シフト勤務制の職場における従業員の急な欠勤は業務に支障をきたし,顧客などに対する信頼の失墜などにより,事業そのものに深刻な支障をきたす恐れがある.
このような急な欠勤に対し,管理者は代わりの出勤を他の従業員に依頼し,代替出勤者の選定を行う必要がある.この代替出勤者の選定業務における従来手法では,代替出勤者の選定後に発生した勤務表制約違反を解消するために勤務表全体を再作成するアプローチがとられてきた.このアプローチは厳しい勤務表制約条件が課される病院のような職場では有効とされてきたが,管理者は再作成した勤務表を再度全従業員に周知する必要があり,従業員側からしても自分以外の従業員の欠勤により自身の勤務予定が変更される可能性があるため,欠勤者が多発する職場では扱いにくい.そのため欠勤者が多発する職場では,代替出勤を行っても勤務表制約条件に違反しない従業員を事前に割り出しておき,それらの従業員に対し代替出勤依頼を行う手法がとられている.この手法では管理者の従業員に対する依頼順が業務の安定性,管理者や従業員の負担に直結する.
以上より本研究では管理者による従業員の代替出勤依頼の依頼順決定方法を提案し,代替出勤シミュレーターを構築して評価を行う.シミュレーターでは,従業員の休み希望のもと,複数の制約条件に基づき勤務表を作成し,勤務表上で確率的に欠勤を発生させ,管理者による代替出勤依頼をシミュレーションする.各従業員は管理者からの依頼に対し,確率的に可否を応答するものとする.本研究ではこのシミュレーター上で複数のパラメータセットに対し,従業員の受諾確率に基づいた方法,各従業員の代替出勤した回数に基づいた方法,代替出勤可能な日数に基づいた方法の提案、評価を行う.