見立ての手法
- 2. 2. 橋(はし)
<はし> 端、橋、箸、階、嘴などの意味がある。
二つのものの < ま > をかけわたすことを意味している。
階 … 庭から建物に上がる階段。きざはし。
嘴 … くちばし。
出雲大社復元
神の住まいに向かって < はし > がかけら
れた。
古代の文献から復元すると 100m に及ぶ
長い階段がつくられていたことが判明。
天と地を、神と人間とを結ぶことの象徴
でもあった。
磯崎新
3. 闇(やみ)
霊魂=<カミ>は闇の世界、すなわち冥界に住まい、一定の日時に出現す
る。あらゆる祭儀は霊魂を招来するためのものであった。そこから芸能が
生まれ、能や歌舞伎に形式化した。
見立ての手法
(2)
←八幡神影向図
<カミ>は具体的な像をもたない。八幡
神影向図はそのぎりぎりの表現である。
↑能舞台分析図
能舞台は日本人の宇宙観をそっくり投影
している。正面の壁は鏡板と呼ばれ、<
カミ>が宿る。そのシンボルとして老い
た松が描かれている。
能舞台= 現世
楽屋= 冥界
通路= 橋
能舞台が特徴的なのは、
移動の過程であり、霊魂の
現前を演出している。
出雲大社復元
- 3. (3)
4. 数寄(すき)
十二世紀末、既にシステムとして確立していた武士の住居形式に変革が起
こる。 → 茶室の付加
あらゆる構成要素を設計者(茶のマスター)の好み = < す き >
5. 移(うつろい)
<うつろい>は、元来、空洞に霊魂が充満する瞬間をさしていたのだが、
そこから映像のたちあらわれる瞬間をさすことになった。
タテオコシ絵図
日本の伝統空間は平面の組み合わせとし
て発想しているため、固定した壁がなく
軽い間仕切りで区切られていた。
ところが茶室の空間は全く違っている。
四周の壁が塗り固められ、他から隔離さ
れた密室になっている。そのためより3
時限的な空間に近い性格のものとして構
想されていたはずである。しかし、実際
に伝達する図面は平面の組み合わせにな
っている。
⃝… 二次元的な平面の組み合わせで生まれる
<ま>が基本になっている。
×… 三次元的な立体としての空間
屏風
ひろい間仕切りのない部屋のなかを、一
時的に区切る目的で開発された。多くの
場合、暗がりに置かれ、視点の移動と共
に金箔が一瞬輝く効果を狙っている。
また屏風にかけられた着物の図柄も四季
の変化を表している。
磯崎新
6. 寂(さび)
日本の中世は、物体が時間の経過と共に帯びた古色や、荒涼たるありさま
、変貌している状態に美を見出して、それを<さび>と呼んだ。
見立ての手法
(2)
タテオコシ絵図
屏風