ベンツの車を買おう」
         ·    影のニーズ(invisible needs)
              【例】「高級車にのって、女性にもてたい!」

                          ニーズ二元論

                                   見かけのニーズ
                                   (visible needs)


                                                影のニーズ
                                             (invisible needs)




                       出典:経営教育総合研究所




©株式会社経営教育総合研究所                 4            無断転載 コピーを禁じます。
                                                ・
マーケティング戦略の
                   手引きとヒント


    ① ウォンツ(wants)…人間のニーズが文化や個人の人格を通して具体
      化されたものであり、ニーズに比べて表層的・手段的な欲求である
      【例】化粧品がほしい、軽自動車がほしい、対面キッチンがほしい
    ② シーズ(seeds)…企業が持っており、顧客に提供することが可能な
      技術・アイディアなどの事業の「種」のこと
    ③ プロダクト・アウト(product out)…和製英語で、製造部門の考えに
      より商品を製造し販売する技術先行型の発想やビジネス・スタイルの
      こと(シーズ志向)
    ④ マーケット・イン(market in)…和製英語で、製造部門に販売部門
      を取り込み、市場情報や消費者のニーズに合わせて、企業が製品を開
      発・供給する市場ニーズ先行型の発想やビジネス・スタイルのこと(ニ
      ーズ志向)

(2) マーケティングと戦略・管理に関する用語 1
    ① マネジリアル・マーケティング(managerial marketing)…顧客のニ
      ーズに適応するだけではなく、創造的に適応するために、マーケティ
      ング担当部門のみならず、製造や財務部門などの各部門の協力や経営
      者による意思決定も必要となるとした、経営者視点による全社的なマ
      ーケティング 2
    ② 戦略的マーケティング(strategic marketing)…市場環境との適合性
      を中心に、全社的な意思決定をもって、環境と経営資源に適合した企
      業の将来の方向を定める行動の枠組みである 3


1 マーケティングの戦略や管理に関する用語を並べてみて、非常に多くの派生語がある
ことを再発見し、驚いた。研修や講演の際に、これらの用語の差異について質問を受け
ることがあるが、あまり、細かいことを気にする必要はないだろう。欧米なり日本なり
の実務家(経営者やマーケティング担当者)の中に、これらの用語の違いを明確に理解
し、使い分けている方はほとんどいないだろう。本書では基本的に、マーケティング戦
略とマーケティング・ミックスという2つの用語を中心に用い、混乱を避けるために、同
義語や似て非なる用語はできるだけ用いないようにしたい。
2 レイザーとケリーが 1958 年に著書『マネジリアル・マーケティング』で提唱したマ

ーケティング概念である。全社的な意思決定や経営者の視点を重視する点で、後述する
戦略的マーケティングと、ほぼ同義語である。
3 戦略的マーケティングは、全社的な意思決定を伴うため、事実上、経営戦略と同義語

になる。「マーケティング感覚を持った経営戦略全体」というイメージをもってよいだ
ろう。 紹介したのは、社団法人日本マーケティング協会の定義を参考にしたものである。
慶応大学の嶋口充輝教授によれば、戦略的マーケティングは、市場対応、競争対応、社
会対応の3つの領域からなるとされている。


©株式会社経営教育総合研究所          5         無断転載 コピーを禁じます。
                                      ・
マーケティング戦略の
                   手引きとヒント


    ③ マーケティング戦略(marketing strategy)…標的顧客の設定とマー
      ケティング・ミックスの構築を中心に行われるマーケティングについ
      ての計画・実行・管理・評価のプロセス(ただし、このうち、マーケ
      ティング計画のことのみをマーケティング戦略と呼ぶ場合もある) 2。
                                    1

    ④ マーケティング計画(marketing planning)…マーケティング戦略を
      予算・組織・人員・スケジュール等について具体的に落とし込み、企
      てたもの
    ⑤ マーケティング・ミックス(marketing mix)…マーケティング活動
      を行う企業にとって統制可能な諸手段の組み合わせ 3
    ⑥ マーケティング・プログラム(marketing program)…マーケティン
      グ・ミックスの要素(製品・価格・プロモーション・チャネル)を適
      切に組み合わせ、価値を消費者に提供することである 4




1 「標的顧客に対してアクションを起こす」という発想のルーツは、ブーンとクルツに
よるマーケティングの定義が先駆である。彼らによれば、「マーケティングとは、選択
された市場セグメントに対し、製品・サービスを開発し、効率よく流通させることであ
る」とされている。価格やプロモーションについての概念は掛けているが、おおむね、
現在のマーケティング戦略の定義とよく似たフレームワークで、マーケティングを捉え
ている。
2 戦略的マーケティングと紛らわしい概念だが、もっとも一般的に用いられているマー

ケティング用語の1つである。戦略的マーケティングと異なり、全社的な意思決定、経
営者視点という意味は含まない。しかし、両者の間に境界線はなく、現在のマーケティ
ング戦略は、経営者の意思決定なくしては行うことはできず、事実上、両者の間に協会
線はない。本書では、マネジリアル・マーケティング、戦略的マーケティングという用
語は用いず、マーケティング戦略という用語を使用する。
3 マーケティング・ミックスという用語を始めて用いたのは、ボーデンである。彼は、

マーケティングを製品計画や売価決定など、12 の活動に分解し、これらの組み合わせの
重要性を指摘し、この組み合わせを、ケーキ・ミックスになぞらえて、マーケティング・
ミックスと命名した。
  ところで、  マーケティング戦略を前半と後半に大別すると、         前半は標的顧客の設定に、
後半はマーケティング・ミックスの構築となる。その意味で、マーケティング・ミック
スは、マーケティング戦略の構成要素であり、下位概念である。マーケティング・ミッ
クスの要素としては製品・価格・プロモーション・チャネルというマッカーシーの4P
(product/price/promotion/place)がもっとも有名である。もっともこの4Pの各
要素は、レイザーとケリーの著書『マネジリアル・マーケティング』の中で、マーケテ
ィングの4つの要素(製品、価格、広告・販促、チャネル)として提唱されている。
4 よって、マーケティング・プログラムとは、マーケティング・ミックスの一部という

ことになる。


©株式会社経営教育総合研究所           6           無断転載 コピーを禁じます。
                                         ・
マーケティング戦略の
                    手引きとヒント


    ⑦ マーケティング・マネジメント(marketing management)…組織の
      目標を達成するために、標的となる買い手との間に有益な交換を生み
      出し、確立し、維持することを目的として設計されたプログラムを、
      分析・計画・実施・制御すること 1
    ⑧ マクロ・マーケティング(macro marketing)…マーケティング活動
      を社会活動全体の中で捉えていく考え方 2
    ⑨ ミクロ・マーケティング(micro marketing)
     a. 企業が、市場に対してどのように働きかけ、それがどのような結果
       を生み出すか管理・戦略的に行われるマーケティングのこと 3。
     b. 製品やマーケティング・プログラムを特定の個人や地域の好みに合
       わせて調整すること(ワントゥワン・マーケティングやエリア・マ
       ーケティングの総称として用いられる)
    ⑩ 戦略(経営戦略)…長期的視野・複合的思考で特定の目標を達成する
      ために経営資源を総合的に分配・運用する計画・実行・管理・評価の
      一連のプロセス
    ⑪ 戦術…特定の戦略遂行にあたり、経営資源を具体的に配置する思考や
      技術 4




1 マーケティング戦略とほぼ同義語である。あえて違いをあげれば、マーケティング戦
略の計画・実行・管理・評価する過程で、経営者や事業責任者の行うべきマネジメント
という意味であるだろう。コトラーは、需要と顧客に対するマネジメントのことをマー
ケティング・マネジメントと呼んでいるが、他の用語との関係・位置づけは明らかにさ
れていない。
2 ミクロマーケティングの対語で、経済学的な視点でマーケティングを捉える考え方で

ある。
3 マクロマーケティングの対語で、 いわゆる通常のマーケティング活動である。 事実上、
マーケティング戦略とほぼ同義語である。
4 戦略と戦術の違いについても、よく質問を受ける。最も多い質問は、両者の境目であ

る。「○○より上の概念は戦略、××より下の概念は戦術」という絶対的な基準を期待
しても質問であることはわかるが、両者の違いは絶対的なものではない。戦術は戦略の
下位概念であることは間違いないが、戦略と戦術の関係は常に相対的なものである。た
とえば、全社戦略の中で、1 個の事業部の戦略(事業戦略)は 1 個の戦術にあたる。事
業全体を統括する事業戦略の中では、その事業のために資金をいかに調達するかという
財務戦略も、標的顧客をいかに定め、どのようにマーケティング・ミックスを構築する
かという意思決定であるマーケティング戦略も 1 個の戦術に過ぎない。マーケティング
戦略を 1 個の戦略と考えれば、製品の開発、価格の設定は、通常、製品戦略、価格戦略
と呼ばれるものの、実質的には 1 個の戦術に過ぎない。


©株式会社経営教育総合研究所           7           無断転載 コピーを禁じます。
                                         ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント


(3) マーケティング戦略の要素に関する用語
 ① 需要(demand)…購買力の裏づけのあるウォンツの量、または、そ
    の社会的総量である
    【例】今年の国内の化粧品需要は2兆円を上回る勢いである。
 ② 製品(product)…欲求やニーズを満たす目的で市場に提供され、注
    目・獲得・使用・消費の対象となるすべてのもののことで、形ある具
    体的なもの(有形財 1)の他、サービス・人・場所・組織・アイディア
    などの(無形財)含まれる
    【例】化粧品、軽自動車、対面型キッチン、生命保険、経営コンサル
    タント、体育館、子会社、事業部、特許権、商標権
 ③ サービス(service)…他者に提示できるあらゆる活動またはベネフィ
    ットのことで、本質的に無形であり、長期的に所有されることは少な
    い
    【例】融資サービス、クリーニング、研修サービス、生命保険
 ④ 品質(quality)
   a. 狭義の品質…欠陥のない状態
        【例】「このカメラは3年間一度も故障していない。品質には問題
        ないと思うよ」(狭義の品質を満たしている場合)
   b. 広義の品質…顧客のニーズを満たすことができる製品またはサー
        ビスの特徴や特色を総合させたもの
        【例】「このカメラは室内で遠くからでも子供の顔がばっちり撮れ
        た。イベントの前に購入して本当に良かったよ。なかなかの品質だ
        よ」(広義の品質を満たしている場合)
 ⑤ 交換(exchange)…対価として何かを差し出すことにより、他者から
    自らの欲しいものを獲得する行為(マーケティングの中心的概念であ
    る)


1 財(goods)とは、経済学用語で、人間の物質的・精神的生活にとって何らかの効用が

あるものの総称である。経営学や商品学の世界では、製品とほぼ同義語で用いられる。
製品も財も、狭義では、有形の製品または有形財のことのみを指し、広義では、有形・
無形を問わず広く製品または財を指す。     書籍や論文を読む際には注意が必要である。           「製
品・サービス」と併記されていれば、この場合「製品」は有形の製品を表していること
になる。製品(product)と商品(goods/commodity/item/merchandise)にも明確
な違いはない。一般には製造業では製品という用語を用いることが多く、流通業では製
品という用語を用いることが多い。たとえば、小売業では、慣習的に商品回転率という
用語を使うが、「製品回転率」とはいわない。


©株式会社経営教育総合研究所             8            無断転載 コピーを禁じます。
                                            ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント


    ⑥ 取引(transaction)…交換を行うために当事者の間で交わされる行為
      全体であるである 1
    ⑦ 市場(market)…売り手と買い手との間で、製品・サービスについて
      の取引および交換が行われる場
    ⑧ 販売(selling)…製品・サービスを売りさばくこと
    ⑨ 営業(sales)…営利を目的として事業をいとなむこと 2



3. マーケティング・コンセプトの変遷
    企業がマーケティング活動を行う際に基礎となる概念(マーケティング・
コンセプト)には次のような5つがある。

(1) 生産志向(production concept)
    ① 定義…消費者は便利で、安価な製品を好むため、経営者は生産や流通
      の効率化に焦点を当てるべきだとするマーケティング・コンセプト
    ② イメージ・視点…「とにかく安くたくさん作りたい」という資本家的
      視点

(2) 製品志向(product concept)
    ① 定義…消費者は品質や性能が最も優れた革新的な製品を好むため、企
      業は継続的な製品開発に注力すべきであるというマーケティング・コ
      ンセプト 3


1 取引と交換の概念の違いはわかりにくい。取引のほうが広い概念で、取引の条件や場
所や時間などをすべて含む概念である。取引により、交換は実現する。すなわち、交換
は取引の目的であり、   取引は交換の手段であるといいかえることができる。      コトラーは、
「交換はマーケティングの中心概念であり、取引はマーケティングの測定単位である」
と述べている。
2 販売と営業は、ほぼ同じ意味で使うことも多いが、微妙に意味が違う。本書では、両

者を厳密に区別することはしないが、事前交渉・相談窓口・アフターフォローなどの広
い業務を指す場合には営業(sales)という用語を用い、売買のニュアンスが強い場合に
は販売(Selling)という用語と用いることを原則としたい。
3 製品志向マーケティングは、近視眼的マーケティングに陥るおそれがある。近視眼的

マーケティング(marketing myopia)とは、1960 年刊行の『ハーバード・ビジネス・
レビュー』で、レビットが用いた言葉で、従来欧米企業で支配的な考えであった製品志
向マーケティングではなく、顧客志向マーケティングを実践すべきであるという主張で
ある。レビットの主張は、マーケティング史上、コペルニクス的転回となり、人気を博
した。しかし、実際に企業が製造からマーケティングへ企業活動の中心を移したのは、
モノ余りが問題となった 1980 年代に入ってからである。この主張は依然として、現代
のビジネスに大きく影響を与えている。顧客志向マーケティングを 40 年以上先取りし


©株式会社経営教育総合研究所              9      無断転載 コピーを禁じます。
                                       ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント


    ② イメージ・視点…「良い製品さえ作れば顧客は買ってくれるはずだ」
     という技術者的・職人的視点

(3) 販売志向(selling concept)
    ① 定義…消費者は企業が販売に力を入れれば、その分より多くの製品を
     購買するはずであるというマーケティング・コンセプト
    ② イメージ・視点…「うまく売れば、顧客は買ってくれるはずだ」とい
     うセールスマン的視点

              マーケティング・コンセプトの変遷
    段階       視点       イメージ         前提条件            目標


                    とにかく安くたく                   利潤・効率的生
①   生産志向   資本家的視点                    -
                    さん作りたい                       産




                    良い製品さえ作れ                   利潤
           技術者的・職
②   製品志向            ば顧客は買ってく      効率的生産      よい製品・高い
           人的視点
                    れるはずだ                        付加価値




                    うまく売れば、顧客     効率的生産      利潤
           セールスマン
③   販売指向            は買ってくれるは      よい製品・高い    販売促進・営業
           的視点
                    ずだ              付加価値         力


                               効率的生産
                    買ってもらうため
                               よい製品・高い       利潤
           マーケッター   には、 (ニーズ)
                       顧客
④   顧客志向                         付加価値          顧客ニーズ・顧
           的視点      を知らなければな
                               販売促進・営業         客満足度
                    らない
                                 力

                                  効率的生産
                                  よい製品・高い
                    顧客だけではなく、                  利潤
                                    付加価値
           市民運動家的   広く社会全体の幸                   社 会 全 体 の 幸
⑤   社会志向                          販売促進・営業
           視点       せにも目を向けな                     福・顧客の長期
                                    力
                    ければならない                      的幸福
                                  顧客ニーズ・顧
                                    客満足度

                    出典:経営教育総合研究所




た貴重な理論である。


©株式会社経営教育総合研究所              10           無断転載 コピーを禁じます。
                                             ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント


(4) 顧客志向(marketing concept)
    ① 定義…顧客が企業の製品を購入するのは、その製品が顧客ニーズにい
      かに対応し、満足を提供してくれるかにかかっているとするマーケテ
      ィング・コンセプト
    ② イメージ・視点…「買ってもらうためには、顧客(ニーズ)を知らな
      ければならない」というマーケッター的視点

(5) 社会志向(societal marketing concept)
    ① 定義…企業は消費者の短期的なニーズに対応するだけではなく、消費
      者を含む社会の長期的な幸福を維持・向上させ、両者により多くの満
      足を提供しなければならないとするマーケティング・コンセプト
    ② イメージ・視点…「顧客だけではなく、広く社会全体の幸せにも目を
      向けなければならない」という市民運動家的視点



4. マーケティングの中心概念の変化

(1) 増大する顧客価値と顧客満足の重要性
    ① 顧客価値(customer value)…製品を所有し使用することによって顧
      客が得る総合的な価値と、その製品を獲得するためにかかったコスト
      との差
      【例】「10万円払って予備のカメラを購入しておいてよかった。メイ
      ンのカメラは故障したが、無事、撮影を終えることができた」(支払
      った10万円というコストと顧客が獲得した総合的な価値との差に顧
      客が価値を感じている場合)
    ② 顧客満足(customer satisfaction)…ある製品に抱いていた買い手の
      期待と、それを手にしたときに感じられるパフォーマンス(性能や機
      能)が一致している度合い 1
      【例】「はじめはどんなレストランかと不安だったが、誕生日プレゼ
      ントでワインを出してくれるなんて思っても見なかったよ」(期待を
      上回るパフォーマンスに対し、顧客が感謝している場合)


1顧客の満足度は不満か満足かの二者択一で論じられることが多いが、少なくとも3つ
の段階がある。①ディスサティスファクション(不満足状態・マイナス状態)、②アン
スサティスファクション(不満でもないが満足もしていない状態・プラスマイナスゼロ


©株式会社経営教育総合研究所                11       無断転載 コピーを禁じます。
                                           ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント


(2) 増大する関係性の重要性
 ① リレーションシップ・マーケティング(relationship marketing)…
   顧客との継続的な対話と緊密な取引関係を通して顧客のニーズを把
   捉し、それを、着実に満たしていくことによって顧客満足を達成しよ
   うとするマーケティング
 ② マイクロ・マーケティング(micro marketing)…セグメントをきわ
   めて細かく分化したマーケティングである 1
 ③ ワントゥワン・マーケティング(one-to-one marketing)…リレーシ
   ョンシップ・マーケティングのもっとも高度化した形態で、消費市場
   の多様化・個性化の進展に対応し,個客のニーズを満たすことを目標
   とするマーケティング
 ④ データベース・マーケティング(database marketing)…IT化の進
   展を背景に、顧客または見込み客のデータベースの継続的大量蓄積、
   迅速な処理および高度の分析などを通して可能になった精緻な顧客
   管理を基盤とするマーケティング 2
 ⑤ ホリスティック・マーケティング(holistic marketing)…顧客の利
   益や満足を起点とし、自社の経営資源と事業パートナーなどミクロ環
   境を有機的・統合的に組み合わせて、全社的視点から長期的な展開を
   図るマーケティング




状態)、③サティスファクション(満足状態・プラス状態)である。①の状態を②の状
態に引き上げる要因を顧客満足度の必要条件(衛生要因)と呼び、②の状態を③の状態
に引き上げる要因を顧客満足度の十分条件(動機づけ要因)と呼ぶ。たとえば、銀行で
愛想のない窓口担当者に遭遇すれば、顧客は①の状態に陥る。その後、窓口担当者の改
心と努力により、愛想が良くなったとすれば、顧客は②の状態に移行するが、③の状態
にまでは移行しない。「銀行の窓口担当者の愛想がいいのは当たり前のことだ」と感じ
るためである。次に、普通に銀行を利用する限り、待ち時間がさほど長くなければ、顧
客は②の状態にある。その後、銀行の経営改善で、待ち時間を1分以内にするというサ
ービスがスタートすれば、顧客は②の状態から③の状態に移行する。他の銀行が追随す
るまでは、このサービスはこの銀行の競争優位の源泉となり、顧客の満足度は高く、口
コミでこのサービスが広まる可能性も高い。銀行の場合、窓口担当者の愛想は顧客満足
度の必要条件(衛生要因)であり、待ち時間1分以内サービスの実施は十分条件(動機
づけ要因)となる。
1 マイクロ・マーケティングの究極の形が一人ひとりの顧客に対する個別対応を旨とす

るワントゥワン・マーケティングである。ミクロマーケティングとスペルは同じである。
2 データベース・マーケティングは、リレーションシップ・マーケティングの基盤とな

ることが多い。


©株式会社経営教育総合研究所       12         無断転載 コピーを禁じます。
                                    ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント



5. 新しいマーケティングの定義

(1) 2007年のAMA(アメリカマーケティング協会)の定義
 ① 定義…「マーケティングとは、顧客、依頼者、協力者、社会全体にと
   って価値を有する提供物を創造し、伝達し、販売し、交換するための
   活動、一連の社会制度、過程である」
 ② 特徴
  a. 「交換」という用語を再び採用した
  b. 「社会全体」という点を強調した
  c. 2004年の定義で提示された「顧客関係」や「利害関係者」という用
     語は、新定義では除かれている
  d. 活動・制度・プロセスであることを強調している

(2) 本書におけるマーケティングの定義
 ① 定義…「マーケティングとは、個人や組織が、標的となる顧客を選択
   し、彼らのために価値を創造し、伝達し、自らと顧客および社会との
   良好な関係を構築するために行う活動プロセスの総称である」
 ② 特徴
  a. 前段に、標的顧客の設定、価値創造、価値伝達という3つの要素が
     入っている点
  b. 価値創造・価値伝達を手段あくまでもととらえ、「良好な関係を構
     築」という最終的な目標について述べている点(良好な関係の中に
     は顧客満足度の向上といった概念が含まれている)
  c. 対象を標的顧客のみに限定せず、社会も含んでいる点
  d. 計画・実行・管理を含む概念とするため、プロセス全体に着目して
     いる点

(3) 本書におけるマーケティング戦略の定義
 標的顧客の設定とマーケティング・ミックスの構築を中心に行われるマー
ケティングについての計画・実行・管理・評価のプロセス。




©株式会社経営教育総合研究所       13       無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント




      II. マーケティング戦略の
            プロセス

1. マーケティング戦略のプロセス
 企業のマーケティング戦略は、次のような6段階のプロセスを経て、完了
する。
 ① 事業理念の確認
 ② 事業環境の調査・分析
 ③ 標的市場の設定
 ④ マーケティング目標の設定
 ⑤ マーケティング・ミックスの開発
 ⑥ マーケティング計画の作成・実施・統制・評価



2. 事業理念の確認

(1) 事業理念の定義
 経営者や事業責任者が抱いている理想・強い想い・ビジョン・哲学・信条
のようなものである。

(2) 事業理念の確認についての留意点
 ① 事業理念の作成・想起・修正およびその確認
 ② 伝達手段の見直しを含む関係者への発信と到達の確認である



3. 事業環境の調査・分析

(1) 事前環境の調査・分析の前提
 事業環境の調査・分析に入る前に、以下の3つについて学んでおいたほう
がよい。
 ① 事業環境の調査・分析に役立つ理論的フレームワーク(後述)
 ② 消費者および企業の購買行動についての仮説(後述)


©株式会社経営教育総合研究所       14       無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                   手引きとヒント


 ③ 統計学の基礎知識(本書では省略)

(2) 事前環境の調査・分析のプロセス
 ① 調査目的の明確化
 ② 調査の計画
 ③ 調査の実行
 ④ 調査結果の分析
 ⑤ 調査結果の報告



4. 標的市場の設定
 標的市場の設定は、次の3つのステップを経て行う。この3つのステップ
をSTPと呼ぶ。

(1) 市場細分化(セグメンテーション;market segmentation)
 ① 市場を異なったニーズ・特徴・行動様式に基づいた明確なグループに
    区分けすること(それぞれのグループごとに別個の製品やマーケティ
    ング・ミックスが必要とされる場合がある)
 ② 市場セグメント(market segment)…一定のマーケティング活動に
    対して、同様の反応を示す消費者のグループのこと

(2) 市場ターゲティング(market targeting)
 ① 各市場セグメントの魅力を評価し、参入すべき1つ、または複数のセ
    グメントを選択するプロセス
 ② 企業は利益をあげながら最大の顧客価値を生み出し、それを長期にわ
    たって維持できるようなセグメントを選ぶべきである

(3) 市場ポジショニング(market positioning)
 ① 標的とする消費者の心の中に、競合する製品と比較して、明確で、独
    自の、望ましい位置を自社の製品に確保すること




©株式会社経営教育総合研究所          15          無断転載 コピーを禁じます。
                                        ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント



5. マーケティング目標の設定

(1) マーケティング目標の設定
    抽象的な事業理念はその実現のために、具体的で、測定可能なマーケティ
ング目標に転換されなければならない 1。

(2) マーケティング目標の設定項目
    通常、マーケティング目標は、データ項目と評価方法を組み合わせて設定
される。
    ① マーケティング目標のデータ項目
     a. 財務関連項目
       【例】株価・売上高・売上総利益(粗利益)・営業利益・経常利益・
       キャッシュフロー・新製品売上高
     b. 市場・顧客関連項目
       【例】市場シェア、相対的市場シェア、新規顧客数、顧客数、見込
       み客数、顧客単価、マインド・シェア、顧客満足度
     c. 生産・業務関連項目
       【例】新製品開発期間・付加価値・売場1㎡当たり売上高・売場1
       ㎡当たり利益・従業員1人当たり売上・従業員1人当たり利益・設
       備生産性
    ② マーケティング目標の評価方法
     【例】実数値・対前年上昇率・目標達成率・他社との比較
    ③ 実際のマーケティング目標の事例
     a. 「首都圏1都3県における自社市場シェアの2%拡大」
     b. 「経常利益の対前年5%上昇」
     c. 「全支店の売上の下位目標達成」
     d. 「クレーム達成率の前年比30%減少」
     e. 「平均製品開発期間の10日間圧縮」
     f. 「顧客満足度アンケートの2ポイントアップ」



1マーケティング目標は、「測定可能」であるから、数値で表すことができるデジタル
なものでなければならない。この測定可能な目標を連鎖化し、事業戦略の管理手法とし
て昇華させた理論・技法をバランス・スコア・カード(balanced score card)という。
これについては後述しよう。


©株式会社経営教育総合研究所         16          無断転載 コピーを禁じます。
                                       ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント


(3) マーケティング目標設定のポイント
    ① マーケティング目標の目標設定法に決まりはないが、次のようなルー
     ルに基づいて目標を設定している企業が多い
     a. 複数目標設定の原則…もっとも高い成果を出す構成員の予想成果
      を上限に、下位目標、中位目標というように、数段階の目標を設定
      する
     b. 過半数達成予測の原則…下位目標の下限は、構成員の過半数が達成
      できる比較的難易度の低い目標を設定する 1
    ② マーケティング目標は1つである必要はなく、複数の目標を同時に設
     定してよい
     【例】「売上高対前年10%アップ、売上高経常利益率10%の達成」

(4) マーケティング目標の修正
    企業によっては、事業環境の調査・分析を行う前あるいは標的市場を決定
する前に、大まかなマーケティング目標を設定する場合がある。その場合、
事業環境の調査・分析後に、目標を修正すべきである。
    ① 量的な修正の例
     【例】「事業環境の調査・分析の結果、商圏内の人口密度は増加傾向
     を示していることがわかった。したがって、売上高目標は当初考えて
     いた1,500万円から2,000万円に増加しよう」(上方修正の例)
     【例】「事業環境の調査・分析の結果、自店の近隣に大型店が出店す
     ることが判明した。競争回避は難しいし、協力のための話し合いが可
     能かどうかは現時点では不明なので、念のため、売上高目標は当初考
     えていた9,500万円から9,000万円縮小しておこう」(下方修正の例)

1「過半数達成予測の原則」の根拠理論は、2つある。一方は、行動科学者であり、モ
チベーションについての研究者として知られるマクレランドの達成動機説である。彼に
よれば、人間は、少し努力すれば手が届きそうな目標に対して、もっとも動機づけられ
るという。今一方は、マクレランドよりも前の時代に活躍した行動科学者であるマズロ
ーの5段階欲求説である。マズローは、人間の欲求は、低次のものから高次のものまで、
①生理的欲求、②安全欲求、③社会的欲求(所属の欲求)、④自尊の欲求、⑤自己実現
の欲求という5段階に分けることができるとした。彼の考え方は、後の多くの行動科学
者たちに影響を与えた。前述したマクレランドもマズローの後継者の一人である。この
うち、③の社会的欲求(所属の欲求)とは何らかの組織やグループに属していたいとい
う欲求である。人は、孤独を嫌う。できることなら、少数派(目標未達成者のグループ)
ではなく、多数派(目標達成者のグループ)に属していたいと思うであろう。
 以上2つの行動学者の研究をもとに、マーケティング目標の設定方法を原則化したも
のが、「過半数達成予測の原則」である。


©株式会社経営教育総合研究所       17       無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント


 ② 質的な修正の例
     【例】「事業環境の調査・分析の結果、他社の新規参入が激化するこ
     とが判明した。今後は、市場の食い合いになることが予想される。当
     初考えていた市場シェアだけを目標とするのではなく、マインド・シ
     ェアも目標として設定し、将来の市場シェアを予想しながら、戦略を
     柔軟に修正していこう」(目標項目の追加の例)
     【例】「今まで利益中心の経営を行ってきたが、事業環境の調査・分
     析の結果、株主は利益よりもキャッシュフローを重視する傾向にある
     ことが判明した。目標は利益ではなく、キャッシュフローで設定しな
     おそう」(目標項目の変更の例)



6. マーケティング・ミックスの開発
 マーケティング・ミックス(marketing mix)の開発は、マーケティング
戦略の中心部分であり、設定した標的顧客に合わせてマーケティング戦略の
各要素を組み合わせる段階である。伝統的には4Pがフレームワークとして
用いられることが多かったが、これを修正したフレームワークが登場してい
る。

(1) 古典的マーケティング・ミックス(4P)
 ① 製品(product)・価格(price)・流通(Place)・プロモーション
     (promotion)といった4つの変数(4P)からなる、標的市場にお
     いて望ましい反応を得るために企業が組み合わせるコントロール可
     能で戦術的なマーケティング・ツールの集合のこと
 ② 4Pの要素
     a. 製品(product)…企業が標的市場に提供する商品とサービスとの
       組み合わせ
     b. 価格(price)…その製品を獲得するために顧客が支払わなくてはな
       らない金銭の額
     c. チャネル(流通)(place/channel)…標的顧客が製品を入手でき
       るようにするために企業が行う活動
     d. プロモーション(promotion)…製品の長所を伝え、標的顧客が購
       入する気持ちになるように説得する活動




©株式会社経営教育総合研究所        18        無断転載 コピーを禁じます。
                                    ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント


(2) 顧客志向型マーケティング・ミックス(4C)
    ① 4Pから4Cへ
     a. ラウターボーンは、従来の4Pは売り手志向のマーケティング・ミ
           ックスであると批判し、顧客(買い手)志向のマーケティング・ミ
           ックスとして4Cを提案した
     b. 企業の担当者は、最初に4Cを十分検討してから、それに基づき4
           Pを構築すべきである
    ② 4Cの要素
     a. 顧客ソリューション(customer solution) 1
     b. 顧客コスト(customer cost)
     c. 利便性(convenience)
     d. コミュニケーション(communication)

(3) 価値重視型マーケティング・ミックス(2V)
    ① 増大する価値の重要性
     a. 2004年のAMAによるマーケティングの定義では、製品・価格とい
           う用語が用いられず、代わりに価値という用語が用いられている
     b. コトラーの最近の著書も、随所で価値(顧客価値)に言及している
     c. 現在の企業間競争は、以下の2つの方向が中心となっている
          競合他社よりも優れた価値を創造し、顧客・社会の満足度の向上
            (価値創造競争)
            【例】「CPUを2つにした1つのパッケージに2つのプロセッ
            サコアを集積したCPUの供給が始まったおかげで、演算速度が
            向上したし、フリーズの回数も激減したな」(製品の魅力の向上
            による価値の創造) 2
            【例】かつては十万円以上した1TBのハードディスク・ドライ
            ブが3万円で買えるようになった。技術革新のスピードには驚か
            されるな」(価格の下落による価値の創造) 3

1 4Cについてはコトラーも提案している。ほぼ、ラウターボーンと同様であり、①顧
客にとっての価値(Customer Value)、②顧客の負担(Cost to the Customer)、③入
手の容易性(Convenience)、④コミュニケーション(Communication)の4つである。
2 この事例からもわかるとおり、価値創造戦略の第1番目の手段は、製品の魅力の向上

である。 優れた製品が世に出れば、    それはすなわち、 顧客にとっての価値の創造である。
3 この事例からもわかるとおり、価値創造戦略の第2番目の手段は、製品の価格の下落

(値下げ) である。優れた製品がより安い価格で提供されるようになれば、             これもまた、


©株式会社経営教育総合研究所             19            無断転載 コピーを禁じます。
                                             ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント


        競合他社よりも多くの価値の存在を訴え、届けることによる顧
          客・社会の満足度の向上(価値伝達競争)
          【例】「コピー用紙などの事務用品の翌日配送が一般化し、急な
          需要にも対応できるようになったし、社内在庫が減少し、事務所
          の実質的なスペースが広くなった」
 ② 2Vの要素…従来、マーケティング・ミックスは4Pまたは4Cとい
   う区分が一般的であったが、価値に焦点を当てた場合、4P(4C)
   はさらに大きく、価値の創造と価値の伝達という2つのカテゴリー
   (2V)に集約できる 1

                  4P・4C・2V

         4P              4C                     2V


         製品       顧客ソリューション
   (product)      (customer solution)
                                              価値創造
                                          (value generation)
         価格           顧客コスト
    (price)        (customer cost)



    販売促進                利便性
  (promotion)      (convenience)
                                              価値伝達
                                         (value transmission)
    チャネル          コミュニケーション
    (place)       (communication)



                 出典:経営教育総合研究所




顧客にとっての価値の創造となる。
1 マーケティングの活動領域を、2分割するという考え方は、実は、マッカーシーの4

Pよりも古くから存在する。たとえば、フレイは、マーケティングを、①提供物(製品、
包装、ブランド、価格、サービス 等)と、②手段(広告、人的販売、販売チャネル、
販売促進、パブリシティ 等)という2つの要素に区分している。


©株式会社経営教育総合研究所           20             無断転載 コピーを禁じます。
                                            ・
マーケティング戦略の
                   手引きとヒント


  a. 価値創造(value generation)
       従来の製品戦略と価格戦略に該当する部分である
       従来、両者は別の戦略として扱われることが多かったが、価値の
         創造という概念で包括することができる
  b. 価値伝達(value transmission)
       従来のコミュニケーション戦略(プロモーション戦略)とチャネ
         ル戦略に該当する部分である
       コミュニケーション戦略の本質は価値の情報流通にあり(それゆ
         え、本来ならば情報流通戦略と呼ぶべきである)、チャネル戦略
         の本質は価値の物的流通にある(それゆえ、物的流通戦略と呼ぶ
         べきである)



7. マーケティング計画の作成・実施・統制・評価

(1) マーケティング計画の作成
 ① 標的顧客の設定やマーケティング・ミックスの決定が完了し、マーケ
   ティング戦略が決定したら、これを実行に移すための具体的な計画を
   策定する
 ② 具体的には、予算・組織変更・人員配置・スケジュール計画に落とし
   込む

(2) マーケティングの実施・統制
 ① マーケティング計画を関係者に告知し、具体的な作業を各組織・各部
   署・各担当者に割り振り、実行に移す
 ② 経営者・事業責任者およびマーケティング部門は、途中経過の管理・
   統制を行い、不測の事態・予想外のトラブルが発生した場合、マーケ
   ティング計画の修正しつつ、計画の遂行を継続する
 ③ 計画が長期に及ぶ場合、随時、進捗状況に関する途中経過を記録・確
   認する(【例】週間報告、月間報告、半期報告)

(3) マーケティングの評価
 ① マーケティング計画の実施後、目標達成度およびその差異分析を行い、
   マーケティング戦略についての評価を行う



©株式会社経営教育総合研究所           21     無断転載 コピーを禁じます。
                                    ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント


 ② 評価内容は経営者に迅速・正確に報告する
 ③ 戦略上改善すべき点は、次のマーケティング戦略策定における情報と
   して記録する




©株式会社経営教育総合研究所       22       無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント




   2. 事業環境の調査・分析




©株式会社経営教育総合研究所       23       無断転載 コピーを禁じます。
                                  ・
マーケティング戦略の
                    手引きとヒント




                 I. 事業環境

1. 事業環境の定義と分類

(1) 事業環境(business environment)の定義
 マーケティング環境とは、企業のマーケティング戦略に影響を及ぼす、企
業の内外における関係者や要因の総称である。

(2) 事業環境の分類
 ① 外部環境と内部環境
   a. 企業の外側の環境か、内側の環境かという分類である
   b. 外部環境はさらに、マクロ環境とミクロ環境とに細分化される
 ② 有利環境と不利環境
   a. 企業経営またはマーケティング戦略の遂行にあたり、プラスに作用
      する環境か、マイナスに作用する環境かという視点に基づく分類で
      ある
   b. プラスの作用かマイナスの作用かという区分は、主観による場合も
      考えられるが、客観的な判断基準があればそれに従うべきである 1




1 VRIO分析(後述)を提唱する経営戦略論の研究者のJ.B.バーニーは、この基

準に経済性を用いることを提唱している。「経済性がある」とは、次の2つの条件のい
ずれかを満たしている場合である。
① 売上の増加、収入の増加、顧客数の増加、客単価の増加などに貢献する。
② 原価・経費の削減、支出の削減、顧客脱落の歯止め、客単価減少の歯止めなどに貢
献する。
  経済性があれば、マーケティング戦略にプラスの環境(有利環境)に該当するし、経
済性がなければ、マーケティング戦略にプラスの環境(不利環境)に該当する。


©株式会社経営教育総合研究所           24         無断転載 コピーを禁じます。
                                        ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント



2. 外部環境と内部環境

                    外部環境と内部環境

                                         マクロ環境

                       外部環境
    マーケティング
                                         ミクロ環境
       環境

                       内部環境




(1) 外部環境
    外部環境とは、マーケティング環境のうち、マーケティング環境のうち、
企業の外側(社外)の環境である。
    ① マクロ環境(macro environment)…外部環境のうち、企業からの距
      離が遠く、企業が統制(コントロール)しにくい環境 1
      【例】人口動態、経済、規制、法律、自然環境、技術、文化                  等
     a. 人口動態的環境(demographic environment)…人口規模・人口密
       度・地域・年齢 2・性別・人種・職業などに関する環境 3
     b. 経済的環境(economic environment)…消費者の購買力や支出パタ
       ーンに影響を与える諸要因




1 企業のミクロ環境の中でも、     特に重要な、①顧客(customer) ②競合企業
                                       、     (competitor)、
③協力企業(collaborator)の3つは、3Cと呼ばれる。後述する事業環境の調査・分
析のプロセスの情報収集段階では、3Cについての情報は特に重点的に収集する必要が
ある 。
2 花王のヘアケアブランド「セグレタ」は、ターゲットを「40 代以上の女性」と明示し

て、商品の販売を行っている。中高年女性の場合、自身の年齢を意識するのを嫌うとい
う特性があるので、年齢を明示すると売れないという常識が業界の中にあった。花王は
あえて、これを逆手に取った。500mlサイズが実勢価格で 1,000 円以上。キャッチコ
ピーは「大人だけが 手に入れられる 艶がある。」。本事例は、後述する威光価格(名
声価格)のひとつと捉えていただいてもよいだろう。
3 人口動態は、人口動態学(demography)によって研究されている。人口動態学とは、

規模・密度・地域・年齢・性別・人種・職業などの統計から人口を研究する学問領域で
ある。


©株式会社経営教育総合研究所             25           無断転載 コピーを禁じます。
                                            ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント


     c. 自然環境(natural environment)…経営者またはマーケッターが
       情報として必要とする、または、企業の遂行するマーケティング戦
       略上、影響を及ぼす天然資源
     d. 技術的環境(technological environment)…新製品開発や市場開拓
       の機会をもたらすような新しい技術を生む諸要因
     e. 政治・法律的環境(political and legal environment)…社会にお
       けるさまざまな組織や個人に影響を与え、その行動を制限する法律
       1 ・政府機関・地方公共団体・圧力団体 2

     f. 文化的環境(cultural environment)…社会の基本的な価値観、知
       覚、選好、態度に影響を受ける制度などの要因である
    ② ミクロ環境(micro environment)…外部環境のうち、企業からの距
      離が近く、企業がある程度統制(コントロール)しうる環境 3
     a. 供給業者(supplier)…企業が製品を生産しサービスを提供するた
       めに必要とする資源の供給元のことである
     b. 仲介業者(intermediaries)…最終の買い手に対する製品のプロモ
       ーション、販売、配送に関して企業を支援する業者であり、中間業
       者、物流業者、サービス業者・代理店、金融機関等を含む
     c. 顧客(customer/client 4)…消費財市場、生産財市場、流通市場、
       行政機関市場、国際市場における自社製品・サービスの買い手であ
       る




1 マーケティングに影響を及ぼす日本の主な法律には、独占禁止法・不正競争防止法・
景品表示法・製造物責任法・消費者契約法・特定商取引法などがある。この他、業界別
に適用される特別法である、いわゆる業法が定められている。たとえば、化粧品業界で
は薬事法が、中古車販売業界では古物営業法が、銀行業界であれば銀行業法が定められ
ている。
2 特定議案の通過または通過阻止を目的として、特定組織の代理人が行う陳情・説得な

どの院外運動をロビー活動(ロビーイング)(lobbying)という。
3 マーケティングの成否の     「鍵」  となるのがミクロ環境である。前述したマクロ環境は、
企業が統制するのが難しい統制不可能要因である。後述する内部環境は、企業の内部の
環境であるから、経営者やマーケッターにとって統制は容易であり、統制可能要因とい
われる。それに対し、ミクロ環境は、企業が努力すれば統制可能だという準統制可能要
因である。いわば、経営者やマーケッターの「腕の見せ所」である。統制、すなわち、
マネジメントの上手下手の差は、ミクロ環境においてもっともはっきりする。
4 消費者(consumer)は、消費財の場合に用いる言葉なので、ここではより広範な意味

を持つ顧客 (customer/client)という用語を用いた。消費者は顧客の下位概念であり、
要素である。


©株式会社経営教育総合研究所             26          無断転載 コピーを禁じます。
                                           ・
マーケティング戦略の
                     手引きとヒント


   d. 競合他社(competitor)…市場における自社製品・サービスの提供
      にあたり、顧客・利潤の獲得をめぐって、自社とせりあい、競い合
      う企業

(2) 内部環境
 内部環境とは、マーケティング環境のうち、企業の内側(社内)の環境の
ことである。
 ① 企業の部門…経営陣、財部部門、研究・開発(R&D)部門、購買部
    門、製造部門、経理部門が含まれる。
 ② 企業の階層…代表取締役・取締役会(トップ・マネジメント)、部門
    長・中間管理職(ミドル・マネジメント)、中堅社員(ロワー・マネ
    ジメント)、正規従業員、フロー型人材(パート・アルバイト)
 ③ その他の要素…企業文化、経営者・従業員の価値観、組織形態、企業
    イメージ、製品、ブランド



3. 有利環境と不利環境

(1) 有利環境(advantage environment)
 社内・社外を問わず、企業にとって有利な環境である。
【例】「わが社には、今後事業化が見込まれる特許権が多数存在する」
【例】「今回の法改正で、規制が緩和され、わが社の事業の自由度が増した」

(2) 不利環境(disadvantage environment)
 社内・社外を問わず、企業にとって不利な環境である。
【例】「わが社は、合併による、2つの会社が統合したため、さまざまな点
で人間関係上のトラブルやコンフリクト(衝突・葛藤)が発生する」
【例】「競合するA社のテレビ広告の評判がよく、A社製品の指名購買が増
加している」




©株式会社経営教育総合研究所              27       無断転載 コピーを禁じます。
                                         ・
マーケティング戦略の
                    手引きとヒント




   II. 事業環境の調査・分析の
        フレームワーク

1. SWOT分析

(1) 概要
 ① 企業をとりまく環境を、有利か不利か、内部か外部かという2つの軸
    を用いて分類する分析フレームワーク
 ② 1960年代にスタンフォード研究所(SRI)のハンフリーらにより企
    業の長期計画の失敗理由を研究する中で考案された

(2) SWOTの意味
 ① 強み(Strength)…企業の目標達成に貢献する企業内部の特質
 ② 弱み(Weakness)…企業の目標達成の障害となる企業内部の特質
 ③ 機会(Opportunity)…企業の目標達成に貢献する企業外部の特質
 ④ 脅威(Threat)…企業の目標達成の障害となる企業外部の特質

                       SWOT分析


                  有利環境              不利環境

                    強み                弱み
   内部環境
                  Strength          Weakness


                    機会                脅威
   外部環境
                 Opportunity         Threat




©株式会社経営教育総合研究所                 28    無断転載 コピーを禁じます。
                                         ・
マーケティング戦略の
                  手引きとヒント



2. PEST分析

(1) 概要
 ① 重要なマクロ環境を洗い出すためのフレームワーク
 ② 現在や将来の事業活動に影響を及ぼす可能性のあるマクロ環境要因
    を導き出す際に用いられる
 ③ 政治的(P=Political) 経済的
                   、   (E=Economic) 社会的
                                   、   (S=Social)、
    技術的(T=Technological)の頭文字を取った造語
 ④ 上記4つのアプローチで外部環境を分析する

(2) PESTの具体例
 ① Political:政治的環境要因
   a. 政策・法規制の改変
   b. 裁判制度、判例
   c. 政治体制の変化
 ② Economic:経済的環境要因
   a. 景気動向・経済成長率
   b. 物価(インフレーション・デフレーション)
   c. 市場(金利・為替・株価
 ③ Social:社会的環境要因
   a. 世論・流行・トレンド
   b. 教育水準
   c. 治安・安全保障
   d. 宗教・言語
   e. 自然環境
   f. 人口、構成比(男女、年齢)
 ④ Technological:技術的環境要因
   a. 技術革新(イノベーション)
   b. 新技術の普及度
   c. 特許・実用新案




©株式会社経営教育総合研究所         29          無断転載 コピーを禁じます。
                                       ・
マーケティング戦略の
                      手引きとヒント



3. 3C分析

(1) 概要
    ① 重要なミクロ環境を洗い出すためのフレームワーク
    ② 現在や将来の事業活動に影響を及ぼす可能性のあるミクロ環境要因
      を導き出す際に用いられる
    ③ 顧客(Customer) 競合他社
                  、    (Competitor) 協力企業
                                   、    (Collaborator)
      の頭文字を取った造語 1
    ④ 上記3つのアプローチで外部環境を分析する

(2) 3C分析の具体例
    ① 顧客(Customer)
     a. 顧客のライフスタイル
     b. 顧客にニーズ
     c. 顧客の年齢の変化
    ② 競合他社(Competitor)
     a. 競合他社の持つ顧客ネットワーク
     b. 競合他社の持つ特許・実用新案
     c. 競合他社の抱える問題点・課題
    ③ 協力企業(Collaborator)
     a. 協力企業の持つ商品開発力
     b. 協力企業の持つ販売力
     c. 協力企業をめぐる脅威



4. バーニーのVRIO分析

(1) 概要
    ① 起源…J・B・バーニーが提唱




1顧客、競合他社の他に、自社(Company)を入れ、3Cという場合もある。また、価
格設定における3Cの場合は、顧客、競合他社の他に、コスト(Cost)を入れるのが普
通である。


©株式会社経営教育総合研究所             30          無断転載 コピーを禁じます。
                                           ・
マーケティング戦略の
                          手引きとヒント


  ② 定義…企業が従事する活動に関して発すべき4つの問いによって構
      成される、リソース・ベースト・ビュー志向の戦略分析フレームワー
      クのこと

                     VRIO分析の4つの問いかけ
  問いかけの段階                          具体的な問いかけ
     経済的価値              その経営資源が何らかの経済的価値(【例】利益につなが
     (Value)            る、コスト削減につながる)か?
       稀少性              その経営資源を現在コントロールしているのは自社を含む
     (Rarity)           極少数の企業であるか?
     模倣困難性
                        その経営資源を保有していない企業はその経営資源を獲得
(Difficult to Imitate
                        あるいは開発するのに多大なコストを要するか?
  /Imitability)
         組織             企業が保有する価値があり稀少であり模倣コストの大きな
    (Organization)      経営資源を、組織全体で使いこなせる仕組みがあるか?

    出典:『企業戦略論(上         基本編)』(J.B.バーニー著     ダイヤモンド社)
                           をもとに作成


                     VRIO分析による強みの6分類
                                      VRIO分析の各問いかけに
                                          対する回答
               強みの分類
                                    経済的       模倣
                                         希少性      組織
                                     価値      困難性
      経済的価値はあるが、組織として活用してい
①                                    Yes
      ない強み
      経済的価値があり、組織として活用している
②                                    Yes               Yes
      強み
      一時的競争優位の源泉となりうるのに、組織
③                                    Yes   Yes
      として活用していない強み
      一時的競争優位の源泉として、組織として活
④                                    Yes   Yes         Yes
      用している強み
      持続的競争優位の源泉となりうるのに、組織
⑤                                    Yes   Yes   Yes
      として活用していない強み
      持続的競争優位の源泉として、組織として活
⑥                                    Yes   Yes   Yes   Yes
      用している強み

                        出典:経営教育総合研究所

(2) 活用法
 企業の強みに優先順位をつけ、自社の持続的競争優位の源泉を発見する。




©株式会社経営教育総合研究所                31           無断転載 コピーを禁じます。
                                               ・
マーケティング戦略の
                   手引きとヒント



5. ポーターの5つの競争要因

(1) 概要
 企業の競争戦略を考える前提として、業界内競争・供給者・需要者・新規
参入・代替品という5つの視点で検討するフレームワークである。

(2) 活用法
 ① 外的環境(業界構造)の分析に利用される
 ② 企業の見えない脅威、特に競争要因を発見する際に利用される



                    5つの競争要因


                      【新規参入】

                      新規参入の脅威




                     【業界内競争】
     【売り手】                            【買い手】
                     ポジショニング
    売り手の交渉力             争い           買い手の交渉力




                       【代替品】
                      代替品の圧力


         出典:『競争優位の戦略』(M.E.ポーター著   ダイヤモンド社)




©株式会社経営教育総合研究所          32         無断転載 コピーを禁じます。
                                       ・
マーケティング戦略の
                    手引きとヒント



6. 見えざる資産を発見する7つの視点

(1) 7つの視点(seven positions)
 ① 起源…ポーターの提唱した5つの競争要因をもとに、自社の見えざる
    資産(invisible asset)を発見するための7つの視点として拡張した
    分析フレームワーク

                      7つの視点


                      異業種・異業態
 過去の自社


                                     業界内


   売り手                    自社                  買い手
  仕入先・                                         顧客
 原材料供給者                                        得意先

                 大手の競合            同規模または
                                  小規模の競合




                         代替品供給者



      出典:「DREAに基づく事業戦略策定」(経営教育総合研究所)


 ② 7つの視点
   a. 自社よりも大手の競合他社の立場から見たら、自社の当該事業はど
      こが恐ろしいか
   b. 自社と同規模あるいは小規模の競合他社の立場から見たら、自社の
      当該事業はどこが恐ろしいか
   c. 売り手(仕入先・原材料供給業者)の立場から見たら、自社の当該
      事業はどこに魅力があるか




©株式会社経営教育総合研究所               33        無断転載 コピーを禁じます。
                                           ・
マーケティング戦略の
                       手引きとヒント


     d. 買い手(顧客・得意先)の立場から見たら、自社の当該事業はどこ
       に魅力があるか
     e. 異業種・異業態の立場から見たら、自社の当該事業はどこが優れて
       いるか
     f. 当該事業が他社の代替品となっている場合はないか
     g. 過去の自社から見て優れている点はどこか
    ③ 5つの競争要因との違い
     a. 業界内競争を自社よりも大規模の競合、自社と同規模か小規模の競
       合の2つに分解している点
     b. 5つの競争要因にはない過去の自社との比較という視点が入って
       いる点



7. DREAにおける環境分析

(1) DREA(Domain Re-definition based on Environmental Analysis)
    ① 定義…環境分析に基づく事業領域再定義法の略であり、SWOT分析、
     VRIO分析、5つの競争要因といったさまざまな環境分析を応用・
     転用し、事業の問題点・課題を的確に把握し、事業ドメインを再定義
     し、中期経営計画の土台を固めるための一種のロジカル・シンキング
     手法
    ② フロー…DREAは次の4段階からなる(このうち、AD分析とゲシ
     ュタルト分析は、事業環境の調査・分析のフレームワークに該当する)

                       DREAのフロー
         段 階                                 内   容
①   事業理念の確認                       事業の理想はきちんと掲げられているか
②   AD分析                          事業を巡る現実は正確に把握されているか
③   ゲシュタルト分析                      明日の事業の姿をつくるためのヒントは何か
④   拡張型ドメイン・チャートの策定               明日の事業の姿をどこまで具体化できるか

       出典:「DREAに基づく事業戦略策定」(経営教育総合研究所)




©株式会社経営教育総合研究所               34             無断転載 コピーを禁じます。
                                                ・
マーケティング戦略の
                       手引きとヒント


(2) AD分析
    ① 定義…後述するゲシュタルト分析と組み合わせて用いられるDRE
     Aにおける環境分析法のひとつで、事業環境情報を、自社にとって有
     利 な 要 因 ( advantage要 因 ; A チ ー ム ) と 自 社 に と っ て 不 利 な 要 因
     (disadvantage要因;Dチーム)とに分類する方法である
    ② 目的…事業を巡る現実を正確に把握すること
    ③ 特徴…SWOT分析を簡素化し、柔軟性を高めた分析方法である

(3) ゲシュタルト分析
    ① 定義…前述するAD分析と組み合わせて用いられるDREAにおけ
     る環境分析法のひとつで、整理されたAチーム・Dチームの各要因を
     見ながら、Aチームの要因を使ってなんとかなりそうなDチームの要
     因の組み合わせ(ゲシュタルト 1)を見つけていくことである
    ② 目的…ドメイン(明日の事業の姿)をつくるためのヒントを探すこと
    ③ 手順
     a. 適切なAチーム要因・Dチーム要因の組み合わせ(ゲシュタルト)
       を発見する
     b. その組み合わせを問題点としてとらえ、課題に転換する




1ゲシュタルト(Gestalt)とは、本来「統合された形」という意味のドイツ語で、心理
学の世界では、「部分部分あるいは要因要因を、ひとつの意味ある全体像にまとめあげ
たもの」という意味で用いられている。DREAではこの概念を事業戦略の策定に活用
するために「ゲシュタルト分析」という用語に転用している。


©株式会社経営教育総合研究所                35             無断転載 コピーを禁じます。
                                                 ・
マーケティング戦略の
                    手引きとヒント




    III. 消費者の購買行動分析

1. 消費者購買行動と消費財市場

(1) 消費者購買行動(customer buyer behavior)
 ① 最終消費者、すなわち製品やサービスを個人消費のために購入する個
    人や世帯の購買行動
 ② 消費者の購買行動は、文化的・社会的・個人的・心理的特性の影響を
    強く受ける

(2) 消費財市場(consumer market)
 個人的な消費のために製品を買ったりサービスを受けたりするすべての
個人および世帯。



2. 消費者行動に影響を与える特性

(1) 文化的特性
 ① 文化(culture)…社会のメンバーが家族などの重要な組織から学ぶ基
    本的な価値観・知覚・嗜好・行動
 ② サブカルチャー(subculture)…共通した生活体験や生活状況に基づ
    いた価値体系を共有する人々のグループ
    【例】国籍、宗教、人種、居住地域              等
 ③ 社会階層(social classes)
   a. ある社会にほぼ永続的に存在する秩序だった構造を持つ区分
   b. 各区分の構成員は類似した価値観・関心・行動を共有する

(2) 社会的特性
 ① 集団(group)…個人あるいは共通の目標を達成するために互いに影
    響しあう2人以上の人間の集まり
 ② 準拠集団(reference group)…個人がその態度や行動を決定する際に
    直接、あるいは間接的に参考とし、あるいは、比較対象とする集団




©株式会社経営教育総合研究所               36        無断転載 コピーを禁じます。
                                           ・
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)

More Related Content

Similar to マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)

講演「マーケティングとWeb活用」
講演「マーケティングとWeb活用」講演「マーケティングとWeb活用」
講演「マーケティングとWeb活用」竹内 幸次
 
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」竹内 幸次
 
寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」
寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」
寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」竹内 幸次
 
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」竹内 幸次
 
立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用
立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用
立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用竹内 幸次
 
技術書典4 く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版
 技術書典4  く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版 技術書典4  く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版
技術書典4 く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版Hiroyuki Ohnaka
 
中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ
中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ
中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ竹内 幸次
 
徹底検証!ホスティングサービスの比較 Googleとマイクロソフト
徹底検証!ホスティングサービスの比較 Googleとマイクロソフト徹底検証!ホスティングサービスの比較 Googleとマイクロソフト
徹底検証!ホスティングサービスの比較 GoogleとマイクロソフトCompare GW
 
Unspsc product classification process and samples
Unspsc product classification process and samples Unspsc product classification process and samples
Unspsc product classification process and samples Indra kumar
 
BYOD_Policy_JP-1.0.pdf
BYOD_Policy_JP-1.0.pdfBYOD_Policy_JP-1.0.pdf
BYOD_Policy_JP-1.0.pdfHisaho Nakata
 
コーディング規約「Scratch編」v1.0
コーディング規約「Scratch編」v1.0コーディング規約「Scratch編」v1.0
コーディング規約「Scratch編」v1.0satoshi59
 
東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」
東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」
東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」竹内 幸次
 
オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」
オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」
オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」Yusuke Matsunaga
 
相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」
相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」
相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」竹内 幸次
 
久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達
久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達 久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達
久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達 竹内 幸次
 
ワンストップ技術書を書こう おためし版
ワンストップ技術書を書こう おためし版ワンストップ技術書を書こう おためし版
ワンストップ技術書を書こう おためし版親方 親方
 
岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」
岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」
岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」竹内 幸次
 
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」竹内 幸次
 

Similar to マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版) (20)

講演「マーケティングとWeb活用」
講演「マーケティングとWeb活用」講演「マーケティングとWeb活用」
講演「マーケティングとWeb活用」
 
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「マーケティングプランづくり」
 
寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」
寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」
寒川町商工会創業支援セミナーで講演「お客様をみつけ、維持していこう」
 
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミでオンライン講演「マーケティングプランづくり」
 
立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用
立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用
立川 講演 開業時の集客と効果的なIT、Web活用
 
技術書典4 く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版
 技術書典4  く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版 技術書典4  く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版
技術書典4 く-35「錬金術MeetUp」 Alchemist Vol.1 サンプル版
 
中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ
中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ
中小企業診断士竹内幸次のマーケティング講演レジュメ
 
RODEM-G 取扱説明書 v1.2 r2
RODEM-G 取扱説明書 v1.2 r2RODEM-G 取扱説明書 v1.2 r2
RODEM-G 取扱説明書 v1.2 r2
 
徹底検証!ホスティングサービスの比較 Googleとマイクロソフト
徹底検証!ホスティングサービスの比較 Googleとマイクロソフト徹底検証!ホスティングサービスの比較 Googleとマイクロソフト
徹底検証!ホスティングサービスの比較 Googleとマイクロソフト
 
Unspsc product classification process and samples
Unspsc product classification process and samples Unspsc product classification process and samples
Unspsc product classification process and samples
 
BYOD_Policy_JP-1.0.pdf
BYOD_Policy_JP-1.0.pdfBYOD_Policy_JP-1.0.pdf
BYOD_Policy_JP-1.0.pdf
 
コーディング規約「Scratch編」v1.0
コーディング規約「Scratch編」v1.0コーディング規約「Scratch編」v1.0
コーディング規約「Scratch編」v1.0
 
東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」
東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」
東京商工会議所品川支部で講演「2020年 中小企業が取り組む経営戦略 IT活用戦略」
 
オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」
オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」
オリジナル北欧雑貨ネットショップ事業の「事業計画書」
 
2 chi-mu piroo -
2 chi-mu piroo - 2 chi-mu piroo -
2 chi-mu piroo -
 
相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」
相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」
相模原商工会議所経営者育成塾グレート・リセット経営2021でオンラインZoom講演「マーケティング戦略/販路拡大」
 
久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達
久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達 久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達
久喜 創業塾講演 売価設定の基本と資金調達
 
ワンストップ技術書を書こう おためし版
ワンストップ技術書を書こう おためし版ワンストップ技術書を書こう おためし版
ワンストップ技術書を書こう おためし版
 
岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」
岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」
岐阜県各務原商工会議所で講演「IT活用による実践型販売促進集客のコツ!」
 
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」
相模原商工会議所さがみはらde創業ゼミで講演「事業収支シミュレーション(ソフトウエアを活用)」
 

More from ㈱経営教育総合研究所 竹永亮

名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当
名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当
名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当㈱経営教育総合研究所 竹永亮
 
140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11
140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11
140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11㈱経営教育総合研究所 竹永亮
 
2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ
2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ
2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ㈱経営教育総合研究所 竹永亮
 

More from ㈱経営教育総合研究所 竹永亮 (14)

最強のセルフ・ブランディング
最強のセルフ・ブランディング最強のセルフ・ブランディング
最強のセルフ・ブランディング
 
名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当
名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当
名著を読む会 『マーケティング・マネジメント』 14章 竹永担当
 
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)
 
憲法コメンタール
憲法コメンタール憲法コメンタール
憲法コメンタール
 
多次元的能力開発システム(mdl) の概要
多次元的能力開発システム(mdl) の概要 多次元的能力開発システム(mdl) の概要
多次元的能力開発システム(mdl) の概要
 
Microsoft word 世界現代史コメンタール(初版).doc
Microsoft word   世界現代史コメンタール(初版).docMicrosoft word   世界現代史コメンタール(初版).doc
Microsoft word 世界現代史コメンタール(初版).doc
 
140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11
140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11
140字の経営学|竹永亮(炎の専任講師) 2011.06.08〜2011.08.11
 
ビジネス雑談サロン オンライン・ストレージ入門
ビジネス雑談サロン オンライン・ストレージ入門ビジネス雑談サロン オンライン・ストレージ入門
ビジネス雑談サロン オンライン・ストレージ入門
 
Microsoft word 会議のマネジメント.doc
Microsoft word   会議のマネジメント.docMicrosoft word   会議のマネジメント.doc
Microsoft word 会議のマネジメント.doc
 
時短のためのメモの一例 平成17年度 事例ⅱ
時短のためのメモの一例 平成17年度 事例ⅱ時短のためのメモの一例 平成17年度 事例ⅱ
時短のためのメモの一例 平成17年度 事例ⅱ
 
2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ
2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ
2次直前対策講座 時短のための問題用紙へのメモのとり方 平成22年度事例ⅱ
 
SNS雑談サロン
SNS雑談サロンSNS雑談サロン
SNS雑談サロン
 
ビジネス雑談サロン 自炊の極意 収録用
ビジネス雑談サロン 自炊の極意 収録用ビジネス雑談サロン 自炊の極意 収録用
ビジネス雑談サロン 自炊の極意 収録用
 
DREAの全体像
DREAの全体像DREAの全体像
DREAの全体像
 

マーケティング戦略の手引きとヒント(第4版)

  • 1. マーケティング戦略の 手引きとヒント (第4版) 2011 年 9 月 株式会社経営教育総合研究所
  • 2. はしがき 失敗しない経営は経営者の理想であり、夢です。しかし、絶対に失敗しな い経営のための方程式や特効薬は残念ながら、世の中にはありません。 では、どうすればよいか。できるだけ、失敗しないように工夫すればよい のです。 そのために、先輩の経営者やビジネスマンたちは、「戦略」という概念を 生み出しました。特に、お客様に対し、モノを売る際には、「マーケティン グ(戦略)」という考え方を用いれば、失敗しにくいということを発見しま した。20世紀初頭のことと言われています。 簡単にいえば、マーケティングとは、これからモノを売ろうと思っている お客様(見込み客の場合もありますが)に対し、最高にすばらしい製品をお 手ごろな価格で販売するためのさまざまな工夫のことです。 たとえば、すばらしいクルマが手頃な価格で売られていても、そのことに お客様が気づいていなければ、買ってはいただけません。ですから、お客様 とのコミュニケーションは、マーケティングの中ではとても重要なチェッ ク・ポイントになるわけです。 また、せっかく商談が成立して(モノが売れても)、お約束させていただ いた期日までに、お客様のところに納品されなければ、満足していただける どころか、お叱りを受けてしまいます。お客様にご購入いただいた商品(本 書では製品とよびますが)をいかに早く、確実にお届けできるか。これも、 マーケティングでは、欠かすことのできないチェック・ポイントとなるわけ です。 よい製品をお手ごろ価格で提供することは、お客様にとっての価値を作る (創造する)という段階であり、とても大切です。そのことをお客様にお伝 えし、商談が決まれば、きちんとお届けすること、すなわち、価値を情報と してお伝えし、商品をお届けする(伝達する)という段階も大切です。価値 の創造と伝達、これがセットとなってはじめて、お客様にモノを売ることが できるのです。 さて、皆さんは、どんなお客様にモノを売っていますか? 商品ではなく、 サービスを提供している方もいるでしょう。消費者ではなく、企業や業者と 取引をされている方もいるでしょう。自社の他の部署とやりとりをしている i
  • 3. 方もいらっしゃるでしょう。でも、広い意味で、「“誰か”に“何か”を提 供している」という点では本質的にはみな同じです。ですから、マーケティ ングは、業種や業態、企業の規模の大小にかかわらず、使うことができる、 たいへん柔軟かつ重宝なものなのです。 「誰に向けて売るのか」 これはとても重要なチェック・ポイントですね。 。 そもそも、何を売るか、いくらで売るかということは、お客様の顔を思い浮 かべながら、はじめて決めることができるのです。 私が、学生街に高級フランス料理店を構えたとしましょう。その店で出す フランス料理はたいへんおいしいものだとしましょう。しかし、大学の昼休 みに、学生たちは、私の店には食べに来ないでしょう。隣のあまりきれいで はないラーメン屋のほうがずっと繁盛しているはずです。彼らにとっては、 1杯300円のラーメンのほうがずっと価値があるからです。 「はじめに、お客様ありき」。これがマーケティングの出発点です。 本書は、これから、マーケティングの感覚・手法を取り入れて、ビジネス を成功させたいと考えている方を対象に、さまざまな専門用語・視点・切り 口・方法・手順・フレームワーク(枠組み)・簡単な事例をぎっしりと詰め 込み体系的に整理した要点集であり、便覧です。ですから、タイトルは、「手 引きとヒント」としました。索引も充実しています! 企画書を作ったり、明日からの販売計画を考えたりするとき、何もない状 態からではなかなかアイディアが浮かばないものです。何か、ヒントがほし い…もし、そう思ったときには、是非是非、本書をぱらぱらとめくってみて ください。 箇条書きになっている箇所、ゴシックで指定してある重要用語、図表やチ ャート、事例…これらが、皆さんが、マーケティング戦略を考えるときのヒ ントになってくれるはずです。 本書は百科事典ではありませんので、記述が抽象的で、言葉足らずだな、 難しいな…と感じる箇所も多いと思います。あくまでも、便覧・ヒント・手 引きですので、どうかこの点はご容赦ください。 こんなときはどうすればよいか。ここから先はインターネットの出番です。 もう少し調べてみたいと思った用語や事項について、調べてみてください。 ネット上には、その用語や事項に関するより詳しい説明や具体的な事例がい たるところで紹介されているはずです。どんどん、研究してみてください。 ii
  • 4. もちろん、マーケティングに関する書籍を乱読していただくのも大賛成です。 巻末には、本書を執筆するに当たって参考にした文献を一覧にしてあります。 ただはじめは、ハードな学術書よりも2,000円以内くらいで入手できるソフ トな入門書のほうが読みやすいかもしれません。 一方、本書は、企業の中で、部下や後輩にマーケティングについて指導す るお立場にいらっしゃる方々のためのガイドブックとしても使えます。社内 セミナーや研修、朝礼やミーティングの際に、マーケティングについての話 をしなければならない際に、本書を「ネタ本」としてお役立ていただければ 幸いです。実は、私自身、本書を辞書代わりにしようと思っているところで す。 私がいつも、コンサルティング先のお客様にお伝えし、あるいは、ビジネ ス・スクールでの講義・講演の際に板書し、パワーポイントで説明している 情報の中でも、特に重要なものを集めてあります。先人たちの受け売りだけ ではなく、私と私の所属する経営教育総合研究所独自の視点を加えてありま す。ご質問があれば、どしどしお寄せください。 “マーケティングなんて、人によって解釈が異なり、つかみどころがない まやかしのような言葉で、知っていていなくても別に大差ない” 世の中に は、こんなふうにマーケティングに対する誤解や偏見を持った方もいらっし ゃいます。ですが、本当は、マーケティングにもきちんとした定義があり、 企業がお客様にモノを売るために役立つ方法論がたくさん開発されている のです。 本書を読み、少しでもこんな誤解や偏見がなくなれば、うれしく思います。 お手元に置き、末永く愛用していただければ幸いです。 2011年9月 株式会社経営教育総合研究所 竹永 亮 iii
  • 5. 次 1. マーケティングと マーケティング戦略 ......................................................................... 1 I. マーケティングの全体像 ....................................... 2 1. 古典的なマーケティングの定義 .................................................... 2 2. マーケティング関連基本用語 ....................................................... 4 3. マーケティング・コンセプトの変遷 ............................................. 9 4. マーケティングの中心概念の変化............................................... 11 5. 新しいマーケティングの定義 ..................................................... 13 II. マーケティング戦略の プロセス.............................. 14 1. マーケティング戦略のプロセス .................................................. 14 2. 事業理念の確認 .......................................................................... 14 3. 事業環境の調査・分析 ................................................................ 14 4. 標的市場の設定 .......................................................................... 15 5. マーケティング目標の設定 ......................................................... 16 6. マーケティング・ミックスの開発............................................... 18 7. マーケティング計画の作成・実施・統制・評価.......................... 21 2. 事業環境の調査・分析 ................................................................................................. 23 I. 事業環境 .................................................... 24 1. 事業環境の定義と分類 ................................................................ 24 2. 外部環境と内部環境 ................................................................... 25 3. 有利環境と不利環境 ................................................................... 27 II. 事業環境の調査・分析の フレームワーク...................... 28 1. SWOT分析 .............................................................................. 28 2. バーニーのVRIO分析 ............................................................ 29 3. ポーターの5つの競争要因 ......................................................... 32 4. 見えざる資産を発見する7つの視点 ........................................... 33 5. DREAにおける環境分析 ......................................................... 34 III. 消費者の購買行動分析 ...................................... 36 1. 消費者購買行動と消費財市場 ..................................................... 36 2. 消費者行動に影響を与える特性 .................................................. 36 3. 消費者の意思決定プロセス研究(短期モデル).......................... 39 iv
  • 6. 4. 消費者の意思決定プロセス研究(長期モデル).......................... 40 5. 新製品に対する消費者の意思決定プロセス研究.......................... 42 6. 消費者の購買タイプ研究 ............................................................ 44 IV. 企業の購買行動分析 ......................................... 49 1. 生産財市場 ................................................................................. 49 2. 企業の購買行動 .......................................................................... 50 V. 事業環境の調査・分析の プロセス............................. 52 1. 調査目的の明確化 ....................................................................... 52 2. 調査の計画・実行 ....................................................................... 52 3. 調査結果の分析・報告 ................................................................ 55 3. 標的市場の設定 ............................................................................................................. 57 I. 標的市場の設定に用いる フレームワーク....................... 58 1. BCGのPPM .......................................................................... 58 2. 製品・市場マトリックス分析 ..................................................... 60 3. PMS ........................................................................................ 61 4. 競争優位の源泉 .......................................................................... 62 5. 競争地位別戦略 .......................................................................... 63 II. 標的市場の設定 ............................................. 65 1. 標的市場の設定の3段階(STP) ........................................... 65 2. 市場細分化(セグメンテーション) ........................................... 65 3. 標的市場の設定(ターゲティング) ........................................... 69 4. 競争優位のための製品の位置づけ(ポジショニング) ............... 72 5. ドメインの再定義 ....................................................................... 73 4. 価値創造戦略 ................................................................................................................. 77 I. 製品戦略 .................................................... 78 1. 製品 ............................................................................................ 78 2. 製品の分類 ................................................................................. 80 3. 製品についての意思決定 ............................................................ 84 4. サービス・マーケティング ......................................................... 89 5. 新製品開発戦略 .......................................................................... 93 6. 製品ライフサイクル戦略 ............................................................ 95 II. 価格戦略 .................................................. 100 v
  • 7. 1. 価格設定の際に考慮すべき要因 .................................................100 2. 一般的な価格設定法 ..................................................................102 3. 新製品の価格設定法 ..................................................................103 4. 製品ミックスによる価格設定法 .................................................104 5. 価格調整戦略 .............................................................................105 6. 価格変更 ....................................................................................106 5. 価値伝達戦略 ...............................................................................................................109 I. コミュニケーション戦略 ..................................... 110 1. コミュニケーション戦略の統合 .................................................110 2. 広告 ...........................................................................................113 3. 販売促進 ....................................................................................116 4. 広告活動(PR活動) ...............................................................119 5. 人的販売 ....................................................................................120 II. チャネル戦略 .............................................. 125 1. 流通チャネルの機能 ..................................................................125 2. チャネル組織の基本構造 ...........................................................126 3. チャネル設計とチャネル管理の意思決定 ...................................129 4. ロジスティックスの管理 ...........................................................130 5. 小売業 .......................................................................................132 6. 卸売業 .......................................................................................136 6. マーケティングの拡張..................................................................................................139 I. 新しいマーケティング ....................................... 140 1. 需要の管理 ................................................................................140 2. 顧客満足度の管理 ......................................................................141 3. リレーションシップ・マーケティング.......................................144 4. 顧客進化 ....................................................................................148 5. ダイレクト・マーケティング ....................................................149 vi
  • 8. vii
  • 9. マーケティング戦略の 手引きとヒント 1. マーケティングと マーケティング戦略 ©株式会社経営教育総合研究所 1 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 10. マーケティング戦略の 手引きとヒント I. マーケティングの全体像 1. 代表的なマーケティングの定義 マーケティング(marketing) 多くのマーケティング研究者によって、 は、 様々な定義がなされている。その中で、代表的なものは、次の通りである。 (1) 1985年のAMA(アメリカマーケティング協会)の定義 ① 定義…「マーケティングとは、個人目標および組織目標を満たす交換 を創造するための、アイディア・商品・サービスのコンセプト、価格 設定、プロモーション、流通の計画と実行のプロセスである」 ② 特徴 a. 交換の概念が重視されている点 b. 目的が明確になっている点 c. 非営利組織や無形財などを製品として含んでいる点 d. 製品・価格・プロモーション・流通というマーケティング・ミック スの4つの要素が組み込まれている点 (2) 2004年のAMA(アメリカマーケティング協会)の定義 ① 定義…「マーケティングとは、組織的な活動であり、顧客に対し価値 を創造し、価値についてコミュニケーションを行い、価値を届けるた めの一連のプロセスであり、さらに組織および組織の利害関係者(ス テークホルダー)に利益をもたらす方法であり、顧客関係を管理する ための一連のプロセスである」 ② 特徴 a. 価値(顧客価値)が重視されている点 b. 顧客関係(リレーションシップ)の管理が重視されている点 c. 対象を顧客には限定せず、企業の利害関係者全体に拡大された点 d. マーケティングの機能・プロセスに着目している ©株式会社経営教育総合研究所 2 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 11. マーケティング戦略の 手引きとヒント (3) コトラーの定義 ① 定義…「個人やグループが製品や価値をつくり出し、それを他者と交 換することによって必要なものや欲しいものを獲得するという社会 的かつ経営的プロセスである」 ② 特徴 a. 交換という概念が含まれている点 b. 単に経営的なプロセスではなく、社会的なプロセスである点が強調 されている点 (4) ドラッカーの定義 ① 定義…「マーケティングは販売よりもはるかに広範な活動であり、そ の最終到達点としての顧客の見地から行う、企業全体に関わる活動で ある」 ② 特徴 a. マーケティングが販売(セリング)よりも広範な活動、上位概念で あることの示唆 b. 顧客志向でなければならないという指摘 c. 全社的な活動であることの指摘 (5) 1990年のJMA(日本マーケティング協会)の定義 ① 定義…「マーケティングとは、企業およびその他の組織が、グローバ ルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて 行う市場創造のための総合的な活動である」 ② 特徴 a. 企業以外の組織、すなわち、非営利的組織もマーケティングの主体 としている点 b. 国際社会の到来を反映して、グローバルな視野の必要性を説いてい る点 c. 顧客との相互理解という用語を用い、顧客満足度や顧客との関係性 構築の重要性を示唆している点 d. ニーズや市場を追いかけるだけではなく、市場を創造することに触 れている点 ©株式会社経営教育総合研究所 3 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 12. マーケティング戦略の 手引きとヒント e. 総合的な活動とし、マーケティングの範疇が企業の活動の中でも大 きなウェイトを占めることを示している点 2. マーケティング関連基本用語 (1) マーケティングの発想に関する用語 ① ニーズ(needs) a. 定義…人間が欠乏を感じている状態であり、ウォンツに比べて本質 的・目的的な欲求である 【例】美しくなりたい、通勤の足がほしい、家族と話しをしながら 料理がしたい b. 特性  顧客自体がニーズに気づいていない場合がある 【例】街でたまたま見つけた雑貨に対するウォンツを感じている 顧客は、自らのニーズを認識していない。  ニーズは2層構造から成り立っている(ニーズ二元論) · 見かけのニーズ(visible needs) 【例】「安全性を考えて、メルセデス・ベンツの車を買おう」 · 影のニーズ(invisible needs) 【例】「高級車にのって、女性にもてたい!」 ニーズ二元論 見かけのニーズ (visible needs) 影のニーズ (invisible needs) 出典:経営教育総合研究所 ©株式会社経営教育総合研究所 4 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 13. マーケティング戦略の 手引きとヒント ① ウォンツ(wants)…人間のニーズが文化や個人の人格を通して具体 化されたものであり、ニーズに比べて表層的・手段的な欲求である 【例】化粧品がほしい、軽自動車がほしい、対面キッチンがほしい ② シーズ(seeds)…企業が持っており、顧客に提供することが可能な 技術・アイディアなどの事業の「種」のこと ③ プロダクト・アウト(product out)…和製英語で、製造部門の考えに より商品を製造し販売する技術先行型の発想やビジネス・スタイルの こと(シーズ志向) ④ マーケット・イン(market in)…和製英語で、製造部門に販売部門 を取り込み、市場情報や消費者のニーズに合わせて、企業が製品を開 発・供給する市場ニーズ先行型の発想やビジネス・スタイルのこと(ニ ーズ志向) (2) マーケティングと戦略・管理に関する用語 1 ① マネジリアル・マーケティング(managerial marketing)…顧客のニ ーズに適応するだけではなく、創造的に適応するために、マーケティ ング担当部門のみならず、製造や財務部門などの各部門の協力や経営 者による意思決定も必要となるとした、経営者視点による全社的なマ ーケティング 2 ② 戦略的マーケティング(strategic marketing)…市場環境との適合性 を中心に、全社的な意思決定をもって、環境と経営資源に適合した企 業の将来の方向を定める行動の枠組みである 3 1 マーケティングの戦略や管理に関する用語を並べてみて、非常に多くの派生語がある ことを再発見し、驚いた。研修や講演の際に、これらの用語の差異について質問を受け ることがあるが、あまり、細かいことを気にする必要はないだろう。欧米なり日本なり の実務家(経営者やマーケティング担当者)の中に、これらの用語の違いを明確に理解 し、使い分けている方はほとんどいないだろう。本書では基本的に、マーケティング戦 略とマーケティング・ミックスという2つの用語を中心に用い、混乱を避けるために、同 義語や似て非なる用語はできるだけ用いないようにしたい。 2 レイザーとケリーが 1958 年に著書『マネジリアル・マーケティング』で提唱したマ ーケティング概念である。全社的な意思決定や経営者の視点を重視する点で、後述する 戦略的マーケティングと、ほぼ同義語である。 3 戦略的マーケティングは、全社的な意思決定を伴うため、事実上、経営戦略と同義語 になる。「マーケティング感覚を持った経営戦略全体」というイメージをもってよいだ ろう。 紹介したのは、社団法人日本マーケティング協会の定義を参考にしたものである。 慶応大学の嶋口充輝教授によれば、戦略的マーケティングは、市場対応、競争対応、社 会対応の3つの領域からなるとされている。 ©株式会社経営教育総合研究所 5 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 14. マーケティング戦略の 手引きとヒント ③ マーケティング戦略(marketing strategy)…標的顧客の設定とマー ケティング・ミックスの構築を中心に行われるマーケティングについ ての計画・実行・管理・評価のプロセス(ただし、このうち、マーケ ティング計画のことのみをマーケティング戦略と呼ぶ場合もある) 2。 1 ④ マーケティング計画(marketing planning)…マーケティング戦略を 予算・組織・人員・スケジュール等について具体的に落とし込み、企 てたもの ⑤ マーケティング・ミックス(marketing mix)…マーケティング活動 を行う企業にとって統制可能な諸手段の組み合わせ 3 ⑥ マーケティング・プログラム(marketing program)…マーケティン グ・ミックスの要素(製品・価格・プロモーション・チャネル)を適 切に組み合わせ、価値を消費者に提供することである 4 1 「標的顧客に対してアクションを起こす」という発想のルーツは、ブーンとクルツに よるマーケティングの定義が先駆である。彼らによれば、「マーケティングとは、選択 された市場セグメントに対し、製品・サービスを開発し、効率よく流通させることであ る」とされている。価格やプロモーションについての概念は掛けているが、おおむね、 現在のマーケティング戦略の定義とよく似たフレームワークで、マーケティングを捉え ている。 2 戦略的マーケティングと紛らわしい概念だが、もっとも一般的に用いられているマー ケティング用語の1つである。戦略的マーケティングと異なり、全社的な意思決定、経 営者視点という意味は含まない。しかし、両者の間に境界線はなく、現在のマーケティ ング戦略は、経営者の意思決定なくしては行うことはできず、事実上、両者の間に協会 線はない。本書では、マネジリアル・マーケティング、戦略的マーケティングという用 語は用いず、マーケティング戦略という用語を使用する。 3 マーケティング・ミックスという用語を始めて用いたのは、ボーデンである。彼は、 マーケティングを製品計画や売価決定など、12 の活動に分解し、これらの組み合わせの 重要性を指摘し、この組み合わせを、ケーキ・ミックスになぞらえて、マーケティング・ ミックスと命名した。 ところで、 マーケティング戦略を前半と後半に大別すると、 前半は標的顧客の設定に、 後半はマーケティング・ミックスの構築となる。その意味で、マーケティング・ミック スは、マーケティング戦略の構成要素であり、下位概念である。マーケティング・ミッ クスの要素としては製品・価格・プロモーション・チャネルというマッカーシーの4P (product/price/promotion/place)がもっとも有名である。もっともこの4Pの各 要素は、レイザーとケリーの著書『マネジリアル・マーケティング』の中で、マーケテ ィングの4つの要素(製品、価格、広告・販促、チャネル)として提唱されている。 4 よって、マーケティング・プログラムとは、マーケティング・ミックスの一部という ことになる。 ©株式会社経営教育総合研究所 6 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 15. マーケティング戦略の 手引きとヒント ⑦ マーケティング・マネジメント(marketing management)…組織の 目標を達成するために、標的となる買い手との間に有益な交換を生み 出し、確立し、維持することを目的として設計されたプログラムを、 分析・計画・実施・制御すること 1 ⑧ マクロ・マーケティング(macro marketing)…マーケティング活動 を社会活動全体の中で捉えていく考え方 2 ⑨ ミクロ・マーケティング(micro marketing) a. 企業が、市場に対してどのように働きかけ、それがどのような結果 を生み出すか管理・戦略的に行われるマーケティングのこと 3。 b. 製品やマーケティング・プログラムを特定の個人や地域の好みに合 わせて調整すること(ワントゥワン・マーケティングやエリア・マ ーケティングの総称として用いられる) ⑩ 戦略(経営戦略)…長期的視野・複合的思考で特定の目標を達成する ために経営資源を総合的に分配・運用する計画・実行・管理・評価の 一連のプロセス ⑪ 戦術…特定の戦略遂行にあたり、経営資源を具体的に配置する思考や 技術 4 1 マーケティング戦略とほぼ同義語である。あえて違いをあげれば、マーケティング戦 略の計画・実行・管理・評価する過程で、経営者や事業責任者の行うべきマネジメント という意味であるだろう。コトラーは、需要と顧客に対するマネジメントのことをマー ケティング・マネジメントと呼んでいるが、他の用語との関係・位置づけは明らかにさ れていない。 2 ミクロマーケティングの対語で、経済学的な視点でマーケティングを捉える考え方で ある。 3 マクロマーケティングの対語で、 いわゆる通常のマーケティング活動である。 事実上、 マーケティング戦略とほぼ同義語である。 4 戦略と戦術の違いについても、よく質問を受ける。最も多い質問は、両者の境目であ る。「○○より上の概念は戦略、××より下の概念は戦術」という絶対的な基準を期待 しても質問であることはわかるが、両者の違いは絶対的なものではない。戦術は戦略の 下位概念であることは間違いないが、戦略と戦術の関係は常に相対的なものである。た とえば、全社戦略の中で、1 個の事業部の戦略(事業戦略)は 1 個の戦術にあたる。事 業全体を統括する事業戦略の中では、その事業のために資金をいかに調達するかという 財務戦略も、標的顧客をいかに定め、どのようにマーケティング・ミックスを構築する かという意思決定であるマーケティング戦略も 1 個の戦術に過ぎない。マーケティング 戦略を 1 個の戦略と考えれば、製品の開発、価格の設定は、通常、製品戦略、価格戦略 と呼ばれるものの、実質的には 1 個の戦術に過ぎない。 ©株式会社経営教育総合研究所 7 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 16. マーケティング戦略の 手引きとヒント (3) マーケティング戦略の要素に関する用語 ① 需要(demand)…購買力の裏づけのあるウォンツの量、または、そ の社会的総量である 【例】今年の国内の化粧品需要は2兆円を上回る勢いである。 ② 製品(product)…欲求やニーズを満たす目的で市場に提供され、注 目・獲得・使用・消費の対象となるすべてのもののことで、形ある具 体的なもの(有形財 1)の他、サービス・人・場所・組織・アイディア などの(無形財)含まれる 【例】化粧品、軽自動車、対面型キッチン、生命保険、経営コンサル タント、体育館、子会社、事業部、特許権、商標権 ③ サービス(service)…他者に提示できるあらゆる活動またはベネフィ ットのことで、本質的に無形であり、長期的に所有されることは少な い 【例】融資サービス、クリーニング、研修サービス、生命保険 ④ 品質(quality) a. 狭義の品質…欠陥のない状態 【例】「このカメラは3年間一度も故障していない。品質には問題 ないと思うよ」(狭義の品質を満たしている場合) b. 広義の品質…顧客のニーズを満たすことができる製品またはサー ビスの特徴や特色を総合させたもの 【例】「このカメラは室内で遠くからでも子供の顔がばっちり撮れ た。イベントの前に購入して本当に良かったよ。なかなかの品質だ よ」(広義の品質を満たしている場合) ⑤ 交換(exchange)…対価として何かを差し出すことにより、他者から 自らの欲しいものを獲得する行為(マーケティングの中心的概念であ る) 1 財(goods)とは、経済学用語で、人間の物質的・精神的生活にとって何らかの効用が あるものの総称である。経営学や商品学の世界では、製品とほぼ同義語で用いられる。 製品も財も、狭義では、有形の製品または有形財のことのみを指し、広義では、有形・ 無形を問わず広く製品または財を指す。 書籍や論文を読む際には注意が必要である。 「製 品・サービス」と併記されていれば、この場合「製品」は有形の製品を表していること になる。製品(product)と商品(goods/commodity/item/merchandise)にも明確 な違いはない。一般には製造業では製品という用語を用いることが多く、流通業では製 品という用語を用いることが多い。たとえば、小売業では、慣習的に商品回転率という 用語を使うが、「製品回転率」とはいわない。 ©株式会社経営教育総合研究所 8 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 17. マーケティング戦略の 手引きとヒント ⑥ 取引(transaction)…交換を行うために当事者の間で交わされる行為 全体であるである 1 ⑦ 市場(market)…売り手と買い手との間で、製品・サービスについて の取引および交換が行われる場 ⑧ 販売(selling)…製品・サービスを売りさばくこと ⑨ 営業(sales)…営利を目的として事業をいとなむこと 2 3. マーケティング・コンセプトの変遷 企業がマーケティング活動を行う際に基礎となる概念(マーケティング・ コンセプト)には次のような5つがある。 (1) 生産志向(production concept) ① 定義…消費者は便利で、安価な製品を好むため、経営者は生産や流通 の効率化に焦点を当てるべきだとするマーケティング・コンセプト ② イメージ・視点…「とにかく安くたくさん作りたい」という資本家的 視点 (2) 製品志向(product concept) ① 定義…消費者は品質や性能が最も優れた革新的な製品を好むため、企 業は継続的な製品開発に注力すべきであるというマーケティング・コ ンセプト 3 1 取引と交換の概念の違いはわかりにくい。取引のほうが広い概念で、取引の条件や場 所や時間などをすべて含む概念である。取引により、交換は実現する。すなわち、交換 は取引の目的であり、 取引は交換の手段であるといいかえることができる。 コトラーは、 「交換はマーケティングの中心概念であり、取引はマーケティングの測定単位である」 と述べている。 2 販売と営業は、ほぼ同じ意味で使うことも多いが、微妙に意味が違う。本書では、両 者を厳密に区別することはしないが、事前交渉・相談窓口・アフターフォローなどの広 い業務を指す場合には営業(sales)という用語を用い、売買のニュアンスが強い場合に は販売(Selling)という用語と用いることを原則としたい。 3 製品志向マーケティングは、近視眼的マーケティングに陥るおそれがある。近視眼的 マーケティング(marketing myopia)とは、1960 年刊行の『ハーバード・ビジネス・ レビュー』で、レビットが用いた言葉で、従来欧米企業で支配的な考えであった製品志 向マーケティングではなく、顧客志向マーケティングを実践すべきであるという主張で ある。レビットの主張は、マーケティング史上、コペルニクス的転回となり、人気を博 した。しかし、実際に企業が製造からマーケティングへ企業活動の中心を移したのは、 モノ余りが問題となった 1980 年代に入ってからである。この主張は依然として、現代 のビジネスに大きく影響を与えている。顧客志向マーケティングを 40 年以上先取りし ©株式会社経営教育総合研究所 9 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 18. マーケティング戦略の 手引きとヒント ② イメージ・視点…「良い製品さえ作れば顧客は買ってくれるはずだ」 という技術者的・職人的視点 (3) 販売志向(selling concept) ① 定義…消費者は企業が販売に力を入れれば、その分より多くの製品を 購買するはずであるというマーケティング・コンセプト ② イメージ・視点…「うまく売れば、顧客は買ってくれるはずだ」とい うセールスマン的視点 マーケティング・コンセプトの変遷 段階 視点 イメージ 前提条件 目標 とにかく安くたく  利潤・効率的生 ① 生産志向 資本家的視点 - さん作りたい 産 良い製品さえ作れ  利潤 技術者的・職 ② 製品志向 ば顧客は買ってく  効率的生産  よい製品・高い 人的視点 れるはずだ 付加価値 うまく売れば、顧客  効率的生産  利潤 セールスマン ③ 販売指向 は買ってくれるは  よい製品・高い  販売促進・営業 的視点 ずだ 付加価値 力  効率的生産 買ってもらうため  よい製品・高い  利潤 マーケッター には、 (ニーズ) 顧客 ④ 顧客志向 付加価値  顧客ニーズ・顧 的視点 を知らなければな  販売促進・営業 客満足度 らない 力  効率的生産  よい製品・高い 顧客だけではなく、  利潤 付加価値 市民運動家的 広く社会全体の幸  社 会 全 体 の 幸 ⑤ 社会志向  販売促進・営業 視点 せにも目を向けな 福・顧客の長期 力 ければならない 的幸福  顧客ニーズ・顧 客満足度 出典:経営教育総合研究所 た貴重な理論である。 ©株式会社経営教育総合研究所 10 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 19. マーケティング戦略の 手引きとヒント (4) 顧客志向(marketing concept) ① 定義…顧客が企業の製品を購入するのは、その製品が顧客ニーズにい かに対応し、満足を提供してくれるかにかかっているとするマーケテ ィング・コンセプト ② イメージ・視点…「買ってもらうためには、顧客(ニーズ)を知らな ければならない」というマーケッター的視点 (5) 社会志向(societal marketing concept) ① 定義…企業は消費者の短期的なニーズに対応するだけではなく、消費 者を含む社会の長期的な幸福を維持・向上させ、両者により多くの満 足を提供しなければならないとするマーケティング・コンセプト ② イメージ・視点…「顧客だけではなく、広く社会全体の幸せにも目を 向けなければならない」という市民運動家的視点 4. マーケティングの中心概念の変化 (1) 増大する顧客価値と顧客満足の重要性 ① 顧客価値(customer value)…製品を所有し使用することによって顧 客が得る総合的な価値と、その製品を獲得するためにかかったコスト との差 【例】「10万円払って予備のカメラを購入しておいてよかった。メイ ンのカメラは故障したが、無事、撮影を終えることができた」(支払 った10万円というコストと顧客が獲得した総合的な価値との差に顧 客が価値を感じている場合) ② 顧客満足(customer satisfaction)…ある製品に抱いていた買い手の 期待と、それを手にしたときに感じられるパフォーマンス(性能や機 能)が一致している度合い 1 【例】「はじめはどんなレストランかと不安だったが、誕生日プレゼ ントでワインを出してくれるなんて思っても見なかったよ」(期待を 上回るパフォーマンスに対し、顧客が感謝している場合) 1顧客の満足度は不満か満足かの二者択一で論じられることが多いが、少なくとも3つ の段階がある。①ディスサティスファクション(不満足状態・マイナス状態)、②アン スサティスファクション(不満でもないが満足もしていない状態・プラスマイナスゼロ ©株式会社経営教育総合研究所 11 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 20. マーケティング戦略の 手引きとヒント (2) 増大する関係性の重要性 ① リレーションシップ・マーケティング(relationship marketing)… 顧客との継続的な対話と緊密な取引関係を通して顧客のニーズを把 捉し、それを、着実に満たしていくことによって顧客満足を達成しよ うとするマーケティング ② マイクロ・マーケティング(micro marketing)…セグメントをきわ めて細かく分化したマーケティングである 1 ③ ワントゥワン・マーケティング(one-to-one marketing)…リレーシ ョンシップ・マーケティングのもっとも高度化した形態で、消費市場 の多様化・個性化の進展に対応し,個客のニーズを満たすことを目標 とするマーケティング ④ データベース・マーケティング(database marketing)…IT化の進 展を背景に、顧客または見込み客のデータベースの継続的大量蓄積、 迅速な処理および高度の分析などを通して可能になった精緻な顧客 管理を基盤とするマーケティング 2 ⑤ ホリスティック・マーケティング(holistic marketing)…顧客の利 益や満足を起点とし、自社の経営資源と事業パートナーなどミクロ環 境を有機的・統合的に組み合わせて、全社的視点から長期的な展開を 図るマーケティング 状態)、③サティスファクション(満足状態・プラス状態)である。①の状態を②の状 態に引き上げる要因を顧客満足度の必要条件(衛生要因)と呼び、②の状態を③の状態 に引き上げる要因を顧客満足度の十分条件(動機づけ要因)と呼ぶ。たとえば、銀行で 愛想のない窓口担当者に遭遇すれば、顧客は①の状態に陥る。その後、窓口担当者の改 心と努力により、愛想が良くなったとすれば、顧客は②の状態に移行するが、③の状態 にまでは移行しない。「銀行の窓口担当者の愛想がいいのは当たり前のことだ」と感じ るためである。次に、普通に銀行を利用する限り、待ち時間がさほど長くなければ、顧 客は②の状態にある。その後、銀行の経営改善で、待ち時間を1分以内にするというサ ービスがスタートすれば、顧客は②の状態から③の状態に移行する。他の銀行が追随す るまでは、このサービスはこの銀行の競争優位の源泉となり、顧客の満足度は高く、口 コミでこのサービスが広まる可能性も高い。銀行の場合、窓口担当者の愛想は顧客満足 度の必要条件(衛生要因)であり、待ち時間1分以内サービスの実施は十分条件(動機 づけ要因)となる。 1 マイクロ・マーケティングの究極の形が一人ひとりの顧客に対する個別対応を旨とす るワントゥワン・マーケティングである。ミクロマーケティングとスペルは同じである。 2 データベース・マーケティングは、リレーションシップ・マーケティングの基盤とな ることが多い。 ©株式会社経営教育総合研究所 12 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 21. マーケティング戦略の 手引きとヒント 5. 新しいマーケティングの定義 (1) 2007年のAMA(アメリカマーケティング協会)の定義 ① 定義…「マーケティングとは、顧客、依頼者、協力者、社会全体にと って価値を有する提供物を創造し、伝達し、販売し、交換するための 活動、一連の社会制度、過程である」 ② 特徴 a. 「交換」という用語を再び採用した b. 「社会全体」という点を強調した c. 2004年の定義で提示された「顧客関係」や「利害関係者」という用 語は、新定義では除かれている d. 活動・制度・プロセスであることを強調している (2) 本書におけるマーケティングの定義 ① 定義…「マーケティングとは、個人や組織が、標的となる顧客を選択 し、彼らのために価値を創造し、伝達し、自らと顧客および社会との 良好な関係を構築するために行う活動プロセスの総称である」 ② 特徴 a. 前段に、標的顧客の設定、価値創造、価値伝達という3つの要素が 入っている点 b. 価値創造・価値伝達を手段あくまでもととらえ、「良好な関係を構 築」という最終的な目標について述べている点(良好な関係の中に は顧客満足度の向上といった概念が含まれている) c. 対象を標的顧客のみに限定せず、社会も含んでいる点 d. 計画・実行・管理を含む概念とするため、プロセス全体に着目して いる点 (3) 本書におけるマーケティング戦略の定義 標的顧客の設定とマーケティング・ミックスの構築を中心に行われるマー ケティングについての計画・実行・管理・評価のプロセス。 ©株式会社経営教育総合研究所 13 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 22. マーケティング戦略の 手引きとヒント II. マーケティング戦略の プロセス 1. マーケティング戦略のプロセス 企業のマーケティング戦略は、次のような6段階のプロセスを経て、完了 する。 ① 事業理念の確認 ② 事業環境の調査・分析 ③ 標的市場の設定 ④ マーケティング目標の設定 ⑤ マーケティング・ミックスの開発 ⑥ マーケティング計画の作成・実施・統制・評価 2. 事業理念の確認 (1) 事業理念の定義 経営者や事業責任者が抱いている理想・強い想い・ビジョン・哲学・信条 のようなものである。 (2) 事業理念の確認についての留意点 ① 事業理念の作成・想起・修正およびその確認 ② 伝達手段の見直しを含む関係者への発信と到達の確認である 3. 事業環境の調査・分析 (1) 事前環境の調査・分析の前提 事業環境の調査・分析に入る前に、以下の3つについて学んでおいたほう がよい。 ① 事業環境の調査・分析に役立つ理論的フレームワーク(後述) ② 消費者および企業の購買行動についての仮説(後述) ©株式会社経営教育総合研究所 14 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 23. マーケティング戦略の 手引きとヒント ③ 統計学の基礎知識(本書では省略) (2) 事前環境の調査・分析のプロセス ① 調査目的の明確化 ② 調査の計画 ③ 調査の実行 ④ 調査結果の分析 ⑤ 調査結果の報告 4. 標的市場の設定 標的市場の設定は、次の3つのステップを経て行う。この3つのステップ をSTPと呼ぶ。 (1) 市場細分化(セグメンテーション;market segmentation) ① 市場を異なったニーズ・特徴・行動様式に基づいた明確なグループに 区分けすること(それぞれのグループごとに別個の製品やマーケティ ング・ミックスが必要とされる場合がある) ② 市場セグメント(market segment)…一定のマーケティング活動に 対して、同様の反応を示す消費者のグループのこと (2) 市場ターゲティング(market targeting) ① 各市場セグメントの魅力を評価し、参入すべき1つ、または複数のセ グメントを選択するプロセス ② 企業は利益をあげながら最大の顧客価値を生み出し、それを長期にわ たって維持できるようなセグメントを選ぶべきである (3) 市場ポジショニング(market positioning) ① 標的とする消費者の心の中に、競合する製品と比較して、明確で、独 自の、望ましい位置を自社の製品に確保すること ©株式会社経営教育総合研究所 15 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 24. マーケティング戦略の 手引きとヒント 5. マーケティング目標の設定 (1) マーケティング目標の設定 抽象的な事業理念はその実現のために、具体的で、測定可能なマーケティ ング目標に転換されなければならない 1。 (2) マーケティング目標の設定項目 通常、マーケティング目標は、データ項目と評価方法を組み合わせて設定 される。 ① マーケティング目標のデータ項目 a. 財務関連項目 【例】株価・売上高・売上総利益(粗利益)・営業利益・経常利益・ キャッシュフロー・新製品売上高 b. 市場・顧客関連項目 【例】市場シェア、相対的市場シェア、新規顧客数、顧客数、見込 み客数、顧客単価、マインド・シェア、顧客満足度 c. 生産・業務関連項目 【例】新製品開発期間・付加価値・売場1㎡当たり売上高・売場1 ㎡当たり利益・従業員1人当たり売上・従業員1人当たり利益・設 備生産性 ② マーケティング目標の評価方法 【例】実数値・対前年上昇率・目標達成率・他社との比較 ③ 実際のマーケティング目標の事例 a. 「首都圏1都3県における自社市場シェアの2%拡大」 b. 「経常利益の対前年5%上昇」 c. 「全支店の売上の下位目標達成」 d. 「クレーム達成率の前年比30%減少」 e. 「平均製品開発期間の10日間圧縮」 f. 「顧客満足度アンケートの2ポイントアップ」 1マーケティング目標は、「測定可能」であるから、数値で表すことができるデジタル なものでなければならない。この測定可能な目標を連鎖化し、事業戦略の管理手法とし て昇華させた理論・技法をバランス・スコア・カード(balanced score card)という。 これについては後述しよう。 ©株式会社経営教育総合研究所 16 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 25. マーケティング戦略の 手引きとヒント (3) マーケティング目標設定のポイント ① マーケティング目標の目標設定法に決まりはないが、次のようなルー ルに基づいて目標を設定している企業が多い a. 複数目標設定の原則…もっとも高い成果を出す構成員の予想成果 を上限に、下位目標、中位目標というように、数段階の目標を設定 する b. 過半数達成予測の原則…下位目標の下限は、構成員の過半数が達成 できる比較的難易度の低い目標を設定する 1 ② マーケティング目標は1つである必要はなく、複数の目標を同時に設 定してよい 【例】「売上高対前年10%アップ、売上高経常利益率10%の達成」 (4) マーケティング目標の修正 企業によっては、事業環境の調査・分析を行う前あるいは標的市場を決定 する前に、大まかなマーケティング目標を設定する場合がある。その場合、 事業環境の調査・分析後に、目標を修正すべきである。 ① 量的な修正の例 【例】「事業環境の調査・分析の結果、商圏内の人口密度は増加傾向 を示していることがわかった。したがって、売上高目標は当初考えて いた1,500万円から2,000万円に増加しよう」(上方修正の例) 【例】「事業環境の調査・分析の結果、自店の近隣に大型店が出店す ることが判明した。競争回避は難しいし、協力のための話し合いが可 能かどうかは現時点では不明なので、念のため、売上高目標は当初考 えていた9,500万円から9,000万円縮小しておこう」(下方修正の例) 1「過半数達成予測の原則」の根拠理論は、2つある。一方は、行動科学者であり、モ チベーションについての研究者として知られるマクレランドの達成動機説である。彼に よれば、人間は、少し努力すれば手が届きそうな目標に対して、もっとも動機づけられ るという。今一方は、マクレランドよりも前の時代に活躍した行動科学者であるマズロ ーの5段階欲求説である。マズローは、人間の欲求は、低次のものから高次のものまで、 ①生理的欲求、②安全欲求、③社会的欲求(所属の欲求)、④自尊の欲求、⑤自己実現 の欲求という5段階に分けることができるとした。彼の考え方は、後の多くの行動科学 者たちに影響を与えた。前述したマクレランドもマズローの後継者の一人である。この うち、③の社会的欲求(所属の欲求)とは何らかの組織やグループに属していたいとい う欲求である。人は、孤独を嫌う。できることなら、少数派(目標未達成者のグループ) ではなく、多数派(目標達成者のグループ)に属していたいと思うであろう。 以上2つの行動学者の研究をもとに、マーケティング目標の設定方法を原則化したも のが、「過半数達成予測の原則」である。 ©株式会社経営教育総合研究所 17 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 26. マーケティング戦略の 手引きとヒント ② 質的な修正の例 【例】「事業環境の調査・分析の結果、他社の新規参入が激化するこ とが判明した。今後は、市場の食い合いになることが予想される。当 初考えていた市場シェアだけを目標とするのではなく、マインド・シ ェアも目標として設定し、将来の市場シェアを予想しながら、戦略を 柔軟に修正していこう」(目標項目の追加の例) 【例】「今まで利益中心の経営を行ってきたが、事業環境の調査・分 析の結果、株主は利益よりもキャッシュフローを重視する傾向にある ことが判明した。目標は利益ではなく、キャッシュフローで設定しな おそう」(目標項目の変更の例) 6. マーケティング・ミックスの開発 マーケティング・ミックス(marketing mix)の開発は、マーケティング 戦略の中心部分であり、設定した標的顧客に合わせてマーケティング戦略の 各要素を組み合わせる段階である。伝統的には4Pがフレームワークとして 用いられることが多かったが、これを修正したフレームワークが登場してい る。 (1) 古典的マーケティング・ミックス(4P) ① 製品(product)・価格(price)・流通(Place)・プロモーション (promotion)といった4つの変数(4P)からなる、標的市場にお いて望ましい反応を得るために企業が組み合わせるコントロール可 能で戦術的なマーケティング・ツールの集合のこと ② 4Pの要素 a. 製品(product)…企業が標的市場に提供する商品とサービスとの 組み合わせ b. 価格(price)…その製品を獲得するために顧客が支払わなくてはな らない金銭の額 c. チャネル(流通)(place/channel)…標的顧客が製品を入手でき るようにするために企業が行う活動 d. プロモーション(promotion)…製品の長所を伝え、標的顧客が購 入する気持ちになるように説得する活動 ©株式会社経営教育総合研究所 18 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 27. マーケティング戦略の 手引きとヒント (2) 顧客志向型マーケティング・ミックス(4C) ① 4Pから4Cへ a. ラウターボーンは、従来の4Pは売り手志向のマーケティング・ミ ックスであると批判し、顧客(買い手)志向のマーケティング・ミ ックスとして4Cを提案した b. 企業の担当者は、最初に4Cを十分検討してから、それに基づき4 Pを構築すべきである ② 4Cの要素 a. 顧客ソリューション(customer solution) 1 b. 顧客コスト(customer cost) c. 利便性(convenience) d. コミュニケーション(communication) (3) 価値重視型マーケティング・ミックス(2V) ① 増大する価値の重要性 a. 2004年のAMAによるマーケティングの定義では、製品・価格とい う用語が用いられず、代わりに価値という用語が用いられている b. コトラーの最近の著書も、随所で価値(顧客価値)に言及している c. 現在の企業間競争は、以下の2つの方向が中心となっている  競合他社よりも優れた価値を創造し、顧客・社会の満足度の向上 (価値創造競争) 【例】「CPUを2つにした1つのパッケージに2つのプロセッ サコアを集積したCPUの供給が始まったおかげで、演算速度が 向上したし、フリーズの回数も激減したな」(製品の魅力の向上 による価値の創造) 2 【例】かつては十万円以上した1TBのハードディスク・ドライ ブが3万円で買えるようになった。技術革新のスピードには驚か されるな」(価格の下落による価値の創造) 3 1 4Cについてはコトラーも提案している。ほぼ、ラウターボーンと同様であり、①顧 客にとっての価値(Customer Value)、②顧客の負担(Cost to the Customer)、③入 手の容易性(Convenience)、④コミュニケーション(Communication)の4つである。 2 この事例からもわかるとおり、価値創造戦略の第1番目の手段は、製品の魅力の向上 である。 優れた製品が世に出れば、 それはすなわち、 顧客にとっての価値の創造である。 3 この事例からもわかるとおり、価値創造戦略の第2番目の手段は、製品の価格の下落 (値下げ) である。優れた製品がより安い価格で提供されるようになれば、 これもまた、 ©株式会社経営教育総合研究所 19 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 28. マーケティング戦略の 手引きとヒント  競合他社よりも多くの価値の存在を訴え、届けることによる顧 客・社会の満足度の向上(価値伝達競争) 【例】「コピー用紙などの事務用品の翌日配送が一般化し、急な 需要にも対応できるようになったし、社内在庫が減少し、事務所 の実質的なスペースが広くなった」 ② 2Vの要素…従来、マーケティング・ミックスは4Pまたは4Cとい う区分が一般的であったが、価値に焦点を当てた場合、4P(4C) はさらに大きく、価値の創造と価値の伝達という2つのカテゴリー (2V)に集約できる 1 4P・4C・2V 4P 4C 2V 製品 顧客ソリューション (product) (customer solution) 価値創造 (value generation) 価格 顧客コスト (price) (customer cost) 販売促進 利便性 (promotion) (convenience) 価値伝達 (value transmission) チャネル コミュニケーション (place) (communication) 出典:経営教育総合研究所 顧客にとっての価値の創造となる。 1 マーケティングの活動領域を、2分割するという考え方は、実は、マッカーシーの4 Pよりも古くから存在する。たとえば、フレイは、マーケティングを、①提供物(製品、 包装、ブランド、価格、サービス 等)と、②手段(広告、人的販売、販売チャネル、 販売促進、パブリシティ 等)という2つの要素に区分している。 ©株式会社経営教育総合研究所 20 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 29. マーケティング戦略の 手引きとヒント a. 価値創造(value generation)  従来の製品戦略と価格戦略に該当する部分である  従来、両者は別の戦略として扱われることが多かったが、価値の 創造という概念で包括することができる b. 価値伝達(value transmission)  従来のコミュニケーション戦略(プロモーション戦略)とチャネ ル戦略に該当する部分である  コミュニケーション戦略の本質は価値の情報流通にあり(それゆ え、本来ならば情報流通戦略と呼ぶべきである)、チャネル戦略 の本質は価値の物的流通にある(それゆえ、物的流通戦略と呼ぶ べきである) 7. マーケティング計画の作成・実施・統制・評価 (1) マーケティング計画の作成 ① 標的顧客の設定やマーケティング・ミックスの決定が完了し、マーケ ティング戦略が決定したら、これを実行に移すための具体的な計画を 策定する ② 具体的には、予算・組織変更・人員配置・スケジュール計画に落とし 込む (2) マーケティングの実施・統制 ① マーケティング計画を関係者に告知し、具体的な作業を各組織・各部 署・各担当者に割り振り、実行に移す ② 経営者・事業責任者およびマーケティング部門は、途中経過の管理・ 統制を行い、不測の事態・予想外のトラブルが発生した場合、マーケ ティング計画の修正しつつ、計画の遂行を継続する ③ 計画が長期に及ぶ場合、随時、進捗状況に関する途中経過を記録・確 認する(【例】週間報告、月間報告、半期報告) (3) マーケティングの評価 ① マーケティング計画の実施後、目標達成度およびその差異分析を行い、 マーケティング戦略についての評価を行う ©株式会社経営教育総合研究所 21 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 30. マーケティング戦略の 手引きとヒント ② 評価内容は経営者に迅速・正確に報告する ③ 戦略上改善すべき点は、次のマーケティング戦略策定における情報と して記録する ©株式会社経営教育総合研究所 22 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 31. マーケティング戦略の 手引きとヒント 2. 事業環境の調査・分析 ©株式会社経営教育総合研究所 23 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 32. マーケティング戦略の 手引きとヒント I. 事業環境 1. 事業環境の定義と分類 (1) 事業環境(business environment)の定義 マーケティング環境とは、企業のマーケティング戦略に影響を及ぼす、企 業の内外における関係者や要因の総称である。 (2) 事業環境の分類 ① 外部環境と内部環境 a. 企業の外側の環境か、内側の環境かという分類である b. 外部環境はさらに、マクロ環境とミクロ環境とに細分化される ② 有利環境と不利環境 a. 企業経営またはマーケティング戦略の遂行にあたり、プラスに作用 する環境か、マイナスに作用する環境かという視点に基づく分類で ある b. プラスの作用かマイナスの作用かという区分は、主観による場合も 考えられるが、客観的な判断基準があればそれに従うべきである 1 1 VRIO分析(後述)を提唱する経営戦略論の研究者のJ.B.バーニーは、この基 準に経済性を用いることを提唱している。「経済性がある」とは、次の2つの条件のい ずれかを満たしている場合である。 ① 売上の増加、収入の増加、顧客数の増加、客単価の増加などに貢献する。 ② 原価・経費の削減、支出の削減、顧客脱落の歯止め、客単価減少の歯止めなどに貢 献する。 経済性があれば、マーケティング戦略にプラスの環境(有利環境)に該当するし、経 済性がなければ、マーケティング戦略にプラスの環境(不利環境)に該当する。 ©株式会社経営教育総合研究所 24 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 33. マーケティング戦略の 手引きとヒント 2. 外部環境と内部環境 外部環境と内部環境 マクロ環境 外部環境 マーケティング ミクロ環境 環境 内部環境 (1) 外部環境 外部環境とは、マーケティング環境のうち、マーケティング環境のうち、 企業の外側(社外)の環境である。 ① マクロ環境(macro environment)…外部環境のうち、企業からの距 離が遠く、企業が統制(コントロール)しにくい環境 1 【例】人口動態、経済、規制、法律、自然環境、技術、文化 等 a. 人口動態的環境(demographic environment)…人口規模・人口密 度・地域・年齢 2・性別・人種・職業などに関する環境 3 b. 経済的環境(economic environment)…消費者の購買力や支出パタ ーンに影響を与える諸要因 1 企業のミクロ環境の中でも、 特に重要な、①顧客(customer) ②競合企業 、 (competitor)、 ③協力企業(collaborator)の3つは、3Cと呼ばれる。後述する事業環境の調査・分 析のプロセスの情報収集段階では、3Cについての情報は特に重点的に収集する必要が ある 。 2 花王のヘアケアブランド「セグレタ」は、ターゲットを「40 代以上の女性」と明示し て、商品の販売を行っている。中高年女性の場合、自身の年齢を意識するのを嫌うとい う特性があるので、年齢を明示すると売れないという常識が業界の中にあった。花王は あえて、これを逆手に取った。500mlサイズが実勢価格で 1,000 円以上。キャッチコ ピーは「大人だけが 手に入れられる 艶がある。」。本事例は、後述する威光価格(名 声価格)のひとつと捉えていただいてもよいだろう。 3 人口動態は、人口動態学(demography)によって研究されている。人口動態学とは、 規模・密度・地域・年齢・性別・人種・職業などの統計から人口を研究する学問領域で ある。 ©株式会社経営教育総合研究所 25 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 34. マーケティング戦略の 手引きとヒント c. 自然環境(natural environment)…経営者またはマーケッターが 情報として必要とする、または、企業の遂行するマーケティング戦 略上、影響を及ぼす天然資源 d. 技術的環境(technological environment)…新製品開発や市場開拓 の機会をもたらすような新しい技術を生む諸要因 e. 政治・法律的環境(political and legal environment)…社会にお けるさまざまな組織や個人に影響を与え、その行動を制限する法律 1 ・政府機関・地方公共団体・圧力団体 2 f. 文化的環境(cultural environment)…社会の基本的な価値観、知 覚、選好、態度に影響を受ける制度などの要因である ② ミクロ環境(micro environment)…外部環境のうち、企業からの距 離が近く、企業がある程度統制(コントロール)しうる環境 3 a. 供給業者(supplier)…企業が製品を生産しサービスを提供するた めに必要とする資源の供給元のことである b. 仲介業者(intermediaries)…最終の買い手に対する製品のプロモ ーション、販売、配送に関して企業を支援する業者であり、中間業 者、物流業者、サービス業者・代理店、金融機関等を含む c. 顧客(customer/client 4)…消費財市場、生産財市場、流通市場、 行政機関市場、国際市場における自社製品・サービスの買い手であ る 1 マーケティングに影響を及ぼす日本の主な法律には、独占禁止法・不正競争防止法・ 景品表示法・製造物責任法・消費者契約法・特定商取引法などがある。この他、業界別 に適用される特別法である、いわゆる業法が定められている。たとえば、化粧品業界で は薬事法が、中古車販売業界では古物営業法が、銀行業界であれば銀行業法が定められ ている。 2 特定議案の通過または通過阻止を目的として、特定組織の代理人が行う陳情・説得な どの院外運動をロビー活動(ロビーイング)(lobbying)という。 3 マーケティングの成否の 「鍵」 となるのがミクロ環境である。前述したマクロ環境は、 企業が統制するのが難しい統制不可能要因である。後述する内部環境は、企業の内部の 環境であるから、経営者やマーケッターにとって統制は容易であり、統制可能要因とい われる。それに対し、ミクロ環境は、企業が努力すれば統制可能だという準統制可能要 因である。いわば、経営者やマーケッターの「腕の見せ所」である。統制、すなわち、 マネジメントの上手下手の差は、ミクロ環境においてもっともはっきりする。 4 消費者(consumer)は、消費財の場合に用いる言葉なので、ここではより広範な意味 を持つ顧客 (customer/client)という用語を用いた。消費者は顧客の下位概念であり、 要素である。 ©株式会社経営教育総合研究所 26 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 35. マーケティング戦略の 手引きとヒント d. 競合他社(competitor)…市場における自社製品・サービスの提供 にあたり、顧客・利潤の獲得をめぐって、自社とせりあい、競い合 う企業 (2) 内部環境 内部環境とは、マーケティング環境のうち、企業の内側(社内)の環境の ことである。 ① 企業の部門…経営陣、財部部門、研究・開発(R&D)部門、購買部 門、製造部門、経理部門が含まれる。 ② 企業の階層…代表取締役・取締役会(トップ・マネジメント)、部門 長・中間管理職(ミドル・マネジメント)、中堅社員(ロワー・マネ ジメント)、正規従業員、フロー型人材(パート・アルバイト) ③ その他の要素…企業文化、経営者・従業員の価値観、組織形態、企業 イメージ、製品、ブランド 3. 有利環境と不利環境 (1) 有利環境(advantage environment) 社内・社外を問わず、企業にとって有利な環境である。 【例】「わが社には、今後事業化が見込まれる特許権が多数存在する」 【例】「今回の法改正で、規制が緩和され、わが社の事業の自由度が増した」 (2) 不利環境(disadvantage environment) 社内・社外を問わず、企業にとって不利な環境である。 【例】「わが社は、合併による、2つの会社が統合したため、さまざまな点 で人間関係上のトラブルやコンフリクト(衝突・葛藤)が発生する」 【例】「競合するA社のテレビ広告の評判がよく、A社製品の指名購買が増 加している」 ©株式会社経営教育総合研究所 27 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 36. マーケティング戦略の 手引きとヒント II. 事業環境の調査・分析の フレームワーク 1. SWOT分析 (1) 概要 ① 企業をとりまく環境を、有利か不利か、内部か外部かという2つの軸 を用いて分類する分析フレームワーク ② 1960年代にスタンフォード研究所(SRI)のハンフリーらにより企 業の長期計画の失敗理由を研究する中で考案された (2) SWOTの意味 ① 強み(Strength)…企業の目標達成に貢献する企業内部の特質 ② 弱み(Weakness)…企業の目標達成の障害となる企業内部の特質 ③ 機会(Opportunity)…企業の目標達成に貢献する企業外部の特質 ④ 脅威(Threat)…企業の目標達成の障害となる企業外部の特質 SWOT分析 有利環境 不利環境 強み 弱み 内部環境 Strength Weakness 機会 脅威 外部環境 Opportunity Threat ©株式会社経営教育総合研究所 28 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 37. マーケティング戦略の 手引きとヒント 2. PEST分析 (1) 概要 ① 重要なマクロ環境を洗い出すためのフレームワーク ② 現在や将来の事業活動に影響を及ぼす可能性のあるマクロ環境要因 を導き出す際に用いられる ③ 政治的(P=Political) 経済的 、 (E=Economic) 社会的 、 (S=Social)、 技術的(T=Technological)の頭文字を取った造語 ④ 上記4つのアプローチで外部環境を分析する (2) PESTの具体例 ① Political:政治的環境要因 a. 政策・法規制の改変 b. 裁判制度、判例 c. 政治体制の変化 ② Economic:経済的環境要因 a. 景気動向・経済成長率 b. 物価(インフレーション・デフレーション) c. 市場(金利・為替・株価 ③ Social:社会的環境要因 a. 世論・流行・トレンド b. 教育水準 c. 治安・安全保障 d. 宗教・言語 e. 自然環境 f. 人口、構成比(男女、年齢) ④ Technological:技術的環境要因 a. 技術革新(イノベーション) b. 新技術の普及度 c. 特許・実用新案 ©株式会社経営教育総合研究所 29 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 38. マーケティング戦略の 手引きとヒント 3. 3C分析 (1) 概要 ① 重要なミクロ環境を洗い出すためのフレームワーク ② 現在や将来の事業活動に影響を及ぼす可能性のあるミクロ環境要因 を導き出す際に用いられる ③ 顧客(Customer) 競合他社 、 (Competitor) 協力企業 、 (Collaborator) の頭文字を取った造語 1 ④ 上記3つのアプローチで外部環境を分析する (2) 3C分析の具体例 ① 顧客(Customer) a. 顧客のライフスタイル b. 顧客にニーズ c. 顧客の年齢の変化 ② 競合他社(Competitor) a. 競合他社の持つ顧客ネットワーク b. 競合他社の持つ特許・実用新案 c. 競合他社の抱える問題点・課題 ③ 協力企業(Collaborator) a. 協力企業の持つ商品開発力 b. 協力企業の持つ販売力 c. 協力企業をめぐる脅威 4. バーニーのVRIO分析 (1) 概要 ① 起源…J・B・バーニーが提唱 1顧客、競合他社の他に、自社(Company)を入れ、3Cという場合もある。また、価 格設定における3Cの場合は、顧客、競合他社の他に、コスト(Cost)を入れるのが普 通である。 ©株式会社経営教育総合研究所 30 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 39. マーケティング戦略の 手引きとヒント ② 定義…企業が従事する活動に関して発すべき4つの問いによって構 成される、リソース・ベースト・ビュー志向の戦略分析フレームワー クのこと VRIO分析の4つの問いかけ 問いかけの段階 具体的な問いかけ 経済的価値 その経営資源が何らかの経済的価値(【例】利益につなが (Value) る、コスト削減につながる)か? 稀少性 その経営資源を現在コントロールしているのは自社を含む (Rarity) 極少数の企業であるか? 模倣困難性 その経営資源を保有していない企業はその経営資源を獲得 (Difficult to Imitate あるいは開発するのに多大なコストを要するか? /Imitability) 組織 企業が保有する価値があり稀少であり模倣コストの大きな (Organization) 経営資源を、組織全体で使いこなせる仕組みがあるか? 出典:『企業戦略論(上 基本編)』(J.B.バーニー著 ダイヤモンド社) をもとに作成 VRIO分析による強みの6分類 VRIO分析の各問いかけに 対する回答 強みの分類 経済的 模倣 希少性 組織 価値 困難性 経済的価値はあるが、組織として活用してい ① Yes ない強み 経済的価値があり、組織として活用している ② Yes Yes 強み 一時的競争優位の源泉となりうるのに、組織 ③ Yes Yes として活用していない強み 一時的競争優位の源泉として、組織として活 ④ Yes Yes Yes 用している強み 持続的競争優位の源泉となりうるのに、組織 ⑤ Yes Yes Yes として活用していない強み 持続的競争優位の源泉として、組織として活 ⑥ Yes Yes Yes Yes 用している強み 出典:経営教育総合研究所 (2) 活用法 企業の強みに優先順位をつけ、自社の持続的競争優位の源泉を発見する。 ©株式会社経営教育総合研究所 31 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 40. マーケティング戦略の 手引きとヒント 5. ポーターの5つの競争要因 (1) 概要 企業の競争戦略を考える前提として、業界内競争・供給者・需要者・新規 参入・代替品という5つの視点で検討するフレームワークである。 (2) 活用法 ① 外的環境(業界構造)の分析に利用される ② 企業の見えない脅威、特に競争要因を発見する際に利用される 5つの競争要因 【新規参入】 新規参入の脅威 【業界内競争】 【売り手】 【買い手】 ポジショニング 売り手の交渉力 争い 買い手の交渉力 【代替品】 代替品の圧力 出典:『競争優位の戦略』(M.E.ポーター著 ダイヤモンド社) ©株式会社経営教育総合研究所 32 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 41. マーケティング戦略の 手引きとヒント 6. 見えざる資産を発見する7つの視点 (1) 7つの視点(seven positions) ① 起源…ポーターの提唱した5つの競争要因をもとに、自社の見えざる 資産(invisible asset)を発見するための7つの視点として拡張した 分析フレームワーク 7つの視点 異業種・異業態 過去の自社 業界内 売り手 自社 買い手 仕入先・ 顧客 原材料供給者 得意先 大手の競合 同規模または 小規模の競合 代替品供給者 出典:「DREAに基づく事業戦略策定」(経営教育総合研究所) ② 7つの視点 a. 自社よりも大手の競合他社の立場から見たら、自社の当該事業はど こが恐ろしいか b. 自社と同規模あるいは小規模の競合他社の立場から見たら、自社の 当該事業はどこが恐ろしいか c. 売り手(仕入先・原材料供給業者)の立場から見たら、自社の当該 事業はどこに魅力があるか ©株式会社経営教育総合研究所 33 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 42. マーケティング戦略の 手引きとヒント d. 買い手(顧客・得意先)の立場から見たら、自社の当該事業はどこ に魅力があるか e. 異業種・異業態の立場から見たら、自社の当該事業はどこが優れて いるか f. 当該事業が他社の代替品となっている場合はないか g. 過去の自社から見て優れている点はどこか ③ 5つの競争要因との違い a. 業界内競争を自社よりも大規模の競合、自社と同規模か小規模の競 合の2つに分解している点 b. 5つの競争要因にはない過去の自社との比較という視点が入って いる点 7. DREAにおける環境分析 (1) DREA(Domain Re-definition based on Environmental Analysis) ① 定義…環境分析に基づく事業領域再定義法の略であり、SWOT分析、 VRIO分析、5つの競争要因といったさまざまな環境分析を応用・ 転用し、事業の問題点・課題を的確に把握し、事業ドメインを再定義 し、中期経営計画の土台を固めるための一種のロジカル・シンキング 手法 ② フロー…DREAは次の4段階からなる(このうち、AD分析とゲシ ュタルト分析は、事業環境の調査・分析のフレームワークに該当する) DREAのフロー 段 階 内 容 ① 事業理念の確認 事業の理想はきちんと掲げられているか ② AD分析 事業を巡る現実は正確に把握されているか ③ ゲシュタルト分析 明日の事業の姿をつくるためのヒントは何か ④ 拡張型ドメイン・チャートの策定 明日の事業の姿をどこまで具体化できるか 出典:「DREAに基づく事業戦略策定」(経営教育総合研究所) ©株式会社経営教育総合研究所 34 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 43. マーケティング戦略の 手引きとヒント (2) AD分析 ① 定義…後述するゲシュタルト分析と組み合わせて用いられるDRE Aにおける環境分析法のひとつで、事業環境情報を、自社にとって有 利 な 要 因 ( advantage要 因 ; A チ ー ム ) と 自 社 に と っ て 不 利 な 要 因 (disadvantage要因;Dチーム)とに分類する方法である ② 目的…事業を巡る現実を正確に把握すること ③ 特徴…SWOT分析を簡素化し、柔軟性を高めた分析方法である (3) ゲシュタルト分析 ① 定義…前述するAD分析と組み合わせて用いられるDREAにおけ る環境分析法のひとつで、整理されたAチーム・Dチームの各要因を 見ながら、Aチームの要因を使ってなんとかなりそうなDチームの要 因の組み合わせ(ゲシュタルト 1)を見つけていくことである ② 目的…ドメイン(明日の事業の姿)をつくるためのヒントを探すこと ③ 手順 a. 適切なAチーム要因・Dチーム要因の組み合わせ(ゲシュタルト) を発見する b. その組み合わせを問題点としてとらえ、課題に転換する 1ゲシュタルト(Gestalt)とは、本来「統合された形」という意味のドイツ語で、心理 学の世界では、「部分部分あるいは要因要因を、ひとつの意味ある全体像にまとめあげ たもの」という意味で用いられている。DREAではこの概念を事業戦略の策定に活用 するために「ゲシュタルト分析」という用語に転用している。 ©株式会社経営教育総合研究所 35 無断転載 コピーを禁じます。 ・
  • 44. マーケティング戦略の 手引きとヒント III. 消費者の購買行動分析 1. 消費者購買行動と消費財市場 (1) 消費者購買行動(customer buyer behavior) ① 最終消費者、すなわち製品やサービスを個人消費のために購入する個 人や世帯の購買行動 ② 消費者の購買行動は、文化的・社会的・個人的・心理的特性の影響を 強く受ける (2) 消費財市場(consumer market) 個人的な消費のために製品を買ったりサービスを受けたりするすべての 個人および世帯。 2. 消費者行動に影響を与える特性 (1) 文化的特性 ① 文化(culture)…社会のメンバーが家族などの重要な組織から学ぶ基 本的な価値観・知覚・嗜好・行動 ② サブカルチャー(subculture)…共通した生活体験や生活状況に基づ いた価値体系を共有する人々のグループ 【例】国籍、宗教、人種、居住地域 等 ③ 社会階層(social classes) a. ある社会にほぼ永続的に存在する秩序だった構造を持つ区分 b. 各区分の構成員は類似した価値観・関心・行動を共有する (2) 社会的特性 ① 集団(group)…個人あるいは共通の目標を達成するために互いに影 響しあう2人以上の人間の集まり ② 準拠集団(reference group)…個人がその態度や行動を決定する際に 直接、あるいは間接的に参考とし、あるいは、比較対象とする集団 ©株式会社経営教育総合研究所 36 無断転載 コピーを禁じます。 ・