研究計画発表　完成版

研究計画発表
2016年6月30日
コアーセミナーA 木曜５講時
W16M004 松永瞭太
指導教員：斎藤文彦
副指導教員：鈴木滋、杉本バウエンスジェシカ出典：吉田昌夫・白石壮一郎(2012)『ウガンダを知るた
めの53章』明石書店, p14

研究テーマ
ウガンダのHIV/AIDS問題における音楽・劇を用いた活動の
有用性の考察から低開発地域への応用の可能性を考える

研究背景①
多くの開発途上国：様々な社会問題を抱えている（低開発地域の識字率の低さなど）
開発途上国の社会問題：地域や国の独特の文化や思想が関わっていることが多い
→諸問題の解決には、政府の努力だけではなく、対象者一人一人の理解と協力が必要
→音楽と劇を人々の行動変容を促す手段の一つとして利用

ウガンダにおけるHIV/AIDS問題
ウガンダ：音楽や劇をHIV/AIDS問題解決の手段として使った国の一つ
ウガンダHIV/AIDS問題：
→1980年代後半、アフリカ諸国の中で最も深刻な状況である国の一つに
→危機感を感じたムセベニ大統領がACP（AIDS Control Program）に着手
→ACPの一環として音楽・劇を利用した啓蒙活動を地域団体などと協力することで行う
目覚ましい効果（配布資料：写真①参照）を発揮し、モデルケースとして各国から注目を集める

研究背景②
音楽・劇がHIV/AIDS問題解決の一助となるとされ、研究者も注目
HIV/AIDS問題における音楽・劇の有用性に関する先行研究は多く存在
有用性は、歌手や医療従事者などの証言を基にある程度
例）親指ピアノ演奏者；MZEE MATA(Barz[2006], “Prelude” xxvi)
→音楽は、ウガンダの全ての地域でAIDS抑制・予防のために役立っている
→一部の伝統的な治療では、単に薬草を処方するだけだが、音楽を用いて先祖を降霊し、問題
を解決させる方法をとる
→一般的に若者は音楽を聴く。だから、日ごろの振る舞いを変えるようにアドバイスする音楽家
の歌を聞くべきだ

研究背景まとめ
HIV/AIDS問題
• アフリカのみならず、世界規模の深刻な社会問題である
• 従来の文化や思想が問題解決を妨げる壁となっていると考えられている
• 行動変容を促す手段として音楽や劇を用いる
• ウガンダと同じようにHIV/AIDSという深刻な問題を抱える低開発地域についても考えることに繋がる
研究対象地：ウガンダ
• アフリカでもっとも早くにHIV感染者数を減少させた国として多くの国から関心を集めた
• 発表者自身が、ウガンダでの１年間の滞在経験があり、現地人とも継続的に連絡を取り合っているた
め、フィールドワークを取り組みやすい環境である
以上から、HIV/AIDS問題における音楽・劇を研究対象とし、ウガンダを研究対象地とすることは最適であ
ると考える

研究目的
批判的検証を行う
• HIV/AIDS問題の解決に貢献した音楽や劇がコミュニティや人々に行動変容以外の影響を与えていないか
複数の分野に属すると考えられる本研究および、先行研究の所属を改めて考える
本研究の属する分野とは？
→次のスライドへ

本研究が属する分野
開発コミュニケーション
• 「開発プロジェクトにコミュニケーションの視点を取り入れ、プロジェクトを円滑に運営していこうとする
活動や研究である」（久保田, 1999, pp3-5）
• 新たな技術の普及活動からコミュニティに属する人々の意識開発まで、コミュニケーションの関わる全
ての範囲を幅広く扱う
伝統医療音楽（Medical Ethnomusicology）
• 音楽が治療や健康維持に役立つという視点
開発のための音楽（Theater for Development）
• 識字率の低い地域において、現地語用いたパフォーマンスによって行動変容を促すという視点

研究目的(続き)
批判的検証を行う
• HIV/AIDS問題の解決に貢献した音楽や劇がコミュニティや人々に行動変容以外の影響を与えていないか
複数の分野に属すると考えられる本研究および、先行研究の所属を改めて考える
上記の点を明らかにすることで、
•これまでの先行研究とは別視点の視点から有用性について考え、新たな問題点やより明確な有用性の
検証につながるキッカケとなる可能性がある
•現状の学問分野を統合し、新たな知見を提示するキッカケとなる可能性がある

研究意義
HIV・AIDS問題における音楽・劇を用いた活動を批判的視点から考察していく
• 先行研究で注目されてきた有用性とは別の視点で活動を見ていくということ
• 従来の政策あり方に疑問を投げかける
→社会問題解決のための政策や活動の本来のあり方を考える
既存分野の統合や新しい知見の提示
• これまでに語られなかった研究分野を新たな形で世の中に提示
→今後、より明確に研究を進めていくキッカケに
よって、本研究は学術的にも十分に研究意義があると考えられる

HIV/AIDSの基本情報
HIV/AIDSについてどんな知識を持っていますか？
① HIV/AIDSの“HIV”と“AIDS”は違うものを表していることを知っていますか？
② 感染経路や仕組みは？
③ AIDSが直接の死因となるのか？
④ 治療は？

①“HIV”と “AIDS”
“HIV”とは
→”Human immunodeficiency Virus”=“ヒト免疫不全ウィルス” の通称
→ウィルスの名前であるため、HIVに「感染」という表現が正しい
“AIDS”とは
→“Acquired Immunodeficiency Syndrome”=“後天性免疫不全症候群”の通称
→病名であるため、AIDSを「発病」という表現が

②感染経路、仕組み
主な感染経路は大きく分けて３つ
① 性行為による感染
② 血液（体液）による感染
③ 母子感染
日常生活における感染はない
例）蚊、お風呂や便器の共有、コップの回し飲み
① HIVは体外では感染力を失うため
② 汗や涙、唾液などの一部体液にはHIVは含まれないため

③AIDSは直接の死因となるのか
AIDSが発症することで、免疫が低下する
→健康な人であれば何ともない菌やウィルスに抵抗できなくなる
→日和見感染症や感冒症（風邪）により命を失われることもある
→アフリカでは、マラリアが死因となるケースもある
AIDSは直接の死因となるケースはない

④治療
ART(Anti Retroviral drug Treatment or Anti Retroviral Therapy)
→「抗レトロウィルス薬」を使用した治療が中心
→この治療の普及により、AIDSは、「死の病」ではなくなった
2013年には、母子感染に侵された乳幼児への試験的治療で完治させた報道もある
（2013年3月４日日経新聞より）
→その後の展開は不明だが、近くAIDSが不治の病ではなくなる可能性もある

TASO（The AIDS Support Organization)
TASO→1987年に発足したウガンダの非政府組織
→国内の主要地に複数のオフィス
→HIV/AIDSに関わる活動全般を行う
→音楽・劇を用いた活動を含む
HIV/AIDS問題を扱う団体としてウガンダで最大級の規模を持ち、知名度も高い
出典：TASO HP,
https://tasouganda.org/

TASOが行う活動の様子
実際の活動の一部
https://youtu.be/7Rna_m3dwZw 劇（ガンダ語）
https://youtu.be/RyzmNZTBeQU コーラス（英語）

研究方法①
資料収集・分析
•先行研究の継続的収集と読み込み
→方法論の分析や先行研究で行われてきた研究内容の整理
•TASO（The AIDS Support Organization）の活動に焦点をあてる
→具体的に注目する団体を決めることで、よりリアルで正確な情報を得られる
可能性がある
集めたデータは、Excelやｓｐｓｓを用いた方法で分析予定

研究方法②
現地調査
•インタビュー（録音）および、アンケート調査
→内容は未定だが、先行研究で度々紹介されている団体関係者や活動地での調査を予定して
いる
→分析には、客観性を高めるためにKH Coderなどのテキスト分析ツールを使用する
•日本国内では入手できない文献・資料が多いため、現地の国立図書館などを利用して収集を
行いたい
→事前に必要な資料をある程度決めて、現地ではその収集に専念。分析、整理は帰国後に
行いたいと考えている

現段階での気づき
① ACPの成果を評価する声が多いが、ACPをはじめとする活動とHIV/AIDS感染者数
の減少を科学的に証明しているものがない
② 2000年前半から継続しているHIV感染者数の増加に対する新規感染者の再減少
• ACPが関係しているとされる90年代から2000年代前半の数字を疑問視する声もあるが、近年、新規感染
者が再び減少している点は本研究においても注目できる点ではないか

出典：UNAIDS AIDS, info, ダウンロード資料 http://aidsi

本研究の制約条件・注意点
•修士論文で、表題の内容を完結させることはできない
→新たな視点として示唆を与えること、新たな知見を提示すること、またはキッカケを見つけること
•ウガンダ全体を見ることは難しい
→研究の対象地域や対象者を限定する必要がある
→TASOの活動に注目
•広い分野を扱う事になるので、各分野の基礎固めをしっかり行う必要がある

参考文献・資料紹介①
アフリカ日本協議会HP, データーベース, 「ウガンダ、エイズを撃退」, http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/db-
infection/2001ar0202.html (最終アクセス2016/06/23)
外務省HP, ODA(政府開発援助), 「ミレニアム開発目標（MDGｓ）」,
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html
久保田賢一 (1999)『開発コミュニケーション―地球市民におけるグローバルネットワークづくり』明石書店
日経新聞WEBページ, “2013/03/04 日経新聞記事”,
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK04016_U3A300C1000000/ (最終アクセス2016/06/19)
樋口耕一, KH Coder Index Page, http://khc.sourceforge.net/ (最終アクセス2016/06/23)
松田素二編(2014)『アフリカ社会を学ぶ人のために』世界思想社
ロジェク・クリス著, 渡辺潤・佐藤生実訳(2009)『カルチュラルスタディーズを学ぶ人のために』世界思想社
吉田昌夫・白石壮一郎(2012)『ウガンダを知るための53章』明石書店
吉見俊哉編(2001)『知の教科書カルチュラル・スタディーズ』講談社選書メチエ
ーーー (2008)『思考のフロンティアカルチュラル・スタディーズ』岩波書店

参考文献・資料紹介②
•Barz, Gregory (2006), Singing for Life; HIV/AIDS and Music in Uganda, New York: Routeledge
•Byam, L. Dale (1999), Community in Motion; Theatre for Development in Africa, London:
BERGIN&GARVEY
•Clayton,Martin, Trevor Herbert, Richard Middleton (2003) The Cultural Study of Music- a critical
introduction, Great Britain: Routledge
•STD研究所、STD研究所WEBページ, “HIV感染症/AIDS”, http://www.std-lab.jp/stddatabase/hiv-
aids.php (最終アクセス2016/06/22)
•Uganda, the Republic of, Ministry of Health in Uganda Official Site “AIDS Control Program”,
http://www.health.go.ug/programs/aids-control-program (最終アクセス2016/06/19)
•UNICEF, UNICEF HP, UNICEF Statics, Literacy, “Access the Data”,
http://data.unicef.org/education/literacy.html (最終アクセス2016/06/24)
UNAIDS AIDS, info, ダウンロード資料 http://aidsinfo.unaids.org/

ご清聴ありがとうございました

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