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平成 28 年度 証券ゼミナール大会
第 6 テーマ C ブロック
日本の投資信託は
家計の資産形成手段になりえるのか
関西学院大学 岡村ゼミナール
1
はじめに .................................................................................... 2
第 1 章 投資の必要性 ................................................................. 3
第 1 節 資 産 形 成 の 必 要 性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
第 2 節 預 貯 金 に よ る 資 産 運 用 の 問 題 点 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 65
第 2 章 投資信託とは ................................................................. 8
第 1 節 投 資 信 託 の 特 徴 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
第 2 節 N I S A . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 0
第 3 節 確 定 拠 出 年 金 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 31 0
第 3 章 投資信託の現状と課題 .................................................. 17
第 1 節 日 本 人 の 投 資 信 託 保 有 の 現 状 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 7
第 2 節 家 計 の リ テ ラ シ ー 不 足 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 9
第 3 節 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 の 利 益 相 反 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 41 5
第 4 節 日 本 の 投 資 信 託 の パ フ ォ ー マ ン ス の 現 状 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 7
第4章 提案 ............................................................................ 30
第 1 節 職 場 積 立 N I S A 奨 励 金 制 度 導 入 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 0
第 2 節 確 定 拠 出 年 金 の 継 続 投 資 教 育 の 拡 充 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 32 0
第 3 節 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 活 用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 6
第 4 節 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 0
おわりに .................................................................................. 41
2 5
参考文献 .................................................................................. 43
2
はじめに
公 的 年 金 制 度 へ の 不 安 が 高 ま り 、 確 定 拠 出 年 金 制 度 が 新 体 制 と し て 普 及 す る
中 、 今 後 の 個 人 資 産 の 形 成 に は さ ら な る 自 助 努 力 が 必 要 と な っ て い る 。 そ こ で
投 資 信 託 が 個 人 の 資 産 形 成 手 段 に な り え る と 考 え た 。 な ぜ な ら 、 投 資 信 託 が 資
産 形 成 に 適 切 で 、 優 れ た 特 徴 を 備 え て い る か ら で あ る 。5
日 本 の 個 人 資 産 の う ち 約 5 2 % は 預 貯 金 で あ り 、 米 国 の 約 1 3 % と 比 べ て か な
り 高 い 比 率 と な っ て い る 。 さ ら に 米 国 で は 約 1 2 % が 投 資 信 託 、 約 3 3 % が 株 式
出 資 金 と な っ て お り 、 投 資 信 託 の 比 率 が 約 5 % の 日 本 と は 大 き く 異 な っ て い る 。
そ し て 、 長 期 に 渡 る デ フ レ に 伴 い 預 金 金 利 が 低 下 し 、 預 貯 金 だ け で は 個 人 資 産
の 形 成 は 困 難 に な っ た 。 こ の よ う な 金 融 環 境 を 踏 ま え て 、 投 資 信 託 を 始 め と す1 0
る リ ス ク 性 資 産 へ の 投 資 が よ り 重 要 に な る と 考 え ら れ る 。
投 資 信 託 は 優 れ た 特 徴 を 持 つ に も 関 わ ら ず 、 真 に 役 立 つ 資 産 形 成 手 段 に な っ
て い る と は 言 え な い 。 我 々 は 投 資 信 託 の 現 状 と 課 題 を 取 り 上 げ 、 考 察 し 、 提 案
に い た る ま で を 次 の よ う に 構 成 し た 。 第 1 章 で は 今 後 の 日 本 に お け る 資 産 形 成
の 必 要 性 に つ い て 検 討 す る 。 第 2 章 で は 投 資 信 託 の 優 れ た 特 徴 を 述 べ 、 投 資 信1 5
託 を 活 用 す る 上 で 有 効 で あ る 制 度 ( 確 定 拠 出 年 金 、 N I S A ) を 紹 介 す る 。 第 3 章
で は 日 本 で は 未 だ 十 分 に 根 付 い て い な い 投 資 信 託 に 関 す る 課 題 に つ い て 、 顧 客
の 保 有 状 況 、 投 資 リ テ ラ シ ー 不 足 と い う 観 点 と 、 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 の 利
益 相 反 、 運 用 会 社 の パ フ ォ ー マ ン ス に つ い て 分 析 、 検 討 す る 。 そ し て 第 4 章 で
は 、 課 題 を 踏 ま え た 我 々 の 提 案 と 、 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 を 述 べ る 。2 0
2 5
3
第 1 章 投資の必要性
本 章 で は 投 資 信 託 の 話 題 の 前 提 と な る 資 産 形 成 の 必 要 性 、 と り わ け 投 資 の 必
要 性 に つ い て 検 討 す る 。
第 1 節 資産形成の必要性
人 生 に は 様 々 な ラ イ フ イ ベ ン ト が 存 在 し 、 そ の 度 に 資 金 が 必 要 と な る 。 特 に5
教 育 資 金 、 住 宅 資 金 、 老 後 資 金 は 人 生 の 三 大 資 金 と 呼 ば れ 、 大 き な 割 合 を 占 め
る 。 そ の 中 で も 老 後 資 金 は 全 て の 人 が 避 け る こ と の で き な い 資 金 で あ る 。 老 後
資 金 の 必 要 額 と は い く ら だ ろ う か 。 世 帯 主 が 6 5 歳 以 上 の 高 齢 無 職 世 帯 で は 月
の 平 均 収 入 額 が 2 1 4 , 7 0 0 円 で あ る 。 し か し 支 出 額 は 2 7 5 , 9 0 6 円 で あ り 、 月 あ
た り 6 1 , 2 0 6 円 の 赤 字 で あ る 。 6 0 歳 で 還 暦 を 迎 え 退 職 し 、 日 本 人 の お お よ そ1 0
の 平 均 寿 命 で あ る 8 4 歳 1
ま で 生 き る こ と を 仮 定 す る 。 世 帯 主 が 6 0 歳 か ら 6 4
歳 の 無 職 世 帯 で は 月 あ た り の 平 均 支 出 額 は 3 0 7 , 8 8 3 円 で あ る 。 つ ま り 、 退 職
か ら 年 金 受 給 開 始 ま で の 5 年 間 の 支 出 額 と 受 給 開 始 以 降 の 赤 字 分 の 約 3 2 4 3 万
円 2
の 資 金 を 捻 出 す る 必 要 が あ る 。 そ の 資 金 は 退 職 金 で 賄 う こ と と な る 。 退 職
金 と 一 口 に 言 っ て も そ の 額 は 〈 図 表 1 - 1 〉 に 示 す よ う な 勤 続 年 数 や 学 歴 、 ま た1 5
企 業 規 模 な ど に よ っ て ば ら つ き は 大 き い 。 一 例 と し て 大 学 卒 か つ 勤 続 3 5 年 以
上 の 場 合 、 平 均 2 , 1 5 6 万 円 を 受 け 取 る 。 こ の こ と か ら 、 退 職 ま で に 約 1 0 8 7 万
円 を 用 意 す る 必 要 が あ る と い え る 。
2 0
1
厚 生 労 働 省 「 平 成 2 7 年 簡 易 生 命 表 」 か ら 、 男 女 の 平 均 寿 命 が そ れ ぞ れ
8 0 . 7 9 歳 と 8 7 . 0 5 歳 で あ り 、 男 女 合 わ せ た 平 均 値 8 3 . 9 2 歳 を 算 出 し 、 お お ま
か に 8 4 歳 と し た 。
2
6 0 歳 か ら 8 4 歳 ま で の 必 要 総 額 を 算 出 し 千 の 位 を 四 捨 五 入 し た 。
4
〈 図 表 1 - 1 〉 学 歴 別 退 職 者 1 人 平 均 退 職 給 付 額
( 勤 続 2 0 年 以 上 か つ 4 5 歳 以 上 の 定 年 退 職 者 )
5
出 所 : 厚 生 労 働 省 「 平 成 2 5 年 就 労 条 件 総 合 調 査 結 果 の 概 況 」 ( 第 2 9 表 ) を 参 考 に 筆 者 作 成
1 0
高 齢 無 職 世 帯 の 収 入 を 前 述 し た が 、 こ の う ち 公 的 年 金 給 付 に よ る 収 入 は
1 8 2 , 7 5 3 円 で 、 平 均 収 入 の う ち の ほ と ん ど が 公 的 年 金 に よ っ て 賄 わ れ て い る 。
〈 図 表 1 - 2 〉 に 示 す と お り 、 日 本 の 人 口 に 占 め る 6 5 歳 以 上 の 割 合 は 増 加 傾 向
に あ り 、 今 後 も 増 加 す る と 推 測 さ れ る 。 一 方 で 、 総 人 口 は 減 少 す る と 推 測 さ れ
て お り 〈 図 表 1 - 3 〉 の 国 際 比 較 で 、 2 0 1 5 年 、 2 0 5 0 年 ( 推 定 ) と も に 日 本 の 負1 5
担 が 最 も 大 き い こ と が 確 認 で き る 。
〈 図 表 1 - 2 〉 日 本 の 年 齢 別 人 口 と 6 5 歳 以 上 割 合 の 推 移
2 0
2 5
出 所 : 内 閣 府 「 平 成 2 8 年 版 高 齢 社 会 白 書 」 P 5 ( 図 1 - 1 - 4 ) を 参 考 に 筆 者 作 成
3 0
高校卒
(管理・事務・技術職) (現場職)
1,965
1,128
433
603
856
1,484
505
692
938
25~29年
30~34年
35年以上
1,941
826
1,083
1,856
2,156
20~24年
1人平均退職給付額 1人平均退職給付額
計 1,673
勤続年数・年
1人平均退職給付額
万円 万円 万円
大学卒
(管理・事務・技術系)
高校卒
1457
791
7708
4418
3393
3464
26.7
39.9
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
昭和25
30
35
40
45
50
55
60
平成2
7
12
17
22
27
32
37
42
47
52
57
62
67
72
0~14歳 15~64歳 65歳以上 高齢化率
実績値 推計値
5
〈 図 表 1 - 3 〉 高 齢 者 ( 6 5 歳 以 上 ) 1 人 を 何 人 の 生 産 年 齢 人 口 ( 1 5 〜5 4 歳 ) で 支 え る か
5
出 所 : 杉 田 浩 治 「 確 定 拠 出 年 金 ( D C ) を め ぐ る 世 界 の 動 き 」 [ 2 0 1 5 ] P 2 0 を 参 考 に 筆 者 作 成
ま た 、 厚 生 労 働 省 が 発 表 し た 平 成 2 6 年 財 政 検 証 結 果 レ ポ ー ト に は 公 的 年 金
の 所 得 代 替 率 の 推 移 が 示 さ れ て い る 。 こ の 結 果 に よ る と 、 2 0 1 4 年 に 6 2 . 7 % だ
っ た 所 得 代 替 率 3
は 将 来 的 に 3 9 % ~ 5 1 % に な る と 推 測 さ れ て い る 。 ま た 、 マ ク1 0
ロ 経 済 ス ラ イ ド 4
に よ る 調 整 を 機 械 的 に 続 け た 場 合 、 国 民 年 金 は 2 0 5 5 年 度 に
積 立 金 が な く な り 、 完 全 な 賦 課 方 式 に 移 行 す る 。 そ の 後 、 保 険 料 と 国 庫 負 担 で
賄 う こ と の で き る 給 付 水 準 は 所 得 代 替 率 3 5 ~ 3 7 % 程 度 と さ れ て い る 。 少 子 高
齢 化 の 問 題 に 加 え 、 国 民 年 金 の 納 付 率 が 6 割 程 度 と い う 低 水 準 で の 推 移 、
G P I F の 運 用 の 不 安 定 さ な ど 、 公 的 年 金 へ の 不 安 が 高 ま っ て い る 。1 5
〈 図 表 1 - 4 〉 は 老 後 の 不 安 の 内 容 に 関 す る ア ン ケ ー ト の 結 果 で あ る 。 「 公 的
年 金 だ け で は 不 十 分 」 を 筆 頭 に 経 済 的 不 安 が 認 識 さ れ て い る 。 前 述 の と お り 、
退 職 ま で に 1 0 0 0 万 円 以 上 用 意 す る 必 要 が あ る こ と に 加 え 公 的 年 金 が 将 来 不 十
分 に な っ て い く こ と か ら 生 じ る 老 後 の 経 済 的 不 安 を 払 拭 す る た め 、 早 い 段 階 で
何 ら か の 形 で 資 産 形 成 を す る こ と が 必 要 で あ る 。2 0
2 5
3
公 的 年 金 の 給 付 水 準 を 表 す 数 値 。 モ デ ル 世 帯 ( 夫 婦 二 人 ) の 年 金 月 額 が 現 役 世
代 の 男 性 の 平 均 月 収 の 何 パ ー セ ン ト に な る か で 示 す 。
4
年 金 の 被 保 険 者 の 減 少 や 平 均 寿 命 の 延 び 、 社 会 の 経 済 状 況 を 考 慮 し て 年 金 の
給 付 額 を 変 動 さ せ る 制 度 の こ と 。
6
〈 図 表 1 - 4 〉 老 後 生 活 に 対 す る 不 安 の 内 容
5
出 所 : 生 命 保 険 文 化 セ ン タ ー 「 平 成 2 8 年 度 生 活 保 障 に 関 す る 調 査 《 速 報 版 》 」 P 3 4 を 参 考 に 筆1 0
者 作 成
第 2 節 預貯金による資産運用の問題点
〈 図 表 1 - 5 〉 は 証 券 の 種 類 別 保 有 状 況 、 〈 図 表 1 - 6 〉 は 個 人 が 保 有 す る 金 融
資 産 の 内 訳 を 表 し て い る 。 こ れ ら に よ る と 、 日 本 家 計 に お け る 最 も 一 般 的 な 金
融 資 産 は 預 貯 金 で あ る こ と が う か が え る 。 預 貯 金 の 保 有 率 が 9 割 を 超 え て い1 5
る 一 方 で 株 式 な ど の 証 券 へ の 投 資 に よ る 保 有 が 極 端 に 少 な い 。 証 券 投 資 の 経 験
者 は 2 1 % に 過 ぎ な い と い う 現 状 に な っ て い る 。 家 計 が 投 資 に よ っ て で は な く
預 貯 金 に よ っ て 保 有 す る 現 状 に 問 題 は あ る の だ ろ う か 。
〈 図 表 1 - 5 〉 証 券 の 種 類 別 保 有 状 況2 0
2 5
出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 調 査 部 「 証 券 投 資 に 関 す る 全 国 調 査 平 成 2 7 年 度 調 査 報 告 書 ( 個 人 調
査 ) 」 P 1 2 よ り 筆 者 作 成
株式
投資信託
公社債
約90万人8.70% 4.40%
約1,324万人
86.50%
3.60% 5.0% 91.30% 約375万人
推計保有者数
(20歳以上)現在持っている
以前持っていたが
現在は持っていない
これまでに
持ったことがない
12.7% 8.0% 79.0%
保有比率
7
〈 図 表 1 - 6 〉 個 人 が 保 有 す る 金 融 資 産 ( 複 数 回 答 )
5
出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 調 査 部 「 証 券 投 資 に 関 す る 全 国 調 査 平 成 2 7 年 度 調 査 報 告 書 ( 個 人 調1 0
査 ) 」 P 1 9 よ り 筆 者 作 成
か つ て 、 日 本 の 預 金 金 利 は 普 通 預 金 で は 2 % 、 定 期 預 金 で は 6 % を 超 え て い
た 。 し か し 、 長 期 の デ フ レ の 影 響 で 預 金 金 利 が 低 下 し た こ と に 加 え 、 マ イ ナ ス
金 利 の 影 響 も あ り 、 現 在 も そ の 水 準 は 低 い も の と な っ て い る 。 日 本 銀 行 金 融 機1 5
構 局 が 2 0 1 6 年 9 月 1 4 日 に 発 表 し た 「 預 金 種 類 別 店 頭 表 示 金 利 の 平 均 年 利 率
等 に つ い て 」 に よ れ ば 普 通 預 金 の 平 均 年 利 率 は 0 . 0 0 2 % 、 最 も 金 利 が 高 く な る
1 千 万 円 以 上 か つ 預 け 入 れ 期 間 1 0 年 の 定 期 預 金 で さ え 0 . 0 3 3 % と な っ て い る 。
前 節 で 退 職 ま で に 約 1 0 8 7 万 円 用 意 す る 必 要 が あ る と 述 べ た 。 預 金 金 利 が
0 . 0 3 3 % と す る と 、 大 学 卒 業 の 2 2 歳 か ら 退 職 す る 6 0 歳 ま で の 4 8 年 間 で 簡 略2 0
化 し て 1 0 0 0 万 円 の 貯 蓄 が 必 要 で あ る と 仮 定 す る 。 そ の た め に は 、 毎 年 2 1 万
円 積 み 立 て 続 け る 必 要 が あ る 。 仮 に 2 0 0 6 年 か ら 2 0 1 5 年 ま で J P モ ル ガ ン ・
ア セ ッ ト ・ マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社 の バ ラ ン ス 型 フ ァ ン ド に 投 資 し た と す る と 、
年 平 均 リ タ ー ン は 8 . 5 1 % で あ る 。 こ の 利 率 で 4 8 年 間 運 用 で き た と す る と 、 毎
年 2 万 円 の 積 み 立 て で 1 0 0 0 万 円 の 貯 蓄 を 作 る こ と が で き る 。 貯 蓄 の 1 0 分 の2 5
1 以 下 で 同 額 の 資 金 を 作 る こ と が で き る 可 能 性 が あ る 。
こ れ ま で 述 べ て き た こ と は 老 後 資 金 の 備 え に 限 っ た こ と で あ る が 、 必 要 資 金
は ラ イ フ イ ベ ン ト ご と に 発 生 す る 。 必 要 資 金 を 用 意 す る 際 、 各 個 人 は 将 来 の た
め に 自 身 の リ ス ク 許 容 度 と リ ス ク 選 好 度 に 照 ら し て ポ ー ト フ ォ リ オ を 組 む こ と
8
と な る 。 こ こ で 重 要 と な る の が リ ス ク 許 容 度 で あ る 。 な ぜ な ら 、 家 庭 や 個 人 が
ど れ ほ ど の リ ス ク 資 産 を 持 つ こ と が で き る の か は 、 リ ス ク 許 容 度 に よ る か ら で
あ る 。 リ ス ク 許 容 度 は 年 齢 や 収 入 に 依 存 す る 。 一 般 的 に 若 年 層 で は リ ス ク 資 産
で 損 が 生 じ た と し て も 、 労 働 に よ る 収 入 で 補 う こ と が で き る 。 し か し 退 職 者 に
は 労 働 に よ る 収 入 が な い た め 、 補 う こ と が で き る 損 失 の 額 が 相 対 的 に 小 さ く な5
る 。 こ の よ う に 、 年 齢 に 限 れ ば 高 齢 者 は 若 年 層 に 比 べ リ ス ク 許 容 度 が 低 く な り 、
資 産 の 選 択 余 地 が 狭 ま る 。 ま た 投 資 に よ る 資 産 形 成 に は イ ン フ レ に 強 い と い う
メ リ ッ ト が あ る 。 預 貯 金 の 場 合 に は イ ン フ レ 時 に 実 質 的 価 値 が 減 少 す る リ ス ク
が あ る 。 よ り 効 率 的 に 資 産 形 成 を す る た め に 投 資 が 重 要 で あ る 。 特 に 、 リ ス ク
許 容 度 が 高 く 、 ラ イ フ イ ベ ン ト を 控 え た 若 年 層 に こ そ 投 資 に よ る 資 産 運 用 が 必1 0
要 で あ る と 主 張 す る 。
第 2 章 投資信託とは
第 1 章 で 投 資 に よ る 資 産 形 成 の 必 要 性 を 述 べ た 。 本 章 で は 、 は じ め に 投 資 信
託 の 特 徴 に つ い て 述 べ 、 個 人 に よ る 直 接 投 資 で は な く 投 資 信 託 が 資 産 形 成 手 段
に 有 効 で あ る こ と を 述 べ る 。 次 に 資 産 形 成 を 行 う 上 で 、 投 資 信 託 を 有 効 活 用 で1 5
き る N I S A と 確 定 拠 出 年 金 に つ い て 述 べ る 。
第 1 節 投資信託の特徴
「 投 資 信 託 ( フ ァ ン ド ) 」 ( 以 下 、 投 信 と 略 す ) と は 、 「 投 資 家 か ら 集 め た お
金 を ひ と つ の 大 き な 資 金 と し て ま と め 、 運 用 の 専 門 家 が 株 式 や 債 券 な ど に 投
資 ・ 運 用 す る 商 品 で 、 そ の 運 用 成 果 が 投 資 家 そ れ ぞ れ の 投 資 額 に 応 じ て 分 配 さ2 0
れ る 仕 組 み の 金 融 商 品 」 5
で あ る 。 投 信 は 個 人 が 直 接 証 券 に 対 し て 行 う 投 資 に
比 べ 特 徴 的 な 点 が 2 つ あ る 。
ま ず 1 つ 目 に 、 専 門 家 に よ っ て 大 規 模 資 金 で 運 用 が な さ れ る 点 で あ る 。 個 人
投 資 家 が 直 接 証 券 に 投 資 を す る 際 、 時 間 面 、 金 銭 面 、 情 報 面 で 制 約 を 受 け る た
め 投 資 対 象 は 限 ら れ て く る 。 〈 図 表 2 - 1 〉 は 2 0 0 4 年 か ら 2 0 1 5 年 ま で の 国 、2 5
5
投 資 信 託 協 会 H P よ り 引 用 。
9
地 域 別 株 式 の 年 平 均 リ タ ー ン を 表 し て お り 、 日 本 の 株 式 の 平 均 リ タ ー ン は 決 し
て 高 く は な い こ と が 確 認 で き る 。 仮 に 中 国 株 の リ タ ー ン に 連 動 す る イ ン デ ッ ク
ス フ ァ ン ド が 存 在 し 、 そ れ に 投 資 し た と す れ ば 1 2 年 間 で 年 平 均 1 9 . 2 % の リ タ
ー ン を 得 る こ と が で き る 。 こ れ は 日 本 の 場 合 の 倍 以 上 の 値 で あ る 。 こ の よ う に 、
個 人 で は 投 資 が 難 し い 海 外 の 資 産 も 投 資 対 象 と す る こ と が で き る 。 さ ら に 、 大5
規 模 投 資 に よ る ポ ー ト フ ォ リ オ に よ っ て 効 率 的 に リ タ ー ン を 得 る こ と が 可 能 で
あ る 。
〈 図 表 2 - 1 〉 国 、 地 域 別 株 式 年 平 均 リ タ ー ン ( 単 位 : % )
1 0
1 5
出 所 : J P モ ル ガ ン ・ ア セ ッ ト ・ マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社 「 G u i d e t o t h e M a r k e t s 」 [ 2 0 1 6 ] P 5 0 を 参
考 に 筆 者 作 成
2 つ 目 に 、 様 々 な 対 象 に 少 額 で 分 散 投 資 で き る 点 で あ る 。 個 人 の 投 資 家 が 自
分 の 資 金 の み で 分 散 投 資 を す る と な る と 多 額 の 資 金 が 必 要 と な る 。 投 信 の よ う2 0
な 集 団 投 資 で は 広 く 集 め た 大 き な 資 金 を ま と め て 運 用 す る 。 上 記 し た 〈 図 表
2 - 1 〉 の 中 国 株 の 例 は 、 中 国 株 全 て の 年 平 均 リ タ ー ン で あ る 。 1 国 の 株 式 全 て
に 投 資 を す る と な る と 莫 大 な 資 金 が 必 要 と な る が 、 集 団 投 資 と い う 手 段 を と る
こ と で 1 国 に 限 ら ず 世 界 中 全 て の 株 式 に 投 資 を す る フ ァ ン ド を 作 る こ と が で き
る 。 ま た 投 資 対 象 は 不 動 産 や 、 上 述 し た 世 界 の 株 式 や 債 券 な ど 様 々 で あ る 。 長2 5
期 的 に 様 々 な 資 産 へ 分 散 投 資 す る こ と に よ り 、 安 定 し た 収 益 を 得 ら れ る 傾 向 に
あ る 。 実 際 、 平 成 5 年 か ら 平 成 2 5 年 ま で 定 期 預 金 を 行 っ た 場 合 は 年 平 均
0 . 0 8 % 、 国 内 株 ・ 債 券 に 半 分 ず つ 投 資 し た 場 合 は 年 平 均 1 . 3 % 、 国 内 ・ 先 進
10
国 ・ 新 興 国 の 株 ・ 債 券 に 6 分 の 1 ず つ 投 資 し た 場 合 は 年 平 均 4 . 4 % 6
よ り 投 資
対 象 を 分 散 さ せ た 場 合 に リ タ ー ン は 高 く な っ て い る 。
現 行 の 投 信 は 1 9 5 1 年 に 誕 生 し た 。 当 時 の 法 的 基 礎 と な っ た 「 証 券 投 資 信 託
法 」 に は 「 こ の 法 律 は 、 証 券 投 資 信 託 の 制 度 を 確 立 し 、 証 券 投 資 信 託 の 受 益 者
の 保 護 を 図 る こ と に よ り 、 一 般 投 資 者 に よ る 証 券 投 資 を 容 易 に す る こ と を 目 的5
と す る 。 」 と 記 さ れ て い る 。 当 時 の 日 本 は 大 戦 後 の 財 閥 解 体 お よ び 財 産 物 の 納
物 な ど に よ っ て 株 式 が 供 給 過 剰 の 状 態 に あ り 、 株 式 市 場 は 沈 滞 し て い た 。 そ こ
で 株 式 市 場 の 需 給 改 善 と 一 般 大 衆 か ら の 産 業 資 金 調 達 を 容 易 に す る た め に 考 案
さ れ た も の が 投 信 で あ っ た 。
1 9 9 8 年 に 「 証 券 投 資 信 託 法 」 は 「 証 券 投 資 信 託 及 び 証 券 投 資 法 人 に 関 す る 法1 0
律 」 へ と 名 称 が 改 め ら れ 、 さ ら に 2 0 0 0 年 に 「 投 資 信 託 及 び 投 資 法 人 に 関 す る 法
律 」 へ 改 め ら れ た 。 そ し て 、 そ の 目 的 に 「 国 民 経 済 の 健 全 な 発 展 に 資 す る こ と 」
と い う 制 定 当 初 に は な か っ た 目 的 が 追 加 さ れ て い る 。 つ ま り 、 導 入 当 初 は 産 業
資 金 の 調 達 の た め と い う 政 策 的 要 請 に よ っ て 導 入 さ れ た 日 本 の 投 信 で あ っ た が 、
そ こ に 国 民 の た め に と い う 要 素 が 加 わ っ た の で あ る 。 投 信 は 導 入 以 来 、 上 述 し1 5
た 2 度 の 法 改 正 を は じ め 6 0 年 あ ま り の 歴 史 の 中 で 改 革 を 繰 り 返 し て き た 。 前
述 の よ う に 、 設 立 当 初 は 産 業 資 金 調 達 の た め の も の で あ っ た 。 そ し て 現 在 で は
前 述 の 2 つ の 特 徴 か ら 、 家 計 の 資 産 形 成 を 担 う こ と の で き る 金 融 商 品 と し て の
役 割 が 期 待 さ れ て い る 。
第 2 節 NISA2 0
「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」 を 加 速 さ せ る た め 、 英 国 の I S A 制 度 7
に 倣 い 創 設 さ れ た
N I S A は 、 日 本 在 住 の 2 0 歳 以 上 が 対 象 と な る 「 少 額 投 資 非 課 税 制 度 」 で あ る 。
年 間 1 2 0 万 円 、 5 年 間 で 最 大 6 0 0 万 円 ま で が 非 課 税 と な る 。 そ の 対 象 は 上 場
株 式 、 公 募 株 式 投 資 信 託 、 E T F 、 R E I T 等 で あ る 。 通 常 の 口 座 と の 違 い と し て 、
N I S A は 非 課 税 で 運 用 で き る こ と が 挙 げ ら れ る 。 通 常 の 口 座 で は 、 投 資 で 得 た2 5
6
平 成 5 年 ~ 2 5 年 金 融 庁 試 算 よ り
7
N I S A 制 度 導 入 に あ た っ て 参 考 と さ れ た 個 人 貯 蓄 口 座 制 度 。 1 9 9 9 年 に 導 入
さ れ 、 個 人 の 資 産 形 成 促 進 策 と し て 低 所 得 層 に も 広 く 利 用 さ れ て い る 。
11
利 益 に 対 し て 2 0 . 3 1 5 % の 税 金 が か か る 。 こ の 違 い が 大 き な メ リ ッ ト で あ る 。
導 入 の 目 的 と し て は 家 計 の 資 産 形 成 の 支 援 で あ る 。 金 融 資 産 ゼ ロ 世 帯 が 年 々
急 増 し て お り 、 約 3 割 を 占 め て い る 8
。 N I S A 導 入 を き っ か け に 若 年 層 や 投 資
未 経 験 層 が 中 長 期 的 な 資 産 形 成 に 自 助 努 力 で 取 り 組 む こ と を 期 待 さ れ て い る 9
。
し か し 、 〈 図 表 2 - 2 〉 に 示 す と お り 、 実 際 に は 制 度 を 利 用 し て い る 人 の 約 5 割5
が 6 0 歳 代 以 上 の 高 齢 者 で あ る こ と が 現 状 で あ る 。
こ の よ う な 現 状 が あ る 中 、 N I S A は ラ イ フ プ ラ ン に 基 づ く 積 立 投 資 が 行 い や
す く 、 資 産 形 成 世 代 に お い て 投 資 を 拡 大 さ せ る 良 い き っ か け と な り え る 。 そ の
た め 、 N I S A を 資 産 形 成 世 代 で あ る 若 年 層 に 拡 大 さ せ る た め の 解 決 策 が 必 要 で
あ る 。1 0
英 国 の 株 式 型 I S A に お け る 資 産 配 分 を 見 る と 、 約 7 割 が 投 信 で 、 株 式 は 2
割 に 満 た な い 数 字 に な っ て い る 。 英 国 資 産 運 用 協 会 ( I M A ) に よ る と 、 2 0 1 2 年
度 の I S A に お け る 投 信 で 上 位 と な っ て い る の は 、 ① ス ト ラ テ ジ ッ ク ・ ボ ン ド
( ポ ン ド 建 て 1 0
) 、 ② バ ラ ン ス 型 ( 株 式 2 0 ~ 6 0 % ) 、 ③ 世 界 高 配 当 株 、 ④ 新 興 国
株 、 ⑤ ア ジ ア ・ パ シ フ ィ ッ ク 株 と な っ て い る 。 上 位 セ ク タ ー は 昨 年 度 も 上 位 と1 5
な っ て お り 、 投 資 家 が リ バ ラ ン ス せ ず に 保 有 し 続 け る こ と の で き る フ ァ ン ド が
好 ま れ て い る と 言 え る 。 こ の 事 実 に 加 え て 、 〈 図 表 2 - 3 〉 で 示 す よ う に I S A 内
で 保 有 さ れ て い る 投 信 の 保 有 期 間 は 投 信 全 体 ( I S A 以 外 で の 保 有 含 む ) よ り も 3
年 ほ ど 長 い 。 こ の こ と か ら 、 英 国 I S A に お い て 非 課 税 枠 内 で の フ ァ ン ド の 乗
り 換 え は 制 度 上 認 め ら れ て い る も の の 1 1
、 全 体 と し て は 短 期 の 回 転 売 買 は 行 わ2 0
れ て い な い と 言 え る 。 リ バ ラ ン ス の 必 要 の な い フ ァ ン ド が 好 ま れ て い る 事 実 と
併 せ て 、 英 国 I S A が 国 民 に よ る 長 期 の 資 産 形 成 の た め の 手 段 と し て 活 用 さ れ
て い る 実 態 が う か が え る 。
8
金 融 広 報 中 央 委 員 会 平 成 2 7 年 「 家 計 の 金 融 行 動 に 関 す る 世 論 調 査 」 よ り
9
2 0 1 6 年 4 月 か ら 子 ど も や 孫 の 将 来 に 向 け た 資 産 運 用 の た め に ジ ュ ニ ア
N I S A が 導 入 さ れ た 。
1 0
ス ト ラ テ ジ ッ ク ・ ポ ン ド ( ポ ン ド 建 て ) と は 、 少 な く と も 8 0 % 以 上 が ポ ン ド
建 て で 運 用 さ れ て お り 、 先 進 国 の 国 債 に ハ イ ・ イ ー ル ド 債 な ど 、 あ ら ゆ る 債 権
を 投 資 対 象 と し た も の で あ る 。
1 1
N I S A で は 非 課 税 枠 内 で の フ ァ ン ド の 乗 り 換 え は 認 め ら れ て い な い 。
12
N I S A が 範 と す る I S A で 長 期 の 資 産 形 成 手 段 と し て 投 信 が 選 択 さ れ て い る 背
景 を 見 る 限 り 、 N I S A は 投 信 普 及 率 の 低 い 若 年 層 に 長 期 の 資 産 形 成 手 段 と し て
投 信 を 保 有 し て も ら う た め の 有 効 な 手 段 で あ る と 考 え る 。
〈 図 表 2 - 2 〉 年 代 別 の 口 座 開 設 者 比 率5
1 0
出 所 : 金 融 庁 「 N I S A ・ ジ ュ ニ ア N I S A 口 座 の 開 設 ・ 利 用 状 況 調 ( 平 成 2 8 年 3 月 末 時1 5
点 ) 」 [ 2 0 1 6 ] よ り 筆 者 作 成
〈 図 表 2 - 3 〉 日 英 の 投 信 の 平 均 保 有 期 間 比 較
2 0
2 5
出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 「 英 国 の I S A の 実 施 状 況 等 に つ い て 」 [ 2 0 1 2 ] P 2 2 よ り 筆 者 作 成
20歳代
4.5% 30歳代
9.9%
40歳代
14.8%
50歳代
17.0%
60歳代
26.1%
70歳代
19.3%
80歳代
8.4%
13
第 3 節 確定拠出年金
確 定 拠 出 年 金 ( 以 下 、 D C と 略 す ) と は 、 公 的 年 金 に 上 乗 せ し て 給 付 を 受 け
る 私 的 年 金 の 一 つ で あ る 。 掛 金 を 定 め て 事 業 主 や 加 入 者 が 拠 出 し 、 加 入 者 自 ら
が 運 用 し 、 掛 金 と そ の 運 用 益 と の 合 計 額 を も と に 将 来 の 給 付 額 が 決 定 さ れ る と
い う も の で 、 事 業 主 が 実 施 す る 「 企 業 型 D C 」 と 、 個 人 で 加 入 す る 「 個 人 型5
D C 」 が あ る 1 2
。 平 成 2 9 年 1 月 か ら 、 個 人 型 D C の 加 入 範 囲 が 拡 大 さ れ 1 3
、
さ ら に 利 用 者 数 の 拡 大 が 期 待 さ れ る 。 〈 図 表 2 - 4 〉 に 示 す よ う に 企 業 型 D C を
実 施 す る 事 業 者 数 は 増 加 し て お り 、 D C を 通 じ た 投 資 が 一 般 的 に な っ て い る と
言 え る 。
〈 図 表 2 - 4 〉 企 業 型 D C 実 施 事 業 者 数 の 推 移1 0
1 5
出 所 : 厚 生 労 働 省 H P ( 確 定 拠 出 年 金 、 規 約 者 等 の 推 移 ) を 参 考 に 筆 者 作 成2 0
米 国 で は 8 0 年 代 の 株 価 の 長 期 上 昇 時 に 、 株 価 の 影 響 を 受 け に く く 長 期 安 定
資 金 で あ る D C を 通 し て 、 投 信 の 利 用 が 拡 大 し た 。 実 際 に 〈 図 表 2 - 5 〉 を み て
も 分 か る よ う に 、 9 0 年 代 前 半 か ら 2 0 1 3 年 に か け て 、 職 域 型 D C と I R A の 両
方 に 占 め る 投 信 の 割 合 は 大 き く 伸 び て い る 。 こ の よ う に 個 人 が 資 産 形 成 の 重 要2 5
1 2
厚 生 労 働 省 H P よ り 定 義 を 引 用 。
1 3
新 た に 企 業 年 金 加 入 者 ・ 公 務 員 等 共 済 加 入 者 ・ 私 学 共 済 加 入 者 ・ 第 3 号 被
保 険 者 ( 専 業 主 婦 等 ) が 加 え ら れ た 。
14
性 を 理 解 し 投 信 を 利 用 す る と い っ た 動 き は 、 日 本 よ り か な り 早 く か ら 取 り 組 ま
れ て き た と 言 え る 。 米 国 は 世 界 最 大 の 投 信 大 国 で あ り 、 世 界 の 投 信 残 高 の う ち
5 2 % 1 4
を 占 め て い る 。 そ の 投 信 純 資 産 残 高 は 2 0 1 6 年 6 月 末 時 点 で 1 8 兆 円 を
突 破 し た 。 世 帯 普 及 率 は 2 0 1 4 年 時 点 で 4 3 % で あ り 、 3 5 歳 未 満 の 若 年 層 で も
3 4 % の 投 信 を 保 有 し て お り 年 代 に 関 係 な く 投 信 の 普 及 率 が 高 い こ と が 確 認 で5
き る 。
米 国 で は 7 4 年 に 個 人 型 年 金 に 相 当 す る 個 人 退 職 口 座 で あ る I R A が 発 足 し 、
8 1 年 に 企 業 年 金 で あ る 4 0 1 ( k ) プ ラ ン が 発 足 し た 。 日 本 と 米 国 の D C 制 度 を 比
較 し た 時 に は 様 々 な 違 い が あ る 。 ま ず 、 日 本 の 企 業 型 D C と 4 0 1 ( k ) プ ラ ン の
主 な 違 い と し て 、 米 国 は 4 0 1 ( k ) プ ラ ン へ の 加 入 に つ い て オ プ ト イ ン 方 式 か ら1 0
オ プ ト ア ウ ト 方 式 に 改 め た 1 5
点 、 従 業 員 拠 出 限 度 額 の 平 均 世 帯 年 収 に 対 す る 割
合 が 日 本 は 米 国 に 比 べ て 低 い 点 1 6
が 挙 げ ら れ る 。 特 に オ プ ト ア ウ ト 方 式 に 変 更
し た 点 は 、 4 0 1 ( k ) プ ラ ン の 普 及 に 大 き な 影 響 を 与 え た 。 次 に 、 日 本 の 個 人 型
D C と I R A の 主 な 違 い と し て 、 加 入 者 年 齢 の 上 限 が 米 国 に 比 べ て 低 い 点 1 7
が 挙
げ ら れ る 。 そ し て 日 本 の 個 人 型 D C と I R A 、 日 本 の 企 業 型 D C と 4 0 1 ( k ) プ ラ1 5
ン を 比 べ た と き に 共 通 す る 主 な 違 い と し て は 、 日 本 は 原 則 と し て 6 0 歳 ま で 引
き 出 せ な い が 米 国 は 5 9 . 5 歳 の 引 き 出 し が 可 能 年 齢 に 達 す る 前 で も 1 0 % の ペ ナ
ル テ ィ を 支 払 う こ と で 引 き 出 せ る 点 が 挙 げ ら れ る 。 日 本 も 米 国 の D C を 参 考 に 、
こ れ か ら D C に 関 す る 法 律 を 整 備 し て い く こ と で 、 さ ら に 制 度 の 普 及 を 推 し 進
め て い く こ と が 期 待 さ れ る 。2 0
1 4
投 資 信 託 協 会 「 投 資 信 託 の 世 界 統 計 ( 2 0 1 6 年 第 2 四 半 期 ) 」 よ り
1 5
オ プ ト イ ン 方 式 と は 従 業 員 が 積 極 的 に 加 入 の 意 思 を 示 し た 場 合 に の み 加 入
さ せ る 方 式 の こ と で 、 オ プ ト ア ウ ト 方 式 と は 従 業 員 が 特 に 加 入 を 拒 否 し な け れ
ば 自 動 的 に 加 入 さ せ る こ と が で き る 方 式 の こ と で あ る 。
1 6
2 0 1 0 年 時 点 で 4 0 1 ( k ) の 従 業 員 拠 出 限 度 額 の 平 均 年 収 比 を 計 算 ( 5 0 歳 以 上
の キ ャ ッ チ ア ッ プ 分 を 含 め な い 場 合 ) す る と 2 4 % 、 日 本 の 企 業 型 D C で 計 算
( D B 型 の 年 金 を 実 施 し て い な い 場 合 ) す る と 9 . 9 % で あ る 。 杉 田 浩 治 2 0 1 2
年 5 月 「 米 国 の 確 定 拠 出 年 金 3 0 年 の 推 移 か ら 日 本 の D C ビ ジ ネ ス を 考 え
る 」 よ り
1 7
I R A は 7 0 . 5 歳 、 日 本 の 個 人 型 D C は 6 0 歳 が 上 限 で あ る 。
15
〈 図 表 2 - 5 〉 確 定 拠 出 年 金 の う ち 投 信 で 運 用 さ れ て い る 割 合
5
出 所 : 杉 田 浩 治 「 米 国 投 信 4 分 の 3 世 紀 の 歴 史 か ら 何 を 学 ぶ か 」 2 0 1 5 年 1 月 P 1 3 よ り 筆
者 作 成1 0
ま ず 、 D C 制 度 の 代 表 的 な 特 徴 と し て 、 運 用 を 加 入 者 自 身 が 行 う 点 が 挙 げ ら
れ る 。 つ ま り 、 投 資 す る 商 品 を 自 分 自 身 で 選 べ る と い う こ と で あ る 。 加 入 者 は 、
そ れ ぞ れ の リ ス ク 許 容 度 に 応 じ て 、 投 資 対 象 を リ ス ク 性 資 産 と 安 全 資 産 か ら 選
択 す る こ と が で き る 。1 5
D C の 最 大 の メ リ ッ ト は 、 掛 金 を 拠 出 す る 際 ・ 掛 金 を 運 用 す る 際 ・ 年 金 と 一
時 金 の 受 取 す る 際 の 3 点 全 て に お い て 税 制 優 遇 が 適 用 さ れ る こ と で あ る 。 税 制
優 遇 を 活 用 し た か ど う か は 、 資 産 形 成 に 大 き な 差 を も た ら す 。 例 え ば 毎 月 1 万
円 の 積 立 を 2 2 歳 か ら 6 0 歳 ま で 3 8 年 続 け た と 仮 定 し て 、 こ れ を 年 利 3 % で 増
や し て い く と 仮 定 す る と 、 D C を 活 用 し た 場 合 、 6 0 歳 時 点 で 8 4 9 万 円 の 資 産2 0
に 育 つ 。 も し 、 所 得 税 や 住 民 税 と し て 2 0 % が 引 か れ 、 運 用 益 に も 2 0 % 課 税 さ
れ た と す れ ば 、 6 0 歳 時 点 で の 受 取 額 は 5 9 5 万 円 で あ る 1 8
。 同 じ 積 立 期 間 で も
そ の 差 は 2 5 4 万 円 に の ぼ る 。
ま た 、 非 課 税 の メ リ ッ ト を 最 大 限 に 活 か す 為 に は 、 投 信 な ど の 自 身 の リ ス ク
許 容 度 の 中 で 期 待 リ タ ー ン の 高 い 商 品 を 活 用 す る の が 最 善 策 で あ る 。 そ の 理 由2 5
は 、 期 待 リ タ ー ン の 高 い 商 品 は 収 益 が 大 き く 、 ま た か か る 税 金 も 大 き い か ら で
あ る 。 さ ら に 、 D C の 運 用 先 と し て 投 信 を 選 択 し た 場 合 、 金 融 機 関 の 窓 口 で 販
売 さ れ て い る も の と は 異 な り 原 則 と し て 運 用 益 に 対 す る 税 金 が か か ら な い 。 投
1 8
投 資 信 託 協 会 H P よ り 引 用 。
16
資 信 託 を 購 入 す る 際 に は 、 銀 行 の 窓 口 や 証 券 会 社 で 購 入 す る よ り も D C を 通 し
て 購 入 す る 方 に メ リ ッ ト が あ る 。
ま た 、 2 0 1 2 年 1 月 の 法 改 正 に よ っ て 「 マ ッ チ ン グ 拠 出 」 が 可 能 と な っ た 。
マ ッ チ ン グ 拠 出 と は 、 加 入 者 も 一 定 の 範 囲 内 で 事 業 主 の 掛 金 に 上 乗 せ 拠 出 が 出
来 る 制 度 で あ る 。 拠 出 額 に は 上 限 が 設 け ら れ て い る 。 会 社 の 掛 金 と の 合 計 で 拠5
出 限 度 額 で あ る 月 額 5 5 , 0 0 0 円 を 超 え る こ と は で き な い 1 9
。 ま た 、 企 業 年 金 は
主 た る 拠 出 者 は 会 社 で あ る と い う 考 え に も と づ き 、 会 社 の 掛 金 を 加 入 者 本 人 の
掛 金 が 上 回 る こ と も で き な い 。
マ ッ チ ン グ 拠 出 の 最 大 の メ リ ッ ト は 、 加 入 者 の 掛 金 に も 税 制 優 遇 が 適 用 さ れ
る こ と で あ る 。 毎 月 積 み 立 て た 掛 金 は 全 額 が 所 得 控 除 の 対 象 と な る た め 、 将 来1 0
に 向 け て 積 み 立 て を す る と 、 所 得 税 ・ 住 民 税 が 軽 減 さ れ る こ と と な る 。 ま た 、
会 社 掛 金 と 同 様 に 、 加 入 者 の 掛 金 も 資 産 運 用 に よ っ て 生 じ た 利 益 に つ い て は 全
額 が 非 課 税 と な る た め 、 効 率 的 な 資 産 形 成 が 行 え る 。 こ れ は 現 役 時 代 に 行 う 資
産 形 成 に お け る 大 き な 税 制 優 遇 措 置 で あ る 。
マ ッ チ ン グ 拠 出 は 加 入 者 が 掛 金 を 負 担 す る 仕 組 み で あ る こ と か ら 、 企 業 側 の1 5
コ ス ト は 低 く 抑 え る こ と が 可 能 で あ る 。 つ ま り 低 コ ス ト で 福 利 厚 生 の 拡 充 が 図
れ る こ と か ら 、 企 業 と 従 業 員 の 双 方 に メ リ ッ ト の 大 き い 制 度 で あ る と 言 え る 。
こ の よ う に 大 き な メ リ ッ ト を 享 受 で き る 制 度 で あ っ て も 、 D C か ら 投 資 を 始
め る 人 々 に と っ て は 制 度 の 有 効 活 用 が 難 し く 感 じ ら れ る か も し れ な い 。 そ こ で
今 年 の 5 月 に 「 D C 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 」 が 成 立 し 、 投 資 経 験 が 十 分 で2 0
な い 加 入 者 に も さ ら に 制 度 の 普 及 を 推 進 さ せ る 素 地
そ じ
は 整 っ た 。 具 体 的 に は 、 吟
味 し て 商 品 を 選 び や す い よ う に 提 供 商 品 数 を 抑 制 す る 規 定 の 整 備 や 、 運 用 の 効
率 化 に 資 す る 商 品 規 定 の 整 備 が 行 わ れ る 。 特 に 運 用 効 率 化 の 面 で は 、 企 業 型
D C に お い て 加 入 者 が 運 用 指 図 し な い 場 合 に 、 リ ス ク 分 散 が 見 込 め る 複 数 資 産
に 投 資 す る デ フ ォ ル ト 商 品 で 運 用 す る こ と を 予 め 定 め て お く こ と が 可 能 に な っ2 5
た 。
第 1 章 で 述 べ た よ う に 、 老 後 の 資 産 形 成 を す る に あ た っ て 預 貯 金 だ け で は 資
金 不 足 に 陥 る こ と や 、 公 的 年 金 に 対 す る 不 安 が 高 ま っ て い る 中 で 、 D C は 現 代
1 9
企 業 年 金 を 併 用 し て い る 場 合 は 月 額 2 7 , 5 0 0 円 が 上 限 と な る 。
17
の 日 本 に 適 し た 年 金 制 度 で あ る と 言 え る 。 D C で は 税 制 優 遇 の メ リ ッ ト を 生 か
し て リ ス ク 資 産 で あ る 投 資 信 託 を 中 心 に 運 用 す る と い う 方 法 が 老 後 へ の 適 切 な
資 産 形 成 手 段 で あ る と 考 え ら れ る 。
第 3 章 投資信託の現状と課題
本 章 で は 、 日 本 の 投 信 が 資 産 形 成 手 段 と し て 機 能 し て い る の か と い う こ と に5
つ い て 現 状 と 解 決 す べ き 課 題 に 言 及 し な が ら 述 べ て い く 。
第 1 節 日本人の投資信託保有の現状
投 信 が 投 資 を す る 上 で 適 切 な 商 品 で あ る こ と は 第 2 章 で 述 べ た と お り で あ る 。
世 界 、 日 本 と も に 〈 図 表 3 - 1 〉 に 示 す と お り 、 投 信 の 残 高 は 増 加 し て お り 、 金
融 商 品 と し て の 地 位 を 築 き つ つ あ る と い え る 。1 0
〈 図 表 3 - 1 〉 世 界 と 日 本 の 投 資 信 託 残 高 2 0
1 5
2 0
出 所 : 投 資 信 託 協 会 H P 「 投 資 信 託 の 世 界 統 計 」 2 0 0 3 年 第 2 四 半 期 か ら 2 0 1 4 年 第 2 四 半 期
の 各 第 2 四 半 期 の デ ー タ を 参 考 に 筆 者 作 成
2 0
デ ー タ は 各 年 の 6 月 末 時 点 。 ま た 、 2 0 1 5 年 以 降 は 調 査 方 法 が 変 わ り デ ー タ
の 連 続 性 を 欠 く た め グ ラ フ の デ ー タ に 含 め て い な い 。 2 0 1 5 年 以 降 の 調 査 方 法
で は 2 0 1 4 年 3 8 . 0 1 兆 ド ル 。 2 0 1 5 年 3 9 . 2 2 兆 ド ル 。 2 0 1 6 年 3 9 . 2 9 兆 ド ル
と な っ て い る 。
18
し か し 、 一 人 当 た り の 保 有 額 や 投 信 残 高 の 対 G D P 比 率 の 伸 び 〈 図 表 3 - 2 〉
か ら 考 え る と 日 本 に お け る 投 信 の 普 及 状 況 は 比 較 し て 伸 び 悩 ん で い る 。 ま た 、
投 信 の 世 帯 普 及 率 で は 米 国 が 4 3 . 9 % に 対 し て 日 本 は 7 . 9 % に 過 ぎ な い 。
〈 図 表 3 - 2 〉 投 資 信 託 残 高 の 対 G D P 比 率 の 変 化5
1 0
出 所 : 杉 田 浩 治 「 発 足 か ら 満 6 0 年 を 迎 え る 日 本 の 投 資 信 託 - そ の 軌 跡 ・ 現 状 と 今 後 の 課 題 - 」
[ 2 0 1 1 ] P 1 2 を 参 考 に 筆 者 作 成1 5
こ の こ と は 日 本 で は 若 い 世 代 で 特 に 投 信 の 普 及 率 が 低 い こ と が 原 因 と し て 考
え ら れ る 。 〈 図 表 3 - 3 〉 の 【 a 】 は 米 国 の 投 信 保 有 家 庭 数 に 占 め る 各 年 代 の 割
合 で あ る 。 【 b 】 は 家 計 全 体 が 保 有 す る 投 信 の う ち 各 世 代 そ れ ぞ れ の 保 有 割 合
で あ る 。 こ れ を 見 る と 米 国 で は 若 年 層 ま で 保 有 し て い る こ と が 分 か る 。 そ れ に2 0
対 し 、 日 本 で は 〈 図 表 3 - 4 〉 に 示 す よ う に 、 若 年 層 で の 投 信 保 有 率 の 低 さ が 顕
著 で あ る 。 第 1 章 で も 述 べ た よ う に 、 投 資 に よ る 資 産 形 成 は 若 年 層 に こ そ 必 要
で あ る 。
2 5
3 0
19
〈 図 表 3 - 3 〉 米 国 の 家 計 に お け る 投 資 信 託
5
出 所 : 米 国 投 資 信 託 協 会 「 P r o f i l e o f M u t u a l F u n d S h a r e h o l d e r s . 2 0 1 4 」 P 2 3 を 参 考 に 筆
者 作 成1 0
〈 図 表 3 - 4 〉 年 代 別 投 資 信 託 保 有 状 況
1 5
2 0
出 所 : 投 資 信 託 協 会 「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 - 2 0 1 4 年 ( 平 成 2 6 年 ) 調 査 結 果
の 概 要 - 」 を 参 考 に 筆 者 作 成
第 2 節 家計のリテラシー不足
家 計 の 金 融 資 産 に 占 め る リ ス ク 性 資 産 ( 株 式 ・ 債 券 ・ 投 信 ) の 割 合 を 日 米 で
比 べ る と 米 国 は 日 本 の 2 倍 か ら 3 倍 あ る 。 日 本 で は 「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」 と い う2 5
動 き が 進 め ら れ て き た が 、 大 き な 進 展 は 見 ら れ な い 。 こ れ に つ い て は 、 国 民 の
金 融 リ テ ラ シ ー 不 足 が 原 因 で 金 融 教 育 を す べ き と い う 意 見 が あ る 。
教 育 が 重 要 で あ る こ と は 明 白 で あ る 。 し か し 、 日 米 家 計 の リ ス ク 性 資 産 の 保
有 性 向 の 違 い の 原 因 を こ こ だ け に 求 め る こ と は で き な い 。
12 13
42 51
31
31
15
5
0%
50%
100%
a b
1904~1945年生まれ 1946~1964年生まれ
1965~1980年生まれ 1981~2004年生まれ
20
確 か に 日 米 一 般 消 費 者 を 対 象 に し た 金 融 知 識 の 理 解 度 テ ス ト の 結 果 を 見 る と 、
米 国 人 の ほ う が や や 平 均 点 は 高 い 。 し か し 日 米 の 社 会 的 、 経 済 的 構 造 の 差 や 統
計 の と り 方 の 違 い を 考 慮 す れ ば 日 米 に 大 き な 金 融 リ テ ラ シ ー 格 差 は な い と 考 え
ら れ る 。
そ も そ も 金 融 リ テ ラ シ ー と は 日 本 証 券 業 協 会 に よ れ ば 「 金 融 に 関 す る 知 識 や5
情 報 を 正 し く 理 解 し 、 自 ら が 主 体 的 に 判 断 す る こ と の で き る 能 力 」 と さ れ て い
る 。 金 融 リ テ ラ シ ー と 一 口 に 言 っ て も 、 金 融 に 関 す る 情 報 は 多 岐 に 渡 り そ の 範
囲 は 広 い 。 こ こ で 重 要 と な る の が 「 資 産 形 成 に 必 要 な 金 融 リ テ ラ シ ー 」 を 身 に
着 け る こ と で あ る 。
「 資 産 形 成 に 必 要 な 金 融 リ テ ラ シ ー 」 と は 具 体 的 に は ど の よ う な も の だ ろ う1 0
か 。 我 々 は そ れ を ( 1 ) 資 産 形 成 の 必 要 性 の 理 解 ( 2 ) 資 産 形 成 の た め の 制 度 に 対
す る 理 解 ( 3 ) 資 産 形 成 の た め に 金 融 商 品 を 理 解 、 選 択 し 適 切 な 方 法 で 運 用 で き
る 能 力 で あ る と 提 言 す る 。
以 上 の 提 言 を 踏 ま え た 「 資 産 形 成 に 必 要 な 金 融 リ テ ラ シ ー 」 と い う 視 点 か ら 、
現 状 を 分 析 す る 。1 5
ま ず ( 1 ) に つ い て 、 資 産 形 成 の 必 要 性 を 理 解 す る た め に は ラ イ フ プ ラ ン を 考
え る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。 な ぜ な ら 、 自 身 の ラ イ フ プ ラ ン を 考 え る こ と で
必 要 資 金 の 額 や 時 期 を 知 る こ と が で き る か ら で あ る 。
金 融 広 報 中 央 委 員 会 は 2 0 1 6 年 2 月 か ら 3 月 に か け て 金 融 リ テ ラ シ ー 調 査 を
実 施 し た 。 こ の 調 査 は 金 融 リ テ ラ シ ー マ ッ プ の 全 分 野 か ら 出 題 し そ の 正 答 率 を2 0
測 る も の で あ っ た 。 そ の 分 野 と 分 野 別 の 結 果 は 〈 図 表 3 - 5 〉 の と お り で あ る 。
〈 図 表 3 - 5 〉 金 融 リ テ ラ シ ー マ ッ プ の 分 野 別 正 答 率 ( % )
2 5
出 所 : 金 融 広 報 中 央 委 員 会 「 「 金 融 リ テ ラ シ ー 調 査 」 の 結 果 」 [ 2 0 1 6 ] P 5 を 参 考 に 筆 者 作 成
3 0
51
50.4
72.9
48.8
52.5
53.3
54.3
65.3
55.6
外部の知見活用
合計
金融知識
家計管理
生活設計
記入取引の基本
金融・経済の基礎
保険
ローン・クレジット
資産形成
21
こ の 中 で ラ イ フ プ ラ ン や 「 資 産 形 成 の 必 要 性 」 に 関 し て の リ テ ラ シ ー を 問 う
も の は 生 活 設 計 分 野 で あ る 。 生 活 設 計 分 野 に お け る 正 答 率 は 5 0 . 4 % と な っ て
い る 。 金 融 経 済 教 育 研 究 会 報 告 書 に よ れ ば 、 こ の 分 野 に お い て 最 低 限 取 得 す べ
き こ と は 「 ラ イ フ プ ラ ン の 明 確 化 及 び ラ イ フ プ ラ ン を 踏 ま え た 資 金 の 確 保 の 必
要 性 の 理 解 」 と さ れ て い る 。 し か し 現 状 で は 半 分 程 度 の 理 解 に と ど ま っ て い る5
こ と が 推 察 で き る 。
次 に ( 2 ) の 資 産 形 成 の た め の 制 度 の 理 解 に つ い て で あ る 。 資 産 形 成 の た め の
制 度 と は 第 1 章 で 述 べ た D C と N I S A の こ と で あ る 。
〈 図 表 3 - 6 〉 は N I S A と D C の 認 知 度 を 示 し て い る 。 い ず れ の 制 度 も 年 齢 が
下 が る に つ れ 認 知 度 は 低 く な る 傾 向 に あ る 。 特 に D C は 若 年 層 で 認 知 度 が 低 い 。1 0
〈 図 表 3 - 6 〉 N I S A 、 D C の 世 代 別 認 知 度
1 5
2 0
出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 P 2 0 を 参 考 に
筆 者 作 成
N I S A で は 全 体 で の 認 知 度 は 半 分 を 超 え て い る が 、 〈 図 表 3 - 7 〉 に 示 す と お2 5
り 、 内 容 に 関 し て は 知 ら な い と い う 場 合 が 目 立 ち 、 投 資 経 験 者 で あ っ て も 3 割
は 内 容 を 理 解 し て い な い 。
66%
47%
59%
66% 67% 69% 70% 67%
72%
43%
17%
28%
36% 40% 43%
48% 51% 55%
0%
20%
40%
60%
80%
NISA DC
22
〈 図 表 3 - 7 〉 N I S A の 認 知 状 況
5
出 所 : 野 村 総 合 研 究 所 「 「 若 年 層 を 中 心 と し た 個 人 に よ る 投 資 の 現 状 と N I S A の 利 用 促 進 に 向 け1 0
た 課 題 に 関 す る 調 査 」 報 告 書 」 [ 2 0 1 5 ] P 2 7 よ り 筆 者 作 成
ま た 、 D C に 関 し て も 加 入 者 で あ っ て も 理 解 が 十 分 と は 言 え な い 。 〈 図 表 3 -
8 〉 は D C 加 入 者 が D C に 関 す る 3 点 の 基 本 事 項 2 1
の 理 解 の 程 度 を 表 し て い る 。
3 点 全 て 知 っ て い る 加 入 者 は 6 割 に 過 ぎ な い 。1 5
〈 図 表 3 - 8 〉 D C 加 入 者 の 制 度 理 解
2 0
出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 [ 2 0 1 5 ] よ り2 5
筆 者 作 成
2 1
① 拠 出 額 は 所 得 か ら 控 除 さ れ 、 税 金 が 節 約 で き る こ と 。 ② 金 融 資 産 の 運 用
益 に は 課 税 さ れ な い こ と 。 ③ 積 み 立 て た 資 金 は 原 則 6 0 歳 ま で 引 き 出 す こ と が
で き な い こ と 。
0点
14%
1点
13%
2点
12%
3点
61%
0点 1点 2点 3点
35.3
67.9
19.9 10.9
43.1
26.5
63.1
51.9
21.6
5.5 17.1
37.2
0%
20%
40%
60%
80%
100%
全体 投資経験者 投資関心層 投資無関心層
聞いたことがあり、内容も知っている 聞いたことはあるが、内容は知らない
聞いたことはない
23
最 後 に ( 3 ) の 資 産 形 成 の た め に 金 融 商 品 を 理 解 、 選 択 し 適 切 な 方 法 で 運 用 で
き る 能 力 に つ い て で あ る 。
〈 図 表 3 - 9 〉 は 金 融 リ テ ラ シ ー の ス コ ア 別 の D C 資 産 に お け る 投 信 比 率 で
あ る 。 ス コ ア が 高 い 人 ほ ど 投 信 比 率 が 高 い 。 こ の 調 査 で の テ ス ト は ( 1 ) 分 散 投
資 の 方 法 ( 2 ) 複 利 の 効 果 ( 3 ) 「 東 証 株 価 指 数 」 の 意 味 ( 4 ) N I S A の 投 資 上 限 額5
( 5 ) 「 流 動 性 」 の 意 味 の 5 つ に 関 す る こ と を 問 う も の で あ っ た 。 こ の 中 で 制 度
や 運 用 方 法 に つ い て の 問 い で 資 産 形 成 と 特 に 関 係 の 深 い 事 柄 は ( 1 ) ( 2 ) ( 4 ) で あ
る 。 こ の 調 査 で 2 点 と 3 点 の 間 で 「 投 信 比 率 が 5 0 % 以 上 の 人 」 の 割 合 の 開 き
が 大 き い 。 こ れ は 前 述 の 3 つ を 少 な く と も 1 つ は 知 っ て い る と い う こ と が 大
き い と 考 察 で き る 。1 0
〈 図 表 3 - 9 〉 金 融 リ テ ラ シ ー の ス コ ア 別 D C 資 産 に お け る 投 信 比 率
1 5
2 0
出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 P 4 0 を 参
考 に 筆 者 作 成
個 人 の 安 定 的 な 資 産 形 成 を 推 進 し て い く た め に は 、 分 散 投 資 や 長 期 運 用 の 有
効 性 の 理 解 を 含 め 、 様 々 な リ ス ク ・ リ タ ー ン の 金 融 商 品 を 適 切 に 選 択 す る 知2 5
識 ・ 判 断 力 の 向 上 が 必 要 で あ る 。
以 上 述 べ て き た と お り 、 日 本 人 は 資 産 形 成 の た め の リ テ ラ シ ー が 十 分 で は な
い 。
前 述 の よ う に 金 融 リ テ ラ シ ー と は 様 々 な 分 野 か ら な る 能 力 で あ る が 、 特 に 資
24
産 形 成 の た め の リ テ ラ シ ー 向 上 が 重 要 で あ る 。
第3節 顧客と金融商品取引業者の利益相反
本 稿 で 述 べ る 金 融 商 品 取 引 業 者 と は 販 売 会 社 と 運 用 会 社 で あ る 。 第 3 章 2
節 で は 家 計 の 金 融 リ テ ラ シ ー 不 足 が 課 題 で あ る と 述 べ た 。 一 方 で 、 こ の 現 状 に
目 を 向 け る と 、 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 で 利 益 相 反 が 起 こ っ て い る と い う 課 題5
が あ る 。 利 益 相 反 と は 具 体 的 に は 大 規 模 資 金 を 長 期 で 運 用 す べ き で あ る に も 関
わ ら ず 、 顧 客 が 求 め る ま ま に 運 用 会 社 が 分 配 型 の フ ァ ン ド を 設 定 し そ ち ら に 顧
客 が 流 れ て し ま う と い う こ と 、 そ し て 手 数 料 で 利 益 を 挙 げ た い 販 売 会 社 と 長 期
保 有 で 安 定 的 な 資 産 形 成 を 望 む 顧 客 側 と の 間 で 適 切 な 販 売 が 行 わ れ て い な い こ
と の 2 点 で あ る 。1 0
前 者 に 関 し て は 運 用 会 社 が 顧 客 の た め に 真 に 有 益 な 商 品 を 提 供 で き て い な い
と い う 課 題 も あ る が 、 顧 客 側 の リ テ ラ シ ー と も 深 く 関 わ る 問 題 で あ る 。 投 資 信
託 協 会 に よ る 「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 - 2 0 1 5 年 ( 平 成 2 7
年 ) 」 に よ れ ば 投 資 に 関 し て 入 手 し た い 情 報 と し て 、 「 分 配 金 が 多 い 投 信 」 の 割
合 は 2 0 . 7 % で あ る 。 例 え ば 2 0 1 5 年 3 月 末 時 点 で の 純 資 産 上 位 の 投 信 は 〈 図1 5
表 3 - 1 0 〉 の と お り 、 1 位 か ら 5 位 ま で 全 て 毎 月 分 配 型 の 投 信 で あ る 。 一 方 で
米 国 は 上 位 5 つ に 毎 月 分 配 型 の フ ァ ン ド は な い 。 毎 月 分 配 型 の 投 信 は 年 金 の
補 完 商 品 と し て 高 齢 者 を 中 心 に 人 気 が あ る 。 し か し 毎 月 配 当 型 の 投 信 は 人 気 を
集 め る た め に 十 分 な 利 益 が 出 て い な い に も 関 わ ら ず 原 資 を 配 当 し て し ま う 「 タ
コ 足 配 当 」 の 懸 念 が あ る 。 こ れ で は 、 再 投 資 に よ る 複 利 効 果 が 得 る こ と が で き2 0
な い ば か り か 、 フ ァ ン ド の 資 産 が 積 み 上 が ら ず 大 規 模 化 し な い 。
2 5
25
〈 図 表 3 - 1 0 〉 日 米 投 資 信 託 純 資 産 残 高 ト ッ プ 5
5
出 所 : 日 本 経 済 新 聞 ( 2 0 1 5 年 5 月 2 7 日 ・ 日 刊 P 2 0 ) を 参 考 に 筆 者 作 成
1 0
後 者 に 関 し て は 金 融 取 引 業 者 に 大 き く か か わ る 問 題 で あ る 。 投 信 の 現 状 に
つ い て 「 投 資 信 託 の 量 的 拡 大 は 途 上 に あ り 、 販 売 手 数 料 を 重 視 。 販 売 会 社 が 商
品 供 給 に 大 き な 影 響 力 を 有 す る 中 、 新 商 品 が 次 々 と 設 定 ・ 販 売 さ れ る 状 況 2 2
」
と 指 摘 が あ る 。 高 額 な 販 売 手 数 料 は 、 販 売 会 社 に 乗 り 換 え 販 売 の イ ン セ ン テ ィ
ブ が 生 じ 、 投 信 保 有 期 間 の 短 期 化 に 繋 が る 。1 5
な ぜ 手 数 料 重 視 の 販 売 体 系 に な る の か 、 そ れ は フ ァ ン ド の 運 営 費 用 を 信 託 報
酬 で 賄 い 切 れ な い た め で あ る 。 し か し そ の 問 題 は 信 託 報 酬 が 低 い た め に 起 こ っ
て い る の で は な い 。 〈 図 表 3 - 1 1 〉 は 債 券 型 フ ァ ン ド の 平 均 エ ク ス ペ ン ス レ シ
オ 2 3
の 国 際 比 較 で あ る が 、 日 本 の 信 託 報 酬 が 高 水 準 に あ る こ と が 分 か る 。
2 0
2 5
2 2
日 本 証 券 業 協 会 「 投 資 信 託 法 制 の 見 直 し 等 に 関 す る 検 討 ワ ー キ ン グ ・ グ
ル ー プ 」 [ 2 0 1 3 ] よ り 引 用 。
2 3
日 本 の 信 託 報 酬 に ほ ぼ 相 当 。
順位 投信名 
1 新光 US-REIT アクティブ 毎月分配
2 ラサール・グローバルREIT アクティブ 毎月分配
3 フィディリティ・USハイ・イールド アクティブ 毎月分配
4
野村 ドイチェ・高配当インフラ関連株
(米ドル)
アクティブ 毎月分配
5 グローバル・ソプリン アクティブ 毎月分配
1 バンガード・トータル・ストック インデックス ―
2 バンガード500 インデックス ―
3
バンガード・トータル・インターナ
ショナル
インデックス ―
4 アメリカン・ファンズ・グロース アクティブ ―
5 バンガード・トータル・ボンド インデックス ―
日本
米国
投信のタイプ
26
〈 図 表 3 - 1 1 〉 国 別 信 託 報 酬 手 数 料
5
出 所 : モ ー ニ ン グ ス タ ー 「 日 本 は “ 投 信 後 退 国 ” ! ? グ ロ ー バ ル 調 査 下 位 の 理 由 」 [ 2 0 1 5 ] を 参 考 に
筆 者 作 成1 0
日 本 の 公 募 投 信 の 本 数 は 増 加 を 続 け 、 2 0 1 5 年 末 時 点 で 5 8 4 3 億 円 に 達 し て
い る 。 本 数 は 増 加 し た が 、 1 本 あ た り の 規 模 ( 純 資 産 残 高 ) は 1 6 0 億 円 前 後 で
ほ ぼ 横 ば い の 状 況 が 続 い て い る 。
他 方 、 米 国 に お け る 投 信 の フ ァ ン ド 数 は 2 0 0 0 年 代 に 入 り 、 8 0 0 0 本 前 後 で1 5
推 移 し 、 ほ と ん ど 増 え て い な い 。 一 方 で 2 0 0 0 年 末 か ら 2 0 1 5 年 末 に 純 資 産 残
高 は 、 7 兆 ド ル か ら 1 6 兆 ド ル に 拡 大 し 1 本 あ た り の 規 模 は 8 . 5 億 ド ル か ら
1 9 億 ド ル へ と 2 . 3 倍 に 拡 大 し て い る 。
投 信 の 規 模 が 小 さ け れ ば 、 一 般 的 に は ス ケ ー ル メ リ ッ ト が 働 か な い た め 、 管
理 コ ス ト 等 は 割 高 に な り が ち で あ り 、 顧 客 が 払 う 信 託 報 酬 等 の 手 数 料 も 高 く な2 0
る と 考 え ら れ る 。
こ の よ う な 手 数 料 に 偏 重 す る 現 状 は 世 界 的 に も 低 評 価 で あ り 、 米 国 モ ー ニ ン
グ ス タ ー が 2 年 に 1 回 発 表 す る 、 世 界 2 5 カ 国 の 投 信 市 場 の 評 価 で あ る 「 グ ロ
ー バ ル ・ フ ァ ン ド ・ イ ン ベ ス タ ー ・ エ ク ス ペ リ エ ン ス ( G F I E ) 」 レ ポ ー ト で イ
タ リ ア と 並 ん で 下 か ら 2 番 目 に 低 い 評 価 と な っ た 。2 5
0.6%以下 0.6%超0.85%以下 0.85%超1.00%以下 1.00%超1.15%以下 1.15%超1.30%以下 1.30%超
カナダ
日本
台湾
オーストラリア
ベルギー
インド
韓国
オランダ
ノルウェー
タイ
米国
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
ニュージーランド
シンガポール
南アフリカ
スペイン
スウェーデン
スイス
中国
香港
イタリア
英国
27
〈 図 表 3 - 1 2 〉 G F I E の 総 合 評 価
5
1 0
出 所 : モ ー ニ ン グ ス タ ー 「 日 本 は “ 投 信 後 退 国 ” ! ? グ ロ ー バ ル 調 査 下 位 の 理 由 」 [ 2 0 1 5 ] を 参 考 に
筆 者 作 成
ま た 、 販 売 会 社 と 運 用 会 社 が 相 互 に 独 立 し て お ら ず 、 販 売 会 社 は 系 列 運 用 会
社 の 商 品 ば か り を 販 売 し て し ま い が ち で あ る 。1 5
こ う し た 現 状 の 中 、 金 融 庁 に よ り フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー 2 4
の 浸
透 が 図 ら れ て い る 。 例 え ば 、 投 資 運 用 業 者 に 対 し て は 系 列 販 売 会 社 と の 間 の 適
切 な 経 営 の 独 立 性 の 確 保 、 顧 客 の 利 益 に 適 う 商 品 の 組 成 ・ 運 用 等 、 販 売 会 社 に
対 し て は 顧 客 本 位 の 経 営 姿 勢 と 整 合 的 な 業 績 評 価 、 商 品 の リ ス ク 特 性 や 各 種 手
数 料 の 透 明 性 の 向 上 、 こ れ ら を 通 じ た 顧 客 と の 間 の 利 益 相 反 や 情 報 の 非 対 称 性2 0
の 排 除 等 を 促 し て い く と い う 。
顧 客 と 販 売 金 融 機 関 と の 利 益 相 反 を 排 す る た め に 、 顧 客 の リ テ ラ シ ー 向 上 と
と も に 金 融 商 品 取 引 業 者 へ フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー を 徹 底 さ せ る 必
要 が あ る 。
第 4 節 日本の投資信託のパフォーマンスの現状2 5
第 3 章 3 節 で 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 に 利 益 相 反 が 生 じ 、 フ ィ デ ュ ー シ ャ
2 4
他 者 の 信 任 に 応 え る べ く 一 定 の 任 務 を 遂 行 す る も の が 追 う 幅 広 い 様 々 な 役
割 ・ 責 任 の 総 称 。
A ↑韓国 =米国
A- ↑オランダ ↑台湾
B+ ↑英国
B ↑スウェーデン
B- ↑オーストラリア =デンマーク *フィンランド =ノルウェー =スイス
C+ =カナダ ↓ドイツ ↑インド ↑ニュージーランド ↓タイ
C ↓ベルギー ↓フランス ↑香港 ↓シンガポール ↑南アフリカ ↓スペイン
C- ↓イタリア ↓日本
D+ ↓中国
D
D-
F
注)前回調査より ↑上昇 ↓低下 =変わらず *新規調査対象
28
リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー の 徹 底 が 重 要 で あ り 、 な ぜ そ の よ う な 利 益 相 反 が 起 こ る の
か に つ い て 販 売 会 社 の 手 数 料 偏 重 の 料 金 体 系 が 原 因 で あ る こ と を 述 べ た 。 こ の
よ う な 手 数 料 偏 重 、 さ ら に 高 額 な 信 託 報 酬 の 料 金 体 系 の 背 後 に は 日 本 の 投 信 が
低 パ フ ォ ー マ ン ス で あ る と い う 問 題 が 存 在 す る 。
〈 図 表 3 - 1 3 〉 は 日 米 で 販 売 さ れ て い る 規 模 の 大 き い 投 信 2 5
の 概 括 的 な 比 較5
で あ る 。 1 0 年 と い う 長 期 的 な 視 点 に 立 っ た 場 合 、 米 国 は 収 益 率 が プ ラ ス で あ
る の に 対 し 、 日 本 は マ イ ナ ス に な っ て い る 。
〈 図 表 3 - 1 3 〉 規 模 の 大 き い 投 資 信 託 の 日 米 比 較
1 0
出 所 : 金 融 庁 「 平 成 2 7 年 度 金 融 レ ポ ー ト 」 [ 2 0 1 6 ] P 6 0 を 参 考 に 筆 者 作 成
1 5
日 本 の パ フ ォ ー マ ン ス の 低 さ は そ の 運 用 方 法 に 起 因 す る 。 日 本 で は 第 3 章 3
節 の 〈 図 表 3 - 1 0 〉 で も 示 し た と お り 、 規 模 の 大 き な 投 信 は ア ク テ ィ ブ 運 用 商
品 が 多 く 、 と り わ け 、 投 資 対 象 を 特 定 の 種 類 の 資 産 に 限 定 し た テ ー マ 型 の 商 品
が 多 い 。 ア ク テ ィ ブ 運 用 は ベ ン チ マ ー ク と な る 市 場 イ ン デ ッ ク ス を 上 回 る 運 用
成 績 を あ げ る こ と を 目 標 と す る 運 用 方 法 で あ る 。 し か し 、 〈 図 表 3 - 1 4 〉 に 示2 0
す よ う に 、 実 際 の パ フ ォ ー マ ン ス を 長 期 で 見 る と 、 過 半 数 の フ ァ ン ド は ベ ン チ
マ ー ク を 下 回 る 結 果 に な る こ と が 多 い 。 ま た 、 テ ー マ 型 の 投 信 は そ の 前 提 と な
る 経 済 環 境 や 市 場 の 関 心 が 変 化 し て し ま え ば 自 ず と 人 気 が な く な る た め 、 ロ ン
グ セ ラ ー 商 品 と し て 定 着 し に く い 。 つ ま り テ ー マ 型 の 商 品 は 資 産 形 成 の た め の
長 期 投 資 の 手 段 に は な り に く い 。 〈 図 表 3 - 1 5 〉 は 日 米 の 投 信 の 上 位 1 0 銘 柄2 5
を 時 系 列 で 比 較 し た も の で あ る 。 5 年 前 お よ び 1 0 年 前 に 上 位 に 入 っ て い た 銘
柄 は そ れ ぞ れ 色 付 き で 示 し て い る 。 米 国 は 1 0 年 前 と 同 じ フ ァ ン ド が 6 本 存 在
す る の に 対 し 、 日 本 で は 2 本 に 過 ぎ な い 。
2 5
純 資 産 額 上 位 5 銘 柄 。 2 0 1 6 年 3 月 末 基 準 。
販売手数料 信託報酬(年率) 収益率(年率)
過去10年平均
▲0.11%
5.20%
平均(税抜き)
3.20% 1.53%
0.59% 0.28%
国
規模(純資産)の
平均(兆円)
設定以来期間平均
日本
米国
1.1
22.6
13年
31年
29
米 国 に お け る 規 模 の 大 き い 投 信 は 、 米 国 株 式 、 米 国 以 外 の 株 式 、 米 国 債 な ど
を 投 資 対 象 と し て 、 イ ン デ ッ ク ス 運 用 を 行 う 一 般 的 な 商 品 が 多 く 、 信 託 報 酬 等
の 手 数 料 も 高 い 水 準 に な り に く い 。 こ う し た 商 品 は ロ ン グ セ ラ ー と し て 残 高 が
大 き く 積 み あ が っ て お り 、 個 人 の 資 産 形 成 の 中 核 的 な 商 品 と な っ て い る こ と が
う か が え る 。5
〈 図 表 3 - 1 4 〉 東 証 株 価 指 数 を 上 回 っ た ア ク テ ィ ブ フ ァ ン ド の 割 合
1 0
出 所 : 日 経 デ ュ ア ル 2 0 1 4 年 5 月 2 2 日 を 参 考 に 筆 者 作 成1 5
〈 図 表 3 - 1 5 〉 規 模 の 大 き い 投 資 信 託 の 日 米 比 較
2 0
2 5
出 所 : 金 融 庁 「 平 成 2 7 年 度 金 融 レ ポ ー ト 」 [ 2 0 1 6 ] P 6 1 を 参 考 に 筆 者 作 成
35
68
36 45
21
68
48 46
35
58
65
32
64 55
79
32
52 54
65
42
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
アクティブファンド インデックスファンド
順位 現在(16年3月末) 5年前(11年3月末) 10年前(06年3月末)
1 米国リート① 先進国高格付債券 先進国高格付債券
2 海外リート② 海外低格付債券 海外債券①
3 米国リート② 海外高格付債券① 米国債券
4 海外株式 海外高格付債券② 世界資産複合①
5 米国低格付債券 海外株式 海外債券②
6 先進国高格付債券 新興国債券① 海外高格付債券③
7 米国リート③ 米国リート② 日本株式
8 米国リート④ 新興国債券② 海外株式
9 海外リート② 海外債券① 世界資産複合②
10 新興国株式 世界資産複合① 世界資産複合③
順位 現在(16年3月末) 5年前(11年3月末) 10年前(06年3月末)
1 米国株式インデックス① 米国債券 米国株式①
2 米国株式インデックス② 米国株式① 米国株式インデックス③
3 世界株式(除く米国)インデックス 米国株式インデックス① 米国債券
4 米国株式インデックス③ 世界株式(除く米国) 米国株式③
5 米国株式① 米国株式インデックス③ 世界株式(除く米国)
6 米国債券インデックス① 米国株式インデックス② 米国株式④
7 世界株式(除く米国) 世界株式② 米国株式・債券複合
8 米国株式② 世界株式① 米国株式②
9 世界株式① 米国株式② 米国株式インデックス①
10 米国伊債券インデックス② 米国債券インデックス① 世界株式①
日本
米国
30
第4章 提案
第 3 章 で は 投 信 の 課 題 を 述 べ た 。 本 章 1 節 か ら 3 節 で は そ の 課 題 を 受 け 我 々
の 提 案 を 述 べ る 。 ま た 、 第 4 節 で は 望 ま し い 投 信 の あ り 方 を 示 し 、 提 案 が 望 ま
し い 投 信 の あ り 方 に 向 け て ど の よ う に 機 能 す る か を 述 べ る 。
第 1 節 職場積立 NISA 奨励金制度導入5
職 場 積 立 N I S A と は 「 投 資 信 託 を 、 給 与 ・ 賞 与 等 か ら の 天 引 き に よ り 、 定
時 ・ 定 額 で N I S A 口 座 を 利 用 し て 投 資 信 託 等 に 投 資 す る も の 」 2 6
で あ る 。 こ の
制 度 を 導 入 し て い る 企 業 は 平 成 2 8 年 6 月 末 時 点 で 2 , 8 5 6 社 2 7
で あ る 。 職 場 積
立 N I S A を 導 入 し て い る 企 業 の 従 業 員 は 金 融 教 育 が 受 け る こ と が で き る 。 ま
た 、 投 資 が 少 額 か ら 可 能 で 、 投 資 初 心 者 に 対 し て ハ ー ド ル の 低 い 仕 組 み に な っ1 0
て い る 。 そ こ で 、 投 資 で の 資 産 形 成 を 促 進 す る ア プ ロ ー チ 方 法 の 1 つ と し て 職
場 積 立 N I S A の さ ら な る 導 入 の 推 進 が 効 果 的 で あ る と 考 え た 。
【 職 場 積 立 N I S A の 必 要 性 】
主 に 老 後 資 金 の 形 成 に 用 い ら れ る 企 業 型 D C は 6 0 歳 ま で 引 き 出 せ な い こ と1 5
が デ メ リ ッ ト と し て 挙 げ ら れ る 。 一 方 、 職 場 積 立 N I S A は 自 由 に 売 却 ・ 換 金
す る こ と が 可 能 で 、 か つ 運 用 時 に 非 課 税 の メ リ ッ ト を 享 受 で き る 。 つ ま り 、 住
宅 資 金 な ど 途 中 で 使 う 可 能 性 が 高 い 資 金 は 職 場 積 立 N I S A で 、 老 後 資 金 は D C
で 運 用 す る と い っ た 使 い 分 け が 可 能 に な る 。 福 利 厚 生 の 一 環 と し て 効 率 的 な 資
産 形 成 が 可 能 と な り 、 後 述 す る が 金 融 機 関 か ら 投 資 ア ド バ イ ス や 投 資 セ ミ ナ ー2 0
な ど の 教 育 を う け ら れ る こ と か ら 、 第 3 章 2 節 で 課 題 と し て 述 べ た 従 業 員 の 金
融 リ テ ラ シ ー の 向 上 も 見 込 め る メ リ ッ ト の 多 い 制 度 に な っ て い る 。
こ の 制 度 を 推 進 す る 根 拠 と し て 単 な る メ リ ッ ト の 多 さ だ け で な く 、 実 際 に 従
業 員 が 企 業 に 対 し て 財 産 形 成 の 分 野 で 福 利 厚 生 制 度 の 更 な る 拡 充 を 求 め て い る
2 6
岡 三 に い が た 証 券 H P よ り 引 用 。
2 7
N I S A 推 進 ・ 連 絡 協 議 会 平 成 2 8 年 9 月 「 職 場 積 立 N I S A の 導 入 状 況 等
に つ い て 」 よ り
31
こ と が 挙 げ ら れ る 。 〈 図 表 4 - 1 〉 に 示 す よ う に 、 財 産 形 成 の 分 野 で 、 従 業 員 は
2 4 . 3 % が 今 後 重 点 を 置 い て も ら い た い と 回 答 し て い る の に 対 し 、 企 業 は そ れ
ほ ど こ の 分 野 を 重 視 し て い な い 。
職 場 積 立 N I S A は ま だ ま だ 導 入 率 は 低 い が 、 従 業 員 ・ 金 融 機 関 ・ 企 業 の 3 者
に メ リ ッ ト が あ る シ ス テ ム で あ り 、 利 用 を 促 進 す る こ と に よ っ て N I S A 自 体 の5
知 名 度 の 向 上 が 可 能 と な る 。 我 々 は 、 職 場 積 立 N I S A が 個 人 の 中 で 「 投 資 」 と
「 資 産 形 成 」 を 結 び つ け る 有 効 な 手 段 と な っ て く れ る と 期 待 す る 。
〈 図 表 4 - 1 〉 今 後 、 重 点 を 置 く 福 利 厚 生 制 度 の 分 野 ( 企 業 調 査 )
今 後 、 重 点 を 置 い て も ら い た い 福 利 厚 生 制 度 の 分 野 ( 従 業 員 調 査 )1 0
1 5
出 所 : 三 菱 U F J 国 際 投 信 「 職 場 積 立 N I S A 拡 大 の 可 能 性 は 高 い ~ 職 場 積 立 N I S A2 0
は 、 9 兆 円 の D C 、 1 6 兆 円 の 財 形 、 5 兆 円 の 持 株 を 補 完 出 来 る ~ 」 [ 2 0 1 6 ] P 5 よ り
筆 者 作 成
【 職 場 積 立 N I S A の メ リ ッ ト 】
マ イ ナ ス 金 利 下 で 魅 力 が 低 下 し て い る 預 貯 金 に 対 し て 、 N I S A は 少 額 か ら 投2 5
資 が 可 能 な 上 に 投 資 成 果 に 対 す る 税 制 優 遇 も あ る 。
ま ず 従 業 員 の メ リ ッ ト か ら 述 べ る 。 職 場 積 立 N I S A で あ れ ば 口 座 開 設 や 商 品
説 明 が 職 場 で す む の で 手 間 が 省 け る 。 N I S A 取 り 扱 い 業 者 に 対 し て 利 用 者 へ の
52.3
34.1
24.7
32.5
18.2
13.2
17.3 15.6 11.8 12.2
1.7
43.1
19.7 18.2
23.3 22.8 15.9
36.4 39.8
24.3
9
10.4
0
10
20
30
40
50
60
(
%
)
N=1504
企業が、今後、重点を置く福利厚生制度の分野
従業員が、今後、重点を置いてもらいたい福利厚生制度の分野
32
投 資 教 育 義 務 が 定 め ら れ て お り 2 8
、 利 用 者 は 投 資 教 育 セ ミ ナ ー と い っ た サ ー ビ
ス を 受 け ら れ 投 資 経 験 が 浅 く て も 投 資 を 始 め や す い 。 ま た 、 給 与 天 引 き 方 式 が
あ る こ と か ら 、 後 者 は 面 倒 な 入 金 や 発 注 の 手 間 が か か ら な い 。 さ ら に 投 資 初 心
者 に と っ て は 、 働 い て い る 企 業 が 金 融 機 関 や 投 信 を 選 択 し て く れ る 安 心 感 、 容
易 さ が あ る こ と か ら 投 資 を 身 近 に 感 じ る き っ か け と し て 有 効 で あ る と 考 え る 。5
次 に 、 金 融 機 関 に と っ て の メ リ ッ ト を 述 べ る 。 仕 事 な ど で 金 融 機 関 に な か な
か 足 を 運 べ な い 現 役 世 代 に 対 し て 、 セ ミ ナ ー を 通 し て 接 点 を 持 て る 。 職 場 積 立
N I S A を 通 し て 少 額 の 投 資 で あ っ て も 若 い 頃 か ら あ る 銀 行 で 資 産 運 用 を 経 験 す
る こ と で 、 定 年 退 職 後 も そ の ま ま 関 係 を 構 築 で き る 可 能 性 が 高 い 。 ま た 職 場 積
立 N I S A は D C と は 違 い 、 外 務 員 登 録 を し て い る 担 当 者 か ら の 投 資 ア ド バ イ1 0
ス の 提 供 が 可 能 で あ る 。 さ ら に 、 職 場 積 立 N I S A は 個 人 単 位 の 働 き か け で 顧 客
を 獲 得 し て き た 従 来 の N I S A と は 違 い 、 企 業 単 位 で 働 き か け る た め 、 効 率 的 な
営 業 形 態 と 言 え る 。
最 後 に 、 企 業 に と っ て の メ リ ッ ト を 述 べ る 。 企 業 は 職 場 積 立 N I S A を 導 入
す る こ と で 、 福 利 厚 生 の 充 実 に 積 極 的 と 捉 え ら れ る 。 従 業 員 の 定 着 率 が 高 ま る1 5
と と も に と も に 優 秀 な 人 材 が 確 保 で き 、 ま た 社 会 的 評 価 の 向 上 に も 繋 が る 。
【 職 場 積 立 N I S A を よ り 普 及 さ せ る た め に 】
職 場 積 立 N I S A を 利 用 し て 投 信 を 積 み 立 て る 従 業 員 に 一 律 、 勤 め 先 の 企 業 が
月 数 千 円 の 奨 励 金 を 支 払 う 制 度 を 推 し 進 め る 。 実 際 の 資 金 の 流 れ と し て 企 業 が2 0
支 払 っ た 奨 励 金 を 一 旦 、 従 業 員 の 預 金 口 座 に 入 金 し 、 次 に そ の 資 金 を 投 信 口 座
に 毎 月 振 り 替 え て 従 業 員 が 払 っ た 資 金 と 合 わ せ て 投 信 を 購 入 す る 。 職 場 積 立
N I S A の 奨 励 金 制 度 は 、 年 金 の 掛 け 金 を 企 業 と 従 業 員 が と も に 支 払 う と い う 点
で 、 企 業 型 D C の マ ッ チ ン グ 拠 出 制 度 と 同 様 で あ る 。 例 と し て は 〈 図 表 4 - 2 〉
に 示 す と お り 、 北 関 東 に 本 社 を 置 く あ る 中 堅 メ ー カ ー が 、 取 引 先 の 常 陽 銀 行 と2 5
こ の 制 度 を 実 施 し て い る 。
2 8
日 本 証 券 業 協 会 平 成 2 6 年 「 職 場 積 立 N I S A に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン 」 第 3
章 3 項 よ り
33
〈 図 表 4 - 2 〉 職 場 積 立 N I S A 奨 励 金 制 度 の 仕 組 み
5
出 所 : 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 2 0 1 6 年 5 月 2 7 日 付 の 記 事 を 参 考 に 筆 者 作 成1 0
厚 生 年 金 の 解 散 が 加 速 し 、 社 員 の 将 来 へ の 不 安 が 一 層 強 く な り 資 産 形 成 制 度
の 充 実 が さ ら に 求 め ら れ る 中 で 、 職 場 積 立 N I S A は 非 常 に 有 効 な 手 段 と い え
る 。 さ ら に こ の 制 度 を 普 及 さ せ る た め に 、 我 々 は 職 場 積 立 N I S A 奨 励 金 制 度 を
提 案 す る 。1 5
第2節 確定拠出年金の継続投資教育の拡充
投 信 の 利 用 を 促 進 す る た め に ま ず 貯 蓄 の 習 慣 を 身 に つ け る こ と が 必 要 で あ り 、
そ の た め に 日 々 の 家 計 管 理 を 習 慣 化 さ せ る こ と が 重 要 で あ る 。 企 業 型 D C は 、
知 識 の 習 得 と 体 験 の 機 会 を 同 時 に 提 供 で き 投 資 の 理 解 を 深 め る の に 有 効 な 手 段
で あ る と い え る 。2 0
2 0 1 6 年 5 月 に D C 法 が 改 正 さ れ 、 制 度 を 運 営 す る 事 業 主 の 責 務 と し て 、 加
入 者 等 に 対 す る 投 資 教 育 を 継 続 し て 実 施 す る こ と が 努 力 義 務 化 さ れ た 。 継 続 教
育 実 施 率 が 7 0 . 9 % 2 9
と な り 、 企 業 の 継 続 教 育 に 対 す る 取 組 姿 勢 は 今 後 も 積 極
化 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 我 々 は D C の さ ら な る 普 及 に 向 け て 投 資 教 育 の 徹 底
を 図 り 、 投 資 へ の 理 解 や 必 要 性 に 対 す る 認 識 を 深 め る こ と が 重 要 で あ る と 考 え2 5
た 。
2 9
確 定 拠 出 年 金 総 合 研 究 所 2 0 1 5 年 「 第 1 2 回 : 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の
制 度 運 営 管 理 に 関 す る 調 査 」 よ り
34
【 具 体 案 】
ま ず 、 投 資 無 関 心 層 を 投 資 関 心 層 に 引 き 上 げ る こ と が 重 要 で あ る 。 無 関 心 層
は 、 簡 単 な 理 解 度 セ ル フ チ ェ ッ ク や e ラ ー ニ ン グ な ど を 通 し て 特 定 す る 。 簡 単
な テ ス ト な ど で あ れ ば コ ス ト が 高 く な る 心 配 は な い 。
投 資 無 関 心 層 へ の 効 果 的 な ア プ ロ ー チ は 定 期 的 な 全 員 参 加 型 の 教 育 で あ る 。5
投 資 に 関 心 の な い 層 に と っ て は 、 印 刷 物 の 配 布 や メ ル マ ガ 、 D V D に よ る 情 報
提 供 と い っ た 教 育 方 法 は 適 さ な い 。 ま た 、 自 由 参 加 で は 無 関 心 層 の 参 加 を 期 待
で き な い こ と か ら 、 全 体 教 育 で 基 礎 的 な 内 容 を 繰 り 返 し て ま ず D C や 投 資 ・ 資
産 運 用 に 対 す る 理 解 を 深 め る こ と が 効 果 的 で あ る と 考 え る 。 彼 ら の 理 解 の 底 上
げ を 図 る こ と に よ っ て 、 セ ミ ナ ー を 中 心 と し た 既 存 の 継 続 教 育 の 参 加 率 の 向 上1 0
が 見 込 ま れ る 。
次 に 、 従 業 員 全 体 に 対 し て 最 も 効 果 的 な ア プ ロ ー チ は 、 「 ラ イ フ プ ラ ン を 絡
め た 教 育 」 の 実 施 で あ る 。 〈 図 表 4 - 3 〉 〈 図 表 4 - 4 〉 で 示 し た よ う に 、 ラ イ フ
プ ラ ン に 関 す る 興 味 は 8 0 % の 人 が 感 じ て い る が 、 実 際 に 考 え た こ と が あ る 人
は 全 体 の 2 3 . 8 % に と ど ま っ て お り 差 が 見 ら れ る 。 こ の 差 を 埋 め る た め に 、 企1 5
業 が こ れ ま で よ り 積 極 的 に ラ イ フ プ ラ ン を 考 え る 機 会 を 提 供 す る こ と が 必 要 で
あ る 。
〈 図 表 4 - 3 〉 ラ イ フ プ ラ ン へ の 関 心 ・ 興 味
2 0
2 5
出 所 : 「 財 産 形 成 支 援 制 度 及 び 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 理 解 ・ 活 用 の 現 状 に 関 す る D C 加
入 者 調 査 」 報 告 書 2 0 1 3 年 1 2 月 P 2 5 を 参 考 に 筆 者 作 成
3 0
35
〈 図 表 4 - 4 〉 ラ イ フ プ ラ ン へ の 取 り 組 み
5
出 所 : 「 財 産 形 成 支 援 制 度 及 び 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 理 解 ・ 活 用 の 現 状 に 関 す る D C 加1 0
入 者 調 査 」 報 告 書 2 0 1 3 年 1 2 月 P 2 5 を 参 考 に 筆 者 作 成
ま た 、 ラ イ フ プ ラ ン に 関 す る 情 報 提 供 の タ イ ミ ン グ を 調 査 し 年 代 別 に ま と め
た 所 〈 図 表 4 - 5 〉 、 自 分 の 年 齢 と 同 じ 時 期 の 情 報 提 供 を 希 望 し て い る 人 が 多 い
こ と が 確 認 で き た 。 さ ら に 、 2 0 ~ 3 0 代 の 若 年 層 で も 自 分 の 年 齢 と 同 じ 時 期 の1 5
情 報 提 供 を 適 切 な タ イ ミ ン グ と 考 え て い る 人 の 割 合 が 高 い こ と か ら 、 早 期 か ら
の 情 報 提 供 を 求 め て い る 人 が 多 い こ と も 確 認 で き る 。 企 業 は 若 年 層 に 対 し て も
積 極 的 に ラ イ フ プ ラ ン の 作 成 を 推 し 進 め る 必 要 が あ る 。
〈 図 表 4 - 5 〉 社 員 特 性 別 : ラ イ フ プ ラ ン に 関 す る 情 報 提 供 の タ イ ミ ン グ ( 単 位 : % )2 0
2 5
出 所 : 「 財 産 形 成 支 援 制 度 及 び 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 理 解 ・ 活 用 の 現 状 に 関 す る D C 加
入 者 調 査 」 報 告 書 2 0 1 3 年 1 2 月 P 3 1 を 参 考 に 筆 者 作 成
36
D C を さ ら に 普 及 さ せ る た め に は 、 制 度 自 体 の 理 解 を 深 め よ う と す る だ け で
は な く 、 企 業 が 従 業 員 に ラ イ フ プ ラ ン の 作 成 を 積 極 的 に 促 し 、 制 度 が 自 分 の 身
に ど う 関 わ っ て く る の か を 訴 え か け る の が 有 効 的 だ 。 セ ミ ナ ー は 従 業 員 全 体 に
投 資 の 理 解 を 深 め て も ら う の に 効 果 的 で コ ス ト も か か ら な い が 、 個 人 の 個 別 の
事 情 を 反 映 し た 情 報 提 供 に は 限 界 が あ る 。 そ こ で 具 体 的 に は 従 業 員 か ら の 希 望5
が 多 い 個 別 相 談 会 の 回 数 を 増 や し 、 さ ら に 夫 婦 ・ 家 族 同 伴 の 相 談 会 ま た は セ ミ
ナ ー を 拡 充 す る 。 個 人 が 容 易 に ラ イ フ プ ラ ン を 作 る こ と が で き る よ う に 、 適 切
な 情 報 提 供 や ア ド バ イ ス の サ ー ビ ス を 充 実 さ せ る べ き で あ る 。 こ の よ う な 場 を
設 け る こ と で 投 資 活 動 が 自 分 や 家 族 ま で に も 影 響 を 及 ぼ す も の で あ る こ と を 強
く 実 感 さ せ る こ と が 可 能 で あ る 。 個 別 相 談 会 に は コ ス ト が か か る と い う 意 見 も1 0
あ る が 、 投 資 の 必 要 性 を 訴 え る の に 最 も 有 効 な 手 段 で あ る こ と か ら 、 そ れ 以 降
従 業 員 が 積 極 的 に セ ミ ナ ー を 受 け 始 め た り ラ イ フ プ ラ ン を 作 成 し た り す る こ と
が 期 待 さ れ る 。 こ れ は 金 融 リ テ ラ シ ー 面 の 向 上 に も 直 接 的 に 繋 が る と い え る 。
第3節 ロボ・アドバイザーの活用
こ れ ま で 述 べ て き た よ う に 、 投 信 は 家 計 の 資 産 形 成 に 適 切 な 性 質 を 持 つ 金1 5
融 商 品 で あ る 。 ま た 、 N I S A や D C の 活 用 が 有 効 で あ る こ と も 既 に 述 べ た と お
り で あ る 。 し か し 一 方 で 、 第 3 章 2 節 で 述 べ た よ う な 家 計 に 金 融 リ テ ラ シ ー 不
足 が 課 題 と し て 存 在 し 、 適 切 な 金 融 教 育 を 実 施 す る こ と が 求 め ら れ て い る 。 こ
う し た 現 状 を 踏 ま え 、 家 計 の リ テ ラ シ ー を 補 い 、 最 適 な 資 産 形 成 を 望 ま し い も
の と す る た め に ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 活 用 を 提 案 す る 。2 0
ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー と は 金 融 工 学 や ポ ー ト フ ォ リ オ 理 論 の 専 門 家 の 戦 略 を 活
用 し 、 低 コ ス ト で 個 々 の 投 資 家 の 志 向 に 応 じ た 、 最 適 な 運 用 資 産 の 配 分 を 提 案
す る 自 動 投 資 助 言 サ ー ビ ス で あ る 。
ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 主 な メ リ ッ ト は 、 ( 1 ) ス マ ー ト フ ォ ン で い つ で も ア ク
セ ス が 可 能 で 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 使 い 慣 れ て い る 若 年 層 を 取 り 込 み や す い 、 ポ2 5
ー タ ビ リ テ ィ が あ る 点 。 ( 2 ) 数 あ る 資 産 の 中 か ら 、 資 産 毎 の リ タ ー ン 、 リ ス ク
に 基 づ い た 資 産 配 分 上 の ク ラ ス 、 選 択 肢 を 提 供 す る 資 産 配 分 能 力 が あ る 点 。
( 3 ) 人 の ア ド バ イ ス を 介 さ な い た め 、 比 較 的 コ ス ト が 高 い ア ク テ ィ ブ 運 用 で は
な く 、 E T F な ど の パ ッ シ ブ 運 用 を 通 じ て 低 コ ス ト 化 に 成 功 し て い る 点 。 以 上
37
の 3 点 で あ る 。
米 国 で は 、 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー を 手 が け る ベ ン チ ャ ー 企 業 が デ ジ タ ル ・ ウ ェ
ル ス ・ マ ネ ジ メ ン ト 3 0
を 提 供 し て い る 。 企 業 は 、 金 融 危 機 を 経 験 し 、 投 資 に 消
極 的 な ミ レ ニ ア ル 世 代 3 1
の 顧 客 化 に 成 功 し て い る 。
米 国 証 券 取 引 委 員 会 の 調 査 で は 2 0 1 4 年 7 月 末 時 点 で 米 国 に は 約 2 5 の ロ5
ボ ・ ア ド バ イ ザ ー が 存 在 す る 。 そ の ほ と ん ど で 非 富 裕 層 の 個 人 投 資 家 が 7 6 %
以 上 を 占 め て お り 、 所 得 が 多 く は な い 投 資 家 に も 容 易 に 利 用 さ れ て い る 。
日 本 国 内 に 目 を 向 け て み る と 、 〈 図 4 - 6 〉 に 示 す と お り 、 ラ ッ プ 口 座 の 件 数 、
金 額 と も に 増 加 し て い る 。 ラ ッ プ 口 座 と は 個 人 が 証 券 会 社 や 信 託 銀 行 と 投 資 一
任 契 約 を 結 ん で 、 資 金 の 運 用 か ら 管 理 ま で を 任 せ る こ と が で き る サ ー ビ ス で あ1 0
る 。 こ の こ と か ら 投 資 に ア ド バ イ ス を 求 め る 投 資 家 が 増 え て い る と 推 測 で き る 。
サ ー ビ ス が 始 ま っ た 当 初 は 、 最 低 投 資 金 額 1 億 円 以 上 と 富 裕 層 向 け の サ ー ビ ス
で あ っ た 。 2 0 1 4 年 6 月 2 8 日 付 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 の 記 事 に よ る と 、 大 和 証
券 が 最 低 投 資 金 額 を 3 0 0 万 円 ま で 引 き 下 げ る な ど 間 口 が 広 が っ て い る 。 し か
し 、 未 だ 若 年 層 が 気 軽 に 投 資 で き る 金 額 と は 言 い 難 い 。 さ ら に 年 齢 層 に 関 わ ら1 5
ず 運 用 商 品 に 困 っ た 経 験 が あ る 人 が 多 く 存 在 し 、 〈 図 4 - 7 〉 か ら 多 く の 人 が 具
体 的 な 投 資 ア ド バ イ ス を 求 め て い る こ と が 分 か る 。 こ の こ と か ら 投 資 ア ド バ イ
ス に 対 す る 需 要 は 高 い と 思 わ れ 、 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー へ の ニ ー ズ が う か が え る 。
2 0
2 5
3 0
個 人 投 資 家 に 対 し て ス マ ー ト フ ォ ン な ど を 通 じ て 資 産 運 用 を 提 供 す る こ
と 。
3 1
4 0 歳 以 下 の 米 国 若 年 層
38
〈 図 4 - 6 〉 ラ ッ プ 口 座 の 推 移
5
1 0
出 所 : 投 資 顧 問 業 協 会 「 統 計 資 料 ( 平 成 2 8 年 3 月 末 ) 」 [ 2 0 1 6 ] P 4 を 参 考 に 筆 者 作 成
〈 図 4 - 7 〉 D C の 商 品 の 選 択 や 組 み 合 わ せ を 決 め る 際 に 、 F P な ど か ら ア ド バ イ ス を 受 け た い と 思 う
か
1 5
2 0
出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 [ 2 0 1 5 ] P 3 5
を 参 考 に 筆 者 作 成
日 本 に お け る ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 第 一 号 で あ る 「 株 式 会 社 お 金 の デ ザ イ ン 」2 5
の T H E O を 例 に 挙 げ ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 有 用 性 を 述 べ る 。 T H E O の サ ー ビ
ス の 主 な メ リ ッ ト は ( 1 ) シ ン プ ル で 低 コ ス ト で あ る こ と に 加 え 、 顧 客 が 負 担 す
る 運 用 報 酬 は フ ィ ー 型 方 式 と な っ て お り 、 投 資 一 任 契 約 と な っ て い る こ と 。
( 2 ) プ ロ フ ァ イ リ ン グ に よ る 顧 客 一 人 ひ と り の カ ス タ マ イ ズ 運 用 が 可 能 で あ る
39
と い う こ と 。 ( 3 ) 京 都 大 学 大 学 院 加 藤 康 之 教 授 の 監 修 の も と 構 築 さ れ た 最 先 端
の ポ ー ト フ ォ リ オ モ デ ル が 提 供 さ れ 、 こ の モ デ ル を 活 用 し た 場 合 、 E T F に よ
る 低 コ ス ト の グ ロ ー バ ル 分 散 投 資 が 可 能 で あ る こ と の 3 点 で あ る 。
ま た 実 際 に 、 国 内 初 D C に ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー を 組 み こ ん だ 企 業 が あ る 。
S B I ホ ー ル デ ィ ン グ ス 株 式 会 社 グ ル ー プ で あ る モ ー ニ ン グ ス タ ー 株 式 会 社 は 、5
モ ー ニ ン グ ス タ ー ア セ ッ ト マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社 を 通 じ て 、 D C 加 入 者 向 け に
ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー 運 用 ツ ー ル に よ り 、 加 入 者 の 掛 け 金 な ら び に 積 立 金 の 最 適
な 資 産 配 分 と 具 体 的 な 商 品 選 定 の 助 言 サ ー ビ ス を 開 始 し た 。 D C 加 入 者 向 け に
提 供 す る の は 国 内 初 の 試 み で あ り 、 D C 加 入 者 向 け に カ ス タ マ イ ズ し て 提 供 す
る と し て い る 。 さ ら に 、 モ ー ニ ン グ ス タ ー 株 式 会 社 は こ れ ま で 、 商 品 の ラ イ ン1 0
ナ ッ プ 分 析 、 加 入 者 へ の 投 資 教 育 セ ミ ナ ー 、 商 品 分 析 評 価 情 報 の 提 供 な ど を
D C 向 け サ ー ビ ス と し て 続 け て お り 、 こ れ ら の 知 識 ・ 技 術 を 踏 ま え て 、 様 々 な
角 度 か ら 加 入 者 の 最 適 な 資 産 形 成 に 貢 献 で き る と し て い る 。 こ の 例 に 続 け て 、
大 手 金 融 機 関 も 次 々 と 参 入 を 表 明 し て い る 。 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 合 わ せ れ ば 来 春
ま で に 2 0 社 弱 が サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と は 、 業 界 の ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー に 対1 5
す る 期 待 が 高 ま っ て い る こ と を 表 し て い る 。
上 述 し て き た よ う に 、 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー を 活 用 す る こ と は 長 期 資 産 形 成 を
体 験 す る き っ か け と な り 、 結 果 と し て 長 期 分 散 の 効 果 を 経 験 す る こ と に よ る 金
融 リ テ ラ シ ー の 向 上 が 可 能 で あ る 。 こ の こ と か ら 第 3 章 2 節 に 述 べ た よ う な 家
計 の 金 融 リ テ ラ シ ー 不 足 を 補 完 す る こ と が で き る 。 さ ら に こ の サ ー ビ ス は 人 員2 0
を 介 せ ず 、 利 用 者 の ニ ー ズ に 沿 っ た 金 融 商 品 の 提 供 を 支 援 す る も の で あ る た め 、
第 3 章 3 節 に も 述 べ た 金 融 機 関 に 求 め ら れ て い る フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー
テ ィ ー の 取 り 組 み に も 貢 献 す る こ と が 期 待 さ れ る 。
I T 化 の 進 展 が 見 込 ま れ る こ と や 、 既 に 米 国 に お い て は ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー
や 資 産 管 理 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 3 2
ア プ リ 等 が ビ ジ ネ ス と し て 成 功 し て い る こ と も2 5
踏 ま え 、 日 本 に お い て も 資 産 運 用 関 連 の F i n t e c h ビ ジ ネ ス の 推 進 を 検 討 す る
べ き だ と 提 案 す る 。
3 2
コ ン ピ ュ ー タ ー に お い て 、 主 に オ ペ レ ー テ ィ ン グ シ ス テ ム や ハ ー ド ウ ェ ア
と い っ た 基 礎 部 分 を 指 す 。
40
第 4 節 望ましい投資信託のあり方
第 3 章 3 節 で は 日 本 の 投 信 の 問 題 点 と し て 顧 客 と 金 融 取 引 業 者 と の 利 益 相 反
を 指 摘 し た 。 利 益 相 反 は 、 高 額 な 手 数 料 、 家 計 の リ テ ラ シ ー 不 足 、 販 売 会 社 と
運 用 会 社 の 癒 着 が 原 因 で あ る 。 そ し て 4 節 で は パ フ ォ ー マ ン ス の 低 さ を 述 べ た 。
低 パ フ ォ ー マ ン ス の 背 景 に は 規 模 、 運 用 方 法 の 問 題 が あ る 。5
日 本 で は 長 期 的 に 利 益 を 出 す こ と が 難 し い ア ク テ ィ ブ フ ァ ン ド が 中 心 と な っ
て い る 。 フ ァ ン ド の パ フ ォ ー マ ン ス が 低 く て は 、 投 信 が 普 及 し に く く 、 販 売 手
数 料 は 高 く な る 。 高 額 な 販 売 手 数 料 は 、 販 売 会 社 に 回 転 売 買 へ の イ ン セ ン テ ィ
ブ を 働 か せ 、 小 型 フ ァ ン ド の 乱 立 へ つ な が る 。 小 型 フ ァ ン ド で は 規 模 の 経 済 が
働 き に く く 、 投 信 の も つ 大 規 模 集 団 投 資 の メ リ ッ ト を 生 か せ な い 。 そ の 結 果 、1 0
フ ァ ン ド の 低 パ フ ォ ー マ ン ス に つ な が る 。 ま た 、 販 売 会 社 と 運 用 会 社 が 独 立 し
て い な い こ と で 、 顧 客 に と っ て 最 適 な 商 品 を 提 案 し に く く な る 。 こ れ ら の こ と
が 、 投 信 を 望 ま し い あ り 方 か ら 遠 ざ け て い る の で あ る 。
望 ま し い 投 信 の あ り 方 と は 、 金 融 商 品 取 引 業 者 に フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ
ー テ ィ ー が 浸 透 す る こ と 。 な お か つ 、 顧 客 が 投 信 に 関 心 を 持 ち 金 融 リ テ ラ シ ー1 5
を 高 め る こ と で 、 顧 客 本 位 の 商 品 設 計 や 販 売 が 行 わ れ る も の で あ る と 我 々 は 考
え る 。 そ の た め に は フ ァ ン ド の 規 模 を 大 き く す る た め に 似 た 性 質 の フ ァ ン ド を
統 合 し 、 長 期 的 に 運 用 成 果 を 上 げ る た め 、 運 用 方 法 を ア ク テ ィ ブ 運 用 中 心 か ら
パ ッ シ ブ 運 用 中 心 へ 転 換 す る こ と が 必 要 で あ る 。 さ ら に 、 運 用 会 社 か ら 独 立 し
た 販 売 を 徹 底 さ せ る こ と が 求 め ら れ る 。 長 期 的 に 利 益 を 上 げ ら れ る よ う に な り 、2 0
顧 客 に 最 適 な 商 品 を 提 案 で き る よ う に な れ ば 、 国 民 の 資 産 形 成 手 段 と し て 投 信
の 地 位 は 確 か な も の と な る 。
現 在 の 日 本 の 投 信 は 、 第 3 章 で も 述 べ た と お り 、 ア ク テ ィ ブ 運 用 で 毎 月 分 配
型 の フ ァ ン ド が 主 流 と な っ て い る 。 ア ク テ ィ ブ 運 用 は 一 時 的 に 利 益 を 出 す こ と
が で き て も 、 長 期 的 に 利 益 を 出 し 続 け る こ と は 難 し い 。 そ の た め 、 家 計 の 長 期2 5
資 産 形 成 の 核 と し て 活 用 す る こ と に は 適 さ ず 、 イ ン デ ッ ク ス フ ァ ン ド を 活 用 す
る こ と が 適 し て い る 。 家 計 に 金 融 リ テ ラ シ ー が 拡 充 す る と 、 資 産 形 成 の た め に
は 利 益 再 投 資 型 の イ ン デ ッ ク ス フ ァ ン ド が 長 期 保 有 に 有 効 で あ る と 理 解 さ れ る 。
そ れ に よ り 、 顧 客 の ニ ー ズ は 毎 月 分 配 型 の ア ク テ ィ ブ フ ァ ン ド か ら 利 益 再 投 資
日本の投資信託は家計の資産形成手段になりえるのか
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  • 1. 平成 28 年度 証券ゼミナール大会 第 6 テーマ C ブロック 日本の投資信託は 家計の資産形成手段になりえるのか 関西学院大学 岡村ゼミナール
  • 2. 1 はじめに .................................................................................... 2 第 1 章 投資の必要性 ................................................................. 3 第 1 節 資 産 形 成 の 必 要 性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 第 2 節 預 貯 金 に よ る 資 産 運 用 の 問 題 点 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 65 第 2 章 投資信託とは ................................................................. 8 第 1 節 投 資 信 託 の 特 徴 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 第 2 節 N I S A . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 0 第 3 節 確 定 拠 出 年 金 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 31 0 第 3 章 投資信託の現状と課題 .................................................. 17 第 1 節 日 本 人 の 投 資 信 託 保 有 の 現 状 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 7 第 2 節 家 計 の リ テ ラ シ ー 不 足 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 9 第 3 節 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 の 利 益 相 反 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 41 5 第 4 節 日 本 の 投 資 信 託 の パ フ ォ ー マ ン ス の 現 状 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 7 第4章 提案 ............................................................................ 30 第 1 節 職 場 積 立 N I S A 奨 励 金 制 度 導 入 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 0 第 2 節 確 定 拠 出 年 金 の 継 続 投 資 教 育 の 拡 充 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 32 0 第 3 節 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 活 用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 6 第 4 節 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 0 おわりに .................................................................................. 41 2 5 参考文献 .................................................................................. 43
  • 3. 2 はじめに 公 的 年 金 制 度 へ の 不 安 が 高 ま り 、 確 定 拠 出 年 金 制 度 が 新 体 制 と し て 普 及 す る 中 、 今 後 の 個 人 資 産 の 形 成 に は さ ら な る 自 助 努 力 が 必 要 と な っ て い る 。 そ こ で 投 資 信 託 が 個 人 の 資 産 形 成 手 段 に な り え る と 考 え た 。 な ぜ な ら 、 投 資 信 託 が 資 産 形 成 に 適 切 で 、 優 れ た 特 徴 を 備 え て い る か ら で あ る 。5 日 本 の 個 人 資 産 の う ち 約 5 2 % は 預 貯 金 で あ り 、 米 国 の 約 1 3 % と 比 べ て か な り 高 い 比 率 と な っ て い る 。 さ ら に 米 国 で は 約 1 2 % が 投 資 信 託 、 約 3 3 % が 株 式 出 資 金 と な っ て お り 、 投 資 信 託 の 比 率 が 約 5 % の 日 本 と は 大 き く 異 な っ て い る 。 そ し て 、 長 期 に 渡 る デ フ レ に 伴 い 預 金 金 利 が 低 下 し 、 預 貯 金 だ け で は 個 人 資 産 の 形 成 は 困 難 に な っ た 。 こ の よ う な 金 融 環 境 を 踏 ま え て 、 投 資 信 託 を 始 め と す1 0 る リ ス ク 性 資 産 へ の 投 資 が よ り 重 要 に な る と 考 え ら れ る 。 投 資 信 託 は 優 れ た 特 徴 を 持 つ に も 関 わ ら ず 、 真 に 役 立 つ 資 産 形 成 手 段 に な っ て い る と は 言 え な い 。 我 々 は 投 資 信 託 の 現 状 と 課 題 を 取 り 上 げ 、 考 察 し 、 提 案 に い た る ま で を 次 の よ う に 構 成 し た 。 第 1 章 で は 今 後 の 日 本 に お け る 資 産 形 成 の 必 要 性 に つ い て 検 討 す る 。 第 2 章 で は 投 資 信 託 の 優 れ た 特 徴 を 述 べ 、 投 資 信1 5 託 を 活 用 す る 上 で 有 効 で あ る 制 度 ( 確 定 拠 出 年 金 、 N I S A ) を 紹 介 す る 。 第 3 章 で は 日 本 で は 未 だ 十 分 に 根 付 い て い な い 投 資 信 託 に 関 す る 課 題 に つ い て 、 顧 客 の 保 有 状 況 、 投 資 リ テ ラ シ ー 不 足 と い う 観 点 と 、 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 の 利 益 相 反 、 運 用 会 社 の パ フ ォ ー マ ン ス に つ い て 分 析 、 検 討 す る 。 そ し て 第 4 章 で は 、 課 題 を 踏 ま え た 我 々 の 提 案 と 、 望 ま し い 投 資 信 託 の あ り 方 を 述 べ る 。2 0 2 5
  • 4. 3 第 1 章 投資の必要性 本 章 で は 投 資 信 託 の 話 題 の 前 提 と な る 資 産 形 成 の 必 要 性 、 と り わ け 投 資 の 必 要 性 に つ い て 検 討 す る 。 第 1 節 資産形成の必要性 人 生 に は 様 々 な ラ イ フ イ ベ ン ト が 存 在 し 、 そ の 度 に 資 金 が 必 要 と な る 。 特 に5 教 育 資 金 、 住 宅 資 金 、 老 後 資 金 は 人 生 の 三 大 資 金 と 呼 ば れ 、 大 き な 割 合 を 占 め る 。 そ の 中 で も 老 後 資 金 は 全 て の 人 が 避 け る こ と の で き な い 資 金 で あ る 。 老 後 資 金 の 必 要 額 と は い く ら だ ろ う か 。 世 帯 主 が 6 5 歳 以 上 の 高 齢 無 職 世 帯 で は 月 の 平 均 収 入 額 が 2 1 4 , 7 0 0 円 で あ る 。 し か し 支 出 額 は 2 7 5 , 9 0 6 円 で あ り 、 月 あ た り 6 1 , 2 0 6 円 の 赤 字 で あ る 。 6 0 歳 で 還 暦 を 迎 え 退 職 し 、 日 本 人 の お お よ そ1 0 の 平 均 寿 命 で あ る 8 4 歳 1 ま で 生 き る こ と を 仮 定 す る 。 世 帯 主 が 6 0 歳 か ら 6 4 歳 の 無 職 世 帯 で は 月 あ た り の 平 均 支 出 額 は 3 0 7 , 8 8 3 円 で あ る 。 つ ま り 、 退 職 か ら 年 金 受 給 開 始 ま で の 5 年 間 の 支 出 額 と 受 給 開 始 以 降 の 赤 字 分 の 約 3 2 4 3 万 円 2 の 資 金 を 捻 出 す る 必 要 が あ る 。 そ の 資 金 は 退 職 金 で 賄 う こ と と な る 。 退 職 金 と 一 口 に 言 っ て も そ の 額 は 〈 図 表 1 - 1 〉 に 示 す よ う な 勤 続 年 数 や 学 歴 、 ま た1 5 企 業 規 模 な ど に よ っ て ば ら つ き は 大 き い 。 一 例 と し て 大 学 卒 か つ 勤 続 3 5 年 以 上 の 場 合 、 平 均 2 , 1 5 6 万 円 を 受 け 取 る 。 こ の こ と か ら 、 退 職 ま で に 約 1 0 8 7 万 円 を 用 意 す る 必 要 が あ る と い え る 。 2 0 1 厚 生 労 働 省 「 平 成 2 7 年 簡 易 生 命 表 」 か ら 、 男 女 の 平 均 寿 命 が そ れ ぞ れ 8 0 . 7 9 歳 と 8 7 . 0 5 歳 で あ り 、 男 女 合 わ せ た 平 均 値 8 3 . 9 2 歳 を 算 出 し 、 お お ま か に 8 4 歳 と し た 。 2 6 0 歳 か ら 8 4 歳 ま で の 必 要 総 額 を 算 出 し 千 の 位 を 四 捨 五 入 し た 。
  • 5. 4 〈 図 表 1 - 1 〉 学 歴 別 退 職 者 1 人 平 均 退 職 給 付 額 ( 勤 続 2 0 年 以 上 か つ 4 5 歳 以 上 の 定 年 退 職 者 ) 5 出 所 : 厚 生 労 働 省 「 平 成 2 5 年 就 労 条 件 総 合 調 査 結 果 の 概 況 」 ( 第 2 9 表 ) を 参 考 に 筆 者 作 成 1 0 高 齢 無 職 世 帯 の 収 入 を 前 述 し た が 、 こ の う ち 公 的 年 金 給 付 に よ る 収 入 は 1 8 2 , 7 5 3 円 で 、 平 均 収 入 の う ち の ほ と ん ど が 公 的 年 金 に よ っ て 賄 わ れ て い る 。 〈 図 表 1 - 2 〉 に 示 す と お り 、 日 本 の 人 口 に 占 め る 6 5 歳 以 上 の 割 合 は 増 加 傾 向 に あ り 、 今 後 も 増 加 す る と 推 測 さ れ る 。 一 方 で 、 総 人 口 は 減 少 す る と 推 測 さ れ て お り 〈 図 表 1 - 3 〉 の 国 際 比 較 で 、 2 0 1 5 年 、 2 0 5 0 年 ( 推 定 ) と も に 日 本 の 負1 5 担 が 最 も 大 き い こ と が 確 認 で き る 。 〈 図 表 1 - 2 〉 日 本 の 年 齢 別 人 口 と 6 5 歳 以 上 割 合 の 推 移 2 0 2 5 出 所 : 内 閣 府 「 平 成 2 8 年 版 高 齢 社 会 白 書 」 P 5 ( 図 1 - 1 - 4 ) を 参 考 に 筆 者 作 成 3 0 高校卒 (管理・事務・技術職) (現場職) 1,965 1,128 433 603 856 1,484 505 692 938 25~29年 30~34年 35年以上 1,941 826 1,083 1,856 2,156 20~24年 1人平均退職給付額 1人平均退職給付額 計 1,673 勤続年数・年 1人平均退職給付額 万円 万円 万円 大学卒 (管理・事務・技術系) 高校卒 1457 791 7708 4418 3393 3464 26.7 39.9 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 昭和25 30 35 40 45 50 55 60 平成2 7 12 17 22 27 32 37 42 47 52 57 62 67 72 0~14歳 15~64歳 65歳以上 高齢化率 実績値 推計値
  • 6. 5 〈 図 表 1 - 3 〉 高 齢 者 ( 6 5 歳 以 上 ) 1 人 を 何 人 の 生 産 年 齢 人 口 ( 1 5 〜5 4 歳 ) で 支 え る か 5 出 所 : 杉 田 浩 治 「 確 定 拠 出 年 金 ( D C ) を め ぐ る 世 界 の 動 き 」 [ 2 0 1 5 ] P 2 0 を 参 考 に 筆 者 作 成 ま た 、 厚 生 労 働 省 が 発 表 し た 平 成 2 6 年 財 政 検 証 結 果 レ ポ ー ト に は 公 的 年 金 の 所 得 代 替 率 の 推 移 が 示 さ れ て い る 。 こ の 結 果 に よ る と 、 2 0 1 4 年 に 6 2 . 7 % だ っ た 所 得 代 替 率 3 は 将 来 的 に 3 9 % ~ 5 1 % に な る と 推 測 さ れ て い る 。 ま た 、 マ ク1 0 ロ 経 済 ス ラ イ ド 4 に よ る 調 整 を 機 械 的 に 続 け た 場 合 、 国 民 年 金 は 2 0 5 5 年 度 に 積 立 金 が な く な り 、 完 全 な 賦 課 方 式 に 移 行 す る 。 そ の 後 、 保 険 料 と 国 庫 負 担 で 賄 う こ と の で き る 給 付 水 準 は 所 得 代 替 率 3 5 ~ 3 7 % 程 度 と さ れ て い る 。 少 子 高 齢 化 の 問 題 に 加 え 、 国 民 年 金 の 納 付 率 が 6 割 程 度 と い う 低 水 準 で の 推 移 、 G P I F の 運 用 の 不 安 定 さ な ど 、 公 的 年 金 へ の 不 安 が 高 ま っ て い る 。1 5 〈 図 表 1 - 4 〉 は 老 後 の 不 安 の 内 容 に 関 す る ア ン ケ ー ト の 結 果 で あ る 。 「 公 的 年 金 だ け で は 不 十 分 」 を 筆 頭 に 経 済 的 不 安 が 認 識 さ れ て い る 。 前 述 の と お り 、 退 職 ま で に 1 0 0 0 万 円 以 上 用 意 す る 必 要 が あ る こ と に 加 え 公 的 年 金 が 将 来 不 十 分 に な っ て い く こ と か ら 生 じ る 老 後 の 経 済 的 不 安 を 払 拭 す る た め 、 早 い 段 階 で 何 ら か の 形 で 資 産 形 成 を す る こ と が 必 要 で あ る 。2 0 2 5 3 公 的 年 金 の 給 付 水 準 を 表 す 数 値 。 モ デ ル 世 帯 ( 夫 婦 二 人 ) の 年 金 月 額 が 現 役 世 代 の 男 性 の 平 均 月 収 の 何 パ ー セ ン ト に な る か で 示 す 。 4 年 金 の 被 保 険 者 の 減 少 や 平 均 寿 命 の 延 び 、 社 会 の 経 済 状 況 を 考 慮 し て 年 金 の 給 付 額 を 変 動 さ せ る 制 度 の こ と 。
  • 7. 6 〈 図 表 1 - 4 〉 老 後 生 活 に 対 す る 不 安 の 内 容 5 出 所 : 生 命 保 険 文 化 セ ン タ ー 「 平 成 2 8 年 度 生 活 保 障 に 関 す る 調 査 《 速 報 版 》 」 P 3 4 を 参 考 に 筆1 0 者 作 成 第 2 節 預貯金による資産運用の問題点 〈 図 表 1 - 5 〉 は 証 券 の 種 類 別 保 有 状 況 、 〈 図 表 1 - 6 〉 は 個 人 が 保 有 す る 金 融 資 産 の 内 訳 を 表 し て い る 。 こ れ ら に よ る と 、 日 本 家 計 に お け る 最 も 一 般 的 な 金 融 資 産 は 預 貯 金 で あ る こ と が う か が え る 。 預 貯 金 の 保 有 率 が 9 割 を 超 え て い1 5 る 一 方 で 株 式 な ど の 証 券 へ の 投 資 に よ る 保 有 が 極 端 に 少 な い 。 証 券 投 資 の 経 験 者 は 2 1 % に 過 ぎ な い と い う 現 状 に な っ て い る 。 家 計 が 投 資 に よ っ て で は な く 預 貯 金 に よ っ て 保 有 す る 現 状 に 問 題 は あ る の だ ろ う か 。 〈 図 表 1 - 5 〉 証 券 の 種 類 別 保 有 状 況2 0 2 5 出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 調 査 部 「 証 券 投 資 に 関 す る 全 国 調 査 平 成 2 7 年 度 調 査 報 告 書 ( 個 人 調 査 ) 」 P 1 2 よ り 筆 者 作 成 株式 投資信託 公社債 約90万人8.70% 4.40% 約1,324万人 86.50% 3.60% 5.0% 91.30% 約375万人 推計保有者数 (20歳以上)現在持っている 以前持っていたが 現在は持っていない これまでに 持ったことがない 12.7% 8.0% 79.0% 保有比率
  • 8. 7 〈 図 表 1 - 6 〉 個 人 が 保 有 す る 金 融 資 産 ( 複 数 回 答 ) 5 出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 調 査 部 「 証 券 投 資 に 関 す る 全 国 調 査 平 成 2 7 年 度 調 査 報 告 書 ( 個 人 調1 0 査 ) 」 P 1 9 よ り 筆 者 作 成 か つ て 、 日 本 の 預 金 金 利 は 普 通 預 金 で は 2 % 、 定 期 預 金 で は 6 % を 超 え て い た 。 し か し 、 長 期 の デ フ レ の 影 響 で 預 金 金 利 が 低 下 し た こ と に 加 え 、 マ イ ナ ス 金 利 の 影 響 も あ り 、 現 在 も そ の 水 準 は 低 い も の と な っ て い る 。 日 本 銀 行 金 融 機1 5 構 局 が 2 0 1 6 年 9 月 1 4 日 に 発 表 し た 「 預 金 種 類 別 店 頭 表 示 金 利 の 平 均 年 利 率 等 に つ い て 」 に よ れ ば 普 通 預 金 の 平 均 年 利 率 は 0 . 0 0 2 % 、 最 も 金 利 が 高 く な る 1 千 万 円 以 上 か つ 預 け 入 れ 期 間 1 0 年 の 定 期 預 金 で さ え 0 . 0 3 3 % と な っ て い る 。 前 節 で 退 職 ま で に 約 1 0 8 7 万 円 用 意 す る 必 要 が あ る と 述 べ た 。 預 金 金 利 が 0 . 0 3 3 % と す る と 、 大 学 卒 業 の 2 2 歳 か ら 退 職 す る 6 0 歳 ま で の 4 8 年 間 で 簡 略2 0 化 し て 1 0 0 0 万 円 の 貯 蓄 が 必 要 で あ る と 仮 定 す る 。 そ の た め に は 、 毎 年 2 1 万 円 積 み 立 て 続 け る 必 要 が あ る 。 仮 に 2 0 0 6 年 か ら 2 0 1 5 年 ま で J P モ ル ガ ン ・ ア セ ッ ト ・ マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社 の バ ラ ン ス 型 フ ァ ン ド に 投 資 し た と す る と 、 年 平 均 リ タ ー ン は 8 . 5 1 % で あ る 。 こ の 利 率 で 4 8 年 間 運 用 で き た と す る と 、 毎 年 2 万 円 の 積 み 立 て で 1 0 0 0 万 円 の 貯 蓄 を 作 る こ と が で き る 。 貯 蓄 の 1 0 分 の2 5 1 以 下 で 同 額 の 資 金 を 作 る こ と が で き る 可 能 性 が あ る 。 こ れ ま で 述 べ て き た こ と は 老 後 資 金 の 備 え に 限 っ た こ と で あ る が 、 必 要 資 金 は ラ イ フ イ ベ ン ト ご と に 発 生 す る 。 必 要 資 金 を 用 意 す る 際 、 各 個 人 は 将 来 の た め に 自 身 の リ ス ク 許 容 度 と リ ス ク 選 好 度 に 照 ら し て ポ ー ト フ ォ リ オ を 組 む こ と
  • 9. 8 と な る 。 こ こ で 重 要 と な る の が リ ス ク 許 容 度 で あ る 。 な ぜ な ら 、 家 庭 や 個 人 が ど れ ほ ど の リ ス ク 資 産 を 持 つ こ と が で き る の か は 、 リ ス ク 許 容 度 に よ る か ら で あ る 。 リ ス ク 許 容 度 は 年 齢 や 収 入 に 依 存 す る 。 一 般 的 に 若 年 層 で は リ ス ク 資 産 で 損 が 生 じ た と し て も 、 労 働 に よ る 収 入 で 補 う こ と が で き る 。 し か し 退 職 者 に は 労 働 に よ る 収 入 が な い た め 、 補 う こ と が で き る 損 失 の 額 が 相 対 的 に 小 さ く な5 る 。 こ の よ う に 、 年 齢 に 限 れ ば 高 齢 者 は 若 年 層 に 比 べ リ ス ク 許 容 度 が 低 く な り 、 資 産 の 選 択 余 地 が 狭 ま る 。 ま た 投 資 に よ る 資 産 形 成 に は イ ン フ レ に 強 い と い う メ リ ッ ト が あ る 。 預 貯 金 の 場 合 に は イ ン フ レ 時 に 実 質 的 価 値 が 減 少 す る リ ス ク が あ る 。 よ り 効 率 的 に 資 産 形 成 を す る た め に 投 資 が 重 要 で あ る 。 特 に 、 リ ス ク 許 容 度 が 高 く 、 ラ イ フ イ ベ ン ト を 控 え た 若 年 層 に こ そ 投 資 に よ る 資 産 運 用 が 必1 0 要 で あ る と 主 張 す る 。 第 2 章 投資信託とは 第 1 章 で 投 資 に よ る 資 産 形 成 の 必 要 性 を 述 べ た 。 本 章 で は 、 は じ め に 投 資 信 託 の 特 徴 に つ い て 述 べ 、 個 人 に よ る 直 接 投 資 で は な く 投 資 信 託 が 資 産 形 成 手 段 に 有 効 で あ る こ と を 述 べ る 。 次 に 資 産 形 成 を 行 う 上 で 、 投 資 信 託 を 有 効 活 用 で1 5 き る N I S A と 確 定 拠 出 年 金 に つ い て 述 べ る 。 第 1 節 投資信託の特徴 「 投 資 信 託 ( フ ァ ン ド ) 」 ( 以 下 、 投 信 と 略 す ) と は 、 「 投 資 家 か ら 集 め た お 金 を ひ と つ の 大 き な 資 金 と し て ま と め 、 運 用 の 専 門 家 が 株 式 や 債 券 な ど に 投 資 ・ 運 用 す る 商 品 で 、 そ の 運 用 成 果 が 投 資 家 そ れ ぞ れ の 投 資 額 に 応 じ て 分 配 さ2 0 れ る 仕 組 み の 金 融 商 品 」 5 で あ る 。 投 信 は 個 人 が 直 接 証 券 に 対 し て 行 う 投 資 に 比 べ 特 徴 的 な 点 が 2 つ あ る 。 ま ず 1 つ 目 に 、 専 門 家 に よ っ て 大 規 模 資 金 で 運 用 が な さ れ る 点 で あ る 。 個 人 投 資 家 が 直 接 証 券 に 投 資 を す る 際 、 時 間 面 、 金 銭 面 、 情 報 面 で 制 約 を 受 け る た め 投 資 対 象 は 限 ら れ て く る 。 〈 図 表 2 - 1 〉 は 2 0 0 4 年 か ら 2 0 1 5 年 ま で の 国 、2 5 5 投 資 信 託 協 会 H P よ り 引 用 。
  • 10. 9 地 域 別 株 式 の 年 平 均 リ タ ー ン を 表 し て お り 、 日 本 の 株 式 の 平 均 リ タ ー ン は 決 し て 高 く は な い こ と が 確 認 で き る 。 仮 に 中 国 株 の リ タ ー ン に 連 動 す る イ ン デ ッ ク ス フ ァ ン ド が 存 在 し 、 そ れ に 投 資 し た と す れ ば 1 2 年 間 で 年 平 均 1 9 . 2 % の リ タ ー ン を 得 る こ と が で き る 。 こ れ は 日 本 の 場 合 の 倍 以 上 の 値 で あ る 。 こ の よ う に 、 個 人 で は 投 資 が 難 し い 海 外 の 資 産 も 投 資 対 象 と す る こ と が で き る 。 さ ら に 、 大5 規 模 投 資 に よ る ポ ー ト フ ォ リ オ に よ っ て 効 率 的 に リ タ ー ン を 得 る こ と が 可 能 で あ る 。 〈 図 表 2 - 1 〉 国 、 地 域 別 株 式 年 平 均 リ タ ー ン ( 単 位 : % ) 1 0 1 5 出 所 : J P モ ル ガ ン ・ ア セ ッ ト ・ マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社 「 G u i d e t o t h e M a r k e t s 」 [ 2 0 1 6 ] P 5 0 を 参 考 に 筆 者 作 成 2 つ 目 に 、 様 々 な 対 象 に 少 額 で 分 散 投 資 で き る 点 で あ る 。 個 人 の 投 資 家 が 自 分 の 資 金 の み で 分 散 投 資 を す る と な る と 多 額 の 資 金 が 必 要 と な る 。 投 信 の よ う2 0 な 集 団 投 資 で は 広 く 集 め た 大 き な 資 金 を ま と め て 運 用 す る 。 上 記 し た 〈 図 表 2 - 1 〉 の 中 国 株 の 例 は 、 中 国 株 全 て の 年 平 均 リ タ ー ン で あ る 。 1 国 の 株 式 全 て に 投 資 を す る と な る と 莫 大 な 資 金 が 必 要 と な る が 、 集 団 投 資 と い う 手 段 を と る こ と で 1 国 に 限 ら ず 世 界 中 全 て の 株 式 に 投 資 を す る フ ァ ン ド を 作 る こ と が で き る 。 ま た 投 資 対 象 は 不 動 産 や 、 上 述 し た 世 界 の 株 式 や 債 券 な ど 様 々 で あ る 。 長2 5 期 的 に 様 々 な 資 産 へ 分 散 投 資 す る こ と に よ り 、 安 定 し た 収 益 を 得 ら れ る 傾 向 に あ る 。 実 際 、 平 成 5 年 か ら 平 成 2 5 年 ま で 定 期 預 金 を 行 っ た 場 合 は 年 平 均 0 . 0 8 % 、 国 内 株 ・ 債 券 に 半 分 ず つ 投 資 し た 場 合 は 年 平 均 1 . 3 % 、 国 内 ・ 先 進
  • 11. 10 国 ・ 新 興 国 の 株 ・ 債 券 に 6 分 の 1 ず つ 投 資 し た 場 合 は 年 平 均 4 . 4 % 6 よ り 投 資 対 象 を 分 散 さ せ た 場 合 に リ タ ー ン は 高 く な っ て い る 。 現 行 の 投 信 は 1 9 5 1 年 に 誕 生 し た 。 当 時 の 法 的 基 礎 と な っ た 「 証 券 投 資 信 託 法 」 に は 「 こ の 法 律 は 、 証 券 投 資 信 託 の 制 度 を 確 立 し 、 証 券 投 資 信 託 の 受 益 者 の 保 護 を 図 る こ と に よ り 、 一 般 投 資 者 に よ る 証 券 投 資 を 容 易 に す る こ と を 目 的5 と す る 。 」 と 記 さ れ て い る 。 当 時 の 日 本 は 大 戦 後 の 財 閥 解 体 お よ び 財 産 物 の 納 物 な ど に よ っ て 株 式 が 供 給 過 剰 の 状 態 に あ り 、 株 式 市 場 は 沈 滞 し て い た 。 そ こ で 株 式 市 場 の 需 給 改 善 と 一 般 大 衆 か ら の 産 業 資 金 調 達 を 容 易 に す る た め に 考 案 さ れ た も の が 投 信 で あ っ た 。 1 9 9 8 年 に 「 証 券 投 資 信 託 法 」 は 「 証 券 投 資 信 託 及 び 証 券 投 資 法 人 に 関 す る 法1 0 律 」 へ と 名 称 が 改 め ら れ 、 さ ら に 2 0 0 0 年 に 「 投 資 信 託 及 び 投 資 法 人 に 関 す る 法 律 」 へ 改 め ら れ た 。 そ し て 、 そ の 目 的 に 「 国 民 経 済 の 健 全 な 発 展 に 資 す る こ と 」 と い う 制 定 当 初 に は な か っ た 目 的 が 追 加 さ れ て い る 。 つ ま り 、 導 入 当 初 は 産 業 資 金 の 調 達 の た め と い う 政 策 的 要 請 に よ っ て 導 入 さ れ た 日 本 の 投 信 で あ っ た が 、 そ こ に 国 民 の た め に と い う 要 素 が 加 わ っ た の で あ る 。 投 信 は 導 入 以 来 、 上 述 し1 5 た 2 度 の 法 改 正 を は じ め 6 0 年 あ ま り の 歴 史 の 中 で 改 革 を 繰 り 返 し て き た 。 前 述 の よ う に 、 設 立 当 初 は 産 業 資 金 調 達 の た め の も の で あ っ た 。 そ し て 現 在 で は 前 述 の 2 つ の 特 徴 か ら 、 家 計 の 資 産 形 成 を 担 う こ と の で き る 金 融 商 品 と し て の 役 割 が 期 待 さ れ て い る 。 第 2 節 NISA2 0 「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」 を 加 速 さ せ る た め 、 英 国 の I S A 制 度 7 に 倣 い 創 設 さ れ た N I S A は 、 日 本 在 住 の 2 0 歳 以 上 が 対 象 と な る 「 少 額 投 資 非 課 税 制 度 」 で あ る 。 年 間 1 2 0 万 円 、 5 年 間 で 最 大 6 0 0 万 円 ま で が 非 課 税 と な る 。 そ の 対 象 は 上 場 株 式 、 公 募 株 式 投 資 信 託 、 E T F 、 R E I T 等 で あ る 。 通 常 の 口 座 と の 違 い と し て 、 N I S A は 非 課 税 で 運 用 で き る こ と が 挙 げ ら れ る 。 通 常 の 口 座 で は 、 投 資 で 得 た2 5 6 平 成 5 年 ~ 2 5 年 金 融 庁 試 算 よ り 7 N I S A 制 度 導 入 に あ た っ て 参 考 と さ れ た 個 人 貯 蓄 口 座 制 度 。 1 9 9 9 年 に 導 入 さ れ 、 個 人 の 資 産 形 成 促 進 策 と し て 低 所 得 層 に も 広 く 利 用 さ れ て い る 。
  • 12. 11 利 益 に 対 し て 2 0 . 3 1 5 % の 税 金 が か か る 。 こ の 違 い が 大 き な メ リ ッ ト で あ る 。 導 入 の 目 的 と し て は 家 計 の 資 産 形 成 の 支 援 で あ る 。 金 融 資 産 ゼ ロ 世 帯 が 年 々 急 増 し て お り 、 約 3 割 を 占 め て い る 8 。 N I S A 導 入 を き っ か け に 若 年 層 や 投 資 未 経 験 層 が 中 長 期 的 な 資 産 形 成 に 自 助 努 力 で 取 り 組 む こ と を 期 待 さ れ て い る 9 。 し か し 、 〈 図 表 2 - 2 〉 に 示 す と お り 、 実 際 に は 制 度 を 利 用 し て い る 人 の 約 5 割5 が 6 0 歳 代 以 上 の 高 齢 者 で あ る こ と が 現 状 で あ る 。 こ の よ う な 現 状 が あ る 中 、 N I S A は ラ イ フ プ ラ ン に 基 づ く 積 立 投 資 が 行 い や す く 、 資 産 形 成 世 代 に お い て 投 資 を 拡 大 さ せ る 良 い き っ か け と な り え る 。 そ の た め 、 N I S A を 資 産 形 成 世 代 で あ る 若 年 層 に 拡 大 さ せ る た め の 解 決 策 が 必 要 で あ る 。1 0 英 国 の 株 式 型 I S A に お け る 資 産 配 分 を 見 る と 、 約 7 割 が 投 信 で 、 株 式 は 2 割 に 満 た な い 数 字 に な っ て い る 。 英 国 資 産 運 用 協 会 ( I M A ) に よ る と 、 2 0 1 2 年 度 の I S A に お け る 投 信 で 上 位 と な っ て い る の は 、 ① ス ト ラ テ ジ ッ ク ・ ボ ン ド ( ポ ン ド 建 て 1 0 ) 、 ② バ ラ ン ス 型 ( 株 式 2 0 ~ 6 0 % ) 、 ③ 世 界 高 配 当 株 、 ④ 新 興 国 株 、 ⑤ ア ジ ア ・ パ シ フ ィ ッ ク 株 と な っ て い る 。 上 位 セ ク タ ー は 昨 年 度 も 上 位 と1 5 な っ て お り 、 投 資 家 が リ バ ラ ン ス せ ず に 保 有 し 続 け る こ と の で き る フ ァ ン ド が 好 ま れ て い る と 言 え る 。 こ の 事 実 に 加 え て 、 〈 図 表 2 - 3 〉 で 示 す よ う に I S A 内 で 保 有 さ れ て い る 投 信 の 保 有 期 間 は 投 信 全 体 ( I S A 以 外 で の 保 有 含 む ) よ り も 3 年 ほ ど 長 い 。 こ の こ と か ら 、 英 国 I S A に お い て 非 課 税 枠 内 で の フ ァ ン ド の 乗 り 換 え は 制 度 上 認 め ら れ て い る も の の 1 1 、 全 体 と し て は 短 期 の 回 転 売 買 は 行 わ2 0 れ て い な い と 言 え る 。 リ バ ラ ン ス の 必 要 の な い フ ァ ン ド が 好 ま れ て い る 事 実 と 併 せ て 、 英 国 I S A が 国 民 に よ る 長 期 の 資 産 形 成 の た め の 手 段 と し て 活 用 さ れ て い る 実 態 が う か が え る 。 8 金 融 広 報 中 央 委 員 会 平 成 2 7 年 「 家 計 の 金 融 行 動 に 関 す る 世 論 調 査 」 よ り 9 2 0 1 6 年 4 月 か ら 子 ど も や 孫 の 将 来 に 向 け た 資 産 運 用 の た め に ジ ュ ニ ア N I S A が 導 入 さ れ た 。 1 0 ス ト ラ テ ジ ッ ク ・ ポ ン ド ( ポ ン ド 建 て ) と は 、 少 な く と も 8 0 % 以 上 が ポ ン ド 建 て で 運 用 さ れ て お り 、 先 進 国 の 国 債 に ハ イ ・ イ ー ル ド 債 な ど 、 あ ら ゆ る 債 権 を 投 資 対 象 と し た も の で あ る 。 1 1 N I S A で は 非 課 税 枠 内 で の フ ァ ン ド の 乗 り 換 え は 認 め ら れ て い な い 。
  • 13. 12 N I S A が 範 と す る I S A で 長 期 の 資 産 形 成 手 段 と し て 投 信 が 選 択 さ れ て い る 背 景 を 見 る 限 り 、 N I S A は 投 信 普 及 率 の 低 い 若 年 層 に 長 期 の 資 産 形 成 手 段 と し て 投 信 を 保 有 し て も ら う た め の 有 効 な 手 段 で あ る と 考 え る 。 〈 図 表 2 - 2 〉 年 代 別 の 口 座 開 設 者 比 率5 1 0 出 所 : 金 融 庁 「 N I S A ・ ジ ュ ニ ア N I S A 口 座 の 開 設 ・ 利 用 状 況 調 ( 平 成 2 8 年 3 月 末 時1 5 点 ) 」 [ 2 0 1 6 ] よ り 筆 者 作 成 〈 図 表 2 - 3 〉 日 英 の 投 信 の 平 均 保 有 期 間 比 較 2 0 2 5 出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 「 英 国 の I S A の 実 施 状 況 等 に つ い て 」 [ 2 0 1 2 ] P 2 2 よ り 筆 者 作 成 20歳代 4.5% 30歳代 9.9% 40歳代 14.8% 50歳代 17.0% 60歳代 26.1% 70歳代 19.3% 80歳代 8.4%
  • 14. 13 第 3 節 確定拠出年金 確 定 拠 出 年 金 ( 以 下 、 D C と 略 す ) と は 、 公 的 年 金 に 上 乗 せ し て 給 付 を 受 け る 私 的 年 金 の 一 つ で あ る 。 掛 金 を 定 め て 事 業 主 や 加 入 者 が 拠 出 し 、 加 入 者 自 ら が 運 用 し 、 掛 金 と そ の 運 用 益 と の 合 計 額 を も と に 将 来 の 給 付 額 が 決 定 さ れ る と い う も の で 、 事 業 主 が 実 施 す る 「 企 業 型 D C 」 と 、 個 人 で 加 入 す る 「 個 人 型5 D C 」 が あ る 1 2 。 平 成 2 9 年 1 月 か ら 、 個 人 型 D C の 加 入 範 囲 が 拡 大 さ れ 1 3 、 さ ら に 利 用 者 数 の 拡 大 が 期 待 さ れ る 。 〈 図 表 2 - 4 〉 に 示 す よ う に 企 業 型 D C を 実 施 す る 事 業 者 数 は 増 加 し て お り 、 D C を 通 じ た 投 資 が 一 般 的 に な っ て い る と 言 え る 。 〈 図 表 2 - 4 〉 企 業 型 D C 実 施 事 業 者 数 の 推 移1 0 1 5 出 所 : 厚 生 労 働 省 H P ( 確 定 拠 出 年 金 、 規 約 者 等 の 推 移 ) を 参 考 に 筆 者 作 成2 0 米 国 で は 8 0 年 代 の 株 価 の 長 期 上 昇 時 に 、 株 価 の 影 響 を 受 け に く く 長 期 安 定 資 金 で あ る D C を 通 し て 、 投 信 の 利 用 が 拡 大 し た 。 実 際 に 〈 図 表 2 - 5 〉 を み て も 分 か る よ う に 、 9 0 年 代 前 半 か ら 2 0 1 3 年 に か け て 、 職 域 型 D C と I R A の 両 方 に 占 め る 投 信 の 割 合 は 大 き く 伸 び て い る 。 こ の よ う に 個 人 が 資 産 形 成 の 重 要2 5 1 2 厚 生 労 働 省 H P よ り 定 義 を 引 用 。 1 3 新 た に 企 業 年 金 加 入 者 ・ 公 務 員 等 共 済 加 入 者 ・ 私 学 共 済 加 入 者 ・ 第 3 号 被 保 険 者 ( 専 業 主 婦 等 ) が 加 え ら れ た 。
  • 15. 14 性 を 理 解 し 投 信 を 利 用 す る と い っ た 動 き は 、 日 本 よ り か な り 早 く か ら 取 り 組 ま れ て き た と 言 え る 。 米 国 は 世 界 最 大 の 投 信 大 国 で あ り 、 世 界 の 投 信 残 高 の う ち 5 2 % 1 4 を 占 め て い る 。 そ の 投 信 純 資 産 残 高 は 2 0 1 6 年 6 月 末 時 点 で 1 8 兆 円 を 突 破 し た 。 世 帯 普 及 率 は 2 0 1 4 年 時 点 で 4 3 % で あ り 、 3 5 歳 未 満 の 若 年 層 で も 3 4 % の 投 信 を 保 有 し て お り 年 代 に 関 係 な く 投 信 の 普 及 率 が 高 い こ と が 確 認 で5 き る 。 米 国 で は 7 4 年 に 個 人 型 年 金 に 相 当 す る 個 人 退 職 口 座 で あ る I R A が 発 足 し 、 8 1 年 に 企 業 年 金 で あ る 4 0 1 ( k ) プ ラ ン が 発 足 し た 。 日 本 と 米 国 の D C 制 度 を 比 較 し た 時 に は 様 々 な 違 い が あ る 。 ま ず 、 日 本 の 企 業 型 D C と 4 0 1 ( k ) プ ラ ン の 主 な 違 い と し て 、 米 国 は 4 0 1 ( k ) プ ラ ン へ の 加 入 に つ い て オ プ ト イ ン 方 式 か ら1 0 オ プ ト ア ウ ト 方 式 に 改 め た 1 5 点 、 従 業 員 拠 出 限 度 額 の 平 均 世 帯 年 収 に 対 す る 割 合 が 日 本 は 米 国 に 比 べ て 低 い 点 1 6 が 挙 げ ら れ る 。 特 に オ プ ト ア ウ ト 方 式 に 変 更 し た 点 は 、 4 0 1 ( k ) プ ラ ン の 普 及 に 大 き な 影 響 を 与 え た 。 次 に 、 日 本 の 個 人 型 D C と I R A の 主 な 違 い と し て 、 加 入 者 年 齢 の 上 限 が 米 国 に 比 べ て 低 い 点 1 7 が 挙 げ ら れ る 。 そ し て 日 本 の 個 人 型 D C と I R A 、 日 本 の 企 業 型 D C と 4 0 1 ( k ) プ ラ1 5 ン を 比 べ た と き に 共 通 す る 主 な 違 い と し て は 、 日 本 は 原 則 と し て 6 0 歳 ま で 引 き 出 せ な い が 米 国 は 5 9 . 5 歳 の 引 き 出 し が 可 能 年 齢 に 達 す る 前 で も 1 0 % の ペ ナ ル テ ィ を 支 払 う こ と で 引 き 出 せ る 点 が 挙 げ ら れ る 。 日 本 も 米 国 の D C を 参 考 に 、 こ れ か ら D C に 関 す る 法 律 を 整 備 し て い く こ と で 、 さ ら に 制 度 の 普 及 を 推 し 進 め て い く こ と が 期 待 さ れ る 。2 0 1 4 投 資 信 託 協 会 「 投 資 信 託 の 世 界 統 計 ( 2 0 1 6 年 第 2 四 半 期 ) 」 よ り 1 5 オ プ ト イ ン 方 式 と は 従 業 員 が 積 極 的 に 加 入 の 意 思 を 示 し た 場 合 に の み 加 入 さ せ る 方 式 の こ と で 、 オ プ ト ア ウ ト 方 式 と は 従 業 員 が 特 に 加 入 を 拒 否 し な け れ ば 自 動 的 に 加 入 さ せ る こ と が で き る 方 式 の こ と で あ る 。 1 6 2 0 1 0 年 時 点 で 4 0 1 ( k ) の 従 業 員 拠 出 限 度 額 の 平 均 年 収 比 を 計 算 ( 5 0 歳 以 上 の キ ャ ッ チ ア ッ プ 分 を 含 め な い 場 合 ) す る と 2 4 % 、 日 本 の 企 業 型 D C で 計 算 ( D B 型 の 年 金 を 実 施 し て い な い 場 合 ) す る と 9 . 9 % で あ る 。 杉 田 浩 治 2 0 1 2 年 5 月 「 米 国 の 確 定 拠 出 年 金 3 0 年 の 推 移 か ら 日 本 の D C ビ ジ ネ ス を 考 え る 」 よ り 1 7 I R A は 7 0 . 5 歳 、 日 本 の 個 人 型 D C は 6 0 歳 が 上 限 で あ る 。
  • 16. 15 〈 図 表 2 - 5 〉 確 定 拠 出 年 金 の う ち 投 信 で 運 用 さ れ て い る 割 合 5 出 所 : 杉 田 浩 治 「 米 国 投 信 4 分 の 3 世 紀 の 歴 史 か ら 何 を 学 ぶ か 」 2 0 1 5 年 1 月 P 1 3 よ り 筆 者 作 成1 0 ま ず 、 D C 制 度 の 代 表 的 な 特 徴 と し て 、 運 用 を 加 入 者 自 身 が 行 う 点 が 挙 げ ら れ る 。 つ ま り 、 投 資 す る 商 品 を 自 分 自 身 で 選 べ る と い う こ と で あ る 。 加 入 者 は 、 そ れ ぞ れ の リ ス ク 許 容 度 に 応 じ て 、 投 資 対 象 を リ ス ク 性 資 産 と 安 全 資 産 か ら 選 択 す る こ と が で き る 。1 5 D C の 最 大 の メ リ ッ ト は 、 掛 金 を 拠 出 す る 際 ・ 掛 金 を 運 用 す る 際 ・ 年 金 と 一 時 金 の 受 取 す る 際 の 3 点 全 て に お い て 税 制 優 遇 が 適 用 さ れ る こ と で あ る 。 税 制 優 遇 を 活 用 し た か ど う か は 、 資 産 形 成 に 大 き な 差 を も た ら す 。 例 え ば 毎 月 1 万 円 の 積 立 を 2 2 歳 か ら 6 0 歳 ま で 3 8 年 続 け た と 仮 定 し て 、 こ れ を 年 利 3 % で 増 や し て い く と 仮 定 す る と 、 D C を 活 用 し た 場 合 、 6 0 歳 時 点 で 8 4 9 万 円 の 資 産2 0 に 育 つ 。 も し 、 所 得 税 や 住 民 税 と し て 2 0 % が 引 か れ 、 運 用 益 に も 2 0 % 課 税 さ れ た と す れ ば 、 6 0 歳 時 点 で の 受 取 額 は 5 9 5 万 円 で あ る 1 8 。 同 じ 積 立 期 間 で も そ の 差 は 2 5 4 万 円 に の ぼ る 。 ま た 、 非 課 税 の メ リ ッ ト を 最 大 限 に 活 か す 為 に は 、 投 信 な ど の 自 身 の リ ス ク 許 容 度 の 中 で 期 待 リ タ ー ン の 高 い 商 品 を 活 用 す る の が 最 善 策 で あ る 。 そ の 理 由2 5 は 、 期 待 リ タ ー ン の 高 い 商 品 は 収 益 が 大 き く 、 ま た か か る 税 金 も 大 き い か ら で あ る 。 さ ら に 、 D C の 運 用 先 と し て 投 信 を 選 択 し た 場 合 、 金 融 機 関 の 窓 口 で 販 売 さ れ て い る も の と は 異 な り 原 則 と し て 運 用 益 に 対 す る 税 金 が か か ら な い 。 投 1 8 投 資 信 託 協 会 H P よ り 引 用 。
  • 17. 16 資 信 託 を 購 入 す る 際 に は 、 銀 行 の 窓 口 や 証 券 会 社 で 購 入 す る よ り も D C を 通 し て 購 入 す る 方 に メ リ ッ ト が あ る 。 ま た 、 2 0 1 2 年 1 月 の 法 改 正 に よ っ て 「 マ ッ チ ン グ 拠 出 」 が 可 能 と な っ た 。 マ ッ チ ン グ 拠 出 と は 、 加 入 者 も 一 定 の 範 囲 内 で 事 業 主 の 掛 金 に 上 乗 せ 拠 出 が 出 来 る 制 度 で あ る 。 拠 出 額 に は 上 限 が 設 け ら れ て い る 。 会 社 の 掛 金 と の 合 計 で 拠5 出 限 度 額 で あ る 月 額 5 5 , 0 0 0 円 を 超 え る こ と は で き な い 1 9 。 ま た 、 企 業 年 金 は 主 た る 拠 出 者 は 会 社 で あ る と い う 考 え に も と づ き 、 会 社 の 掛 金 を 加 入 者 本 人 の 掛 金 が 上 回 る こ と も で き な い 。 マ ッ チ ン グ 拠 出 の 最 大 の メ リ ッ ト は 、 加 入 者 の 掛 金 に も 税 制 優 遇 が 適 用 さ れ る こ と で あ る 。 毎 月 積 み 立 て た 掛 金 は 全 額 が 所 得 控 除 の 対 象 と な る た め 、 将 来1 0 に 向 け て 積 み 立 て を す る と 、 所 得 税 ・ 住 民 税 が 軽 減 さ れ る こ と と な る 。 ま た 、 会 社 掛 金 と 同 様 に 、 加 入 者 の 掛 金 も 資 産 運 用 に よ っ て 生 じ た 利 益 に つ い て は 全 額 が 非 課 税 と な る た め 、 効 率 的 な 資 産 形 成 が 行 え る 。 こ れ は 現 役 時 代 に 行 う 資 産 形 成 に お け る 大 き な 税 制 優 遇 措 置 で あ る 。 マ ッ チ ン グ 拠 出 は 加 入 者 が 掛 金 を 負 担 す る 仕 組 み で あ る こ と か ら 、 企 業 側 の1 5 コ ス ト は 低 く 抑 え る こ と が 可 能 で あ る 。 つ ま り 低 コ ス ト で 福 利 厚 生 の 拡 充 が 図 れ る こ と か ら 、 企 業 と 従 業 員 の 双 方 に メ リ ッ ト の 大 き い 制 度 で あ る と 言 え る 。 こ の よ う に 大 き な メ リ ッ ト を 享 受 で き る 制 度 で あ っ て も 、 D C か ら 投 資 を 始 め る 人 々 に と っ て は 制 度 の 有 効 活 用 が 難 し く 感 じ ら れ る か も し れ な い 。 そ こ で 今 年 の 5 月 に 「 D C 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 」 が 成 立 し 、 投 資 経 験 が 十 分 で2 0 な い 加 入 者 に も さ ら に 制 度 の 普 及 を 推 進 さ せ る 素 地 そ じ は 整 っ た 。 具 体 的 に は 、 吟 味 し て 商 品 を 選 び や す い よ う に 提 供 商 品 数 を 抑 制 す る 規 定 の 整 備 や 、 運 用 の 効 率 化 に 資 す る 商 品 規 定 の 整 備 が 行 わ れ る 。 特 に 運 用 効 率 化 の 面 で は 、 企 業 型 D C に お い て 加 入 者 が 運 用 指 図 し な い 場 合 に 、 リ ス ク 分 散 が 見 込 め る 複 数 資 産 に 投 資 す る デ フ ォ ル ト 商 品 で 運 用 す る こ と を 予 め 定 め て お く こ と が 可 能 に な っ2 5 た 。 第 1 章 で 述 べ た よ う に 、 老 後 の 資 産 形 成 を す る に あ た っ て 預 貯 金 だ け で は 資 金 不 足 に 陥 る こ と や 、 公 的 年 金 に 対 す る 不 安 が 高 ま っ て い る 中 で 、 D C は 現 代 1 9 企 業 年 金 を 併 用 し て い る 場 合 は 月 額 2 7 , 5 0 0 円 が 上 限 と な る 。
  • 18. 17 の 日 本 に 適 し た 年 金 制 度 で あ る と 言 え る 。 D C で は 税 制 優 遇 の メ リ ッ ト を 生 か し て リ ス ク 資 産 で あ る 投 資 信 託 を 中 心 に 運 用 す る と い う 方 法 が 老 後 へ の 適 切 な 資 産 形 成 手 段 で あ る と 考 え ら れ る 。 第 3 章 投資信託の現状と課題 本 章 で は 、 日 本 の 投 信 が 資 産 形 成 手 段 と し て 機 能 し て い る の か と い う こ と に5 つ い て 現 状 と 解 決 す べ き 課 題 に 言 及 し な が ら 述 べ て い く 。 第 1 節 日本人の投資信託保有の現状 投 信 が 投 資 を す る 上 で 適 切 な 商 品 で あ る こ と は 第 2 章 で 述 べ た と お り で あ る 。 世 界 、 日 本 と も に 〈 図 表 3 - 1 〉 に 示 す と お り 、 投 信 の 残 高 は 増 加 し て お り 、 金 融 商 品 と し て の 地 位 を 築 き つ つ あ る と い え る 。1 0 〈 図 表 3 - 1 〉 世 界 と 日 本 の 投 資 信 託 残 高 2 0 1 5 2 0 出 所 : 投 資 信 託 協 会 H P 「 投 資 信 託 の 世 界 統 計 」 2 0 0 3 年 第 2 四 半 期 か ら 2 0 1 4 年 第 2 四 半 期 の 各 第 2 四 半 期 の デ ー タ を 参 考 に 筆 者 作 成 2 0 デ ー タ は 各 年 の 6 月 末 時 点 。 ま た 、 2 0 1 5 年 以 降 は 調 査 方 法 が 変 わ り デ ー タ の 連 続 性 を 欠 く た め グ ラ フ の デ ー タ に 含 め て い な い 。 2 0 1 5 年 以 降 の 調 査 方 法 で は 2 0 1 4 年 3 8 . 0 1 兆 ド ル 。 2 0 1 5 年 3 9 . 2 2 兆 ド ル 。 2 0 1 6 年 3 9 . 2 9 兆 ド ル と な っ て い る 。
  • 19. 18 し か し 、 一 人 当 た り の 保 有 額 や 投 信 残 高 の 対 G D P 比 率 の 伸 び 〈 図 表 3 - 2 〉 か ら 考 え る と 日 本 に お け る 投 信 の 普 及 状 況 は 比 較 し て 伸 び 悩 ん で い る 。 ま た 、 投 信 の 世 帯 普 及 率 で は 米 国 が 4 3 . 9 % に 対 し て 日 本 は 7 . 9 % に 過 ぎ な い 。 〈 図 表 3 - 2 〉 投 資 信 託 残 高 の 対 G D P 比 率 の 変 化5 1 0 出 所 : 杉 田 浩 治 「 発 足 か ら 満 6 0 年 を 迎 え る 日 本 の 投 資 信 託 - そ の 軌 跡 ・ 現 状 と 今 後 の 課 題 - 」 [ 2 0 1 1 ] P 1 2 を 参 考 に 筆 者 作 成1 5 こ の こ と は 日 本 で は 若 い 世 代 で 特 に 投 信 の 普 及 率 が 低 い こ と が 原 因 と し て 考 え ら れ る 。 〈 図 表 3 - 3 〉 の 【 a 】 は 米 国 の 投 信 保 有 家 庭 数 に 占 め る 各 年 代 の 割 合 で あ る 。 【 b 】 は 家 計 全 体 が 保 有 す る 投 信 の う ち 各 世 代 そ れ ぞ れ の 保 有 割 合 で あ る 。 こ れ を 見 る と 米 国 で は 若 年 層 ま で 保 有 し て い る こ と が 分 か る 。 そ れ に2 0 対 し 、 日 本 で は 〈 図 表 3 - 4 〉 に 示 す よ う に 、 若 年 層 で の 投 信 保 有 率 の 低 さ が 顕 著 で あ る 。 第 1 章 で も 述 べ た よ う に 、 投 資 に よ る 資 産 形 成 は 若 年 層 に こ そ 必 要 で あ る 。 2 5 3 0
  • 20. 19 〈 図 表 3 - 3 〉 米 国 の 家 計 に お け る 投 資 信 託 5 出 所 : 米 国 投 資 信 託 協 会 「 P r o f i l e o f M u t u a l F u n d S h a r e h o l d e r s . 2 0 1 4 」 P 2 3 を 参 考 に 筆 者 作 成1 0 〈 図 表 3 - 4 〉 年 代 別 投 資 信 託 保 有 状 況 1 5 2 0 出 所 : 投 資 信 託 協 会 「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 - 2 0 1 4 年 ( 平 成 2 6 年 ) 調 査 結 果 の 概 要 - 」 を 参 考 に 筆 者 作 成 第 2 節 家計のリテラシー不足 家 計 の 金 融 資 産 に 占 め る リ ス ク 性 資 産 ( 株 式 ・ 債 券 ・ 投 信 ) の 割 合 を 日 米 で 比 べ る と 米 国 は 日 本 の 2 倍 か ら 3 倍 あ る 。 日 本 で は 「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」 と い う2 5 動 き が 進 め ら れ て き た が 、 大 き な 進 展 は 見 ら れ な い 。 こ れ に つ い て は 、 国 民 の 金 融 リ テ ラ シ ー 不 足 が 原 因 で 金 融 教 育 を す べ き と い う 意 見 が あ る 。 教 育 が 重 要 で あ る こ と は 明 白 で あ る 。 し か し 、 日 米 家 計 の リ ス ク 性 資 産 の 保 有 性 向 の 違 い の 原 因 を こ こ だ け に 求 め る こ と は で き な い 。 12 13 42 51 31 31 15 5 0% 50% 100% a b 1904~1945年生まれ 1946~1964年生まれ 1965~1980年生まれ 1981~2004年生まれ
  • 21. 20 確 か に 日 米 一 般 消 費 者 を 対 象 に し た 金 融 知 識 の 理 解 度 テ ス ト の 結 果 を 見 る と 、 米 国 人 の ほ う が や や 平 均 点 は 高 い 。 し か し 日 米 の 社 会 的 、 経 済 的 構 造 の 差 や 統 計 の と り 方 の 違 い を 考 慮 す れ ば 日 米 に 大 き な 金 融 リ テ ラ シ ー 格 差 は な い と 考 え ら れ る 。 そ も そ も 金 融 リ テ ラ シ ー と は 日 本 証 券 業 協 会 に よ れ ば 「 金 融 に 関 す る 知 識 や5 情 報 を 正 し く 理 解 し 、 自 ら が 主 体 的 に 判 断 す る こ と の で き る 能 力 」 と さ れ て い る 。 金 融 リ テ ラ シ ー と 一 口 に 言 っ て も 、 金 融 に 関 す る 情 報 は 多 岐 に 渡 り そ の 範 囲 は 広 い 。 こ こ で 重 要 と な る の が 「 資 産 形 成 に 必 要 な 金 融 リ テ ラ シ ー 」 を 身 に 着 け る こ と で あ る 。 「 資 産 形 成 に 必 要 な 金 融 リ テ ラ シ ー 」 と は 具 体 的 に は ど の よ う な も の だ ろ う1 0 か 。 我 々 は そ れ を ( 1 ) 資 産 形 成 の 必 要 性 の 理 解 ( 2 ) 資 産 形 成 の た め の 制 度 に 対 す る 理 解 ( 3 ) 資 産 形 成 の た め に 金 融 商 品 を 理 解 、 選 択 し 適 切 な 方 法 で 運 用 で き る 能 力 で あ る と 提 言 す る 。 以 上 の 提 言 を 踏 ま え た 「 資 産 形 成 に 必 要 な 金 融 リ テ ラ シ ー 」 と い う 視 点 か ら 、 現 状 を 分 析 す る 。1 5 ま ず ( 1 ) に つ い て 、 資 産 形 成 の 必 要 性 を 理 解 す る た め に は ラ イ フ プ ラ ン を 考 え る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。 な ぜ な ら 、 自 身 の ラ イ フ プ ラ ン を 考 え る こ と で 必 要 資 金 の 額 や 時 期 を 知 る こ と が で き る か ら で あ る 。 金 融 広 報 中 央 委 員 会 は 2 0 1 6 年 2 月 か ら 3 月 に か け て 金 融 リ テ ラ シ ー 調 査 を 実 施 し た 。 こ の 調 査 は 金 融 リ テ ラ シ ー マ ッ プ の 全 分 野 か ら 出 題 し そ の 正 答 率 を2 0 測 る も の で あ っ た 。 そ の 分 野 と 分 野 別 の 結 果 は 〈 図 表 3 - 5 〉 の と お り で あ る 。 〈 図 表 3 - 5 〉 金 融 リ テ ラ シ ー マ ッ プ の 分 野 別 正 答 率 ( % ) 2 5 出 所 : 金 融 広 報 中 央 委 員 会 「 「 金 融 リ テ ラ シ ー 調 査 」 の 結 果 」 [ 2 0 1 6 ] P 5 を 参 考 に 筆 者 作 成 3 0 51 50.4 72.9 48.8 52.5 53.3 54.3 65.3 55.6 外部の知見活用 合計 金融知識 家計管理 生活設計 記入取引の基本 金融・経済の基礎 保険 ローン・クレジット 資産形成
  • 22. 21 こ の 中 で ラ イ フ プ ラ ン や 「 資 産 形 成 の 必 要 性 」 に 関 し て の リ テ ラ シ ー を 問 う も の は 生 活 設 計 分 野 で あ る 。 生 活 設 計 分 野 に お け る 正 答 率 は 5 0 . 4 % と な っ て い る 。 金 融 経 済 教 育 研 究 会 報 告 書 に よ れ ば 、 こ の 分 野 に お い て 最 低 限 取 得 す べ き こ と は 「 ラ イ フ プ ラ ン の 明 確 化 及 び ラ イ フ プ ラ ン を 踏 ま え た 資 金 の 確 保 の 必 要 性 の 理 解 」 と さ れ て い る 。 し か し 現 状 で は 半 分 程 度 の 理 解 に と ど ま っ て い る5 こ と が 推 察 で き る 。 次 に ( 2 ) の 資 産 形 成 の た め の 制 度 の 理 解 に つ い て で あ る 。 資 産 形 成 の た め の 制 度 と は 第 1 章 で 述 べ た D C と N I S A の こ と で あ る 。 〈 図 表 3 - 6 〉 は N I S A と D C の 認 知 度 を 示 し て い る 。 い ず れ の 制 度 も 年 齢 が 下 が る に つ れ 認 知 度 は 低 く な る 傾 向 に あ る 。 特 に D C は 若 年 層 で 認 知 度 が 低 い 。1 0 〈 図 表 3 - 6 〉 N I S A 、 D C の 世 代 別 認 知 度 1 5 2 0 出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 P 2 0 を 参 考 に 筆 者 作 成 N I S A で は 全 体 で の 認 知 度 は 半 分 を 超 え て い る が 、 〈 図 表 3 - 7 〉 に 示 す と お2 5 り 、 内 容 に 関 し て は 知 ら な い と い う 場 合 が 目 立 ち 、 投 資 経 験 者 で あ っ て も 3 割 は 内 容 を 理 解 し て い な い 。 66% 47% 59% 66% 67% 69% 70% 67% 72% 43% 17% 28% 36% 40% 43% 48% 51% 55% 0% 20% 40% 60% 80% NISA DC
  • 23. 22 〈 図 表 3 - 7 〉 N I S A の 認 知 状 況 5 出 所 : 野 村 総 合 研 究 所 「 「 若 年 層 を 中 心 と し た 個 人 に よ る 投 資 の 現 状 と N I S A の 利 用 促 進 に 向 け1 0 た 課 題 に 関 す る 調 査 」 報 告 書 」 [ 2 0 1 5 ] P 2 7 よ り 筆 者 作 成 ま た 、 D C に 関 し て も 加 入 者 で あ っ て も 理 解 が 十 分 と は 言 え な い 。 〈 図 表 3 - 8 〉 は D C 加 入 者 が D C に 関 す る 3 点 の 基 本 事 項 2 1 の 理 解 の 程 度 を 表 し て い る 。 3 点 全 て 知 っ て い る 加 入 者 は 6 割 に 過 ぎ な い 。1 5 〈 図 表 3 - 8 〉 D C 加 入 者 の 制 度 理 解 2 0 出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 [ 2 0 1 5 ] よ り2 5 筆 者 作 成 2 1 ① 拠 出 額 は 所 得 か ら 控 除 さ れ 、 税 金 が 節 約 で き る こ と 。 ② 金 融 資 産 の 運 用 益 に は 課 税 さ れ な い こ と 。 ③ 積 み 立 て た 資 金 は 原 則 6 0 歳 ま で 引 き 出 す こ と が で き な い こ と 。 0点 14% 1点 13% 2点 12% 3点 61% 0点 1点 2点 3点 35.3 67.9 19.9 10.9 43.1 26.5 63.1 51.9 21.6 5.5 17.1 37.2 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 投資経験者 投資関心層 投資無関心層 聞いたことがあり、内容も知っている 聞いたことはあるが、内容は知らない 聞いたことはない
  • 24. 23 最 後 に ( 3 ) の 資 産 形 成 の た め に 金 融 商 品 を 理 解 、 選 択 し 適 切 な 方 法 で 運 用 で き る 能 力 に つ い て で あ る 。 〈 図 表 3 - 9 〉 は 金 融 リ テ ラ シ ー の ス コ ア 別 の D C 資 産 に お け る 投 信 比 率 で あ る 。 ス コ ア が 高 い 人 ほ ど 投 信 比 率 が 高 い 。 こ の 調 査 で の テ ス ト は ( 1 ) 分 散 投 資 の 方 法 ( 2 ) 複 利 の 効 果 ( 3 ) 「 東 証 株 価 指 数 」 の 意 味 ( 4 ) N I S A の 投 資 上 限 額5 ( 5 ) 「 流 動 性 」 の 意 味 の 5 つ に 関 す る こ と を 問 う も の で あ っ た 。 こ の 中 で 制 度 や 運 用 方 法 に つ い て の 問 い で 資 産 形 成 と 特 に 関 係 の 深 い 事 柄 は ( 1 ) ( 2 ) ( 4 ) で あ る 。 こ の 調 査 で 2 点 と 3 点 の 間 で 「 投 信 比 率 が 5 0 % 以 上 の 人 」 の 割 合 の 開 き が 大 き い 。 こ れ は 前 述 の 3 つ を 少 な く と も 1 つ は 知 っ て い る と い う こ と が 大 き い と 考 察 で き る 。1 0 〈 図 表 3 - 9 〉 金 融 リ テ ラ シ ー の ス コ ア 別 D C 資 産 に お け る 投 信 比 率 1 5 2 0 出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 P 4 0 を 参 考 に 筆 者 作 成 個 人 の 安 定 的 な 資 産 形 成 を 推 進 し て い く た め に は 、 分 散 投 資 や 長 期 運 用 の 有 効 性 の 理 解 を 含 め 、 様 々 な リ ス ク ・ リ タ ー ン の 金 融 商 品 を 適 切 に 選 択 す る 知2 5 識 ・ 判 断 力 の 向 上 が 必 要 で あ る 。 以 上 述 べ て き た と お り 、 日 本 人 は 資 産 形 成 の た め の リ テ ラ シ ー が 十 分 で は な い 。 前 述 の よ う に 金 融 リ テ ラ シ ー と は 様 々 な 分 野 か ら な る 能 力 で あ る が 、 特 に 資
  • 25. 24 産 形 成 の た め の リ テ ラ シ ー 向 上 が 重 要 で あ る 。 第3節 顧客と金融商品取引業者の利益相反 本 稿 で 述 べ る 金 融 商 品 取 引 業 者 と は 販 売 会 社 と 運 用 会 社 で あ る 。 第 3 章 2 節 で は 家 計 の 金 融 リ テ ラ シ ー 不 足 が 課 題 で あ る と 述 べ た 。 一 方 で 、 こ の 現 状 に 目 を 向 け る と 、 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 で 利 益 相 反 が 起 こ っ て い る と い う 課 題5 が あ る 。 利 益 相 反 と は 具 体 的 に は 大 規 模 資 金 を 長 期 で 運 用 す べ き で あ る に も 関 わ ら ず 、 顧 客 が 求 め る ま ま に 運 用 会 社 が 分 配 型 の フ ァ ン ド を 設 定 し そ ち ら に 顧 客 が 流 れ て し ま う と い う こ と 、 そ し て 手 数 料 で 利 益 を 挙 げ た い 販 売 会 社 と 長 期 保 有 で 安 定 的 な 資 産 形 成 を 望 む 顧 客 側 と の 間 で 適 切 な 販 売 が 行 わ れ て い な い こ と の 2 点 で あ る 。1 0 前 者 に 関 し て は 運 用 会 社 が 顧 客 の た め に 真 に 有 益 な 商 品 を 提 供 で き て い な い と い う 課 題 も あ る が 、 顧 客 側 の リ テ ラ シ ー と も 深 く 関 わ る 問 題 で あ る 。 投 資 信 託 協 会 に よ る 「 投 資 信 託 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 - 2 0 1 5 年 ( 平 成 2 7 年 ) 」 に よ れ ば 投 資 に 関 し て 入 手 し た い 情 報 と し て 、 「 分 配 金 が 多 い 投 信 」 の 割 合 は 2 0 . 7 % で あ る 。 例 え ば 2 0 1 5 年 3 月 末 時 点 で の 純 資 産 上 位 の 投 信 は 〈 図1 5 表 3 - 1 0 〉 の と お り 、 1 位 か ら 5 位 ま で 全 て 毎 月 分 配 型 の 投 信 で あ る 。 一 方 で 米 国 は 上 位 5 つ に 毎 月 分 配 型 の フ ァ ン ド は な い 。 毎 月 分 配 型 の 投 信 は 年 金 の 補 完 商 品 と し て 高 齢 者 を 中 心 に 人 気 が あ る 。 し か し 毎 月 配 当 型 の 投 信 は 人 気 を 集 め る た め に 十 分 な 利 益 が 出 て い な い に も 関 わ ら ず 原 資 を 配 当 し て し ま う 「 タ コ 足 配 当 」 の 懸 念 が あ る 。 こ れ で は 、 再 投 資 に よ る 複 利 効 果 が 得 る こ と が で き2 0 な い ば か り か 、 フ ァ ン ド の 資 産 が 積 み 上 が ら ず 大 規 模 化 し な い 。 2 5
  • 26. 25 〈 図 表 3 - 1 0 〉 日 米 投 資 信 託 純 資 産 残 高 ト ッ プ 5 5 出 所 : 日 本 経 済 新 聞 ( 2 0 1 5 年 5 月 2 7 日 ・ 日 刊 P 2 0 ) を 参 考 に 筆 者 作 成 1 0 後 者 に 関 し て は 金 融 取 引 業 者 に 大 き く か か わ る 問 題 で あ る 。 投 信 の 現 状 に つ い て 「 投 資 信 託 の 量 的 拡 大 は 途 上 に あ り 、 販 売 手 数 料 を 重 視 。 販 売 会 社 が 商 品 供 給 に 大 き な 影 響 力 を 有 す る 中 、 新 商 品 が 次 々 と 設 定 ・ 販 売 さ れ る 状 況 2 2 」 と 指 摘 が あ る 。 高 額 な 販 売 手 数 料 は 、 販 売 会 社 に 乗 り 換 え 販 売 の イ ン セ ン テ ィ ブ が 生 じ 、 投 信 保 有 期 間 の 短 期 化 に 繋 が る 。1 5 な ぜ 手 数 料 重 視 の 販 売 体 系 に な る の か 、 そ れ は フ ァ ン ド の 運 営 費 用 を 信 託 報 酬 で 賄 い 切 れ な い た め で あ る 。 し か し そ の 問 題 は 信 託 報 酬 が 低 い た め に 起 こ っ て い る の で は な い 。 〈 図 表 3 - 1 1 〉 は 債 券 型 フ ァ ン ド の 平 均 エ ク ス ペ ン ス レ シ オ 2 3 の 国 際 比 較 で あ る が 、 日 本 の 信 託 報 酬 が 高 水 準 に あ る こ と が 分 か る 。 2 0 2 5 2 2 日 本 証 券 業 協 会 「 投 資 信 託 法 制 の 見 直 し 等 に 関 す る 検 討 ワ ー キ ン グ ・ グ ル ー プ 」 [ 2 0 1 3 ] よ り 引 用 。 2 3 日 本 の 信 託 報 酬 に ほ ぼ 相 当 。 順位 投信名  1 新光 US-REIT アクティブ 毎月分配 2 ラサール・グローバルREIT アクティブ 毎月分配 3 フィディリティ・USハイ・イールド アクティブ 毎月分配 4 野村 ドイチェ・高配当インフラ関連株 (米ドル) アクティブ 毎月分配 5 グローバル・ソプリン アクティブ 毎月分配 1 バンガード・トータル・ストック インデックス ― 2 バンガード500 インデックス ― 3 バンガード・トータル・インターナ ショナル インデックス ― 4 アメリカン・ファンズ・グロース アクティブ ― 5 バンガード・トータル・ボンド インデックス ― 日本 米国 投信のタイプ
  • 27. 26 〈 図 表 3 - 1 1 〉 国 別 信 託 報 酬 手 数 料 5 出 所 : モ ー ニ ン グ ス タ ー 「 日 本 は “ 投 信 後 退 国 ” ! ? グ ロ ー バ ル 調 査 下 位 の 理 由 」 [ 2 0 1 5 ] を 参 考 に 筆 者 作 成1 0 日 本 の 公 募 投 信 の 本 数 は 増 加 を 続 け 、 2 0 1 5 年 末 時 点 で 5 8 4 3 億 円 に 達 し て い る 。 本 数 は 増 加 し た が 、 1 本 あ た り の 規 模 ( 純 資 産 残 高 ) は 1 6 0 億 円 前 後 で ほ ぼ 横 ば い の 状 況 が 続 い て い る 。 他 方 、 米 国 に お け る 投 信 の フ ァ ン ド 数 は 2 0 0 0 年 代 に 入 り 、 8 0 0 0 本 前 後 で1 5 推 移 し 、 ほ と ん ど 増 え て い な い 。 一 方 で 2 0 0 0 年 末 か ら 2 0 1 5 年 末 に 純 資 産 残 高 は 、 7 兆 ド ル か ら 1 6 兆 ド ル に 拡 大 し 1 本 あ た り の 規 模 は 8 . 5 億 ド ル か ら 1 9 億 ド ル へ と 2 . 3 倍 に 拡 大 し て い る 。 投 信 の 規 模 が 小 さ け れ ば 、 一 般 的 に は ス ケ ー ル メ リ ッ ト が 働 か な い た め 、 管 理 コ ス ト 等 は 割 高 に な り が ち で あ り 、 顧 客 が 払 う 信 託 報 酬 等 の 手 数 料 も 高 く な2 0 る と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 手 数 料 に 偏 重 す る 現 状 は 世 界 的 に も 低 評 価 で あ り 、 米 国 モ ー ニ ン グ ス タ ー が 2 年 に 1 回 発 表 す る 、 世 界 2 5 カ 国 の 投 信 市 場 の 評 価 で あ る 「 グ ロ ー バ ル ・ フ ァ ン ド ・ イ ン ベ ス タ ー ・ エ ク ス ペ リ エ ン ス ( G F I E ) 」 レ ポ ー ト で イ タ リ ア と 並 ん で 下 か ら 2 番 目 に 低 い 評 価 と な っ た 。2 5 0.6%以下 0.6%超0.85%以下 0.85%超1.00%以下 1.00%超1.15%以下 1.15%超1.30%以下 1.30%超 カナダ 日本 台湾 オーストラリア ベルギー インド 韓国 オランダ ノルウェー タイ 米国 デンマーク フィンランド フランス ドイツ ニュージーランド シンガポール 南アフリカ スペイン スウェーデン スイス 中国 香港 イタリア 英国
  • 28. 27 〈 図 表 3 - 1 2 〉 G F I E の 総 合 評 価 5 1 0 出 所 : モ ー ニ ン グ ス タ ー 「 日 本 は “ 投 信 後 退 国 ” ! ? グ ロ ー バ ル 調 査 下 位 の 理 由 」 [ 2 0 1 5 ] を 参 考 に 筆 者 作 成 ま た 、 販 売 会 社 と 運 用 会 社 が 相 互 に 独 立 し て お ら ず 、 販 売 会 社 は 系 列 運 用 会 社 の 商 品 ば か り を 販 売 し て し ま い が ち で あ る 。1 5 こ う し た 現 状 の 中 、 金 融 庁 に よ り フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー 2 4 の 浸 透 が 図 ら れ て い る 。 例 え ば 、 投 資 運 用 業 者 に 対 し て は 系 列 販 売 会 社 と の 間 の 適 切 な 経 営 の 独 立 性 の 確 保 、 顧 客 の 利 益 に 適 う 商 品 の 組 成 ・ 運 用 等 、 販 売 会 社 に 対 し て は 顧 客 本 位 の 経 営 姿 勢 と 整 合 的 な 業 績 評 価 、 商 品 の リ ス ク 特 性 や 各 種 手 数 料 の 透 明 性 の 向 上 、 こ れ ら を 通 じ た 顧 客 と の 間 の 利 益 相 反 や 情 報 の 非 対 称 性2 0 の 排 除 等 を 促 し て い く と い う 。 顧 客 と 販 売 金 融 機 関 と の 利 益 相 反 を 排 す る た め に 、 顧 客 の リ テ ラ シ ー 向 上 と と も に 金 融 商 品 取 引 業 者 へ フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー を 徹 底 さ せ る 必 要 が あ る 。 第 4 節 日本の投資信託のパフォーマンスの現状2 5 第 3 章 3 節 で 顧 客 と 金 融 商 品 取 引 業 者 に 利 益 相 反 が 生 じ 、 フ ィ デ ュ ー シ ャ 2 4 他 者 の 信 任 に 応 え る べ く 一 定 の 任 務 を 遂 行 す る も の が 追 う 幅 広 い 様 々 な 役 割 ・ 責 任 の 総 称 。 A ↑韓国 =米国 A- ↑オランダ ↑台湾 B+ ↑英国 B ↑スウェーデン B- ↑オーストラリア =デンマーク *フィンランド =ノルウェー =スイス C+ =カナダ ↓ドイツ ↑インド ↑ニュージーランド ↓タイ C ↓ベルギー ↓フランス ↑香港 ↓シンガポール ↑南アフリカ ↓スペイン C- ↓イタリア ↓日本 D+ ↓中国 D D- F 注)前回調査より ↑上昇 ↓低下 =変わらず *新規調査対象
  • 29. 28 リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー の 徹 底 が 重 要 で あ り 、 な ぜ そ の よ う な 利 益 相 反 が 起 こ る の か に つ い て 販 売 会 社 の 手 数 料 偏 重 の 料 金 体 系 が 原 因 で あ る こ と を 述 べ た 。 こ の よ う な 手 数 料 偏 重 、 さ ら に 高 額 な 信 託 報 酬 の 料 金 体 系 の 背 後 に は 日 本 の 投 信 が 低 パ フ ォ ー マ ン ス で あ る と い う 問 題 が 存 在 す る 。 〈 図 表 3 - 1 3 〉 は 日 米 で 販 売 さ れ て い る 規 模 の 大 き い 投 信 2 5 の 概 括 的 な 比 較5 で あ る 。 1 0 年 と い う 長 期 的 な 視 点 に 立 っ た 場 合 、 米 国 は 収 益 率 が プ ラ ス で あ る の に 対 し 、 日 本 は マ イ ナ ス に な っ て い る 。 〈 図 表 3 - 1 3 〉 規 模 の 大 き い 投 資 信 託 の 日 米 比 較 1 0 出 所 : 金 融 庁 「 平 成 2 7 年 度 金 融 レ ポ ー ト 」 [ 2 0 1 6 ] P 6 0 を 参 考 に 筆 者 作 成 1 5 日 本 の パ フ ォ ー マ ン ス の 低 さ は そ の 運 用 方 法 に 起 因 す る 。 日 本 で は 第 3 章 3 節 の 〈 図 表 3 - 1 0 〉 で も 示 し た と お り 、 規 模 の 大 き な 投 信 は ア ク テ ィ ブ 運 用 商 品 が 多 く 、 と り わ け 、 投 資 対 象 を 特 定 の 種 類 の 資 産 に 限 定 し た テ ー マ 型 の 商 品 が 多 い 。 ア ク テ ィ ブ 運 用 は ベ ン チ マ ー ク と な る 市 場 イ ン デ ッ ク ス を 上 回 る 運 用 成 績 を あ げ る こ と を 目 標 と す る 運 用 方 法 で あ る 。 し か し 、 〈 図 表 3 - 1 4 〉 に 示2 0 す よ う に 、 実 際 の パ フ ォ ー マ ン ス を 長 期 で 見 る と 、 過 半 数 の フ ァ ン ド は ベ ン チ マ ー ク を 下 回 る 結 果 に な る こ と が 多 い 。 ま た 、 テ ー マ 型 の 投 信 は そ の 前 提 と な る 経 済 環 境 や 市 場 の 関 心 が 変 化 し て し ま え ば 自 ず と 人 気 が な く な る た め 、 ロ ン グ セ ラ ー 商 品 と し て 定 着 し に く い 。 つ ま り テ ー マ 型 の 商 品 は 資 産 形 成 の た め の 長 期 投 資 の 手 段 に は な り に く い 。 〈 図 表 3 - 1 5 〉 は 日 米 の 投 信 の 上 位 1 0 銘 柄2 5 を 時 系 列 で 比 較 し た も の で あ る 。 5 年 前 お よ び 1 0 年 前 に 上 位 に 入 っ て い た 銘 柄 は そ れ ぞ れ 色 付 き で 示 し て い る 。 米 国 は 1 0 年 前 と 同 じ フ ァ ン ド が 6 本 存 在 す る の に 対 し 、 日 本 で は 2 本 に 過 ぎ な い 。 2 5 純 資 産 額 上 位 5 銘 柄 。 2 0 1 6 年 3 月 末 基 準 。 販売手数料 信託報酬(年率) 収益率(年率) 過去10年平均 ▲0.11% 5.20% 平均(税抜き) 3.20% 1.53% 0.59% 0.28% 国 規模(純資産)の 平均(兆円) 設定以来期間平均 日本 米国 1.1 22.6 13年 31年
  • 30. 29 米 国 に お け る 規 模 の 大 き い 投 信 は 、 米 国 株 式 、 米 国 以 外 の 株 式 、 米 国 債 な ど を 投 資 対 象 と し て 、 イ ン デ ッ ク ス 運 用 を 行 う 一 般 的 な 商 品 が 多 く 、 信 託 報 酬 等 の 手 数 料 も 高 い 水 準 に な り に く い 。 こ う し た 商 品 は ロ ン グ セ ラ ー と し て 残 高 が 大 き く 積 み あ が っ て お り 、 個 人 の 資 産 形 成 の 中 核 的 な 商 品 と な っ て い る こ と が う か が え る 。5 〈 図 表 3 - 1 4 〉 東 証 株 価 指 数 を 上 回 っ た ア ク テ ィ ブ フ ァ ン ド の 割 合 1 0 出 所 : 日 経 デ ュ ア ル 2 0 1 4 年 5 月 2 2 日 を 参 考 に 筆 者 作 成1 5 〈 図 表 3 - 1 5 〉 規 模 の 大 き い 投 資 信 託 の 日 米 比 較 2 0 2 5 出 所 : 金 融 庁 「 平 成 2 7 年 度 金 融 レ ポ ー ト 」 [ 2 0 1 6 ] P 6 1 を 参 考 に 筆 者 作 成 35 68 36 45 21 68 48 46 35 58 65 32 64 55 79 32 52 54 65 42 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 アクティブファンド インデックスファンド 順位 現在(16年3月末) 5年前(11年3月末) 10年前(06年3月末) 1 米国リート① 先進国高格付債券 先進国高格付債券 2 海外リート② 海外低格付債券 海外債券① 3 米国リート② 海外高格付債券① 米国債券 4 海外株式 海外高格付債券② 世界資産複合① 5 米国低格付債券 海外株式 海外債券② 6 先進国高格付債券 新興国債券① 海外高格付債券③ 7 米国リート③ 米国リート② 日本株式 8 米国リート④ 新興国債券② 海外株式 9 海外リート② 海外債券① 世界資産複合② 10 新興国株式 世界資産複合① 世界資産複合③ 順位 現在(16年3月末) 5年前(11年3月末) 10年前(06年3月末) 1 米国株式インデックス① 米国債券 米国株式① 2 米国株式インデックス② 米国株式① 米国株式インデックス③ 3 世界株式(除く米国)インデックス 米国株式インデックス① 米国債券 4 米国株式インデックス③ 世界株式(除く米国) 米国株式③ 5 米国株式① 米国株式インデックス③ 世界株式(除く米国) 6 米国債券インデックス① 米国株式インデックス② 米国株式④ 7 世界株式(除く米国) 世界株式② 米国株式・債券複合 8 米国株式② 世界株式① 米国株式② 9 世界株式① 米国株式② 米国株式インデックス① 10 米国伊債券インデックス② 米国債券インデックス① 世界株式① 日本 米国
  • 31. 30 第4章 提案 第 3 章 で は 投 信 の 課 題 を 述 べ た 。 本 章 1 節 か ら 3 節 で は そ の 課 題 を 受 け 我 々 の 提 案 を 述 べ る 。 ま た 、 第 4 節 で は 望 ま し い 投 信 の あ り 方 を 示 し 、 提 案 が 望 ま し い 投 信 の あ り 方 に 向 け て ど の よ う に 機 能 す る か を 述 べ る 。 第 1 節 職場積立 NISA 奨励金制度導入5 職 場 積 立 N I S A と は 「 投 資 信 託 を 、 給 与 ・ 賞 与 等 か ら の 天 引 き に よ り 、 定 時 ・ 定 額 で N I S A 口 座 を 利 用 し て 投 資 信 託 等 に 投 資 す る も の 」 2 6 で あ る 。 こ の 制 度 を 導 入 し て い る 企 業 は 平 成 2 8 年 6 月 末 時 点 で 2 , 8 5 6 社 2 7 で あ る 。 職 場 積 立 N I S A を 導 入 し て い る 企 業 の 従 業 員 は 金 融 教 育 が 受 け る こ と が で き る 。 ま た 、 投 資 が 少 額 か ら 可 能 で 、 投 資 初 心 者 に 対 し て ハ ー ド ル の 低 い 仕 組 み に な っ1 0 て い る 。 そ こ で 、 投 資 で の 資 産 形 成 を 促 進 す る ア プ ロ ー チ 方 法 の 1 つ と し て 職 場 積 立 N I S A の さ ら な る 導 入 の 推 進 が 効 果 的 で あ る と 考 え た 。 【 職 場 積 立 N I S A の 必 要 性 】 主 に 老 後 資 金 の 形 成 に 用 い ら れ る 企 業 型 D C は 6 0 歳 ま で 引 き 出 せ な い こ と1 5 が デ メ リ ッ ト と し て 挙 げ ら れ る 。 一 方 、 職 場 積 立 N I S A は 自 由 に 売 却 ・ 換 金 す る こ と が 可 能 で 、 か つ 運 用 時 に 非 課 税 の メ リ ッ ト を 享 受 で き る 。 つ ま り 、 住 宅 資 金 な ど 途 中 で 使 う 可 能 性 が 高 い 資 金 は 職 場 積 立 N I S A で 、 老 後 資 金 は D C で 運 用 す る と い っ た 使 い 分 け が 可 能 に な る 。 福 利 厚 生 の 一 環 と し て 効 率 的 な 資 産 形 成 が 可 能 と な り 、 後 述 す る が 金 融 機 関 か ら 投 資 ア ド バ イ ス や 投 資 セ ミ ナ ー2 0 な ど の 教 育 を う け ら れ る こ と か ら 、 第 3 章 2 節 で 課 題 と し て 述 べ た 従 業 員 の 金 融 リ テ ラ シ ー の 向 上 も 見 込 め る メ リ ッ ト の 多 い 制 度 に な っ て い る 。 こ の 制 度 を 推 進 す る 根 拠 と し て 単 な る メ リ ッ ト の 多 さ だ け で な く 、 実 際 に 従 業 員 が 企 業 に 対 し て 財 産 形 成 の 分 野 で 福 利 厚 生 制 度 の 更 な る 拡 充 を 求 め て い る 2 6 岡 三 に い が た 証 券 H P よ り 引 用 。 2 7 N I S A 推 進 ・ 連 絡 協 議 会 平 成 2 8 年 9 月 「 職 場 積 立 N I S A の 導 入 状 況 等 に つ い て 」 よ り
  • 32. 31 こ と が 挙 げ ら れ る 。 〈 図 表 4 - 1 〉 に 示 す よ う に 、 財 産 形 成 の 分 野 で 、 従 業 員 は 2 4 . 3 % が 今 後 重 点 を 置 い て も ら い た い と 回 答 し て い る の に 対 し 、 企 業 は そ れ ほ ど こ の 分 野 を 重 視 し て い な い 。 職 場 積 立 N I S A は ま だ ま だ 導 入 率 は 低 い が 、 従 業 員 ・ 金 融 機 関 ・ 企 業 の 3 者 に メ リ ッ ト が あ る シ ス テ ム で あ り 、 利 用 を 促 進 す る こ と に よ っ て N I S A 自 体 の5 知 名 度 の 向 上 が 可 能 と な る 。 我 々 は 、 職 場 積 立 N I S A が 個 人 の 中 で 「 投 資 」 と 「 資 産 形 成 」 を 結 び つ け る 有 効 な 手 段 と な っ て く れ る と 期 待 す る 。 〈 図 表 4 - 1 〉 今 後 、 重 点 を 置 く 福 利 厚 生 制 度 の 分 野 ( 企 業 調 査 ) 今 後 、 重 点 を 置 い て も ら い た い 福 利 厚 生 制 度 の 分 野 ( 従 業 員 調 査 )1 0 1 5 出 所 : 三 菱 U F J 国 際 投 信 「 職 場 積 立 N I S A 拡 大 の 可 能 性 は 高 い ~ 職 場 積 立 N I S A2 0 は 、 9 兆 円 の D C 、 1 6 兆 円 の 財 形 、 5 兆 円 の 持 株 を 補 完 出 来 る ~ 」 [ 2 0 1 6 ] P 5 よ り 筆 者 作 成 【 職 場 積 立 N I S A の メ リ ッ ト 】 マ イ ナ ス 金 利 下 で 魅 力 が 低 下 し て い る 預 貯 金 に 対 し て 、 N I S A は 少 額 か ら 投2 5 資 が 可 能 な 上 に 投 資 成 果 に 対 す る 税 制 優 遇 も あ る 。 ま ず 従 業 員 の メ リ ッ ト か ら 述 べ る 。 職 場 積 立 N I S A で あ れ ば 口 座 開 設 や 商 品 説 明 が 職 場 で す む の で 手 間 が 省 け る 。 N I S A 取 り 扱 い 業 者 に 対 し て 利 用 者 へ の 52.3 34.1 24.7 32.5 18.2 13.2 17.3 15.6 11.8 12.2 1.7 43.1 19.7 18.2 23.3 22.8 15.9 36.4 39.8 24.3 9 10.4 0 10 20 30 40 50 60 ( % ) N=1504 企業が、今後、重点を置く福利厚生制度の分野 従業員が、今後、重点を置いてもらいたい福利厚生制度の分野
  • 33. 32 投 資 教 育 義 務 が 定 め ら れ て お り 2 8 、 利 用 者 は 投 資 教 育 セ ミ ナ ー と い っ た サ ー ビ ス を 受 け ら れ 投 資 経 験 が 浅 く て も 投 資 を 始 め や す い 。 ま た 、 給 与 天 引 き 方 式 が あ る こ と か ら 、 後 者 は 面 倒 な 入 金 や 発 注 の 手 間 が か か ら な い 。 さ ら に 投 資 初 心 者 に と っ て は 、 働 い て い る 企 業 が 金 融 機 関 や 投 信 を 選 択 し て く れ る 安 心 感 、 容 易 さ が あ る こ と か ら 投 資 を 身 近 に 感 じ る き っ か け と し て 有 効 で あ る と 考 え る 。5 次 に 、 金 融 機 関 に と っ て の メ リ ッ ト を 述 べ る 。 仕 事 な ど で 金 融 機 関 に な か な か 足 を 運 べ な い 現 役 世 代 に 対 し て 、 セ ミ ナ ー を 通 し て 接 点 を 持 て る 。 職 場 積 立 N I S A を 通 し て 少 額 の 投 資 で あ っ て も 若 い 頃 か ら あ る 銀 行 で 資 産 運 用 を 経 験 す る こ と で 、 定 年 退 職 後 も そ の ま ま 関 係 を 構 築 で き る 可 能 性 が 高 い 。 ま た 職 場 積 立 N I S A は D C と は 違 い 、 外 務 員 登 録 を し て い る 担 当 者 か ら の 投 資 ア ド バ イ1 0 ス の 提 供 が 可 能 で あ る 。 さ ら に 、 職 場 積 立 N I S A は 個 人 単 位 の 働 き か け で 顧 客 を 獲 得 し て き た 従 来 の N I S A と は 違 い 、 企 業 単 位 で 働 き か け る た め 、 効 率 的 な 営 業 形 態 と 言 え る 。 最 後 に 、 企 業 に と っ て の メ リ ッ ト を 述 べ る 。 企 業 は 職 場 積 立 N I S A を 導 入 す る こ と で 、 福 利 厚 生 の 充 実 に 積 極 的 と 捉 え ら れ る 。 従 業 員 の 定 着 率 が 高 ま る1 5 と と も に と も に 優 秀 な 人 材 が 確 保 で き 、 ま た 社 会 的 評 価 の 向 上 に も 繋 が る 。 【 職 場 積 立 N I S A を よ り 普 及 さ せ る た め に 】 職 場 積 立 N I S A を 利 用 し て 投 信 を 積 み 立 て る 従 業 員 に 一 律 、 勤 め 先 の 企 業 が 月 数 千 円 の 奨 励 金 を 支 払 う 制 度 を 推 し 進 め る 。 実 際 の 資 金 の 流 れ と し て 企 業 が2 0 支 払 っ た 奨 励 金 を 一 旦 、 従 業 員 の 預 金 口 座 に 入 金 し 、 次 に そ の 資 金 を 投 信 口 座 に 毎 月 振 り 替 え て 従 業 員 が 払 っ た 資 金 と 合 わ せ て 投 信 を 購 入 す る 。 職 場 積 立 N I S A の 奨 励 金 制 度 は 、 年 金 の 掛 け 金 を 企 業 と 従 業 員 が と も に 支 払 う と い う 点 で 、 企 業 型 D C の マ ッ チ ン グ 拠 出 制 度 と 同 様 で あ る 。 例 と し て は 〈 図 表 4 - 2 〉 に 示 す と お り 、 北 関 東 に 本 社 を 置 く あ る 中 堅 メ ー カ ー が 、 取 引 先 の 常 陽 銀 行 と2 5 こ の 制 度 を 実 施 し て い る 。 2 8 日 本 証 券 業 協 会 平 成 2 6 年 「 職 場 積 立 N I S A に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン 」 第 3 章 3 項 よ り
  • 34. 33 〈 図 表 4 - 2 〉 職 場 積 立 N I S A 奨 励 金 制 度 の 仕 組 み 5 出 所 : 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 2 0 1 6 年 5 月 2 7 日 付 の 記 事 を 参 考 に 筆 者 作 成1 0 厚 生 年 金 の 解 散 が 加 速 し 、 社 員 の 将 来 へ の 不 安 が 一 層 強 く な り 資 産 形 成 制 度 の 充 実 が さ ら に 求 め ら れ る 中 で 、 職 場 積 立 N I S A は 非 常 に 有 効 な 手 段 と い え る 。 さ ら に こ の 制 度 を 普 及 さ せ る た め に 、 我 々 は 職 場 積 立 N I S A 奨 励 金 制 度 を 提 案 す る 。1 5 第2節 確定拠出年金の継続投資教育の拡充 投 信 の 利 用 を 促 進 す る た め に ま ず 貯 蓄 の 習 慣 を 身 に つ け る こ と が 必 要 で あ り 、 そ の た め に 日 々 の 家 計 管 理 を 習 慣 化 さ せ る こ と が 重 要 で あ る 。 企 業 型 D C は 、 知 識 の 習 得 と 体 験 の 機 会 を 同 時 に 提 供 で き 投 資 の 理 解 を 深 め る の に 有 効 な 手 段 で あ る と い え る 。2 0 2 0 1 6 年 5 月 に D C 法 が 改 正 さ れ 、 制 度 を 運 営 す る 事 業 主 の 責 務 と し て 、 加 入 者 等 に 対 す る 投 資 教 育 を 継 続 し て 実 施 す る こ と が 努 力 義 務 化 さ れ た 。 継 続 教 育 実 施 率 が 7 0 . 9 % 2 9 と な り 、 企 業 の 継 続 教 育 に 対 す る 取 組 姿 勢 は 今 後 も 積 極 化 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 我 々 は D C の さ ら な る 普 及 に 向 け て 投 資 教 育 の 徹 底 を 図 り 、 投 資 へ の 理 解 や 必 要 性 に 対 す る 認 識 を 深 め る こ と が 重 要 で あ る と 考 え2 5 た 。 2 9 確 定 拠 出 年 金 総 合 研 究 所 2 0 1 5 年 「 第 1 2 回 : 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 制 度 運 営 管 理 に 関 す る 調 査 」 よ り
  • 35. 34 【 具 体 案 】 ま ず 、 投 資 無 関 心 層 を 投 資 関 心 層 に 引 き 上 げ る こ と が 重 要 で あ る 。 無 関 心 層 は 、 簡 単 な 理 解 度 セ ル フ チ ェ ッ ク や e ラ ー ニ ン グ な ど を 通 し て 特 定 す る 。 簡 単 な テ ス ト な ど で あ れ ば コ ス ト が 高 く な る 心 配 は な い 。 投 資 無 関 心 層 へ の 効 果 的 な ア プ ロ ー チ は 定 期 的 な 全 員 参 加 型 の 教 育 で あ る 。5 投 資 に 関 心 の な い 層 に と っ て は 、 印 刷 物 の 配 布 や メ ル マ ガ 、 D V D に よ る 情 報 提 供 と い っ た 教 育 方 法 は 適 さ な い 。 ま た 、 自 由 参 加 で は 無 関 心 層 の 参 加 を 期 待 で き な い こ と か ら 、 全 体 教 育 で 基 礎 的 な 内 容 を 繰 り 返 し て ま ず D C や 投 資 ・ 資 産 運 用 に 対 す る 理 解 を 深 め る こ と が 効 果 的 で あ る と 考 え る 。 彼 ら の 理 解 の 底 上 げ を 図 る こ と に よ っ て 、 セ ミ ナ ー を 中 心 と し た 既 存 の 継 続 教 育 の 参 加 率 の 向 上1 0 が 見 込 ま れ る 。 次 に 、 従 業 員 全 体 に 対 し て 最 も 効 果 的 な ア プ ロ ー チ は 、 「 ラ イ フ プ ラ ン を 絡 め た 教 育 」 の 実 施 で あ る 。 〈 図 表 4 - 3 〉 〈 図 表 4 - 4 〉 で 示 し た よ う に 、 ラ イ フ プ ラ ン に 関 す る 興 味 は 8 0 % の 人 が 感 じ て い る が 、 実 際 に 考 え た こ と が あ る 人 は 全 体 の 2 3 . 8 % に と ど ま っ て お り 差 が 見 ら れ る 。 こ の 差 を 埋 め る た め に 、 企1 5 業 が こ れ ま で よ り 積 極 的 に ラ イ フ プ ラ ン を 考 え る 機 会 を 提 供 す る こ と が 必 要 で あ る 。 〈 図 表 4 - 3 〉 ラ イ フ プ ラ ン へ の 関 心 ・ 興 味 2 0 2 5 出 所 : 「 財 産 形 成 支 援 制 度 及 び 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 理 解 ・ 活 用 の 現 状 に 関 す る D C 加 入 者 調 査 」 報 告 書 2 0 1 3 年 1 2 月 P 2 5 を 参 考 に 筆 者 作 成 3 0
  • 36. 35 〈 図 表 4 - 4 〉 ラ イ フ プ ラ ン へ の 取 り 組 み 5 出 所 : 「 財 産 形 成 支 援 制 度 及 び 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 理 解 ・ 活 用 の 現 状 に 関 す る D C 加1 0 入 者 調 査 」 報 告 書 2 0 1 3 年 1 2 月 P 2 5 を 参 考 に 筆 者 作 成 ま た 、 ラ イ フ プ ラ ン に 関 す る 情 報 提 供 の タ イ ミ ン グ を 調 査 し 年 代 別 に ま と め た 所 〈 図 表 4 - 5 〉 、 自 分 の 年 齢 と 同 じ 時 期 の 情 報 提 供 を 希 望 し て い る 人 が 多 い こ と が 確 認 で き た 。 さ ら に 、 2 0 ~ 3 0 代 の 若 年 層 で も 自 分 の 年 齢 と 同 じ 時 期 の1 5 情 報 提 供 を 適 切 な タ イ ミ ン グ と 考 え て い る 人 の 割 合 が 高 い こ と か ら 、 早 期 か ら の 情 報 提 供 を 求 め て い る 人 が 多 い こ と も 確 認 で き る 。 企 業 は 若 年 層 に 対 し て も 積 極 的 に ラ イ フ プ ラ ン の 作 成 を 推 し 進 め る 必 要 が あ る 。 〈 図 表 4 - 5 〉 社 員 特 性 別 : ラ イ フ プ ラ ン に 関 す る 情 報 提 供 の タ イ ミ ン グ ( 単 位 : % )2 0 2 5 出 所 : 「 財 産 形 成 支 援 制 度 及 び 企 業 型 確 定 拠 出 年 金 制 度 の 理 解 ・ 活 用 の 現 状 に 関 す る D C 加 入 者 調 査 」 報 告 書 2 0 1 3 年 1 2 月 P 3 1 を 参 考 に 筆 者 作 成
  • 37. 36 D C を さ ら に 普 及 さ せ る た め に は 、 制 度 自 体 の 理 解 を 深 め よ う と す る だ け で は な く 、 企 業 が 従 業 員 に ラ イ フ プ ラ ン の 作 成 を 積 極 的 に 促 し 、 制 度 が 自 分 の 身 に ど う 関 わ っ て く る の か を 訴 え か け る の が 有 効 的 だ 。 セ ミ ナ ー は 従 業 員 全 体 に 投 資 の 理 解 を 深 め て も ら う の に 効 果 的 で コ ス ト も か か ら な い が 、 個 人 の 個 別 の 事 情 を 反 映 し た 情 報 提 供 に は 限 界 が あ る 。 そ こ で 具 体 的 に は 従 業 員 か ら の 希 望5 が 多 い 個 別 相 談 会 の 回 数 を 増 や し 、 さ ら に 夫 婦 ・ 家 族 同 伴 の 相 談 会 ま た は セ ミ ナ ー を 拡 充 す る 。 個 人 が 容 易 に ラ イ フ プ ラ ン を 作 る こ と が で き る よ う に 、 適 切 な 情 報 提 供 や ア ド バ イ ス の サ ー ビ ス を 充 実 さ せ る べ き で あ る 。 こ の よ う な 場 を 設 け る こ と で 投 資 活 動 が 自 分 や 家 族 ま で に も 影 響 を 及 ぼ す も の で あ る こ と を 強 く 実 感 さ せ る こ と が 可 能 で あ る 。 個 別 相 談 会 に は コ ス ト が か か る と い う 意 見 も1 0 あ る が 、 投 資 の 必 要 性 を 訴 え る の に 最 も 有 効 な 手 段 で あ る こ と か ら 、 そ れ 以 降 従 業 員 が 積 極 的 に セ ミ ナ ー を 受 け 始 め た り ラ イ フ プ ラ ン を 作 成 し た り す る こ と が 期 待 さ れ る 。 こ れ は 金 融 リ テ ラ シ ー 面 の 向 上 に も 直 接 的 に 繋 が る と い え る 。 第3節 ロボ・アドバイザーの活用 こ れ ま で 述 べ て き た よ う に 、 投 信 は 家 計 の 資 産 形 成 に 適 切 な 性 質 を 持 つ 金1 5 融 商 品 で あ る 。 ま た 、 N I S A や D C の 活 用 が 有 効 で あ る こ と も 既 に 述 べ た と お り で あ る 。 し か し 一 方 で 、 第 3 章 2 節 で 述 べ た よ う な 家 計 に 金 融 リ テ ラ シ ー 不 足 が 課 題 と し て 存 在 し 、 適 切 な 金 融 教 育 を 実 施 す る こ と が 求 め ら れ て い る 。 こ う し た 現 状 を 踏 ま え 、 家 計 の リ テ ラ シ ー を 補 い 、 最 適 な 資 産 形 成 を 望 ま し い も の と す る た め に ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 活 用 を 提 案 す る 。2 0 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー と は 金 融 工 学 や ポ ー ト フ ォ リ オ 理 論 の 専 門 家 の 戦 略 を 活 用 し 、 低 コ ス ト で 個 々 の 投 資 家 の 志 向 に 応 じ た 、 最 適 な 運 用 資 産 の 配 分 を 提 案 す る 自 動 投 資 助 言 サ ー ビ ス で あ る 。 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 主 な メ リ ッ ト は 、 ( 1 ) ス マ ー ト フ ォ ン で い つ で も ア ク セ ス が 可 能 で 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 使 い 慣 れ て い る 若 年 層 を 取 り 込 み や す い 、 ポ2 5 ー タ ビ リ テ ィ が あ る 点 。 ( 2 ) 数 あ る 資 産 の 中 か ら 、 資 産 毎 の リ タ ー ン 、 リ ス ク に 基 づ い た 資 産 配 分 上 の ク ラ ス 、 選 択 肢 を 提 供 す る 資 産 配 分 能 力 が あ る 点 。 ( 3 ) 人 の ア ド バ イ ス を 介 さ な い た め 、 比 較 的 コ ス ト が 高 い ア ク テ ィ ブ 運 用 で は な く 、 E T F な ど の パ ッ シ ブ 運 用 を 通 じ て 低 コ ス ト 化 に 成 功 し て い る 点 。 以 上
  • 38. 37 の 3 点 で あ る 。 米 国 で は 、 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー を 手 が け る ベ ン チ ャ ー 企 業 が デ ジ タ ル ・ ウ ェ ル ス ・ マ ネ ジ メ ン ト 3 0 を 提 供 し て い る 。 企 業 は 、 金 融 危 機 を 経 験 し 、 投 資 に 消 極 的 な ミ レ ニ ア ル 世 代 3 1 の 顧 客 化 に 成 功 し て い る 。 米 国 証 券 取 引 委 員 会 の 調 査 で は 2 0 1 4 年 7 月 末 時 点 で 米 国 に は 約 2 5 の ロ5 ボ ・ ア ド バ イ ザ ー が 存 在 す る 。 そ の ほ と ん ど で 非 富 裕 層 の 個 人 投 資 家 が 7 6 % 以 上 を 占 め て お り 、 所 得 が 多 く は な い 投 資 家 に も 容 易 に 利 用 さ れ て い る 。 日 本 国 内 に 目 を 向 け て み る と 、 〈 図 4 - 6 〉 に 示 す と お り 、 ラ ッ プ 口 座 の 件 数 、 金 額 と も に 増 加 し て い る 。 ラ ッ プ 口 座 と は 個 人 が 証 券 会 社 や 信 託 銀 行 と 投 資 一 任 契 約 を 結 ん で 、 資 金 の 運 用 か ら 管 理 ま で を 任 せ る こ と が で き る サ ー ビ ス で あ1 0 る 。 こ の こ と か ら 投 資 に ア ド バ イ ス を 求 め る 投 資 家 が 増 え て い る と 推 測 で き る 。 サ ー ビ ス が 始 ま っ た 当 初 は 、 最 低 投 資 金 額 1 億 円 以 上 と 富 裕 層 向 け の サ ー ビ ス で あ っ た 。 2 0 1 4 年 6 月 2 8 日 付 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 の 記 事 に よ る と 、 大 和 証 券 が 最 低 投 資 金 額 を 3 0 0 万 円 ま で 引 き 下 げ る な ど 間 口 が 広 が っ て い る 。 し か し 、 未 だ 若 年 層 が 気 軽 に 投 資 で き る 金 額 と は 言 い 難 い 。 さ ら に 年 齢 層 に 関 わ ら1 5 ず 運 用 商 品 に 困 っ た 経 験 が あ る 人 が 多 く 存 在 し 、 〈 図 4 - 7 〉 か ら 多 く の 人 が 具 体 的 な 投 資 ア ド バ イ ス を 求 め て い る こ と が 分 か る 。 こ の こ と か ら 投 資 ア ド バ イ ス に 対 す る 需 要 は 高 い と 思 わ れ 、 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー へ の ニ ー ズ が う か が え る 。 2 0 2 5 3 0 個 人 投 資 家 に 対 し て ス マ ー ト フ ォ ン な ど を 通 じ て 資 産 運 用 を 提 供 す る こ と 。 3 1 4 0 歳 以 下 の 米 国 若 年 層
  • 39. 38 〈 図 4 - 6 〉 ラ ッ プ 口 座 の 推 移 5 1 0 出 所 : 投 資 顧 問 業 協 会 「 統 計 資 料 ( 平 成 2 8 年 3 月 末 ) 」 [ 2 0 1 6 ] P 4 を 参 考 に 筆 者 作 成 〈 図 4 - 7 〉 D C の 商 品 の 選 択 や 組 み 合 わ せ を 決 め る 際 に 、 F P な ど か ら ア ド バ イ ス を 受 け た い と 思 う か 1 5 2 0 出 所 : 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 「 確 定 拠 出 年 金 の 利 用 実 態 調 査 ( 2 0 1 5 / 3 ) 報 告 」 [ 2 0 1 5 ] P 3 5 を 参 考 に 筆 者 作 成 日 本 に お け る ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 第 一 号 で あ る 「 株 式 会 社 お 金 の デ ザ イ ン 」2 5 の T H E O を 例 に 挙 げ ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー の 有 用 性 を 述 べ る 。 T H E O の サ ー ビ ス の 主 な メ リ ッ ト は ( 1 ) シ ン プ ル で 低 コ ス ト で あ る こ と に 加 え 、 顧 客 が 負 担 す る 運 用 報 酬 は フ ィ ー 型 方 式 と な っ て お り 、 投 資 一 任 契 約 と な っ て い る こ と 。 ( 2 ) プ ロ フ ァ イ リ ン グ に よ る 顧 客 一 人 ひ と り の カ ス タ マ イ ズ 運 用 が 可 能 で あ る
  • 40. 39 と い う こ と 。 ( 3 ) 京 都 大 学 大 学 院 加 藤 康 之 教 授 の 監 修 の も と 構 築 さ れ た 最 先 端 の ポ ー ト フ ォ リ オ モ デ ル が 提 供 さ れ 、 こ の モ デ ル を 活 用 し た 場 合 、 E T F に よ る 低 コ ス ト の グ ロ ー バ ル 分 散 投 資 が 可 能 で あ る こ と の 3 点 で あ る 。 ま た 実 際 に 、 国 内 初 D C に ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー を 組 み こ ん だ 企 業 が あ る 。 S B I ホ ー ル デ ィ ン グ ス 株 式 会 社 グ ル ー プ で あ る モ ー ニ ン グ ス タ ー 株 式 会 社 は 、5 モ ー ニ ン グ ス タ ー ア セ ッ ト マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社 を 通 じ て 、 D C 加 入 者 向 け に ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー 運 用 ツ ー ル に よ り 、 加 入 者 の 掛 け 金 な ら び に 積 立 金 の 最 適 な 資 産 配 分 と 具 体 的 な 商 品 選 定 の 助 言 サ ー ビ ス を 開 始 し た 。 D C 加 入 者 向 け に 提 供 す る の は 国 内 初 の 試 み で あ り 、 D C 加 入 者 向 け に カ ス タ マ イ ズ し て 提 供 す る と し て い る 。 さ ら に 、 モ ー ニ ン グ ス タ ー 株 式 会 社 は こ れ ま で 、 商 品 の ラ イ ン1 0 ナ ッ プ 分 析 、 加 入 者 へ の 投 資 教 育 セ ミ ナ ー 、 商 品 分 析 評 価 情 報 の 提 供 な ど を D C 向 け サ ー ビ ス と し て 続 け て お り 、 こ れ ら の 知 識 ・ 技 術 を 踏 ま え て 、 様 々 な 角 度 か ら 加 入 者 の 最 適 な 資 産 形 成 に 貢 献 で き る と し て い る 。 こ の 例 に 続 け て 、 大 手 金 融 機 関 も 次 々 と 参 入 を 表 明 し て い る 。 ベ ン チ ャ ー 企 業 を 合 わ せ れ ば 来 春 ま で に 2 0 社 弱 が サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と は 、 業 界 の ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー に 対1 5 す る 期 待 が 高 ま っ て い る こ と を 表 し て い る 。 上 述 し て き た よ う に 、 ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー を 活 用 す る こ と は 長 期 資 産 形 成 を 体 験 す る き っ か け と な り 、 結 果 と し て 長 期 分 散 の 効 果 を 経 験 す る こ と に よ る 金 融 リ テ ラ シ ー の 向 上 が 可 能 で あ る 。 こ の こ と か ら 第 3 章 2 節 に 述 べ た よ う な 家 計 の 金 融 リ テ ラ シ ー 不 足 を 補 完 す る こ と が で き る 。 さ ら に こ の サ ー ビ ス は 人 員2 0 を 介 せ ず 、 利 用 者 の ニ ー ズ に 沿 っ た 金 融 商 品 の 提 供 を 支 援 す る も の で あ る た め 、 第 3 章 3 節 に も 述 べ た 金 融 機 関 に 求 め ら れ て い る フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー の 取 り 組 み に も 貢 献 す る こ と が 期 待 さ れ る 。 I T 化 の 進 展 が 見 込 ま れ る こ と や 、 既 に 米 国 に お い て は ロ ボ ・ ア ド バ イ ザ ー や 資 産 管 理 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 3 2 ア プ リ 等 が ビ ジ ネ ス と し て 成 功 し て い る こ と も2 5 踏 ま え 、 日 本 に お い て も 資 産 運 用 関 連 の F i n t e c h ビ ジ ネ ス の 推 進 を 検 討 す る べ き だ と 提 案 す る 。 3 2 コ ン ピ ュ ー タ ー に お い て 、 主 に オ ペ レ ー テ ィ ン グ シ ス テ ム や ハ ー ド ウ ェ ア と い っ た 基 礎 部 分 を 指 す 。
  • 41. 40 第 4 節 望ましい投資信託のあり方 第 3 章 3 節 で は 日 本 の 投 信 の 問 題 点 と し て 顧 客 と 金 融 取 引 業 者 と の 利 益 相 反 を 指 摘 し た 。 利 益 相 反 は 、 高 額 な 手 数 料 、 家 計 の リ テ ラ シ ー 不 足 、 販 売 会 社 と 運 用 会 社 の 癒 着 が 原 因 で あ る 。 そ し て 4 節 で は パ フ ォ ー マ ン ス の 低 さ を 述 べ た 。 低 パ フ ォ ー マ ン ス の 背 景 に は 規 模 、 運 用 方 法 の 問 題 が あ る 。5 日 本 で は 長 期 的 に 利 益 を 出 す こ と が 難 し い ア ク テ ィ ブ フ ァ ン ド が 中 心 と な っ て い る 。 フ ァ ン ド の パ フ ォ ー マ ン ス が 低 く て は 、 投 信 が 普 及 し に く く 、 販 売 手 数 料 は 高 く な る 。 高 額 な 販 売 手 数 料 は 、 販 売 会 社 に 回 転 売 買 へ の イ ン セ ン テ ィ ブ を 働 か せ 、 小 型 フ ァ ン ド の 乱 立 へ つ な が る 。 小 型 フ ァ ン ド で は 規 模 の 経 済 が 働 き に く く 、 投 信 の も つ 大 規 模 集 団 投 資 の メ リ ッ ト を 生 か せ な い 。 そ の 結 果 、1 0 フ ァ ン ド の 低 パ フ ォ ー マ ン ス に つ な が る 。 ま た 、 販 売 会 社 と 運 用 会 社 が 独 立 し て い な い こ と で 、 顧 客 に と っ て 最 適 な 商 品 を 提 案 し に く く な る 。 こ れ ら の こ と が 、 投 信 を 望 ま し い あ り 方 か ら 遠 ざ け て い る の で あ る 。 望 ま し い 投 信 の あ り 方 と は 、 金 融 商 品 取 引 業 者 に フ ィ デ ュ ー シ ャ リ ー ・ デ ュ ー テ ィ ー が 浸 透 す る こ と 。 な お か つ 、 顧 客 が 投 信 に 関 心 を 持 ち 金 融 リ テ ラ シ ー1 5 を 高 め る こ と で 、 顧 客 本 位 の 商 品 設 計 や 販 売 が 行 わ れ る も の で あ る と 我 々 は 考 え る 。 そ の た め に は フ ァ ン ド の 規 模 を 大 き く す る た め に 似 た 性 質 の フ ァ ン ド を 統 合 し 、 長 期 的 に 運 用 成 果 を 上 げ る た め 、 運 用 方 法 を ア ク テ ィ ブ 運 用 中 心 か ら パ ッ シ ブ 運 用 中 心 へ 転 換 す る こ と が 必 要 で あ る 。 さ ら に 、 運 用 会 社 か ら 独 立 し た 販 売 を 徹 底 さ せ る こ と が 求 め ら れ る 。 長 期 的 に 利 益 を 上 げ ら れ る よ う に な り 、2 0 顧 客 に 最 適 な 商 品 を 提 案 で き る よ う に な れ ば 、 国 民 の 資 産 形 成 手 段 と し て 投 信 の 地 位 は 確 か な も の と な る 。 現 在 の 日 本 の 投 信 は 、 第 3 章 で も 述 べ た と お り 、 ア ク テ ィ ブ 運 用 で 毎 月 分 配 型 の フ ァ ン ド が 主 流 と な っ て い る 。 ア ク テ ィ ブ 運 用 は 一 時 的 に 利 益 を 出 す こ と が で き て も 、 長 期 的 に 利 益 を 出 し 続 け る こ と は 難 し い 。 そ の た め 、 家 計 の 長 期2 5 資 産 形 成 の 核 と し て 活 用 す る こ と に は 適 さ ず 、 イ ン デ ッ ク ス フ ァ ン ド を 活 用 す る こ と が 適 し て い る 。 家 計 に 金 融 リ テ ラ シ ー が 拡 充 す る と 、 資 産 形 成 の た め に は 利 益 再 投 資 型 の イ ン デ ッ ク ス フ ァ ン ド が 長 期 保 有 に 有 効 で あ る と 理 解 さ れ る 。 そ れ に よ り 、 顧 客 の ニ ー ズ は 毎 月 分 配 型 の ア ク テ ィ ブ フ ァ ン ド か ら 利 益 再 投 資