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未来型国家エストニアの挑戦
電子政府が開く世界
2018年1月27日
第10回公開読書会
日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会
Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
JEEADiS(ジェアディス)
前田陽二
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
アジェンダ
2
1.当協議会ご紹介
2.ICT先進国エストニア概要
3.エストニアのICT戦略
4.電子政府サービス
5.スタートアップ国家エストニア
6.日本への提言
まとめ
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
1.当協議会ご紹介
3
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
1.当協議会ご紹介
4
組織名称 Organization Name
日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会
Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
(略称 JEEADiS : ジェアディス)
エストニアをデジタル社会のモデルとし、国民視点で日本の
情報化社会のあり方を考え、世界に貢献できる日本を創る
ことを目指す。
設立
2015年4月1日
代表者/理事
代表理事 Chairman of the board of directors
前田 陽二
理事 Executive Directors
- 内田 道久 (事務局長)
- ラウル アリキヴィ
- 牟田 学
- 石田 雄太
http://www.jeeadis.jp
理事
ラウル
当時エストニア首相
ターヴィ・ロイヴァス氏
代表理事
前田
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 5
2006年9月
2015年9月
エストニアとの出会い
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
なぜ EU/エストニアなのか
6
・ 電子政府の実績
インターネット投票など1500以上の行政サービスを構築し運用している。
これらの開発運用を低予算(数十億円/年)で、効率的に実施している。
EUの一員として、電子商取引をはじめ国境を超えた連携を推進。
・ 電子政府推進の透明性
国民に対し、資料をネット上で提示し、理解を得ながら進めている。
・ セキュリティを重視
国として信頼性の高い情報基盤を整備
① エストニアeIDカードによる電子署名、電子認証
② X-Roadによる安心・安全な情報連携
これまで、大きなトラブルは起こっていない。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
2.ICT先進国エストニア概要
7
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
2.ICT先進国エストニア概要
国名:エストニア共和国
首都:タリン
人口:131万人(2015年)
Tallinn
Estonia
8
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 9
エストニアの基本情報
エストニア 日本
面積 (km2) 4.5万 (九州とほぼ同じ) 37万
人口 131万(2016年1月) 1億2,600万
人口密度(/km2) 30 330 (北海道で約68)
広域自治体 州(15) 都道府県(47)
基礎自治体 町村(213) 市区町村(1,742)
GDP(米ドル) 260億(205億ユーロ) 4.6兆
一人当たりGDP(米ドル) 17,000(15,580ユーロ) 32,000
(外務省 エストニア共和国基礎データに基づき作成)
エストニアの最高地点は、「スール・ムナマギ(大きな卵)」で318m
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 10
年月 略史
1219年 デンマーク人が進出し、タリン市を築く。
1346年 ドイツ騎士団が進出し、領有。
1629年 スウェーデン領となる。
1721年 北方戦争の結果ロシア領となる。
1918年2月24日 独立を宣言。
1920年 ソ連と平和条約を締結。
1940年 ソ連に併合。
1991年8月20日 エストニア最高会議が独立回復に関する決定を採択。
1991年9月6日 ソ連国家評議会がバルト三共和国の国家独立に関する決定を採択。
2004年3月 NATO加盟
2004年5月 EU加盟
2007年12月 シェンゲン領域に参加
2010年12月 OECD加盟
2011年1月 ユーロ導入
(外務省 エストニア共和国基礎データに基づき作成)
エストニア略史
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 11
地方議会州議会
1院制(101名)
比例代表制(4年)
議会
(リーコギク)
大統領(5年)
政府
各省庁
首相(4年)
大臣
(15県) (213市町村)
選
任
承認
推
挙
選
任
選
任
エストニアの政治体制
知事 市町村長
(4年)18歳以上選挙権 、21歳以上被選挙権
エストニア大統領
2016年10月10日~
Kersti Kaljulaid
(1969年12月30日生まれ)
エストニア 首相
2016年11月23日~
(1978年7月2日生まれ)
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3.エストニアのICT戦略
12
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 13
3.エストニアのICT戦略
(1) 行政の透明性の重視
国民に分かりやすい資料の提示
① 推進方針を作成/相互運用性の枠組みを作成
② 計画(7年計画:毎年の予算案(40億円程度)を作成)
③ 報告(年鑑を発行。最近は発行されていない。)
ICT推進ポリシ
ICT推進計画
法律の作成、改訂
実行 年鑑(YearBook) 1996-2012
(2) 効率性の重視
① 省庁が共通に利用する情報基盤を整備
② 2重の投資を避けるためのチェック体制を構築
1991年 再独立
【ICTとバイオテックに資本を集中(農業推進は差し置く)】
1996年~2000年 タイガーリープ(虎の躍進)プロジェクトの実施
1998年 : 「エストニア情報ポリシーの原則」採択
政府ポータルサイトを開設
2000年 : 「電子署名法」の施行
2001年 : データ交換レイヤーX-Road 開始
「情報公開法(Public Information Act)」の施行
2002年 : The Look@Worldプロジェクト(~2004年)
eIDカードの発行開始
2004年 : 「エストニア情報ポリシーの原則2004~2006」
「エストニア相互運用フレームワーク」
2006年 : 「エストニア情報社会戦略2013」
モバイルID開始
2013年 : 「エストニア情報社会戦略2020」
14
エストニア電子政府推進の歴史
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 15
推進方針 エストニア情報ポリシーの原則(抜粋)
「エストニア情報社会戦略2013」より
・ エストニアにおける情報社会の発展は、公共部門が主導する形で、この原則にし
たがい進むべき方向を戦略的に選択する。
・ 情報社会は、公共部門、民間部門および第三セクターの間の協力に基づいた、調
整された方法で開発される。
・ 公共部門は賢明な顧客であり、公共調達において、革新的な実現方法に可能な
限りの自由が残されることを保証する。
・ 情報社会は、すべてのエストニア国民のために開発される。その一方で、特殊な
ニーズを持つ社会的なグループへの差別の廃止、地域の発展、および地域の自主
性の強化に特別の注意を払う。
・ エストニアの言語および文化の一貫性が保証される。
・ 知的財産の作成者と利用者の双方の利益を考慮に入れる。
・ 情報社会の発展によって、国民のセキュリティの認識が徐々に低下していっては
ならない。基本的な権利、個人のデータやIDの保護は保証される必要があり、また情
報システムにおける受け入れ難いリスクは避けなければならない。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 16
・ 情報社会の発展を目的とする活動は、エストニアにおける研究開発活動に結びつ
けられる。
・ 情報社会とそれによりもたらされる機会を、すべての分野の方針を作成する時に
考慮に入れる。
・ EUや世界のその他の地域で起きている動向を考慮に入れる。さらに、エストニア
は、アクティブなパートナーとして自身の体験を他の国々と共有すると共に、他の
国々からも学ぶ。
・ 公共部門は、既に存在している技術(eIDカード、データ交換層X-Roadなど)を利
用し、IT技術開発の重複を避ける。
・ 公共部門はビジネス・プロセスを再構成して、一般市民、企業、および公共団体
から1回データを収集するだけで、あらゆるサービスが実現できるようにする。
・ 公共部門は異なるハードウェアおよびソフトウェア・プラットフォームを同等に取り
扱い、自由に無償で利用できるオープンな標準(オープンスタンダード)を使用して情
報システムの相互運用性を保証する。
・ データの収集および情報通信技術の開発は、再利用の原則に従って実施される。
協会代表
政府
情報協議会(IT)
半分は民間から参加(大学、
銀行、IT企業)
行政 ICTワークグ
ループ
州 ICTワーク
グループ
地方政府
国家情報システム局
(Department of State
Information Systems:RISO)
この3つの活動の調整を行う経済通信省
エストニア情報システム局(Estonian Information System Authority:RIA)
州IT協議会
行政IT協議会
アクションプラン
ITマネージャー
協議会代表
運営の代表 とIT
マネージャー
行政IT協議会長
大臣 事務総長
CIO
州政府
ITマネージャーITマネージャー
省庁
ITマネージャー
地方政府協会
下部機関
電子政府システム推進体制
17
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
エストニアeIDカード
① エストニアのID番号とは
・ 11桁 GYYMMDDSSSC
G :性別及び世紀、奇数男性 偶数女性 1-2 (19)、 3-4(20), 5-6 (21)、
YYMMDD:生年月日、SSS :シリアル番号 C:チェックデジット
・ 誕生時に付番
・ 利用分野に限定はない
・ 特に秘密にしない(デジタルネームと呼ばれ、名前と同様の扱い)
② エストニアのeIDカードとは
・ 法律により、15歳以上の国民は、保有する必要がある。(罰則はない)
・ 対面において、個人番号を証明する書類や本人確認の際の公的な身分証明書
として利用できる。
・ ネットにおいて、様々な民間及び行政サービスを利用することができる。
・ シェンゲン協定内の国の移動の際、パスポートの代用となる。
・ 交付手数料は、50ユーロ/5年
18
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
顔写真とサイン
・ カード所有者の氏名
・ カード所有者の性別
・ カード所有者の市民権
・ カード所有者の生年月日
・ カード所有者のID番号
・ カード番号
・ カードの有効期限
・ カード所有者の出生地
・ カード発効日
・ その他、居住許可に関する項目等
・ 表と裏に印刷されたデータを機械に読み取
り可能なフォーマットで印字
表面
裏面
上記の券面情報(顔写真とサインを除く)以
外に、 認証用と署名用の2種の電子証明書
(名前、ID番号記入)
エストニアeIDカードの様式
19
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 20
モバイルID・スマートIDも普及
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 21
エストニア電子政府基本構成
KIT
(市民向け
ポータル)
EIT
(企業家向け
ポータル)
AIT
(公務員向け
ポータル)
政
府
情
報
シ
ス
テ
ム
管
理
シ
ス
テ
ム
RIHA
住
民
登
録
セ
ン
タ
ー
健
康
保
険
セ
ン
タ
ー
年
金
セ
ン
タ
ー
自
動
車
登
録
セ
ン
タ
ー
テ
レ
コ
ム
公
文
書
管
理
セ
ン
タ
ー
インターネット - X-road
公的機関 民間企業
サーバ I
サーバ II
モニタリング
ヘルプデスク
X-road 認証センター
X-road センター 認証局
eID カード
&
モバイルID
5大銀行
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
アダプタサー
バー
アダプタサー
バー
アダプタサー
バー
アダプタサー
バー
アダプタサー
バー
アダプタサー
バー
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
ポータルサイト
【170以上のDBが接続】
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 22
国家情報システムの管理システム:RIHA
エストニアでは、国のデータベースの複製を省庁や組織ごとに作成したり利用す
ることが許されていない。
各機関はシステム管理責任者が管理するシステムの構成、データベースの形式
とアクセスするための方法を明記して、情報を利用したい関係者に知らせる。
(Public Information Act)
セキュリティサーバ
情報はセキュリティ・サーバ間で行われ、情報は暗号化してインターネット上に送
信される。データの証拠価値と完全性を保持するために、送信されるすべてのメッ
セージには署名が施される。また、すべてのメッセージログは保存される。
アダプタサーバ
すべての情報システムがアダプター・サーバ(AS)経由でX-Roadのセキュリティ・
サーバに接続されている。アダプター・サーバは、XML形式のX-Roadメッセージを
特殊なデータベース・クエリー言語(主にSQL)に変換し、問い合わせの応答をXML
形式に戻すという、コンバーターの役割を果たしている。
【用語解説】
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
4.電子政府サービス
23
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
4.Best Practice of Digital Society(国民生活)
24
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 25
電子政府サービスの開始年表
開始年 サービス名称
2000 ① 電子閣議
② 電子納税申告システム:eTAX
2002 ③ 教師と家族との
コミュニケーションツール:eKool
2004 ④ e警察
2005 ⑤ インターネット投票:iVote
2007 ⑥ 会社登録システム
2008 ⑦ 医療情報システム
国会議事堂
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
Source:e-Estonia資料
エストニアの閣議では、紙は使用しない。
このシステムにより、以前毎週閣議に要していた数千枚もの紙を削減し、環境へ
のインパクトを低減させただけでなく、閣議時間も、4~5時間かかっていたのが、
30~90分に短縮された。
電子閣議(2000年~)
26
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
電子納税申告システム:eTax(2000年~)
27
エストニアの税務申告の約96パーセントがe-Taxにより提出されている。
・ 納税者はeIDカードを用いてあらかじめ作成してある納税申告のデータを確認。
・ 修正が必要な場合は変更して、デジタル署名で納税申告文書を承認。
・ 一般的に3~5分で確認作業を行うことができる。
・ 税の還付が数か月から3日ほどに短縮
* エストニアの所得税は20%だが、子供の養育費控除などの控除がある。
* 現在、電子領収書(e-receipt)プロジェクトが進行中。
保証書、説明書とともに、領収書を電子的に受け取る。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
教師と家族とのコミュニケーションツール:eKool(2002年~)
先生 生徒 保護者
校長
生徒の課題から学校生活全般をマネージ
Source:Enterprise Estonia資料
28
eKool
ekoolは民間のサービスで有料(0~175EUR/月)だが、多くの学校(80%以上)が採用している。
シンプルで使いやすい教育情報システムであり、校長、教師、クラス担任、生徒、親(保護者)
など、教育にかかわるすべての人々をつなぐものである。
① 生徒の学習および成長に関する首尾一貫した方針を持ち、かつ異なる関係者間のコミュ
ニケーションを改善するのを支援する。
② 学校生活と教育過程へ親をより活動的に参加し、親に対し学校関連の情報をよりアクセ
スしやすくし、学校と教師の通常業務の量を減らし、報告や分析をより容易にし、学校の管理
上の能力を向上させる。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
・警察官に免許証の提示を求められたときは、免許証を携帯していなくてもeID
カードを警察官に渡すことで提示できる。
・警察官は、モバイルPCでeIDカードを読取りX-Road経由で免許証の内容を確認
する。
29
29
電子警察:POLIS情報システム (2004年~)
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インターネット投票:i-Vote(2005年~)
30
暗号化された
投票内容
電子署名
投票者
の秘密鍵
選挙管理委員会の
公開鍵
暗号化された
投票内容
投票内容
投票者
選挙管理委員会の
秘密鍵
投票日前の一定期間(1週間ほど)が、i-Vote利用できる。
最終投票が有効となる。
投票所での投票が、最優先される。
投票者
の公開鍵
地方議員
2005
国会議員
2007
EU委員
2009
地方議員
2009
国会議員
2011
地方議員
2013
EU委員
2014
国会議員
2015
有権者 1 059 292 897 243 909 628 1 094 317 913 346 1 086 935 902 873 899 793
投票者 502 504 555 463 399 181 662 813 580 264 630 050 329 766 577 910
投票率 47,4% 61,9% 43,9% 60,6% 63,5% 58,0% 36,5% 64,2%
I-Vote
利用者
9 317 30 275 58 669 104 413 140 846 133 808 103 151 176 491
I-Vote
利用率
1,9% 5,5% 14,7% 15,8% 24,3% 21,2% 31,3% 30,5%
データは http://www.vvk.ee/voting-methods-in-estonia/engindex/statistics から入手
選挙とインターネット投票が行われた割合
31
(18歳以上選挙権 、21歳以上被選挙権)
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
会社登記ポータル(2007年~)
32
会社登記ポータル(Company Registration Portal:CReP)は、起業家が会
社を起業する際のこまごまとした手続きを減らし、商業登記所への各種
届け出に要する時間を節約することを主な目的とする。
登記内容の登録、登記費用(185ユーロ)の支払いを行った後、登録申
請を行うと30分程度(最短で18分)で会社の登録を行うことができる。
このポータルは起業家と裁判所の登記局をつなぐ電子通信チャンネル
となる。起業家はこのチャンネルを通じて登記申請やそれに必要な書類、
会社の年次報告書を提出できるほか、会社連絡先データ、取締役会、監
査役のリスト、活動領域などの変更を届け出ることができる。
www.jeeadis.jp 33
エストニアの医療情報システム(2008~)
Estonian National Health Information System (EHIS)
全国規模で医療データを交換する基盤
として2008年に整備
蓄積された記録は、研究にも利用可能
Electronic Patient Record
電子患者記録システム
患者情報、医療記録、来院記録、病歴等が作成・
登録・データベース化される。
Digital Image
電子画像管理システム
X線やCT画像等のデータが作成・登録・データ
ベース化される。
Digital Registration
電子予約登録システム
患者が医療機関をオンライン予約できる。予約情
報は各医療機関のシステムと連動。
Digital Prescription
電子処方箋(2010年~)
年間約800万枚の処方箋を電子化し、利用率98%
を超える。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
5.スタートアップ国家エストニア
34
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 35
「エストニア情報社会戦略2020(DIGITAL AGENDA 2020 FOR ESTONIA)」
概要
・誰もが無料で高速なインターネットを利用できるようにする。
・デジタルデバイドの克服
・ユーザフレンドリーな公共サービスの実現
など
e-Residency
2014年12月、非居住者のためにeレジデンシーカードの発行を開始。
これは、エストニア政府が非居住者にID番号を提供し、オンライン上での電子
署名・認証するためのカードであり、このカードを用いてエストニアの電子政府シ
ステムの多くを利用することができる。
データエンバシー
テロや他国の侵略、あるいは自然災害に備えるため、エストニアでは国の重
要なデータのコピーを友好国にある大使館のサーバに保管する計画を進めて
いる。 => ルクセンブルグ(2018年の始め:予定)
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
e-Residency:非居住者向け IDカード
エストニアの国民IDの仕組みを
海外(非居住者)へも展開
《目標》
2025年 1,000万人
36Source: e-Estonia HP
e-Residency Card発行拠点
2014年12月スタート
現在143カ国から
27000人以上
日本から約800人
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 37
スタートアップイベント Latitude59
昨年は、20か国以上から2000人以上の
参加者
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
エストニア系スタートアップ
38
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
エストニアの情報連携基盤技術を民間に転用
Source:Planetway HP 39
日本国内にて
実証実験
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 40
トピックス
人工知能(AI)利用のための「クラット法(KrattLaw])」の検討開始
e-レジデンシーを導入は、世界中の起業家を
引き付け、ビジネス環境へのアクセスを提供
するプログラムであり、人工知能などの新興産
業に起業活動が集中する。
Estcoin 導入のためのキックオフミーティングを実施
e-レジデンシー・プログラム・チーム、諮問委員会、エストニア財務省、エスト
ニア議員、エストニア銀行、ICOを行う企業、法律事務所のメンバーが参加
[Estcoinとは: エストニア政府が発行・管理する仮想通貨。 世界中の誰も
がアクセスすることができる。]
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
6.日本への提言
41
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 42
エストニアのデジタル社会推進の成功の要因
政治家の強い意思と国民の理解
・ 独立後、経済的に自立する必要があり・ 国民がデジタル社会の実現に理
解を示し、期待したこと。
=> 政権が代わっても、デジタル社会の実現に向けた計画が中断されたり、
大きな変更が加わったりすることがなかった。
・ 予算が少なかったため、官学民が協力して時間と知恵を使って慎重にデジ
タル社会の構築を進めることができた。
・ ソ連時代のシステムに対する執着はなかったため、当時の最新の技術を導
入できた
ICT分野の優秀な人材
・ ソ連時代にサイバネティクス研究所がエストニアにあった。
・ タリン工科大学、タルトゥ大学というレベルの高い大学があった。
・ フィンランドとの交流が盛んであった。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 43
① 超長期ビジョンの策定と国民への説明
・ 20年先をめざした例えば「デジタル社会の超長期ビジョン2040」を、レガ
シーシステムに縛られることなく策定することが必要。
・ その中で、「ICT推進の基本方針」を作成し、ICT推進の目的、セキュリ
ティ対策、官民連携の推進方針などを明確にし、国民に分かりやすく説明
し、合意をとる。
・ 現在のシステムからの移行計画として、「世界最先端IT 国家創造宣言」
の実行計画をマイルストンを決め、例えば2025年までの達成目標は「世界
最先端IT 国家創造宣言2025」などとして実行していくことにより、国民に
とっても関心が高まり、理解を深めることができる。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 44
② ICT共通基盤の構築
エストニアでは、国民ID番号、セキュリティ、システム管理、情報交換システム
(X-Road)などを各省庁・自治体が共通基盤として利用することにより、アプリ
ケーション構築の負荷を大幅に軽くすることに成功している。
 省庁、地方自治体を中心とする公共機関のICTシステムでは、何を共通基盤
として構築すべきかを明示することが必要。
③ 高度な技術支援体制
エストニアではエストニア情報システム局(RIA)が大きな役割を果たしている。
・ ICT分野の技術は日進月歩の世界であり、国際的な競争も激しい。
・ 公共のICT関連事業に継続的にかかわれる人材を確保することが必要。
 高い能力、知識を持つ人材を集めた組織を作る。
 ICT分野の調査や実証実験など国の事業に参加させ、より高度な専門知識を
身に着けさせる。
 政府が発注するシステムの企画や開発管理をこの組織の支援を受け政府
主導で行う。
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 45
④ 普及環境の整備
エストニアでもeIDカードの活用には時間がかかっている。エストニアの例を参
考にして、マイナンバーカードの普及を進めるべき。
 図書館、市役所など公共施設に、マイナンバーカードを利用できる設備を設
置することが必要。
2006年
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society
まとめ
46
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 47
日本は、2001年から始まったe-JAPAN戦略とそれに続くICT新改革戦略を通じて、
世界の中のICT先進国家になるべく活動を始め、すでに17年近い年月が経ってし
まった。
エストニアは1991年に独立回復後、歴史の浅い小国ながら、国民のための電
子政府を実現するために多くの人が知恵を出し合い、多くの壁をひとつひとつ乗
り越える工夫をし、今では国民も電子政府のメリットを享受している。
国の大きさが違う、歴史が浅い、といった些細な理由で排除するのではなく、優
れた先行事例としてこの北欧の小国の実績と未来像を多くの人々に知ってほし
いと考える。
(Liia Hanni 元国会議員)
「新しいサービスを進めるときには、必ず反対者
がありかつ当初は100%満足いかない結果になる
ことも多い。明確なビジョン、慎重な議論や高度な
技術も必要だが、それに加えてリーダには前に進
む勇気が必要である。」
© Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 48
ご清聴ありがとうございました。
〒105-0004 東京都港区新橋4丁目5番1号 アーバン新橋ビル8階
株式会社AAS内
Mail : yoji.maeda@jeeadis.jp

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未来型国家エストニアの挑戦

  • 2. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society アジェンダ 2 1.当協議会ご紹介 2.ICT先進国エストニア概要 3.エストニアのICT戦略 4.電子政府サービス 5.スタートアップ国家エストニア 6.日本への提言 まとめ
  • 3. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 1.当協議会ご紹介 3
  • 4. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 1.当協議会ご紹介 4 組織名称 Organization Name 日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会 Japan & Estonia/EU Association for Digital Society (略称 JEEADiS : ジェアディス) エストニアをデジタル社会のモデルとし、国民視点で日本の 情報化社会のあり方を考え、世界に貢献できる日本を創る ことを目指す。 設立 2015年4月1日 代表者/理事 代表理事 Chairman of the board of directors 前田 陽二 理事 Executive Directors - 内田 道久 (事務局長) - ラウル アリキヴィ - 牟田 学 - 石田 雄太 http://www.jeeadis.jp 理事 ラウル 当時エストニア首相 ターヴィ・ロイヴァス氏 代表理事 前田
  • 5. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 5 2006年9月 2015年9月 エストニアとの出会い
  • 6. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society なぜ EU/エストニアなのか 6 ・ 電子政府の実績 インターネット投票など1500以上の行政サービスを構築し運用している。 これらの開発運用を低予算(数十億円/年)で、効率的に実施している。 EUの一員として、電子商取引をはじめ国境を超えた連携を推進。 ・ 電子政府推進の透明性 国民に対し、資料をネット上で提示し、理解を得ながら進めている。 ・ セキュリティを重視 国として信頼性の高い情報基盤を整備 ① エストニアeIDカードによる電子署名、電子認証 ② X-Roadによる安心・安全な情報連携 これまで、大きなトラブルは起こっていない。
  • 7. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 2.ICT先進国エストニア概要 7
  • 8. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 2.ICT先進国エストニア概要 国名:エストニア共和国 首都:タリン 人口:131万人(2015年) Tallinn Estonia 8
  • 9. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 9 エストニアの基本情報 エストニア 日本 面積 (km2) 4.5万 (九州とほぼ同じ) 37万 人口 131万(2016年1月) 1億2,600万 人口密度(/km2) 30 330 (北海道で約68) 広域自治体 州(15) 都道府県(47) 基礎自治体 町村(213) 市区町村(1,742) GDP(米ドル) 260億(205億ユーロ) 4.6兆 一人当たりGDP(米ドル) 17,000(15,580ユーロ) 32,000 (外務省 エストニア共和国基礎データに基づき作成) エストニアの最高地点は、「スール・ムナマギ(大きな卵)」で318m
  • 10. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 10 年月 略史 1219年 デンマーク人が進出し、タリン市を築く。 1346年 ドイツ騎士団が進出し、領有。 1629年 スウェーデン領となる。 1721年 北方戦争の結果ロシア領となる。 1918年2月24日 独立を宣言。 1920年 ソ連と平和条約を締結。 1940年 ソ連に併合。 1991年8月20日 エストニア最高会議が独立回復に関する決定を採択。 1991年9月6日 ソ連国家評議会がバルト三共和国の国家独立に関する決定を採択。 2004年3月 NATO加盟 2004年5月 EU加盟 2007年12月 シェンゲン領域に参加 2010年12月 OECD加盟 2011年1月 ユーロ導入 (外務省 エストニア共和国基礎データに基づき作成) エストニア略史
  • 11. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 11 地方議会州議会 1院制(101名) 比例代表制(4年) 議会 (リーコギク) 大統領(5年) 政府 各省庁 首相(4年) 大臣 (15県) (213市町村) 選 任 承認 推 挙 選 任 選 任 エストニアの政治体制 知事 市町村長 (4年)18歳以上選挙権 、21歳以上被選挙権 エストニア大統領 2016年10月10日~ Kersti Kaljulaid (1969年12月30日生まれ) エストニア 首相 2016年11月23日~ (1978年7月2日生まれ)
  • 12. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 3.エストニアのICT戦略 12
  • 13. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 13 3.エストニアのICT戦略 (1) 行政の透明性の重視 国民に分かりやすい資料の提示 ① 推進方針を作成/相互運用性の枠組みを作成 ② 計画(7年計画:毎年の予算案(40億円程度)を作成) ③ 報告(年鑑を発行。最近は発行されていない。) ICT推進ポリシ ICT推進計画 法律の作成、改訂 実行 年鑑(YearBook) 1996-2012 (2) 効率性の重視 ① 省庁が共通に利用する情報基盤を整備 ② 2重の投資を避けるためのチェック体制を構築
  • 14. 1991年 再独立 【ICTとバイオテックに資本を集中(農業推進は差し置く)】 1996年~2000年 タイガーリープ(虎の躍進)プロジェクトの実施 1998年 : 「エストニア情報ポリシーの原則」採択 政府ポータルサイトを開設 2000年 : 「電子署名法」の施行 2001年 : データ交換レイヤーX-Road 開始 「情報公開法(Public Information Act)」の施行 2002年 : The Look@Worldプロジェクト(~2004年) eIDカードの発行開始 2004年 : 「エストニア情報ポリシーの原則2004~2006」 「エストニア相互運用フレームワーク」 2006年 : 「エストニア情報社会戦略2013」 モバイルID開始 2013年 : 「エストニア情報社会戦略2020」 14 エストニア電子政府推進の歴史
  • 15. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 15 推進方針 エストニア情報ポリシーの原則(抜粋) 「エストニア情報社会戦略2013」より ・ エストニアにおける情報社会の発展は、公共部門が主導する形で、この原則にし たがい進むべき方向を戦略的に選択する。 ・ 情報社会は、公共部門、民間部門および第三セクターの間の協力に基づいた、調 整された方法で開発される。 ・ 公共部門は賢明な顧客であり、公共調達において、革新的な実現方法に可能な 限りの自由が残されることを保証する。 ・ 情報社会は、すべてのエストニア国民のために開発される。その一方で、特殊な ニーズを持つ社会的なグループへの差別の廃止、地域の発展、および地域の自主 性の強化に特別の注意を払う。 ・ エストニアの言語および文化の一貫性が保証される。 ・ 知的財産の作成者と利用者の双方の利益を考慮に入れる。 ・ 情報社会の発展によって、国民のセキュリティの認識が徐々に低下していっては ならない。基本的な権利、個人のデータやIDの保護は保証される必要があり、また情 報システムにおける受け入れ難いリスクは避けなければならない。
  • 16. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 16 ・ 情報社会の発展を目的とする活動は、エストニアにおける研究開発活動に結びつ けられる。 ・ 情報社会とそれによりもたらされる機会を、すべての分野の方針を作成する時に 考慮に入れる。 ・ EUや世界のその他の地域で起きている動向を考慮に入れる。さらに、エストニア は、アクティブなパートナーとして自身の体験を他の国々と共有すると共に、他の 国々からも学ぶ。 ・ 公共部門は、既に存在している技術(eIDカード、データ交換層X-Roadなど)を利 用し、IT技術開発の重複を避ける。 ・ 公共部門はビジネス・プロセスを再構成して、一般市民、企業、および公共団体 から1回データを収集するだけで、あらゆるサービスが実現できるようにする。 ・ 公共部門は異なるハードウェアおよびソフトウェア・プラットフォームを同等に取り 扱い、自由に無償で利用できるオープンな標準(オープンスタンダード)を使用して情 報システムの相互運用性を保証する。 ・ データの収集および情報通信技術の開発は、再利用の原則に従って実施される。
  • 17. 協会代表 政府 情報協議会(IT) 半分は民間から参加(大学、 銀行、IT企業) 行政 ICTワークグ ループ 州 ICTワーク グループ 地方政府 国家情報システム局 (Department of State Information Systems:RISO) この3つの活動の調整を行う経済通信省 エストニア情報システム局(Estonian Information System Authority:RIA) 州IT協議会 行政IT協議会 アクションプラン ITマネージャー 協議会代表 運営の代表 とIT マネージャー 行政IT協議会長 大臣 事務総長 CIO 州政府 ITマネージャーITマネージャー 省庁 ITマネージャー 地方政府協会 下部機関 電子政府システム推進体制 17
  • 18. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society エストニアeIDカード ① エストニアのID番号とは ・ 11桁 GYYMMDDSSSC G :性別及び世紀、奇数男性 偶数女性 1-2 (19)、 3-4(20), 5-6 (21)、 YYMMDD:生年月日、SSS :シリアル番号 C:チェックデジット ・ 誕生時に付番 ・ 利用分野に限定はない ・ 特に秘密にしない(デジタルネームと呼ばれ、名前と同様の扱い) ② エストニアのeIDカードとは ・ 法律により、15歳以上の国民は、保有する必要がある。(罰則はない) ・ 対面において、個人番号を証明する書類や本人確認の際の公的な身分証明書 として利用できる。 ・ ネットにおいて、様々な民間及び行政サービスを利用することができる。 ・ シェンゲン協定内の国の移動の際、パスポートの代用となる。 ・ 交付手数料は、50ユーロ/5年 18
  • 19. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 顔写真とサイン ・ カード所有者の氏名 ・ カード所有者の性別 ・ カード所有者の市民権 ・ カード所有者の生年月日 ・ カード所有者のID番号 ・ カード番号 ・ カードの有効期限 ・ カード所有者の出生地 ・ カード発効日 ・ その他、居住許可に関する項目等 ・ 表と裏に印刷されたデータを機械に読み取 り可能なフォーマットで印字 表面 裏面 上記の券面情報(顔写真とサインを除く)以 外に、 認証用と署名用の2種の電子証明書 (名前、ID番号記入) エストニアeIDカードの様式 19
  • 20. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 20 モバイルID・スマートIDも普及
  • 21. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 21 エストニア電子政府基本構成 KIT (市民向け ポータル) EIT (企業家向け ポータル) AIT (公務員向け ポータル) 政 府 情 報 シ ス テ ム 管 理 シ ス テ ム RIHA 住 民 登 録 セ ン タ ー 健 康 保 険 セ ン タ ー 年 金 セ ン タ ー 自 動 車 登 録 セ ン タ ー テ レ コ ム 公 文 書 管 理 セ ン タ ー インターネット - X-road 公的機関 民間企業 サーバ I サーバ II モニタリング ヘルプデスク X-road 認証センター X-road センター 認証局 eID カード & モバイルID 5大銀行 セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ アダプタサー バー アダプタサー バー アダプタサー バー アダプタサー バー アダプタサー バー アダプタサー バー セキュリティ サーバ セキュリティ サーバ ポータルサイト 【170以上のDBが接続】
  • 22. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 22 国家情報システムの管理システム:RIHA エストニアでは、国のデータベースの複製を省庁や組織ごとに作成したり利用す ることが許されていない。 各機関はシステム管理責任者が管理するシステムの構成、データベースの形式 とアクセスするための方法を明記して、情報を利用したい関係者に知らせる。 (Public Information Act) セキュリティサーバ 情報はセキュリティ・サーバ間で行われ、情報は暗号化してインターネット上に送 信される。データの証拠価値と完全性を保持するために、送信されるすべてのメッ セージには署名が施される。また、すべてのメッセージログは保存される。 アダプタサーバ すべての情報システムがアダプター・サーバ(AS)経由でX-Roadのセキュリティ・ サーバに接続されている。アダプター・サーバは、XML形式のX-Roadメッセージを 特殊なデータベース・クエリー言語(主にSQL)に変換し、問い合わせの応答をXML 形式に戻すという、コンバーターの役割を果たしている。 【用語解説】
  • 23. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 4.電子政府サービス 23
  • 24. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 4.Best Practice of Digital Society(国民生活) 24
  • 25. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 25 電子政府サービスの開始年表 開始年 サービス名称 2000 ① 電子閣議 ② 電子納税申告システム:eTAX 2002 ③ 教師と家族との コミュニケーションツール:eKool 2004 ④ e警察 2005 ⑤ インターネット投票:iVote 2007 ⑥ 会社登録システム 2008 ⑦ 医療情報システム 国会議事堂
  • 26. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society Source:e-Estonia資料 エストニアの閣議では、紙は使用しない。 このシステムにより、以前毎週閣議に要していた数千枚もの紙を削減し、環境へ のインパクトを低減させただけでなく、閣議時間も、4~5時間かかっていたのが、 30~90分に短縮された。 電子閣議(2000年~) 26
  • 27. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 電子納税申告システム:eTax(2000年~) 27 エストニアの税務申告の約96パーセントがe-Taxにより提出されている。 ・ 納税者はeIDカードを用いてあらかじめ作成してある納税申告のデータを確認。 ・ 修正が必要な場合は変更して、デジタル署名で納税申告文書を承認。 ・ 一般的に3~5分で確認作業を行うことができる。 ・ 税の還付が数か月から3日ほどに短縮 * エストニアの所得税は20%だが、子供の養育費控除などの控除がある。 * 現在、電子領収書(e-receipt)プロジェクトが進行中。 保証書、説明書とともに、領収書を電子的に受け取る。
  • 28. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 教師と家族とのコミュニケーションツール:eKool(2002年~) 先生 生徒 保護者 校長 生徒の課題から学校生活全般をマネージ Source:Enterprise Estonia資料 28 eKool ekoolは民間のサービスで有料(0~175EUR/月)だが、多くの学校(80%以上)が採用している。 シンプルで使いやすい教育情報システムであり、校長、教師、クラス担任、生徒、親(保護者) など、教育にかかわるすべての人々をつなぐものである。 ① 生徒の学習および成長に関する首尾一貫した方針を持ち、かつ異なる関係者間のコミュ ニケーションを改善するのを支援する。 ② 学校生活と教育過程へ親をより活動的に参加し、親に対し学校関連の情報をよりアクセ スしやすくし、学校と教師の通常業務の量を減らし、報告や分析をより容易にし、学校の管理 上の能力を向上させる。
  • 29. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society ・警察官に免許証の提示を求められたときは、免許証を携帯していなくてもeID カードを警察官に渡すことで提示できる。 ・警察官は、モバイルPCでeIDカードを読取りX-Road経由で免許証の内容を確認 する。 29 29 電子警察:POLIS情報システム (2004年~)
  • 30. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society インターネット投票:i-Vote(2005年~) 30 暗号化された 投票内容 電子署名 投票者 の秘密鍵 選挙管理委員会の 公開鍵 暗号化された 投票内容 投票内容 投票者 選挙管理委員会の 秘密鍵 投票日前の一定期間(1週間ほど)が、i-Vote利用できる。 最終投票が有効となる。 投票所での投票が、最優先される。 投票者 の公開鍵
  • 31. 地方議員 2005 国会議員 2007 EU委員 2009 地方議員 2009 国会議員 2011 地方議員 2013 EU委員 2014 国会議員 2015 有権者 1 059 292 897 243 909 628 1 094 317 913 346 1 086 935 902 873 899 793 投票者 502 504 555 463 399 181 662 813 580 264 630 050 329 766 577 910 投票率 47,4% 61,9% 43,9% 60,6% 63,5% 58,0% 36,5% 64,2% I-Vote 利用者 9 317 30 275 58 669 104 413 140 846 133 808 103 151 176 491 I-Vote 利用率 1,9% 5,5% 14,7% 15,8% 24,3% 21,2% 31,3% 30,5% データは http://www.vvk.ee/voting-methods-in-estonia/engindex/statistics から入手 選挙とインターネット投票が行われた割合 31 (18歳以上選挙権 、21歳以上被選挙権)
  • 32. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 会社登記ポータル(2007年~) 32 会社登記ポータル(Company Registration Portal:CReP)は、起業家が会 社を起業する際のこまごまとした手続きを減らし、商業登記所への各種 届け出に要する時間を節約することを主な目的とする。 登記内容の登録、登記費用(185ユーロ)の支払いを行った後、登録申 請を行うと30分程度(最短で18分)で会社の登録を行うことができる。 このポータルは起業家と裁判所の登記局をつなぐ電子通信チャンネル となる。起業家はこのチャンネルを通じて登記申請やそれに必要な書類、 会社の年次報告書を提出できるほか、会社連絡先データ、取締役会、監 査役のリスト、活動領域などの変更を届け出ることができる。
  • 33. www.jeeadis.jp 33 エストニアの医療情報システム(2008~) Estonian National Health Information System (EHIS) 全国規模で医療データを交換する基盤 として2008年に整備 蓄積された記録は、研究にも利用可能 Electronic Patient Record 電子患者記録システム 患者情報、医療記録、来院記録、病歴等が作成・ 登録・データベース化される。 Digital Image 電子画像管理システム X線やCT画像等のデータが作成・登録・データ ベース化される。 Digital Registration 電子予約登録システム 患者が医療機関をオンライン予約できる。予約情 報は各医療機関のシステムと連動。 Digital Prescription 電子処方箋(2010年~) 年間約800万枚の処方箋を電子化し、利用率98% を超える。
  • 34. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 5.スタートアップ国家エストニア 34
  • 35. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 35 「エストニア情報社会戦略2020(DIGITAL AGENDA 2020 FOR ESTONIA)」 概要 ・誰もが無料で高速なインターネットを利用できるようにする。 ・デジタルデバイドの克服 ・ユーザフレンドリーな公共サービスの実現 など e-Residency 2014年12月、非居住者のためにeレジデンシーカードの発行を開始。 これは、エストニア政府が非居住者にID番号を提供し、オンライン上での電子 署名・認証するためのカードであり、このカードを用いてエストニアの電子政府シ ステムの多くを利用することができる。 データエンバシー テロや他国の侵略、あるいは自然災害に備えるため、エストニアでは国の重 要なデータのコピーを友好国にある大使館のサーバに保管する計画を進めて いる。 => ルクセンブルグ(2018年の始め:予定)
  • 36. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society e-Residency:非居住者向け IDカード エストニアの国民IDの仕組みを 海外(非居住者)へも展開 《目標》 2025年 1,000万人 36Source: e-Estonia HP e-Residency Card発行拠点 2014年12月スタート 現在143カ国から 27000人以上 日本から約800人
  • 37. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 37 スタートアップイベント Latitude59 昨年は、20か国以上から2000人以上の 参加者
  • 38. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society エストニア系スタートアップ 38
  • 39. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society エストニアの情報連携基盤技術を民間に転用 Source:Planetway HP 39 日本国内にて 実証実験
  • 40. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 40 トピックス 人工知能(AI)利用のための「クラット法(KrattLaw])」の検討開始 e-レジデンシーを導入は、世界中の起業家を 引き付け、ビジネス環境へのアクセスを提供 するプログラムであり、人工知能などの新興産 業に起業活動が集中する。 Estcoin 導入のためのキックオフミーティングを実施 e-レジデンシー・プログラム・チーム、諮問委員会、エストニア財務省、エスト ニア議員、エストニア銀行、ICOを行う企業、法律事務所のメンバーが参加 [Estcoinとは: エストニア政府が発行・管理する仮想通貨。 世界中の誰も がアクセスすることができる。]
  • 41. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 6.日本への提言 41
  • 42. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 42 エストニアのデジタル社会推進の成功の要因 政治家の強い意思と国民の理解 ・ 独立後、経済的に自立する必要があり・ 国民がデジタル社会の実現に理 解を示し、期待したこと。 => 政権が代わっても、デジタル社会の実現に向けた計画が中断されたり、 大きな変更が加わったりすることがなかった。 ・ 予算が少なかったため、官学民が協力して時間と知恵を使って慎重にデジ タル社会の構築を進めることができた。 ・ ソ連時代のシステムに対する執着はなかったため、当時の最新の技術を導 入できた ICT分野の優秀な人材 ・ ソ連時代にサイバネティクス研究所がエストニアにあった。 ・ タリン工科大学、タルトゥ大学というレベルの高い大学があった。 ・ フィンランドとの交流が盛んであった。
  • 43. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 43 ① 超長期ビジョンの策定と国民への説明 ・ 20年先をめざした例えば「デジタル社会の超長期ビジョン2040」を、レガ シーシステムに縛られることなく策定することが必要。 ・ その中で、「ICT推進の基本方針」を作成し、ICT推進の目的、セキュリ ティ対策、官民連携の推進方針などを明確にし、国民に分かりやすく説明 し、合意をとる。 ・ 現在のシステムからの移行計画として、「世界最先端IT 国家創造宣言」 の実行計画をマイルストンを決め、例えば2025年までの達成目標は「世界 最先端IT 国家創造宣言2025」などとして実行していくことにより、国民に とっても関心が高まり、理解を深めることができる。
  • 44. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 44 ② ICT共通基盤の構築 エストニアでは、国民ID番号、セキュリティ、システム管理、情報交換システム (X-Road)などを各省庁・自治体が共通基盤として利用することにより、アプリ ケーション構築の負荷を大幅に軽くすることに成功している。  省庁、地方自治体を中心とする公共機関のICTシステムでは、何を共通基盤 として構築すべきかを明示することが必要。 ③ 高度な技術支援体制 エストニアではエストニア情報システム局(RIA)が大きな役割を果たしている。 ・ ICT分野の技術は日進月歩の世界であり、国際的な競争も激しい。 ・ 公共のICT関連事業に継続的にかかわれる人材を確保することが必要。  高い能力、知識を持つ人材を集めた組織を作る。  ICT分野の調査や実証実験など国の事業に参加させ、より高度な専門知識を 身に着けさせる。  政府が発注するシステムの企画や開発管理をこの組織の支援を受け政府 主導で行う。
  • 45. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 45 ④ 普及環境の整備 エストニアでもeIDカードの活用には時間がかかっている。エストニアの例を参 考にして、マイナンバーカードの普及を進めるべき。  図書館、市役所など公共施設に、マイナンバーカードを利用できる設備を設 置することが必要。 2006年
  • 46. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society まとめ 46
  • 47. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 47 日本は、2001年から始まったe-JAPAN戦略とそれに続くICT新改革戦略を通じて、 世界の中のICT先進国家になるべく活動を始め、すでに17年近い年月が経ってし まった。 エストニアは1991年に独立回復後、歴史の浅い小国ながら、国民のための電 子政府を実現するために多くの人が知恵を出し合い、多くの壁をひとつひとつ乗 り越える工夫をし、今では国民も電子政府のメリットを享受している。 国の大きさが違う、歴史が浅い、といった些細な理由で排除するのではなく、優 れた先行事例としてこの北欧の小国の実績と未来像を多くの人々に知ってほし いと考える。 (Liia Hanni 元国会議員) 「新しいサービスを進めるときには、必ず反対者 がありかつ当初は100%満足いかない結果になる ことも多い。明確なビジョン、慎重な議論や高度な 技術も必要だが、それに加えてリーダには前に進 む勇気が必要である。」
  • 48. © Japan & Estonia/EU Association for Digital Society 48 ご清聴ありがとうございました。 〒105-0004 東京都港区新橋4丁目5番1号 アーバン新橋ビル8階 株式会社AAS内 Mail : yoji.maeda@jeeadis.jp