日本教育工学会第33回大会発表

2017年
9月18日（月）
技能五輪国際大会代表選手が
作業中に使用する認知方略
羽田野健
臨床心理士/NPO法人ロッコ
菊池拓男
職業能力開発総合大学校

©HADANO Takeshi 2017 2
1.はじめに

技能五輪国際大会とは
（World Skills Competition:WSC）
1.はじめに
■ 2年に一度開催
■ 若年技能者の国際的な技能競技大会
■ 各国の職業訓練の成果を競う場
■ 51職種・製造系
・情報コミュニケーション系
・建設系
・ロジスティック系
・ファッション系
・対人サービス系
出典：World Skills(https://www.worldskills.org/what/competitions/)

1.はじめに
WSC日本代表選手の選考
優勝者
WSCの前年に開催される
技能五輪全国大会（以下、国内大会）
※ 大会開催年に22歳以下であること
日本代表
出典：中央職業能力開発協会(http://www.javada.or.jp/jigyou/gino/kokusai/about.html)

1.はじめに
Average Point Scoreで見た近年の日本代表の成績
新興国に押され成績が低下
https://www.worldskills.org/what/competitions/worldskills-competitions/

1.はじめに

1.はじめに
選手強化のあり方に改善が必要
（菊池, 2016）
認知方略
暗黙性
明示的な指導が難しい（馬場, 2007）
認知的な技能
作業中に適切な判断を行うための
を強化する重要性を指摘
=
その一方で

1.はじめに
暗黙性
認知方略
■ どのような差異が存在するのか
明示的に指導するには
■ どのような認知方略を使用するのか
選手強化のあり方に改善が必要
熟達度の高い選手熟達度の低い選手
（菊池, 2016）

©HADANO Takeshi 2017
2016年大会で情報系職種の全選手(N=23)を対象に質問紙調査を実施
10
作業中の認知処理に注目
（羽田野・菊池, 印刷中）
認知負荷制御
ワーキングメモリ容量最適化
注意集中指揮
コンダクト・スキル
Conducting Skills
1.はじめに
熟達度の高い選手熟達度の低い選手

■ 1つの職種から得られたもの
知見を強化につなげる
調査が必要
■ 他職種やWSC代表選手も
コンダクト・スキルを使用するか？
コンダクト・スキル
1.はじめに

認知方略
指導に資する知見を得る
WSC代表選手の
1.はじめに
目的

2.調査概要

2.調査概要
■ 2016年国内大会の情報系職種に初出場した選手9名
■ 同職種の出場2回目の選手9名
■ 2017年のWSC日本代表選手（以下、代表選手）4職種5名
目的
対象

測定項目の作成
2.調査概要
■ 技作業中の認知処理に注目した認知方略の測定項目
■ 回答は5件法（1.全くしない〜5.常にそうする）
方法
■ 先行研究（羽田野・菊池2016）を参考に作成

測定項目の作成
2.調査概要
調査の実施
2016年10月の国内大会で20項目を実施
2017年5月に，代表選手に実施
改定・追加し43項目に
両者で内容的に共通する7項目を分析対象に
■ 技作業中の認知処理に注目した認知方略の測定項目
■ 先行研究（羽田野・菊池2016）を参考に作成
■ 回答は5件法（1.全くしない〜5.常にそうする）
方法

2.調査概要
1 作業の段取りを、詳しく計画する
2 自分が情報を理解しやすいように、マーキングなどで競技課題に手を加える
3 現在は全体の作業のうち、どこを進めているかを把握する
4 作業時応じて集中力を高めたり、抑えたりする
5 作業と直接関係のないことが気になっても、目の前の作業に切り替える
6 必要な情報と不要な情報を分ける
7 現在の作業で考えるべき点と、考えるべきでない点を区別する
方法
測定項目

3.調査結果

経験別に群分け
■ 経験選手（同一職種の2回目の選手）
■ 代表選手（WSC代表の4職種5名）
※ 少数サンプルで十分な検定力が得られないため
統計的な分析は行わなかった
3.調査結果
■ 未経験選手（情報系職種の初出場の選手）
使用頻度を比較 ■ 未経験選手の使用頻度を基準に項目を配置
分析

未経験選手の
使用頻度順に
項目を配置
3.調査結果
分析
■ 未経験選手の使用頻度を基準に項目を配置

3.調査結果
3群とも使用頻度が同程度な方略(項目2,3)
経験選手と国際選手が高い使用頻度を示す方略(項目6,7,1)
代表選手が比較的高い使用頻度を示す方略(項目4,5)
分析
未経験選手の
使用頻度順に
項目を配置

3つの傾向に分類
3.調査結果
3群とも使用頻度が同程度な方略(項目2,3)
経験選手と国際選手が高い使用頻度を示す方略(項目6,7,1)
代表選手が比較的高い使用頻度を示す方略(項目4,5)
分析
傾向3は代表選手
に特徴的な可能性
■

分析
3.調査結果
注意制御に関わる認知方略
未経験や経験選手と比べて多用している可能性
傾向3の項目は、どんな特徴を持つか

作業との関連性
競技課題精密・複雑単純・反復
作業ミスが生起しやすい
高い注意集中が求められる
注意集中
3.調査結果
+
注意資源時間経過+
少なくとも5時間程度
考察
精密・複雑
消費、減衰 (Baddeley et al, 2012; Warm et al., 2008)

作業との関連性
競技課題単純・反復
3.調査結果
+
工程に応じて集中を制御し，資源をマネジメント
■ 注意資源のマネジメント
■ 注意集中の制御
長時間に渡り競技課題を精度高く遂行
5 作業と直接関係のないことが気になっても、
目の前の作業に切り替える
4 作業に応じて集中力を高めたり、抑えたりする
考察
精密・複雑

観察可能
認知方略の階層性
経験の浅い選手
観察・模倣学習が比較的容易
3.調査結果
技能指導との関連性
顕在性
高い
領域固有知識
必要性が低い
模倣可能
明示的な指導
考察
2 自分が情報を理解しやすいように、
マーキングなどで競技課題に手を加える

観察困難
認知方略の階層性
経験の深い選手
観察・模倣学習が比較的困難
3.調査結果
考察
技能指導との関連性
顕在性
低い
領域固有知識
必要
模倣困難
暗黙的な訓練
4 作業に応じて集中力を高めたり、
抑えたりする

4.まとめ

代表選手 ■ 注意集中を制御
階層性
認知方略結果
■ 顕在性や観察可能性が低い
■ 領域固有知識が求められる
4.まとめ
■ 長時間に渡り
競技課題を精度高く遂行
WSC

技能五輪の作業遂行
今後の展望
時間
認知方略
今後、更なる検討が必要
作業ミス感情
4.まとめ

ご清聴いただき
ありがとうございました

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