ポスター発表 @鳥大広報センター
- 1. 【 背景 】
グラム陰性細菌は細胞外膜に複合糖脂質リポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖
(LOS)を産生する(下図)。LPSはO 抗原多糖(PS)、オリゴ糖鎖(OS)、糖脂質
(Lipid A)から成り、LOSは(PS)を欠損している。OS内には細菌の属によって
構造変異が少ないコア糖鎖領域が存在し、コア糖鎖とLipid A との架橋部には
α 2-4結合を有する酸性糖 3-deoxy-D-manno-oct-2-ulosonic acid (Kdo)が
存在する。近年、Kdoを含む内部コア糖鎖を認識するヒト抗体の存在が報告さ
れている[1]。しかし、エピトープの解明には至っていない。
我々はそのエピトープを明らかにするためにKdoを含む糖鎖プローブの合成
を目指しており、これまでにKdo 鍵中間体を開発し、いくつかのKdo 糖鎖合成
を達成している[2]。しかし、 Kdo の分子間グリコシル化では3-デオキシ糖であ
る理由から立体制御、反応性の調節が困難なため選択性、収率に改善の必
要があった。
Lipid AOS (Kdo)nPS
LOS
LPS
LOS/LPSの模式図 (n=1~3)
- 2. 【 目的 】 エステル縮合反応を経由する分子内グリコシル化反応
- 7. Bruker Avance II 600MHz,
CDCl3, 20 ˚C
COSY
HMBC
H3I
H4I
H5I
H3II H5I
H4I
C1II
C1I
- 8. エステル結合を持つKdo2糖合成を達成した。
- 各種縮合剤(EDC, DEPC, CDI)で反応の進行を確認した。
しかし、受容体 5位水酸基の立体障害のため求核性が乏しく、
加熱条件下で行った。その結果、4 位水酸基の-TES基が外
れ、5位水酸基と競争的に反応が進行し、そのために低収率に
なったと考えられる。
- MNBA(2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物)は、室温条
件化においても高い活性を示し、2種のカルボン酸供与体に対
して受容体4位保護基が外れることなく反応が進行し、収率は
飛躍的に改善した。
F化糖の官能基選択的メチルエステルの脱保護を行った。
- エタンチオールとブチルリチウムにより系内調製した
リチウムチオエトキシドにより高収率で達成した。
[1] Yamasaki, R, et. al. Infect. Immun., 2010, 78, 3247
[2] Ichiyanagi, T, et. al. Tetrahedron, 2011, 67, 5964-5971
【 まとめ 】