PBL2014.12.15
- 3. 問診
症例:60歳男性
主訴:発熱
現病歴:2013年4月21日の夜より39℃台の発熱が出現し、翌日近医を受診。
cefepimeが3日間処方されるも解熱がみられず4月26日に再受診した。
診察前のバイタル:BP120/70mmHg,HR76/min,BT39.2℃,SpO2 94%(RA)
この段階で発熱もうすぐ1週間… …
何を鑑別に挙げますか?
何を聞きたいですか?
- 5. 身体診察
身長165cm、体重63kg
意識清明、血圧120/70mmHg、脈拍76/min、体温39.2℃、SpO2 94%(RA)
心音・呼吸音:異常なし
腹部:平坦、軟、圧痛なし、肝脾腫:なし
神経学的所見:異常なし
表在リンパ節:触知なし
- 7. 検査所見
血液検査: WBC 1,700/μL、Plt 4.4万/μL、AST 614 IU/L、ALT 211 IU/L、
γ-GTP 51 IU/L、LDH 771 IU/L、CK 530 IU/L、BUN 11mg/dL、Cr 0.97
mg/dL、CRP 0.21 mg/dL、BUN 16.6 mg/dL、プロカルシトニン0.19
ng/mL、フェリチン2,910 ng/mL、sIL-2R 1,282 U/mL、PT INR 1.07、
APTT 40.2 sec、FDP 11.9 μg/mL、D-dimer 6.3 μg/mL
尿検査:尿タンパク4+、尿潜血3+
骨髄穿刺所見:slight hypocellular bone marrow、明らかな血球貪食像
はなし
胸部単純X線、CT、腹部CT:異常所見なし
- 8. 診断
SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndromeブニヤウイルス科フレボウイルス属)
ダニ媒介性感染症
潜伏期間:6-14日程度
症状:発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が中心。
頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸不全症状、
出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)も起こりうる。
検査所見:血小板減少、白血球減少、血清電解質異常(低Na血症、低Ca血症)、
血清酵素異常(AST、ALT、LDH、CKの上昇)、尿検査異常(タンパク尿、血尿)等。
- 9. Take home messege:比較的徐脈
体温の上昇と比較して、脈拍数が低すぎること。
比較的徐脈の目安…
40℃でHR120回/min以下
39℃でHR100回/min以下
逆にHRが高すぎると敗血症も考慮
(40℃で150回/min以上、
39℃で130回/min以上)
- 10. 比較的徐脈:原因
Infectious Non-infectious
Legionella β-blockers
Psittacosis 病歴(ペットや
CNS lesions
Q fever 水系の環境)
Lymphomas
Typhoid fever Factitious fever
発疹など
Typhus Drug fever
Babesiosis
Malaria
Leptospirosis
Yellow fever
渡航歴など
Dengue fever
Viral hemorrhagic fevers
Rocky Mountain spotted fever
HRを下げる作用のため
利尿薬(サイアザイド,ループ)
ペニシリン系抗菌薬
セフェム系抗菌薬など
Cunha BA, The diagnostic significance of relative bradycardia in infectious disease.
Clin Microbiol Infect. 2000 Dec;6(12):633-4.
Editor's Notes
- 鑑別診断を問診、診察でしっかり出してほしいので、こういう形式にしました。
- Cefepime:ブドウ球菌属からセラチア,緑膿菌まで広い抗菌スペクトルを示す.
グラム陰性菌の耐性化を誘導しにくく,他剤耐性菌にも抗菌力を示す.
諸外国でも臨床試験が行われており,その安全性が確認されている.
国内で唯一、発熱性好中球減少症の適応を持つ抗菌剤である.→第4世代βラクタム系。
- 聞かれたら出します→2013年4月14日と21日に、自宅裏の草むらを含む複数の場所で作業を行っていた。
- 聞かれたら出します→右大腿外側面と左膝裏の刺し口様皮疹とその周囲に点状皮疹
比較的徐脈に注目
- 次診断
- レジオネラやオウム病、Q熱→病歴(ペットや水系の環境)
腸チフス→バラ疹 発疹チフス→発疹
以下バベシアなど→渡航歴
よく見られる薬剤
硫酸アトロピン
アンホテリシンB
L-アスパラギナーゼ
バルビツレート
ブレオマイシン
メチルドパ
利尿薬(サイアザイド,ループ)
ペニシリン系抗菌薬
セフェム系抗菌薬
フェニトイン
プロカインアミド
インターフェロン製剤