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研究背景
ナッジ
実験内容・結果
まとめ
1
2
3
4
目
次
1
わが国は世界トップクラスの「長寿国」
2
平均寿命
生存率
男性 81.41歳 女性 87.45歳
(2019年 厚労省より)
男性 89.6% 女性 94.5%
(10万人の出生に対する65歳時点での生存率)
3
長生きするほど多くの老後資金が必要に...
4
年金 貯蓄
老後資金
5
日本の年金は「3階建て」
6
国民年金
厚生年金
私的年金
7
国民年金
日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人が加入
厚生年金
原則70歳未満の公務員、教職員、民間企業の会社員が加入
8
国民年金 厚生年金
=公的年金
→平均受給額 国民年金 56,049円
厚生年金 146,162円
&
9
私的年金
公的年金の不足を補うために、任意で加入できる年金
~代表的な私的年金~
・企業年金
・個人型確定拠出年金(iDeCo)
・国民年金基金
など
10
年金 貯蓄
老後資金
11
老後資産2000万円問題(2019 金融庁より)
実際はそれ以上の金額が必要
12
定年前の平均年収
→約546万円
公的年金平均年間受給額(夫婦2人の場合)
→約242.4万円
半分以上の落ち込み
13
(36.1万円×12か月×20年)-(242.4万円×20年)
=3,816万円
14
65歳定年後、夫婦2人、85歳(平均寿命)までゆとりある生活
を送ると仮定
貯蓄額別人口分布
15
(総務省省「令和2年度家計調査」を参考に作成)
全体の約7割
さらなる自助努力の必要性
しかし...
16
私的年金加入者数(万人)
17
加入率は低い
(iDeCo公式、厚労省HPより作成)
このような事態は日本だけではない
18
→平均寿命の延びに対し、
年金の積み立てが不足する現象
終身年金パズル
キーワード:時間選好、双曲割引型
19
時間選好
双曲割引型
将来の報酬よりも、現在の報酬を好む選好
その度合いを示す指標が「時間選好率」
時間選好の種類の1つ
現在の報酬価値を過剰に高く設定する、という特徴
20
老後資金の準備不足の背景に「時間選好」が存在
終身年金パズルの研究より
「双曲割引型」の選好を持つ人が一定数存在
21
これらのことから
22
別のアプローチ
の必要性
現状:
私的年金への税制優遇
措置による加入促進
長期的な積み立ての必要
⇕
双曲割引型選好と
ミスマッチ
・私的年金加入率の低さ
・ゼロ貯蓄世帯16%
就労に意欲的な高齢者
65.9%
↓
そのうち健康状態を理由
に働けない人が約30%
①金銭面からのアプローチ
②健康面からのアプローチ
23
金銭に対する時間選好率>健康状態に対する時間選好率
貯金よりも健康状態を維持する方が人々にとって容易
=対策がしやすい!
24
ナッジとは
• 人々がより良い行動を自発的にとれるように手助けする手法
• 「選択の自由」を保持し、強制や禁止をすることがない
→人々に受け入れられやすい
• 行動経済学に基づき、人間の特性を考慮して設計
実用例も多数
25
ナッジ実用例
26
デフォルト
27
あらかじめ理想的な選択がされた状態を初期設定としておく手法
<臓器提供意思表示のデフォルトナッジ>
臓器移植に「同意する」
と意思表示した場合のみ
摘出可能
臓器移植に「同意しない」
と意思表示した場合のみ
摘出不可
同意率4~28% 同意率86~100%
社会比較
28
他者と比較させることで理想的な選択をしてもらう手法
<督促状の社会比較ナッジ>
税金の未納者に送付する督促状
「英国では、10人に9人が税金を期限内に支払っています。」
→納税率が5.1%上昇
実験背景
厚生労働省「平成26年度厚生労働白書」
国の取り組み
“健康日本21”
喫煙・高血圧の認知:改善
運動不足:未改善
→運動不足に加入価値が存在する
29
実験仮説
→既存の介入よりもナッジを活かした介入のほうが効果があること
既存の介入方法
・ポスターによる介入
・運動の推奨時間の掲示
・運動の重要性の説明
私たちの介入
損失回避のナッジ
“人は損失を2~3倍嫌う”
30
実験デザイン
事前
アンケート
• 過去・現在の運動習慣
• 性別・大学等の基本情報
動画の視聴
• ポジティブ群→既存の介入を参考に作成
• ネガティブ群→ナッジの応用
事後
アンケート
• 運動意欲
• 認知反射テスト
• 健康リテラシー
ポジティブ群
ネガティブ群
31
実験結果 アンケート詳細
ポジティブ群 ネガティブ群
性別 男性54.7% 女性42.2%
その他3.1%
男性51.6% 女性48.4%
過去の運動習慣 2.12 1.75
認知反射テスト平均点
(3点満点)
1.89 1.78
健康リテラシ―平均値
(5段階評価)
3.45 3.39
→結果に差が生じた場合、動画による介入によるものとする 32
実験結果① 関心度の高まり
65.6%
56.3%
56.3%
質問内容:動画視聴後、運動への関心がどの程度上がったか?
→ポジティブ群よりネガティブ群が関心の上がり具合が大きくなった 33
実験結果② 観点比較
→平均値や中央値等を参考にHグループ、Lグループに分類
性別
認知反射テスト
健康リテラシー
関心度の変化
34
観点比較
CRT\N.P ポジティブ ネガティブ
H 3.17 3.68
L 3.61 3.97
HL\N.P ポジティブ ネガティブ
H 3.58 4.02
L 3.25 3.64
性別\N.P ポジティブ ネガティブ
M 3.28 3.75
W 3.52 3.96
運動習慣
\N.P
ポジティブ ネガティブ
H 3.28 3.74
L 3.63 3.97
→ネガティブフレームは個々の性質にかかわらず効果的である 35
実験まとめ
・既存の介入よりも効果的
・ネガティブフレームはどの性質の人にでも効果的
・この動画を若者が見やすい場所で流す
・若年層からの習慣形成で老後の健康を維持
36
参考文献
高齢者雇用 000551650.pdf (mhlw.go.jp)
001083358.pdf (mlit.go.jp)
3 集積による効率化 (mlit.go.jp)
keizaironshu40-2_255-264.pdf
平均給与|国税庁 (nta.go.jp)
2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果 結果の概要
(stat.go.jp)
0000210502.pdf (mhlw.go.jp)
37

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