20110723 b型c型肝炎市民公開講座 (from frontier pc - 3)

肝硬変肝癌

敵（ウイルス）を知り
己（体質・性別・年齢）
を知らば、（百戦して）
危うからず。
効果を予測しよう！

（ペグ）インターフェロンウイルス変異

IL28B, ITPA

プロテアーゼ阻害薬他信頼できる主治医生活上の注意を守る
2011/07/24市民公開講座 B型・C型肝炎の最新治療はやさかクリニック早坂章

３つの大切なこと

1. B型肝炎ウイルス感染・C型肝炎ウイルス感染の放置は
命にかかわる危険なことであることを知り、あわてることなく
しっかりと向き合うこと

2. 信頼できる相性のあった主治医を探しだし、定期的診療を
受け続けること

3. 日常生活の注意を守ること


本日、御来場の目的は？

• Ｂ型・Ｃ型肝炎にかかっているかどうか、心配だから
• Ｂ型・Ｃ型肝炎と診断されたけれど、まだ医療機関を受診し
ていないが、心配だから
• これから治療を受けようか迷っているので参考にしたいから
• 現在、肝炎治療中だが、知識を再確認したいから
• 肝炎について、ほとんど知らないので、もっと知りたいから
• 肝炎について、よくしっているけれど、「最新」の治療につい
て知りたいから


目次

• 肝腎な肝臓
• 肝炎ウイルスの種類と慢性肝臓病の経過
• B型慢性肝炎の治療
• C型慢性肝炎の治療
• その他


肝腎な肝臓
さまざまな代謝作用を行う
糖糖分の貯留と放出を調節
たんぱくアルブミンなどの代謝
脂肪コレステロールや脂肪酸の代謝

解毒や排泄
 薬物の解毒，アルコールの代謝
 細菌や異物，毒素を処理する．
 ホルモンの代謝


肝臓の働き


肝硬変に進み、更に悪化してくると

頭がすっきりしない

渋滞
生産量低下

・栄養不足

足がむくむおなか
がはる
食道静脈瘤


肝硬変での肝臓内血管のねじれ


肝硬変の症状・所見


B型慢性肝炎・C型慢性肝炎の経過

肝硬変
正常肝

肝不全

B型肝炎

慢性肝炎
注意！
C型肝炎
肝臓癌

治療目的：肝硬変・肝癌を防ぐこと

肝硬変
正常肝

B型肝炎

慢性肝炎
C型肝炎
肝臓癌

B型・C型慢性肝炎の治療法

• 肝炎ウイルスと闘う治療法
（抗ウイルス療法）
• 肝機能を改善する治療法
（肝庇護療法）


まず、肝炎の程度・肝癌がないかどうかを知る

• 画像診断検査・肝生検
– 腹部超音波検査（単純・造影）・Ｘ線ＣＴ（単純造影）・ＭＲI（EOB造影）

• 血液検査
– 肝炎ウイルス検査と体質検査（IL28ｂなど）・肝機能検査・血小板数・
腫瘍マーカー・線維化マーカー

• 定期的な画像検査と血液検査の両方が必要！


肝生検


画像検査

腹部超音波検査腹部CT検査


肝臓病の原因
• 肝炎ウイルス性（Ａ、Ｂ、Ｃ、Ｅ、他）
• 自己免疫性（自己免疫性肝炎・原発性胆汁性肝硬変症）
• アルコール性
• アルコール性以外の代謝性・脂肪性（最近注目）
• 薬物性
• 遺伝性他


肝炎ウイルス
肝臓が好きなウイルスで肝臓に炎症をおこす

血液などで感染慢性化あり
肝硬変・発癌あり

飲み水や食べ物で感染慢性化なし


B型肝炎


Epidemiology of Hepatitis B

全世界でのB型肝炎ウイルス感染者の人口比率

>8%
2-
8%
<2%

WHO

Ｂ型肝炎ウイルスの遺伝子型（5月から保険適応）


血液中B型肝炎ウイルス量と肝臓癌発癌の関係


についてもう少し知りましょう

注意！（0.5-0.8%/年）

注意！
（2％/年）

注意！（1.2-8.1%/年）
注意！（0.1-0.4%/年）

最近、増えつつあります。


Ｂ型肝炎ウイルスの生活

現在、「治った」と言われても肝臓の細胞の中にウ
イルス遺伝子は残っている（ＨＢs抗体陽性でも）

B型肝炎ウイルスの構造


B型肝炎の治療法：基本
• 経過観察
– 自然に肝炎が鎮静化することがあるため、３５歳未満では基本的に経過
観察
• 抗ウイルス治療
– インターフェロン（注射薬）：いろいろな作用があるが、免疫の働きを増強
し、ウイルスに感染した肝細胞を攻撃：再注目（ペグインターフェロンも）
– 核酸アナログ（飲み薬）：ウイルス遺伝子合成を抑制
– シークエンシャル療法：核酸アナログで肝炎沈静化後、インターフェロン
と併用し、核酸アナログを終了、インターフェロン注射を続け、終了
• 肝臓庇護治療
– 肝機能を安定化させる（強力ネオミノファーゲンシー、ウルソ）


B型・C型慢性肝炎治療の具体的目標

• B型肝炎：現在の治療ではウイルスを完全には追い出せない
1. 血液中のB型肝炎ウイルスたんぱく質（HBs抗原）をなくす
2. 血液中のB型肝炎ウイルスの量を減らし、肝炎を「鎮静化」させ
る

• C型肝炎：ウイルスを追い出すことができる確率が上昇中
1. C型肝炎ウイルスを体の中から完全になくす(治癒・治る)
2. 「肝機能」（血清ALT値）を正常化し、肝臓癌ができるのを防ぐ
（共存）


肝炎ウイルスと闘う治療法（抗ウイルス治療）

• B型肝炎
– 核酸アナログ（飲み薬）：エンテカビルが第一選択
– インターフェロン（注射）
– 核酸アナログとインターフェロンの組合せ
• C型肝炎
– ペグインターフェロン（注射）単独
– ペグインターフェロンとリバビリン（飲み薬）の組合せ

抗ウイルス治療の効果に関係することがら

• B型肝炎
– ウイルス側のことがら（遺伝子型・量・変異）
– 患者さん側のことがら（年齢・肝炎の進行度・性別）

• C型肝炎
– ウイルス側のことがら（遺伝子型・量・変異）
– 患者さん側のことがら（肝炎の進行度・性別・年齢・体質）


適切な治療を効果的に受けていただく

状態状態


肝機能を改善する治療法（肝庇護療法）

• ウルソ（B・C型肝炎）
• 強力ネオミノファーゲンC （B・C型肝炎）
• インターフェロン少量自己注射（C型肝炎）
• 瀉血（C型肝炎）


B型慢性肝炎は、どんな病気でしょうか？（１）

1. B型肝炎ウイルスが肝臓の細胞に住みついて慢性
炎症をおこし、肝臓の線維化や癌化を引き起こす。
2. 肝臓癌は肝硬変からだけでなく、慢性肝炎からもで
きることがある。
3. 血液などを介して様々な経路から感染する。
4. ３５歳未満では自然に肝炎が落ち着くことがある。


B型肝炎とは、どんな病気でしょうか？（２）

4. 血液検査（HBｓ抗原検査とHBｃ抗体検査）で診断する。
5. 発癌しやすさは「肝機能（ALT GPT)」の数値よりも、
ウイルス量に関連する
6. 治療の選択は３５歳未満と３５歳以上で異なる。
7. 抗ウイルス療法としてインターフェロンと核酸アナログがあるが、
現在の治療ではウイルス遺伝子を肝臓の細胞から完全に排除
することはできない。
8. 遺伝子型・ウイルス量・ウイルス変異で経過・発癌・
治療への反応が異なる

インターフェロンと核酸アナログの比較（１）

作用していない

インターフェロン


肝臓に残るＢ型肝炎ウイルス遺伝子


インターフェロンと核酸アナログの比較（２）

？

遺伝子型Ａ型、Ｂ型に効果的


第一選択
核酸アナログの比較


B型慢性肝炎の治療ガイドライン２０１１

• 35歳以上では原則、エンテカビル服用。
• 35歳未満では薬服用なしをめざし、
– 長期間インターフェロン注射か
– エンテカビルでウイルスを抑制後、IFN治療
（シークエンシャル療法）
• 遺伝子型を測定して治療法を選択することを推奨
– 遺伝子型AおよびBでは３５歳以上でもインターフェロンを第一選択に
• シークエンシャル療法の適応基準が明示
– HBeAg(-) 核酸アナログを十分服用 HBV DNA (-)１年以上
HBcrAgが4.0 Log/mL以下


インターフェロン・シークエンシャル療法
• 核酸アナログ治療で
ＨＢｅ抗原が陰性化した患者さん、（または陰性）患者さんで核
酸アナログ十分服用し、HBVDNAの陰性期間が1年以上経過し、
Core関連抗原も4.0 Log U/mL以下になっている患者さんでは、
核酸アナログを飲まなくてもすむように、
インターフェロンと核酸アナログを1ヶ月間併用し、
全体でインターフェロン6カ月治療とし、治療を中断する治療法

１ヵ月５ヵ月

核酸アナログ製剤
インターフェロン


バラクルード服用された方の一例


ゼフィックス・ヘプセラ併用再開された方の一例


Ｂ型肝炎治療助成制度
• 2010年4月より医療費助成制度の対象が拡大しました。

• Ｂ型慢性肝炎・肝硬変に対する核酸アナログ製剤治療も医療費
助成の対象に追加されました。（以前はインターフェロン治療だ
け）

• 患者さんの自己負担限度額が減額されました。
（１万円、２万円）


今後の治療薬について

• 核酸アナログ：海外で採用されている薬はいくつか
ある。テノフォビルは注目されているが、日本では
しばらくは、認可されそうもない。
• ペグインターフェロンは日本で臨床試験も行われて
おり、B型慢性肝炎患者さんにも認可される予定で
ある。
• ペグインターフェロンが認可された場合、積極的に
使われると思われる。

質問

7月28日は
なんの日でしょうか？


答え

世界肝炎デー（WHO)
（World Hepatitis Day）


世界肝炎デー：今年のテーマ/スローガン
• テーマ：
– This is hepatitis
• スローガン：
– Know it. Confront it. Hepatitis affects
everyone, everywhere
(肝炎は世界中の誰もが感染する病気。正しく
理解し、立ち向かおう。）

世界肝炎デー2011


B型肝炎対策：米国での活動
Hepatitis B Foundationの
フェイスブックページから

米国では5月は肝炎に感
心を持とうという月で、

サイレントキラー B型肝炎
と闘うため、B型肝炎検査
をうけることの勧め、ワクチ
ンの勧め、募金活動など
が行われた。

少なくとも写真ではみなさ
ん、楽しんでいるようです。


B型肝炎検査・ワクチンを勧めるラップ動画
世
世界
界の
が仲
あ間
なと
た協
を力
応し
援て
し行
てき
いま
まし
すょ
。う
。


C型肝炎


C型肝炎ウイルス感染者の分布

HCV Ab
pos (%)
10 to
20
5 to 10
2 to 5
1 to 2
0 to 1
Heintges, T., Hepatology 1997; 26:521

日本人のHCV ジェノタイプ別分類
検査不能
5.2%

混合型
1.0%

３ｂ型
0.4%

２ｂ型１ｂ型
4.4% 75.3%
２a型
13.7%

［Arase Y,et al.:J Gastroenterol 35:221-225,2000より改変］

C型肝炎ウイルスの型分類

• HCVは遺伝子の塩基配列の違いにより幾つかのジェノタイプ
（遺伝子型）に分けられる
• また、塩基配列の相違から異なった蛋白（抗原）が作られ、そ
れに対応する抗体によってセロタイプ(血清型）に分けられる

ジェノタイプ
セロタイプ
グループ1 1a , 1b

グループ2 2a , 2b

はやさかクリニック

C型肝炎の自然経過
治癒 2%
正常
Ｃ型慢性肝炎
慢性肝炎
Ｃ
型 53%
急
性 100%
肝 20%
炎 40% 25%
肝癌
肝硬変 5%

0 5 10 15 30 年
清澤研道Ｃ型慢性肝炎 IFN療法


我が国の肝細胞癌の原因


Ｃ型肝炎の特徴
1. 成人の感染でも６０～７０％が持続感染に移行する。

2. 終生免疫が確認されず、防御抗体やワクチンが開発されない。

3. 肝硬変の８０％をＣ型肝炎が占める。

4. 肝臓癌の方の約80%がC型肝炎による肝硬変を持っている。

5. 無症候性キャリアーが３０％とＢ型に比し、少ない。


血液検査でC型肝炎ウイルスの感染を確認し、
さらに肝臓の状態に応じて、治療を検討します。
●C型慢性肝炎の検査・診断の流れ

C型肝炎ウイルス抗体検査
陽性陰性
感染なし

C型肝炎ウイルス遺伝子検査
陽性陰性過去に感染した
ことがある
C型慢性肝炎

肝機能［ALT（GPT）・AST（GOT）］検査

異常正常
定期的な肝機能検査
（3～4ヵ月に1回）
必要に応じて治療
治療の時期と方法を検討


はやさかクリニック

インターフェロン治療効果に関連する因子

• 患者さん側の因子
– 年齢、性別
– 肝線維化の程度
– 体質（IL28Bなど）
• ウイルス側の因子
– ウイルス量
– ウイルス遺伝子型
– ウイルス変異


C型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療

Ｃ型肝炎ウイルスの種類
グループ 1 グループ2

ウ多い治りにくい治りやすい
イ（５０％前後）（80-90％）
ル
ス
量

少ない治りやすい治りやすい
（80-90％）（80-90％）


C型慢性肝炎に対する初回治療ガイドライン

ジェノタイプ 1 ジェノタイプ 2

ペグIFNα + リバビリンペグIFNα + リバビリン
高ウイルス量
ウ IFNβ + リバビリン
5.0LogIU/mL以上
イ
ル併用療法（48-72週間）併用療法（24週間）
ス
量
低ウイルス量 IFN単独療法（24週間） IFN単独療法（8～24週間）
5.0LogIU/mL未満ペグIFNα単独療法ペグIFNα単独療法
（24～48週間）（24～48週間）


肝炎の治癒および発癌抑制を目指した血清ALT正常
C型肝炎例への抗ウイルス治療ガイドライン

血小板数 15万/μL以上血小板数 15万/μL未満

2～4ヵ月ごとに血清ALT値の測定。線維化進展例がかなり存在する。
ALT異常を呈した時点で完治の可能性、可能なら肝生検を施行し、F2A2以上の例に
抗ウイルス療法を考慮。
血清ALT値発癌リスクを評価し、抗ウイルス療法を考慮。
30 IU/L以下肝生検非施行例は2～4ヵ月ごとに血清ALT値を
測定し、異常を示した時点で抗ウイルス療法を
考慮。

血清ALT値
65歳以下は抗ウイルス療法の考慮。慢性肝炎治療に準じる。※
31～40 IU/L

※遺伝子型、ウイルス量、年齢などを考慮し、通常のC型慢性肝炎治療に準じて、治療法を選択する。


肝発癌年率

無治療群 IFN治療群
全体ウイルス消失群ウイルス残存群
%(n/n)
線維化度

F0/F1 0.45( 3/160) 0.08 (2/710) 0.11(1/257) 0.07(1/443)
F2 1.99(11/164) 0.54(16/896) 0.10(1/316) 0.78(15/568)
F3 5.34(13/ 59) 1.95(38/564) 1.29(7/163) 2.20(30/389)
F4（肝硬変） 7.88(32/107) 4.16(33/230) 0.49(4/53) 5.32(30/168)
全体 3.17(59/490) 1.10(89/2400) 0.38(10/789) 1.41(76/1568)


一般検査によるウイルス学的著効の予測

黒崎らに
よる

ウイルス遺伝子変異によるウイルス学的著効の予測

黒崎らに
よる


患者さんの遺伝子の様子に基づく治療効果予測

黒崎らに
よる


治療早期反応性と患者さん遺伝子の組み合わせでの
治療効果予測

黒崎らに
よる


開発中のＣ型慢性肝炎新規治療薬

（井上らによる）


C型慢性肝炎の治療ガイドライン２０１１

• プロテアーゼ阻害剤を加えた３剤治療を収載された（７月時点で未認可）

– 難治例（遺伝子型１、高ウイルス量）の初回治療、再治療の第１選択

• ペグインターフェロン・リバビリン併用療法の延長（７２週治療）の基準
が一部変更
– ５０歳以上で肝線維化が進んでいる方のなかで、HCVRNAが治療開始後、
８週目陽性、１２週目陰性の場合、男女ともに７２週治療が適応可

• 治療法選択にIL28B（患者さんの体質）やISDR、Core aa70（ウイルス
の変異の様子）などを参考にすることを推奨
– しかし、現在のところ、上記検査は保険認可されていない


詳しい内容は下記で御覧ください

• ブログ： http://akirahayasaka.com
• フェイスブックページ：
http://www.facebook.com/HayasakaClinic
• はやさかクリニックホームページ：
http://www.hayasaka-clinic.com


今回参考にした主な新しい資料

• 2011年Ｂ型・C型肝炎治療ガイドライン
（2011年3月）
• B型慢性肝炎の診断と治療
（2011年3月虎の門病院肝臓センター編）
• Ｂ型肝炎治療をめぐる諸問題
（雑誌：肝臓2011年5月号）
• C型肝炎治療の進歩
（雑誌：日本消化器病学会誌2011年7月号）


妻麻奈美と

「はやさかクリニック」のスタッフ一同に
こころより感謝します。


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