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ルーカス批判
- 2. 伝統的な計量経済学 • 社会科学の研究は以下のような実証主義的なプロセスに従うのが 自然か • ①現実のデータから安定的な関係群を見つけ出して作業仮説とする。 • ②作業仮説を組み合わせたモデルを作る。 • ③モデルの性質を演繹的に分析し検証可能な命題を導出する • ④データと不整合なら、データを再検討し仮説を組み替える。 • ⑤繰り返し。過去のデータをうまく説明できるモデルができたらそれ を活用する。
- 3. この考え方は本来 • 研究対象はブラックボックス • 中（＝しくみ）を決して覗き見ることができない • 外からの刺激に対して安定的な反応を見せる • という考え方。 • その理論が正しいかどうかは • そのモデルが過去のブラックボックスのふるまいをうまく再現で きるか否かで判断
- 4. この考え方は本来 • IS-LMモデルなど、伝統的なケインズ経済学はこのようなブラックボッ クスが過去の現象を説明できるかを重視。 政府支出の増大 金融緩和 実質GDP の拡大 この中身を 軽視
- 5. しかし… • ルーカスはこの方法論の落とし穴を指摘 • 伝統的ケインズ経済学から離れ • ミクロ経済学的基礎を備えたマクロ経済学を再構築することを提唱 • たとえば…
- 7. ルーカス批判 • 古典派と硬直賃金モデル（ケインズ）の検討 • 古典派AD-ASモデル • 完全情報と名目賃金の伸縮性 • 景気はコシ！ • （生産性パラメータAのみで変動）
- 8. ルーカス批判 • 硬直賃金モデル（ケインズ） • 名目賃金フロアーや • 総需要を変化させるもの(M,g,an,li,π） • が実質GDPを変化させる
- 9. ルーカス批判 • ここでは金融政策M、財政政策ｇ以外の変数はすべて一定であると し、実質GDPを以下のように近似 •𝑦𝑡 = 𝑎0 + 𝑎1 ln 𝑀𝑡 + 𝑎2 𝑔𝑡 それ以外 の部分 金融政策 による変動 財政政策に よる変動
- 10. 𝑦𝑡 = 𝑎0 + 𝑎1 ln 𝑀𝑡 + 𝑎2 𝑔𝑡 • 古典派のモデルが正しいとすれば、金融政策や財政政策は意味を なさないので𝑎1 = 𝑎2 = 0 • 硬直的賃金モデルならば、金融、財政政策は実質GDPを刺激するの で𝑎1, 𝑎2は正の値をとる。 • ここで二つのモデルのどちらがより整合的か判定する。 • そのためこの式をデータと整合する。
- 11. 𝑦𝑡 = 𝑎0 + 𝑎1 ln 𝑀𝑡 + 𝑎2 𝑔𝑡 • ただし、ここまで実際の経済は単純じゃないので、 • このモデルを拡張…現在の経済政策だけでなく、①過去の経済政策、 ②過去の実質GDPの影響を受ける • たとえば…
- 12. モデルの拡張 • 𝑦𝑡 = 𝑎0 • +𝑎10 𝑙𝑛 𝑀𝑡 + 𝑎11 𝑀(𝑡−1) + 𝑎12 𝑙𝑛 𝑀 𝑡−2 • +𝑎20 𝑔𝑡 + 𝑎21 𝑔(𝑡−1) • +𝑎31 𝑦(𝑡−1) + 𝑎32 𝑦(𝑡−2) • +𝜖 𝑡 T-2期からt 期までの金 融政策 Ｔ期とｔ－１期の 財政政策 T-1,t-2期の 実質GDP 生産性や アニマルｓ など
- 13. モデルの拡張 • この式は安定的な経済の構造を表す式みなされる。 • その係数（𝑎11など。）は政策決定ルールが変更されても不変。 • 古典派と硬直的名目賃金モデルのどちらが現実のデータと整合的 かを判断するため次のような仮説の検定が盛んにオコなわれた。
- 14. 仮説の検定 • (H-1) 貨幣の中立性 𝑎10 = 𝑎11 = 𝑎12 = 0 ※金融政策はいつやっても無駄 • (H-2)貨幣の超中立性 𝑎10 + 𝑎11 + 𝑎12 = 0 ※金融政策は長期的には無駄 ・(H-3)財政政策の無効 𝑎20 = 𝑎21 = 0 ※財政政策無駄
- 15. 仮説の検定 • 古典派モデルは完全情報、価格伸縮性を前提。実質GDPは供給メイ ンだけできまるから、前の仮説すべてが成立するはず。 • タイムラグがあるから、需要ショック（金融緩和など）は、一時的に実 質GDPを刺激する可能性あり。（H-1の否定？） • しかし、需要側の変化は長期的持続するなら古典派にに妥当す る？（貨幣の超中立性）
- 16. 仮説の検定、ルーカス批判 • さまざまなでーたにより上の長い式の係数が検定されてきた。 • その多くでHの３つの仮説は否定。 • →古典派のモデルは長期的にもデータと整合的ではない？ • 金融政策や財政政策は景気に影響を与える！！ • その推定結果を用いて景気を安定化するための政策ルールを検討 する段階に入ったか…？ それならば…？
- 17. ルーカス批判 • ルーカスによると、そのような解釈には落とし穴がある。 • もし真の経済がルーカス型の供給曲線(不完全情報） • 𝑦 𝑠 = 𝐴𝑆 𝑀(𝐴, 𝑃 𝑃 𝑒) • で表現されるとする
- 18. ルーカス型の拡張
- 19. ルーカス型の拡張 • 上の式のうち • ln 𝑀𝑡 − 𝐸𝑡(𝑙𝑛(𝑀𝑡)) • が予期せざる金融ショック • それぞれの式は（黒板に書きます）
- 20. ルーカス批判 • ln 𝑀𝑡 − 𝐸𝑡(𝑙𝑛(𝑀𝑡))＝𝜖 𝑡＝金融政策のきまぐれ • であることが確認された。 • それをルーカス型の実質GDｐ式に代入すると • 𝒚 𝒕 = 𝒃 𝟎 + 𝒃 𝟑𝟏 𝒚 𝒕−𝟏 + 𝒃 𝟏𝟎 𝝐 𝒕 + 𝒃 𝟏𝟏 𝝐 𝒕−𝟏 + 𝒖 𝒕 • この式は金融政策と財政政策を含まない。 • よってそれらの政策は本来無効。
- 21. • しかし、金融政策ショックの式は金融政策や財政政策のデータで説 明できる。 • 実質GDPの動きを政策変数を含めた(5.30）の式で説明することは可 能。 • しかしそのことが金融政策や財政政策といった需要側の政策の有 効性を意味しないことは明らか（？）
- 22. • (5.31)の式から予測された金融政策の項を消去 • （テキストには予測誤差とありましたが…） • （黒板に書きます） • この式は先の式(5.30)と観測上等価（係数が違うだけで、項の要素 は同じ！） • その係数は以下のように対応 • （黒板に書きます）
- 23. • 左側はもともと政策に対する景気の反応 • 右側はもともと政策決定のルール • 望ましい政策決定のルールを策定しても、それに対するリアクション の仕方も変化してしまうので、期待してた効果は得られない。
- 25. • これはC11=1でないと成り立たない。 • C11は、(5.32)の金融政策決定ルールの、前期の金融政策の量に対 するルール • それが • １ということは、一度引き上げられた貨幣供給は、元に戻ろうとしな いということ。
- 26. • 金本位制では、一度引き上げられた貨幣供給量は、必ず元の水準 に戻されなければならない。 • そのため貨幣の超中立性は成り立たない。 • ニクソンショック以後は、金輸出解禁のため、通貨供給量を自由に 策定できるので、元に戻ろうとする力が働かない。(random walk) • そのため貨幣の超中立性受容されることが多い。