世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターアジャイル・ガバナンスプロジェクトでは、アジャイルガバナンスを実現する上で不可欠となるIT公共調達改革プロジェクトを行なっています。その一貫として、諸外国の専門家や、日本における公共調達の実務に携わる産官学民の関係者とともに、新しいIT公共調達のあり方について検討する２DAYSワークショップを実施しました。その検討内容を、デジタル庁に「IT公共調達改革に関する提言書」として共有しました。

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公共調達改⾰に関する提⾔書
2022年1⽉20⽇
世界経済フォーラム第四次産業⾰命⽇本センター
デジタル庁 御中
2021年12⽉9⽇、11⽇の⼆⽇にかけて、当センター主催のワークショップ「Public Procurement 2.
0」を開催しました。英国で本格導⼊されている「デジタルマーケットプレイス」の現状や、世界の状況を踏ま
え、⽇本の公共調達の在り⽅について、関係各省庁・地⽅⾃治体、関係企業の⽅々と議論を深めること
ができました。デジタル庁からもご参加いただき誠にありがとうございます。
本ワークショップから得られた議論を下に、⽇本での公共調達改⾰の⼀環として、「デジタルマーケットプレ
イス」の導⼊の検討に向け、下記に提案をまとめました。政策への反映を含め、是⾮ご検討のほどよろしく
お願いいたします。
記
１. ⽇本版「デジタルマーケットプレイス」に関する具体的な⽅向性と進め⽅
① 公共調達の、特にクラウドサービスやIT⼈材の調達プロセスを⼀元化する、⽇本版「デジタルマー
ケットプレイス」の導⼊を具体的に検討するべき。その中で特に、意識するポイントは以下の通り。
i. 透明性・公平性の担保を原則として、調達する⾏政側、ベンダー側双⽅にとって、参加す
るインセンティブを意識した仕組みを構築し、市場拡⼤を図ることで、国⺠により良いサービ
スを迅速に届けることを⽬指す。
ii. 国と地⽅⾃治体が双⽅同じマーケットプレイスを利⽤するべき。ベンダー側も登録コストが減
り、⾏政側も管理コストが減るため、双⽅にインセンティブがある。
iii. 「デジタルマーケットプレイス」を創出するだけではなく、具体的なマッチングを促進するための
コミュニティマネージャーの設置等、持続可能な仕組みになるべく、常に仕組みを⾒直し、よ
りいいものにしていく中⻑期的な取り組みが必要。
iv. 契約し、調達後の具体的なプロジェクトの評価の仕組みを検討するべき（例、KGIの設定
と、その達成度の公開等）。

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② ⽇本版「デジタルマーケットプレイス」導⼊に向け、以下の点を考慮し進めていくのが良いのではな
いか。
i. デジタルマーケットプレイスをすでに導⼊している英国やアメリカ、インド等の状況を早急に調査
し、そのプロセスや失敗・成功事例から、⽇本に適したものは何かを検討するべき。その際に、
既存の法規制（会計法、財政法、WTO協定等）との関係も整理し、必要であれば法規則
改正、契約条項の⾒直しを検討するべきではないか。
ii. 具体的な取り組みを国レベルではなくとも、先⾏して取り組みを進める意欲のある地⽅⾃治体
等で実施していくのがいいのではないか。
iii. 2023年⽇本開催されるG7やその他の国際会議等の機会を捉えて、⽇本の公共調達改⾰
の成果などを世界に発信して、国際調和の必要性を訴えていくべきではないか。
２．⾏政職員の調達スキルの向上、プロジェクトマネージャーの育成
① ⾏政側が予算を確保して、それを効果的・効率的に活⽤するために、中央省庁の職員のみなら
ず、地⽅⾃治体の職員のデジタルリテラシーの底上げ、特に調達スキルの向上が必須ではない
か。また、中央省庁の⼈事異動が通例では2－3年で変わっていくが、組織としてデジタル化に関
わるプロジェクトの継続性を担保できる仕組みを考えるべきではないか。
② ITシステム構築に係るプロジェクト成功には、組織内の意思決定をまとめ、⺠間と⾏政の橋渡し
役となる、⾏政側のプロジェクトマネージャーの育成が必要。そのために具体的なシステム開発を
推進していく際に、主担当のプロジェクトマネージャーの⾒習いとして、副操縦⼠的なポジションに
⾏政側出⾝者を配置するようにし、継続的にデジタルに関わるプロマネ育成とノウハウの移転を
⺠間事業者から⾏政関係者に実施していく仕組みを検討するべきではないか。
③ IT調達は、開発⽅式（waterfall/agile）やクラウドかオンプレミスか、調達の対象がITシステ
ムをエンドツーエンドで作り込むのか/設計部分だけなのか、SaaS/IaaSなのかで調達⽅法や契
約形態、契約内容が⼤きく異なってくるため、複雑なバリエーションに対して適切に対応するに
は、ITや調達制度、契約に関する専⾨的な知⾒が必須となる。デジタル庁のみならず他省庁お
よび地⽅⾃治体の⾏政職員への専⾨的知⾒・アドバイスの提供を⾏うため、「デジタル庁の戦
略・組織グループ内にある「法務」機能についてコンプライアンスチェック以外にも、調達案件を勘
案して契約に落とし込むことのできる専⾨⼈員や弁護⼠などの専⾨家を配置することを検討され
るべきではないか。

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３．プロジェクトの質を向上し続けるための評価軸の設定、プロジェクト管理ツールの導⼊
① プロジェクトのライフサイクルを通じて、継続的な改善を⾏うためのKPIの構築とEBPMの実施が
必要ではないか。その際に、顧客満⾜度や、利⽤頻度というユーザー⽬線での評価と、⾏政職
員の負担減やパフォーマンスの向上、事業者側からの評価など、多⾓的な観点でKPIを構築す
ることが望ましい。また、そのKPIに基づいて、⼈事評価・キャリアパスが連動し、インセンティブをつ
けることによって実質的に機能するのではないか（例えば、重要ポストに就くためには、システム
開発の部⾨を経験することが必須条件とするなど）。
② プロジェクトごとの進捗状況や関連⽂書、事後評価や引き継ぎ事項等を⼀元化し、プロジェクト
間で横断的に共有可能にする仕組みが必要ではないか。プロジェクト管理プロセスの標準化とと
もに、農林⽔産省で先⾏的に開発されているプロジェクトマネージメントオフィス（PMO）ツール
を参考にプロジェクト管理ツールを導⼊し、情報の透明性を確保すべきである。また、これらのプロ
ジェクト管理⼿法に係るナレッジの共有を⾏政組織横断で可能にするためのエコシステムの構築
が必要である。
以上

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提⾔書への賛同者（五⼗⾳順、敬称略）
2022年1⽉20⽇
上⽥歩央（インダストリーズ トランスフォーメーション事業本部,株式会社セールスフォース・ドットコム）
及川涼介（カスタマーマネージャー,株式会社グラファー）
岡野聡⼦（公共調達統括本部⻑補佐, 公共調達渉外担当, アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会
社)
荻原聡（デジタルサービス局サービス開発担当部⻑, 東京都）
落合孝⽂（パートナー, 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業）
坂本俊輔（デジタル戦略グループITテクニカルアドバイザー, 農林⽔産省）
笹沼穣（公共法務統括 , アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)
菅野晶仁（Code for Japan プロボノ/株式会社YUIDEA）
⽥中祐耕（第⼀官公ソリューション事業部事業戦略グループ政策エキスパート, ⽇本電気株式会社）
冨岡周泰（富⼠通総研）
千葉⼤右（船橋市 / NPO法⼈Digital Government Labs）
畠⼭暖央（デジタル戦略グループ課⻑補佐, 農林⽔産省）
向⼭淳（主任研究員, ⼀般財団法⼈アジア・パシフィック・イニシアティブ）
森浩三（企画調整局デジタル戦略部部⻑, 神⼾市）
⽮野敏樹（公共政策部シニアマネジャー, アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)
吉永隆之（ディレクター, NPO法⼈コミュニティリンク Urban Innovation Japan）
吉本翔⽣（CEO, 株式会社Wisevine)