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代数幾何のPanacea
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■代数幾何の考え方 Hanpen Robot
多項式によって定義される図形(多項式の零点集合)が,アファイン座標環の極大イデアル
の集合として表現できることを導く「イデアルの対応定理」,「ヒルベルトの弱零点定理」
が鍵になる定理である.
1. イデアルの対応定理
𝐴を環とする. 𝑰 ⊂ 𝑱 ∈ 𝐼𝑑𝑒𝑎𝑙(𝐴)の両辺を,形式的に𝑰で割っても良い.すなわち
𝑰 ⊂ 𝑱 ∈ 𝐼𝑑𝑒𝑎𝑙(𝐴) ⟺ 𝑰/𝑰 ⊂ 𝑱/𝑰 ∈ 𝐼𝑑𝑒𝑎𝑙(𝐴/𝐼)
𝑰 𝑰⁄ = (𝟎)が零イデアルであることに注意すると,
𝑰 ⊂ 𝑱 ∈ 𝐼𝑑𝑒𝑎𝑙(𝐴) ⟺ 𝑱 𝑰⁄ ∈ 𝐼𝑑𝑒𝑎𝑙(𝐴 𝐼⁄ )
これは,イデアル 𝑰を含む𝐴のイデアルと 𝐴 𝐼⁄ のイデアルが同一視できることを意味している.
{ 𝐽 ∈ 𝐼𝑑𝑒𝑎𝑙(𝐴) | 𝐼 ⊂ 𝐽} ≅ 𝐼𝑑𝑒𝑎𝑙(𝐴 𝐼⁄ )
この定理は非常に重要な定理である.代数学における Panacea (万能薬)である.
2. ヒルベルトの弱零点定理
ℂを複素数体とする.この時,以下が成立する.
ℂ 𝑛
≅ 𝑆𝑝𝑚{ℂ[𝑥1,… , 𝑥 𝑛]} = {(𝑥1 − 𝑎1, … , 𝑥 𝑛 − 𝑎 𝑛) | (𝑎1, … , 𝑎 𝑛) ∈ ℂ 𝑛}
ℂ 𝑛
∋ (𝑎1, … , 𝑎 𝑛) ↦ 𝑚((𝑎1,… , 𝑎 𝑛)) = (𝑥1 − 𝑎1, … , 𝑥 𝑛 − 𝑎 𝑛) ∈ 𝑆𝑝𝑚{ℂ[𝑥1,… , 𝑥 𝑛]}
これがヒルベルトの弱零点定理である.この定理は,n 次元空間の点と関数環の極大イデ
アルは同じ概念であると主張している.
3. ℂ[𝑥1,… , 𝑥 𝑛]を定義イデアルで割れ!
𝑓1(𝑥1,… , 𝑥 𝑛),… , 𝑓𝑚(𝑥1, … , 𝑥 𝑛) ∈ ℂ[𝑥1, … , 𝑥 𝑛]とする.𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚)を𝑓1, … , 𝑓𝑚の共通零点集合と
し , 𝕀(𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚))を 𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚) の 定 義 イ デ ア ル と す る . 𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚) ∋ 𝑃⃗ に 対 応 す る
ℂ[𝑥1, … , 𝑥 𝑛]の極大イデアルを𝑚(𝑃⃗ )とすると,
𝕀(𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚)) ⊂ 𝑚(𝑃⃗ ) ∈ 𝑆𝑝𝑚{ℂ[𝑥1,… , 𝑥 𝑛]}
が成立する.ここで,上の式に「イデアルの対応定理」を適用してみる.すると,
𝑚(𝑃⃗ ) 𝕀(𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚))⁄ ∈ 𝑆𝑝𝑚{ℂ[𝑥1, … , 𝑥 𝑛] 𝕀(𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚))⁄ }
ヒルベルトの零点定理から,𝕀(𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚)) = √(𝑓1, … , 𝑓𝑚)が成立する.ここで,(𝑓1, … , 𝑓𝑚)が
√(𝑓1, … , 𝑓𝑚)=(𝑓1, … , 𝑓𝑚)と仮定すると ,
𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚) ≅ 𝑆𝑝𝑚{ℂ[𝑥1,… , 𝑥 𝑛] (𝑓1,… , 𝑓𝑚)⁄ }
これは,代数方程式による図形𝑉(𝑓1, … , 𝑓𝑚)が,アファイン座標環ℂ[𝑥1, … , 𝑥 𝑛] (𝑓1, … , 𝑓𝑚)⁄ の極
大イデアルの集合と等価であることを示している.
参考文献:雪江明彦,『代数学 2 環と体のガロア理論』,日本評論社 (2010)