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スプリンターネットについて
中央大学 実積寿也
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
議論の発端:2022年3月1日付けRolling Stone
ウクライナ当局は、インターネットの運営を担う重要な組織に
対し、世界的なコンピュータネットワークであるネットワーク
からロシアのサイトをすべて切断するよう求めていることが、
Rolling Stoneの取材で明らかになった。
これは、クレムリンのウクライナ侵攻に対する報復として、ロ
シアを亡国とする最新の試みである。専門家は、これは大規模
な──そして無謀な──措置だという。
ローリング・ストーンが確認した電子メールによると、ウクラ
イナのICANNへの要求は、ロシアで発行されたドメインを取り
消し、同国の主要ドメインネームシステム(DNS)サーバーを
停止することを求めるもので、この動きはロシアのインター
ネットサイトへのアクセスを事実上禁止し、国全体を停止させ
る可能性があるという。
ICANN の政府諮問委員会のウクライナ代表である Andrii
Nabok氏からのメールでは、ロシアのサイバー攻撃は "ウクラ
イナ市民と政府の通信能力を阻害している" と述べています。
ロシアをオフラインにすることで、"ユーザーが代替ドメイン
ゾーンで信頼できる情報を探すことができ、プロパガンダや偽
情報を防ぐことができる "とNabok氏は主張しています。
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Source: https://www.rollingstone.com/politics/politics-news/ukraine-
icann-russia-internet-runet-disconnection-1314278/
令和5年版 情報通信白書
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
ISOCによるSplinternetの定義
A “splinternet” is the idea that the open, globally
connected Internet we all use splinters into a
collection of fragmented networks controlled by
governments or corporations.
「スプリンターネット」とは、私たちが使っているオープンでグローバル
に接続されたインターネットが、政府や企業によってコントロールされた
断片的なネットワークの集合体に分割されてしまうという考え方である。
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
類似概念
Internet Fragmentation is the idea that the Internet may be in danger of splitting into a
series of cyberspace segments, thus endangering its connectivity. (Source: ICANNWiki)
◦ インターネットの断片化とは、インターネットが一連のサイバースペース・セグメンテーション
に分割され、その接続性が危険にさらされる可能性があるという考え方である。
Cyberbalkanization refers to the division of the Internet or the World Wide Web into sub-
groups with specific interests (digital tribes), where the sub-group's members almost always
use the Internet or the web to communicate or read material that is only of interest to the
rest of the sub-group. (Source: Wikipedia)
◦ サイバーバルカナイゼーションとは、インターネットやワールド・ワイド・ウェブが、特定の関
心を持つ小集団(デジタル部族)に分割されることである。そこでは、サブグループのメンバー
は、ほとんど常にインターネットやウェブを使用して、サブグループの残りのメンバーだけが興
味を持つような内容を通信したり読んだりする。
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Google Trend
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
初出は結構古そう
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Classical economics identifies something
called the tragedy of the commons: the
tendency of things in public hands, or in
nobody's hands, to be mismanaged. There
is a preventive measure here: Take the
Internet private and split it up. Eliminate
the monopoly. Make way for proprietary
"Splinternets" where prespecified ground
rules regarding privacy and other
governance issues replace regulation and
central planning.
Source:
https://www.forbes.com/forbes/2001/0402/036.ht
ml?sh=41ccc81f5ea3
The rule also helps avoid the problems of
Internet fragmentation, in which content
providers who do not reach agreements
with ISPs cannot access all customers, and
consumers on a single ISP are foreclosed
from accessing their content.
「分割」についてのMueller教授の分析
インターネットが「統一」されているのはIPレイヤに限られる。
分割という行為は、意図的なもの三種と非意図的なもの二種がありうる。
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
ISBN: 978-1509501212
Internetはすでにsplitしている?
現状は、” fragmented services on a integrated network”
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
splitしていない
経済や社会の
観点から問題
となる部分
splitしてる
Internetは技術と制度とビジネスの協調に立脚
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
技術
制度
ビジネス
参照:Drake et al. (2016)、ISOC(2023)
重要な特性
1. オープンかつ参入容易な共通プロトコルを持つインフラ
2. 自主標準を実装したオープンアーキテクチャ
3. スケーラブルな分散かつ単一のルーティングシステム
4. 曖昧性のない普遍的な共通グローバル識別子
5. シンプルで技術中立的な汎用ネットワーク
オープン性
1. 簡単で無制限の接続
2. インターネット技術の自由使用・展開
3. 共同開発、共同管理、共同ガバナンス
グローバルな接続性
1. 無限の到達可能性
2. 十分な通信容量
安全性
1. 情報、デバイス、アプリケーションのデータ機密性
2. 情報、アプリケーション、サービスの完全性
信頼性
1. 信頼性、回復力、可用性
2. アカウンタビリティ
3. プライバシー
Internetは技術と制度とビジネスの協調に立脚
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
制度
ビジネス
技術による断片化
1. NAT
2. IPv4とIPv6の非互換性
3. ルーティングの破損
4. ファイアウォールの保
護
5. VPN
6. TORとdark web
7. 国際DNSの障害
8. 新gTLDの受け入れ拒否
9. プライベートネームサーバー
とスプリットホライズンDNS
10. 私設Wi-Fiサービス
11. 代替DNSルート構築
12. 偽証明書の作成
政府による断片化
1. 好ましくないコンテンツへのフィ
ルタリングおよびブロッキング
2. 好ましくないコンテンツを提供
する情報資源への攻撃
3. デジタル保護主義による利用
妨害
4. 電子商取引のためのプラット
フォームやツールの利用を妨
害すること
5. 国際的な相互接続の一元化と
停止
6. 国内ネットワーク資産への攻撃
7. データローカライズの要求
8. データ・フローを地域内に留め
るためのアーキテクチャまたは
ルーティングの変更
9. 特定のカテゴリのデータの国境
移動禁止
10. サイバー主権の行使
11. 制限的な国際的なフレーム
ワーク構築
ビジネスによる断片化
1. 相互接続契約の変更
2. IoTの相互運用性を阻害する独自技術標準の採用
3. ブロッキング、スロットリング、またはネットワーク
中立性からの逸脱
4. Walled garden
5. コンテンツのジオブロッキング
6. 知的財産権保護を目的とした、ネーミングやナン
バリングによるコンテンツのブロックの可能性
参照:Drake et al. (2016)、ISOC(2023)
技術
分割戦略と統合戦略にはそれぞれに経済的理由がありうる
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
分割する理由
◦ 独占維持可能なら価格差別による利潤増大
◦ 第一種価格差別なら余剰最大化も実現
◦ 但し、利用者にメリットがないわけではない
◦ 選好に応じたsplitであれば、自分の嗜好に応じた財・
サービスが入手できる
◦ 意図に反して新規参入が発生するなら..
◦ 生産面では効率性改善
◦ 独占のもたらす非効率性の回避
◦ 過少生産やX非効率性
◦ 需要面では競争による低価格・高品質の享受
◦ 低switching costの下なら選択肢増加
• 統合する理由
• 生産面
• 規模の経済=大量生産の利益
• 範囲の経済=多品種生産の利益
• 組合せの経済
• 事業間のシナジー効果
• 生産要素の組合せによる価値拡大
• 需要面
• ネットワーク効果
規模が大きい方が企業目線では安くつくし、
客も呼べるので儲かる
独占下でも消費者便益の増加は期待できる
プレイヤーが多くなれば効率性改善の利益が発生 +
“Splinternet” 2016年出版
Splinternetを作った一つの要因は広告モデルからの要請
◦ 利用者集合に対してより効率的な広告配信を可能にするためには、
利用者をセグメント化する必要があり、各セグメントは配信され
る情報によってwalled garden化
インターネット運営の「民営化」を期にロシアや中国がコントロール権の分
割を求めたのも大きな要因
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
安全保障の観点から…
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
出典:日本経済新聞(2023/6/23)、
「サイバー主権」に基づく国家によるインターネットの統制・管理
中国は、1990年代から、国家戦略「金字工程」の下インターネットの検閲・分断を進めてきた。他国の情報の影響から
自国の利益を守るため、「Great Firewall(金盾)」と呼ばれるインターネット検閲システムを作り上げ、中国国内では
Google、Facebook、YouTube等は閲覧不可となっている。なお、FreedomHouse が2022年に実施した調査では、中国
は、対象の65カ国のうち最もインターネットにおける自由がない国となっている。
また、近年、中国は、国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)をインターネット管理組織として位置付けること
を提案し、ITUでの影響力強化に乗り出している。政府間機関であるITUでは一国一票制が基本であり、民間組織がITU
の決定に関与することは想定されない。インターネットガバナンスに関する議論をITUに集約するという中国の主張は、
インターネットの管理を国家が主導し、国際的な取り決めについても途上国を含む一国一票制で運営することにより自国
の意見をより強く反映させることを狙いとしていると考えられる。
2019年9月には、中国の華為技術(ファーウェイ)が、工業情報化部(政府機関)及び中国の国営通信会社2社とともに、
現在のインターネットプロトコル(IP:Internet Protocol)のクオリティ(ベストエフォート型)では、今後の最先端技
術の導入に対応できないとして、新たなインターネットの基本技術となる「New IP」技術をITUに提案した。この提案に
対し、欧米諸国やIETFは、New IPは既存のIPとの互換性がなく、相互接続性が損なわれるとして強硬に反対し、2020年
12月、ITUではNew IPについてこれ以上の議論は行わないとの結論に至った。
さらに、ロシアでも政府によるインターネットへの規制・介入の動きが見られ、2019年11月、有事の際などに外国との
インターネット通信を遮断・制限する連邦法(通称「主権インターネット法」)が発効している。同法は、通信事業者に、
インターネット通信トラヒック(送受信情報)への脅威に対抗したり、禁止されたウェブサイトへのアクセスを制限した
りする技術手段をネットワーク上に設置することを義務付け、ロシアのインターネットが脅威にさらされた際には連邦通
信・IT・マスコミ監督局が通信網を集中管理することも規定された。
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
参照:令和5年版 情報通信白書
デジタル主権(Digital Sovereignty)
デジタル分野の競争力を左右する半導体産業や「21世紀の石油」とも称されるデータを巡って、海
外に依存せずに欧州として自立できる産業基盤を整え、国際的なルール作りで主導権を握ることを
指す。欧州連合(EU)がデジタル政策でめざす目標のひとつ。
ボストン・コンサルティング・グループによると、半導体の生産能力で欧州のシェアは2000年の
24%から20年には10%を割り込んだ。データ分野でも米系巨大IT(情報技術)企業に管理されるこ
とへの警戒が広がる。こうした海外依存の高まりを放置すれば、デジタル分野の欧州の自立が揺ら
ぐとの懸念が、デジタル主権の確保をめざすEUの取り組みの背景にある。
巨額制裁金を科すなどIT巨大企業に強い姿勢で臨んできたのもデジタル主権の確保の一環だ。2020
年12月には2つのデジタル関連法案を発表し、巨大IT企業を包括的に規制する方針を示した。違法コ
ンテンツへの迅速な対応の義務化や、プラットフォーマーの自社サイトでの自社サービス優遇の禁
止が柱だ。大手に厳しい規制を敷く一方、規模の小さい欧州企業への規制は緩くするなど欧州発の
IT大手の誕生を後押しする狙いもある。
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
制度面、ビジネス
面でのSplinternet
技術面、制度面で
のSplinternet
デジタル主権(Digital Sovereignty)
デジタル主権が主張される四つの文脈
1. National security and the ability to enforce laws(国家安全保障)
◦ 安全保障の目的で国内インターネット活動・資産に対して権限を行使
◦ トラヒック監視の義務付け、独自DNSリゾルバの設置、コンテンツフィ
ルタリングの義務付け
2. Economic self-determination(経済的自決)
◦ 国外ネット企業に対抗する産業政策のために権限を行使
◦ アクセスや参入障壁の低減(国内IX増設など)、データ・ローカライ
ゼーション
3. Protecting rights and empowering citizens/users(ネット利用者保護)
◦ 国外ネット企業に対する自国民の自律性強化のために権限を行使
◦ データ・ローカライゼーション
4. Upholding societal norms and value(国内文化保護)
◦ 国内の伝統・規範を保持するために権限を行使
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
出典:“Navigating Digital Sovereignty and its Impact on the Internet” (ISOC, 2022)
さらに、さまざまな観点からも
表現の自由
情報へのアクセス権
人権侵害情報の対外公開
ミスインフォメーション防止
コンテンツ管理(固有の文化的価値など)
公序良俗の保全
政治的混乱の回避
…
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Splinternetの発生状況
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Splinternetの発生状況
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
参照:令和5年版 情報通信白書
遮断方法はさまざま
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
経済への影響
Source: https://www.statista.com/chart/23864/estimated-cost-of-internet-shutdowns-by-country/,
https://netblocks.org/cost/?fbclid=IwAR0RSWedK5QJa8eRk_OfhqDQT_BFD2DQGhy_rJjRloG7pUvK7vdQrCgKi2U
最初にスロットリングを行い、次にソーシャルメ
ディアサイトや報道機関へのアクセスをブロック
することで、ウクライナ侵攻以来、ロシアで12億
1000万ドルの経済的コストを惹起。シャットダ
ウンは数週間(3月22日時点で543時間)しか行
われていないにもかかわらず、影響を受けた人の
数が1億1300万人と多い (2022/3/22)
ネットの完全遮断が1年間継続すると
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
9.96% of GDP
新しいsplinternetの登場
2022年2月28日付けのウクライナの第一副首相兼デジタルトランスフォーメーション大臣ミハイ
ロ・フェドロフが求めた以下の三項目は、敵対国をグローバルなインターネットから締め出すため
の分割戦略という「攻撃的な性格」を持つ(スプリンターネット2.0)。
1. ロシアのccTLD (.ru , .su , .РФ)の無効化
2. これらのccTLDに対するSSL証明書の無効化推進
3. ロシア連邦に設置された2つのルートDNSサーバの無効化
本要請については、ICANN側の拒否により実行には移されず、その結果、技術という局面ではロシ
アに対するインターネット分割は実施されていない 。
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
ICANNはロシアのイン
ターネットドメインを失
効させることはない、そ
の影響は “壊滅的 ”である
と指摘(3月5日)
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Splinternetの変質・進化
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
動機はDefensiveからOffensiveに変化
Sovereignty-driven のみならず Market-driven の可能性:「民間企業による主権国家排除」
オンラインプラットフォームの撤退
ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け、GAFAMを含むテック大手企業はロシアでの事
業を相次いで停止
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Source: https://twitter.com/nickclegg/status/1498395147536527360?s=20&t=vJJAf5m70VXm2R31T2Qaew, https://www.politico.eu/article/youtube-bans-russian-media-outlets-across-
europe/, https://www.reuters.com/business/media-telecom/microsoft-remove-rt-apps-ban-russian-state-owned-media-ads-2022-02-28/, https://www.wired.com/story/apple-russia-iphone-
ukraine-traffic-maps-rt-sputnik-app-store/
Splinternetの次はよりoffensiveな形に?
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
銃の供与から接続手段の供与へと進化?
出典:https://www.reuters.com/world/middle-east/musk-says-activating-starlink-
response-blinken-internet-freedom-iran-2022-09-23/?fbclid=IwAR2dvl6gXxiLnb6-
3KpUjK6sBKWiSOoKcQ8i_ISRKaldHGp-0yZ2JUSSfec
https://www.politico.com/news/2022/09/23/treasury-department-expands-internet-
iranians-00058577?fbclid=IwAR1rL7-EQmu2UE0nHLHmepKEMYHnSHPRALp-
siEQR2B2q72wOH5aP8Gqgy4
FP-45 ”Liberator”
Internet Societyの主張(2022/3/23, 2022/4/14)
Splinternetとは、私たちが使っているオープンでグローバルに接続され
たインターネットが、政府や企業によってコントロールされた断片的な
ネットワークの集合体に分裂してしまうという考え。
最も有名な例は、中国の “グレート・ファイアウォール ”。ウクライナへ
の侵攻をきっかけに、ロシア政府は国家統制の「ロシア・オンライン」
を作ろうとしている。
Internet Societyは、米国、EU、G7が4月6日、インターネット・アクセ
スと情報の流れをサポートする電気通信サービスを対ロ制裁の対象から
除外することを約束したことを歓迎する。
ウクライナ戦争やその他の地域において、インターネットが地政学の手
先とならないよう保護しなければならない。危機の時代には人道的努力
と情報へのアクセスを支援することが特に重要。
Source:
https://www.internetsociety.org/blo
g/2022/04/us-eu-and-g7-
commitment-will-slow-the-
splinternet-but-more-work-needed/
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Source:
https://www.internetsociety.o
rg/blog/2022/03/what-is-the-
splinternet-and-why-you-
should-be-paying-
attention/?fbclid=IwAR1xMQ6
bALe8Wysmg61Mu2KVnldGyY
gCYjLnled-
gqqpN6587XlzipMttqg
A Declaration for the Future of the Internet (Apr. 2022)
コミットメント
◦ オープン、フリー、グローバル、相互運用性、信頼性、安全であり、インターネットが民主主義の原則
と人権および基本的自由を強化し、共同研究と商取引の機会を提供し、サービスを受けていないコミュ
ニティ、特に初めてインターネットを利用する人々が安全に利用でき、個人データのプライバシーと保
護が適切に行われ、かつマルチステークホルダープロセスにより統治されているような包括的方法で開
発、統治、配備されているインターネットを推進し維持する。
原則
◦ 人権と基本的自由の保護・尊重
◦ グローバルなインターネットの維持
◦ 政府によるインターネットの遮断・品質低下措置の回避。
◦ 国際人権法等の枠内で、ネット中立性の原則。
◦ パートナー国間でのDFFTの利益を実現。
◦ 国際協力・安全保障上の脅威に関する情報共有の促進。
◦ インターネットへの包括的で安価なアクセス
◦ デジタル・エコシステムにおける信頼
◦ マルチステークホルダー・インターネット・ガバナンス
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
Source: https://www.state.gov/wp-content/uploads/2022/04/Declaration-for-the-Future-for-the-Internet.pdf
IGF2022での議論(JPNIC調査から抜粋要約)
ブロッキングにより、インターネットの成功に見られるようなイノベーションが制約される。
(OF#48)
データローカライゼーションやフェイクニュース等の抑制といったそれ自体は正当な政策目的がイ
ンターネット断片化を促す可能性がある。ただし、人権保護の名目でスプリンターネットを容認す
ることは認められない。 (OF#49)
パブリックコアとしてのインターネットは全ての国家の機能を支える存在であるが、戦争になると
破壊対象となりうる。ただし、インターネットが本来持つレジリエンシィを考えると、全てのパー
ツを保護する必要はないかもしれない。 (OF#62)
スプリンターネットを行う政府は情報コントロールが目的であるため、経済的・人権的なコストを
強調してもその行動を変えることはできない。政府の命令に従って接続を遮断する事業者の責任を
問うのは困難。 (OF#95)
スプリンターネットの議論ではビッグテックやプラットフォーム事業者の果たす役割も重要。ネッ
トインフラの管理は国を超えて相互接続重視を目指すべきであるが、コンテンツ管理については各
国の独自性が許容されるべき。 (WS#335)
経済制裁がインターネットの断片化をもたらし、当該国の人民の情報へのアクセスを奪う可能性が
ある。 (WS#342)
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
背景は世界の分裂
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )
参照:https://spectee.co.jp/report/democracy_in_the_world_un/
Splinternetは「技術」からは発生しない。
◦ 源は「政策」や「ビジネス」といった「非技術
的」の分野
◦ 技術者が、その「抑止」に対して打てる対策はほと
んどない。
◦ GAFAMによる寡占化と、権威主義国による国内
リソース掌握により、「非技術的な
splinternet」はますます容易に
残された疑問
◦ ICANNをはじめとする技術コミュニティは価値
中立的に「繋ぐ」ことだけを追求すべきか?
◦ 戦時のインターネットは、「第四の戦場」
◦ そもそも「社会」はsplitとnot-splitのどちらで
幸せになれるのか?
◦ Multilateralとmultistakeholderのどちらが有効か?
さて、どうしましょうか?
他のキャンパスにあるコンピューターを遠隔使
用するための手段であったインターネットが社会
インフラ化した結果として生まれた問題
成功しすぎたシステムの運営・管理手法の再検
討が求められている??
T. JITSUZUMI@ July 19, 2023
国立国会図書館勉強会( )

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